(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20231108BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20231108BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G3/04 062
H05K9/00 L
(21)【出願番号】P 2020029723
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 克俊
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-298184(JP,A)
【文献】特開2014-239145(JP,A)
【文献】特開2017-112064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01B 7/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電線を含む第1電線部材と、
前記第1電線部材が貫通する第1貫通孔を有する環状の第1電磁波吸収部材と、
前記第1電線部材の長さ方向において前記第1電線部材に対する前記第1電磁波吸収部材の相対移動を規制する第1規制部材と、
第2電線を含む第2電線部材と、
前記第2電線部材が貫通する第2貫通孔を有する環状の第2電磁波吸収部材と、
前記第2電線部材の長さ方向において前記第2電線部材に対する前記第2電磁波吸収部材の相対移動を規制する第2規制部材と、を有し、
前記第1電磁波吸収部材は、前記第1貫通孔の中心軸が延びる第1中心軸方向から見た平面視において、前記第2電磁波吸収部材の一部と重なるように設けられて
おり、
前記第1貫通孔の内周面は、前記第1電線部材の外周面と対向しており、
前記第1貫通孔の内周面は、第1部分と、前記第1部分と前記第1貫通孔の中心軸に対して点対称な位置に配置された第2部分とを有し、
前記第1規制部材は、前記第1電線部材が前記第1部分と接触するとともに前記第2部分と離隔するように、前記第1電磁波吸収部材を前記第1電線部材に固定しているワイヤハーネス。
【請求項2】
前記第1部分は、前記第1中心軸方向と交差する方向において、前記第2部分よりも前記第2電線部材から離れた位置に配置された部分である請求項
1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第2貫通孔の内周面は、前記第2電線部材の外周面と対向しており、
前記第2貫通孔の内周面は、第3部分と、前記第3部分と前記第2貫通孔の中心軸に対して点対称な位置に配置された第4部分とを有し、
前記第3部分は、前記第2貫通孔の中心軸が延びる第2中心軸方向と交差する方向において、前記第4部分よりも前記第1電線部材から離れた位置に配置された部分であり、
前記第2規制部材は、前記第2電線部材が前記第3部分と接触するとともに前記第4部分と離隔するように、前記第2電磁波吸収部材を前記第2電線部材に固定している請求項
2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
第1電線を含む第1電線部材と、
前記第1電線部材が貫通する第1貫通孔を有する環状の第1電磁波吸収部材と、
前記第1電線部材の長さ方向において前記第1電線部材に対する前記第1電磁波吸収部材の相対移動を規制する第1規制部材と、
第2電線を含む第2電線部材と、
前記第2電線部材が貫通する第2貫通孔を有する環状の第2電磁波吸収部材と、
前記第2電線部材の長さ方向において前記第2電線部材に対する前記第2電磁波吸収部材の相対移動を規制する第2規制部材と、を有し、
前記第1電磁波吸収部材は、前記第1貫通孔の中心軸が延びる第1中心軸方向から見た平面視において、前記第2電磁波吸収部材の一部と重なるように設けられて
おり、
前記第1貫通孔の内周面は、前記第1電線部材の外周面と対向しており、
前記第1貫通孔の内周面は、第1部分と、前記第1部分と前記第1貫通孔の中心軸に対して点対称な位置に配置された第2部分とを有し、
前記第2部分は、前記第1中心軸方向と交差する方向において、前記第1部分よりも前記第2電線部材に近い位置に配置された部分であり、
前記第1規制部材は、前記第1電線部材が前記第2部分と接触するとともに前記第1部分と離隔するように、前記第1電磁波吸収部材を前記第1電線部材に固定しているワイヤハーネス。
【請求項5】
前記第2貫通孔の内周面は、前記第2電線部材の外周面と対向しており、
前記第2貫通孔の内周面は、第3部分と、前記第3部分と前記第2貫通孔の中心軸に対して点対称な位置に配置された第4部分とを有し、
前記第4部分は、前記第2貫通孔の中心軸が延びる第2中心軸方向と交差する方向において、前記第3部分よりも前記第1電線部材に近い位置に配置された部分であり、
前記第2規制部材は、前記第2電線部材が前記第4部分と接触するとともに前記第3部分と離隔するように、前記第2電磁波吸収部材を前記第2電線部材に固定している請求項
4に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記第1電線部材と前記第1電磁波吸収部材と前記第2電線部材と前記第2電磁波吸収部材とを一括して包囲する電磁シールド部材を更に有する請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記第1電磁波吸収部材の前記第2電磁波吸収部材側に向く側面を被覆する緩衝部材を更に有する請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記第1電線部材及び前記第2電線部材を一括して収容する第1外装部材と、
前記第1外装部材から露出された前記第1電線部材と前記第2電線部材と前記第1電磁波吸収部材と前記第2電磁波吸収部材との外周を被覆する保護部材と、を更に有する請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
第1電線を含む第1電線部材と、
前記第1電線部材が貫通する第1貫通孔を有する環状の第1電磁波吸収部材と、
前記第1電線部材の長さ方向において前記第1電線部材に対する前記第1電磁波吸収部材の相対移動を規制する第1規制部材と、
第2電線を含む第2電線部材と、
前記第2電線部材が貫通する第2貫通孔を有する環状の第2電磁波吸収部材と、
前記第2電線部材の長さ方向において前記第2電線部材に対する前記第2電磁波吸収部材の相対移動を規制する第2規制部材と、を有し、
前記第1電磁波吸収部材は、前記第1貫通孔の中心軸が延びる第1中心軸方向から見た平面視において、前記第2電磁波吸収部材の一部と重なるように設けられて
おり、
前記第1電線部材は、前記第1電線と、前記第1電線の外周を被覆する第1被覆部材とを有し、
前記第2電線部材は、前記第2電線と、前記第2電線の外周を被覆する第2被覆部材とを有し、
前記第1被覆部材は、前記第1電線の外周を被覆した状態で前記第1貫通孔に貫通しており、
前記第2被覆部材は、前記第2電線の外周を被覆した状態で前記第2貫通孔に貫通しているワイヤハーネス。
【請求項10】
前記第1電線部材は、前記第1電線と、前記第1電線の外周を被覆する第1被覆部材とを有し、
前記第2電線部材は、前記第2電線と、前記第2電線の外周を被覆する第2被覆部材とを有し、
前記第1被覆部材は、前記第1電線の外周を被覆した状態で前記第1貫通孔に貫通しており、
前記第2被覆部材は、前記第2電線の外周を被覆した状態で前記第2貫通孔に貫通している請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスとしては、複数の電気機器間を電気的に接続する電線と、その電線から放射される電磁波(電磁ノイズ)を吸収する電磁波吸収部材とを備えたものが知られている。この種のワイヤハーネスでは、フェライトコア等からなる電磁波吸収部材の貫通孔に複数の電線を貫通させることで、複数の電線の外周に電磁波吸収部材が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ワイヤハーネスでは、低減したい電磁波が大きくなるほど、電磁波吸収部材が大型化する。このように大型化した電磁波吸収部材に複数の電線を貫通させると、例えば車両走行等に伴う振動に起因して電磁波吸収部材が振動し、その電磁波吸収部材の振動によって電線が揺さぶられ、電線が損傷するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、電線の損傷を低減できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、第1電線を含む第1電線部材と、前記第1電線部材が貫通する第1貫通孔を有する環状の第1電磁波吸収部材と、前記第1電線部材の長さ方向において前記第1電線部材に対する前記第1電磁波吸収部材の相対移動を規制する第1規制部材と、前記第2電線を含む第2電線部材と、前記第2電線部材が貫通する第2貫通孔を有する環状の第2電磁波吸収部材と、前記第2電線部材の長さ方向において前記第2電線部材に対する前記第2電磁波吸収部材の相対移動を規制する第2規制部材と、を有し、前記第1電磁波吸収部材は、前記第1貫通孔の中心軸が延びる第1中心軸方向から見た平面視において、前記第2電磁波吸収部材の一部と重なるように設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のワイヤハーネスによれば、電線の損傷を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略横断面図(
図2における3-3線断面図)である。
【
図4】
図4は、変更例のワイヤハーネスを示す概略横断面図である。
【
図5】
図5は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、変更例のワイヤハーネスを示す概略横断面図である。
【
図7】
図7は、変更例のワイヤハーネスを示す概略横断面図である。
【
図8】
図8は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、変更例のワイヤハーネスを示す概略斜視図である。
【
図12】
図12は、変更例のワイヤハーネスを示す概略横断面図(
図10における12-12線断面図)である。
【
図13】
図13は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【
図14】
図14は、変更例のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスは、第1電線を含む第1電線部材と、前記第1電線部材が貫通する第1貫通孔を有する環状の第1電磁波吸収部材と、前記第1電線部材の長さ方向において前記第1電線部材に対する前記第1電磁波吸収部材の相対移動を規制する第1規制部材と、第2電線を含む第2電線部材と、前記第2電線部材が貫通する第2貫通孔を有する環状の第2電磁波吸収部材と、前記第2電線部材の長さ方向において前記第2電線部材に対する前記第2電磁波吸収部材の相対移動を規制する第2規制部材と、を有し、前記第1電磁波吸収部材は、前記第1貫通孔の中心軸が延びる第1中心軸方向から見た平面視において、前記第2電磁波吸収部材の一部と重なるように設けられている。
【0010】
