(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ガスクロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
G01N 30/26 20060101AFI20231108BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20231108BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01N30/26 A
G01N30/02 Z
G01N30/26 E
G01N30/86 D
G01N30/86 Q
(21)【出願番号】P 2020032664
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木坂 綺花
(72)【発明者】
【氏名】木本 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】長尾 優
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-044647(JP,A)
【文献】特開2018-136227(JP,A)
【文献】登録実用新案第3160422(JP,U)
【文献】米国特許第09435774(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入された試料から試料ガスを生成する試料ガス生成部と、
前記試料ガス生成部の出口に流体接続され、前記試料ガス生成部で生成された試料ガス中の成分を分離するための分離カラムと、
前記分離カラムの出口に流体接続され、前記分離カラムにおいて分離された成分を検出するための検出器と、
前記試料ガス生成部で生成された試料ガスを前記分離カラムへ搬送するためのキャリアガスとなるガスを供給するための複数のガス供給源と、
前記複数のガス供給源が流体接続され、前記複数のガス供給源のうちの1つを前記試料ガス生成部へ切り替えて流体接続するように構成された切替部と、
前記切替部に接続された前記複数のガス供給源のそれぞれが供給するガスの種類をユーザに入力させて設定するように構成されたガス種設定部と、
前記ガス種設定部により設定された前記複数のガス供給源のそれぞれが供給するガスの種類を記憶するガス種記憶部と、
前記切替部の状態を自動で認識し、前記切替部の状態及び前記ガス種記憶部に記憶されている情報に基づいて前記試料ガス生成部に前記キャリアガスとして供給されるガスの種類を特定するように構成されたガス種特定部と、を備えているガスクロマトグラフ。
【請求項2】
ユーザに対する情報表示を行なうための表示装置と、
情報入力を行なうための入力装置と、
ユーザによる前記表示装置及び前記入力装置を用いた情報入力に基づいて、試料の分析を行なうための分析条件として前記キャリアガスのガス種を設定するように構成された条件設定部と、
前記条件設定部により設定された分析条件を記憶する条件記憶部と、
前記ガス種記憶部に記憶された情報を用いて、前記条件記憶部に記憶された前記分析条件に従って前記切替部の動作を制御するように構成された制御部と、を備えている請求項1に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項3】
前記分析条件の設定とは別に、前記試料ガス生成部へ流体接続すべき前記ガス供給源をユーザによって入力される指示に基づいて選択するように構成されたガス選択部を備え、
前記制御部は前記
切替部を制御して、前記ガス選択部により選択された前記ガス供給源を前記試料ガス生成部へ流体接続するように構成されている、請求項2に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項4】
前記切替部の切替えが前記キャリアガスのガス種の変更に該当するか否かを前記ガス種記憶部に記憶されている情報に基づいて判定するように構成された変更判定部と、
前記キャリアガスのガス種が変更されてから前記キャリアガスの流通経路内のガスの置換が完了するまでの所要時間として予め設定された待機時間を記憶する待機時間記憶部と、
前記変更判定部による判定結果に基づき、分析準備のための前記キャリアガスのガス種の変更が行われたときに、前記キャリアガスの流通経路内のガスの置換が行われていることを示す置換中表示を前記待機時間中に前記表示装置で行なうように構成された情報表示部と、を備えている、請求項2又は3に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項5】
