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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】産業車両のバッテリ自動補水装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/60 20210101AFI20231108BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20231108BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231108BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20231108BHJP
【FI】
H01M50/60
H01M10/42 Z
H01M10/48 301
B60K1/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020001285
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021111477
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】牛田 博之
(72)【発明者】
【氏名】各務 弘憲
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-210312(JP,A)
【文献】特開2002-358950(JP,A)
【文献】実開昭63-052262(JP,U)
【文献】特開2003-272711(JP,A)
【文献】特開2021-097479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/60
H01M 10/42
H01M 10/48
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両の車体に搭載されるバッテリと、
前記車体に搭載され、バッテリ精製水を貯留するバッテリ精製水タンクと、
前記バッテリと前記バッテリ精製水タンクとに接続され、バッテリ精製水を通す給水管と、
前記バッテリ精製水タンクのバッテリ精製水を前記バッテリへ給水する給水ポンプと、
前記給水ポンプを駆動するポンプモータと、
前記ポンプモータを制御するコントローラと、を備えた産業車両のバッテリ自動補水装置において、
前記コントローラと接続され、前記給水管におけるバッテリ精製水の給水圧力を検出する圧力検出器と、を備え、
前記コントローラは、
前記給水圧力が予め設定された第1閾値を超えるとき、前記バッテリのバッテリ液面が規定水位に達していると判断し、前記ポンプモータの駆動を停止し、
前記給水圧力が、前記第1閾値より低い予め設定された第2閾値未満のとき、前記ポンプモータが異常により駆動停止中又はバッテリ精製水が異常により漏洩中であると判断し、
前記給水圧力が、前記第1閾値より高い予め設定された第3閾値以上のとき、前記ポンプモータが異常により運転停止されないと判断することを特徴とする産業車両のバッテリ自動補水装置。
【請求項2】
産業車両の車体に搭載されるバッテリと、
前記車体に搭載され、バッテリ精製水を貯留するバッテリ精製水タンクと、
前記バッテリと前記バッテリ精製水タンクとに接続され、バッテリ精製水を通す給水管と、
前記バッテリ精製水タンクのバッテリ精製水をバッテリへ給水する給水ポンプと、
前記給水ポンプを駆動するポンプモータと、
前記ポンプモータを制御するコントローラと、を備えた産業車両のバッテリ自動補水装置において、
前記コントローラと接続され、前記給水管におけるバッテリ精製水の給水圧力を検出する圧力検出器と、を備え、
前記コントローラは、
前記給水圧力が予め設定された第1閾値を超えるとき、前記バッテリのバッテリ液面が規定水位に達していると判断し、
前記給水圧力が、前記第1閾値より高い予め設定された第3閾値以上のとき、前記ポンプモータが異常により運転停止されないと判断することを特徴とする産業車両のバッテリ自動補水装置。
【請求項3】
前記ポンプモータと前記コントローラとを接続する信号線と、
前記信号線に設けられる常閉接点を有する開閉器と、を備え、
前記コントローラは、前記給水圧力が前記第3閾値以上のとき、前記常閉接点を開くことを特徴とする請求項1又は2記載の産業車両のバッテリ自動補水装置。
【請求項4】
