(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】安全機構付きシリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
A61M5/32 510K
A61M5/32 510D
A61M5/32 510P
(21)【出願番号】P 2019222815
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 幸宏
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-520602(JP,A)
【文献】特開2011-104363(JP,A)
【文献】特表2012-525200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジと、
前記シリンジの先端部に接続された針と、
前記針を被覆するように前記シリンジに取り付けられており、前記シリンジから取り外すことが可能な針キャップと、
前記シリンジに固定されたホルダーと、
前記シリンジから前記針キャップが取り外された状態において前記針を露出させる使用位置から、前記シリンジから前記針キャップが取り外された状態において前記針の周囲を取り囲む保護位置に向かって、前記シリンジの軸方向に沿って前記シリンジに対して相対変位可能な針カバーと、を備え、
前記ホルダーは、前記針カバーが前記使用位置に保持されるように、前記使用位置における前記針カバーに前記針カバーの径方向の内側から係止する係止部を有し、
前記係止部は、前記針カバーの前記使用位置から前記保護位置への移動を許容するように前記径方向における内向きに撓むように弾性変形可能であり、
前記針キャップは、前記係止部が前記径方向における内向きに撓むのを規制するように前記係止部を前記径方向における内側から支持する支持部を有する、安全機構付きシリンジ。
【請求項2】
前記ホルダーのうち当該ホルダーの周方向における前記係止部の両側には、前記シリンジの前記軸方向と平行な方向に延びるスリットが形成されている、請求項1に記載の安全機構付きシリンジ。
【請求項3】
前記係止部は、
前記シリンジの前記軸方向と平行な方向に沿って延びる形状を有する可撓片と、
前記可撓片から前記径方向における外向きに突出する形状を有する係止突起と、を有し、
前記針カバーは、前記使用位置において前記係止突起と係合する使用位置係合部を有し、
前記可撓片は、前記針カバーが前記使用位置に位置する状態において前記係止突起が前記使用位置係合部に係合する係合位置と、前記針カバーが前記使用位置から前記保護位置に変位するときに前記係止突起が前記使用位置係合部から前記径方向の内側に離脱する離脱位置と、の間で前記係止突起が変位するように弾性変形可能である、請求項2に記載の安全機構付きシリンジ。
【請求項4】
前記針カバーは、前記保護位置において前記係止突起と係合する保護位置係合部をさらに有する、請求項3に記載の安全機構付きシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、安全機構付きシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、欧州特許第2376153号明細書には、針付きシリンジと、針キャップと、インナースリーブと、アウタースリーブと、を備える安全機構付きシリンジが開示されている。この安全機構付きシリンジでは、使用時に針キャップが取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
欧州特許第2376153号明細書に記載されるような安全機構付きシリンジでは、使用後における誤刺等を防止するために、アウタースリーブを針カバーとして用いることが考えられる。すなわち、上記安全機構付きシリンジにおいて、当該シリンジの使用後、針の周囲が取り囲まれる保護位置までシリンジに対して針カバー(アウタースリーブ)を針側に相対変位(スライド)させることが可能となるように構成することが考えられる。しかしながら、輸送時の振動等により、使用前、つまり、針キャップの取外し前に針カバーが保護位置に向かって変位した場合、使用時における針キャップの取外し等が困難になる。
【0005】
