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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】駆動伝達装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20231108BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231108BHJP
   F16H 37/02 20060101ALI20231108BHJP
   F16H 7/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G03G21/16 147
G03G21/00 370
F16H37/02 C
F16H7/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019228101
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021096375
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃宏
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001059(JP,A)
【文献】特開2017-190859(JP,A)
【文献】特開2007-017777(JP,A)
【文献】特開2003-158884(JP,A)
【文献】特開2014-159866(JP,A)
【文献】特開2016-061889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0364021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 21/00
F16H 37/02
F16H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正回転と逆回転が可能なモーターと、
前記モーターによって駆動される駆動軸と、
前記駆動軸に対して径方向に離間した位置に設けられた従動軸と、
前記従動軸に設けられた従動プーリーと、
前記駆動軸と前記従動プーリーとに巻き掛けられたベルトと、
前記駆動軸に設けられた駆動ギアと、
前記従動軸に設けられ、前記駆動ギアに噛み合わされない従動ギアと、
前記従動ギアに噛み合わされたアイドルギアと、
前記駆動ギアに噛み合わされた揺動ギアと、
前記揺動ギアが前記アイドルギアに噛み合わされる第1位置と、前記揺動ギアが前記アイドルギアに噛み合わされない第2位置とを結ぶ、前記駆動軸を中心とする円弧上における前記揺動ギアの揺動を案内する案内部材と、
前記モーターが正回転した場合に前記ベルトを介して前記従動プーリーに伝達される駆動力を前記従動軸に伝達し、前記モーターが逆回転した場合に前記ベルトを介して前記従動プーリーに伝達される駆動力の前記従動軸への伝達を遮断する伝達遮断機構と、
前記従動軸の回転ムラを計測する計測部と、
前記モーターを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記計測部により計測された前記回転ムラが前記回転ムラの限度を示す条件に該当しない場合に、前記モーターの正回転により前記揺動ギアを前記第2位置に揺動させることで、前記ベルト及び前記従動プーリーを介して前記従動軸に駆動力を伝達させ、前記回転ムラが前記条件に該当する場合に、前記モーターの逆回転により前記揺動ギアを前記第1位置に揺動させることで、前記駆動ギア、前記揺動ギア、前記アイドルギア及び前記従動ギアを介して前記従動軸に駆動力を伝達させることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記駆動軸の外周面には、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた第1クラウニング部と、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた、前記第1クラウニング部よりも径が大きい第2クラウニング部と、が形成されており、
前記従動プーリーの外周面には、前記第1クラウニング部と前記第2クラウニング部との間に対応する位置に、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた第3クラウニング部が形成されており、
初期設定においては、前記第1クラウニング部と前記第3クラウニング部とに前記ベルトが巻き掛けられており、
前記回転ムラが前記条件に該当する場合に、前記制御部が前記モーターを逆回転させることで、前記第1クラウニング部から前記第2クラウニング部へと前記ベルトを移動させることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の駆動伝達装置と、
