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  • 特許-分析天びん 図1
  • 特許-分析天びん 図2
  • 特許-分析天びん 図3
  • 特許-分析天びん 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】分析天びん
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/00 20060101AFI20231108BHJP
   G01G 21/28 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01G23/00 F
G01G21/28
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020011292
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021117129
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 俊文
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【弁理士】
【氏名又は名称】妹尾 明展
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 淳史
(72)【発明者】
【氏名】河合 正幸
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113349(JP,A)
【文献】特開2010-217176(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102778278(CN,A)
【文献】特開2004-264283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 23/00
G01G 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風防ケースを備える分析天びんにおいて、
前記風防ケースの少なくとも天面が前記風防ケース内に対する前記風防ケース外部の熱の影響を遮断することにより、前記風防ケース内の対流を抑制する熱遮断構造を有し、
前記天面が該天面を除く前記風防ケースの他の面よりも熱伝導率の低い材質の板材により形成され、前記熱遮断構造が構成されていることを特徴とする分析天びん
【請求項2】
少なくとも2枚の板材がそれらの間に断熱層を介在して配設されて前記天面が形成され、前記熱遮断構造が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の分析天びん。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風防ケースを備える分析天びんに関する。
【背景技術】
【0002】
高精度、高分解能の分析天びんでは、外部の気流が計量精度に大きく影響するため、外部気流の影響を受けないように、風防ケースにより計量皿の周囲を包囲して、ひょう量室を設けることが一般に行われている。
【0003】
すなわち、従来の分析天びんは図4に示すように構成され、分析天びん51の風防ケース52は下面が開口した直方体の箱状を有し、試料重量を計測する電気回路や計量値を表示する表示部53などを収容した本体ケース54の上面に風防ケース52が配置され、本体ケース54の上面に設けられた計量皿55の周囲が風防ケース52により包囲されて、風防ケース52内に外部気流の影響を受けないひょう量室56が形成される。このひょう量室56を外部から透視できるように、風防ケース52の天面57および4つの側面58が、例えば透明ガラスによって構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このとき、風防ケース52の天面57および左右の側面58は開閉可能に形成され、被ひょう量物の出し入れを行う際に、天面57または左右の側面58のいずれか出し入れし易い面を開放できる構成が採用される。このような風防ケースを備えた分析天びんは、通常、外部の気流や温度が安定した所定の測定室などの測定環境のもとに設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-257305号公報(段落0002~0003および図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、分析天びん51が設置される測定環境はその温度を一定に保持するために、通常、空調設備が設置されるが、特許文献1に記載のような従来の風防ケース52の場合、空調の影響を受けないと考えられてきた。ところが本願発明者が鋭意研究した結果、特許文献1に記載のような従来の風防ケース52を備える分析天びんであっても、風防ケース52内に対流が発生することを発見した。この原因として、風防ケース52の天面57に冷風や温風が当たって風防ケース52の天面57に温度変化が生じ、天面57とひょう量室56の下方の計量皿55周辺に温度差をさらに生じさせ、温度変化が風防ケース52内の対流を発生させるということを特定した。
【0007】
このように、例えば冷房環境では風防ケース52の天面57の温度が下がると、これに起因してひょう量室56の上部の空気の温度が下部よりも低下するため、ひょう量室56の下部の空気の上昇と上部の空気の下降が促されてひょう量室56内に空気の対流が発生し、その結果、計量の安定性の低下や再現性能の劣化を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、風防ケース内のひょう量室における空気の対流の発生を防止して、計量の安定性の低下や再現性能の劣化を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明の分析天びんは、風防ケースを備える分析天びんにおいて、前記風防ケースの少なくとも天面が、前記風防ケース内への外部の熱の影響を遮断する熱遮断構造を有することを特徴としている。
【0010】
また、少なくとも2枚の板材がそれらの間に断熱層を介在して配設されて前記天面が形成され、前記熱遮断構造が構成されていてもよく、前記天面が該天面を除く前記風防ケースの他の面よりも熱伝導率の低い材質の板材により形成され、前記熱遮断構造が構成されていてもよい。
【0011】
また、風防ケースを備える分析天びんにおいて、 前記風防ケースの天面に設けられて前記天面を加熱する加熱手段を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分析天びんの測定環境における空調によって風防ケースの天面の温度が低下したとしても、従来のように風防ケースの天面内部の温度が変化することを防止できるため、風防ケース内温度の変化に起因した風防ケース内の空気の対流の発生を未然に防止することができ、計量の安定性の低下や再現性能の劣化を防止することができ、計量精度の優れた分析天びんを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る分析天びんの斜視図である。
