(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20231108BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231108BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/00 318
G03G21/00 386
G03G21/00 512
G03G15/02 102
(21)【出願番号】P 2019234901
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】森本 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】清水 保
(72)【発明者】
【氏名】田中 一徳
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 広佳
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-249896(JP,A)
【文献】特開平6-250504(JP,A)
【文献】特開2017-062435(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01364991(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層を有する像担持体と、
前記像担持体の前記表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体の前記表面を露光して前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光装置と、
現像剤を用いて前記静電潜像をトナー像に現像する現像装置と、
前記トナー像を前記像担持体の前記表面から被転写体へ転写する転写装置と、
前記像担持体の前記表面を清掃するクリーニング装置と
を有する画像形成部と、
前記画像形成部の動作を制御する制御部と
を備え、
前記帯電装置は、前記像担持体の前記表面に接触する帯電ローラーを有し、
前記クリーニング装置は、
前記像担持体の前記表面に摺接するクリーニングブレードと、
前記像担持体の前記表面に対する前記クリーニングブレードの線圧を調整する調整部と
を有し、
前記制御部は、前記クリーニングブレードの機能低下に起因した前記帯電ローラーの表層抵抗値の増大速度が第1速度以上であるときに、前記像担持体の前記表面に対する前記クリーニングブレードの線圧が増加するように前記調整部を制御する線圧調整制御を実施する、画像形成装置。
【請求項2】
前記帯電ローラーは、
導電性弾性体を含む基層と、
高抵抗コート層としての表層と
を有する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニングブレードはゴム製である、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記表層抵抗値が第1閾値よりも小であることを条件として、前記線圧調整制御を実施する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記表層抵抗値が前記第1閾値よりも小でなく、かつ前記クリーニングブレードの線圧調整が限界に達している場合には、前記帯電ローラー及び前記クリーニングブレードの交換を促す表示を出力する、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記帯電ローラーのインピーダンス測定の結果に基づいて前記表層抵抗値を算出する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像形成部による非画像形成時に前記帯電ローラーを静止させて前記インピーダンス測定を実施する、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記帯電ローラーの全体抵抗値に応じて、前記画像形成部による画像形成中の前記帯電ローラーへの印加電圧を制御する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記全体抵抗値が第2閾値よりも小であることを条件として、前記線圧調整制御を実施する、請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記帯電ローラーのインピーダンス測定の結果に基づいて前記全体抵抗値を算出する、請求項8又は請求項9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された画像形成装置は、帯電ローラーの抵抗値が上限値よりも大きくなると、帯電ローラーの交換を促す表示を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリーニングブレードの機能低下が生じると、残留トナーによる帯電ローラーの汚染が加速される。