前記コントローラと接続され、前記コントローラの判断を報知する報知器を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の産業車両のバッテリ自動補水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業車両の車体に搭載されたバッテリにバッテリ精製水を自動的に補給することが可能な産業車両のバッテリ自動補水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両のバッテリ自動補水装置の従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたバッテリ式産業車両のバッテリ液補水装置が知られている。特許文献1に開示されたバッテリ式産業車両のバッテリ液補水装置は、走行用もしくは荷役作業用の電源としてバッテリを搭載し、バッテリ液が貯留された補水タンクおよび電動式の補水ポンプを備えている。バッテリの各セルの補水栓と補水タンクとは補水ポンプおよび配管を介して相互に接続されている。バッテリ液補水装置は、充電中はバッテリへ補水液を供給する補水回路を作動可能とする補水作動手段と、補水回路の作動を終了させる補水終了手段と、を備えている。
【0003】
補水作動手段は、バッテリへの充電器が外部の商用電源に接続され、充電器に付属する充電スイッチが押されたときに連動して閉じられるマグネットスイッチを備える。マグネットスイッチは、充電スイッチが押されるとオン作動し、充電が終了するとオフされる。補水終了手段は、マグネットスイッチと直列に接続された常時オンのタイマスイッチを備え、補水回路の圧力を検出する圧力スイッチと、タイマスイッチをオフ作動させる駆動回路を備える。
【0004】
充電器の充電スイッチをオン操作すると、バッテリの充電が開始される。充電回数がN回目である場合には、電動モータが回転して補水ポンプを駆動する。補水が必要なセルに止水弁を介して補水され、止水弁はセル内に補水液が供給されて液面レベルが規定値に達すると閉じる。各セルの止水弁が閉じて配管の内圧が上昇すると圧力スイッチが作動して駆動回路が作動し、電動モータ、補水ポンプが停止すると、補水作動は終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-272711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された産業車両のバッテリ自動補水装置では、圧力スイッチを用いてバッテリのバッテリ液の液面が規定値に達したか否かを判別できるものの、給水時におけるポンプモータの異常又は補水液であるバッテリ精製水の漏れを検知できないという問題がある。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、バッテリ精製水の給水時におけるポンプモータの異常又はバッテリ精製水の漏れを検知できる産業車両のバッテリ自動補水装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、産業車両の車体に搭載されるバッテリと、前記車体に搭載され、バッテリ精製水を貯留するバッテリ精製水タンクと、前記バッテリと前記バッテリ精製水タンクとに接続され、バッテリ精製水を通す給水管と、前記バッテリ精製水タンクのバッテリ精製水を前記バッテリへ給水する給水ポンプと、前記給水ポンプを駆動するポンプモータと、前記ポンプモータを制御するコントローラと、を備えた産業車両のバッテリ自動補水装置において、前記コントローラと接続され、前記給水管におけるバッテリ精製水の給水圧力を検出する圧力検出器と、を備え、前記コントローラは、前記給水圧力が予め設定された第1閾値を超えるとき、前記バッテリのバッテリ液面が規定水位に達していると判断し、前記ポンプモータの駆動を停止し、前記給水圧力が、前記第1閾値より低い予め設定された第2閾値未満のとき、前記ポンプモータが異常により駆動停止中又はバッテリ精製水が異常により漏洩中であると判断し、前記給水圧力が、前記第1閾値より高い予め設定された第3閾値以上のとき、前記ポンプモータが異常により運転停止されないと判断することを特徴とする。
【0009】
本発明では、コントローラは、圧力検出器により検出された検出圧力が予め設定された第1閾値を超えるとき、バッテリのバッテリ液面が規定水位に達していると判別し、ポンプモータの駆動を停止する。また、コントローラは、給水圧力が、第1閾値より低い予め設定された第2閾値未満のとき、ポンプモータが異常により駆動停止中又はバッテリ精製水が異常により漏洩中であると判断する。その結果、バッテリ精製水の自動給水を完了できるほか、ポンプモータが異常により駆動停止中であるか、あるいは、バッテリ精製水の給水管から漏洩中であるかを把握することができる。
