(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ワイヤロープ絡み付き防止冶具
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
B66C13/00 G
(21)【出願番号】P 2020024002
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019030376
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 晃
(72)【発明者】
【氏名】梶川 洋岳
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-040289(JP,U)
【文献】特開昭61-285014(JP,A)
【文献】実開平03-116386(JP,U)
【文献】特開昭60-106796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;19/00-23/94
B66D 1/00- 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のフックと、第2のフックと、前記第1のフックを支持する第1のワイヤロープと、前記第2のフックを支持する第2のワイヤロープとを有する作業車両用のワイヤロープ絡み付き防止冶具であって、
前記第1のワイヤロープを挿通する第1の領域と、
前記第2のワイヤロープを挿通する第2の領域と、
を有
し、
前記ワイヤロープ絡み付き防止治具は、外形が枠状部材で構成されており、
前記第1の領域には、前記枠状部材が形成する面の第1の軸方向に伸長する第1のガイドローラと、前記第1のガイドローラと平行に伸長する第2のガイドローラと、前記枠状部材が形成する面の第2の軸方向に伸長する第1のピンと、前記第1のピンと平行に伸長する第2のピンと、が設けられており、
前記第2の領域には、前記枠状部材が形成する面の第3の軸方向に伸長する第3のガイドローラと、前記第3のガイドローラと平行に伸長する第4のガイドローラと、前記枠状部材が形成する面の第4の軸方向に伸長する第3のピンと、前記第3のピンと平行に伸長する第4のピンと、が設けられており、
前記枠状部材の前記第1の領域及び/又は前記第2の領域の底面側には、板状部材が設けられている、
ワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項2】
少なくとも第1のフックと、第2のフックと、前記第1のフックを支持する第1のワイヤロープと、前記第2のフックを支持する第2のワイヤロープとを有する作業車両用のワイヤロープ絡み付き防止冶具であって、
前記第1のワイヤロープを挿通する第1の領域と、
前記第2のワイヤロープを挿通する第2の領域と、
を有し、
前記ワイヤロープ絡み付き防止治具は、外形が枠状部材で構成されており、
前記第1の領域には、前記枠状部材が形成する面の第1の軸方向に伸長する第1のガイドローラと、前記第1のガイドローラと平行に伸長する第2のガイドローラと、前記枠状部材が形成する面の第2の軸方向に伸長する第1のピンと、前記第1のピンと平行に伸長する第2のピンと、が設けられており、
前記第2の領域には、前記枠状部材が形成する面の第3の軸方向に伸長する第3のガイドローラと、前記第3のガイドローラと平行に伸長する第4のガイドローラと、前記枠状部材が形成する面の第4の軸方向に伸長する第3のピンと、前記第3のピンと平行に伸長する第4のピンと、が設けられており、
前記枠状部材の前記第2の領域の底面側には、前記第2のフックの外周形状に追従する傘状部材が、前記第2のフックの前記第1のフック側にだけ設けられている、
ワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項3】
前記第1の軸方向と前記第3の軸方向とは同じ方向であり、前記第2の軸方向と前記第4の軸方向とは同じ方向であり、前記第1の軸方向と前記第2の軸方向とは直交する、
請求項
1又は2に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項4】
前記第1の領域には、前記第1の軸方向に伸長する第5のガイドローラと、前記第5のガイドローラと平行に伸長する第6のガイドローラと、前記第2の軸方向に伸長する第5のピンと、前記第5のピンと平行に伸長する第6のピンと、が設けられている、
請求項
1又は2に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項5】
前記枠状部材の前記第1の領域の一方の側面側には、前記第1のワイヤロープを挿通するための第1の窓部が設けられており、
前記枠状部材の前記第2の領域の一方の側面側には、前記第2のワイヤロープを挿通するための第2の窓部が設けられている、
請求項
1又は2に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項6】