ところが、特許文献1に記載の画像形成装置では、クリーニングブレードの機能低下が帯電ローラーの寿命に与える影響が考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、帯電ローラーの短命化を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、画像形成部と、前記画像形成部の動作を制御する制御部とを備える。前記画像形成部は、像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、転写装置と、クリーニング装置とを有する。前記像担持体は、表面に感光層を有する。前記帯電装置は、前記像担持体の前記表面を帯電させる。前記露光装置は、前記帯電装置により帯電された前記像担持体の前記表面を露光して前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する。前記現像装置は、現像剤を用いて前記静電潜像をトナー像に現像する。前記転写装置は、前記トナー像を前記像担持体の前記表面から被転写体へ転写する。前記クリーニング装置は、前記像担持体の前記表面を清掃する。前記帯電装置は、前記像担持体の前記表面に接触する帯電ローラーを有する。前記クリーニング装置は、クリーニングブレードと、調整部とを有する。前記クリーニングブレードは、前記像担持体の前記表面に摺接する。前記調整部は、前記像担持体の前記表面に対する前記クリーニングブレードの線圧を調整する。前記制御部は、前記クリーニングブレードの機能低下に起因した前記帯電ローラーの表層抵抗値の増大速度が第1速度以上であるときに、前記像担持体の前記表面に対する前記クリーニングブレードの線圧が増加するように前記調整部を制御する線圧調整制御を実施する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、帯電ローラーの短命化を抑制することができる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】感光体ドラム及びその周辺部を拡大して示す図である。
【
図3】制御回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
まず、
図1を参照して、実施形態に係る画像形成装置100の構成について説明する。
図1は、画像形成装置100の構成の一例を示す図である。
【0011】
図1に示されるように、画像形成装置100は、電子写真方式のフルカラープリンターである。画像形成装置100は、給送部10、搬送部20、画像形成部30、トナー供給部60、及び排出部70を備える。
【0012】
給送部10は、複数のシートPを収容するカセット11を含む。給送部10は、カセット11から搬送部20へシートPを給送する。シートPは、例えば、紙製又は合成樹脂製である。搬送部20は、画像形成部30にシートPを搬送する。
【0013】
画像形成部30は、露光装置31、マゼンタ(M)ユニット32M、シアン(C)ユニット32C、イエロー(Y)ユニット32Y、ブラック(BK)ユニット32BK、中間転写ベルト33、二次転写ローラー34、及び定着装置35を含む。Mユニット32M、Cユニット32C、Yユニット32Y、及びBKユニット32BKの各々は、感光体ドラム50、帯電ローラー51、現像ローラー52、一次転写ローラー53、除電ランプ54、及びクリーナー55を含む。
【0014】
感光体ドラム50は、静電潜像及びトナー像を担持する回転ドラムである。感光体ドラム50は、「像担持体」の一例に相当する。
【0015】
帯電ローラー51は、感光体ドラム50の表面を帯電させる。帯電ローラー51は、「帯電装置」の一例に相当する。
【0016】
露光装置31は、帯電ローラー51により帯電された感光体ドラム50の表面を露光して、感光体ドラム50の表面に静電潜像を形成する。
【0017】
現像ローラー52は、現像剤を用いて静電潜像をトナー像に現像する。現像ローラー52は、「現像装置」の一例に相当する。
【0018】
一次転写ローラー53は、トナー像を感光体ドラム50の表面から中間転写ベルト33へ転写する。一次転写ローラー53は、「転写装置」の一例に相当する。中間転写ベルト33は、「被転写体」の一例に相当する。
【0019】
除電ランプ54は、感光体ドラム50の表面を除電する。
【0020】
クリーナー55は、感光体ドラム50の表面を清掃する。クリーナー55は、「クリーニング装置」の一例に相当する。
【0021】
中間転写ベルト33の外表面には、4色のトナー像が重畳して一次転写される。4色のトナー像は、マゼンタ色のトナー像、シアン色のトナー像、イエロー色のトナー像、及びブラック色のトナー像である。一次転写により、中間転写ベルト33の外表面に、カラートナー像が形成される。