【0010】
また、給水圧力が第1閾値を超えて第3閾値以上になると、コントローラはポンプモータが異常により運転停止されないと判断する。その結果、ポンプモータが運転停止されないという異常を把握することができる。
【0011】
また、本発明では、産業車両の車体に搭載されるバッテリと、前記車体に搭載され、バッテリ精製水を貯留するバッテリ精製水タンクと、前記バッテリと前記バッテリ精製水タンクとに接続され、バッテリ精製水を通す給水管と、前記バッテリ精製水タンクのバッテリ精製水をバッテリへ給水する給水ポンプと、前記給水ポンプを駆動するポンプモータと、前記ポンプモータを制御するコントローラと、を備えた産業車両のバッテリ自動補水装置において、前記コントローラと接続され、前記給水管におけるバッテリ精製水の給水圧力を検出する圧力検出器と、を備え、前記コントローラは、前記給水圧力が予め設定された第1閾値を超えるとき、前記バッテリのバッテリ液面が規定水位に達していると判断し、前記給水圧力が、前記第1閾値より高い予め設定された第3閾値以上のとき、前記ポンプモータが異常により運転停止されないと判断することを特徴とする。
【0012】
本発明では、コントローラは、圧力検出器により検出された給水圧力が予め設定された第1閾値を超えるとき、バッテリのバッテリ液面が規定水位に達していると判別し、ポンプモータの駆動を停止する。また、コントローラは、給水圧力が、第1閾値より高い予め設定された第3閾値以上のとき、ポンプモータが異常により運転停止されないと判断する。その結果、バッテリ精製水の自動給水を完了できるほか、ポンプモータが運転停止されない異常を把握することができる。
【0013】
また、上記の産業車両のバッテリ自動補水装置において、前記ポンプモータと前記コントローラとを接続する信号線と、前記信号線に設けられる常閉接点を有する開閉器と、を備え、前記コントローラは、前記給水圧力が前記第3閾値以上のとき、前記常閉接点を開く構成としてもよい。
この場合、給水圧力が前記第3閾値以上のとき、コントローラは常閉接点を開くので、ポンプモータが異常により運転停止されない場合でもポンプモータの運転を直ちに停止することができる。
【0014】
また、上記の産業車両のバッテリ自動補水装置において、前記コントローラと接続され、前記コントローラの判断を報知する報知器を備える構成としてもよい。
この場合、コントローラの判断が報知器により報知されるので、コントローラの判断をより把握し易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バッテリ精製水の給水時におけるポンプモータの異常又はバッテリ精製水の漏れを検知できる産業車両のバッテリ自動補水装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係るバッテリ自動補水装置を搭載する産業車両としてのフォークリフトの側面図である。
図2】第1の実施形態に係るバッテリ自動補水装置の概略構成図である。
図3】バッテリ自動補水装置が備えるコントローラの判別の手順を示すフロー図である。
図4】バッテリ自動補水装置が備える給水管における正常時の圧力と時間との関係を示すグラフ図である。
図5】給水管における異常時の圧力と時間との関係を示すグラフ図である。
図6】第2の実施形態に係るバッテリ自動補水装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る産業車両のバッテリ自動補水装置について図面を参照して説明する。本実施形態の産業車両はバッテリ式フォークリフトである。本実施形態ではバッテリ式フォークリフトのバッテリ自動補水装置について例示して説明する。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、バッテリ式フォークリフトのオペレータが運転席の運転シートに着座して、バッテリ式フォークリフトの前進側を向いた状態を基準として示す。
【0018】
まず、バッテリ式フォークリフト(以下、単に「フォークリフト」と表記する。)について説明する。図1に示すフォークリフト10は、車体11の前部に荷役装置12を備えている。車体11の中央付近には運転席13が設けられている。車体11の前部には前輪としての駆動輪14が設けられ、車体11の後部には後輪としての操舵輪15が設けられている。車体11の後部にはカウンタウエイト16が備えられており、カウンタウエイト16は車両重量の調整と車体11における重量バランスを図るためのものである。