前記枠状部材の前記第1の領域及び/又は前記第2の領域の底面側には、板状部材が設けられている、
請求項2に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項7】
前記枠状部材の前記第1の領域の底面側には、前記第1のフックの外周形状に追従する傘状部材が設けられており、
前記枠状部材の前記第2の領域の底面側には、前記第2のフックの外周形状に追従する傘状部材が設けられている、
請求項
1又は2に記載のワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項8】
少なくとも第1のフックと、第2のフックと、前記第1のフックを支持する第1のワイヤロープと、前記第2のフックを支持する第2のワイヤロープとを有する作業車両用のワイヤロープ絡み付き防止冶具であって、
前記第1のワイヤロープを挿通する第1の領域と、
前記第2のワイヤロープを挿通する第2の領域と、
を有し、
前記第1の領域は、前記第1のワイヤロープを挿通する第1の挿通穴を有する第1の板
状部を有し、
前記第2の領域は、前記第2のワイヤロープを挿通する第2の挿通穴を有する第2の板状部を有し、
更に前記第1の板状部と前記第2の板状部とを接続する接続部を有し、
前記第1の板状部には、前記第1の板状部の周縁部から垂下する第1の傘状部が設けられており、
前記第2の板状部には、前記第2の板状部の周縁部から垂下する第2の傘状部が設けられており、
前記接続部は、前記第1の板状部と前記第2の板状部との間の距離を可変可能に構成されている、
ワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項9】
少なくとも第1のフックと、第2のフックと、前記第1のフックを支持する第1のワイヤロープと、前記第2のフックを支持する第2のワイヤロープとを有する作業車両用のワイヤロープ絡み付き防止冶具であって、
前記第1のワイヤロープを挿通する第1の領域と、
前記第2のワイヤロープを挿通する第2の領域と、
を有し、
前記第1の領域は、前記第1のワイヤロープを挿通する第1の挿通穴を有する第1の板
状部を有し、
前記第2の領域は、前記第2のワイヤロープを挿通する第2の挿通穴を有する第2の板状部を有し、
更に前記第1の板状部と前記第2の板状部とを接続する接続部を有し、
前記第1の板状部には、前記第1の板状部の周縁部から垂下する第1の傘状部が設けられており、
前記第2の板状部には、前記第2の板状部の周縁部から垂下する第2の傘状部が設けられており、
前記第1の挿通穴の外周縁の一部には、開閉可能な第1の窓部が形成されており、前記第1の傘状部には、前記第1の窓部に連通するスリットが設けられており、
前記第2の挿通穴の外周縁の一部には、開閉可能な第2の窓部が形成されており、前記第2の傘状部には、前記第2の窓部に連通するスリットが設けられている、
ワイヤロープ絡み付き防止治具。
【請求項10】
前記接続部は、前記第1の板状部と前記第2の板状部との間の距離を可変可能に構成されている、
請求項9に記載のワイヤロープ絡み付き防止冶具。
【請求項11】
前記第1の挿通穴及び前記第2の挿通穴には、ワイヤロープのガイドローラが設けられている、請求項
8又は9に記載のワイヤロープ絡み付き防止冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンなどの作業車両のワイヤロープの絡み付きを防止するワイヤロープ絡み付き防止冶具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、移動式クレーンなどの作業車両の多くでは、主巻フックと補巻フックとの2つのフックを有しており、主巻フックには、ワイヤロープを複数本掛け、補巻フックにはワイヤロープを1本掛けで使用される。
【0003】
通常、主巻フックと補巻フックとのいずれは一方のフックを使用して作業する場合、使用しない他方のフックをできるだけ巻き上げてワイヤを短くすることで、使用している側のワイヤロープに使用していないフックが絡みつくことを防止する。しかしながら、この方法では絡み付きを完全には抑制できないため、特許文献1には、過巻検出用のブロックに複数のワイヤロープを通すことで、絡み付きを防止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の方法では、完全に絡み付きを防止することはできず、また、使用していない側のフックが繰り出されている場合には、絡み付き防止の効果が少ない。特に、実際の作業現場では、作業効率の観点等から使用していない側のフックも繰り出されたままであることも多く、その場合でも絡み付きを防止する方法が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、2個のフックと2本のワイヤロープに対して、一方のフックがもう一方のフックを支持するワイヤロープに絡みつくのを防止するワイヤロープ絡み付き防止冶具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも第1のフックと、第2のフックと、前記第1のフックを支持する第1のワイヤロープと、前記第2のフックを支持する第2のワイヤロープとを有する作業車両用のワイヤロープ絡み付き防止冶具であって、