【0022】
二次転写ローラー34は、中間転写ベルト33の外表面に形成されたカラートナー像をシートPに二次転写する。
【0023】
定着装置35は、シートPを加熱及び加圧して、カラートナー像をシートPに定着させる。カラートナー像が定着されたシートPは、排出部70に排出される。
【0024】
トナー供給部60は、マゼンタ色のトナーを収容するカートリッジ60M、シアン色のトナーを収容するカートリッジ60C、イエロー色のトナーを収容するカートリッジ60Y、及びブラック色のトナーを収容するカートリッジ60BKを含む。カートリッジ60M、カートリッジ60C、カートリッジ60Y、及びカートリッジ60BKは、それぞれ、Mユニット32M、Cユニット32C、Yユニット32Y、及びBKユニット32BKの現像ローラー52にトナーを供給する。
【0025】
次に、
図1及び
図2を参照して、感光体ドラム50及びその周辺部について説明する。
図2は、感光体ドラム50及びその周辺部を拡大して示す図である。
【0026】
図2に示されるように、画像形成部30は、中間転写ベルト33、感光体ドラム50、帯電ローラー51、現像ローラー52、一次転写ローラー53、除電ランプ54、及びクリーナー55を含む。画像形成装置100は、第1スイッチ56、接触電極57、第2スイッチ58、電圧源85、及び電流計86を更に備える。
【0027】
感光体ドラム50は、導電性基体501と、感光層502とを有する。感光層502の表面は、感光体ドラム50の周面50aである。感光体ドラム50は、回転軸50Xの回りに回転する。感光体ドラム50の周りには、感光体ドラム50の回転方向Rの上流側から、帯電ローラー51と、現像ローラー52と、一次転写ローラー53と、除電ランプ54と、クリーナー55とが、記載された順に配置されている。感光体ドラム50の回転軸50Xは、第1スイッチ56を介して接地されている。
【0028】
クリーナー55は、クリーニングブレード81と、トナーシール82と、調整部83とを有する。クリーニングブレード81は、感光体ドラム50の周面50aに摺接して、感光体ドラム50の周面50aに残留したトナーを回収する。クリーニングブレード81は、ゴム製である。トナーシール82は、クリーニングブレード81によって回収されたトナーの飛散を抑制する。調整部83は、感光体ドラム50の周面50aに対するクリーニングブレード81の線圧L[N/m]を調節する。
【0029】
帯電ローラー51は、感光体ドラム50の周面50aに接触する。帯電ローラー51は、導電性シャフト511と、基層512と、表層513とを有する。導電性シャフト511は、金属製のシャフトである。基層512は、導電性ゴム弾性体を含み、導電性シャフト511の表面を被覆する。表層513は、基層512の表面を被覆して、高抵抗コート層として機能する。表層513の表面は、帯電ローラー51の周面51aである。帯電ローラー51は、回転軸51Xの回りに回転する。帯電ローラー51の回転軸51Xには、電圧源85及び電流計86が接続されている。電圧源85の一端は、接地されている。
【0030】
接触電極57は、帯電ローラー51の周面51aに接触する。接触電極57は、金属製のシャフト形状の電極である。接触電極57は、回転軸57Xの回りに回転する。接触電極57の回転軸57Xは、第2スイッチ58を介して接地されている。
【0031】
次に、
図1~
図3を参照して、画像形成装置100の制御回路の構成について説明する。
図3は、画像形成装置100の制御回路の構成の一例を示すブロック図である。
【0032】
図3に示されるように、画像形成装置100は、制御部90と、記憶部95とを更に備える。
【0033】
記憶部95は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置を含む。記憶部95は、種々のコンピュータープログラムと、種々のデータとを記憶する。
【0034】
制御部90は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーを含む。制御部90は、記憶部95に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、画像形成装置100の各要素の動作を制御する。具体的には、制御部90は、画像形成部30、第1スイッチ56、第2スイッチ58、調整部83、電圧源85、及び電流計86の各々の動作を制御する。
【0035】
次に、
図1~
図4を参照して、制御部90の処理について説明する。
図4は、制御部90の処理の一例を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS101:
図4に示されるように、制御部90は、交流インピーダンス法によって帯電ローラー51の電気特性を解析するため、帯電ローラー51のインピーダンス測定を実施する。インピーダンス測定は、画像形成部30による非画像形成時に、感光体ドラム50、帯電ローラー51、及び接触電極57がいずれも静止した状態で実施される。制御部90は、第1スイッチ56をオフさせ、かつ第2スイッチ58をオンさせる。また、制御部90は、電圧源85が所定の範囲で変化する周波数と、一定の振幅とを有する交流電圧を発生するように、電圧源85を制御する。電流計86は、電圧源85、帯電ローラー51、接触電極57、第2スイッチ58、及び接地を含む回路に流れる交流電流の振幅及び位相を測定する。制御部90は、電流計86により得られた交流電流の振幅及び位相の情報に基づいて、帯電ローラー51のインピーダンスに関する情報を取得する。
【0037】
インピーダンス測定における交流電圧の周波数範囲は、1Hz以上、100kHz以下が好ましい。電荷移動過程と物質移動過程との各々のインピーダンス成分の抽出が可能になるからである。交流電圧のピーク・ピーク間の振幅の範囲は、1V以上、100V以下が好ましい。電圧源85は、交流電圧に直流成分を加えてもよい。直流成分の大きさの範囲は、1V以上、100V以下が好ましい。帯電ローラー51に与える電圧が低すぎるとインピーダンス測定のSN比が低下してしまい、帯電ローラー51に与える電圧が高すぎると帯電ローラー51の劣化を促進させてしまう。ステップS101の処理が完了すると、制御部90の処理がステップS103へ進む。
【0038】
ステップS103:制御部90は、帯電ローラー51のインピーダンス測定の結果に基づいて、表層抵抗値Rs[Ω]及び全体抵抗値Rw[Ω]を算出する。そのため、制御部90は、Cole-ColeプロットのグラフをRC並列等価回路にフィッティングする。その結果、表層抵抗値Rsとともに基層抵抗値Rb[Ω]が得られる。全体抵抗値Rwは、Rw=Rs+Rbに基づいて算出される。フィッティングには、LM(Levenberg Marquardt)法のような非線形最小二乗法が適用可能である。Warburgインピーダンスを考慮に入れれば、より良好なフィッティング結果が得られる。ステップS103の処理が完了すると、制御部90の処理がステップS105へ進む。
【0039】
ステップS105:制御部90は、表層抵抗値Rsが第1閾値Rt1[Ω]以上であるか否かを判定する。表層抵抗値Rsが第1閾値Rt1以上であると制御部90が判定した場合(ステップS105でYes)には、制御部90の処理がステップS117へ進む。表層抵抗値Rsが第1閾値Rt1よりも小であると制御部90が判定した場合(ステップS105でNo)には、制御部90の処理がステップS107へ進む。第1閾値Rt1は、製品出荷時に予め設定された固定値でもよいし、ユーザーの使用状況(例えば、温湿度、印刷枚数)に応じて補正される変動値でもよい。
【0040】
ステップS107:制御部90は、全体抵抗値Rwに応じて、画像形成部30による画像形成中の帯電ローラー51への印加電圧、すなわち感光体ドラム50の帯電に供される直流電圧を制御する。直流電圧の印加は、感光体ドラム50、帯電ローラー51、及び接触電極57がいずれも回転している状態で実施される。制御部90は、第1スイッチ56をオンさせ、かつ第2スイッチ58をオフさせる。また、制御部90は、電圧源85が所定の大きさの直流電圧を発生するように、電圧源85を制御する。直流電圧は、全体抵抗値Rwが増大するにつれて、より大きい値に設定される。電圧源85は、直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を発生してもよい。
【0041】
帯電ローラー51の全体抵抗値Rwが増大すると、帯電ローラー51への同一の印加電圧に対して感光体ドラム50への供給電流が減少する。感光体ドラム50への供給電流が減少すると、感光体ドラム50が帯電不足になり、濃度不良、濃度ムラのような画像不良が発生するおそれが生じる。そこで、帯電ローラー51の全体抵抗値Rwに応じて帯電ローラー51への印加電圧を制御することで、良好な画像品質が維持される。ステップS107の処理が完了すると、制御部90の処理がステップS109へ進む。
【0042】
ステップS109:制御部90は、全体抵抗値Rwが第2閾値Rt2[Ω]以上であるか否かを判定する。全体抵抗値Rwが第2閾値Rt2以上であると制御部90が判定した場合(ステップS109でYes)には、制御部90の処理がステップS117へ進む。全体抵抗値Rwが第2閾値Rt2よりも小であると制御部90が判定した場合(ステップS109でNo)には、制御部90の処理がステップS111へ進む。第2閾値Rt2は、製品出荷時に予め設定された固定値でもよいし、ユーザーの使用状況(例えば、温湿度、印刷枚数)に応じて補正される変動値でもよい。
【0043】
ステップS111:制御部90は、表層抵抗値Rsの増大速度Q[Ω/時間]を算出する。増大速度Qは、単位時間あたりの表層抵抗値Rsの増分である。クリーニングブレード81の機能低下が生じると、帯電ローラー51の汚染が加速される。したがって、増大速度Qは、クリーニングブレード81の機能低下に起因して増大する。ステップS111の処理が完了すると、制御部90の処理がステップS113へ進む。