前記従動軸に接続された感光体ドラムと、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトを用いて駆動力を伝達する駆動伝達装置及び駆動伝達装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、像担持体として感光体ドラムが備えられている。感光体ドラムに駆動力を伝達する装置としては、モーター側の駆動軸又は駆動プーリーと感光体ドラム側の従動プーリーとに金属製のベルトが巻き掛けられた駆動伝達装置が一般的である。このような駆動伝達装置においては、長期間の使用によりベルトに傷や蛇行が生じることでベルトの耐久性や感光体ドラムの回転速度に悪影響が及び、ベルトが破断に至った場合には駆動力の伝達が不能になり、画像形成装置が使用できないダウンタイムが発生するという問題がある。
【0003】
そこで、従来、駆動伝達装置のベルト破断による予期せぬダウンタイムの発生を防ぐ技術が検討されている。例えば、特許文献1では、モーターを支持するユニットと、駆動シャフトが出力シャフトから離れる方向にユニットを付勢する付勢部材と、金属ベルトの破断に伴って駆動シャフトに連結され、駆動シャフトの回転駆動力を出力シャフトに伝達する補助伝達部と、を有する駆動装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-1059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で提案された駆動装置は、ベルト破断により張力が消失して駆動シャフトがプーリーから離間することで駆動シャフトを補助伝達部に連結させるように構成されている。そのため、ベルト破断前の或る期間にわたって回転ムラが大きくなった状態で画像形成が行われてしまう。また、駆動シャフトと補助伝達部との連結時に互いにギアが衝突するため、ギアの歯先が損傷するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、回転ムラを抑制するとともに、ベルトの破断による予期せぬダウンタイムの発生を防ぐことのできる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る駆動伝達装置は、正回転と逆回転が可能なモーターと、前記モーターによって駆動される駆動軸と、前記駆動軸に対して径方向に離間した位置に設けられた従動軸と、前記従動軸に設けられた従動プーリーと、前記駆動軸と前記従動プーリーとに巻き掛けられたベルトと、前記駆動軸に設けられた駆動ギアと、前記従動軸に設けられ、前記駆動ギアに噛み合わされない従動ギアと、前記従動ギアに噛み合わされたアイドルギアと、前記駆動ギアに噛み合わされた揺動ギアと、前記揺動ギアが前記アイドルギアに噛み合わされる第1位置と、前記揺動ギアが前記アイドルギアに噛み合わされない第2位置とを結ぶ、前記駆動軸を中心とする円弧上における前記揺動ギアの揺動を案内する案内部材と、前記モーターが正回転した場合に前記ベルトを介して前記従動プーリーに伝達される駆動力を前記従動軸に伝達し、前記モーターが逆回転した場合に前記ベルトを介して前記従動プーリーに伝達される駆動力の前記従動軸への伝達を遮断する伝達遮断機構と、前記従動軸の回転ムラを計測する計測部と、前記モーターを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記計測部により計測された前記回転ムラが前記回転ムラの限度を示す条件に該当しない場合に、前記モーターの正回転により前記揺動ギアを前記第2位置に揺動させることで、前記ベルト及び前記従動プーリーを介して前記従動軸に駆動力を伝達させ、前記回転ムラが前記条件に該当する場合に、前記モーターの逆回転により前記揺動ギアを前記第1位置に揺動させることで、前記駆動ギア、前記揺動ギア、前記アイドルギア及び前記従動ギアを介して前記従動軸に駆動力を伝達させることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る駆動伝達装置において、前記駆動軸の外周面には、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた第1クラウニング部と、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた、前記第1クラウニング部よりも径が大きい第2クラウニング部と、が形成されており、前記従動プーリーの外周面には、前記第1クラウニング部と前記第2クラウニング部との間に対応する位置に、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた第3クラウニング部が形成されており、初期設定においては、前記第1クラウニング部と前記第3クラウニング部とに前記ベルトが巻き掛けられており、前記回転ムラが前記条件に該当する場合に、前記制御部が前記モーターを逆回転させることで、前記第1クラウニング部から前記第2クラウニング部へと前記ベルトを移動させるように構成されてもよい。