この構成によれば、第1電磁波吸収部材が第1電線部材に設けられ、第2電磁波吸収部材が第2電線部材に設けられる。すなわち、第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材が第1電線部材及び第2電線部材に対してそれぞれ個別に設けられる。これにより、複数の電線部材に対して1つの電磁波吸収部材を設ける場合に比べて、第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材の各々において低減したい電磁波を小さくできる。このため、複数の電線部材に対して1つの電磁波吸収部材を設ける場合に比べて、第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材の各々を小型化することができ、第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材の各々の質量を小さくできる。これにより、車両走行等に伴って第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材が振動した場合に、それら第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材から第1電線部材及び第2電線部材にそれぞれ入力される荷重を小さくできる。この結果、第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材の振動に起因して第1電線部材及び第2電線部材が損傷することを抑制できる。ひいては、第1電線及び第2電線が損傷することを抑制できる。
【0011】
また、第1電磁波吸収部材が、第1中心軸方向から見た平面視において、第2電磁波吸収部材の一部と重なるように設けられるため、ワイヤハーネスの体格が大きくなることを抑制できる。
【0012】
ここで、本明細書における「環」は、外縁形状が円形の円環、外縁形状が楕円形や長円形の環、外縁形状が多角形の多角形環、外縁形状が角丸多角形の環を含み、外縁形状が直線又は曲線で結ばれる任意の閉じた形状からなるものを言う。「環」は、平面視において貫通孔を有する形状であり、外縁形状と貫通孔の内周形状とが同じ形状であるものや、外縁形状と貫通孔の内周形状とが異なる形状であるものを含む。「環」は、貫通孔の中心を通る中心軸が延びる中心軸方向に沿って延びる所定の長さを有するものを含み、その長さの大小は問わない。また、本明細書における「環状」は、全体として環と見做せればよく、C字状のように一部に切り欠き等を有するものを含む。
【0013】
[2]前記第1貫通孔の内周面は、前記第1電線部材の外周面と対向しており、前記第1貫通孔の内周面は、第1部分と、前記第1部分と前記第1貫通孔の中心軸に対して点対称な位置に配置された第2部分とを有し、前記第1規制部材は、前記第1電線部材が前記第1部分と接触するとともに前記第2部分と離隔するように、前記第1電磁波吸収部材を前記第1電線部材に固定していることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1電磁波吸収部材の第1貫通孔の内部において、第1電線部材が第1部分に接触されて第1部分側に片寄って配置された状態で、第1電磁波吸収部材と第1電線部材とが固定(一体化)される。このため、車両走行等に伴って第1電磁波吸収部材が振動した場合であっても、その第1電磁波吸収部材の振動に起因して第1電線部材が第1貫通孔内で揺さぶられることを抑制できる。例えば、第1貫通孔の内周面に第1電線部材が接触しない状態で第1電磁波吸収部及び第1電線部材が固定される場合に比べて、第1電磁波吸収部材の振動に起因して第1電線部材が第1貫通孔内で移動することを抑制できる。これにより、第1貫通孔の内周面との接触に起因して第1電線部材が摩耗することを抑制でき、第1電磁波吸収部材の振動に起因して第1電線部材が損傷することを好適に抑制できる。
【0015】
ここで、本明細書における「対向」とは、面同士又は部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。
【0016】
[3]前記第1部分は、前記第1中心軸方向と交差する方向において、前記第2部分よりも前記第2電線部材から離れた位置に配置された部分であることが好ましい。
この構成によれば、第1貫通孔の内部において、第1電線部材が第2電線部材から離れた側に片寄って配置される。これにより、第1中心軸方向から見た平面視において、第1電磁波吸収部材と第2電磁波吸収部材とを大きく重ねることができる。この結果、ワイヤハーネスの体格が大きくなることを好適に抑制できる。
【0017】
[4]前記第2貫通孔の内周面は、前記第2電線部材の外周面と対向しており、前記第2貫通孔の内周面は、第3部分と、前記第3部分と前記第2貫通孔の中心軸に対して点対称な位置に配置された第4部分とを有し、前記第3部分は、前記第2貫通孔の中心軸が延びる第2中心軸方向と交差する方向において、前記第4部分よりも前記第1電線部材から離れた位置に配置された部分であり、前記第2規制部材は、前記第2電線部材が前記第3部分と接触するとともに前記第4部分と離隔するように、前記第2電磁波吸収部材を前記第2電線部材に固定していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第2電磁波吸収部材の第2貫通孔の内部において、第2電線部材が第3部分に接触されて第3部分側に片寄って配置された状態で、第2電磁波吸収部材と第2電線部材とが固定(一体化)される。このため、車両走行等に伴って第2電磁波吸収部材が振動した場合であっても、その第2電磁波吸収部材の振動に起因して第2電線部材が第2貫通孔内で揺さぶられることを抑制できる。例えば、第2貫通孔の内周面に第2電線部材が接触しない状態で第2電磁波吸収部及び第2電線部材が固定される場合に比べて、第2電磁波吸収部材の振動に起因して第2電線部材が第2貫通孔内で移動することを抑制できる。これにより、第2貫通孔の内周面との接触に起因して第2電線部材が摩耗することを抑制でき、第2電磁波吸収部材の振動に起因して第2電線部材が損傷することを好適に抑制できる。
【0019】
また、第2貫通孔の内部において、第2電線部材が第1電線部材から離れた側に片寄って配置される。これにより、第1中心軸方向から見た平面視において、第1電磁波吸収部材と第2電磁波吸収部材とを大きく重ねることができる。この結果、ワイヤハーネスの体格が大きくなることを抑制できる。
【0020】
[5]前記第1貫通孔の内周面は、前記第1電線部材の外周面と対向しており、前記第1貫通孔の内周面は、第1部分と、前記第1部分と前記第1貫通孔の中心軸に対して点対称な位置に配置された第2部分とを有し、前記第2部分は、前記第1中心軸方向と交差する方向において、前記第1部分よりも前記第2電線部材に近い位置に配置された部分であり、前記第1規制部材は、前記第1電線部材が前記第2部分と接触するとともに前記第1部分と離隔するように、前記第1電磁波吸収部材を前記第1電線部材に固定している。
【0021】
この構成によれば、第1電磁波吸収部材の第1貫通孔の内部において、第1電線部材が第2部分に接触されて第2部分側に片寄って配置された状態で、第1電磁波吸収部材と第1電線部材とが固定(一体化)される。このため、車両走行等に伴って第1電磁波吸収部材が振動した場合であっても、その第1電磁波吸収部材の振動に起因して第1電線部材が第1貫通孔内で揺さぶられることを抑制できる。例えば、第1貫通孔の内周面に第1電線部材が接触しない状態で第1電磁波吸収部及び第1電線部材が固定される場合に比べて、第1電磁波吸収部材の振動に起因して第1電線部材が第1貫通孔内で移動することを抑制できる。これにより、第1貫通孔の内周面との接触に起因して第1電線部材が摩耗することを抑制でき、第1電磁波吸収部材の振動に起因して第1電線部材が損傷することを好適に抑制できる。
【0022】
また、第1貫通孔の内部において、第1電線部材が第2電線部材に近い側に片寄って配置される。これにより、第1電線部材と第2電線部材とを近接して設けることができる。このため、例えば第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材の設けられていない部分のワイヤハーネスの体格を小さくすることができる。
【0023】
[6]前記第2貫通孔の内周面は、前記第2電線部材の外周面と対向しており、前記第2貫通孔の内周面は、第3部分と、前記第3部分と前記第2貫通孔の中心軸に対して点対称な位置に配置された第4部分とを有し、前記第4部分は、前記第2貫通孔の中心軸が延びる第2中心軸方向と交差する方向において、前記第3部分よりも前記第1電線部材に近い位置に配置された部分であり、前記第2規制部材は、前記第2電線部材が前記第4部分と接触するとともに前記第3部分と離隔するように、前記第2電磁波吸収部材を前記第2電線部材に固定していることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、第2電磁波吸収部材の第2貫通孔の内部において、第2電線部材が第4部分に接触されて第4部分側に片寄って配置された状態で、第2電磁波吸収部材と第2電線部材とが固定(一体化)される。このため、車両走行等に伴って第2電磁波吸収部材が振動した場合であっても、その第2電磁波吸収部材の振動に起因して第2電線部材が第2貫通孔内で揺さぶられることを抑制できる。例えば、第2貫通孔の内周面に第2電線部材が接触しない状態で第2電磁波吸収部及び第2電線部材が固定される場合に比べて、第2電磁波吸収部材の振動に起因して第2電線部材が第2貫通孔内で移動することを抑制できる。これにより、第2貫通孔の内周面との接触に起因して第2電線部材が摩耗することを抑制でき、第2電磁波吸収部材の振動に起因して第2電線部材が損傷することを好適に抑制できる。
【0025】
また、第2貫通孔の内部において、第2電線が第1電線に近い側に片寄って配置される。これにより、第1電線と第2電線とをより近接して設けることができる。このため、例えば第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材の設けられていない部分のワイヤハーネスの体格をより小さくすることができる。
【0026】
[7]前記第1電線部材と前記第1電磁波吸収部材と前記第2電線部材と前記第2電磁波吸収部材とを一括して包囲する電磁シールド部材を更に有することが好ましい。
この構成によれば、第1電磁波吸収部材と、その第1電磁波吸収部材の外周を覆う電磁シールド部材とによって、第1電線から放射される電磁波を低減することができる。また、第2電磁波吸収部材と、その第2電磁波吸収部材の外周を覆う電磁シールド部材とによって、第2電線から放射される電磁波を低減することができる。さらに、第1電磁波吸収部材と第2電磁波吸収部材とを一括して包囲するように電磁シールド部材を設けたため、第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材に対して個別に電磁シールド部材を設ける場合に比べて、部品点数を低減することができる。
【0027】
[8]前記第1電磁波吸収部材の前記第2電磁波吸収部材側に向く側面を被覆する緩衝部材を更に有することが好ましい。
この構成によれば、第1電磁波吸収部材と第2電磁波吸収部材との間に緩衝部材を介在させることができる。これにより、第1電磁波吸収部材と第2電磁波吸収部材とが直接接触することを抑制できるため、第1電磁波吸収部材と第2電磁波吸収部材との接触に起因して第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材が損傷することを抑制できる。