【0044】
ステップS113:制御部90は、増大速度Qが第1速度Qt[Ω/時間]以上であるか否かを判定する。増大速度Qが第1速度Qt以上であると制御部90が判定した場合(ステップS113でYes)には、制御部90の処理がステップS115へ進む。増大速度Qが第1速度Qtよりも小であると制御部90が判定した場合(ステップS113でNo)には、制御部90の処理がステップS101へ戻る。第1速度Qtは、例えば、クリーニングブレード81の機能低下がない場合の表層抵抗値Rsの増大速度Qの1.5倍に設定される。
【0045】
ステップS115:制御部90は、クリーニングブレード81の線圧調整のための調整部83を制御する線圧調整制御を実施する。調整部83は、表層抵抗値Rsの増大速度Qが大きくなるにつれて感光体ドラム50へのクリーニングブレード81の食い込み量が増大するように、感光体ドラム50の周面50aに対するクリーニングブレード81の線圧Lを調整する。
【0046】
クリーニングブレード81のエッジは、常に感光体ドラム50の周面50aに当接している。特に、クリーニングブレード81が長期間にわたって高温環境に放置されることで、クリーニングブレード81を構成するゴムのへたりが早期に生じ得る。その結果、クリーニングブレード81の機能低下が生じ、トナーの外添剤などのすり抜けが多くなる。また、外添処方の非専用品トナーが使用されることで、クリーニングブレード81の機能低下が促進される。そこで、制御部90がクリーニングブレード81の線圧調整制御を実施することで、クリーニングブレード81の機能低下が補償される。したがって、クリーニングブレード81の機能低下が継続する場合に比べて、帯電ローラー51の短命化が抑制される。ステップS115の処理が完了すると、制御部90の処理がステップS101へ戻る。
【0047】
ステップS117:制御部90は、クリーニングブレード81の線圧調整が限界に達したか否かを、例えばステップS115におけるクリーニングブレード81の線圧調整の回数に応じて判定する。クリーニングブレード81の線圧調整が限界に達したと制御部90が判定した場合(ステップS117でYes)には、制御部90の処理がステップS121へ進む。クリーニングブレード81の線圧調整が未だ限界に達していないと制御部90が判定した場合(ステップS117でNo)には、制御部90の処理がステップS119へ進む。
【0048】
ステップS119:制御部90は、帯電ローラー51の交換を促す表示を出力する。出力された表示は、不図示の液晶表示器を介してユーザーに提示される。ステップS119の処理が完了すると、制御部90の処理が終了する。
【0049】
ステップS121:制御部90は、帯電ローラー51及びクリーニングブレード81の交換を促す表示を出力する。出力された表示は、不図示の液晶表示器を介してユーザーに提示される。ステップS121の処理が完了すると、制御部90の処理が終了する。
【0050】
実施形態によれば、帯電ローラー51の短命化を抑制することができる画像形成装置100が提供される。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を用いて本発明を更に説明する。なお、本発明は、実施例の範囲に何ら限定されない。
【0052】
図5は、実施例1~実施例8と、比較例1~比較例7とを示す図である。
【0053】
(通電試験)
帯電ローラーに接触電極を接触させた状態で、帯電ローラーを回転線速250mm/秒で感光体ドラムに従動回転させた。帯電ローラーを定電流120μAの直流電源に接続し、各色20%の印字率で通電エージングを実施した。
【0054】
(交流インピーダンス法)
帯電ローラーのインピーダンス測定の各周波数において5周期分の電流データを取得し、実効電流値と電流位相とを測定した。インピーダンス測定電圧は、DC5V+AC1Vであった。インピーダンス測定角周波数ωは、ω=10n[Hz](n=1、1.2、1.4、・・・、5)であった。フィッティング手法としてLM法を用いた。フィッティングの繰り返し演算回数が100に達した時点で計算を終了して、パラメータ推定値を決定した。
【0055】
(クリーニングブレードの機能低下判定方法)
フィッティングにより算出した表層抵抗値Rsから、表層抵抗値Rsの増大速度Qを算出した。増大速度Qが通常時の1.5倍以上になれば、クリーニングブレードの機能低下が生じたと判定した。通電時間として50時間が経過する毎に、クリーニングブレードの機能低下判定を行った。線圧調整ありの場合には、クリーニングブレードの線圧LをステップS115の手法で増加させた。そして、
図4のフローチャートに基づき、交換表示までの時間を評価した(
図5参照)。
【0056】
(画像評価方法)
通電時間として300時間が経過した時点で、ハーフトーン画像をシート上に形成した。ハーフトーン画像を目視で観察し、帯電ムラに起因した画像不良レベルを評価した(
