(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】搬送システム及び搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20231108BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20231108BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2020034047
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】大城 篤志
(72)【発明者】
【氏名】馬目 知徳
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196600(JP,A)
【文献】特開2019-197021(JP,A)
【文献】特開2014-122075(JP,A)
【文献】特開2016-124706(JP,A)
【文献】特開平10-147411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を載置する載置箇所が複数設けられた設備が、複数設置されたエリア内において、前記複数の設備に跨る前記載置箇所間で、前記搬送対象物を搬送ロボットによって搬送する搬送システムであって、
前記搬送ロボットに対する搬送指示を発行する指示発行部、及び、前記載置箇所の在荷情報を保有するデータベースを有した制御装置と、
搬送ロボットと、を備え、
前記搬送指示において使用される、搬送先または搬送元を指定するアドレスは、前記載置箇所を示すノードと、前記載置箇所が設けられた設備を示すノードと、を含むツリー構造で表されており、
前記搬送ロボットは、前記搬送指示で指定された前記搬送先のアドレスが前記設備を示す際に、前記在荷情報に基づいて、当該設備に属する前記載置箇所のうち、前記搬送対象物が載置されていない前記載置箇所に、予め定められた載置優先順位に従って前記搬送対象物を順次載置する、搬送システム。
【請求項2】
前記搬送ロボットは、前記搬送指示で指定された前記搬送元のアドレスが前記設備を示す際に、前記在荷情報に基づいて、当該設備に属する前記載置箇所のうち、前記搬送対象物が載置されている前記載置箇所から、予め定められた載置優先順位に従って前記搬送対象物を取り出す、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記搬送ロボットには、前記搬送対象物を把持する多関節のロボットアームが設けられている、請求項1または2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記搬送ロボットは、前記設備の複数の前記載置箇所それぞれへの搬送対象物の載置または取り出しを実行するための複数のロボットアーム制御プログラムと、前記設備の複数の前記載置箇所についての前記載置優先順位の情報と、を保持している、請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項5】
搬送対象物を載置する載置箇所が複数設けられた設備が、複数設置されたエリア内において、制御装置からの搬送指示に従って、前記複数の設備に跨る前記載置箇所間で、前記搬送対象物を搬送する搬送ロボットであって、
前記搬送対象物を把持する多関節のロボットアーム、
前記ロボットアームの動作を制御するアーム制御部、
前記制御装置からの搬送指示を受け付ける指示受付部、
前記設備の複数の前記載置箇所それぞれへの搬送対象物の載置または取り出しを実行するための複数のロボットアーム制御プログラムと、前記設備の複数の前記載置箇所について
の載置優先順位の情報と、を保持する記録部、及び、
前記搬送指示を参照して、複数の前記ロボットアーム制御プログラムからひとつを選択する選択部を備え、
前記搬送指示において使用される、搬送先または搬送元を指定するアドレスは、前記載置箇所を示すノードと、前記載置箇所が設けられた設備を示すノードと、を含むツリー構造で表されており、
前記搬送指示で指定された前記搬送先または前記搬送元のアドレスが前記設備を示す際に、
前記選択部が、当該設備に属する前記載置箇所それぞれの在荷情報と、当該設備に属する前記載置箇所それぞれの
前記載置優先順位の情報に基づいて、特定の前記ロボットアーム制御プログラムを順次選択し、
前記アーム制御部が、順次選択された前記ロボットアーム制御プログラムに従って前記ロボットアームを制御する、搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送ロボットを備えた搬送システム、及び搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等において利用される、ロボットアーム(マニピュレータ)を備えた自走式の搬送ロボットが提案されている(特許文献1)。このような搬送ロボットは、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)とも呼ばれる走行装置上に、多関節のロボットアームが搭載される構成を有している。このような搬送ロボットは、ロボットアームによる搬送物の取り出し動作(ピック動作)や載置動作(プレース動作)と、走行ロボットによる移動とを自動で行うことにより、搬送対象物の無人搬送を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送ロボットに所要の取り出し動作や載置動作を実行させて、目的とする搬送を実現するには、通常、搬送ロボットを管理する制御装置側から、ロボットアームの全ての動作について指示を行う必要があった。しかし、このような細かい動作に亘る指示を行うことは煩雑であり、制御装置のリソースを消費する。
【0005】
更に、そのような細部に亘る指示の内容は、工場や倉庫の管理者や作業者にとって難解であり、搬送状況の監視時や、作業確認または調査等のための指示のログ参照時に、内容を読み解くことが難しく、システムの管理上問題があった。本発明は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送ロボットによる搬送を実行させるための指示が、人にとってより理解しやすい態様である、搬送システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の一側面に係る搬送システムは、搬送対象物を載置する載置箇所が複数設けられた設備が、複数設置されたエリア内において、前記複数の設備に跨る前記載置箇所間で、前記搬送対象物を搬送ロボットによって搬送する搬送システムであって、前記搬送ロボットに対する搬送指示を発行する指示発行部、及び、前記載置箇所の在荷情報を保有するデータベースを有した制御装置と、搬送ロボットと、を備え、前記搬送指示において使用される、搬送先または搬送元を指定するアドレスは、前記載置箇所を示すノードと、前記載置箇所が設けられた設備を示すノードと、を含むツリー構造で表されており、前記搬送ロボットは、前記搬送指示で指定された前記搬送先のアドレスが前記設備を示す際に、前記在荷情報に基づいて、当該設備に属する前記載置箇所のうち、前記搬送対象物が載置されていない前記載置箇所に、予め定められた載置優先順位に従って前記搬送対象物を順次載置する構成を備える。