【0028】
[9]前記第1電線部材及び前記第2電線部材を一括して収容する第1外装部材と、前記第1外装部材から露出された前記第1電線部材と前記第2電線部材と前記第1電磁波吸収部材と前記第2電磁波吸収部材との外周を被覆する保護部材と、を更に有することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材の外周が保護部材によって覆われる。このため、第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材とそれら周辺部品との間に保護部材を介在させることができる。これにより、第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材と周辺部品とが直接接触することを抑制できるため、周辺部品との接触に起因して第1電磁波吸収部材及び第2電磁波吸収部材が損傷することを抑制できる。
【0030】
[10]前記第1電線部材は、前記第1電線と、前記第1電線の外周を被覆する第1被覆部材とを有し、前記第2電線部材は、前記第2電線と、前記第2電線の外周を被覆する第2被覆部材とを有し、前記第1被覆部材は、前記第1電線の外周を被覆した状態で前記第1貫通孔に貫通しており、前記第2被覆部材は、前記第2電線の外周を被覆した状態で前記第2貫通孔に貫通していることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、第1被覆部材により被覆された状態で第1電線が第1電磁波吸収部材の第1貫通孔に貫通され、第2被覆部材により被覆された状態で第2電線が第2電磁波吸収部材の第2貫通孔に貫通される。このため、第1貫通孔の内周面が第1電線の外周面に直接接触することを抑制でき、第2貫通孔の内周面が第2電線の外周面に直接接触することを抑制できる。これにより、第1貫通孔及び第2貫通孔の内周面との接触に起因して第1電線及び第2電線が損傷することを好適に抑制できる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」や「直交」は、厳密に平行や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器(機器)を電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vの前部に設置されたインバータ11と、そのインバータ11よりも車両Vの後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの床下等を通るように配索される。例えば、ワイヤハーネス10の長さ方向の中間部が車両Vの床下等の車室外を通るように配策される。インバータ11は、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0034】
ワイヤハーネス10は、1本又は複数本(本実施形態では、2本)の電線20と、電線20の両端部に取り付けられた一対のコネクタC1と、複数の電線20を一括して包囲する外装部材30とを有している。
【0035】
(電線20の構成)
各電線20の一端部はコネクタC1を介してインバータ11と接続され、各電線20の他端部はコネクタC1を介して高圧バッテリ12と接続されている。各電線20は、例えば、車両Vの前後方向に延びるように長尺状に形成されている。各電線20は、例えば、ワイヤハーネス10の配策経路に応じて、二次元状又は三次元状に曲げられるように形成されている。各電線20は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線である。各電線20は、例えば、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよいし、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線であってもよい。本実施形態の各電線20は、ノンシールド電線である。
【0036】
図2に示すように、電線20は、例えば、高圧バッテリ12(
図1参照)のプラス端子に接続されるプラス側の電線20Aと、高圧バッテリ12(
図1参照)のマイナス端子に接続されるマイナス側の電線20Bとを有している。
【0037】
電線20A,20Bは、導体よりなる芯線21と、芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有する被覆電線である。芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚り線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。芯線21としては、例えば、撚り線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。柱状導体としては、例えば、単芯線やバスバなどを挙げることができる。本実施形態の芯線21は、撚り線である。芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0038】
(芯線21の構成)
芯線21の長さ方向と直交する平面によって芯線21を切断した断面形状(つまり、横断面形状)は、任意の形状にすることができる。芯線21の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、正方形状や扁平形状に形成されている。本実施形態の芯線21の横断面形状は、円形状に形成されている。
【0039】
(絶縁被覆22の構成)
絶縁被覆22は、例えば、芯線21の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆22は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆22の材料としては、例えば、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とする合成樹脂を用いることができる。絶縁被覆22の材料としては、1種の材料を単独で、又は2種以上の材料を適宜組み合わせて用いることができる。絶縁被覆22は、例えば、芯線21に対する押出成形(押出被覆)によって形成することができる。
【0040】
(外装部材30の構成)
図1に示した外装部材30は、全体として長尺の筒状をなしている。外装部材30の内部空間には、複数の電線20が収容されている。外装部材30は、例えば、複数の電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。外装部材30は、例えば、飛翔物や水滴から電線20を保護する。外装部材30としては、例えば、金属製又は樹脂製のパイプや、樹脂製のプロテクタ、樹脂等からなり可撓性を有するコルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。金属製のパイプの材料としては、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。樹脂製のプロテクタやコルゲートチューブの材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。
【0041】
図2に示すように、外装部材30は、例えば、コルゲートチューブ40と、コルゲートチューブ50と、保護部材60とを有している。本実施形態のコルゲートチューブ40,50の材料としては、導電性を有さない樹脂材料が用いられる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。
【0042】
(コルゲートチューブ40の構成)
コルゲートチューブ40は、例えば、全体として複数の電線20A,20Bの外周を一括して包囲する筒状をなしている。コルゲートチューブ40は、例えば、複数の電線20A,20Bの外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。コルゲートチューブ40は、例えば、電線20A,20Bの長さ方向(軸方向)の一部を包囲するように設けられている。コルゲートチューブ40は、その長さ方向に沿って環状凸部41と環状凹部42とが交互に連設された蛇腹構造を有している。コルゲートチューブ40は、芯線21よりも可撓性に優れている。本実施形態のコルゲートチューブ40は、円筒状に形成されている。
【0043】
(コルゲートチューブ50の構成)
コルゲートチューブ50は、例えば、各電線20A,20Bの長さ方向において、コルゲートチューブ40と離れて設けられている。コルゲートチューブ50は、例えば、全体として複数の電線20A,20Bの外周を一括して包囲する筒状をなしている。コルゲートチューブ50は、例えば、複数の電線20A,20Bの外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。コルゲートチューブ50は、例えば、電線20A,20Bの長さ方向の一部を包囲するように設けられている。コルゲートチューブ50は、その長さ方向に沿って環状凸部51と環状凹部52とが交互に連設された蛇腹構造を有している。コルゲートチューブ50は、芯線21よりも可撓性に優れている。本実施形態のコルゲートチューブ50は、円筒状に形成されている。
【0044】
(保護部材60の構成)
保護部材60は、例えば、コルゲートチューブ40の外周とコルゲートチューブ50の外周との間に架け渡されるように設けられている。保護部材60は、例えば、電線20A,20Bの長さ方向の両端が開口する筒状をなしている。保護部材60の材料としては、例えば、比較的硬度の高い弾性材料を用いることができる。弾性材料としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴムやエラストマを用いることができる。
【0045】
(ワイヤハーネス10の構成)
ワイヤハーネス10は、例えば、電線20Aの長さ方向の一部に設けられた電磁波吸収部材70Aと、電線20Bの長さ方向の一部に設けられた電磁波吸収部材70Bとを有している。ワイヤハーネス10は、例えば、電線20Aの長さ方向において電線20Aに対する電磁波吸収部材70Aの相対移動を規制する規制部材80Aと、電線20Bの長さ方向において電線20Bに対する電磁波吸収部材70Bの相対移動を規制する規制部材80Bとを有している。電磁波吸収部材70Aは、例えば、1本の電線20Aに対して設けられている。電磁波吸収部材70Bは、例えば、1本の電線20Bに対して設けられている。すなわち、電磁波吸収部材70A,70Bは、1本ずつの電線20A,20Bに対して個別に設けられている。電磁波吸収部材70Aと電磁波吸収部材70Bとは、例えば、電線20A,20Bの長さ方向において、互いに離れた位置に設けられている。
【0046】
ここで、電磁波吸収部材70Aと電磁波吸収部材70Bとは同様の構造を有し、規制部材80Aと規制部材80Bとは同様の構造を有している。このため、電磁波吸収部材70Bに電磁波吸収部材70Aと同様の符号を付し、規制部材80Bに規制部材80Aと同様の符号を付し、それら各要素についての詳細な説明は省略する。
【0047】
(電磁波吸収部材70Aの構成)
