(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20231108BHJP
C08G 18/16 20060101ALI20231108BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/00 L
C08G18/16
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020017765
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小柳 哲平
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-126546(JP,A)
【文献】特開平10-212334(JP,A)
【文献】特開昭58-220303(JP,A)
【文献】国際公開第2005/080504(WO,A1)
【文献】特開昭62-174220(JP,A)
【文献】特開平03-062816(JP,A)
【文献】特開平09-052936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C08G 101/00
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、触媒(B)、整泡剤(C)、発泡剤(D)、および相溶化剤(E)を含む硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物であって、発泡剤(D)として水とシクロペンタンを併用し、相溶化剤(E)として平均炭素数が18未満である、塩素化パラフィン(e1)を含むことを特徴とする、硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【請求項2】
塩素化パラフィン(e1)の塩素含有量が55質量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【請求項3】
請求項1、または2に記載の硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物と、ポリイソシアネート組成物(F)とを含む硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物から得られる硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項3に記載の硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を反応発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームはその優れた断熱性能、成型性、寸法安定性および自己接着性から、冷蔵庫、冷凍倉庫、建築材料等の断熱材として広く用いられている。
【0003】
近年、オゾン層保護および地球温暖化防止の観点から、従来使用されてきたクロロフルオロカーボン類やハイドロクロロフルオロカーボン類の代替発泡剤としてハイドロフルオロカーボン類やシクロペンタンに代表されるハイドロカーボン類が使用されている。特にシクロペンタンは地球温暖化係数が小さいことから、断熱性能が要求される分野の発泡剤として使用されてきている。
【0004】
しかし、発泡剤としてシクロペンタンを用いると、ポリオールとの相溶性が悪いため濁りが発生しやすく、ポリオールプレミックスの貯蔵安定性が悪化する恐れがある。
【0005】
そこで、相溶性を改良するために、ひまし油に代表される相溶化剤を用いることで濁りを抑制し、良好な貯蔵安定性が得られることが開示されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、ひまし油を用いた場合、得られる発泡体の物性低下を引き起こす懸念があるため、相溶化剤として機能しながら、物性を維持、向上できる相溶化剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリオール混合物に相溶化剤を用いつつ、物性を向上することができる、硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物、および該組成物を用いた硬質ポリウレタンフォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は検討を重ねた結果、特定の塩素化パラフィンを用いることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち本発明は、以下の実施形態を含むものである。
【0011】
(1)ポリオール(A)、触媒(B)、整泡剤(C)、発泡剤(D)、および相溶化剤(E)を含む硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物であって、発泡剤(D)として水とシクロペンタンを併用し、相溶化剤(E)として平均炭素数が18未満である、塩素化パラフィン(e1)を含むことを特徴とする、硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物。
【0012】
(2)塩素化パラフィン(e1)の塩素含有量が55質量%未満であることを特徴とする、上記(1)に記載の硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【0013】
(3)上記(1)、または(2)に記載の硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物と、ポリイソシアネート組成物(F)とを含む硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【0014】