本発明の目的は、針キャップが取外される前に針カバーが保護位置まで変位するのを規制することが可能な安全機構付きシリンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一局面に従った安全機構付きシリンジは、シリンジと、前記シリンジの先端部に接続された針と、前記針を被覆するように前記シリンジに取り付けられており、前記シリンジから取り外すことが可能な針キャップと、前記シリンジに固定されたホルダーと、前記シリンジから前記針キャップが取り外された状態において前記針を露出させる使用位置から、前記シリンジから前記針キャップが取り外された状態において前記針の周囲を取り囲む保護位置に向かって、前記シリンジの軸方向に沿って前記シリンジに対して相対変位可能な針カバーと、を備え、前記ホルダーは、前記針カバーが前記使用位置に保持されるように、前記使用位置における前記針カバーに前記針カバーの径方向の内側から係止する係止部を有し、前記係止部は、前記針カバーの前記使用位置から前記保護位置への移動を許容するように前記径方向における内向きに撓むように弾性変形可能であり、前記針キャップは、前記係止部が前記径方向における内向きに撓むのを規制するように前記係止部を前記径方向における内側から支持する支持部を有する。
【0007】
この安全機構付きシリンジでは、針キャップがシリンジに装着された状態では、針キャップの支持部が係止部を径方向における内側から支持しているため、係止部が径方向における内向きに撓むことが抑制される。よって、針キャップがシリンジに装着されている状態では、針カバーが使用位置に保持される。換言すれば、この安全機構付きシリンジでは、針キャップが取外される前に針カバーが保護位置まで変位するのが規制される。一方、針キャップがシリンジから取り外された状態では、係止部が径方向における内向きに撓むことが可能となるため、針カバーの使用位置から保護位置への変位が許容される。
【0008】
また、前記ホルダーのうち当該ホルダーの周方向における前記係止部の両側には、前記シリンジの前記軸方向と平行な方向に延びるスリットが形成されていることが好ましい。
【0009】
このようにすれば、針カバーが使用位置から保護位置に変位する際に係止部が有効に弾性変形する。
【0010】
また、前記係止部は、前記シリンジの前記軸方向と平行な方向に沿って延びる形状を有する可撓片と、前記可撓片から前記径方向における外向きに突出する形状を有する係止突起と、を有し、前記針カバーは、前記使用位置において前記係止突起と係合する使用位置係合部を有し、前記可撓片は、前記針カバーが前記使用位置に位置する状態において前記係止突起が前記使用位置係合部に係合する係合位置と、前記針カバーが前記使用位置から前記保護位置に変位するときに前記係止突起が前記使用位置係合部から前記径方向の内側に離脱する離脱位置と、の間で前記係止突起が変位するように弾性変形可能であることが好ましい。
【0011】
この場合において、前記針カバーは、前記保護位置において前記係止突起と係合する保護位置係合部をさらに有することが好ましい。
【0012】
このようにすれば、使用後に、針カバーが保護位置から使用位置に変位することが抑制される。
【発明の効果】
【0013】
以上に説明したように、この発明によれば、針キャップが取外される前に針カバーが保護位置までスライドするのを規制することが可能な安全機構付きシリンジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の安全機構付きシリンジの斜視図である。
【
図2】
図1に示される安全機構付きシリンジからキャップが取り外された状態の斜視図である。
【
図3】針カバーが保護位置に位置する状態の斜視図である。
【
図4】ガイド突起が当接面に当接した状態の斜視図である。
【
図5】
図1に示される安全機構付きシリンジの断面図である。
【
図6】
図5からキャップが取り外された状態の断面図である。
【
図7】
図6から針カバー保護位置に向けて少し変位した状態を示す断面図である。
【
図8】針カバーが保護位置に位置する状態の断面図である。
【
図10】
図4に示されるX-X線での断面図である。
【
図11】
図4に示されるXI-XI線での断面図である。
【
図12】針カバーが使用位置に位置する状態におけるホルダー及び針カバーの斜視図である。
【
図13】
図12におけるXIII-XIII線での断面図である。
【
図14】
図12に示される状態から針カバーが保護位置に向けて少し変位した状態を示す斜視図である。
【
図15】針カバーが保護位置に位置する状態におけるホルダー及び針カバーの斜視図である。
【
図16】
図15に示される状態から針カバーが軸方向に沿って使用位置に向けて変位した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0016】
図1~