電磁波吸収部材70Aは、例えば、コルゲートチューブ40とコルゲートチューブ50との間に位置する電線20Aの外周に設けられている。例えば、電線20Aの長さ方向において、電磁波吸収部材70Aの一方側にはコルゲートチューブ40が設けられ、電磁波吸収部材70Aの他方側には電磁波吸収部材70B及びコルゲートチューブ50が設けられている。電磁波吸収部材70Aは、例えば、電線20Aの長さ方向においてコルゲートチューブ40と離れて設けられている。電磁波吸収部材70Aは、例えば、電線20Aの長さ方向において電磁波吸収部材70B及びコルゲートチューブ50と離れて設けられている。電磁波吸収部材70Aは、例えば、コルゲートチューブ40,50から露出されている。電磁波吸収部材70Aは、例えば、1本の電線20Aの外周を包囲するように設けられている。電磁波吸収部材70Aは、例えば、電線20Aから放射される電磁波(電磁ノイズ)の一部を吸収する。
【0048】
電磁波吸収部材70Aは、例えば、1本の電線20Aが貫通する貫通孔71Xを有している。電磁波吸収部材70Aは、例えば、貫通孔71Xを有することにより環状をなしている。電磁波吸収部材70Aは、例えば、電線20Aの長さ方向から見た平面視において貫通孔71Xを有し、その貫通孔71Xの中心を通る中心軸が延びる第1中心軸方向に沿って延びる所定の長さを有する環状に形成されている。本実施形態では、電磁波吸収部材70Aの第1中心軸方向が、電線20Aの長さ方向と平行に延びる方向に設定されている。
【0049】
貫通孔71Xは、例えば、電磁波吸収部材70Aを電線20Aの長さ方向に貫通するように形成されている。電線20Aは、例えば、貫通孔71Xを貫通するように設けられている。貫通孔71Xの内周面は、電線20Aの外周面と対向している。
【0050】
本実施形態の電磁波吸収部材70Aは、環状をなす磁性体コア72のみから構成されている。本実施形態の磁性体コア72は、円環状に形成されている。磁性体コア72は、例えば、電線20Aの周方向全周にわたって電線20Aに対して対向するように配置されることで、電線20Aから放射される電磁波を低減する機能を有している。磁性体コア72は、例えば、電線20Aから放射される電磁波を吸収し、この電磁波のエネルギーを振動等の力学的エネルギーや熱エネルギーに変換する。これにより、電線20Aから放射される電磁波が周辺の機器等に及ぼす悪影響が低減される。
【0051】
磁性体コア72は、例えば、軟磁性材料を含む成形体である。軟磁性材料としては、例えば、鉄(Fe)、鉄合金やフェライトなどを挙げることができる。鉄合金としては、例えば、Fe-ケイ素(Si)合金やFe-ニッケル(Ni)合金などを挙げることができる。磁性体コア72としては、例えば、フェライトコア、アモルファスコア、パーマロイコアを用いることができる。フェライトコアは、例えば、軟磁性を示すソフトフェライトからなる。ソフトフェライトとしては、例えば、ニッケル(Ni)と亜鉛(Zn)を含むフェライトやマンガン(Mn)と亜鉛(Zn)を含むフェライトを挙げることができる。磁性体コア72の材料は、例えば、低減したい電磁ノイズの周波数帯に応じて適宜選択することができる。
【0052】
図3に示すように、本実施形態の磁性体コア72は、周方向全周にわたって連続して形成されており、閉環状に形成されている。すなわち、本実施形態の磁性体コア72は、全体がつながって切れ目がなく輪になっている構造、つまり始点と終点とが一致する無端状の構造に形成されている。換言すると、本実施形態の磁性体コア72には、第1中心軸方向に沿って延びるスリットが形成されていない。本実施形態の磁性体コア72は一部品によって構成されている。なお、本実施形態では、磁性体コア72を一部品で構成するようにしたが、複数のコア材を組み合わせて環状をなす磁性体コア72を構成するようにしてもよい。例えば、磁性体コア72を、横断面半円状の一対のコア材を組み合わせて円環状に構成するようにしてもよい。
【0053】
図2に示すように、磁性体コア72は、例えば、磁性体コア72の周方向に沿って延びる外周面72Aと、磁性体コア72の径方向に沿って延び、コルゲートチューブ40側に向く側面72Bと、磁性体コア72の径方向に沿って延び、コルゲートチューブ50側に向く側面72Cとを有している。側面72B,72Cは、例えば、外周面72Aと貫通孔71Xの内周面との間に設けられている。磁性体コア72の外周寸法は、例えば、コルゲートチューブ40,50の外周寸法よりも大きく設定されている。このため、磁性体コア72の外周面72Aは、コルゲートチューブ40,50の外周面よりも径方向外側に突出した位置に設けられている。
【0054】
(規制部材80Aの構成)
規制部材80Aは、例えば、電磁波吸収部材70Aを電線20Aの外周に固定するように設けられている。
【0055】
規制部材80Aは、例えば、テープ部材81が電磁波吸収部材70A及び電線20Aに巻き回されて形成されている。テープ部材81は、例えば、一面に粘着層を有している。テープ部材81は、例えば、粘着層を径方向内側に向けた状態で、電磁波吸収部材70Aと電線20Aとに対して巻き回される。テープ部材81は、例えば、電磁波吸収部材70Aの外周面72Aと電線20Aの外周面とにわたって巻き回されている。
【0056】
テープ部材81は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aから電線20Aの外周面までの範囲に対して連続的に巻かれている。図示は省略するが、テープ部材81は、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。ここで、オーバーラップ巻きの構造とは、テープ部材81の幅方向における所定部分同士が重なるようにテープ部材81を螺旋状に巻き回した構造である。なお、テープ部材81の幅方向は、電線20の長さ方向に沿って延びる方向である。オーバーラップ巻きの構造としては、例えば、ハーフラップ巻きの構造であることが好ましい。ここで、ハーフラップ巻きの構造とは、テープ部材81の幅方向において略半分となる部分同士が重なるようにテープ部材81を螺旋状に巻き回した構造である。
【0057】
テープ部材81は、例えば、電磁波吸収部材70Aの外周面72Aを径方向内側に締め付けるように被覆している。テープ部材81は、例えば、電磁波吸収部材70Aの外周面72Aを周方向全周にわたって被覆している。電磁波吸収部材70Aは、例えば、テープ部材81によって径方向内側に締め付けられることによって電線20Aに固定されている。
【0058】
テープ部材81は、例えば、電線20Aの外周面を径方向内側に締め付けるように被覆している。テープ部材81は、例えば、電線20Aの外周面を周方向全周にわたって被覆している。
【0059】
図3に示すように、テープ部材81は、例えば、電磁波吸収部材70Aの貫通孔71Xの内部において、貫通孔71Xの周方向の一部に片寄って電線20Aが配置されるように、電磁波吸収部材70A及び電線20Aの外周面に巻き回されている。ここで、貫通孔71Xの内周面は、第1部分71Aと、その第1部分71Aと貫通孔71Xの中心軸に対して点対称な位置に配置された第2部分71Bとを有している。このとき、電線20Aは、貫通孔71Xの内部において、第1部分71Aと接触するとともに、第2部分71Bと離隔している。本実施形態の第1部分71Aは、電磁波吸収部材70Aの第1中心軸方向と交差する方向において、第2部分71Bよりも電線20Bから離れた位置に設けられた部分である。テープ部材81は、例えば、電線20Aが第1部分71Aと接触するとともに第2部分71Bと離隔するように、電磁波吸収部材70Aを電線20Aの外周に固定している。換言すると、電磁波吸収部材70Aは、貫通孔71Xの内部において電線20Aが第1部分71Aに接触して第1部分71A側(本実施形態では、電線20Bから離れた側)に片寄った状態で、テープ部材81によって電線20Aの外周面に固定されている。
【0060】
図2に示すように、電線20Aは、例えば、貫通孔71Xの第1中心軸方向の全長にわたって同じ方向、つまり第1部分71A側(ここでは、図中上方)に片寄って配置されている。本実施形態の電線20Aは、貫通孔71Xの第1中心軸方向の全長にわたって、電線20Bから離れた側に片寄って配置されている。換言すると、規制部材80Aのテープ部材81は、電線20Aが貫通孔71Xの第1中心軸方向の全長にわたって同じ方向に片寄って配置されるように、電磁波吸収部材70A及び電線20Aの外周面に対して巻き回されている。
【0061】
(電磁波吸収部材70Bの構成)
電磁波吸収部材70Bは、例えば、コルゲートチューブ40とコルゲートチューブ50との間に位置する電線20Bの外周に設けられている。例えば、電線20Bの長さ方向において、電磁波吸収部材70Bの一方側には電磁波吸収部材70A及びコルゲートチューブ40が設けられ、電磁波吸収部材70Bの他方側にはコルゲートチューブ50が設けられている。
【0062】
電磁波吸収部材70Bは、例えば、電線20A,20Bの長さ方向において、電磁波吸収部材70Aと離れた位置に設けられている。電磁波吸収部材70Bは、例えば、電線20A,20Bの長さ方向において、電磁波吸収部材70Aとその電磁波吸収部材70Aの第1中心軸方向に沿う長さ寸法の2倍の長さ以上離れた位置に設けられている。
【0063】
電磁波吸収部材70Bは、例えば、電線20Bの長さ方向から見た平面視において貫通孔71Yを有し、その貫通孔71Yの中心を通る中心軸が延びる第2中心軸方向に沿って延びる所定の長さを有する環状に形成されている。本実施形態の電磁波吸収部材70Bは、環状の磁性体コア72のみから構成されている。電磁波吸収部材70Bの磁性体コア72は、例えば、電線20Bの周方向全周にわたって電線20Bに対して対向するように配置されることで、電線20Bから放射される電磁波を低減する機能を有している。電線20Bは、例えば、貫通孔71Yを貫通するように設けられている。貫通孔71Yの内周面は、電線20Bの外周面と対向している。
【0064】
(規制部材80Bの構成)
規制部材80Bは、例えば、電磁波吸収部材70Bを電線20Bに固定するように設けられている。
【0065】
規制部材80Bは、例えば、テープ部材81が電磁波吸収部材70Bと電線20Bとに巻き回されて形成されている。テープ部材81は、例えば、電磁波吸収部材70Bの磁性体コア72の外周面72Aから電線20Bの外周面までの範囲に対して連続的に巻かれている。図示は省略するが、テープ部材81は、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。
【0066】
図3に示すように、規制部材80Bのテープ部材81は、例えば、電磁波吸収部材70Bの貫通孔71Yの内部において、貫通孔71Yの周方向の一部に片寄って電線20Bが配置されるように、電磁波吸収部材70B及び電線20Bの外周面に巻き回されている。ここで、貫通孔71Yの内周面は、第3部分71Cと、その第3部分71Cと貫通孔71Yの中心軸に対して点対称な位置に配置された第4部分71Dとを有している。このとき、電線20Bは、貫通孔71Yの内部において、第3部分71Cと接触するとともに、第4部分71Dと離隔している。本実施形態の第3部分71Cは、電磁波吸収部材70Bの第2中心軸方向と交差する方向において、第4部分71Dよりも電線20Aから離れた位置に設けられた部分である。規制部材80Bのテープ部材81は、例えば、電線20Bが第3部分71Cと接触するとともに第4部分71Dと離隔するように、電磁波吸収部材70Bを電線20Bの外周に固定している。換言すると、電磁波吸収部材70Bは、貫通孔71Yの内部において電線20Bが第3部分71Cに接触して第3部分71C側(本実施形態では、電線20Aから離れた側)に片寄った状態で、規制部材80Bのテープ部材81によって電線20Bの外周面に固定されている。
【0067】
