(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】吸着ピッキング装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/91 20060101AFI20231108BHJP
B65G 1/137 20060101ALI20231108BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B65G47/91
B65G1/137 A
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2020022790
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】押川 誠享
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-173580(JP,A)
【文献】特開2002-234615(JP,A)
【文献】特開2009-046223(JP,A)
【文献】特開平09-290392(JP,A)
【文献】特開2018-161722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0076883(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/91
B65G 1/137
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTPシートを吸着するための吸着ピッキング装置であって、
並べて配置された複数の吸着ノズルと、
前記複数の吸着ノズルを水平方向に旋回させる旋回装置と、
前記複数の吸着ノズルが並ぶ方向と前記PTPシートの粒部分が並ぶ方向とが平面視で傾斜角度を有するように、前記旋回装置を駆動させ、次に前記複数の吸着ノズルによって前記PTPシートを吸着させるコントローラと、
を備えた吸着ピッキング装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記PTPシートの種類を判別して、前記種類に基づいて前記旋回装置の回転角度を変更する、請求項1に記載の吸着ピッキング装置。
【請求項3】
前記複数の吸着ノズル及び前記旋回装置をイジェクト位置へ移動させる移動装置をさらに備え、
前記コントローラは、吸着時の前記傾斜角度を維持した状態でイジェクト時に前記旋回装置を駆動させる、請求項2に記載の吸着ピッキング装置。
【請求項4】
前記複数の吸着ノズルに対してそれぞれ別個独立に連結された複数の吸着機構をさらに備えている、請求項1~3のいずれかに記載の吸着ピッキング装置。
【請求項5】
前記吸着ノズルはひだ付きパッドを有している、請求項1~4のいずれかに記載の吸着ピッキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ピッキング装置、特に、PTPシートを吸着ピッキングする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保持対象の上面を吸着ノズルの真空吸着によって持ち上げるピッキングロボット及びピッキングシステムが知られている(特許文献1を参照)。
ピッキングロボットとして、従来、PTP(Press Through Pack)シートを吸着ピッキングする装置が知られている。この装置は、処方箋に基づいた調剤を行うために、ケースに収納されたPTPシートをピッキングして、患者用のトレイに移動する。患者用のトレイはさらに搬送されて、薬剤師等によってチェックされる。
PTPシートとは、薬を包装するためのものであり、錠剤やカプセルをプラスチックとアルミで挟んだシート状のものである。PTPシートは、粒(錠剤又はカプセルがある凸の部分)があるプラスチック製の表面と、平らなアルミ製の裏面とを有している。患者がPTPシートの表面の粒部分を強く押す事で裏面が破け、中の薬が1錠ずつ取り出される。なお、PTPシートは、全体の形状は長方形であるが、全体の大きさ、錠剤又はカプセルの大きさ、包材の配置が互いに異なる多種類を有している。
上記の吸着ピッキング装置は、例えば、PTPシートをピックするための2個のパッドを有している。2個のパッドは、PTPシートの長手方向に並んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PTPシートは、通常、重なり方向に隣接するもの同士は、表面同士が重なった組が交互に配置されている。つまり、上を向いている面は、表面と裏面が交互に現れるようになっている。この場合、PTPシートの裏面を吸着する際は問題がないが、表面を吸着する際は吸着パッドが粒と粒の間に入ってしまい又はその他の場合に吸着を失敗することがあった。