【0009】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記のいずれかの駆動伝達装置と、前記従動軸に接続された感光体ドラムと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転ムラを抑制するとともに、ベルトの破断による予期せぬダウンタイムの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンターの内部構成を模式的に示す正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る駆動伝達装置の斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る案内部材の斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る制御部が実行する駆動伝達制御の手順を示す流れ図である。
図5A】本発明の第1実施形態に係る駆動ギアが正回転した場合の揺動ギアの動作を示す正面図である。
図5B】本発明の第1実施形態に係る駆動ギアが逆回転した場合の揺動ギアの動作を示す正面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る駆動ギアが正回転した場合の各部の動作を示す斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る駆動ギアが逆回転した場合の各部の動作を示す斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るモーターが正回転した場合のベルトの動作を示す左側面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るモーターが逆回転した場合のベルトの動作を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しつつ本発明の第1実施形態に係るプリンター1(画像形成装置の一例)及び駆動伝達装置31について説明する。
【0013】
まず、図1を参照して、プリンター1の全体の構成について説明する。図1はプリンター1の内部構成を模式的に示す正面図である。以下、図1における紙面手前側をプリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きはプリンター1を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0014】
プリンター1の本体部3には、シートSが収容される給紙カセット5と、給紙カセット5からシートSを送り出す給紙装置7と、シートSにトナー像を形成する画像形成部9と、トナー像をシートSに定着する定着装置11と、シートSを排出する排出装置13と、排出されたシートSが積載される排出トレイ15と、が備えられている。本体部3には、給紙装置7から、画像形成部9、定着装置11を経て排出装置13に至る搬送路17が形成されている。
【0015】
画像形成部9には、感光体ドラム19、帯電装置21、露光装置23、現像装置25、転写ローラー27及びクリーニング装置29が備えられている。帯電装置21、現像装置25、転写ローラー27、クリーニング装置29は、感光体ドラム19の周囲に回転方向に沿って帯電装置21、現像装置25、転写ローラー27、クリーニング装置29の順に配置されている。感光体ドラム19は、後述する駆動伝達装置31によって駆動され、図1における時計回り方向に回転する。
【0016】
給紙装置7によって給紙カセット5から給紙されたシートSは、搬送路17に沿って画像形成部9に搬送される。帯電装置21によって感光体ドラム19が所定の電位に帯電された後、露光装置23で露光されることで感光体ドラム19に潜像が書き込まれる。次に、現像装置25によって静電潜像が現像されることでトナー像が形成される。トナー像は、転写ローラー27によってシートSに転写され、定着装置11によってシートSに定着される。トナー像が定着されたシートSは排出装置13によって排出トレイ15に積載される。感光体ドラム19の表面に残留したトナーは、クリーニング装置29によって除去される。
【0017】
次に、図2及び3を参照して、駆動伝達装置31の構成について説明する。図2は、駆動伝達装置31の斜視図である。図3は、案内部材47の斜視図である。
【0018】