図2に示すように、電線20Bは、例えば、貫通孔71Yの第2中心軸方向の全長にわたって同じ方向、つまり第3部分71C側(ここでは、図中下方)に片寄って配置されている。本実施形態の電線20Bは、貫通孔71Yの第2中心軸方向の全長にわたって、電線20Aから離れた側に片寄って配置されている。換言すると、規制部材80Bのテープ部材81は、電線20Bが貫通孔71Yの第2中心軸方向の全長にわたって同じ方向に片寄って配置されるように、電磁波吸収部材70B及び電線20Bの外周面に対して巻き回されている。
【0068】
図3に示すように、電磁波吸収部材70Aは、例えば、電磁波吸収部材70Aの第1中心軸方向から見た平面視において、電磁波吸収部材70Bの一部と重なるように設けられている。例えば、電磁波吸収部材70Aの下部は、第1中心軸方向から見た平面視において、電磁波吸収部材70Bの上部と重なるように設けられている。例えば、電磁波吸収部材70Aの下部は、第1中心軸方向から見た平面視において、電磁波吸収部材70Bの貫通孔71Yと部分的に重なるように設けられている。
【0069】
(編組部材90の構成)
図2に示すように、編組部材90は、例えば、全体として複数の電線20A,20Bの外周を一括して包囲する筒状をなしている。編組部材90は、例えば、電線20A,20Bの長さ方向の略全長にわたって電線20の外周を包囲するように設けられている。編組部材90は、例えば、コルゲートチューブ40,50の内部空間のそれぞれにおいて、複数の電線20A,20Bの外周を一括して包囲するように形成されている。換言すると、コルゲートチューブ40,50はそれぞれ、電線20A,20B及び編組部材90の外周を包囲するように設けられている。編組部材90は、例えば、コルゲートチューブ40とコルゲートチューブ50との間において、電磁波吸収部材70A,70Bの外周を包囲するように形成されている。編組部材90は、例えば、電磁波吸収部材70A,70Bを被覆する部分の外形が他の部分の外形に比べて大きくなるように形成されている。編組部材90は、例えば、保護部材60の内部空間において、電線20A,20B、電磁波吸収部材70A,70B及び規制部材80A,80Bの外周を包囲するように設けられている。
【0070】
編組部材90としては、複数の金属素線が編成された編組部材や、金属素線と樹脂素線とを組み合わせて編成された編組部材を用いることができる。金属素線の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。樹脂素線としては、例えば、パラ系アラミド繊維等の絶縁性及び耐剪断性に優れた強化繊維を用いることができる。なお、図示は省略するが、編組部材90の両端部は、例えば、コネクタC1(
図1参照)等においてアース接続(アース接地)されている。
【0071】
(保護部材60の構成)
保護部材60は、例えば、電磁波吸収部材70A,70Bの外周を包囲するように設けられている。保護部材60は、例えば、保護部材60の内部に配置された各種部材を防水する防水カバーとして機能する。
【0072】
保護部材60は、例えば、コルゲートチューブ40の外周に接続される筒状の接続筒部61と、コルゲートチューブ50の外周に接続される筒状の接続筒部62と、接続筒部61と接続筒部62との間に設けられた本体筒部63とを有している。本体筒部63は、他の部分、つまり接続筒部61,62の外周よりも径方向外側に張り出して形成されている。本体筒部63は、例えば、接続筒部61,62の周方向の全周にわたって接続筒部61,62よりも径方向外側に突出するように形成されている。本体筒部63の外周寸法は、例えば、接続筒部61,62の外周寸法よりも大きく形成されている。保護部材60は、例えば、接続筒部61と本体筒部63と接続筒部62とが連続して一体に形成された単一部品である。本実施形態の接続筒部61,62及び本体筒部63は、周方向全周にわたって連続して形成されており、始点と終点とが一致する無端状の構造に形成されている。換言すると、本実施形態の接続筒部61,62及び本体筒部63は、電線20の長さ方向に沿って延びるスリットが形成されていない。
【0073】
保護部材60は、例えば、接続筒部61がコルゲートチューブ40の外周に嵌合され、接続筒部62がコルゲートチューブ50の外周に嵌合されている。
接続筒部61は、例えば、コルゲートチューブ40の外周に嵌合可能な大きさの筒状に形成されている。本実施形態の接続筒部61は、円筒状に形成されている。接続筒部61の端部の内周面には、例えば、コルゲートチューブ40に係止する1つ又は複数(ここでは、4つ)のリップ61Aが形成されている。各リップ61Aは、例えば、接続筒部61の内周面の全周にわたって連続して形成されており、無端状の構造に形成されている。各リップ61Aは、例えば、接続筒部61がコルゲートチューブ40の外周に嵌合したときに、そのコルゲートチューブ40の環状凹部42に入り込むように形成されている。
【0074】
接続筒部61の外周面には、例えば、連結部材65が設けられている。連結部材65としては、例えば、樹脂製又は金属製の結束バンド、カシメリングやテープ部材などを用いることができる。接続筒部61は、連結部材65によって外周側から締め付けられてコルゲートチューブ40に固定される。例えば、接続筒部61は、コルゲートチューブ40に液密状に密着するまで、連結部材65によって外周側から締め付けられる。これにより、接続筒部61とコルゲートチューブ40との間から保護部材60の内部に水が浸入することを抑制できる。
【0075】
接続筒部62は、例えば、コルゲートチューブ50の外周に嵌合可能な大きさの筒状に形成されている。本実施形態の接続筒部62は、円筒状に形成されている。接続筒部62の端部の内周面には、例えば、コルゲートチューブ50に係止する1つ又は複数(ここでは、4つ)のリップ62Aが形成されている。各リップ62Aは、例えば、接続筒部62の内周面の全周にわたって連続して形成されており、無端状の構造に形成されている。各リップ62Aは、例えば、接続筒部62がコルゲートチューブ50の外周に嵌合したときに、そのコルゲートチューブ50の環状凹部52に入り込むように形成されている。
【0076】
接続筒部62の外周面には、例えば、連結部材66が設けられている。連結部材66としては、例えば、樹脂製又は金属製の結束バンド、カシメリングやテープ部材などを用いることができる。接続筒部62は、連結部材66によって外周側から締め付けられてコルゲートチューブ50に固定される。例えば、接続筒部62は、コルゲートチューブ50に液密状に密着するまで、連結部材66によって外周側から締め付けられる。これにより、接続筒部62とコルゲートチューブ50との間から保護部材60の内部に水が浸入することを抑制できる。
【0077】
本体筒部63は、例えば、一端部が接続筒部61と連続して一体に形成され、他端部が接続筒部62と連続して一体に形成されている。本体筒部63は、例えば、電磁波吸収部材70A,70Bを収容可能な大きさの筒状に形成されている。本実施形態の本体筒部63は、円筒状に形成されている。本体筒部63は、電磁波吸収部材70A,70Bを周方向全周にわたって包囲するように形成されている。本体筒部63は、例えば、コルゲートチューブ40,50から露出された電線20A,20B、電磁波吸収部材70A,70B、規制部材80A,80B及び編組部材90を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。
【0078】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)ワイヤハーネス10は、電線20Aと、電線20Aが貫通する貫通孔71Xを有する環状の電磁波吸収部材70Aと、電線20Aの長さ方向において電線20Aに対する電磁波吸収部材70Aの相対移動を規制する規制部材80Aとを有する。ワイヤハーネス10は、電線20Bと、電線20Bが貫通する貫通孔71Yを有する環状の電磁波吸収部材70Bと、電線20Bの長さ方向において電線20Bに対する電磁波吸収部材70Bの相対移動を規制する規制部材80Bとを有する。
【0079】
この構成によれば、電磁波吸収部材70Aが電線20Aに設けられ、電磁波吸収部材70Bが電線20Bに設けられる。すなわち、電磁波吸収部材70A,70Bが電線20A,20Bに対してそれぞれ個別に設けられる。これにより、複数の電線に対して1つの電磁波吸収部材を設ける場合に比べて、電磁波吸収部材70A,70Bの各々において低減したい電磁波を小さくできる。このため、複数の電線に対して1つの電磁波吸収部材を設ける場合に比べて、電磁波吸収部材70A,70Bの各々を小型化することができ、電磁波吸収部材70A,70Bの各々の質量を小さくできる。これにより、車両走行等に伴って電磁波吸収部材70A,70Bが振動した場合に、それら電磁波吸収部材70A,70Bから電線20A,20Bにそれぞれ入力される荷重を小さくできる。この結果、電磁波吸収部材70A,70Bの振動に起因して電線20A,20Bが損傷することを抑制できる。
【0080】
(2)電磁波吸収部材70Aを、貫通孔71Xの中心軸が延びる第1中心軸方向から見た平面視において、電磁波吸収部材70Bの一部と重なるように設けるようにした。このため、ワイヤハーネス10の体格が大きくなることを抑制できる。
【0081】
(3)また、電磁波吸収部材70A,70Bが電線20A,20Bに対してそれぞれ個別に設けられる。このため、電磁波吸収部材70A,70Bの形状及び設置位置等を個別に設定することができる。これにより、複数の電線に対して1つの電磁波吸収部材を設ける場合に比べて、ワイヤハーネス10の設計自由度を向上させることができる。
【0082】
(4)貫通孔71Xの内部において、電線20Aが第1部分71Aに接触されて第1部分71A側に片寄って配置された状態で、電磁波吸収部材70Aと電線20Aとが固定(一体化)されている。このため、車両走行等に伴って電磁波吸収部材70Aが振動した場合であっても、その電磁波吸収部材70Aの振動に起因して電線20Aが貫通孔71X内で揺さぶられることを抑制できる。例えば、貫通孔71Xの内周面に電線20Aが接触しない状態で電磁波吸収部材70A及び電線20Aが固定される場合に比べて、電磁波吸収部材70Aの振動に起因して電線20Aが貫通孔71X内で移動することを抑制できる。これにより、貫通孔71Xの内周面との接触に起因して電線20Aが摩耗することを抑制でき、電磁波吸収部材70Aの振動に起因して電線20Aが損傷することを好適に抑制できる。また、電線20Aが貫通孔71X内で揺さぶられることを抑制できるため、電磁波吸収部材70Aと電線20Aとの間で異音が発生することを抑制できる。
【0083】
(5)貫通孔71Yの内部において、電線20Bが第3部分71Cに接触されて第3部分71C側に片寄って配置された状態で、電磁波吸収部材70Bと電線20Bとが固定(一体化)されている。このため、車両走行等に伴って電磁波吸収部材70Bが振動した場合であっても、その電磁波吸収部材70Bの振動に起因して電線20Bが貫通孔71Y内で揺さぶられることを抑制できる。これにより、貫通孔71Yの内周面との接触に起因して電線20Bが摩耗することを抑制でき、電磁波吸収部材70Bの振動に起因して電線20Bが損傷することを好適に抑制できる。また、電線20Bが貫通孔71Y内で揺さぶられることを抑制できるため、電磁波吸収部材70Bと電線20Bとの間で異音が発生することを抑制できる。
【0084】