上記失敗の一因としては、吸着パッドの全周で粒に密着させることができなくて、空気漏れが発生してしまうことが考えられる。また、上記の空気漏れが、複数の吸着パッドの全てで発生してしまうことがあることも考えられる。
【0005】
図19を用いて、2つの吸着ノズルとPTPの平面位置関係の従来例を説明する。
図19は、2つのノズルとPTPシートの粒分との平面位置関係を示す平面図(従来例)である。
PTPシート3は、カプセルシートであって、平面視で一方向に長く延びている。
この従来例では、第1の吸着ノズル21Aと第2の吸着ノズル21Bの並び方向と粒部分3Aの並び方向は一致している。つまり、第1の吸着ノズル21Aと第2の吸着ノズル21Bの並び方向と粒部分3Aの並び方向(図左右方向)は平面視で平行である。
そして、この例では、第1の吸着ノズル21Aと第2の吸着ノズル21Bは、粒部分3A同士の間に配置されているので、十分な吸着力を維持できない。
【0006】
さらに、
図20を用いて、2つの吸着ノズルとPTPの平面位置関係の従来例を説明する。
図20は、2つのノズルとPTPシートの粒分との平面位置関係を示す平面図である。
PTPシート3は、錠剤シートであって、粒部分3Aは平面視で丸形状である。
この従来例では、第1の吸着ノズル21Aと第2の吸着ノズル21Bの並び方向と粒部分3Aの並び方向は一致している。つまり、第1の吸着ノズル21Aと第2の吸着ノズル21Bの並び方向と粒部分3Aの並び方向(図左右方向)とは平面視で平行である。
そして、この例では、第1の吸着ノズル21Aと第2の吸着ノズル21Bは、粒部分3A同士の間に配置されているので、十分な吸着力を維持できない。
このような問題を解決するために、吸着パッドの面積を広くすることが考えられるが、その場合は対応できる品種が少なくなる。また、吸着パッドの全体面積を変更せずに、多数の小さい吸着パッドを設けることも考えられるが、その場合は吸着力が不足してPTPシートを搬送できなくなる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、吸着ピッキング装置において、PTPシートを安定して1枚ずつ高速にピックできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る吸着ピッキング装置は、PTPシートを吸着するためのものであって、複数の吸着ノズルと、旋回装置と、コントローラとを備えている。
複数の吸着ノズルは、並べて配置されている。
旋回装置は、複数の吸着ノズルを水平方向に旋回させる。
コントローラは、複数の吸着ノズルが並ぶ方向とPTPシートの粒部分が並ぶ方向とが平面視で傾斜角度を有するように、旋回装置を駆動させ、次に複数の吸着ノズルによってPTPシートを吸着させる。
この装置では、吸着ノズルを旋回させて粒部分を吸着することで、PTPシートを確実にピッキングできる。その理由は、複数の吸着ノズルが並ぶ方向とPTPシートの粒部分が並ぶ方向とが平面視で傾斜角度を有するので、2個の吸着ノズルの少なくとも一方がPTPシートの粒部分に対応して配置されるからである。この結果、画像認識は行わずとも、PTPシートを安定して1枚ずつ高速にピックできる。
なお、PTPシートは、例えば、錠剤シート、カプセルシート、ブリスターパックを含む。
【0009】
コントローラは、PTPシートの種類を判別して、種類に基づいて旋回装置の回転角度を変更してもよい。
この装置では、PTPシートに応じた旋回角度とすることで、PTPシートを確実にピッキングできる。なお、「PTPシートの種類」は、例えば、PTPシートを収容するケースの収容区画の大きさの種類、PTPシート自体の種類を含む。
【0010】
吸着ピッキング装置は、複数の吸着ノズル及び旋回装置をイジェクト位置へ移動させる移動装置をさらに備えていてもよい。
コントローラは、吸着時の傾斜角度を維持した状態でイジェクト時に旋回装置を駆動させてもよい。
この装置では、イジェクト時にPTPシートの向きを揃える制御動作が簡単になる。
【0011】
吸着ピッキング装置は、複数の吸着ノズルに対してそれぞれ別個独立に連結された複数の吸着機構をさらに備えていてもよい。
この装置では、一方の吸着ノズルが吸着に失敗しても、他方の吸着ノズルによってPTPシートを吸着させることができる。