【0019】
車体11における運転席13の下方にはバッテリ17が収容されている。バッテリ17は鉛蓄電池である。バッテリ17の電力により駆動する走行モータ18が車体11に備えられている。走行モータ18と駆動輪14との間には、走行モータ18の走行駆動力を駆動輪14へ伝達する動力伝達機構(図示せず)が設けられている。
【0020】
車体11における運転席13には、オペレータが着座可能な運転シート19が設けられている。運転シート19は、車体11に開閉可能に設けられたシートスタンド20上に配置されている。運転シート19の前方には、操舵のためのステアリングホイール21が設けられている。運転席13の床にはアクセルペダル22が設けられており、アクセルペダル22はフォークリフト10の車速を調整するためのものである。フォークリフト10は、オペレータによるアクセルペダル22の踏み込み量に応じた車速となるように走行モータ18の駆動を制御する。
【0021】
車体11には、フォークリフト10の各部の電気的制御を行うコントローラ23が搭載している。コントローラ23は、カウンタウエイト16の前方に位置し、シートスタンド20により覆われている。また、次に説明するフォークリフト10のバッテリ自動補水装置(以下、単に「バッテリ自動補水装置」)25が備えるバッテリ精製水タンク26が車体11の内部に収容されるバッテリ17と車体11の上部に備えられる運転シート19との間に設置されている。
【0022】
次に、バッテリ自動補水装置25について説明する。バッテリ自動補水装置25は、予め設定された作動条件を満たすとき、バッテリ精製水をバッテリ17へ自動的に補給する装置である。図2に示すように、バッテリ自動補水装置25は、バッテリ精製水タンク26と、給水管27と、給水ポンプ28と、ポンプモータ29と、コントローラ23と、表示器30と、圧力センサ31と、を備えている。
【0023】
バッテリ精製水タンク26は、バッテリ精製水を貯留するためのタンクであり、本実施形態では、車体11の内部に収容されている。したがって、バッテリ精製水タンク26におけるバッテリ精製水の水位(液面レベル)を目視することは不可能である。本実施形態では、バッテリ精製水タンク26は、バッテリ17に対するバッテリ精製水の給水を数回程度行える容量を有している。バッテリ精製水タンク26に貯留されるバッテリ精製水は純水である。バッテリ精製水をバッテリ精製水タンク26に補充する場合は、シートスタンド20を起立させることで、バッテリ精製水タンク26にバッテリ精製水を補充できる状態となる。
【0024】
給水管27は、バッテリ17とバッテリ精製水タンク26と接続する配管である。図示はされないが、給水管27はバッテリ17の各セルにバッテリ精製水を供給するための分岐管を備えており、分岐管の数はバッテリ17のセル数に対応する。分岐管のセル側の端部には止水栓(図示せず)が備えられている。止水栓は、セルのバッテリ液の液面が予め設定された設定液面レベルに達すると閉じられ、この設定液面レベルより液面レベルが下がると開くように構成されている。具体的には、バッテリ液に浮かぶフロートによる止水栓、あるいは、液面センサによる検出により開閉される電磁開閉弁を止水栓として用いればよい。
【0025】
給水ポンプ28は、バッテリ精製水タンク26に貯留されているバッテリ精製水をバッテリ17へ供給するためのポンプである。給水ポンプ28は、例えば、インペラの回転によってバッテリ精製水を圧送する渦巻ポンプであり、インペラを含む回転部(図示せず)を有する。ポンプモータ29は、給水ポンプ28の回転部を回転させるための電動モータである。ポンプモータ29は、コントローラ23と配線32により電気的に接続されており、ポンプモータ29の駆動制御は配線32を介してコントローラ23により行われる。配線32は信号線に相当する。
【0026】
表示器30は報知器に相当する。本実施形態の表示器30は、各種情報を表示可能な液晶ディスプレイであり、運転席13の前部において運転シート19に着座したオペレータから目視し易い位置に備えられている。本実施形態の表示器30は、コントローラ23と接続されており、バッテリ液満水である旨の表示するほか、ポンプモータ29の駆動不能や停止不能の異常や給水管27の漏水が疑われる場合に警告表示する。警告表示としては、例えば、「バッテリ液給水完了」、「ポンプモータ駆動不能又は給水管漏水」、「ポンプモータ停止不能」といった文言が点滅表示される。
【0027】
圧力センサ31は、圧力検出器に相当し、ポンプモータ29の運転時の給水管27におけるバッテリ精製水の圧力(給水圧力)Pを検出するセンサである。圧力センサ31は、検出した給水圧力を検出値に応じた電流値の信号に変換する。圧力センサ31により検出された給水圧力の信号はコントローラ23へ伝達される。