ユーザに前記待機時間を設定するための数値を入力させ、ユーザによって入力された数値に基づいて前記待機時間を設定するように構成された待機時間設定部を備え、
前記待機時間記憶部は、前記待機時間設定部により設定された前記待機時間を記憶するように構成されている、請求項4に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項6】
前記待機時間記憶部は前記待機時間のデフォルト値を予め記憶しており、
前記待機時間設定部は、ユーザに前記待機時間を設定するための数値を入力させる際に、前記表示装置に前記デフォルト値を表示するように構成されている、請求項5に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項7】
前記情報表示部は、前記置換中表示の一部として、前記キャリアガスの変更前のガス種と変更後のガス種を表示するように構成されている、請求項4から6のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項8】
前記キャリアガスのガス種の変更が行われてからの経過時間を計測し、前記待機時間から前記経過時間を差し引くことにより前記待機時間の残り時間を算出する残り時間算出部を備え、
前記情報表示部は、前記置換中表示の一部として、前記残り時間算出部により算出される前記残り時間を前記表示装置に表示するように構成されている、請求項4から7のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフは、試料ガス生成部で生成された試料ガスを分離カラムへ移送し、試料ガス中の各成分を分離カラムにおいて分離させ、分離した各成分を検出器において検出するように構成されている。試料ガス生成部で生成された試料ガスを分離カラムへ移送するために、試料ガス生成部にはキャリアガスが供給される。
【0003】
ガスクロマトグラフでは分離カラムの温度を制御しながら分析を行なうが、分析を行なわない待機状態の間に分離カラムの温度制御を停止させると、次の試料の分析のために分離カラムの温度を所定温度で安定させるまでに長時間を要する。そのため、待機状態の間も分離カラムの温度制御を継続することが一般的である。一方で、分離カラムを流体が流れていない状態で分離カラムを高温で温度制御すると、分離カラム内に充填されている固定相の劣化が促進されて分離カラムの寿命が低下するという問題がある。そのため、試料の分析を行なわない待機状態の間もキャリアガスを流し続けることが一般的に行われている。
【0004】
キャリアガスとしてヘリウムガスが一般的であるが、ヘリウムガス価格の上昇等に起因してヘリウムガスの消費量を低減することが求められている。そのため、2種類のガスのうちのいずれかを択一的に試料ガス生成部へ供給できるようにし、試料の分析中はヘリウムガスをキャリアガスとして使用し、待機状態の間は窒素ガスなどヘリウムガス以外のガスをカラム保護ガスとして使用することが提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガスの種類によって粘性等の特性が異なるため、キャリアガスのガス種が切り替えられた場合、キャリアガスの流量、圧力等を制御するためのパラメータも変更する必要がある。しかし、これまでは、システム側でキャリアガスのガス種を把握することができていなかったため、キャリアガスのガス種が切り替えられるときに、どのようなガスがキャリアガスとして用いられるのかをユーザが入力してシステムに認識させる必要があった。ユーザが変更後のキャリアガスのガス種の入力をしなかった場合、キャリアガスの流量、圧力等の制御が正確に行われない上、分析結果に正確な情報が反映されないことになる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、キャリアガスのガス種を変更できるように構成されたガスクロマトグラフにおいて、キャリアガスのガス種を自動認識できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガスクロマトグラフは、注入された試料から試料ガスを生成する試料ガス生成部と、前記試料ガス生成部の出口に流体接続され、前記試料ガス生成部で生成された試料ガス中の成分を分離するための分離カラムと、前記分離カラムの出口に流体接続され、前記分