図9に示されるように、安全機構付きシリンジ1は、シリンジ100と、針200と、針キャップ300と、ホルダー400と、針カバー500と、を備えている。この安全機構付きシリンジ1は、使用時に針キャップ300が取り外され、使用後、針カバー500を使用位置(
図2に示される位置)から保護位置(
図3に示される位置)に移動させることにより、誤刺等の抑制を可能とするものである。
【0017】
シリンジ100は、円筒状に形成されたバレル本体110と、バレル本体110の先端部(
図5における上端部)に接続された針保持部120と、を有している。なお、各図では、プランジャおよびガスケットの図示は省略されている。
【0018】
針保持部120は、バレル本体110の外形よりも小さな外形を有している。針保持部120は、針200を保持している。
図5~
図8等に示されるように、針保持部の先端部122は、バレル本体110の径方向における外向きに張り出す形状を有している。
【0019】
針キャップ300は、針200を被覆するようにシリンジ100に取り付けられている。具体的に、針キャップ300の開口端部310(
図5を参照)は、針保持部120の先端部122に嵌合している。針キャップ300は、シリンジ100から取り外すことが可能である。
【0020】
ホルダー400は、シリンジ100の針保持部120に固定されている。ホルダー400は、バレル本体110の軸方向にバレル本体110に対して相対変位不能で、かつ、バレル本体110の中心軸まわりにバレル本体110に対して相対回転可能である。ホルダー400は、包囲筒410と、首部420と、係止筒430と、ガイド突起440と、を有している。
【0021】
包囲筒410は、針保持部120を包囲している。包囲筒410は、円筒状に形成されている。包囲筒410は、針保持部120に対してバレル本体110の中心軸まわりに相対回転可能である。
図9に示されるように、包囲筒410には、当該包囲筒410の軸方向に延びる切欠きが形成されている。
【0022】
首部420は、包囲筒410の先端部(
図5における上端部)から包囲筒410の径方向における内向きに突出する形状を有している。首部420は、針保持部120の先端部122に係合している。これにより、ホルダー400のバレル本体110からの離脱が阻止されている。
【0023】
係止筒430は、針カバー500を係止する部位である。係止筒430は、包囲筒410の径方向における包囲筒410の外側に形成されている。係止筒430は、首部420の外縁部から包囲筒410の軸方向における一方側及び他方側に延びる形状を有している。
図5に示されるように、係止筒430は、針キャップ300の開口端部310を包囲している。開口端部310は、係止筒430内に圧入されている。係止筒430の詳細については、後述する。
【0024】
ガイド突起440は、係止筒430の外周面から包囲筒410の径方向における外向きに突出する形状を有している。ガイド突起440は、円板状ないし円柱状に形成されている。本実施形態では、ホルダー400は、包囲筒410の中心を挟む位置に設けられた一対のガイド突起440を有している。
【0025】
針カバー500は、針200を露出させる使用位置(
図2に示される位置)から針200の周囲を取り囲む保護位置(
図3に示される位置)に向かって、シリンジ100の軸方向に沿ってシリンジ100に対して相対変位可能である。より詳細には、針カバー500は、シリンジ100から針キャップ300が取り外された状態において、使用位置から保護位置に向かってバレル本体110に対して相対変位可能である。一方、針カバー500が保護位置から使用位置に向かってバレル本体110の軸方向に沿って変位することは、規制されている。針カバー500は、カバー本体510と、膨出部520と、を有している。
【0026】
カバー本体510は、円筒状に形成されている。カバー本体510の内径は、バレル本体110の外径と同じかそれよりも僅かに大きく設定されている。カバー本体510は、係止筒430を包囲している。カバー本体510は、使用位置係合部511と、保護位置係合部512と、ガイド溝513と、を有している。
【0027】
使用位置係合部511は、カバー本体510が使用位置において係止筒430と係合する部位である。本実施形態では、使用位置係合部511は、カバー本体510をその径方向に貫通する貫通孔で構成されている。使用位置係合部511は、カバー本体510のうちカバー本体510が使用位置から保護位置に向かう向き(以下、「保護方向」と表記する。)における先端部の近傍に設けられている。
【0028】
