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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両の車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/24 20060101AFI20231108BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20231108BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60R19/24 N
B60R19/34
B60R19/04 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020001835
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021109506
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】四柳 泰希
(72)【発明者】
【氏名】西原 剛史
(72)【発明者】
【氏名】河村 力
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 常規
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光汰
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006129(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015115741(DE,A1)
【文献】特開2017-002998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/24
B60R 19/34
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるバンパレインフォースメントと車体との間に設けられる左右一対の衝撃吸収部材を備えた車両の車体構造であって、
上記衝撃吸収部材の先端部に固定される平板状のバンパステイ
上記バンパステイにおける上半部の後面固定されるとともに、上記衝撃吸収部材を避けるように下端から上方へ向けて切り欠かれた切欠き部を有する上記バンパレインフォースメント
上記バンパステイにおける下半部の後面固定されるとともに、上記衝撃吸収部材を避けるように上端から下方へ向けて切り欠かれた切欠き部を有する車両正面視凹形状のバンパステイ補強部材とを備え、
上記衝撃吸収部材は、
上記バンパステイの後面に固定された上記バンパレインフォースメントの上記切欠き部と上記バンパステイ補強部材の上記切欠き部とがなす開口を介して、上記バンパステイの後面に固定された
車両の車体構造。
【請求項2】
上記バンパレインフォースメントはアルミ押出し材にて形成された
請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
上記バンパステイ補強部材はアルミ押出し材にて形成された
請求項1または2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
上記衝撃吸収部材は逐次破壊機能を有する
請求項1~3の何れか一項に記載の車両の車体構造。
【請求項5】
上記バンパステイは、少なくとも上記バンパレインフォースメントの上端から上記バンパステイ補強部材の下端にわたって配置された
請求項1~4の何れか一項に記載の車両の車体構造。
【請求項6】
上記衝撃吸収部材の先端部は、当該先端部の外表面に位置する上記バンパステイと、上記先端部の背面に位置するナットプレートとで共締め固定された
請求項1~5の何れか一項に記載の車両の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バンパレインフォースメントと車体との間に設けられる衝撃吸収部材を備えた車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バンパレインフォースメントと車体との間に衝撃吸収部材としてのクラッシュボックスを介設し、当該クラッシュボックスで衝突エネルギを吸収するように構成した車両の車体構造が知られている。
上述のクラッシュボックスが逐次破壊機能をもって構成される場合(特開2017-2998号公報)、並びに、上述のバンパレインフォースメントがアルミ押出し材で構成される場合には、車両衝突時に、クラッシュボックスがアルミ押出し材から成るバンパレインフォースメントに減り込むことがある。
【0003】
クラッシュボックスがバンパレインフォースメントに減り込むと、要求される衝撃吸収機能が確保できなくなり、また、バンパレインフォースメントとクラッシュボックスとが上下方向にずれた配置となるため、クラッシュボックスの先端に対して適切な荷重伝達ができず、所期の衝突エネルギ吸収が行なえなくなるという課題が生じる。
【0004】