駆動伝達装置31は、正回転と逆回転が可能なモーター33と、モーター33によって駆動される駆動軸34と、駆動軸34に対して径方向に離間した位置に設けられた従動軸36と、従動軸36に設けられた従動プーリー37と、駆動軸34と従動プーリー37とに巻き掛けられたベルト39と、駆動軸34に設けられた駆動ギア41と、従動軸36に設けられ、駆動ギア41に噛み合わされない従動ギア49と、従動ギア49に噛み合わされたアイドルギア43と、駆動ギア41に噛み合わされた揺動ギア45と、揺動ギア45がアイドルギア43に噛み合わされる第1位置と、揺動ギア45がアイドルギア43に噛み合わされない第2位置とを結ぶ、駆動軸34を中心とする円弧上における揺動ギア45の揺動を案内する案内部材47と、モーター33が正回転した場合にベルト39を介して従動プーリー37に伝達される駆動力を従動軸36に伝達し、モーター33が逆回転した場合にベルト39を介して従動プーリー37に伝達される駆動力の従動軸36への伝達を遮断する伝達遮断機構53と、従動軸36の回転ムラFLを計測する計測部51と、モーター33を制御する制御部4と、を備え、制御部4は、計測部51により計測された回転ムラFLが予め定められた条件に該当しない場合に、モーター33の正回転により揺動ギア45を第2位置に揺動させることで、ベルト39及び従動プーリー37を介して従動軸36に駆動力を伝達させ、回転ムラFLが回転ムラFLの限度を示す条件に該当する場合に、モーター33の逆回転により揺動ギア45を第1位置に揺動させることで、駆動ギア41、揺動ギア45、アイドルギア43及び従動ギア49を介して従動軸36に駆動力を伝達させる。
【0019】
駆動伝達装置31は、感光体ドラム19の後方に設けられており、本体部3に固定されたハウジング(図示省略)に収容されている。なお、以下の例では、駆動軸34の下方に従動軸36が位置する姿勢で駆動伝達装置31が配置されるが、駆動伝達装置31は他の姿勢で配置されてもよい。
【0020】
[モーター、駆動軸]
モーター33は、前後方向を出力軸33Aの軸方向として配置され、ハウジングに固定されている。モーター33は、正回転と逆回転が可能である。駆動軸34は、モーター33の前方に出力軸33Aと一体に形成され、ベルト39を駆動する駆動プーリーの機能を兼ねている。
【0021】
[従動軸、従動プーリー、ベルト]
従動軸36は、前後方向を軸方向として、駆動軸34から下方に離間した位置に設けられている。従動軸36の前後両端部は、ハウジングに固定された軸受(図示省略)によって支持されている。従動プーリー37は、従動軸36に設けられている。従動プーリー37の外周面は、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされている(図示省略)。ベルト39は、シームレスの無端ベルトであり、非磁性の金属材料(例えば、SUS304)で形成され、駆動軸34と従動プーリー37とに巻き掛けられている。モーター33が正回転した場合に、駆動軸34及びベルト39を介して駆動力が伝達されることで従動プーリー37が正回転する。同様に、モーター33が逆回転した場合に、従動プーリー37が逆回転する。
【0022】
[駆動ギア、従動ギア、アイドルギア]
駆動ギア41は、駆動軸34のベルト39が巻き掛けられる部分よりも前側の部分に固定されている。従動ギア49は、駆動ギア41の下方において従動軸36に固定されている。駆動ギア41の歯先円と従動ギア49の歯先円とは互いに離間している。アイドルギア43は、前後方向を軸方向として従動ギア49と駆動ギア41との間の位置に設けられている。アイドルギア43は、従動ギア49に噛み合わされ、駆動ギア41には噛み合わされていない。アイドルギア43の回転軸43Aは、後述する案内部材47に支持されている。
【0023】
[揺動ギア、案内部材]
揺動ギア45は、前後方向を軸方向として駆動ギア41の右下方に設けられ、駆動ギア41に噛み合わされている。案内部材47(図3参照)は、互いに前後方向に対向する前側の第1側板471及び後側の第2側板472と、第1側板471の右端部と第2側板472の右端部とを連結する第3側板473と、第1側板471の下部と第2側板472の下部とを連結する底板474と、を備え、上部と左端部が開口している。
【0024】
第1側板471及び第2側板472には、アイドルギア43の回転軸43Aを支持する支持穴47Hが形成されている。支持穴47Hは、アイドルギア43の回転軸43Aの外周面に対応する円形の穴である。
【0025】
また、第1側板471及び第2側板472には、揺動ギア45の揺動を案内するガイド穴47Gが形成されている。ガイド穴47Gは、内側円弧部47Gi、外側円弧部47Go、第1端部47G1及び第2端部47G2を備える。内側円弧部47Giと外側円弧部47Goは、駆動軸34を中心とする円弧状に形成され、内側円弧部47Giの曲率半径が外側円弧部47Goの曲率半径よりも小さい。内側円弧部47Giと外側円弧部47Goは、駆動軸34の径方向における2点で揺動ギア45の回転軸45Aに接触することで、駆動軸34を中心とする円弧上の揺動ギア45の揺動を案内するとともに、駆動軸34の径方向の揺動ギア45の移動を規制する。
【0026】
第1端部47G1と第2端部47G2は、揺動ギア45の回転軸45Aの外周面に対応する半円形状に形成されている。第1端部47G1は、揺動ギア45がアイドルギア43に噛み合わされる第1位置において回転軸45Aに接触することで、駆動ギア41の正回転方向上流側への回転軸45Aの揺動を規制する。第2端部47G2は、揺動ギア45がアイドルギア43に噛み合わされない第2位置において回転軸45Aに接触することで、駆動ギア41の正回転方向下流側への回転軸45Aの揺動を規制する。