前記第1のワイヤロープを挿通する第1の領域と、
前記第2のワイヤロープを挿通する第2の領域と、
を有する、ワイヤロープ絡み付き防止治具。
【発明の効果】
【0008】
2個のフックと2本のワイヤロープに対して、一方のフックがもう一方のフックを支持するワイヤロープに絡みつくのを防止するワイヤロープ絡み付き防止冶具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る作業車両の一例の概略図である。
【
図2】本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の一例の概略図である。
【
図3】従来の主巻フック使用時のクレーンの様子を説明する概略図である。
【
図4】本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具を使用した場合の、クレーンの様子を説明する概略図である。
【
図5】本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具にオフセットを設けない場合の、クレーンの様子を説明する概略図である。
【
図6】本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具にオフセットを設けた場合の、クレーンの様子を説明する概略図である。
【
図7】本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の他の例の概略斜視図である。
【
図8】本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の他の例の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具を使用する作業車両としては、移動式クレーン、高所作業車、ホイルローダー、油圧ショベル等が挙げられる。移動式クレーンとしては、例えば、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、積載形トラッククレーン等が挙げられる。
【0011】
(クレーンの構成)
以下、本実施形態に係る一例としてのワイヤロープ絡み付き防止治具を使用する作業車両の全体構成について、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態に係る作業車両の一例の概略図を示す。なお、
図1は、一例としてクレーン車1の主巻フック17に吊荷16が玉掛けされている様子を示している。
【0012】
本実施形態に係るクレーン車1は、走行体(キャリヤ)2と旋回台3とを備える。走行体2は、走行機能を有する車両の本体部分(車体)となり、複数の車輪と、車輪及び旋回台3を駆動する駆動源と、を有する。
【0013】
走行体2には、前側及び後側に各々、左右一対のアウトリガ4(
図1には、走行体2の右側のみ図示している)が設けられる。各アウトリガ4は、左右に張り出しかつ格納を可能とし、適宜張り出して地面Gに接地することでブーム8を用いた作業時に走行体2を安定して支持する。
【0014】
旋回台3は、走行体2の上部に水平旋回可能に設けられ、一体的に旋回可能なキャビン5とブームサポート6とを有する。キャビン5には、作業者が各種の操作を行うための操作部7が設けられる。各種の操作としては、例えば、走行体2の走行、旋回台3の旋回、ブーム8の起伏及び伸縮、ブームサポート6に設けた主巻ウインチ12や補巻ウインチ14の巻上及び巻下、各アウトリガ4の張出及び格納、エンジンの始動及び停止等が挙げられる。
【0015】
ブームサポート6は、ブーム8を取り付ける箇所であり、ブーム8の基端部がブーム根本支点ピンを介して取り付けられ、そのブーム根本支点ピンを中心にしてブーム8を起伏可能とする。また、ブームサポート6には、ブーム8との間に起伏シリンダ9が設けられ、起伏シリンダ9を伸縮することでブーム8が起伏される。ブーム8は、複数のブーム部が外側から内側へと入れ子式に組み合わせて収納して構成され、各伸縮シリンダが伸縮することで伸縮する。なお、ブーム8は、箱型構造ジブとしているが、旋回台3の一端を支点とした腕となる構造体であればよく、ラチス構造ジブやブームを伸長するための補助ジブも含む。
【0016】
ブーム8の先端には、ブームヘッド11が設けられている。ブームヘッド11には、主巻ウインチ12で巻き上げられる又は巻き下げられる主巻ワイヤロープ13と、補巻ウインチ14で巻き上げられる又は巻き下げられる補巻ワイヤロープ15とが巻き掛けられている。
【0017】
主巻ワイヤロープ13には、吊荷16等が玉掛けされる主巻フック17が吊り下げられ、主巻ウインチ12による巻き上げ又は巻き下げにより主巻フック17と共に吊荷16が昇降される。主巻フック17は、通常、複数の巻掛け数とされている。