ところで、特許文献1には、バンパレインフォースメントと車体との間にクラッシュボックスを設け、当該バンパレインフォースメントの荷重をクラッシュボックスで受けるように構成したものが開示されている。この従来構造においても、クラッシュボックスが逐次破壊機能をもって構成されると共に、バンパレインフォースメントがアルミ押出し材にて形成されると、上述同様の課題が発生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-104333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、衝撃吸収部材がバンパレインフォースメントに減り込むことに起因して、当該衝撃吸収部材の衝撃吸収機能が阻害されることなく、バンパレインフォースメントと衝撃吸収部材とが上下方向にずれて配設される場合でも、衝撃吸収部材に対して衝突荷重を略均等に入力することができる車両の車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による車両の車体構造は、車幅方向に延びるバンパレインフォースメントと車体との間に設けられる左右一対の衝撃吸収部材を備えた車両の車体構造であって、上記衝撃吸収部材の先端部に固定される平板状のバンパステイ、上記バンパステイにおける上半部の後面固定されるとともに、上記衝撃吸収部材を避けるように下端から上方へ向けて切り欠かれた切欠き部を有する上記バンパレインフォースメント、上記バンパステイにおける下半部の後面固定されるとともに、上記衝撃吸収部材を避けるように上端から下方へ向けて切り欠かれた切欠き部を有する車両正面視凹形状のバンパステイ補強部材とを備え、上記衝撃吸収部材は、上記バンパステイの後面に固定された上記バンパレインフォースメントの上記切欠き部と上記バンパステイ補強部材の上記切欠き部とがなす開口を介して、上記バンパステイの後面に固定されたものである。
【0008】
上記構成によれば、衝撃吸収部材がバンパレインフォースメントに減り込むことに起因して、当該衝撃吸収部材の衝撃吸収機能が阻害されることなく、バンパレインフォースメントと衝撃吸収部材とが上下方向にずれて配設される場合でも、上記バンパステイ補強部材によって、衝撃吸収部材に対して衝突荷重を略均等に入力することができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記バンパレインフォースメントはアルミ押出し材にて形成されたものである。
上述のアルミ押出し材としては、アルミニウム押出し成形品またはアルミニウム合金押出し成形品を用いることができる。
上記構成によれば、アルミ押出し材のバンパレインフォースメントであっても、衝撃吸収部材の減り込みを回避して、衝撃吸収部材に対して衝突荷重を略均等に伝達することができる。
【0010】
加えて、車両中心から離れた位置にアルミ押出し材から成るバンパレインフォースメント(軽量部品)が配置されるので、鋼板製のバンパレインフォースメントと比較して、ヨー慣性モーメント(車両の重心点を通る鉛直軸まわりの車両全体の慣性モーメント)の低減を図ることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記バンパステイ補強部材はアルミ押出し材にて形成されたものである。
上述のアルミ押出し材についても、アルミニウム押出し成形品またはアルミニウム合金押出し成形品を用いることができる。
【0012】
上記構成によれば、アルミ押出し材によるバンパステイ補強部材で上記バンパステイを補強することができると共に、当該バンパステイ補強部材を用いて、衝撃吸収部材に略均等に荷重伝達を行なうことができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記衝撃吸収部材は逐次破壊機能を有するものである。
上記構成によれば、逐次破壊機能をもった衝撃吸収部材を構成することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記バンパステイは、少なくとも上記バンパレインフォースメントの上端から上記バンパステイ補強部材の下端にわたって配置されたものである。
上記構成によれば、衝撃吸収部材と対応する位置において、バンパレインフォースメントの先端部全面およびバンパステイ補強部材の先端部全面に配置される上記バンパステイにより、フルラップ衝突およびオフセット衝突時の衝突荷重を上記衝撃吸収部材に対してより一層確実に伝達することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記衝撃吸収部材の先端部は、当該先端部の外表面に位置する上記バンパステイと、上記先端部の背面に位置するナットプレートとで共締め固定されたものである。
上記構成によれば、上記バンパステイと上記ナットプレートとの両者により、衝突荷重を衝撃吸収部材に対してさらに確実に伝達することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、衝撃吸収部材がバンパレインフォースメントに減り込むことに起因して、当該衝撃吸収部材の衝撃吸収機能が阻害されることなく、バンパレインフォースメントと衝撃吸収部材とが上下方向にずれて配設される場合でも、衝撃吸収部材に対して衝突荷重を略均等に入力することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の車両の車体構造を先端側上方から見た状態で示す斜視図
図2】車両の車体構造を基端側上方から見た状態で示す斜視図
図3】クラッシュボックスの斜視図
図4】クラッシュボックスの正面図
図5】バンパレインフォースメント、バンパステイ、バンパステイ補強部材の関連構造を示す斜視図
図6図5のA-A線矢視断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