離カラムにおいて分離された成分を検出するための検出器と、前記試料ガス生成部で生成された試料ガスを前記分離カラムへ搬送するためのキャリアガスとなるガスを供給するための複数のガス供給源と、前記複数のガス供給源が流体接続され、前記複数のガス供給源のうちの1つを前記試料ガス生成部へ切り替えて流体接続するように構成された切替部と、前記切替部に接続された前記複数のガス供給源のそれぞれから供給されるガスの種類を、ユーザによって入力された情報に基づいて設定するように構成されたガス種設定部と、前記ガス種設定部により設定されたガスの種類を記憶するガス種記憶部と、前記切替部の状態を認識し、前記切替部の状態及び前記ガス種記憶部に記憶されている情報に基づいて前記試料ガス生成部に供給されている前記キャリアガスのガス種を特定するように構成されたガス種特定部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るガスクロマトグラフでは、切替部に接続された前記複数のガス供給源のそれぞれから供給されるガスの種類を、ユーザによって入力された情報に基づいて設定するように構成されたガス種設定部と、前記ガス種設定部により設定されたガスの種類を記憶するガス種記憶部と、前記切替部の状態を認識し、前記切替部の状態及び前記ガス種記憶部に記憶されている情報に基づいて前記試料ガス生成部に供給されている前記キャリアガスのガス種を特定するように構成されたガス種特定部と、を備えているので、前記キャリアガスのガス種を自動認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ガスクロマトグラフの一実施例を示す概略構成図である。
【
図2】同実施例におけるガス供給源のガス種の設定動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】同実施例におけるキャリアガスのガス種の特定動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】同実施例のおけるキャリアガスの設定動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】同実施例のおけるキャリアガスの選択動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】同実施例のおける待機時間の設定動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】同実施例におけるガス供給源の変更後の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ガスクロマトグラフの一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示されているように、この実施例のガスクロマトグラフは、試料ガス生成部2、オートサンプラ4、分離カラム6、検出器8、カラムオーブン10、ガス供給源12A,12B、切替部14、調節器16、制御装置18、演算処理装置20、入力装置22及び表示装置24を備えている。
【0013】
オートサンプラ4は、試料ガス生成部2に対して試料を自動的に注入するように構成されている。試料ガス生成部2は、オートサンプラ4により注入された試料を気化させて試料ガスを生成する試料気化室を内部に備えている。試料ガス生成部2の出口に分離カラム6の入口が流体接続されており、分離カラム6の出口に検出器8が流体接続されている。分離カラム6は試料ガス生成部2で生成された試料ガス中の成分を分離するためのものであり、検出器8は分離カラム6において分離された各成分を検出するためのものである。検出器8としては、MS(質量分析計)、TCD(熱伝導度検出器)、FID(水素炎イオン化検出器)などを用いることができる。
【0014】
試料ガス生成部2の試料気化室にはガス供給源12A,12Bのいずれか一方からのガスがキャリアガスとして供給される。試料ガス生成部2において生成された試料ガスは、ガス供給源12A又は12Bから供給されるキャリアガスによって分離カラム6へ搬送される。切替部14は、ガス供給源12A,12Bのうちのいずれか一方を択一的に試料ガス生成部2へ流体接続させるように構成されている。切替部14は、例えば3方電磁弁によって実現することができる。切替部14と試料ガス生成部2との間に調節器16が介在しており、試料ガス生成部2にキャリアガスとして供給されるガスの流量が調節器16によって調節される。調節器16は、ガス供給源12A又は12Bからのガスの供給圧力及び供給流量を調節する機能を有する。