【0028】
本実施形態のコントローラ23は、ポンプモータ29を駆動制御するため、ポンプモータ29と配線32により電気的に接続されている。コントローラ23は、予め設定された作動条件を満たすとき、ポンプモータ29を駆動して、バッテリ精製水の供給を開始する。予め設定された作動条件は、例えば、バッテリ17のセルにおけるバッテリ液の液面レベルが予め設定された所定液面レベルより下がった場合や、所定の充電回数を経てから最新の充電から所定日数が経過している場合等である。
【0029】
コントローラ23は、圧力センサ31により検出された給水圧力Pに基づいてバッテリ液の満水を判別する機能を有しているほか、給水圧力Pに基づいて給水管27から漏水およびポンプモータ29の異常の有無を判別する機能を有している。コントローラ23には、給水圧力Pに対する第1閾値P1、第2閾値P2および第3閾値P3が予め設定されている。
【0030】
第1閾値P1は、バッテリ精製水の供給時にバッテリ17の各セルにおけるバッテリ液が満水になったことを示すための閾値である。圧力センサ31により検出される給水圧力Pがバッテリ精製水の供給を開始してから第1閾値P1を超えたときに、コントローラ23はバッテリ17のバッテリ液が満水したと判別する。
【0031】
第2閾値P2は、第1閾値P1より小さい値であり、バッテリ精製水の供給時にポンプモータ29が駆動されない異常又は給水管27からバッテリ精製水が漏洩する異常を示すための閾値である。因みに、ポンプモータ29が駆動されない異常又は給水管27からバッテリ精製水が漏洩する異常では、給水管27における給水圧力Pは上昇しない。圧力センサ31により検出される給水圧力Pが、バッテリ精製水の供給開始後に一定時間t1を経過しても第2閾値P2未満であるとき、コントローラ23はポンプモータ29が異常により駆動停止中又はバッテリ精製水が異常により漏洩中であると判別する。
【0032】
第3閾値P3は、第1閾値P1より大きい値であり、バッテリ精製水の供給によるバッテリ17のバッテリ液の満水後にポンプモータ29が停止されない異常を示すための閾値である。因みに、圧力センサ31により検出される給水圧力Pが第1閾値P1を超えてバッテリ液が満水になっても、ポンプモータ29が停止しないとき、給水管27における給水圧力Pはさら上昇して第3閾値P3以上となる。圧力センサ31により検出される給水圧力Pが第1閾値P1を超えてバッテリ液が満水になって第3閾値P3以上となるときに、コントローラ23はポンプモータ29が異常により運転停止されないと判別する。
【0033】
コントローラ23は、図3に示す一連のステップS01~S09に基づいてバッテリ17へのバッテリ精製水の供給を行い、バッテリ17におけるセルの満水検出の判断と、ポンプモータ29の駆動されない異常又はバッテリ精製水の漏水の異常と、ポンプモータ29が運転停止されない異常と、を判断する。
【0034】
予め設定された作動条件が満たされると、コントローラ23はポンプモータ29を起動する(ステップS01を参照)。次に、コントローラ23は、コントローラ23が備えるタイマー機能によって一定時間t1が経過したか否かを判別する(ステップS02を参照)。一定時間t1が経過していると判別されると、コントローラ23は、圧力センサ31に検出された給水圧力Pが第2閾値P2未満であるか否かを判別する(ステップS03を参照)。ステップS02にて一定時間t1が経過していないと判別されるとステップS02を繰り返す。
【0035】
ステップS03においてコントローラ23が、圧力センサ31に検出された給水圧力Pが第2閾値P2未満であると判別すると、ポンプモータ29が異常により駆動不能であるか、あるいは、給水管27におけるバッテリ精製水の漏洩が発生していると判断する(ステップS04を参照)。ポンプモータ29の駆動不能の原因としてはポンプモータ29の異常のほかコントローラ23の異常が考えられる。そして、コントローラ23は表示器30にポンプモータ29の駆動不能又は給水管27におけるバッテリ精製水の漏洩である旨を警告表示する(ステップS05を参照)。ステップS03においてコントローラ23が圧力センサ31に検出された給水圧力Pが第2閾値P2未満でないと判別すると、給水圧力Pが第1閾値P1を超えているか否かを判別する(ステップS06を参照)。
【0036】