【0018】
補巻ワイヤロープ15には、吊荷16等が玉掛けされる補巻フック18が吊り下げられ、補巻ウインチ14による巻き上げ又は巻き下げにより補巻フック18と共に吊荷16が昇降される。補巻フック18は、通常、単一の巻掛け数とされている。
【0019】
主巻ワイヤロープ13及び補巻ワイヤロープ15の所定の位置には各々、主巻フック17及び補巻フック18が過度に巻き上げられるのを防止するための過巻防止装置19を備えている。なお、この過巻防止装置19は、主巻フック17又は補巻フック18が過度に巻き上げられると、主巻フック17又は補巻フック18がブーム先端部に衝突するので、それを防止するためのものである。
【0020】
ブーム8は、使用時において、適宜起伏されるとともに各ブーム部が適宜進退乃至旋回され、使用している主巻フック17又は補巻フック18を適宜昇降させることで吊荷16を移動させる。また、ブーム8の非使用時(例えば走行時)には、主巻フック17及び補巻フック18は最も上昇され、各ブーム部は最も後退されて収納した状態とされる。
【0021】
ブーム8の伸縮、起伏及び旋回並びに主巻フック17、補巻フック18の昇降は、操作部7の操作に従って行われる。操作部7は、入力された操作に対応した操作信号を出力する。その操作信号は、油圧ポンプ、方向制御弁、流量制御弁等の駆動装置の動作を制御する。それらの動作により、旋回台3の旋回や、主巻ウインチ12または補巻ウインチ14の駆動のための油圧モータや、起伏シリンダ9や伸縮シリンダ等の油圧シリンダが作動して、ブーム8の伸縮、起伏および旋回や、主巻フック17または補巻フック18の昇降が行われる。
【0022】
(ワイヤロープ絡み付き防止治具の構成例)
次に、
図2を参照して本実施形態に係る一例としてのワイヤロープ絡み付き防止治具の全体構成について説明する。
図2に、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の一例の概略図を示す。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200は、第1のワイヤロープとして主巻ワイヤロープ13を挿通する第1の挿通穴202を有する第1の板状部204を有する第1の領域と、第2のワイヤロープとして補巻ワイヤロープ15を挿通する第2の挿通穴206を有する第2の板状部208を有する第2の領域と、これら第1の板状部204と第2の板状部208とを接続する接続部210と、を有する。なお、
図2において、第1の挿通穴202が複数(
図2の例では202a~202bの4つ)設けられ、第2の挿通穴206が1つ設けられるのは、通常、主巻フック17は複数の巻掛け数とされ、補巻フック18は単一の巻掛け数とされるからである。
【0024】
第1の板状部204には、この第1の板状部204の周縁部から垂下する第1の傘状部212が設けられており、第2の板状部208には、この第2の板状部208の周縁部から垂下する第2の傘状部214が設けられている。詳細については後述するが、第1の傘状部212は、補巻フック18を用いて吊荷16を玉掛けする場合に、主巻フック17を固定するためのものであり、第2の傘状部214は、主巻フック17を用いて吊荷16を玉掛けする場合に、補巻フック18を固定するためのものである。
【0025】
第1の板状部204と第2の板状部208とを接続する接続部210は、主巻ワイヤロープ13と補巻ワイヤロープ15との間の距離を担保し、かつ、第1の板状部204と第2の板状部208との間の距離(オフセット距離)を担保するために、断面がZ字形であることが好ましい。また、接続部210は、第1の板状部204と第2の板状部208との間の距離を可変可能に構成されていることが好ましい。
【0026】
また、第1の挿通穴202の外周縁の一部には、開閉可能な第1の窓部218が形成されており、第1の傘状部212には、前記第1の窓部218に連通するスリット216が設けられていることが好ましい。これにより、第1の挿通穴202に挿通された主巻ワイヤロープ13を第1の窓部218及びスリット216を介して絡み付き防止治具から容易に取り外すことができる。
【0027】
同様に、第2の挿通穴206の外周縁の一部には、開閉可能な第2の窓部220が形成されており、第2の傘状部214には、第2の窓部220に連通するスリット216が設けられていることが好ましい。これにより、第2の挿通穴206に挿通された補巻ワイヤロープ15を第2の窓部220及びスリット216を介してワイヤロープ絡み付き防止治具200から容易に取り外すことができる。
【0028】
また、第1の挿通穴202及び第2の挿通穴206には各々、主巻ワイヤロープ13及び補巻ワイヤロープ15の損傷を防ぐために、図示しないガイドローラを設けることが好ましい。
【0029】
(実施例1)
次に、図を参照して従来のクレーンの問題点及び本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200の効果について説明する。