【0012】
吸着ノズルはひだ付きパッドを有していてもよい。
この装置では、吸着パッドのヒダによって、PTPシートの粒部分に吸着パッドが巻き付くように当接するので、吸着力が大きくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る吸着ピッキング装置では、PTPシートを安定して1枚ずつ高速にピックできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】吸着ピッキング装置の全体構成を示す模式的斜視図。
【
図2】吸着ピッキング装置の一部を示す模式的斜視図。
【
図5】吸着ピッキング装置の制御構成を示すブロック図。
【
図6】吸着ピッキング装置の制御動作を示すフローチャート。
【
図7】吸着ピッキング装置の吸着前状態を示す模式的側面図。
【
図8】吸着ピッキング装置の吸着状態を示す模式的側面図。
【
図9】ケースとトレイの間でのPTPシートの移動状態を示す模式的平面図。
【
図10】ケースと2つの吸着ノズルとの平面位置関係を示す平面図。
【
図11】ケースと2つの吸着ノズルとの平面位置関係を示す平面図。
【
図12】ケースと2つの吸着ノズルとの平面位置関係を示す平面図。
【
図13】ケースと2つの吸着ノズルとの平面位置関係を示す平面図。
【
図14】2つのノズルとPTPシートの粒部分との平面位置関係を示す平面図。
【
図15】吸着パッドがPTPシートの側面に密着した状態を示す模式図。
【
図16】2つのノズルとPTPシートの粒部分との平面位置関係を示す平面図。
【
図17】2つのノズルとPTPシートの粒部分との平面位置関係を示す平面図。
【
図18】2つのノズルとPTPシートの粒部分との平面位置関係を示す平面図。
【
図19】2つのノズルとPTPシートの粒部分との平面位置関係を示す平面図(従来例)。
【
図20】2つのノズルとPTPシートの粒部分との平面位置関係を示す平面図(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.第1実施形態
(1)吸着ピッキング装置の全体構成
図1~
図3を用いて、吸着ピッキング装置を説明する。
図1は、吸着ピッキング装置の全体構成を示す模式的斜視図である。
図2は、吸着ピッキング装置の一部を示す模式的斜視図である。
図3は、ケース及びPTPシートの模式的斜視図である。
吸着ピッキング装置1は、接触式の吸着保持システムであり、例えば錠剤の薬が複数個並べて個別に収容されるPTP(Press Through Pack)シート3が複数枚重ねられたケース5から一番上のものを吸着して持ち上げることで、トレイ7に移載する(ピッキング動作)。
吸着ピッキング装置1は、保持装置9と、移動装置11とを備えている。
保持装置9は、PTPシート3を吸着する装置である(後述)。
移動装置11は、保持装置9を、ピッキング位置のケース5とイジェクト位置のトレイ7との間でPTPシート3を水平姿勢で移動させる装置である。
【0016】
(2)ケース及びPTPシート
前述のように、ケース5には、
図3に示すように、複数枚のPTPシート3が積載されている。なお、1つのケース5には、1種類のPTPシート3が収納される。
ケース5は、底壁部と周壁部とを備えて上方に開口する容器状に形成されており、その内部にPTPシート3を収容する収容空間を有している。ケース5は、さらに、収容空間を水平方向に複数の収容区画39に区分けする仕切り壁17を有している。各収容区画39内には、複数枚のPTPシート3を積層状態で収容される。なお、仕切り壁17は着脱自在であり、仕切り壁17を装着する位置を変更することで収容区画39の大きさを変更できる。
【0017】
トレイ7は、ケース5と同様に底壁部と周壁部とを備えて上方に開口する容器状に形成されており、その内部にPTPシート3を収容する収容空間が形成されている。
【0018】
(3)保持装置
保持装置9は、2本の吸着ノズル21を有している。吸着ノズル21は、管状の部材である。吸着ノズル21は、
図4に示すように、ゴム等の弾性体で形成されて柔軟性を有する蛇腹状ひだ付きの吸着パッド23を先端に有している。
図4は、吸着パッドの断面図である。
2本の吸着ノズル21は、並べて配置されている。つまり、2本の吸着ノズル21は、一枚のPTPシート3を吸着可能な比較的近い位置に間隔をあけて配置されている。
【0019】
保持装置9は、複数の吸着機構25(
図5)をさらに備えている。複数の吸着機構25は、各吸着ノズル21に対して別個独立に連結されている。各吸着機構25は、真空ポンプ27(