ステップS06において給水圧力Pが第1閾値P1を超えているとコントローラ23が判別すると、バッテリ17の各セルのバッテリ液の液面が予め設定した液面に達して満水であると判断し、ポンプモータ29を停止する(ステップS07を参照)。ポンプモータ29を停止した時点でバッテリ精製水の供給は終了するが、コントローラ23は、圧力センサ31に検出された給水圧力Pが第3閾値P3以上であるか否かを判別する(ステップS08を参照)。なお、ステップS06において給水圧力Pが第1閾値Pを超えていないとコントローラ23が判別するとステップS03へ戻り、給水圧力Pが第2閾値P2未満であるか否かを判別する。
【0037】
ステップS08において圧力センサ31に検出された給水圧力Pが第3閾値P3以上でないと判別すると、コントローラ23はポンプモータ29が正常に停止されていると判断してフローを終了する。ステップS08において圧力センサ31に検出された給水圧力Pが第3閾値P3以上であると判別すると、コントローラ23は、ポンプモータ29が異常により停止不能であると判断する(ステップS09を参照)。ポンプモータ29の停止不能の原因としてはポンプモータ29の異常のほかコントローラ23の異常が考えられる。そして、コントローラ23は表示器30にポンプモータ29の停止不能である旨を警告表示する(ステップS05を参照)。
【0038】
バッテリ精製水の供給が正常に行われる場合、図4において実線のグラフG1となる。バッテリ精製水の供給開始とともに給水圧力Pは上昇し、開始後から所定時間以内に第2閾値P2を超える。第2閾値P2を超えた後、給水量が一定となるので給水圧力Pは一定の圧力で推移する。バッテリ17の各セルのバッテリ液が満水になると、ポンプモータ29が駆動されている状態で止水栓が閉じられ、給水管27の出口は塞がれる。このため、給水圧力Pは急激に上昇する。給水圧力Pが第1閾値P1を超えた時点でポンプモータ29が停止されるので、給水圧力は第1閾値P1を超えると下降する。
【0039】
バッテリ精製水の供給時に異常が発生する場合、例えば、図5において破線のグラフG2および二点鎖線のグラフG3となる。グラフG2では、バッテリ精製水の供給が開始されても給水圧力Pは上昇せず、開始後から所定時間以内に第2閾値P2を超えることはない。グラフG2の例では、僅かな給水圧力Pが存在しており、ポンプモータ29は正常に駆動されているが給水管27からバッテリ精製水が漏洩しているか、ポンプモータ29が異常により正常に駆動されていない可能性が高い。
【0040】
因みに、ポンプモータ29を駆動する駆動信号がコントローラ23からポンプモータ29に伝達されてもポンプモータ29が駆動されない場合や、コントローラ23が駆動信号を伝達できない場合、若しくは、配線32の断線により伝達信号がポンプモータ29に伝達されない場合では、給水圧力Pは全く上昇しない。
【0041】
図5に示すグラフG3の例では、第1閾値P1を検出後に給水圧力Pが上昇し続けて第3閾値P3以上となっている。グラフG3の例では、コントローラ23がバッテリ17のバッテリ液が満水であると判断しても、圧力センサ31により検出された給水圧力Pが第3閾値P3以上であると判別され、ポンプモータ29が停止されず駆動し続けている可能性が高い。ポンプモータ29が駆動され続ける原因としては、例えば、コントローラ23の異常の可能性が高い。
【0042】
次に、バッテリ自動補水装置25によるバッテリ精製水の給水について説明する。フォークリフト10の運転中に、予め設定された作動条件を満たすと、バッテリ自動補水装置25はバッテリ精製水タンク26から自動的にバッテリ精製水をバッテリ17に供給する。具体的には、コントローラ23は、予め設定された作動条件を満たしたことを検知すると、ポンプモータ29を駆動させる駆動信号を伝達し、ポンプモータ29は駆動信号を受けて駆動する。なお、予め設定された条件とは、例えば、バッテリ17のセルにおけるバッテリ液の液面レベルが予め設定された所定液面レベルより下がった場合や、所定の充電回数を経てから最新の充電から所定日数が経過している場合等である。
【0043】
ポンプモータ29が駆動されると、給水ポンプ28がバッテリ精製水をバッテリ17へ向けて送出する。圧力センサ31に検出される給水圧力Pは増大する。バッテリ精製水タンク26からバッテリ17へ正常にバッテリ精製水が送出されていると、一定時間t1が経過するまでに、圧力センサ31に検出される給水圧力Pは第2閾値P2を超える(図4の実線のグラフG1を参照)。バッテリ精製水の送出される量が一定になると、給水圧力Pは第2閾値P2を超えた値で一定となる。
【0044】