図3に、従来の主巻フック使用時のクレーンの様子を説明する概略図を示す。
図4に、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200を使用した場合の、クレーンの様子を説明する概略図を示す。なお、
図3及び
図4、更には後述する
図5及び
図6は、説明のために、ブーム8の周辺機構のみを模式的に示している。
【0030】
図3では、主巻フック17を使用して吊荷16を玉掛けする場合の様子を示している。主巻フック17を使用する場合、作業時に補巻フック18が大きく揺れることがあるため、補巻フック18が主巻ワイヤロープ13に絡み付くことがある。これは、補巻フック18を出来るだけ巻き上げて補巻ワイヤロープ15を短くすることで抑制することができるが、完全に絡み付きを防止することはできない。また、実際の作業現場では、作業の効率化のために、補巻フック18を巻き上げることは少なく、補巻フック18が主巻ワイヤロープ13に絡み付きやすい。絡み付きは、直すための作業により作業全体の効率が低下するだけでなく、ワイヤロープの破損にもつながるため、安全性にも影響を及ぼす。また、図示していないが、補巻フック18を使用して吊荷16を玉掛けする場合も、主巻フック17が揺れることで、主巻フック17が補巻ワイヤロープ15やブーム8に接触することがあり、同様の問題点を有する。
【0031】
一方、
図2を用いて説明した本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200を使用して、主巻フック17で吊荷16を玉掛けする場合について、
図4aを用いて説明する。主巻フック17を用いた作業では、補巻フック18は、主巻フック17よりも上に巻き上げられる。そして、
図4aに示されるように、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200は、補巻フック18の直上に配置される。即ち、補巻フック18は、第2の傘状部214に固定されることとなる。そのため、補巻フック18と、主巻ワイヤロープ13との間の距離が常に一定となり、絡み付きが防止される。
【0032】
また、補巻フック18を用いたシングルトップでの作業時においては、主巻フック17は、補巻フック18よりも上に巻き上げられる。そして、
図4bに示されるように、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200は、主巻フック17の直上に配置される。即ち、主巻フック17は、第1の傘状部212に固定されることとなる。そのため、主巻フック17と、補巻ワイヤロープ15との間の距離が常に一定となり、絡み付きが防止される。
【0033】
なお、補巻フック18を用いたジブでの作業時においては、通常、主巻フック17と補巻ワイヤロープ15との間の距離が離れているため、
図4cに示すように、上述の絡み付きの問題は発生しない。
図2を参照して説明したように、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200は、第2の挿通穴206の外周縁の一部に、開閉可能な第2の窓部220が形成されており、第2の傘状部214には、この第2の窓部220に連通するスリット216が設けられている。そのため、第2の窓部220及びスリット216を介して補巻ワイヤロープ15をワイヤロープ絡み付き防止治具200から容易に取り外すことができるという特長も有している。
【0034】
(実施例2)
次に、図を参照して本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200の第1の板状部204と第2の板状部208との間にオフセットを設けた方が好ましい例について、図を参照して説明する。
図5に、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200にオフセットを設けない場合の、クレーンの様子を説明する概略図を示す。また、
図6に、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200にオフセットを設けた場合の、クレーンの様子を説明する概略図を示す。なお、
図5及び
図6では、一例として、主巻フック17を用いた作業について説明する。
【0035】
通常、補巻フック18の掛け数は、主巻フック17の掛け数よりも少ないため、補巻フック18の巻き上げ速度は、主巻フック17の巻き上げ速度よりも速くなる。そのため、過巻防止装置19に反応してからフックの巻き上げが停止するまでの制動距離が、補巻フック18の方が主巻フック17よりも大きいため、
図5a等に示されるように、補巻フック18側の過巻防止装置19bは、主巻フック17側の過巻防止装置19aよりも地面側にオフセット(
図5aに示す例ではオフセット距離L)されて配置される。
【0036】
主巻フック17を用いた作業では、前述のように補巻フック18は、主巻フック17よりも上に巻き上げられているため、