図5)と、吸着ノズル21と真空ポンプ27とを接続するエアチューブ(図示せず)と、真空ポンプ27とエアチューブの間に設けられ各吸着ノズル21の吸着状態と吸着解除状態とを各別に切換え自在な切換バルブ29(
図5)とを有している。
保持装置9は、案内装置10によって、上下移動自在になっている。案内装置10の構造は特に限定されるものではなく、公知の技術である。案内装置10は、例えば直動ガイド機構を有している。なお、案内装置10については、駆動源の有無は限定されない。また、吸着機構は、真空ポンプではなく、エアの流れで負圧を作り出す装置でもよい。
【0020】
(4)移動装置
移動装置11は、案内装置10の上端部を支持し、保持装置9と共に案内装置10を移動させるいわゆるロボットである。具体的には、移動装置11は、パラレルリンクロボットである。
移動装置の種類は特に限定されるものではなく、案内装置10を上下方向にのみ往復動させる装置でもよい。また、移動装置11は、多関節ロボット、複数の直動機構が組み合わされて構成される関節を備えないロボットなどであってもよい。
移動装置11は、旋回装置13を有している。旋回装置13は、保持装置9つまり、複数の吸着ノズル21を縦軸心回りに(つまり、水平方向に)旋回させる。具体的には、旋回装置13は、移動装置11のロボットアーム先端に装着されており、案内装置10及び保持装置9を回転させる。
【0021】
(5)吸着ピッキング装置の制御構成
図5を用いて、吸着ピッキング装置1の制御構成を説明する。
図5は、吸着ピッキング装置の制御構成を示すブロック図である。
コントローラ51は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。コントローラ51は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
コントローラ51は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
【0022】
コントローラ51は、移動制御部53と、保持制御部55とを備えている。
移動制御部53は、保持装置9を所定の場所に移動するように移動装置11が備えるモータ等の駆動源を制御する処理部である。保持制御部55は、PTPシート3を保持する、又は保持しているPTPシート3を解放する制御を保持装置9に対して実行する処理部である。
コントローラ51の各要素の機能は、一部又は全てが、コントローラ51を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、コントローラ51の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
コントローラ51には、図示しないが、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0023】
(6)吸着ピッキング装置の制御動作
図6を用いて、移動制御部53及び保持制御部55の制御による吸着ピッキング装置1の動作を説明する。
図6は、吸着ピッキング装置の制御動作を示すフローチャートである。
図7は、吸着ピッキング装置の吸着前状態を示す模式的側面図である。
図8は、吸着ピッキング装置の吸着状態を示す模式的側面図である。
以下に説明する制御フローチャートは例示であって、各ステップは必要に応じて省略及び入れ替え可能である。また、複数のステップが同時に実行されたり、一部又は全てが重なって実行されたりしてもよい。
さらに、制御フローチャートの各ブロックは、単一の制御動作とは限らず、複数のブロックで表現される複数の制御動作に置き換えることができる。
なお、各装置の動作は、制御部から各装置への指令の結果であり、これらはソフトウェア・アプリケーションの各ステップによって表現される。
【0024】
処方箋にバーコード等で示された処方箋情報を読取装置(図示せず)にて読み取ることで、処方箋情報が出庫指令装置(図示せず)に入力される。この場合、保管されているPTPシートの在庫情報が出庫指令装置にあり、出庫指令装置が該当するPTPシート3が収納されているケース5に関する出庫指令をコントローラ51に送信する。出庫指令には、処方箋情報に示されている処方薬の種類を示す出庫種類情報や、各種類における出庫する処方薬の個数を示す出庫数情報が含まれている。
さらに、ケース5にバーコード等で示された収容区画情報(収容区画の種類)を読取装置(図示せず)にて読み取る(PTPシートの種類を判別する動作の一例)ことで、当該情報が管理情報として、コントローラ51に入力される。なお、収容区画情報は、その都度読み取るものではなく、在庫情報に含ませてもよい。また、収容区画の幅はPTPシート3の幅に概ね対応している。