【0027】
上記の構成により、案内部材47は、揺動ギア45がアイドルギア43に噛み合わされる第1位置と、揺動ギア45がアイドルギア43に噛み合わされない第2位置とを結ぶ、駆動軸34を中心とする円弧上における揺動ギア45の揺動を案内する。駆動ギア41と揺動ギア45との噛み合いは、揺動ギア45の位置にかかわらず常に維持される。揺動ギア45が第1位置に位置する場合、駆動ギア41、揺動ギア45、アイドルギア43及び従動ギア49によりギア列が構成される。このギア列の減速比は、ベルト39と従動プーリー37による減速比と等しくなるように設定されている。
【0028】
なお、駆動ギア41、アイドルギア43、揺動ギア45及び従動ギア49は、平歯車でもよく、はすば歯車でもよい。
【0029】
[伝達遮断機構]
伝達遮断機構53は、例えば、ラチェットであり、従動プーリー37の内周面(又は従動軸36の外周面)に形成された鋸刃状の摺動面と、従動軸36の外周面(又は従動プーリー37の内周面)に設けられ、摺動面に向かって付勢される揺動可能な爪と、を備える(図示省略)。ラチェットは、モーター33の正回転によりベルト39を介して従動プーリー37に駆動力が伝達された場合に、爪の先端部が摺動面の谷の部分に噛み合うことで従動プーリー37から従動軸36に駆動力を伝達し、モーター33の逆回転によりベルト39を介して従動プーリー37に駆動力が伝達された場合に、爪の先端部が摺動面上を摺動することで従動プーリー37から従動軸36への駆動力の伝達を遮断する。
【0030】
[計測部]
計測部51は、例えば、光学式のロータリーエンコーダーであり、遮光板51D、フォトインタラプター51P及び演算部51Cを備える。遮光板51Dは、放射状に延びる複数のスリット(図示省略)が等間隔で形成された円板であり、従動軸36の従動ギア49よりも前方の部分に固定されている。フォトインタラプター51Pは、ハウジングに固定され、遮光板51Dの回転により交互にレベルが変化するパルス信号を出力する。演算部51Cは、例えば、パルス信号の周波数に比例した電圧を出力するF/V変換器と、出力された電圧の周波数を解析するFFTアナライザーと、を備え(図示省略)、フォトインタラプター51Pから出力されたパルス信号を解析して従動軸36の回転ムラFL(設定された回転数に対する実際の回転数の比率)を算出し、回転ムラFLを示すデータを制御部4に出力する。
【0031】
[制御部]
制御部4は、プロセッサーを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサーを用いる場合には、プロセッサーがメモリーに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサーとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。メモリーは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。メモリーには、プリンター1の各部の制御に用いられる制御プログラムが記憶される。
【0032】
[駆動伝達装置の動作]
次に、図4乃至7を参照して、駆動伝達装置31の動作について説明する。図4は、制御部4が実行する駆動伝達制御の手順を示す流れ図である。図5Aは、駆動ギア41が正回転した場合の揺動ギア45の動作を示す正面図である。図5Bは、駆動ギア41が逆回転した場合の揺動ギア45の動作を示す正面図である。図6は、駆動ギア41が正回転した場合の各部の動作を示す斜視図である。図7は、駆動ギア41が逆回転した場合の各部の動作を示す斜視図である。
【0033】
プリンター1に電源が投入されると、制御部4は、画像形成部9の動作を監視しながら、図4に示される駆動伝達制御を実行する。制御部4に備えられたEEPROMには、第1回転ムラカウンターN1、第2回転ムラカウンターN2、ページ数カウンターNP、回転方向フラグRF(いずれも初期値は0である。)が記憶されている。
【0034】
最初に、制御部4は、回転方向フラグRFが0であるか否かを判定する(ステップS01)。回転方向フラグRFが0の場合には、モーター33を正回転させるように電源が設定されている。後述するステップS19において回転方向フラグRFが1に書き換えられた場合には、モーター33を逆回転させるように電源の設定が切り替えられる。回転方向フラグRFが0でないと判定した場合には(ステップS01:NO)、制御部4は、駆動伝達制御を終了する。回転方向フラグRFが0であると判定した場合には(ステップS01:YES)、制御部4は、ステップS03の処理に移行する。
【0035】