バッテリ17の各セルがバッテリ精製水の供給を受けて、各セルのバッテリ液の液面が所定液面レベルに達して満水になると止水栓が閉じる。このため、バッテリ精製水タンク26のバッテリ精製水がポンプモータ29により送出されるものの止水栓が閉じられているので、圧力センサ31に検出される給水圧力Pは増大する。このため、圧力センサ31に検出される給水圧力Pは第1閾値P1を超える。
【0045】
コントローラ23は、給水圧力Pは第1閾値P1を超えると判別し、その結果、バッテリ17の各セルのバッテリ液が満水であると判断し、ポンプモータ29を停止する信号をポンプモータ29へ伝達する。ポンプモータ29は、停止信号の伝達を受けて停止し、ポンプモータ29の停止に伴い、圧力センサ31に検出される給水圧力Pは低下し、給水圧力Pは0となる。ポンプモータ29の停止によってバッテリ17へのバッテリ精製水の供給は終了する。バッテリ精製水が供給される間、フォークリフト10を運転中のオペレータは、バッテリ精製水の供給を意識することなく作業を継続できる。
【0046】
ところで、本実施形態のバッテリ自動補水装置25は、バッテリ精製水の供給を開始しても給水圧力Pが上昇しない異常の有無を判別する。圧力センサ31が検出する給水圧力Pが第2閾値P2を超えない場合、ポンプモータ29が駆動されない駆動不能の状態であるか、給水管27の破損によって漏水が生じている状態であるか、いずれかである。ポンプモータ29の駆動不能の原因としては、例えば、ポンプモータ29の異常のほか、配線32の断線、コントローラ23の異常等である。
【0047】
圧力センサ31が検出する給水圧力Pが第2閾値P2を超えないと判別すると、コントローラ23はポンプモータ29が異常により駆動停止中又は給水管27におけるバッテリ精製水が異常により漏洩中であると判断し、ポンプモータ29の異常による駆動停止中又はバッテリ精製水の異常による漏洩中であることを表示器30により報知する。フォークリフト10のオペレータは表示器30の警告表示によって直ちに異常を認識できる。
【0048】
また、本実施形態のバッテリ自動補水装置25は、バッテリ17の各セルのバッテリ液が満水後にポンプモータ29が停止されない異常の有無を判別する。バッテリ液の満水後に、圧力センサ31が検出する給水圧力Pが第3閾値P3以上である場合、ポンプモータ29が停止されない停止不能の状態である。ポンプモータ29の停止不能の原因としては、例えば、コントローラ23の異常である。
【0049】
コントローラ23は、圧力センサ31により検出される給水圧力Pが第3閾値P3以上であると判別すると、ポンプモータ29が異常により運転停止されないと判断し、ポンプモータ29が停止されない停止不能であることを表示器30により報知する。フォークリフト10のオペレータは表示器30の警告表示によって直ちに異常を認識できる。
【0050】
なお、バッテリ精製水の供給中に圧力センサ31により検出される給水圧力Pが第2閾値P2未満になった場合も、コントローラ23はポンプモータ29が異常により駆動停止又は給水管27におけるバッテリ精製水が異常による漏洩であると判断する。
【0051】
本実施形態に係るバッテリ自動補水装置25は、以下の作用効果を奏する。
(1)コントローラ23は、圧力センサ31により検出された給水圧力Pが予め設定された第1閾値P1を超えるとき、バッテリ17のバッテリ液面が規定水位に達していると判別し、ポンプモータ29の駆動を停止する。また、コントローラ23は、給水圧力Pが、第1閾値P1より低い予め設定された第2閾値P2未満のとき、ポンプモータ29が異常により駆動停止中又はバッテリ精製水が異常により漏洩中であると判断する。その結果、バッテリ精製水の自動補水を完了できるほか、ポンプモータ29が異常により駆動停止中であるか、あるいは、バッテリ精製水の給水管27から漏洩中であるかを把握することができる。
【0052】
(2)圧力センサ31により検出される給水圧力Pが第1閾値P1を超えて第3閾値P3以上になると、コントローラ23はポンプモータ29が異常により運転停止されないと判断する。その結果、ポンプモータ29が運転停止されないという異常を把握することができる。
【0053】
(3)コントローラ23は、圧力センサ31により検出された給水圧力Pが予め設定された第1閾値P1を超えるとき、バッテリ17のバッテリ液面が規定水位に達していると判別し、ポンプモータ29の駆動を停止する。このため、バッテリ精製水をバッテリ17に過剰に供給することがなく、バッテリ精製水の過剰供給によるバッテリ液のバッテリ17から溢れ出しを防止することができる。
【0054】