(4)上記(3)に記載の硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物から得られる硬質ポリウレタンフォーム。
【0015】
(5)上記(3)に記載の硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を反応発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ポリオール混合物に相溶化剤を用いつつ、物性を向上することができる、硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム形成用ポリオール組成物(以下、ポリオール組成物とも言う。)は、ポリオール(A)、触媒(B)、整泡剤(C)、発泡剤(D)、および相溶化剤(E)を含むものである。
【0019】
本発明におけるポリオール(A)としては、特に限定されるものではないが、水酸基を2個以上有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールから少なくとも1種類選ばれることが好ましい。
【0020】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ショ糖等の低分子ポリオール類、またはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、トリエタノールアミン等の芳香族および脂肪族ポリアミン類等の活性水素基を2個以上、好ましくは3~8個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオール、或いはメチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0021】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールとしては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるものを挙げることができる。また、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに代えて得られるポリエステル-アミドポリオールを使用することもできる。
【0022】
<ポリカプロラクトンポリオール>
ポリカプロラクトンポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上のポリオールを開始剤として、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンなどの環状エステル類を開環付加させることにより得られるポリカプロラクトンポリオールを挙げることができる。
【0023】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールの一種類以上と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類との脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるもの等を挙げることができる。
【0024】
ポリオール(A)としては、上記で挙げたポリオールのうちポリエーテルポリオールを使用することが好ましく、なかでもショ糖を開始剤として、プロピレンオキサイドを付加重合させたポリエーテルポリオールが好ましい。
【0025】
触媒(B)としては、当該分野において公知である各種のウレタン化触媒、イソシアヌレート化触媒等を使用でき、ウレタン化触媒とイソシアヌレート化触媒とを併用することが好ましい。
【0026】
ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン等のアミン化合物類、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-メチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、5-ジメチルアミノ-3-メチル-1-ペンタノール等のアルカノールアミン類等が挙げられる。これらのウレタン化触媒は単独で使用、もしくは2種以上を併用しても良い。
【0027】
イソシアヌレート化触媒としては、例えば4級アンモニウム塩類、炭素数2~12のカルボン酸のアルカリ金属塩、アセチルアセトンやサリチルアルデヒドのアルカリ金属塩、アミンのルイス酸錯体塩、金属触媒等を挙げることができる。
【0028】
触媒(B)は特に限定されるものではないが、ポリオール組成物中に、ウレタン化触媒を0.1~5.0質量%、イソシアヌレート化触媒を0.1~3.0質量%それぞれ含有することが好ましい。
【0029】
整泡剤(C)としては、ポリウレタンフォームの製造に用いられる市販品を用いることができる。このような整泡剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられ、有機シロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン-グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤等の有機シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、MOMENTIVE社製L5420、L5340、L6188、L6866、L6877、L6889、L6900、エボニック社製B8040、B8155、B8239、B8244、B8330、B8443、B8450、B8460、B8462、B8465、B8466、B8467、B8481、B8484、B8485、B8486、B8496、B8870、B8871、東レ・ダウコーニング社製SZ-1328、SZ-1642、SZ-1677、SH-193、エアプロダクツ社製DC-193、DC5598等が挙げられる。