衝撃吸収部材がバンパレインフォースメントに減り込むことに起因して、当該衝撃吸収部材の衝撃吸収機能が阻害されることなく、バンパレインフォースメントと衝撃吸収部材とが上下方向にずれて配設される場合でも、衝撃吸収部材に対して衝突荷重を略均等に入力するという目的を、バンパレインフォースメントと車体との間に設けられる衝撃吸収部材を備えた車両の車体構造であって、上記衝撃吸収部材の先端部にバンパステイが固定され、上記バンパステイの上半部に上記衝撃吸収部材を避けて切欠かれた上記バンパレインフォースメントが固定され、上記バンパステイの下半部に衝撃吸収部材を避けて車両正面視で凹形状のバンパステイ補強部材が設けられるという構成にて実現した。
【実施例
【0019】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の車体構造を示し、図1は当該車両の車体構造を先端側上方から見た状態で示す斜視図、図2は車両の車体構造を基端側上方から見た状態で示す斜視図、図3はクラッシュボックスの斜視図、図4はクラッシュボックスの正面図である。また、図5はバンパレインフォースメント、バンパステイ、バンパステイ補強部材の関連構造を示す斜視図、図6図5のA-A線矢視断面図である。
【0020】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
また、以下の実施例においては、車両の車体構造を前部車体構造に適用した場合について説明するので、矢印Fで示す車両前方側が先端側となり、矢印Rで示す車両後方側が基端側となる。
【0021】
図1図2に示すように、車体強度部材である左右一対のフロントサイドフレーム(車体)の先端部には、衝撃吸収部材としての左右一対のクラッシュボックス10,10を取付けており、これら左右一対のクラッシュボックス10,10の先端部相互間には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント20を横架している。
【0022】
図3図4に示すように、上述のクラッシュボックス10は、偏平に形成された先端部11と、車体に取付けられる基端フランジ部12と、上記先端部11と基端フランジ部12とを車両前後方向に延びて一体連結するクラッシュボックス本体13と、を備えている。
【0023】
上述のクラッシュボックス10は鉄または繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic、FRP)の何れでも構成することができるが、この実施例では、繊維強化プラスチックいわゆるFRPにより上記クラッシュボックス10を構成している。
【0024】
図3図4に示すように、クラッシュボックス10の先端部11には複数のボルト挿通孔14…を開口形成している。また、上述のクラッシュボックス本体13は多角筒形状に形成されている。この実施例では、図4に示すように、上記クラッシュボックス本体13は16角の左右略対称の筒形状に形成されているが、この形状に限定されるものではない。
【0025】
上述のクラッシュボックス10は先端部11側から基端フランジ部12側にかけて、その上下方向寸法および車幅方向寸法が漸増するように形成されている。さらに、上述の基端フランジ部12の上下左右の合計4箇所には、当該クラッシュボックス10を車体に締結するための複数のボルト挿通孔15…が開口形成されている。
すなわち、図1に示すように、上述のボルト挿通孔15に挿通される複数のボルト16…を用いて、クラッシュボックス10の基端側が車体に取付けられるものである。
【0026】
図1図2図5図6に示すように、上述のバンパレインフォースメント20は、アルミ押出し材にて形成されたものである。
詳しくは、上記バンパレインフォースメント20は、アルミ押出し成形品の押出し成形後に、車両デザインに対応すべく、当該アルミ押出し成形品を曲げ加工して、曲率半径が大きい湾曲形状に形成したものである。ここで、上述のアルミ押出し材は、塑性状態のアルミニウムまたはアルミニウム合金の材料をダイスを通して押出し、ダイス穴断面形状の長物として形成されるものである。
【0027】
上述のバンパレインフォースメント20は、図5に示すように、車両前方に位置する先端壁21と、この先端壁21から離間して車両後方に位置する基端壁22と、先端壁21上端と基端壁22上端とを連結する上壁23と、先端壁21下端と基端壁22下端とを連結する下壁24と、を備えている。
【0028】
さらに、上壁23と下壁24との間を、上下方向に等分する2つの横棧25,26(いわゆるリブ)を一体形成し、当該バンパレインフォースメント20内には、上記横棧25,26で区切られて、車幅方向に延びる3つの閉断面S1,S2,S3が形成されている。
【0029】
図1図2図5図6に示すように、上述のバンパレインフォースメント20は左右一対のクラッシュボックス10,10における先端部11の上半分の位置に対応して配設されている。このため、上述のバンパレインフォースメント20の車幅方向端部側の下部には、クラッシュボックス10を避けて切欠かれた切欠き凹部27が形成されている。
【0030】
図6に示すように、上述の各クラッシュボックス10の先端部11(但し、図6では一方のクラッシュボックス10のみを示す)にはバンパステイ30が固定されている。このバンパステイ30はアルミニウム合金製で、かつ図1に示すように方形状に形成されている。
【0031】
詳しくは、上述のクラッシュボックス10の先端部11は、当該先端部11の外表面(この実施例では前側表面)に位置するバンパステイ30と、先端部11の背面に位置するナットプレート31(いわゆるガセット)とで共締め固定されている。
【0032】