(4)ポンプモータ29の異常による駆動停止中又はバッテリ精製水の異常による漏洩中であることを表示器30により警告表示する。その結果、フォークリフト10のオペレータは、バッテリ精製水の自動補水を完了できるほか、ポンプモータ29が異常により駆動停止中であるか、あるいは、バッテリ精製水の給水管27から漏洩中であるかをより把握し易い。また、ポンプモータ29が異常により運転停止されないことを表示器30に警告表示するので、フォークリフト10のオペレータは、ポンプモータ29が運転停止されないという異常を把握し易い。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るバッテリ自動補水装置について説明する。本実施形態のバッテリ自動補水装置は、ポンプモータとコントローラとを接続する信号線に、常閉接点を有する開閉器が設けられる点で、第1の実施形態と異なる。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0056】
図6に示すように、バッテリ自動補水装置40は、ポンプモータ29とコントローラ23とを接続する配線32に設けられる常閉接点42を有する開閉器41を備えている。常閉接点42は、開閉器41に備えられるコイル43が励磁されない状態では常に閉じているが、コイル43が励磁されると開く。
【0057】
コントローラ23は、圧力センサ31により検出される給水圧力Pが第3閾値P3以上であると判別すると、ポンプモータ29が異常により運転停止されないと判断し、ポンプモータ29が停止されない停止不能であることを表示器30により報知する。さらに、コントローラ23は通電によりコイル43を励磁して、常閉接点42を開く。つまり、コントローラ23は、給水圧力Pが第3閾値P3以上であるとき、常閉接点42を開く。常閉接点42が開くことにより配線32が遮断され、ポンプモータ29は停止される。
【0058】
本実施形態に係るバッテリ自動補水装置40は、第1の実施形態と同等の作用効果を奏する。また、給水圧力Pが第3閾値P3以上であるとき、コントローラ23は常閉接点42を開くので、ポンプモータ29が異常により運転停止されない場合でもポンプモータ29の運転を直ちに停止することができる。
【0059】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0060】
○ 上記の実施形態では、バッテリ自動補水装置が報知器(表示器)を備えるとしたが、この限りではない。バッテリ自動補水装置は必ずしも報知器を備える必要はない。この場合、圧力検出部により検出された給水圧力に基づく第1閾値、第2閾値および第3閾値に対するコントローラの判断によって、産業車両の機能を一部制限するようにしてもよい。産業車両のオペレータは、産業車両の一部の機能制限を受けることによって、バッテリ自動補水装置における異常を認識できる。
○ 上記の実施形態では、コントローラが第1閾値、第2閾値および第3閾値のそれぞれに対して判別する構成としたがこの限りではない。例えば、コントローラが第1閾値および第2閾値のみに対して判別する構成としてもよく、あるいは、コントローラが第1閾値および第2閾値のみに対して判別する構成としてもよい。
○ 上記の実施形態では、報知部の例として警告を表示可能な表示器を示したが、報知部は表示器に限らない。報知部は、例えば、音声による警告やランプ点灯・点滅といった警告を発する構成としてもよい。また、音声および文字表示等を組み合わせた警告としてもよい。
○ 上記の第2の実施形態では、バッテリ自動補水装置は、ポンプモータとコントローラとを接続する配線に設けられる常閉接点を有する開閉器を備えたがこれに限らない。例えば、開閉器が常開接点を有し、ポンプモータを駆動する時に励磁して常開接点を閉じ、給水圧力が第3閾値以上である異常時に励磁を停止して常開接点を開くようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、産業車両としてバッテリ式フォークリフトを例示して説明したが、これに限らない。産業車両は、例えば、バッテリ式牽引車等、少なくとも鉛蓄電池を搭載するバッテリ式の産業車両であればよい。
【符号の説明】
【0061】
10 バッテリ式フォークリフト
11 車体
17 バッテリ
23 コントローラ
25、40 バッテリ自動補水装置
26 バッテリ精製水タンク
27 給水管
28 給水ポンプ
29 ポンプモータ
30 表示器(報知器)
31 圧力センサ(圧力検出器)
32 配線(信号線)
41 開閉器
42 常閉接点
t1 一定時間
P 給水圧力
P1 第1閾値
P2 第2閾値
P3 第3閾値
G1、G2、G3 グラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6