【0030】
整泡剤(C)の添加量は、特に限定されないが、本発明の硬質ポリウレタンフォーム用組成物中に占める割合が、0.1~5質量%の範囲が好ましい。下限値より少ない場合気泡構造や気泡サイズが安定せず、均一な発泡体が得られない恐れがあり、上限値を超えるとポリオール組成物に濁りを生じ、貯蔵安定性を低下させる恐れがある。
【0031】
発泡剤(D)としては、シクロペンタンと水を使用する。必要に応じてシクロペンタン以外の市販の物理発泡剤を併用しても良い。物理発泡剤としては、例えば、HCFO-1233zd、HCFO-1233xf、ジクロロフッ化プロペン等のハイドロクロロフルオロオレフィン類、HFO-1234zf、E-HFO-1234ze、Z-HFO-1234ze、HFO-1234yf、E-HFO-1255ye、Z-HFO-125ye、E-HFO-1336mzz、Z-HFO-1336mzz、HFO-1438mzz等のハイドロフルオロオレフィン類、HFC-134a,HFC-245、HFC-236、HFC-356、HFC-365mfc、HFC-227ea等の式1で表わされる以外のHFC類、塩化メチレン等の低沸点のハロゲン系ハイドロカーボン類、プロパン、ブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン等のHC類、空気、窒素、二酸化炭素等の気体又は低温液体等が挙げられる。
【0032】
相溶化剤(E)としては、平均炭素数が18未満である、塩素化パラフィン(e1)を含む。前記塩素化パラフィンを用いることにより、ポリオール(A)とシクロペンタンの相溶性を高めポリオールプレミックスの貯蔵安定性を向上させることができる。さらに、得られるフォームの機械物性、特に圧縮強度が向上する。塩素化パラフィン(e1)の平均炭素数が18以上である場合は、ポリオール組成物の貯蔵安定性が悪化し、濁りの発生や成分の分離が起こり、均一なフォームが得られない。
【0033】
なかでも、塩素化パラフィン(e1)の塩素含有量が55質量%未満であることが好ましい。塩素化パラフィン(e1)の塩素含有量が55質量%以上である場合、ポリオール組成物の粘度が高くなり、混合不良により均一なフォームが得られない恐れがある。
【0034】
また、リン酸エステル成分を相溶化剤として併用することにより発泡体のセルの微細化が図れ、断熱性と難燃性を付与することができる。しかし、リン酸エステル成分の配合量が多すぎると機械物性が低下する傾向にあるため、塩素化パラフィン成分に対して50質量%以下であることが好ましい。
【0035】
前記したポリオール組成物と、有機ポリイソシアネート(F)とを反応させることにより硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0036】
本発明に用いることができる有機ポリイソシアネート(F)としては、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物を使用することが好ましい。このような有機ポリイソシアネートとしては特に限定されないが、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、それらとポリオールとの反応によるイソシアネート含有プレポリマー、及びこれらの二種以上の混合物等が挙げられる。
【0037】
さらに、これらのイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基含有変性物)やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の縮合体(多核体と称されることもある)も包含される。
【0038】
なかでも、有機ポリイソシアネート(F)は、いわゆる二核体と称される、1分子中にベンゼン環及びイソシアネート基を各2個有するジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、その多核体の混合物であるポリメリックMDIが好ましい。
【0039】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用組成物には、必要に応じてその他の添加剤を用いることができる。その他の添加剤としては、可塑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、抗カビ剤などを本発明の目的を損なわない範囲内で使用することができる。
【0040】
次に本発明における硬質ポリウレタンフォームの製造方法について説明する。
【0041】
本発明における硬質ポリウレタンフォームは、上記した硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を反応発泡させることにより得ることができる。
【0042】
具体的には、ポリオール(A)、触媒(B)、整泡剤(C)、発泡剤(D)、および相溶化剤(E)を含むポリオール組成物と、有機ポリイソシアネート(F)とを混合、発泡させ、硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。具体的には、前記ポリオール組成物と有機ポリイソシアネート(F)とを、たとえば、液温15~50℃、好ましくは20~30℃の範囲で攪拌混合し、金型等に導入することにより硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0043】