ここで、回転方向フラグRFが0の場合の駆動伝達装置31の動作について説明する。回転方向フラグRFが0の場合には、制御部4は、モーター33を正回転させることで、駆動軸34及び駆動ギア41を正回転させる(図6のA方向、H方向)。図5Aに示される作用線A2は、駆動ギア41の基礎円41Bと揺動ギア45の基礎円45Bとの共通接線である。駆動ギア41のピッチ円41Pと揺動ギア45のピッチ円45Pとの共通接線T2と作用線A2とのなす角αが、圧力角である。正回転する駆動ギア41の歯は、揺動ギア45の歯に対して作用線A2の方向に駆動力を伝達する。この駆動力は、揺動ギア45をJ方向に回転させるとともに、揺動ギア45をK2方向に押す力としても作用する。揺動ギア45がK2方向に押されることで、揺動ギア45の回転軸45Aがガイド穴47Gの第2端部47G2に押し当てられる。その結果、揺動ギア45が、アイドルギア43に噛み合わされない第2位置で回転させられる。
【0036】
このとき、図6に示されるように、駆動軸34がベルト39をB方向に周回させることで、従動プーリー37がC方向に正回転させられ、伝達遮断機構53が従動プーリー37から従動軸36に駆動力を伝達することで、従動軸36がD方向に回転させられる。その結果、軸継手38を介して感光体ドラム19にE方向の駆動力が伝達される。ここで、従動軸36のD方向の回転により、従動ギア49がF方向に、アイドルギア43がG方向に、それぞれ回転させられるが、アイドルギア43が揺動ギア45と噛み合わされていないため、揺動ギア45の回転は従動軸36の駆動に影響を及ぼさない。
【0037】
ステップS03においては、制御部4は、露光装置23により感光体ドラム19に1ページ分の潜像が書き込まれたか否かを判定する。1ページ分の潜像が書き込まれていないと判定した場合には(ステップS03:NO)、制御部4は、ステップS03の処理を繰り返す。一方、1ページ分の潜像が書き込まれたと判定した場合には(ステップS03:YES)、制御部4は、ステップS05の処理に移行し、ページ数カウンターNPに1を加算する。
【0038】
次に、制御部4は、ページ数カウンターNPが100に到達したか否かを判定する(ステップS07)。ページ数カウンターNPが100に到達していないと判定した場合には(ステップS07:NO)、制御部4は、ステップS03以降の処理を繰り返す。一方、ページ数カウンターNPが100に到達したと判定した場合には(ステップS07:YES)、制御部4は、ステップS09の処理に移行し、計測部51で計測された回転ムラFLの大きさを判定する。具体的には、制御部4は、回転ムラFLが2%未満であると判定した場合には(ステップS09:FL<2%)、ステップS03以降の処理を繰り返し、回転ムラFLが2%以上3%未満であると判定した場合には(ステップS09:2%≦FL<3%)、ステップS11の処理に移行し、回転ムラFLが3%以上であると判定した場合には(ステップS09:3%≦FL)、ステップS15の処理に移行する。
【0039】
ステップS11においては、制御部4は、第1回転ムラカウンターN1に1を加算し、ステップS13の処理に移行して、第1回転ムラカウンターN1の値が5に達したか否かを判定する。第1回転ムラカウンターN1の値が5に達していないと判定した場合には(ステップS13:NO)、制御部4は、ステップS03以降の処理を繰り返す。一方、第1回転ムラカウンターN1の値が5に達したと判定した場合には(ステップS13:YES)、制御部4は、ステップS19の処理に移行し、回転方向フラグRFを1に書き換え、モーター33を逆回転させるように電源の設定を切り替えて、駆動伝達制御を終了する。
【0040】
一方、ステップS15においては、制御部4は、第2回転ムラカウンターN2に1を加算し、ステップS17の処理に移行して、第2回転ムラカウンターN2の値が3に達したか否かを判定する。第2回転ムラカウンターN2の値が3に達していないと判定した場合には(ステップS17:NO)、制御部4は、ステップS03以降の処理を繰り返す。一方、第2回転ムラカウンターN2の値が3に達したと判定した場合には(ステップS17:YES)、制御部4は、ステップS19の処理に移行し、回転方向フラグRFを1に書き換え、モーター33を逆回転させるように電源の設定を切り替えて、駆動伝達制御を終了する。
【0041】
なお、第1回転ムラカウンターN1、第2回転ムラカウンターN2、ページ数カウンターNP、回転方向フラグRFの値は、制御部4のEEPROMに記憶されているため、プリンター1の電源が切断された場合でも消去されず、次回の電力投入後に制御部4によって読み出され、読み出された値を初期値として駆動伝達制御が行われる。
【0042】
ここで、回転方向フラグRFが1の場合の駆動伝達装置31の動作について説明する。回転方向フラグRFが1の場合には、制御部4は、モーター33を逆回転させることで、駆動軸34及び駆動ギア41を逆回転させる(図6の-A方向、-H方向)。図5Aに示される作用線A1は、駆動ギア41の基礎円41Bと揺動ギア45の基礎円45Bとの共通接線である。駆動ギア41のピッチ円41Pと揺動ギア45のピッチ円45Pとの共通接線T1と作用線A1とのなす角αが、圧力角である。逆回転する駆動ギア41の歯は、揺動ギア45の歯に対して作用線A1の方向に駆動力を伝達する。この駆動力は、揺動ギア45を-J方向に回転させるとともに、揺動ギア45をK1方向に押す力としても作用する。揺動ギア45がK1方向に押されることで、揺動ギア45の回転軸45Aがガイド穴47Gの第1端部47G1に押し当てられる。その結果、揺動ギア45が、アイドルギア43に噛み合わされる第1位置で回転させられる。