(6)電線20Aを、電磁波吸収部材70Aの貫通孔71Xの内部において、電線20Bから離れた第1部分71A側に片寄らせて配置した。また、電線20Bを、電磁波吸収部材70Bの貫通孔71Yの内部において、電線20Aから離れた第3部分71C側に片寄らせて配置した。この構成によれば、貫通孔71X,71Yの内部において、電線20Aと電線20Bとが互いに離れる方向に片寄って配置される。これにより、第1中心軸方向から見た平面視において、電磁波吸収部材70Aと電磁波吸収部材70Bとを大きく重ねることができる。この結果、ワイヤハーネス10の体格が大きくなることを好適に抑制できる。
【0085】
(7)電線20Aと電磁波吸収部材70Aと電線20Bと電磁波吸収部材70Bとを一括して包囲する編組部材90を設けるようにした。この構成によれば、電磁波吸収部材70Aと、その電磁波吸収部材70Aの外周を覆う編組部材90とによって、電線20Aから放射される電磁波を低減することができる。また、電磁波吸収部材70Bと、その電磁波吸収部材70Bの外周を覆う編組部材90とによって、電線20Bから放射される電磁波を低減することができる。
【0086】
(8)さらに、電磁波吸収部材70Aと電磁波吸収部材70Bとを一括して包囲するように編組部材90を設けたため、電磁波吸収部材70A,70Bに対して個別に編組部材を設ける場合に比べて、部品点数を低減することができる。
【0087】
(9)電磁波吸収部材70A,70Bの外周を覆う保護部材60を設けた。このため、電磁波吸収部材70A,70Bとそれら周辺部品との間に保護部材60を介在させることができる。これにより、電磁波吸収部材70A,70Bと周辺部品とが直接接触することを抑制できるため、電磁波吸収部材70A,70Bと周辺部品との接触に起因して電磁波吸収部材70A,70Bが損傷することを抑制できる。
【0088】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0089】
・上記実施形態では、電線20Aを、電磁波吸収部材70Aの貫通孔71Xの内部において、電線20Bから離れた第1部分71Aに接触させて第1部分71A側に片寄らせて配置した。また、電線20Bを、電磁波吸収部材70Bの貫通孔71Yの内部において、電線20Aから離れた第3部分71Cに接触させて第3部分71C側に片寄らせて配置した。しかし、電線20A,20Bの配置は、これに限定されない。
【0090】
・例えば
図4に示すように、電線20Bを、電磁波吸収部材70Bの貫通孔71Yの内部において、第3部分71Cに接触させないようにしてもよい。例えば、電線20Bを、貫通孔71Yの内部において、第3部分71C側に片寄らせないようにしてもよい。例えば、電線20Bを、貫通孔71Yの内部において、貫通孔71Yの中心付近に配置するようにしてもよい。
【0091】
・例えば
図5及び
図6に示すように、電線20Aを、貫通孔71Xの内部において、第2部分71Bに接触させて第2部分71B側に片寄らせて配置してもよい。ここで、第2部分71Bは、電磁波吸収部材70Aの第1中心軸方向と交差する方向において、第1部分71Aよりも電線20Bに近い位置に設けられた部分である。すなわち、電線20Aを、貫通孔71Xの内部において、第1部分71Aよりも電線20Bに近い第2部分71B側に片寄らせて配置してもよい。
【0092】
さらに、電線20Bを、貫通孔71Yの内部において、第4部分71Dに接触させて第4部分71D側に片寄らせて配置してもよい。ここで、第4部分71Dは、電磁波吸収部材70Bの第2中心軸方向と交差する方向において、第3部分71Cよりも電線20Aに近い位置に設けられた部分である。すなわち、電線20Bを、貫通孔71Yの内部において、第3部分71Cよりも電線20Aに近い第4部分71D側に片寄らせて配置してもよい。
【0093】
この構成によれば、電線20Aと電線20Bとを互いに近づけることができる。このため、例えば電磁波吸収部材70A,70Bの設けられていない部分のワイヤハーネス10の体格を小さくすることができる。例えば、
図5に示したコルゲートチューブ40,50の内周寸法及び外周寸法を小さくすることができる。
【0094】
・例えば
図7に示すように、貫通孔71Xの内部において、電線20Aを電線20Bに近い第2部分71B側に片寄らせて配置する一方で、貫通孔71Yの内部において、電線20Bを、第4部分71Dに接触させないようにしてもよい。例えば、電線20Bを、貫通孔71Yの内部において、第4部分71D側に片寄らせないようにしてもよい。例えば、電線20Bを、貫通孔71Yの内部において、貫通孔71Yの中心付近に配置するようにしてもよい。
【0095】
・例えば
図7に示した変更例において、例えば、電線20Aを、貫通孔71Xの内部において、貫通孔71
Xの内周面に接触しないように配置してもよい。例えば、電線20Aを、貫通孔71Xの内部において、第2部分71B側に片寄らせないようにしてもよい。例えば、電線20Aを、貫通孔71Xの内部において、貫通孔71Xの中心付近に配置するようにしてもよい。
【0096】
・上記実施形態では、保護部材60を無端状の構造に具体化したが、これに限定されない。すなわち、上記実施形態では、保護部材60を、内部に電磁波吸収部材70A,70Bが配置される前の状態からすでに筒体として形成されているものに具体化したが、これに限定されない。
【0097】
例えば
図6に示すように、保護部材60を、電線20A,20Bの長さ方向に沿って延びるスリット67を有するシート状をなす構造に具体化してもよい。本変更例の保護部材60は、例えば、可撓性を有する一枚のシートを電線20A,20Bの周方向に巻くことによって筒状をなすように形成されている。保護部材60は、例えば、電線20A,20Bの長さ方向と交差する第1方向(
図6では、電線20A,20Bの周方向)における端部68と、端部68と第1方向において反対側の端部69とを有している。保護部材60は、例えば、端部68と端部69とを電磁波吸収部材70A,70Bの径方向に重ね合わせることによって筒状をなすように形成されている。保護部材60の内周寸法は、例えば、端部68と端部69との重なり幅を調整することにより、電磁波吸収部材70A,70Bの外周寸法に合わせた寸法に調整することができる。保護部材60は、例えば、電磁波吸収部材70A,70Bの外周を包囲可能な筒状態から、電磁波吸収部材70A,70Bの外周を包囲しないシート状態に戻ることが可能な弾性を有している。
【0098】
保護部材60は、例えば、
図2に示した連結部材65,66によってコルゲートチューブ40,50の外周に固定されることにより、筒状態が維持される。連結部材65,66としては、例えば、テープ部材、結束バンドやカシメバンドなどを用いることができる。
【0099】
次に、
図5に従って、連結部材65,66としてテープ部材65A,66Aをそれぞれ用いた場合の構成について説明する。
テープ部材65Aは、例えば、保護部材60の長さ方向の端部をコルゲートチューブ40の外周面に固定するように形成されている。テープ部材66Aは、例えば、保護部材60の長さ方向の端部をコルゲートチューブ50の外周面に固定するように形成されている。
【0100】
テープ部材65Aは、例えば、保護部材60の長さ方向の端部の外周面と、保護部材60から露出されたコルゲートチューブ40の外周面とにわたって巻かれている。テープ部材65Aは、例えば、保護部材60の外周面からコルゲートチューブ40の外周面までの範囲に対して連続的に巻かれている。テープ部材65Aは、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。テープ部材65Aは、例えば、保護部材60の筒状態が維持されるように、保護部材60の端部の外周に巻かれている。
【0101】
テープ部材66Aは、例えば、保護部材60の長さ方向の端部の外周面と、保護部材60から露出されたコルゲートチューブ50の外周面とにわたって巻かれている。テープ部材66Aは、例えば、保護部材60の外周面からコルゲートチューブ50の外周面までの範囲に対して連続的に巻かれている。テープ部材66Aは、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。テープ部材66Aは、例えば、保護部材60の筒状態が維持されるように、保護部材60の端部の外周に巻かれている。
【0102】
・
図6に示した保護部材60の一面に、接着層又は粘着層を設けるようにしてもよい。例えば、保護部材60の端部69の一面に接着層又は粘着層を設けるようにしてもよい。この構成によれば、保護部材60の端部68に端部69を重ね合わせた場合に、接着層又は粘着層によって端部69を端部68に接着させることができる。これにより、テープ部材65A,66A(
図5参照)によって固定される前の段階において、保護部材60がシート状態に戻ることを好適に抑制できる。
【0103】
・上記実施形態の保護部材60の材料としては、例えば、コルゲートチューブ40,50よりも耐衝撃性及びクッション性に優れた材料を用いることもできる。例えば、保護部材60の材料としては、例えば、コルゲートチューブ40,50よりも吸音性に優れた材料を用いることもできる。このような保護部材60の材料としては、例えば、多孔性を有する材料を用いることができる。保護部材60の材料としては、例えば、発泡樹脂を用いることができる。発泡樹脂における気泡構造は、連続気泡構造であってもよいし、独立気泡構造であってもよい。保護部材60の材料としては、例えば、発泡ウレタン、発泡ポリエチレンや発泡エチレンプロピレンジエンゴムなどを用いることができる。以上説明したような材料を保護部材60の材料として用いることにより、保護部材60を緩衝部材として機能させることができる。
【0104】
この構成によれば、電磁波吸収部材70A,70Bとその周辺部品との間に緩衝部材としての保護部材60を介在させることができる。これにより、電磁波吸収部材70A,70Bと周辺部品との接触に起因した異音の発生を抑制できる。
【0105】
・例えば
図8に示すように、電磁波吸収部材70Aの外周を被覆する緩衝部材100Aを設けるようにしてもよい。また、電磁波吸収部材70Bの外周を被覆する緩衝部材100Bを設けるようにしてもよい。緩衝部材100A,100Bの材料としては、例えば、コルゲートチューブ40,50よりも耐衝撃性及びクッション性に優れた材料を用いることができる。例えば、緩衝部材100A,100Bの材料としては、例えば、コルゲートチューブ40,50よりも吸音性に優れた材料を用いることができる。このような緩衝部材100A,100Bの材料としては、例えば、多孔性を有する材料を用いることができる。緩衝部材100A,100Bの材料としては、例えば、発泡樹脂を用いることができる。発泡樹脂における気泡構造は、連続気泡構造であってもよいし、独立気泡構造であってもよい。緩衝部材100A,100Bの材料としては、例えば、発泡ウレタン、発泡ポリエチレンや発泡エチレンプロピレンジエンゴムなどを用いることができる。
【0106】
本変更例の緩衝部材100Aは、電磁波吸収部材70Aの外面全面、つまり外周面72A全面及び側面72B,72C全面を被覆するように形成されている。本変更例の緩衝部材100Bは、電磁波吸収部材70Bの外面全面、つまり外周面72A全面及び側面72B,72C全面を被覆するように形成されている。このとき、規制部材80Aは、例えば、緩衝部材100Aの外周面から電線20Aの外周面までの範囲に対して連続的に巻かれている。規制部材80Bは、例えば、緩衝部材100Bの外周面から電線20Bの外周面までの範囲に対して連続的に巻かれている。
【0107】