【0015】
なお、この実施例では、切替部14によって2つのガス供給源12A及び12Bのうちのいずれか一方が選択されるようになっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、3つ以上のガス供給源のうちの1つが切替部14によって選択されるように構成されていてもよい。
【0016】
分離カラム6はカラムオーブン10内に収容されている。カラムオーブン10は、ヒータ26及び温度センサ28を備え、分離カラム6の温度を設定された温度に調節する。
【0017】
制御装置18は、CPU(中央演算装置)及び記憶装置が搭載された電子回路(例えば専用のシステムコントローラ)によって実現されるものであり、このガスクロマトグラフの動作制御を行なう。演算処理装置20は、制御装置18と通信可能に設けられた専用又は汎用のコンピュータによって実現されるものである。演算処理装置20では、制御装置18が動作制御を行なうために必要なパラメータの設定を行なうことができる。また、演算処理装置20には検出器8において得られた分析データが制御装置18を介して入力され、演算処理装置20にはその分析データに基づいて種々の演算処理を行なう機能が搭載されている。演算処理装置20には、キーボード等によって実現される入力装置22と、液晶ディスプレイ等によって実現される表示装置24が電気的に接続されている。分析条件等のパラメータの設定に必要な情報は、入力装置22を介して演算処理装置20に入力される。また、演算処理装置20において実行された演算処理の結果は、表示装置24に表示される。
【0018】
制御装置18は、制御部30、ガス種特定部32、ガス種記憶部36、条件記憶部38、待機時間記憶部40及び残り時間算出部42を備えている。演算処理装置20は、ガス種設定部44、条件設定部46、ガス選択部48、待機時間設定部50及び情報表示部52を備えている。ガス種特定部32、残り時間算出部42、ガス種設定部44、条件設定部46、ガス選択部48、待機時間設定部50及び情報表示部52は、CPUが所定のプログラムを実行することによって得られる機能である。ガス種記憶部36、条件記憶部38及び待機時間記憶部40は、記憶装置の一部の記憶領域によって実現される機能である。
【0019】
制御部30は、条件記憶部38に記憶されている待機条件及び分析条件に基づいて、オートサンプラ4、検出器8、切替部14、調節器16及びヒータ26の動作制御を行なうように構成されている。待機条件とは、分析を行なわない待機状態におけるキャリアガスの供給圧力、供給流量、分離カラム6の温度等の条件である。分析条件とは、分析を行なう分析状態におけるキャリアガスの供給圧力、供給流量、分離カラム6の温度等の条件である。制御部30は、待機状態では、条件記憶部38に記憶されている待機条件に従い、設定されたガス種のキャリアガスを設定された供給圧力及び流量で試料ガス生成部2へ供給し、分離カラム6の温度を設定された温度に制御する。また、分析状態では、条件記憶部38に記憶されている分析条件に従い、設定されたガス種のキャリアガスを設定された供給圧力及び流量で試料ガス生成部2へ供給し、分離カラム6の温度を設定された温度に制御する。次の試料の分析が可能なスタンバイ状態へ移行する際、制御部30は、次の試料の分析における初期状態となるように、キャリアガスのガス種、キャリアガスの供給圧力・流量、及び分離カラム6の温度を制御する。
【0020】
ガス供給源12A及び12Bのそれぞれから供給されるキャリアガスのガス種は、ユーザが切替部14の各ポートに接続するガスボンベ(ガス供給源)の供給ガスの種類によるものであり、ガス供給源12A及び12Bから互いに異なる種類のガスが供給される場合のほかに同種のガスが供給される場合もある。各ガス供給源12A及び12Bはどのようなガスを供給するものであるのかは、ユーザが設定する。
【0021】
図2に示されているように、ユーザがガス種を設定するための指示を演算処理装置20に入力すると、演算処理装置20のガス種設定部44が設定画面を表示装置24に表示し(ステップ101)、切替部14の各ポートに接続したガス供給源12A及び12Bのそれぞれのガス種をユーザに入力させて設定する(ステップ102)。ガス種設定部44によって設定された各ガス供給源12A及び12Bのガス種に関する情報は、制御装置18へ送信されてガス種記憶部36に記憶される(ステップ103)。