保護位置係合部512は、カバー本体510が保護位置において係止筒430と係合する部位である。本実施形態では、保護位置係合部512は、カバー本体510をその径方向に貫通する貫通孔で構成されている。保護位置係合部512は、カバー本体510のうち保護方向と反対向きに使用位置係合部511から離間した部位に設けられている。
【0029】
ガイド溝513は、カバー本体510が使用位置から保護位置に向かって変位するときにガイド突起440を案内する。すなわち、ガイド突起440は、針カバー500に向かって突出する形状を有しており、カバー本体510が使用位置から保護位置に変位する際にガイド溝513内を移動する。ガイド溝513は、カバー本体510をその径方向に貫通する貫通孔で構成されている。ガイド溝513は、案内面513aと、当接面513bと、を有している。
【0030】
案内面513aは、カバー本体510が使用位置から保護位置に変位するときにカバー本体510をバレル本体110の中心軸まわりに回転させる形状を有している。本実施形態では、案内面513aは、カバー本体510が使用位置から保護位置に変位するときにカバー本体510をバレル本体110の中心軸まわりに45度回転させる形状を有している。
【0031】
図4及び
図10に示されるように、当接面513bは、カバー本体510が保護位置から使用位置に向かってバレル本体110の軸方向に沿って変位するときにガイド突起440に当接する。このため、カバー本体510が保護位置から使用位置に向かってバレル本体110の軸方向に沿って変位するのが規制される。つまり、ガイド突起440は、針カバー500に向かって突出する突出部を構成しており、当接面513bは、カバー本体510が保護位置から使用位置に向けてバレル本体110の軸方向に沿ってバレル本体110に対して相対変位するのを規制する規制部を構成している。ガイド突起440が当接面513bに当接した状態(
図4、
図10及び
図11に示される状態)において、針200は、針カバー500によって包囲されている。
【0032】
膨出部520は、カバー本体510の内周面からカバー本体510の径方向における内向きに膨出する形状を有している。膨出部520は、第1縦リブ521と、第2縦リブ522と、を有している。
【0033】
図10に示されるように、第1縦リブ521は、保護方向(
図10における上向き)に当接面513bから離間した位置に設けられている。第1縦リブ521は、カバー本体510の軸方向に沿って延びる形状を有している。
図10及び
図13に示されるように、膨出部520は、カバー本体510の中心軸を挟む位置に設けられた一対の第1縦リブ521を有している。
【0034】
図11に示されるように、第2縦リブ522は、保護方向(
図11における上向き)に保護位置係合部512から離間した位置に設けられている。第2縦リブ522は、カバー本体510の軸方向に沿って延びる形状を有している。第2縦リブ522は、カバー本体510の周方向に第1縦リブ521から90度回転した位置に設けられている。
図11及び
図13に示されるように、膨出部520は、カバー本体510の中心軸を挟む位置に設けられた一対の第2縦リブ522を有している。
【0035】
ここで、係止筒430について説明する。
図9に示されるように、係止筒430は、第1壁部432と、第2壁部431と、係止部433と、を有している。
【0036】
第1壁部432は、使用位置における膨出部520と針カバー500の径方向に対向する位置に形成されている。本実施形態では、係止筒430は、包囲筒410の周方向に沿って90度間隔で設けられた4つの第1壁部432を有している。以下、使用位置における針カバー500の第1縦リブ521と針カバー500の径方向に対向する第1壁部432を「第1壁部432A」と表記し、使用位置における針カバー500の第2縦リブ522と針カバー500の径方向に対向する第1壁部432を「第1壁部432B」と表記する場合がある。
【0037】
各第1壁部432は、針カバー500が使用位置から保護位置に向かってバレル本体110の中心軸まわりに回転しながら変位するのを許容する。各第1壁部432の外側面は、平坦に形成されている。
図13に示されるように、使用位置における針カバー500の第1縦リブ521とこれと対向する第1壁部432Aとの間には、隙間が形成されている。使用位置における針カバー500の第2縦リブ522とこれと対向する第1壁部432Bとの間には、隙間が形成されている。このため、
図12~
図15に示されるように、針カバー500がバレル本体110の中心軸まわりに回転しながら使用位置から保護位置に向かって変位するのが許容される。なお、