この構成によれば、電線20A,20Bの長さ方向において、電磁波吸収部材70Aと電磁波吸収部材70Bとの間に緩衝部材100A,100Bを介在させることができる。これにより、電磁波吸収部材70Aと電磁波吸収部材70Bとが直接接触することを抑制できるため、電磁波吸収部材70Aと電磁波吸収部材70Bとの接触に起因して電磁波吸収部材70A,70Bが損傷することを抑制できる。このため、電線20A,20Bの長さ方向において、電磁波吸収部材70Aと電磁波吸収部材70Bとを近接させて配置させることができる。例えば図示の例では、電磁波吸収部材70Aと電磁波吸収部材70Bとの間の距離が、電磁波吸収部材70Aの長さ寸法よりも短い距離に設定されている。
【0108】
・
図8に示した変更例において、緩衝部材100Aを、電磁波吸収部材70Aの外面のうち電磁波吸収部材70B側を向く側面72Cのみを被覆するように形成してもよい。
・
図8に示した変更例において、緩衝部材100Bを、電磁波吸収部材70Bの外面のうち電磁波吸収部材70A側を向く側面72Bのみを被覆するように形成してもよい。
【0109】
・
図8に示した変更例において、緩衝部材100Bを省略してもよい。
・上記実施形態では、電線20Aのみで第1電線部材を構成し、電線20Bのみで第2電線部材を構成するようにした。これに限らず、例えば
図9に示すように、電線部材25Aを、電線20Aと、その電線20Aの外周を包囲する被覆部材110Aとによって構成するようにしてもよい。また、電線部材25Bを、電線20Bと、その電線20Bの外周を包囲する被覆部材110Bとによって構成するようにしてもよい。
【0110】
被覆部材110Aは、例えば、電磁波吸収部材70Aの貫通孔71Xを貫通する部分の電線20Aの外周を被覆するように形成されている。被覆部材110Bは、例えば、電磁波吸収部材70Bの貫通孔71Yを貫通する部分の電線20Bの外周を被覆するように形成されている。被覆部材110A,110Bは、例えば、コルゲートチューブ40とコルゲートチューブ50との間に位置する電線20A,20Bの外周をそれぞれ包囲するように設けられている。各被覆部材110A,110Bは、例えば、各電線20A,20Bの外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。被覆部材110A,110Bは、例えば、コルゲートチューブ40,50の双方から露出されている。
【0111】
被覆部材110Aは、例えば、電線20Aの外周を包囲した状態で電磁波吸収部材70Aの貫通孔71Xを貫通するように設けられている。被覆部材110Bは、例えば、電線20Bの外周を包囲した状態で電磁波吸収部材70Bの貫通孔71Yを貫通するように設けられている。
【0112】
被覆部材110A,110Bの外周寸法は、例えば、電磁波吸収部材70A,70Bの貫通孔71X,71Yの内周寸法よりも小さく設定されている。被覆部材110A,110Bの外周寸法は、例えば、コルゲートチューブ40,50の内周寸法よりも小さく設定されている。なお、被覆部材110A,110Bは、例えば、長さ方向の一端部がコルゲートチューブ40の内部空間に収容され、長さ方向の他端部がコルゲートチューブ50の内部空間に収容されるようにしてもよい。
【0113】
被覆部材110A,110Bとしては、電線20A,20Bの外周を被覆することのできる外装部材であれば特に限定されない。例えば、被覆部材110A,110Bとしては、コルゲートチューブ、ツイストチューブやテープ部材を用いることができる。この場合のコルゲートチューブとしては、電線20A,20Bの長さ方向に沿って延びるスリットを有するものであってもよいし、スリットを有さないものであってもよい。
【0114】
本変更例の規制部材80Aは、例えば、電磁波吸収部材70Aの外周面72Aから被覆部材110Aの外周面を経て電線20Aの外周面までの範囲に対して連続的に巻かれている。本変更例の規制部材80Bは、例えば、電磁波吸収部材70Bの外周面72Aから被覆部材110Bの外周面を経て電線20Bの外周面までの範囲に対して連続的に巻かれている。
【0115】
以上説明した構成によれば、電線20A,20Bの外周をそれぞれ被覆する被覆部材110A,110Bが設けられ、それら被覆部材110A,110Bにより被覆された状態で電線20A,20Bが貫通孔71X,71Yにそれぞれ貫通される。このため、貫通孔71X,71Yの内周面が電線20A,20Bの外周面に直接接触することを抑制できる。これにより、貫通孔71X,71Yの内周面との接触に起因して電線20A,20Bが損傷することを好適に抑制できる。
【0116】
・
図9に示した変更例では、被覆部材110Aの長さ方向の端部を被覆するように規制部材80Aのテープ部材81を巻き回すようにしたが、これに限定されない。すなわち、上記変更例では、規制部材80Aのテープ部材81を、電磁波吸収部材70Aの外周面から電線20Aの外周面までの範囲に対して連続的に巻かれるように形成したが、これに限定されない。例えば、規制部材80Aのテープ部材81を、被覆部材110Aの長さ方向の端部を露出するように巻き回すようにしてもよい。すなわち、規制部材80Aのテープ部材81を、電磁波吸収部材70Aの外周面から被覆部材110Aの外周面までの範囲に対して連続的に巻かれるように形成してもよい。なお、規制部材80Bのテープ部材81についても同様に変更することができる。
【0117】
・
図10~
図12に示すように、被覆部材110Aを、電線20Aの長さ方向に沿って延びるスリット111を有するシート状に形成してもよい。本変更例の被覆部材110Aは、例えば、可撓性を有する一枚の樹脂シートを電線20Aの周方向に巻くことによって筒状をなすように形成されている。
【0118】
図12に示すように、被覆部材110Aは、例えば、電線20Aの長さ方向と交差する第2方向(
図12では、電線20Aの周方向)における端部112と、端部112と第2方向において反対側の端部113とを有している。被覆部材110Aは、例えば、端部112と端部113とを電線20Aの径方向に重ね合わせることによって筒状をなすように形成されている。被覆部材110Aの内周寸法は、例えば、端部112と端部113との重なり幅を調整することにより、電線20Aの外周寸法に合わせた寸法に調整することができる。被覆部材110Aは、例えば、電線20Aの外周を包囲可能な筒状態から、電線20Aの外周を包囲しないシート状態に戻ることが可能な弾性を有している。
【0119】
被覆部材110Aの材料としては、導電性を有さない樹脂材料が用いられる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。被覆部材110Aとしては、例えば、ツイストチューブを用いることができる。ツイストチューブは、例えば、ポリエチレンテレフタラート製やポリエステル製の織布によって構成されている。ツイストチューブは、例えば、樹脂繊維が編み込まれて構成されており、網目を有している。
【0120】
同様に、被覆部材110Bを、電線20Bの長さ方向に沿って延びるスリット111を有するシート状に形成してもよい。
この構成によれば、シート状の被覆部材110Aの端部112に端部113を重ね合わせることにより、被覆部材110Aを、電線20Aの外周を周方向全周にわたって包囲する筒状をなすように形成できる。このため、電線20Aに対して被覆部材110Aを後から容易に取り付けることができる。これにより、ワイヤハーネス10の組立作業性を向上させることができる。
【0121】
・上記実施形態では、規制部材80Aを、電磁波吸収部材70Aの外周面全面を被覆するようにテープ部材81を巻いて形成するようにしたが、これに限定されない。例えば、テープ部材81を、電磁波吸収部材70Aの外周面の一部のみを被覆するように巻いて規制部材80Aを形成してもよい。
【0122】
例えば
図10に示すように、本変更例の規制部材80Aは、例えば、8つの領域A1~A8を一体に有している。領域A1は、電磁波吸収部材70Aの貫通孔71Xからコルゲートチューブ50側に導出された部分の電線部材25Aに対してテープ部材81が巻き回された領域である。領域A1では、例えば、電線20Aの外周を包囲する被覆部材110Aに対して周方向全周にわたって複数回巻き回されている。領域A1におけるテープ部材81は、例えば、被覆部材110Aがシート状態に戻ることを抑制する機能、つまり被覆部材110Aを筒状態に維持する機能を有している。領域A1におけるテープ部材81は、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。
【0123】
図11に示すように、領域A2は、領域A1に連結された領域である。領域A2は、例えば、被覆部材110Aの外周面から電磁波吸収部材70Aの磁性体コア72の外周面72Aに向かってテープ部材81が張力を掛けられて張った状態で延びている領域である。領域A2におけるテープ部材81は、被覆部材110Aの外周面と磁性体コア72の外周面72Aとの間に架け渡されるように設けられている。領域A2におけるテープ部材81は、例えば、磁性体コア72の側面72Cに対向するように設けられている。
【0124】
領域A3は、領域A2に連結された領域である。領域A3は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aにテープ部材81が巻かれた領域である。領域A3におけるテープ部材81は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aの一部を被覆している。領域A3におけるテープ部材81は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aの一部に接着している。
【0125】
図10に示すように、領域A4は、領域A3に連結された領域である。領域A4は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aから、電磁波吸収部材70Aの貫通孔71Xからコルゲートチューブ40側に導出された部分の被覆部材110Aの外周面に向かってテープ部材81が張力を掛けられて張った状態で延びている領域である。領域A4におけるテープ部材81は、磁性体コア72の外周面72Aと被覆部材110Aの外周面との間に架け渡されるように設けられている。領域A4におけるテープ部材81は、例えば、磁性体コア72の側面72Bに対向するように設けられている。
【0126】
領域A2~A4におけるテープ部材81は、例えば、磁性体コア72の周方向に交差するとともに、電線20Aの長さ方向に交差するように傾斜して延びるように形成されている。
図10に示したテープ部材81では、領域A2の始端が図中上方側に位置し、その領域A2の始端から領域A4の終端に向かうに連れて図中下方に向かって傾斜して延びている。
【0127】
領域A5は、領域A4に連結された領域である。領域A5は、電磁波吸収部材70Aの貫通孔71Xからコルゲートチューブ40側に導出された部分の電線部材25Aに対してテープ部材81が巻き回された領域である。領域A5では、例えば、電線20Aの外周を包囲する被覆部材110Aに対して周方向全周にわたって複数回巻き回されている。領域A5におけるテープ部材81は、例えば、被覆部材110Aを筒状態に維持する機能を有している。領域A5におけるテープ部材81は、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。
【0128】