【0022】
上記設定により、制御装置18は、ガス供給源12A及び12Bのそれぞれから供給されるキャリアガスのガス種を認識する。制御装置18は、制御部30による切替部14の制御状態から切替部14におけるポートの接続状態を認識することができる。そのため、制御装置18は、試料ガス生成部2に供給されているキャリアガスのガス種を特定することができる。具体的には、
図3に示されているように、制御装置18のガス種特定部32が、切替部14におけるポート間の接続状態を参照し(ステップ201)、さらにガス種記憶部36に記憶されている情報を参照することで(ステップ202)、試料ガス生成部2に供給されているキャリアガスのガス種を特定する。このガス種特定部32の機能により、試料ガス生成部2に供給されているキャリアガスのガス種を自動認識するができる。
【0023】
キャリアガスのガス種によって粘性が異なるため、キャリアガスのガス種ごとに調節器16の制御量を算出するためのパラメータが異なる。制御部30は、ガス種特定部32によって特定されたキャリアガスのガス種に応じたパラメータを用いて、試料ガス生成部2へのキャリアガスの供給圧力及び供給流量が設定された値になるように、調節器16の動作を制御する。
【0024】
この実施例のガスクロマトグラフでは、分析条件の1つとして又は待機条件の1つとしてキャリアガスのガス種を設定することができる。ユーザが条件設定を行なうための指示を演算処理装置20に入力すると、
図4に示されているように、演算処理装置20の条件設定部46が設定画面を表示装置24に表示する(ステップ301)。条件設定部46は、設定画面中に各ガス供給源12A及び12Bのガス種を表示し(ステップ302)、ユーザに対し、各ガス供給源12A及び12Bのガス種を示しながら所望のガス供給源12A又は12Bを選択させ(ステップ303)、それによって分析中又は待機中に用いるガス供給源12A又は12Bを設定する。条件設定部46によって設定された分析条件又は待機条件は、制御装置18へ送信されて条件記憶部38に保持される(ステップ304)。
【0025】
また、ユーザは、分析条件及び待機条件の設定とは別に、任意のタイミングで試料ガス生成部2に流体接続されるガス供給源12A/12Bの切替えを行なうことができる。ガス供給源を切り替えるための指示をユーザが演算処理装置20に入力すると、演算処理装置20のガス選択部48が選択画面を表示装置24に表示する(ステップ401)。ガス選択部48は、選択画面中に各ガス供給源12A及び12Bのガス種を表示し(ステップ402)、ユーザに対し、各ガス供給源12A及び12Bのガス種を示しながら所望のガス供給源12A又は12Bを選択させる(ステップ403)。ユーザがガス供給源12A又は12Bのいずれか一方を選択して決定すると、選択されたガス供給源12A又は12Bに関する信号が演算処理装置20から制御装置18へ送信され、制御部30がユーザの所望するガス供給源12A又は12Bが試料ガス生成部2に接続されるように切替部14を制御する(ステップ404)。
【0026】
ガス供給源12A及び12Bが互いに異なる種類のガスを供給する場合、切替部14によってガス供給源の切替えが行われたときにキャリアガスのガス種が変更される。そのような場合、キャリアガスの流通経路、具体的には、ガス供給源12A又は12Bから試料ガス生成部2及び分離カラム6を経て検出器8に至る経路内のガスがすべて切替え後のガスに置換されるまで次の分析を開始することができず、一定の待機時間が必要となる。また、ガス供給源12A及び12Bが同種のガスを供給する場合でも、ガスの純度が互いに異なっている場合には、キャリアガスの流通経路内のガスが完全に置換される前に次の分析を開始することは好ましくない。
【0027】
この実施例では、ガス供給源の切替えが行われてから次の試料の分析が可能なスタンバイ状態になるまでの待機時間をユーザが任意に設定することができるようになっている。待機時間を設定するための指示をユーザが演算処理装置20に入力すると、演算処理装置20の待機時間設定部50が待機時間の設定画面を表示装置24に表示する(ステップ601)。待機時間記憶部40には待機時間のデフォルト値が記憶されており、待機時間設定部50は、設定画面にそのデフォルト値を表示する(ステップ602)。待機時間設定部50は、ユーザに任意の数値を入力させ(ステップ603)、それによって待機時間を設定する。待機時間設定部50によって設定された待機時間は、制御装置18へ送信されて待機時間記憶部40に記憶される(ステップ604)。なお、デフォルト値の表示は必須ではないが、デフォルト値を表示することによって、ユーザは待機時間の目安の値を知ることができ、妥当な待機時間を設定しやすくなる。待機時間の設定画面は、分析条件の設定画面の一部であってもよい。すなわち、分析条件のパラメータの1つとして待機時間を設定するようになっていてもよい。