図5参照)。
【0057】
<実施例1>
・感光体:アモルファスシリコンドラム
・帯電ローラー:エピクロルヒドリンゴム(基層主成分)+第4級アンモニウム塩(イオン導電剤)
・クリーニングブレード:ウレタンゴム
・接触電極:SUSローラー
・クリーニングブレード初期状態:標準
・クリーニングブレード線圧調整:あり
・帯電ローラー電圧制御:なし
・トナー:専用品
【0058】
<実施例2>
実施例2は、非専用品のトナーを使用した点が実施例1と異なる。
【0059】
<実施例3>
実施例3は、クリーニングブレード初期状態が「高温放置」である点が実施例1と異なる。高温放置とは、標準的なクリーニングブレードを高温高湿(38℃、80%RH)環境で感光体に当接させた状態で1ヶ月間放置することを示す。
【0060】
<実施例4>
実施例4は、非専用品のトナーを使用した点が実施例3と異なる。
【0061】
<実施例5>
実施例5は、帯電ローラー電圧制御ありの点が実施例1と異なる。
【0062】
<実施例6>
実施例6は、非専用品のトナーを使用した点が実施例5と異なる。
【0063】
<実施例7>
実施例7は、クリーニングブレード初期状態が高温放置である点が実施例5と異なる。
【0064】
<実施例8>
実施例8は、非専用品のトナーを使用した点が実施例7と異なる。
【0065】
<比較例1>
比較例1は、クリーニングブレード線圧調整なしの点が実施例1と異なる。
【0066】
<比較例2>
比較例2、非専用品のトナーを使用した点が比較例1と異なる。
【0067】
<比較例3>
比較例3は、クリーニングブレード初期状態が高温放置である点が比較例1と異なる。
【0068】
<比較例4>
比較例4は、非専用品のトナーを使用した点が比較例3と異なる。
【0069】
<比較例5>
比較例5は、帯電ローラー電圧制御ありの点が比較例1と異なる。
【0070】
<比較例6>
比較例6は、非専用品のトナーを使用した点が比較例5と異なる。
【0071】
<比較例7>
比較例7は、クリーニングブレード初期状態が高温放置である点が比較例5と異なる。
【0072】
実施例1~実施例8によれば、クリーニングブレードの線圧調整を実施することで、比較例1~比較例7に比べて帯電ローラーの交換表示までの時間を延長することができた。また、実施例5~実施例8によれば、帯電ローラーへの印加電圧を制御することで、実施例1~実施例4に比べて画像品質が維持されることが確認できた。
【0073】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態及び実施例について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態及び実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解し易くするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。また、上記の実施形態及び実施例で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、実施形態では、画像形成装置100がフルカラープリンターであったが、これに限られない。画像形成装置100は、複写機、ファクシミリ、複合機のいずれでもよい。
【0075】
また、実施形態では、ステップS105でNo判定がなされた場合に、ステップS107及びステップS109の処理を制御部90が必ず実行したが、これに限られない。ユーザーの選択に応じて、ステップS107及びステップS109の処理の実行又は不実行が切り換えられてもよい。ステップS105でNo判定がなされた場合に、制御部90の処理が直接ステップS111へ進むことも可能である。
【0076】
また、実施形態では、接触電極57がシャフト形状の金属電極であったが、これに限られない。接触電極57は、導電性材料が配合された、ゴム又はスポンジのような弾性体製の電極でもよい。弾性体製の接触電極57に、帯電ローラー51のクリーニング部材としての機能を持たせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、画像形成装置の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
30 画像形成部
31 露光装置
33 中間転写ベルト(被転写体)
50 感光体ドラム(像担持体)
51 帯電ローラー(帯電装置)
52 現像ローラー(現像装置)
53 一次転写ローラー(転写装置)
55 クリーナー(クリーニング装置)
81 クリーニングブレード
83 調整部
90 制御部
100 画像形成装置
501 導電性基体
502 感光層
511 導電性シャフト
512 基層
513 表層
P シート
Q 表層抵抗値の増大速度
Rs 表層抵抗値
Rw 全体抵抗値