その際の有機ポリイソシアネート(F)のイソシアネート基(以下NCO基とも言う。)とポリオール組成物の活性水素基との割合は、NCO基と活性水素基(以下OH基とも言う。)の当量比(NCO基/OH基)=0.5~5.0の範囲が好ましく、0.8~2.0の範囲が特に好ましい。
【0044】
硬質ポリウレタンフォームを製造するにあたっては、各原料液を均一に混合可能であればいかなる装置でも使用することができる。例えば、小型ミキサーや、一般のウレタンフォームを製造する際に使用する、注入発泡用の低圧又は高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧又は高圧発泡機、連続ライン用の低圧又は高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機等を使用することができる。
【0045】
本発明によって得られる硬質ポリウレタンフォームは、注入用断熱材、ボード、パネル、冷蔵庫、庇、ドア、雨戸、サッシ、コンクリート系住宅、バスタブ、低温タンク機器、冷凍倉庫、パイプカバー、合板への吹き付け、結露防止、スラブ等、各種断熱材用途に適用できる。
【実施例】
【0046】
実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例において「部」は全て「質量部」、「%」はすべて「質量%」を意味する。
【0047】
<ポリオール組成物の調製>
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、PPGを75g、TEを2.5g、TRCを1.0g、シリコーン系を2.0g、水を3.4g、CPを10.7g、トヨパラックス145を25g仕込み、20℃で0.5時間撹拌し均一に混合して、表1の実施例1に示すポリオール組成物を調製した。また、実施例2~3、および比較例1~3に示すポリオール組成物も同様に調製した。
【0048】
【0049】
表1で用いた原料を以下に示す。
・ポリオール(A):
PPG:シュークロースを主成分とする開始剤にプロピレンオキシドを付加したポリエーテルポリオール、水酸基価=450KOHmg/g、平均官能基数=4.3
・触媒(B):
TE:N,N,N‘,N’-テトラメチルエチレンジアミン(商品名TOYOCA TE:東ソー社製)
TRC:N,N’,N’’-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)-ヘキサヒドロ-s-トリアジン(商品名TOYOCAT TRC:東ソー社製)
・整泡剤(C):
シリコーン系:シリコーン系整泡剤(商品名:L-6900、MOMENTIVE社製)
・発泡剤(D):
CP:シクロペンタン(商品名ゼオンソルブHP:日本ゼオン社製、沸点49℃)
・相溶化剤(E):
トヨパラックス145:塩素化パラフィン、平均炭素数14.5、塩素含有量=43.5%(東ソー社製)
トヨパラックス150:塩素化パラフィン、平均炭素数14.5、塩素含有量=50%(東ソー社製)
トヨパラックス160:塩素化パラフィン、平均炭素数14.5、塩素含有量=60%(東ソー社製)
トヨパラックスA40S:塩素化パラフィン、平均炭素数24.5、塩素含有量=40.5%(東ソー社製)
・その他
TCPP:トリスクロロプロピルホスフェート(大八化学工業社製)
・有機ポリイソシアネート(F):
MR-200:ポリメリックMDI(東ソー社製)、イソシアネート含有量31%。
【0050】
<ポリウレタンフォームの成形>
表1に示す処方に従って、20℃に温調したポリオール組成物と有機ポリイソシアネート(F)とを、ポリプロピレン製カップ中で、6000rpmで5秒間撹拌混合した後、あらかじめ45℃に保温したアルミ製縦型モールド(幅250mm、奥行き50mm、高さ250mm、上蓋なし)に所定量注入し、5分後に脱型後、上部からはみ出したフォームをカット除去し、硬質ポリウレタンフォームを得た。実施例2~3、比較例1~3についても同様にポリウレタンフォームを成形した。得られた硬質ポリウレタンフォームの物性を表1に示す。
【0051】
<評価試験方法>
(1)ポリオール組成物の貯蔵安定性
調製したポリオール組成物を50mlのサンプル瓶に入れ密栓し、20℃で2週間静置した後、外観を目視で評価した。評価Aであれば良好と言える。
[評価基準]
・均一で透明:A
・分離:C
<フォーム密度>
JIS A9511に基づき、得られたフォームの質量および体積から算出した。
<圧縮強度>
JIS A9511に基づき、JIS K7220に準拠して、圧縮強度を測定した。
フォームの中央部から30mm×30mm×30mmの大きさで切り出し、試験片とした。
圧縮強度が115kPa以上であれば良好と言える。
【0052】
<評価結果>
実施例1および2では、得られたフォームは高い圧縮強度を示した。また、ポリオール組成物の貯蔵安定性も良好であった。
【0053】
実施例3では、得られたフォームの圧縮強度は高い値を示した。塩素化パラフィン(e1)の塩素含有量が55%以上であるため、ポリオール組成物の粘度が高いが、実用上は問題のない範囲であった。
【0054】
比較例1は、塩素化パラフィンを用いていないため、ポリオール組成物の貯蔵安定性が悪く、分離が見られた。
【0055】
比較例2は、相溶化剤(E)としてリン酸エステル成分のみを用いたため、得られたフォームの圧縮強度が低下した。
【0056】
比較例3は、塩素化パラフィン(e1)の平均炭素数が18以上であるため、ポリオール組成物の貯蔵安定性が悪く、分離が見られた。