【0043】
このとき、図7に示されるように、アイドルギア43がG方向に、従動ギア49がF方向に、それぞれ回転させられ、軸継手38を介して感光体ドラム19にE方向の駆動力が伝達される。ここで、駆動軸34がベルト39を-B方向に周回させることで、従動プーリー37には-C方向の駆動力が伝達されるが、伝達遮断機構53が従動プーリー37から従動軸36への駆動力の伝達を遮断するから、ベルト39及び従動プーリー37は空転しているに過ぎず、従動軸36の駆動には影響を及ぼさない。
【0044】
以上説明した本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、制御部4が、計測部51により計測された回転ムラFLが回転ムラFLの限度を示す条件に該当しない場合に、モーター33の正回転により揺動ギア45を第2位置に揺動させることで、ベルト39及び従動プーリー37を介して従動軸36に駆動力を伝達させ、回転ムラFLが回転ムラFLの限度を示す条件に該当する場合に、モーター33の逆回転により揺動ギア45を第1位置に揺動させることで、駆動ギア41、揺動ギア45、アイドルギア43及び従動ギア49を介して従動軸36に駆動力を伝達させる。また、伝達遮断機構53が、モーター33が正回転した場合にベルト39を介して従動プーリー37に伝達される駆動力を従動軸36に伝達し、モーター33が逆回転した場合にベルト39を介して従動プーリー37に伝達される駆動力の従動軸36への伝達を遮断する。
【0045】
つまり、本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、回転ムラFLが回転ムラFLの限度を示す条件に該当した場合には、駆動ギア41、揺動ギア45、アイドルギア43及び従動ギア49を介して従動軸36に駆動力が伝達されるから、回転ムラFLを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、ベルト39が破断する前に、駆動力の伝達経路がベルト39及び従動プーリー37から駆動ギア41、揺動ギア45、アイドルギア43及び従動ギア49に切り替えられるから、ベルト39の破断による予期せぬダウンタイムの発生を防ぐことができる。
【0047】
よって、本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、回転ムラFLを抑制するとともに、ベルト39の破断による予期せぬダウンタイムの発生を防ぐことができる。
【0048】
また、本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、2%以上3%未満の回転ムラFLが計測された回数が5回に達した場合、又は、3%以上の回転ムラFLが計測された回数が3回に達した場合に、モーター33を逆回転させる。言い換えれば、比較的大きな回転ムラFLが計測された場合には、比較的小さな回転ムラFLが計測された場合と比べて早期に駆動力の伝達経路を切り替えるから、本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、回転ムラFLが比較的大きい場合に早期に回転ムラFLを抑制することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、図8、9を参照して、本発明の第2実施形態に係るプリンター1(画像形成装置の一例)及び駆動伝達装置31について説明する。図8は、モーター33が正回転した場合のベルト39の動作を示す左側面図である。図9は、モーター33が逆回転した場合のベルト39の動作を示す左側面図である。
【0050】
第2実施形態に係る駆動伝達装置31は、第1実施形態に係る構成に加えて、以下の構成を備えている。駆動軸34の外周面には、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた第1クラウニング部341と、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた、第1クラウニング部341よりも径が大きい第2クラウニング部342と、が形成されている。従動プーリー37の外周面には、第1クラウニング部341と第2クラウニング部342との間に対応する位置に、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた第3クラウニング部373が形成されている。この例では、第1クラウニング部341、第2クラウニング部342がそれぞれ第3クラウニング部373よりも前側、後側に形成されているが、第1クラウニング部341、第2クラウニング部342がそれぞれ第3クラウニング部373よりも後側、前側に形成されていてもよい。