すなわち、上述のナットプレート31には、図3で示したクラッシュボックス10の先端部11のボルト挿通孔14と対応すべく予めナット32が溶接固定されている。また、バンパステイ30には、これらボルト挿通孔14と一致する位置にボルト挿通孔33が開口形成されている(図5参照)。
【0033】
そして、各ボルト挿通孔33,14を介して挿入したボルト34を、ナットプレート31背面のナット32に締結固定することで、クラッシュボックス10の先端部11を、バンパステイ30とナットプレート31との間に挟持固定し、これら三者30,11,31を共締め固定したものである。
上述のバンパレインフォースメント20は、バンパステイ30の上半部にクラッシュボックス10を避けて固定されている。
【0034】
上述のバンパレインフォースメント20はアルミ押出し材であり、またバンパステイ30はアルミニウム合金製であるから、図6に示す溶接部m1において、バンパレインフォースメント20の上壁23先端側と、バンパステイ30の背面と、をミグ溶接し、溶接部m2においてバンパレインフォースメント20の切欠き凹部27の先端側とバンパステイ30の背面とをミグ溶接することで、バンパステイ30の上半部にバンパレインフォースメント20を固定したものである。
上述の溶接部m2におけるミグ溶接は、切欠き凹部27の切欠き周縁部のほぼ全周をバンパステイ30背面に接合固定するものである。
【0035】
上述のミグ溶接(MIG welding)は、周知のように、イナートガスアーク溶接法の一種で、不活性なアルゴンやヘリウムなどのイナートガスをシールドガスとして使用し、ワイヤ状の消耗電極を用いる溶極式の溶接である。
【0036】
一方、図5図6に示すように、バンパステイ30の下半部を補強する車両正面視で凹形状のバンパステイ補強部材40を設けている。このバンパステイ補強部材40もバンパレインフォースメント20と同様にアルミ押出し材にて形成されている。
【0037】
上述のバンパステイ補強部材40は、図5に示すように、車両前方に位置する先端壁41と、この先端壁41から離間して車両後方に位置する基端壁42と、先端壁41上端と基端壁42上端とを連結する上壁43と、先端壁41下端と基端壁42下端とを連結する下壁44と、を備えている。
【0038】
さらに、上壁43と下壁44との間を、上下方向に等分する横棧45(いわゆるリブ)を一体形成し、当該バンパステイ補強部材40内には、上記横棧45で区切られて、車幅方向に延びる2つの閉断面S4,S5が形成されている。
【0039】
図1図2図5図6に示すように、上述のバンパステイ補強部材40は左右一対のクラッシュボックス10,10における先端部11の下半分の位置に対応して配設される。このため、上述のバンパステイ補強部材40には、クラッシュボックス10を避けて切欠かれた切欠き凹部46が形成されており、これによりバンパステイ補強部材40を車両正面視で凹形状に成している。
上述のバンパステイ補強部材40は、バンパステイ30の下半部にクラッシュボックス10を避けて固定されている。
【0040】
上述のバンパステイ補強部材40はアルミ押出し材であり、またバンパステイ30はアルミニウム合金製であるから、図6に示す溶接部m3において、バンパステイ補強部材40の切欠き凹部46の先端側とバンパステイ30の背面とをミグ溶接し、溶接部m4において、バンパステイ補強部材40の下壁44先端側と、バンパステイ30の背面と、をミグ溶接することで、バンパステイ30の下半部にバンパステイ補強部材40を固定したものである。
上述の溶接部m3におけるミグ溶接は、切欠き凹部46の切欠き周縁部のほぼ全周をバンパステイ30背面に接合固定するものである。
【0041】
図5に示すように、バンパレインフォースメント20側の切欠き凹部27と、バンパステイ補強部材40側の切欠き凹部46とは、上下方向および車幅方向で一致し、これら両者27,46により、クラッシュボックス10の先端側が配置される方形状のスペース47が形成されている。
【0042】
また、図5に示すように、切欠き凹部27の下端位置におけるバンパレインフォースメント20の下壁24下面と、切欠き凹部46の上端位置におけるバンパステイ補強部材40の上壁43上面とは、当接部48にて当接されている。
【0043】
そして、この当接部48において、バンパレインフォースメント20の基端壁22下端と、バンパステイ補強部材40の基端壁42上端と、をこれら当接部48の車幅方向のほぼ全幅にわたって、ミグ溶接手段により接合固定している。
【0044】
さらに、バンパレインフォースメント20の車幅方向外端における先端壁21と、バンパステイ30背面と、をミグ溶接手段により接合固定すると共に、バンパステイ補強部材40の車幅方向外端における先端壁41と、バンパステイ30背面と、もミグ溶接手段により接合固定している。
加えて、バンパステイ補強部材40の車幅方向内端における先端壁41と、バンパステイ30背面と、もミグ溶接手段により接合固定している。
【0045】
要するに、クラッシュボックス10の先端部11にバンパステイ30を固定し、バンパステイ30の上半部にクラッシュボックス10を避けて切欠かれたバンパレインフォースメント20が固定され、バンパステイ30の下半部にクラッシュボックス10を避けて凹形状のバンパステイ補強部材40が固定されたものである。
【0046】
これにより、クラッシュボックス10がバンパレインフォースメント20に減り込むことを防止し、クラッシュボックス10の衝撃吸収機能が阻害されるのを抑制し、バンパレインフォースメント20とクラッシュボックス10とが上下方向にずれて配設される場合であっても、バンパステイ30およびバンパステイ補強部材40により、クラッシュボックス10に対して衝突荷重を略均等に入力すべく構成したものである。