図5aに示すように補巻フック18の直上に本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200が配置される。ここで主巻フック17が巻き上げられていくと、
図5bに示すように主巻フック17の直上に本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200が配置される。この状態で更に主巻フック17が巻き上げられると、
図5cに示すように、補巻フック18側の過巻防止装置19bと反応することとなる。これにより、両方のワイヤロープの巻き上げが不可能となり、オフセットを設けないワイヤロープ絡み付き防止治具を使用しない場合と比較して、オフセット距離L分の揚程を確保できないこととなる(参照として、オフセットを設けないワイヤロープ絡み付き防止治具を使用しない場合の主巻フック17の位置を破線で示している)。
【0037】
一方、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200にオフセットを設ける場合も、前述のように補巻フック18は、主巻フック17よりも上に巻き上げられているため、
図6aに示すように補巻フック18の直上に本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200が配置される。ここで、主巻フック17が巻き上げられていくと、
図6bに示すように主巻フック17の直上に本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具200が配置される。この状態で更に主巻フック17が巻き上げられると、
図6cに示すように、補巻フック18側の過巻防止装置19bと反応した場合であっても、オフセット距離L分の揚程を確保することができる。なお、過巻防止装置19のオフセット距離Lは、使用するクレーンの種類や機種によっても異なるため、本実施形態に係る接続部210は、第1の板状部204と第2の板状部208との間の距離を可変可能に構成されていることが好ましい。
【0038】
(ワイヤロープ絡み付き防止治具の他の構成例)
次に、
図7及び
図8を参照して本実施形態に係る他の例としてのワイヤロープ絡み付き防止治具の全体構成について説明する。
図7に、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の他の例の概略斜視図を示し、
図8に、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具の他の例の概略上面図を示す。
【0039】
図7に示すように、本実施形態に係るワイヤロープ絡み付き防止治具300は、例えば、
断面が好ましくは略矩形の第1の領域310と、断面が好ましくは略矩形の第2の領域320と、を有する枠状の構造部材(枠状部材)で全体が構成されている。第1の領域310は、主として、主巻ワイヤロープ13を挿通させる(拘束する)領域であり、第2の領域320は、補巻ワイヤロープ15を挿通させる(拘束する)領域である。各々の領域について、詳細に説明する。
【0040】
(第1の領域310)
前述したようにワイヤロープ絡み付き防止治具300の第1の領域310は、主巻ワイヤロープ13を挿通させる領域である。ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第1の領域310には、枠状の前記ワイヤロープ絡み付き防止治具300が形成する面(枠状の構造部材の断面)の第1の軸方向(
図7、
図8ではY軸方向)に伸長する第1の主巻側ガイドローラ302aと、前記第1の主巻側ガイドローラ302aと平行に伸長する第2の主巻側ガイドローラ302bと、前記ワイヤロープ絡み付き防止治具300が形成する面の第2の軸方向(
図7、
図8ではX軸方向)に伸長する第1の主巻側ピン304aと、前記第1の主巻側ピン304aと平行に伸長する第2の主巻側ピン304bと、が設けられている。通常、第1の軸方向と、第2の軸方向とは、直交するが、直交していなくても良い。
【0041】
そして、
図2を参照して説明した第1のワイヤロープとして主巻ワイヤロープ13は、第1の主巻側ガイドローラ302aと、第2の主巻側ガイドローラ302bと、第1の主巻側ピン304aと、第2の主巻側ピン304bとで囲まれる領域(空間)に挿通される。別の言い方をすると、主巻ワイヤロープ13は、第1の主巻側ガイドローラ302aと、第2の主巻側ガイドローラ302bと、第1の主巻側ピン304aと、第2の主巻側ピン304bとで拘束される。
【0042】