領域A6は、領域A5に連結された領域である。領域A6は、例えば、被覆部材110Aの外周面から磁性体コア72の外周面72Aに向かってテープ部材81が張力を掛けられて張った状態で延びている領域である。領域A6におけるテープ部材81は、被覆部材110Aの外周面と磁性体コア72の外周面72Aとの間に架け渡されるように設けられている。領域A6におけるテープ部材81は、例えば、磁性体コア72の側面72Bに対向するように設けられている。
【0129】
領域A7は、領域A6に連結された領域である。領域A7は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aにテープ部材81が巻かれた領域である。領域A7におけるテープ部材81は、例えば、領域A3におけるテープ部材81と交差するように形成されている。領域A7におけるテープ部材81は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aの一部を被覆している。領域A7におけるテープ部材81は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aの一部に接着するとともに、領域A3におけるテープ部材81の一部に接着している。
【0130】
領域A8は、領域A7に連結された領域である。領域A8は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aから領域A1に向かってテープ部材81が張力を掛けられて張った状態で延びている領域である。領域A8におけるテープ部材81は、磁性体コア72の外周面72Aと被覆部材110Aの外周面との間に架け渡されるように設けられている。領域A8におけるテープ部材81は、例えば、磁性体コア72の側面72Cに対向するように設けられている。
【0131】
領域A6~A8におけるテープ部材81は、例えば、磁性体コア72の周方向に交差するとともに、電線20Aの長さ方向に交差するように傾斜して延びるように形成されている。領域A6~A8におけるテープ部材81は、例えば、領域A2~A4におけるテープ部材81と交差するように形成されている。領域A6~A8におけるテープ部材81は、例えば、領域A2~A4におけるテープ部材81の一部と重なるように形成されている。
図10に示したテープ部材81では、領域A6の始端が図中上方側に位置し、その領域A6の始端から領域A8の終端に向かうに連れて図中下方に向かって傾斜して延びている。
【0132】
図11及び
図12に示すように、テープ部材81は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aに対して、その外周面72Aの一部の領域74のみに接着するように形成されている。テープ部材81は、例えば、磁性体コア72の外周面72A全体の1/2よりも小さい領域74のみに接着するように形成されている。テープ部材81は、例えば、磁性体コア72の外周面72A全体の1/4よりも小さい領域74のみに接着するように形成されている。テープ部材81は、例えば、磁性体コア72の外周面72Aの周方向全周の1/4よりも小さい領域74のみに接着するように形成されている。
【0133】
このとき、
図12に示すように、電磁波吸収部材70Aの貫通孔71Xの内部において、貫通孔71Xの周方向の一部に片寄って電線部材25Aが配置されるように、テープ部材81を電磁波吸収部材70A及び電線部材25Aの外周面に巻き回すようにしてもよい。例えば、電線部材25Aは、貫通孔71Xの内部において、第1部分71Aと接触するとともに、第2部分71Bと離隔している。例えば、被覆部材110Aの一部は、貫通孔71Xの内部において、第1部分71Aと接触するとともに、第2部分71Bと離隔している。ここで、電線部材25Aが接触する第1部分71Aは、電磁波吸収部材70Aの第1中心軸方向と交差する方向において、第2部分71Bよりも、テープ部材81によって被覆された電磁波吸収部材70Aの外周面である領域74に近い位置に設けられている。第1部分71Aは、例えば、電磁波吸収部材70Aの周方向において、領域74に対応する部分の貫通孔71Xの内周面である。例えば、第1部分71Aは、磁性体コア72の周方向において、磁性体コア72の外周面72Aの領域74と同じ角度に位置する部分である。例えば、第1部分71Aは、貫通孔71Xの内周面のうち領域74の裏側に位置する部分である。本変更例のテープ部材81は、例えば、貫通孔71Xの内部において電線部材25Aの被覆部材110Aが第1部分71Aに接触されて第1部分71A側(領域74側)に片寄って配置されるように、電磁波吸収部材70Aを電線部材25Aの外周に固定している。なお、電線部材25Aは、例えば、貫通孔71Xの第1中心軸方向の全長にわたって同じ方向、つまり領域74側に片寄って配置されている。換言すると、テープ部材81は、電線部材25Aが貫通孔71Xの第1中心軸方向の全長にわたって同じ方向に片寄って配置されるように、電磁波吸収部材70A及び電線部材25Aの外周面に巻き回されている。
【0134】
この構成によれば、電磁波吸収部材70Aの外周面72Aのうち周方向の一部のみを覆うようにテープ部材81が形成される。これにより、例えば電磁波吸収部材70Aの外周面72Aを周方向全周にわたって覆うようにテープ部材81を形成する場合に比べて、テープ部材81の長さを短くすることができる。この結果、ワイヤハーネス10の製造コストを低減することができる。なお、規制部材80Aと同様に、規制部材80Bについても変更することができる。
【0135】
・上記実施形態では、規制部材80A,80Bをテープ部材81で構成するようにしたが、これに限定されない。例えば、規制部材80A,80Bとして、金属バンドや樹脂製の結束バンドを用いるようにしてもよい。
【0136】
・上記実施形態では、規制部材80Aを、電磁波吸収部材70Aを電線20Aに固定するように設けたが、これに限定されない。例えば、規制部材80Aは、電線20Aの長さ方向において電線20Aに対する電磁波吸収部材70Aの相対移動を規制することが可能な構成であれば、その形状及び設置位置は特に限定されない。上記実施形態では、規制部材80Aを、電磁波吸収部材70Aの外周面を被覆するように形成したが、電磁波吸収部材70Aの外周を包囲しないように形成してもよい。例えば、規制部材80Aを、電線20Aの長さ方向において、電磁波吸収部材70Aと隣り合うように設けるようにしてもよい。
【0137】
なお、規制部材80Aと同様に、規制部材80Bについても変更することができる。
・上記実施形態では、第1外装部材としてコルゲートチューブ40に具体化し、第2外装部材としてコルゲートチューブ50に具体化したが、これに限定されない。例えば、第1外装部材及び第2外装部材として、硬質の樹脂製パイプ、金属製パイプやゴム製の防水カバーを用いることができる。例えば、第1外装部材と第2外装部材とを、互いに異なる種類の外装部材に具体化してもよい。
【0138】
・上記実施形態では、外装部材30を、コルゲートチューブ40,50と保護部材60とを有する構成に具体化したが、これに限定されない。
例えば
図13に示すように、外装部材30からコルゲートチューブ50を省略し、外装部材30を、コルゲートチューブ40と保護部材60とを有する構成に具体化してもよい。本変更例では、コルゲートチューブ40とコネクタC1との間に、電磁波吸収部材70A,70Bが設けられている。保護部材60は、例えば、コルゲートチューブ40から露出された電線20A,20B及び電磁波吸収部材70A,70Bの外周を被覆するように設けられている。保護部材60は、例えば、コルゲートチューブ40の外周とコネクタC1の外周との間に架け渡されるように設けられている。例えば、保護部材60は、コネクタC1の有するコネクタハウジング(図示略)の外周に嵌合されている。
【0139】
・上記実施形態の編組部材90の代わりに、金属箔などの他の電磁シールド部材に変更してもよい。
・上記実施形態における編組部材90を省略してもよい。
【0140】
・上記実施形態の電線20A,20Bをシールド電線に変更してもよい。
・上記実施形態の電線20A,20Bを低圧電線に変更してもよい。
・上記実施形態では、電磁波吸収部材70A,70Bを磁性体コア72のみで構成するようにしたが、これに限定されない。例えば、電磁波吸収部材70A,70Bを、磁性体コア72と、その磁性体コア72を収容するケースとを含む構成としてもよい。
【0141】
・上記実施形態における電磁波吸収部材70A,70Bの数及び設置位置は特に限定されない。例えば、1本の電線20A,20Bに対して2個以上の電磁波吸収部材70A,70Bを設けてもよい。例えば、電磁波吸収部材70A,70Bを防水領域である車室外に設けるようにしてもよいし、電磁波吸収部材70A,70Bを非防水領域である車室内に設けるようにしてもよい。
【0142】
・上記実施形態では、外装部材30の内部に収容される電線20が2本であったが、特に限定されるものではなく、車両Vの仕様に応じて電線20の本数は変更することができる。例えば、外装部材30の内部に収容される電線20は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。例えば、外装部材30に収容される電線として、低圧バッテリと各種低電圧機器(例えば、ランプ、カーオーディオ等)とを接続する低圧電線を追加した構成としてもよい。
【0143】
・車両Vにおけるインバータ11と高圧バッテリ12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。
例えば
図14に示すように、高圧バッテリ12が車両Vの床の略全体に配置され、その高圧バッテリ12とインバータ11とを電気的に接続するワイヤハーネス10に具体化してもよい。
【0144】
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10によって接続される電気機器としてインバータ11及び高圧バッテリ12を採用したが、これに限定されない。例えば、インバータ11と車輪駆動用のモータとを接続する電線に採用してもよい。すなわち、車両Vに搭載される電気機器間を電気的に接続するものであれば適用可能である。
【0145】
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0146】
C1 コネクタ
V 車両
10 ワイヤハーネス
11 インバータ
12 高圧バッテリ
20 電線
20A 電線(第1電線)
20B 電線(第2電線)
21 芯線
22 絶縁被覆
25A 電線部材(第1電線部材)
25B 電線部材(第2電線部材)
30 外装部材
40 コルゲートチューブ(第1外装部材)
41 環状凸部
42 環状凹部
50 コルゲートチューブ(第2外装部材)
51 環状凸部
52 環状凹部
60 保護部材
61 接続筒部
61A リップ
62 接続筒部
62A リップ
63 本体筒部
65 連結部材
65A テープ部材
66 連結部材
66A テープ部材
67 スリット
68 端部
69 端部
70A 電磁波吸収部材(第1電磁波吸収部材)
70B 電磁波吸収部材(第2電磁波吸収部材)
71A 第1部分
71B 第2部分
71C 第3部分
71D 第4部分
71X 貫通孔(第1貫通孔)
71Y 貫通孔(第2貫通孔)
72 磁性体コア
72A 外周面
72B 側面
72C 側面
74 領域
80A 規制部材(第1規制部材)
80B 規制部材(第2規制部材)
81 テープ部材
A1-A8 領域
90 編組部材(電磁シールド部材)
100A 緩衝部材
100B 緩衝部材
110A 被覆部材(第1被覆部材)
110B 被覆部材(第2被覆部材)
111 スリット
112 端部
113 端部