【0047】
図1図2図5図6に示すように、上述のバンパステイ30は、少なくともバンパレインフォースメント20の上端からバンパステイ補強部材40の下端にわたって配置されている。これにより、クラッシュボックス10と対応する位置において、バンパレインフォースメント20の先端部全面およびバンパステイ補強部材40の先端部全面に配置される上述のバンパステイ30により、フルラップ衝突およびオフセット衝突時の衝突荷重を、クラッシュボックス10に対して確実に伝達すべく構成したものである。
また、上述のクラッシュボックス10は圧縮荷重入力側から逐次的に圧縮破壊が進行する逐次破壊機能(例えば、特開2017-2998号公報参照)を有するように構成される。
【0048】
このように、上記実施例の車両の車体構造は、バンパレインフォースメント20と車体との間に設けられるクラッシュボックス10を備えた車両の車体構造であって、上記クラッシュボックス10の先端部11にバンパステイ30が固定され、上記バンパステイ30の上半部に上記クラッシュボックス10を避けて切欠かれた上記バンパレインフォースメント20が固定され、上記バンパステイ30の下半部にクラッシュボックス10を避けて車両正面視で凹形状のバンパステイ補強部材40が設けられたものである(図2図6参照)。
【0049】
上記構成によれば、クラッシュボックス10がバンパレインフォースメント20に減り込むことに起因して、当該クラッシュボックス10の衝撃吸収機能が阻害されることなく、バンパレインフォースメント20とクラッシュボックス10とが上下方向にずれて配設される場合でも、上記バンパステイ補強部材40によって、クラッシュボックス10に対して衝突荷重を略均等に入力することができる。
【0050】
また、この発明の一実施形態においては、上記バンパレインフォースメント20はアルミ押出し材にて形成されたものである(図5参照)。
この構成によれば、アルミ押出し材のバンパレインフォースメント20であっても、クラッシュボックス10の減り込みを回避して、クラッシュボックス10に対して衝突荷重を略均等に伝達することができる。
【0051】
加えて、車両中心から離れた位置にアルミ押出し材から成るバンパレインフォースメント20(軽量部品)が配置されるので、鋼板製のバンパレインフォースメントと比較して、ヨー慣性モーメント(車両の重心点を通る鉛直軸まわりの車両全体の慣性モーメント)の低減を図ることができる。
【0052】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記バンパステイ補強部材40はアルミ押出し材にて形成されたものである(図5参照)。
この構成によれば、アルミ押出し材によるバンパステイ補強部材40で上記バンパステイ30を補強することができると共に、当該バンパステイ補強部材40を用いて、クラッシュボックス10に略均等に荷重伝達を行なうことができる。
【0053】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記クラッシュボックス10は逐次破壊機能を有するものである(図6参照)。
この構成によれば、逐次破壊機能をもったクラッシュボックス10を構成することができる。
【0054】
加えて、この発明の一実施形態においては、上記バンパステイ30は、少なくとも上記バンパレインフォースメント20の上端から上記バンパステイ補強部材40の下端にわたって配置されたものである(図5図6参照)。
【0055】
この構成によれば、クラッシュボックス10と対応する位置において、バンパレインフォースメント20の先端部全面およびバンパステイ補強部材40の先端部全面に配置される上記バンパステイ30により、フルラップ衝突およびオフセット衝突時の衝突荷重を上記クラッシュボックス10に対してより一層確実に伝達することができる。
【0056】
また、この発明の一実施形態においては、上記クラッシュボックス10の先端部11は、当該先端部11の外表面に位置する上記バンパステイ30と、上記先端部11の背面に位置するナットプレート31とで共締め固定されたものである(図6参照)。
この構成によれば、上記バンパステイ30と上記ナットプレート31との両者により、衝突荷重をクラッシュボックス10に対してさらに確実に伝達することができる。
【0057】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の衝撃吸収部材は、実施例のクラッシュボックス10に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0058】
上記実施例においては、車両の車体構造を前部車体構造に適用した場合について例示したが、本発明は後部車体構造にも適用することができ、この場合には、矢印Fで示す車両前方側が基端側となり、矢印Rで示す車両後方側が先端側となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明は、バンパレインフォースメントと車体との間に設けられる衝撃吸収部材を備えた車両の車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0060】
10…クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
11…先端部
20…バンパレインフォースメント
30…バンパステイ
40…バンパステイ補強部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6