コントローラ51は、出庫数情報と管理情報とに基づいて、PTPシート3を取り出す取出対象の収容区画39を決定する。
【0025】
図6のステップS1では、ケース5がコンベア(図示せず)によってピッキング位置に搬入されるのを待つ。
ステップS2では、
図7に示すように、保持装置9がケース5の対象の収容区画39の真上に移動する。具体的には、コントローラ51が、移動装置11を制御することで上記動作を実行させる。
【0026】
ステップS3では、旋回装置13が旋回して、複数の吸着ノズル21が並ぶ方向とPTPシート3の粒部分3Aが並ぶ方向(例えば、PTPシートの長手方向)とが、平面視で傾斜角度を有するようになる(後述)。コントローラ51は、PTPシート3を収容するケース5の収容区画39の大きさに基づいて(PTPシートの種類を判別する動作の一例)、旋回装置13の回転角度を設定する(後述)。
なお、ステップS2とステップS3は順序が反対でもよく、同時でもよい。
【0027】
ステップS4では、
図8に示すように、保持装置9が下降する。具体的には、コントローラ51は保持装置9を制御することで上記動作を実行させる。なお、
図8にはノズルを上下にスライドする機構を備えているが、この機構は省略されてもよい。
ステップS5では、2つの吸着ノズル21がPTPシート3を吸着する。具体的には、コントローラ51が、2つの切換バルブ29を開状態に切換え制御する。
【0028】
ステップS6では、保持装置9が上昇して、PTPシート3を持ち上げる。具体的には、コントローラ51が、移動装置11を制御することで上記動作を実行させる。
ステップS7では、保持装置9が、吸着時の傾斜角度を維持しつつ、旋回する。具体的には、コントローラ51が、移動装置11の旋回装置13を制御することで、上記動作を実行する。例えば、
図9に示すように、旋回装置13は、吸着状態から保持装置を90度回転させて、その状態でPTPシート3をトレイ7に配置する。トレイ7では、PTPシートの長手方向がトレイ7の長手方向と一致する。つまり、トレイ7においてPTPシート3の向きがそろう。
図9は、ケースとトレイの間でのPTPシートの移動状態を示す模式的平面図である。
この結果、搬出されるPTPシート3の向きがそろう。以上より、イジェクト時にPTPシート3の向きをそろえる制御動作が簡単になる。
なお、ステップS6とステップS7は、は順序が反対でもよく、同時でもよい。
【0029】
ステップS8では、保持装置9がトレイ7の真上に移動する。具体的には、コントローラ51が、移動装置11を制御することで、上記動作を実行する。
ステップS9では、保持装置9が下降して、PTPシート3をトレイ7に近接した位置まで移動させる。具体的には、コントローラ51は、移動装置11を制御することで上記動作を実行させる。
【0030】
ステップS10では、2つの吸着ノズル21がPTPシート3の吸着を解除する。具体的には、コントローラ51が、2つの切換バルブ29を閉状態に切換え制御する。この結果、PTPシート3がトレイ7に収容される。
ステップS11では、コントローラ51が当該ケース5からのピッキングが終了したか否かを判断する。終了すればプロセスは終了し、終了していなければプロセスはステップS1に戻る。
【0031】
(7)実施形態の効果
吸着ピッキング装置1では、複数の吸着ノズル21を旋回させて粒部分3Aを吸着することで、PTPシート3を確実にピッキングできる。その理由は、複数の吸着ノズル21が並ぶ方向とPTPシート3の粒部分3Aが並ぶ方向(例えば、PTPシート3の長手方向)とが平面視で傾斜角度を有するので、2つの吸着ノズル21の少なくとも一方がPTPシート3の粒部分3Aに対応して配置されるからである。この結果、画像認識は行わずとも、PTPシート3を安定して1枚ずつ高速にピックできる。
上記の複数の吸着ノズルの動作は、下記のように表現できる。ノズル中心をつなぐ軸線と、PTPシート3内で直列に並んだ粒部分3Aの中心をつなぐ軸線とが、1~89°、好ましくは10~30°の角度で交わる状態で、吸着ノズル21を下降させて、PTPシート3に吸着ノズル21を接触させる。
【0032】
(7-1)ケースの収容区画と2つの吸着ノズルの平面位置関係(第1例)
図10及び
図11を用いて、ケース5の収容区画と2つの吸着ノズルの平面位置関係の第1例を説明する。
図10及び