【0028】
待機時間記憶部40に記憶された待機時間は、切替部14によるガス供給源の切替えが行われた場合に適用される。情報表示部52は、切替部14によるガス供給源の切替えが行われたときに、キャリアガスの流通経路内のガスの置換中であることを示す置換中表示を表示装置24において行なうように構成されている。情報表示部52は、置換中表示において、ガス供給源の切替え前のキャリアガスのガス種とガス供給源の切替え後のキャリアガスのガス種を視覚的に認識しやすい態様で表示する。さらに、情報表示部52は、キャリアガスの流通経路内のガスの置換が完了するまでの待機時間の残り時間を置換中表示の一部として表示する。待機時間の残り時間は、残り時間算出部42によって算出される。残り時間算出部42は、ガス供給源の切替えの直後からの経過時間を計測し、待機時間記憶部40に記憶されている待機時間からその経過時間を差し引くことによって残り時間を算出する。
【0029】
ガス供給源の切替えがなされたときの動作の流れについて
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0030】
切替部14によってガス供給源の切替えが行われると、情報表示部52が表示装置24に置換中表示を行なう(ステップ601)。残り時間算出部42は、ガス供給源の切替えが行われてからの経過時間の計測を開始し(ステップ602)、その計測時間を待機時間記憶部40に記憶されている待機時間から差し引くことによって、待機時間の残り時間を算出する(ステップ603)。情報表示部52は、残り時間算出部42によって算出された残り時間を置換中表示の一部として表示する(ステップ604)。待機中表示は、残り時間算出部42によって算出される残り時間が0になるまで継続して表示される(ステップ605)。残り時間算出部42によって算出される残り時間が0になると(ステップ605、Yes)、情報表示部52が置換中表示を終了し(ステップ606)、スタンバイ状態となる。
【0031】
なお、
図7を用いた説明では、切替部14によるガス供給源の切替えが行われると、必ず待機時間が適用されて置換中表示が行われるようになっているが、本発明はこれに限定されるものではない。切替部14によるガス供給源の切替えが行われたときに、ガス種記憶部36に記憶されている情報に基づいてキャリアガスのガス種が変更されたか否かが制御装置18又は演算処理装置20において判定され、キャリアガスのガス種が変更されたと判定された場合にのみ情報表示部52が置換中表示を表示装置24において行なうように構成されていてもよい。
【0032】
以上において説明した実施例は、本発明に係るガスクロマトグラフの実施形態の一例を示したに過ぎない、本発明に係るガスクロマトグラフの実施形態は以下のとおりである。
【0033】
本発明に係るガスクロマトグラフの実施形態では、
注入された試料から試料ガスを生成する試料ガス生成部と、
前記試料ガス生成部の出口に流体接続され、前記試料ガス生成部で生成された試料ガス中の成分を分離するための分離カラムと、
前記分離カラムの出口に流体接続され、前記分離カラムにおいて分離された成分を検出するための検出器と、
前記試料ガス生成部で生成された試料ガスを前記分離カラムへ搬送するためのキャリアガスとなるガスを供給するための複数のガス供給源と、
前記複数のガス供給源が流体接続され、前記複数のガス供給源のうちの1つを前記試料ガス生成部へ切り替えて流体接続するように構成された切替部と、
前記切替部に接続された前記複数のガス供給源のそれぞれから供給されるガスの種類を、ユーザによって入力された情報に基づいて設定するように構成されたガス種設定部と、
前記ガス種設定部により設定されたガスの種類を記憶するガス種記憶部と、
前記切替部の状態を認識し、前記切替部の状態及び前記ガス種記憶部に記憶されている情報に基づいて前記試料ガス生成部に供給されている前記キャリアガスのガス種を特定するように構成されたガス種特定部と、を備えている。
【0034】