【0051】
初期設定(図8参照)においては、第1クラウニング部341と第3クラウニング部373とにベルト39が巻き掛けられている。第2実施形態においても第1実施形態と同様の駆動伝達制御が行われる。モーター33が正回転する場合、図8の矢印の方向にベルト39が周回させられる。第1クラウニング部341が第3クラウニング部373よりも後方に位置するため、第1クラウニング部341においては、ベルト39は右後方から左前方に向かって引き寄せられる(右は紙面奥側、左は紙面手前側)。一方、第3クラウニング部373においては、ベルト39は左前方から右後方に向かって引き寄せられる。ベルト39は、金属製であるため、面内方向には変形しにくい。そのため、ベルト39は、全体として、右側の部分が左側の部分よりも後方に偏った姿勢で駆動される。
【0052】
ステップS19において、制御部4がモーター33を逆回転させるように電源の設定を切り替えると、図8に示される第1クラウニング部341においては、駆動力が、ベルト39を右後方に引きずり下ろすように作用するため、ベルト39は、後方に移動させられ、図9に示されるように第2クラウニング部342により左前方から右後方に向かって引き寄せられる。
【0053】
第1実施形態においてモーター33が逆回転する場合、空転するベルト39が破断に至り、駆動伝達装置31の構成要素にベルト39が絡まって故障を引き起こすおそれがある。これに対して、本実施形態では、回転ムラFLが回転ムラFLの限度を示す条件に該当する場合に、制御部4がモーター33を逆回転させることで第1クラウニング部341から第2クラウニング部342へとベルト39を移動させる。第2クラウニング部342は第1クラウニング部341よりも径が大きいから、第2クラウニング部342においては、第1クラウニング部341よりも、ベルト39の曲げ応力が低減される。よって、本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、第1クラウニング部341と第2クラウニング部342を備えない場合と比べて、モーター33を逆回転させた場合にベルト39が破断しにくくなる。
【0054】
[変形例]
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0055】
上記実施形態の構成に加えて、ステップS19において、ベルト39の交換を要する旨を、制御部4が通信回線を通じてサービスセンターに送信するように構成されてもよい。この構成によれば、回転ムラFLが回転ムラFLの限度を示す条件に該当したときからベルト39が交換されるまでの時間を最小限にすることができるから、空転するベルト39が破断に至る可能性を低くすることができる。
【0056】
上記実施形態では、アイドルギア43の数が1個である例が示されたが、この構成に代えて、奇数個のアイドルギア43を有するギア列が設けられてもよい。
【0057】
上記実施形態では、2%以上3%未満の回転ムラFL、及び、3%以上の回転ムラFLが検知された回数をカウントする例が示されたが、回転ムラFLの大きさの閾値は他の値でもよい。また、上記実施形態では、2%以上3%未満の回転ムラFLが計測された回数が5回に達した場合、又は、3%以上の回転ムラFLが計測された回数が3回に達した場合に、モーター33を逆回転させる例が示されたが、閾値以上の回転ムラFLが計測された回数の閾値は他の値でもよい。
【0058】
上記実施形態では、検知された回数をカウントする回転ムラFLの閾値を2%以上3%未満、及び、3%以上の2通りに場合分けする例が示されたが、回転ムラFLの閾値を場合分けしなくてもよく、3通り以上に場合分けしてもよい。
【0059】
また、閾値以上の回転ムラFLが計測された回数に代えて、閾値以上の回転ムラFLが計測された時間の長さが閾値に達した場合に制御部4がモーター33を逆回転させるように構成されてもよい。
【0060】
上記実施形態では、伝達遮断機構53がラチェットである例が示されたが、伝達遮断機構53はワンウェイクラッチでもよい。また、上記実施形態では、計測部51が光学式のロータリーエンコーダーである例が示されたが、計測部51は、金属の歯車が回転したときの誘導起電力や渦電流のパルス信号を出力する電磁式のロータリーエンコーダーでもよい。また、計測部51が備える演算部51Cの機能は、制御部4に備えられていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 プリンター(画像形成装置)
4 制御部
19 感光体ドラム
31 駆動伝達装置
33 モーター
34 駆動軸
341 第1クラウニング部
342 第2クラウニング部
36 従動軸
37 従動プーリー
373 第3クラウニング部
39 ベルト
41 駆動ギア
43 アイドルギア
45 揺動ギア
45A 回転軸
47 案内部材
49 従動ギア
51 計測部
53 伝達遮断機構
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9