図11は、ケースと2つの吸着ノズルとの平面位置関係を示す平面図である。なお、上記の図においては、仕切り板とPTPシートの間の隙間は省略されている。
図10のケース5A及び
図11のケース5Bは、図上下方向に長く延びており、図左右方向に延びる複数の横方向仕切り板17Aを有している。これにより、
図10のケース5Aと
図11のケース5Bとに、図横方向に延びる収容区画41、43がそれぞれ形成されている。つまり、収容区画41、43では、図横方向がPTPシートの長手方向になる。
【0033】
図10のケース5Aの収容区画41は合計4個であり、
図11のケース5Bの収容区画43は合計3個である。したがって、
図11のケース5Bの収容区画41が、
図10のケース5Aの収容区画43より図上下方向幅が広く、より幅が広いPTPシート3を収容可能である。
さらに、2個の吸着ノズル21並び方向と粒部分3Aの並び方向(図左右方向)との平面視傾斜角度は、
図11のケース5Bのθ2が
図10のケース5Aのθ1に比べて大きくなっている。このように、収容空間の幅の大きさによって前述の傾斜角度を変更することで、吸着結果が良くなる。
【0034】
(7-2)ケースの収容区画と2つの吸着ノズルの平面位置関係(第2例)
図12及び
図13を用いて、ケース5の収容区画と2つの吸着ノズル21の平面位置関係の第2例を説明する。
図12及び
図13は、ケースと2つの吸着ノズルとの平面位置関係を示す平面図である。
図12のケース5C及び
図13のケース5Dは、図上下方向に長く延びており、図上下方向に延びる縦方向仕切り板17Bを有している。これにより、
図12のケース5Cと
図13のケース5Dとに、図縦方向に延びる収容区画45、47がそれぞれ形成されている。つまり、収容区画45、47では、図縦方向がPTPシート3の長手方向になる。
図12のケース5Cの収容区画45は合計2個であり、
図13のケース5Dの収容区画47は合計1個である。したがって、
図13のケース5Dの収容区画47が、
図12のケース5Cの収容区画45より、図左右方向幅が広く、より幅が広いPTPシート3を収容可能である。
【0035】
さらに、2個の吸着ノズル21の並び方向と粒部分3Aの並び方向(図上下方向)との傾斜角度は、
図13のケース5Dのθ4が
図12のケース5Cのθ3に比べて大きくなっている。このように収容区画の大きさに応じて前述の傾斜角度を変更することで、吸着結果が良くなる。
【0036】
(7-3)2つの吸着ノズルとPTPシートの平面位置関係(第1例)
図14及び
図15を用いて、2つの吸着ノズルとPTPの平面位置関係の第1例を説明する。
図14は、2つのノズルとPTPシートの粒分との平面位置関係を示す平面図である。
図15は、吸着パッドがPTPシートの側面に密着した状態を示す模式図である。
PTPシート3は、カプセルシートであって、平面視で一方向に長く延びている。
第1の吸着ノズル21Aは、粒部分3A同士の間に配置されているので、十分な吸着力を維持できない。しかし、第2の吸着ノズル21Bは、
図14及び
図15に示すように、吸着パッド23のヒダ部分が一つの粒部分3Aの長手側面上部3A1に巻き付くように密着しているので、十分な吸着力が発生している。以上に述べたように、2個の吸着ノズルのうち一方が粒部分3Aから外れていても、他方が粒部分3Aに対応していれば、PTPシート3を吸着搬送可能である。
【0037】
(7-4)2つの吸着ノズルとPTPシートの平面位置関係(第2例)
図16を用いて、2つの吸着ノズルとPTPの平面位置関係の第2例を説明する。
図16は、2つのノズルとPTPシートの粒分との平面位置関係を示す平面図である。
PTPシート3は、カプセルシートであって、平面視で一方向に長く延びている。
この場合、第2の吸着ノズル21Bは、粒部分3A同士の間に配置されているので、十分な吸着力を維持できない。しかし、第1の吸着ノズル21Aは、吸着パッド23のヒダ部分が一つの粒部分3Aの長手側面上部3A2に巻き付くように密着しているので、十分な吸着力が発生している。以上に述べたように、2個の吸着ノズルのうち一方が粒部分3Aから外れていても、他方が粒部分3Aに対応していれば、PTPシート3を吸着搬送可能である。
【0038】
(7-5)2つの吸着ノズルとPTPシートの平面位置関係(第3例)
図17を用いて、2つの吸着ノズルとPTPの平面位置関係の第3例を説明する。
図17は、2つのノズルとPTPシートの粒分との平面位置関係を示す平面図である。
PTPシート3は、錠剤シートであって、粒部分3Aは平面視で丸形状である。