図2図1における風防ケースの天面の分解斜視図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る分析天びんの一部の平面図である。
図4】従来の分析天びんの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
本発明に係る分析天びんの第1実施形態について、図1および図2を参照して説明する。なお、図1は全体の斜視図、図2は風防ケースの天面の分解斜視図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態における分析天びん1は、試料重量を計測する電気回路を内蔵した本体ケース2と、本体ケース2の前上面に配設されて計量値を表示する表示部3と、本体ケース2の上面に配設された計量皿4と、下面が開口し本体ケース2に上面側から被せられて計量皿4の周囲を包囲する直方体の箱状の風防ケース5とを備え、外部気流の影響を受けないひょう量室6が風防ケース5の内部に形成される。
【0016】
風防ケース5は、天面を構成する天面風防ガラス7と、左側面および右側面それぞれを構成する左側面風防ガラス8aおよび右側面風防ガラス8bと、前面および後面それぞれを構成する前面風防ガラス8cおよび後面風防ガラス8dとを備えており、天面風防ガラス7および左、右側面風防ガラス8a,8bには把手9が取り付けられ、把手9を把持してこれらの風防ガラス7,8a,8bを開閉できるように各風防ガラス7,8a,8bが設けられている。
【0017】
ところで、天面風防ガラス7は、図2に示すように、いわゆるぺアガラスにより形成され、2枚の矩形ガラス板7a,7bの周縁が、これらガラス板7a,7bとほぼ同じ外寸を有する矩形枠状のスペーサ7cの上下に貼り合わされて形成されている。ここで、2枚のガラス板7a,7b間には断熱層が形成され、ペアガラスによる熱遮断構造の採用により、風防ケース5内のひょう量室6への外部の熱の影響が遮断される。
【0018】
なお、2枚のガラス板7a,7b間の断熱層は、乾燥空気のほか窒素ガス、アルゴンガスなどのガラスよりも熱伝導率の低い気体を充填して形成したものや、熱伝導率がガラスよりも低い透明な樹脂を充填したり、透明な樹脂板を介挿したりして形成したものであってもよい。ここで、透明な樹脂として、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などを使用するとよい。
【0019】
そして、風防ケース5の天面にペアガラスによる熱遮断構造を採用したことにより、風防ケース5の天面風防ガラス7に測定環境における空調の風が当たっても、ひょう量室6の上部の空気の温度が変化するのを防止できるため、ひょう量室6の上部の空気と下部の空気の温度差が小さく抑えられるため、ひょう量室6における空気の対流の発生が抑制される。
【0020】
したがって、従来の風防ケースを備えた分析天びんであれば風防ケース外部の対流しか抑制することができなかったが、上記した実施形態によれば、測定環境の空調の冷却風によって風防ケース5の天面風防ガラス7の温度が低下してひょう量室6の上部の温度が下部よりも下がるのを防止することができ、従来のように風防ケースの天面の温度が低下することに起因した風防ケース内の空気の対流の発生を未然に防止することができ、計量の安定性の低下や再現性能の劣化を防止することができ、計量精度の優れた分析天びんを提供することができる。
【0021】
このとき、風防ケース5の天面風防ガラス7をペアガラスにより形成することにより、風防ケース5の天面の透明性を維持できて外部からひょう量室6を視認することができ、ひょう量室6の様子を確認しつつ計測作業を行うことができる。
【0022】
<第2実施形態>
本発明に係る分析天びんの第2実施形態について、図3を参照して説明する。
【0023】
本実施形態において、上記した第1の実施形態と異なるのは、図3に示すように、例えば風防ケース5の天面風防ガラス7の表面周縁部に加熱手段としての熱線抵抗11を配置し、ITO(Indium Tin Oxide/酸化インジウム錫)の成膜技術により熱線抵抗11を天面風防ガラス7の表面に貼りつけ、図外の電源により熱線抵抗11に通電して天面風防ガラス7を加熱するようにした点である。このとき、ひょう量室6に空気の対流が生じないよう、ひょう量室6の上部の空気を加熱でき計測に支障が生じない程度に加熱するように、熱線抵抗11の発熱量を設定しておくのが望ましい。
【0024】
そして、加熱手段である熱線抵抗11に、図示しない電源装置により例えば常時通電しておくことによって、分析天びん1の測定環境における空調の冷却風が風防ケース5の天面風防ガラス7に当たっても、天面風防ガラス7が加熱されることから、ひょう量室6の上部の空気の温度が下部よりも低下することが未然に防止される。
【0025】
したがって、第2実施形態によれば、上記した第1実施形態と同様、従来のように風防ケース5の天面風防ガラス7の温度が低下することに起因したひょう量室6における空気の対流の発生を未然に防止することができ、計量の安定性の低下や再現性能の劣化のない計量精度の優れた分析天びんを提供することができる。
【0026】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。例えば、上記した第1実施形態では、風防ケース5の天面をペアガラスから成る天面風防ガラス7とした例について説明したが、天面風防ガラス7に代えて、単にガラスよりも熱伝導率の低い透明樹脂の板材により天面を構成してもよい。
【0027】
また、上記した第1実施形態では、ペアガラスによる熱遮断構造を風防ケース5の天面にのみ採用した例について説明したが、風防ケース5の前後左右のすべての側面もペアガラスによる熱遮断構造を採用してもよい。
【0028】
また、上記した第2実施形態では、加熱手段である熱線抵抗11を天面風防ガラス7の表面周縁部に配置した場合について説明したが、熱線抵抗11は周縁部に配置される場合に限定されるものではなく、加熱手段も熱線抵抗11に限るものではない。
【0029】
また、上記した第2実施形態では、熱線抵抗11により風防ケース5の天面を常時加熱するとしたが、ひょう量室6の上部および下部の空気の温度それぞれをセンサにより検出し、風防ケース5の上部の温度が下部よりも低下してひょう量室6で空気の対流が発生しそうなときに、加熱手段に通電して天面を加熱する制御を行うようにしてもよい。
【0030】
また、上記した第2実施形態において、電源装置は測定環境における室内灯の光で発電する太陽電池を使用すればよく、さらに太陽電池により発電した電気エネルギーを蓄電地に溜めて加熱手段に給電するようにしてもよい。
【0031】
また、本発明は、風防ケースを備える分析天びんに適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 …分析天びん
5 …風防ケース
7 …天面風防ガラス(天面)
11 …熱線抵抗(加熱手段)
図1
図2
図3
図4