図12、
図14及び
図15では、膨出部520のうち第1縦リブ521のみが示されている。また、
図14では、係止突起435の図示は省略されている。
【0038】
第2壁部431は、互いに隣接する第1壁部432間に設けられている。すなわち、係止筒430は、包囲筒410の中心を挟む一対の第2壁部431を有している。より詳細には、各第2壁部431は、針カバー500が使用位置から保護位置に変位する際に当該針カバー500がバレル本体110の中心軸周りに回転する方向と同じ方向に第1壁部432A(使用位置における第1縦リブ521と径方向に対向する第1壁部432)に隣接する位置に設けられている。各第2壁部431は、第1壁部432の厚みよりも大きな厚みを有している。
【0039】
各第2壁部431は、保護方向における先端に形成された受け部431aを有している。受け部431aは、保護位置における針カバー500の第1縦リブ521と軸方向に対向するとともに、針カバー500が保護位置から使用位置に向かって軸方向に沿って変位するときに第1縦リブ521に当接する。つまり、第1縦リブ521は、ホルダー400に向かって突出する突出部を構成しており、受け部431aは、針カバー500がバレル本体110に対して保護位置から使用位置に向けてバレル本体110の軸方向に沿って相対変位するのを規制する規制部を構成している。
【0040】
係止部433は、針カバー500に対して当該針カバー500の径方向の内側から係止する。係止部433は、針カバー500を使用位置に保持する。具体的に、係止部433は、使用位置における針カバー500の使用位置係合部511に係合する。また、係止部433は、針カバー500を保護位置に保持する。具体的に、係止部433は、保護位置における針カバー500の保護位置係合部512に係合する。
【0041】
係止部433は、互いに隣接する第1壁部432間に設けられている。すなわち、係止筒430は、包囲筒410の中心を挟む一対の係止部433を有している。より詳細には、各係止部433は、針カバー500が使用位置から保護位置に変位する際に当該針カバー500がバレル本体110の中心軸周りに回転する方向と同じ方向に第1壁部432B(使用位置における第2縦リブ522と径方向に対向する第1壁部432)に隣接する位置に設けられている。
【0042】
係止筒430のうち各係止部433の両側には、一対のスリットSが形成されている。これにより、各係止部433は、包囲筒410の径方向の内向きに撓むことが可能となっている。係止部433は、可撓片434と、係止突起435と、を有している。
【0043】
可撓片434は、一対のスリットSに挟まれており、板状に形成されている。
【0044】
係止突起435は、可撓片434の外面から径方向における外向きに突出する形状を有している。係止突起435は、使用位置係合部511及び保護位置係合部512に対して針カバー500の径方向における内側から係合する。係止突起435は、可撓片434のうち保護方向における先端部の外面に設けられている。
【0045】
可撓片434は、係止突起435が係合位置と離脱位置との間で変位するように弾性変形可能である。係合位置は、針カバー500が使用位置に位置する状態において係止突起435が使用位置係合部511に係合する位置(
図6に示される位置)である。離脱位置は、針カバー500が使用位置から保護位置に変位するときに係止突起435が使用位置係合部511から径方向の内側に離脱する位置(
図7に示される位置)である。
【0046】
図9~
図11に示されるように、可撓片434は、保護方向における先端に形成された受け部434aを有している。受け部434aは、保護位置における針カバー500の第2縦リブ522と軸方向に対向するとともに、針カバー500が保護位置から使用位置に向かって軸方向に沿って変位するときに第2縦リブ522に当接する。つまり、第2縦リブ522は、ホルダー400に向かって突出する突出部を構成しており、受け部434aは、針カバー500がバレル本体110に対して保護位置から使用位置に向けてバレル本体110の軸方向に沿って相対変位するのを規制する規制部を構成している。
【0047】
図5に示されるように、針キャップ300がシリンジ100に取り付けられた状態において、針キャップ300の開口端部310は、針保持部120の先端部122と可撓片434との間に圧入されている。つまり、開口端部310は、係止部433が径方向における内向きに撓むのを規制するように係止部433を径方向における内側から支持する支持部を構成している。
【0048】