第1の吸着ノズル21Aは、粒部分3A同士の間に配置されているので、十分な吸着力を維持できない。しかし、第2の吸着ノズル21Bは、
図17に示すように、吸着パッド23のヒダ部分が一つの粒部分3Aの一側面上部3A3に巻き付くようになっているので、十分な吸着力が発生している。以上に述べたように、2個の吸着ノズルのうち一方が粒部分3Aから外れていても、他方が粒部分3Aに対応していれば、PTPシート3を吸着搬送可能である。
【0039】
(7-6)2つの吸着ノズルとPTPシートの平面位置関係(第4例)
図18を用いて、2つの吸着ノズルとPTPの平面位置関係の第4例を説明する。
図18は、2つのノズルとPTPシートの粒分との平面位置関係を示す平面図である。
PTPシート3は、錠剤シートであって、粒部分3Aは平面視で丸形状である。
この場合、第2の吸着ノズル21Bは、粒部分3A同士の間に配置されているので、十分な吸着力を維持できない。しかし、第1の吸着ノズル21Aは、
図18に示すように、吸着パッド23のヒダ部分が一つの粒部分3Aの一側面上部3A4に巻き付くように密着しているので、十分な吸着力が発生している。以上に述べたように、2個の吸着ノズルのうち一方が粒部分3Aから外れていても、他方が粒部分3Aに対応していれば、PTPシート3を吸着搬送可能である。
【0040】
(7-7)実施形態の効果のまとめ
本実施形態の吸着ピッキング装置1では、一方の吸着ノズルが吸着に失敗しても、他方の吸着ノズルによってPTPシートを吸着することができる。したがって、PTPシートを確実にピッキングできる。
本実施形態の吸着ピッキング装置1では、吸着パッド23のヒダによって、PTPシート3の粒部分3Aに吸着パッド23が巻き付くように密着する場合がある。その場合は特に吸着力が大きくなる。
【0041】
2.実施形態の特徴
吸着ピッキング装置1(吸着ピッキング装置の一例)は、PTPシート3(PTPシートの一例)を吸着するためのものであって、複数の吸着ノズル21と、旋回装置13と、コントローラ51とを備えている。
複数の吸着ノズル21(複数の吸着装置の一例)は、並べて配置されている。
旋回装置13(旋回装置の一例)は、複数の吸着ノズル21を水平方向に旋回させる。
コントローラ51は、複数の吸着ノズル21が並ぶ方向とPTPシート3の粒部分3Aが並ぶ方向(例えば、PTPシート3の長手方向)とが平面視で傾斜角度を有するように、旋回装置13を駆動させ、次に複数の吸着ノズル21によってPTPシート3を吸着させる。
【0042】
この装置では、2個の吸着ノズル21を旋回させて粒部分3Aを吸着することで、PTPシート3を確実にピッキングできる。その理由は、複数の吸着ノズル21が並ぶ方向とPTPシート3の粒部分が並ぶ方向(例えば、PTPシート3の長手方向)とが平面視で傾斜角度を有するので、2個の吸着ノズル21の少なくとも一方がPTPシート3の粒部分に対応して配置されるからである。この結果、画像認識は行わずとも、PTPシート3を安定して1枚ずつ高速にピックできる。
【0043】
3.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(1)上記実施形態においては、吸着ノズルの数は2つであったが、3つ以上の任意の数としてもよい。
(2)PTPシートの平面視形状は、矩形状に限らず、例えば円形等、種々の形状であってもよい。
【0044】
(3)2つのノズルの並び方向と粒部分の並び方向との平面視傾斜角度は、PTPシート自体の種類に基づいて決定されてもよい。
(4)複数の吸着ノズルは単独の吸着機構に連結されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、PTPシートを吸着ピッキングする吸着ピッキング装置に関する。
【符号の説明】
【0046】
1 :吸着ピッキング装置
3 :PTPシート
3A :粒部分
3A1 :長手側面上部
3A2 :長手側面上部
3A3 :一側面上部
3A4 :一側面上部
5 :ケース
5A :ケース
5B :ケース
5C :ケース
5D :ケース
7 :トレイ
9 :保持装置
10 :案内装置
11 :移動装置
13 :旋回装置
17 :仕切り壁
17A :横方向仕切り板
17B :縦方向仕切り板
21 :吸着ノズル
21A :第1の吸着ノズル
21B :第2の吸着ノズル
23 :吸着パッド
25 :吸着機構
27 :真空ポンプ
29 :切換バルブ
39 :収容区画
41 :収容区画
43 :収容区画
45 :収容区画
47 :収容区画
51 :コントローラ
53 :移動制御部
55 :保持制御部