クレーンの構成等によって、主巻ワイヤロープ13は、複数巻掛、例えば、2本掛、3本掛、4本掛、6本掛される場合がある。その場合、主巻ワイヤロープ13は、ブーム側のワイヤロープ(群)と、補巻フック側のワイヤロープ(群)とに分類される。そのため、ワイヤロープ絡み付き防止治具300には、前記ワイヤロープ絡み付き防止治具300が形成する面の前記第1の軸方向に伸長する第3の主巻側ガイドローラ302cと、前記第3の主巻側ガイドローラ302cと平行に伸長する第4の主巻側ガイドローラ302dと、前記ワイヤロープ絡み付き防止治具300が形成する面の前記第2の軸方向に伸長する第3の主巻側ピン304cと、前記第3の主巻側ピン304cと平行に伸長する第4の主巻側ピン304dと、を設けても良い。この場合、例えば、ブーム側のワイヤロープ(群)が、第1の主巻側ガイドローラ302aと、第2の主巻側ガイドローラ302bと、第1の主巻側ピン304aと、第2の主巻側ピン304bとで囲まれる領域(空間)に挿通され、補巻フック側のワイヤロープ(群)が、第3の主巻側ガイドローラ302cと、第4の主巻側ガイドローラ302dと、第3の主巻側ピン304cと、第4の主巻側ピン304dとで囲まれる領域(空間)に挿通される。
【0043】
なお、主巻ワイヤロープ13を複数巻掛する場合であっても、第3の主巻側ガイドローラ302cと、第4の主巻側ガイドローラ302dと、第3の主巻側ピン304cと、第4の主巻側ピン304dとを設けない構成であっても良い。例えば、ブーム側のワイヤロープ(群)を、第1の主巻側ガイドローラ302aと、第2の主巻側ガイドローラ302bと、第1の主巻側ピン304aと、第2の主巻側ピン304bとで囲まれる領域(空間)に挿通し、補巻フック側のワイヤロープ(群)は、単に、ワイヤロープ絡み付き防止治具300を通過する構成であっても良い。逆に、ブーム側のワイヤロープ(群)は、単に、ワイヤロープ絡み付き防止治具300を通過して、補巻フック側のワイヤロープ(群)が上記の領域に挿通される構成であっても良い。
【0044】
ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第1の領域310の一方の側面側には、ブーム側のワイヤロープ(群)をワイヤロープ絡み付き防止治具300内に挿通するための第1の窓部306aが設けられており、また、補巻フック側のワイヤロープ(群)をワイヤロープ絡み付き防止治具300内に挿通するための第2の窓部306bが設けられている。そのため、第1の主巻側ガイドローラ302a、第2の主巻側ガイドローラ302b、第3の主巻側ガイドローラ302c、第4の主巻側ガイドローラ302d、第1の主巻側ピン304a、第2の主巻側ピン304b、第3の主巻側ピン304c及び第4の主巻側ピン304dは、ワイヤロープ絡み付き防止治具300に対して、着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0045】
主巻フック17の上面にワイヤロープ絡み付き防止治具300の底面を載置できるように、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第1の領域310の面の少なくとも一部には、板状部材308を設けることが好ましい。
【0046】
また、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第1の領域310の底面側には、主巻フック17の上面にワイヤロープ絡み付き防止治具300の底面を載置した際に、主巻フック17の外周形状に追従するように、図示しない傘状部材を設けても良い。
【0047】
(第2の領域320)
ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320は、補巻ワイヤロープ15を挿通させる領域である。ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320には、枠状の前記ワイヤロープ絡み付き防止治具300が形成する面の第3の軸方向に伸長する第1の補巻側ガイドローラ322aと、前記第1の補巻側ガイドローラ322aと平行に伸長する第2の補巻側ガイドローラ322bと、枠状の前記ワイヤロープ絡み付き防止治具300が形成する面の第4の軸方向に伸長する第1の補巻側ピン324aと、前記第1の補巻側ピン324aと平行に伸長する第2の補巻側ピン324bと、が設けられている。限定されないが、第3の軸方向は、第1の軸方向と同じ方向にし、第4の軸方向は第2の軸方向と同じ方向にすることが好ましい。
【0048】
そして、補巻ワイヤロープ15は、第1の補巻側ガイドローラ322aと、第2の補巻側ガイドローラ322bと、第1の補巻側ピン324aと、第2の補巻側ピン324bとで囲まれる領域(空間)に挿通される。別の言い方をすると、補巻ワイヤロープ15は、第1の補巻側ガイドローラ322aと、第2の補巻側ガイドローラ322bと、第1の補巻側ピン324aと、第2の補巻側ピン324bとで拘束される。
【0049】
ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320の少なくとも一方の側面側には、補巻ワイヤロープをワイヤロープ絡み付き防止治具300内に挿通するための第3の窓部326が設けられている。なお、第1の窓部306a、第2の窓部306b及び第3の窓部326は、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の同じ側面側に設けられていても良いし、各々別の側面側に設けられていても良い。そのため、第1の補巻側ガイドローラ322a、第2の補巻側ガイドローラ322b、第1の補巻側ピン324a及び第2の補巻側ピン324bは、ワイヤロープ絡み付き防止治具300に対して、着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0050】