次に、安全機構付きシリンジ1の使用手順について説明する。まず、この安全機構付きシリンジ1の使用前は、
図1及び
図5に示されるように、針キャップ300がシリンジ100に取り付けられている。この状態では、針キャップ300の開口端部(支持部)310が係止部433を径方向における内側から支持しているため、係止部433が径方向における内向きに撓むことが抑制される。よって、針キャップ300がシリンジ100に装着されている状態では、針カバー500が使用位置に保持される。換言すれば、この安全機構付きシリンジ1では、針キャップ300が取外される前に針カバー500が保護位置まで変位するのが規制される。
【0049】
安全機構付きシリンジ1の使用時には、針キャップ300が取り外される。これにより、針200が露出する。
【0050】
そして、使用後、針カバー500は、使用位置から保護位置へ向けてバレル本体110に対して移動させられる。この移動の開始時、針キャップ300の開口端部310による係止部433の支持がないため、係止突起435がカバー本体510による押圧を受けることによって可撓片434が径方向における内向きに撓む。このため、針カバー500の保護方向への移動が許容される。針カバー500は、ガイド溝513に沿ってバレル本体110の中心軸まわりに回転しながら保護位置まで移動する。この針カバー500の回転を伴う移動時には、第1縦リブ521は、第1壁部432Aから離間した状態が維持され、第2縦リブ522は、第1壁部432Bから離間した状態が維持される。
【0051】
そして、針カバー500が保護位置に至ると、係止突起435が保護位置係合部512に係合するように可撓片434が復帰する。このため、針カバー500は、保護位置に保持される。このとき、
図15に示されるように、第1縦リブ521は、軸方向に第2壁部431の受け部431aと対向している。また、第2縦リブ522は、軸方向に可撓片434の受け部434aと対向している。
【0052】
ここで、針カバー500に対して当該針カバー500をバレル本体110の軸方向に沿って保護位置から使用位置に向かわせる外力が作用すると、
図4、
図10及び
図16に示されるように、ガイド突起440が当接面513bに当接し、第1縦リブ521が第2壁部431の受け部431aに当接し、第2縦リブ522が可撓片434の受け部434aに当接する。よって、針カバー500がそれ以上バレル本体110の軸方向に沿って保護方向と反対向きに変位するのが規制される。なお、
図16では、第2縦リブ522の図示は省略されている。
【0053】
このように、突出部(ガイド突起440、第1縦リブ521、第2縦リブ522)が規制部(当接面513b、受け部431a、受け部434a)に当接した状態では、針200は、針カバー500によって包囲されている。よって、使用後における誤刺等が発生が抑制される。
【0054】
また、本実施形態では、係止部433は、針カバー500を使用位置又は保護位置に係止する機能と、第2縦リブ522と協同することによって針カバー500の保護位置から使用位置に向けての軸方向に沿った変位を規制する機能と、を兼ね備えている。
【0055】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0056】
例えば、シリンジ100に対する針カバー500の保護位置から使用位置に向けての軸方向に沿った変位は、単一の突出部と単一の規制部とからなる規制機構によって規制可能であるため、ガイド突起440と当接面513bとからなる規制機構、第1縦リブ521と受け部431aとからなる規制機構、及び、第2縦リブ522と受け部434aとからなる規制機構のいずれか1つ、あるいは、いずれか2つは、省略されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 安全機構付きシリンジ、100 シリンジ、110 バレル本体、120 針保持部、122 先端部、200 針、300 針キャップ、310 開口端部(支持部)、400 ホルダー、410 包囲筒、420 首部、430 係止筒、431 第2壁部、431a 受け部(規制部)、432 第1壁部、432A 第1壁部、432B 第1壁部、433 係止部、434 可撓片、434a 受け部(規制部)、435 係止突起、440 ガイド突起(突出部)、500 針カバー、510 カバー本体、511 使用位置係合部、512 保護位置係合部、513 ガイド溝、513a 案内面、513b 当接面(規制部)、520 膨出部(突出部)、521 第1縦リブ(突出部)、522 第2縦リブ(突出部)。