上記実施形態の具体的態様[1]として、ユーザに対する情報表示を行なうための表示装置と、情報入力を行なうための入力装置と、ユーザによる前記表示装置及び前記入力装置を用いた情報入力に基づいて、試料の分析を行なうための分析条件として前記キャリアガスのガス種を設定するように構成された条件設定部と、前記条件設定部により設定された分析条件を記憶する条件記憶部と、前記ガス種記憶部に記憶された情報を用いて、前記条件記憶部に記憶された前記分析条件に従って前記切替部の動作を制御するように構成された制御部と、を備えているものが挙げられる。このような態様により、分析に用いるキャリアガスのガス種をユーザが任意に設定することができ、設定されたガス種のキャリアガスが分析において自動的に使用されるようになる。
【0035】
上記具体的態様[1]の第1の例では、前記分析条件の設定とは別に、前記試料ガス生成部へ流体接続すべき前記ガス供給源をユーザによって入力される指示に基づいて選択するように構成されたガス選択部を備え、前記制御部は前記ガス切替部を制御して、前記ガス選択部により選択された前記ガス供給源を前記試料ガス生成部へ流体接続するように構成されている。このような構成によれば、任意のタイミングで所望のガス供給源をユーザが選択するだけで、前記試料ガス生成部へ流体接続されるガス供給源が切り替えられるので、ガス供給源の切替え作業が容易になる。
【0036】
また、上記具体的態様[1]の第2の例では、前記ガス生成部に流体接続される前記ガス供給源が切り替えられてから前記キャリアガスの流通経路内のガスの置換が完了するまでの所要時間として予め設定された待機時間を記憶する待機時間記憶部と、前記ガス生成部に流体接続される前記ガス供給源の切替えが行われた場合であって、少なくとも分析準備のための前記キャリアガスのガス種の変更が行われた場合に、前記キャリアガスの流通経路内のガスの置換が行われていることを示す置換中表示を前記待機時間中に前記表示装置で行なうように構成された情報表示部と、を備えている。このような構成により、ユーザは、キャリアガスの流通経路内のガスの置換が行われている最中であることを容易に認識でき、分析を開始するタイミングの把握が容易になる。この第2の例は、上記第1の例と組み合わせることができる。
【0037】
上記第2の例のさらなる具体例では、ユーザに前記待機時間を設定するための数値を入力させ、ユーザによって入力された数値に基づいて前記待機時間を設定するように構成された待機時間設定部を備え、前記待機時間記憶部は、前記待機時間設定部により設定された前記待機時間を記憶するように構成されている。これにより、ユーザは前記待機時間として任意の値を設定できるようになる。
【0038】
上記具体例では、さらに、前記待機時間記憶部は前記待機時間のデフォルト値を予め記憶しており、前記待機時間設定部は、ユーザに前記待機時間を設定するための数値を入力させる際に、前記表示装置に前記デフォルト値を表示するように構成されていてもよい。このような構成にすれば、ユーザが前記待機時間を設定する際にデフォルト値を参照することができ、妥当な前記待機時間を設定しやすくなる。
【0039】
また、上記具体的態様[1]の第2の例において、前記情報表示部は、前記置換中表示の一部として、前記ガス生成部に流体接続される前記ガス供給源の切替え前のガス種と前記切替え後のガス種を表示するように構成されていてもよい。このような構成により、ユーザは、キャリアガスのガス種がどのように変更されるのかを容易に認識でき、誤ったガスで分析が行われることを防止できる。
【0040】
また、上記具体的態様[1]の第2の例において、前記ガス生成部に流体接続される前記ガス供給源の切替えが行われてからの経過時間を計測し、前記待機時間から前記経過時間を差し引くことにより前記待機時間の残り時間を算出する残り時間算出部を備え、前記情報表示部は、前記置換中表示の一部として、前記残り時間算出部により算出される前記残り時間を前記表示装置に表示するように構成されていてもよい。このような構成により、ユーザは、前記キャリアガスの流通経路内のガスの置換が完了するまでに要する時間を把握しやすくなる。
【符号の説明】
【0041】
2 試料ガス生成部
4 オートサンプラ
6 分離カラム
8 検出器
10 カラムオーブン
12A;12B ガス供給源
14 切替部
16 調節器
18 制御装置
20 演算処理装置
22 入力装置
24 表示装置
26 ヒータ
28 温度センサ
30 制御部
32 ガス種特定部
36 ガス種記憶部
38 条件記憶部
40 待機時間記憶部
42 残り時間算出部
44 ガス種設定部
46 条件設定部
48 ガス選択部
50 待機時間設定部
52 情報表示部