補巻フック18の上面にワイヤロープ絡み付き防止治具300の底面を載置できるように、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320の底面の少なくとも一部にも、第2の板状部材328を設けることが好ましい。
【0051】
また、ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320の底面側には、補巻フック18の上面にワイヤロープ絡み付き防止治具300の底面を載置した際に、補巻フック18の外周形状に追従するように、図示しない傘状部材が設けても良い。ワイヤロープ絡み付き防止治具300の第2の領域320の底面側に傘状部材を設ける場合、補巻フック18の外周全体の形状に追従するように傘状部材を設けても良いが、補巻フック18の外周の主巻フック17側だけといったように、一部だけに傘状部材を設けても良い。
【0052】
なお、本実施形態においては、第1の領域310と、第2の領域320との水平位置は(地面から距離)、同じであることが好ましい。使用するクレーンの仕様によって、主巻ワイヤロープ13側の過巻防止装置の地面からの距離と、補巻ワイヤロープ15側の過巻防止装置の地面からの距離とが、異なる場合がある。主巻ワイヤロープ13側の過巻防止装置の地面からの距離が補巻ワイヤロープ15側の過巻防止装置の地面からの距離より長い場合であっても、その逆の場合であっても、全ての起伏角度で揚程の損失が少なくなるように、第1の領域310と、第2の領域320との水平位置は、同じであることが好ましい。
【0053】
また、第2の領域320の上方に、第2の領域320に配置される第1の補巻側ガイドローラ322a、第2の補巻側ガイドローラ322b、第1の補巻側ピン324a及び第2の補巻側ピン324bと同様の構成を有する図示しない第3の領域を設けても良い。即ち、補巻ワイヤロープ15側には、高さ方向に複数のガイドローラを設けても良い。これにより、補巻フック18上にワイヤロープ絡み付き防止治具300を載置した場合に、補巻フック18の傾きを抑制できるため、見栄えが良くなる。
【0054】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1:クレーン車
2:走行体
3:旋回台
4:アウトリガ
5:キャビン
6:ブームサポート
8:ブーム
9:起伏シリンダ
11:ブームヘッド
12:主巻ウインチ
13:主巻ワイヤロープ
14:補巻ウインチ
15:補巻ワイヤロープ
16:吊荷
17:主巻フック
18:補巻フック
19:過巻防止装置
200:ワイヤロープ絡み付き防止冶具
202:第1の挿通穴
204:第1の板状部
206:第2の挿通穴
208:第2の板状部
210:接続部
212:第1の傘状部
214:第2の傘状部
216:スリット
218:第1の窓部
220:第2の窓部
300:ワイヤロープ絡み付き防止治具
302a:第1の主巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第1のガイドローラに対応)
302b:第2の主巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第2のガイドローラに対応)
302c:第3の主巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第5のガイドローラに対応)
302d:第4の主巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第6のガイドローラに対応)
304a:第1の主巻側ピン(特許請求の範囲の第1のピンに対応)
304b:第2の主巻側ピン(特許請求の範囲の第2のピンに対応)
304c:第3の主巻側ピン(特許請求の範囲の第5のピンに対応)
304d:第4の主巻側ピン(特許請求の範囲の第6のピンに対応)
306a:第1の窓部(特許請求の範囲の第1の窓部に対応)
306b:第2の窓部(特許請求の範囲の第1の窓部に対応)
308:第1の板状部材
310:第1の領域
320:第2の領域
322a:第1の補巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第3のガイドローラに対応)
322b:第2の補巻側ガイドローラ(特許請求の範囲の第4のガイドローラに対応)
324a:第1の補巻側ピン(特許請求の範囲の第3のピンに対応)
324b:第2の補巻側ピン(特許請求の範囲の第4のピンに対応)
326:第3の窓部(特許請求の範囲の第2の窓部に対応)
328:第2の板状部材