【0008】
上記構成によれば、搬送ロボットによる搬送を実行させるための指示が、人にとってより理解しやすい態様である、搬送システムを実現できる。
【0009】
上記一側面に係る搬送システムにおいて、前記搬送ロボットは、前記搬送指示で指定された前記搬送元のアドレスが前記設備を示す際に、前記在荷情報に基づいて、当該設備に属する前記載置箇所のうち、前記搬送対象物が載置されている前記載置箇所から、予め定められた載置優先順位に従って前記搬送対象物を取り出す構成を備えてもよい。上記構成によれば、搬送ロボットによる搬送を実行させるための指示が、人にとって更に理解しやすい態様である、搬送システムを実現できる。
【0010】
上記一側面に係る搬送システムにおいて、前記搬送ロボットには、前記搬送対象物を把持する多関節のロボットアームが設けられている構成を備えてもよい。上記構成によれば、多種多様な搬送対象物に柔軟に対応し得る、搬送システムを実現できる。
【0011】
上記一側面に係る搬送システムにおいて、前記搬送ロボットは、前記設備の複数の前記載置箇所それぞれへの搬送対象物の載置または取り出しを実行するための複数のロボットアーム制御プログラムと、前記設備の複数の前記載置箇所についての前記載置優先順位の情報と、を保持している構成を備えてもよい。上記構成によれば、制御装置のリソースの消費を削減できる、分散型処理が実行できる搬送システムを実現できる。
【0012】
本発明の一側面に係る搬送ロボットは、搬送対象物を載置する載置箇所が複数設けられた設備が、複数設置されたエリア内において、制御装置からの搬送指示に従って、前記複数の設備に跨る前記載置箇所間で、前記搬送対象物を搬送する搬送ロボットであって、前記搬送対象物を把持する多関節のロボットアーム、前記ロボットアームの動作を制御するアーム制御部、前記制御装置からの搬送指示を受け付ける指示受付部、前記設備の複数の前記載置箇所それぞれへの搬送対象物の載置または取り出しを実行するための複数のロボットアーム制御プログラムと、前記設備の複数の前記載置箇所についての前記載置優先順位の情報と、を保持する記録部、及び、前記搬送指示を参照して、複数の前記ロボットアーム制御プログラムからひとつを選択する選択部を備え、前記搬送指示において使用される、搬送先または搬送元を指定するアドレスは、前記載置箇所を示すノードと、前記載置箇所が設けられた設備を示すノードと、を含むツリー構造で表されており、前記搬送指示で指定された前記搬送先または前記搬送元のアドレスが前記設備を示す際に、前記選択部が、当該設備に属する前記載置箇所それぞれの在荷情報と、当該設備に属する前記載置箇所それぞれの載置優先順位の情報に基づいて、特定の前記ロボットアーム制御プログラムを順次選択し、前記アーム制御部が、順次選択された前記ロボットアーム制御プログラムに従って前記ロボットアームを制御する構成を備える。
【0013】
上記構成によれば、搬送ロボットによる搬送を実行させるための指示が、人にとってより理解しやすい態様である、搬送システムを実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面に係る搬送システムまたは搬送ロボットによれば、搬送ロボットによる搬送を実行させるための指示が、人にとってより理解しやすい態様となる、搬送システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る搬送システムが適用される工場の例を模式的に示す、フロアマップである。
【
図2】本発明の実施形態に係る搬送システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る搬送システムにおける、搬送対象物の搬送先または搬送元を表す、アドレスの構成方法を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る搬送システムにおいて、搬送ロボット20Aが搬送対象物の載置を実行する状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)が、図面に基づいて説明される。
【0017】
§1 適用例
図1を参照しつつ、本発明が適用される場面の一例が説明される。
図1は、本適用例に係る搬送システムが適用され得る工場や倉庫等のエリアの一例である、工場100のフロアマップを模式的に示した図である。
【0018】
工場100内には、製品、半製品、部品、工具、治具、梱包材やそれらを収納するカセット等の、搬送対象物を搬送する搬送ロボット20が備えられている。搬送ロボット20は、搬送対象物を把持する、ロボットアーム(マニピュレータ)が設けられた自走式の搬送ロボットである。搬送ロボット20には走行のための走行機構も設けられている。
【0019】
工場100内には搬送対象物を載置し得る棚30が設置されている。また、工場100内には、搬送対象物を所定の受け入れ用のポートに載置すると、組み立て、加工、組み着け、検査等の所要の処理を施して、所定の受け出し用のポートに載置する、生産設備も設置されている。なお生産設備によっては、受け入れ用のポートと受け出し用のポートとが、兼用されていてもよい。
【0020】
棚30及び生産設備40のうち、少なくとも複数の設備には、搬送ロボット20が搬送対象物を載置する載置箇所が複数設けられている。搬送ロボット20は、これらの設備間に跨る載置箇所間で、搬送対象物を搬送し得る。また、本適用例に係る搬送システムは、
図1のフロアマップには不図示の制御装置を備えている。上記制御装置は、搬送ロボット20に対する搬送指示を発行する指示発行部を有している。また、上記制御装置は各設備における載置箇所について、搬送対象物の在荷の状態を表す在荷情報を保有するデータベースを有している。
【0021】
本適用例に係る搬送システムでは、搬送指示において使用される、搬送先または搬送元を指定するアドレスは、載置箇所を示すノードと、載置箇所が設けられた設備を示すノードと、を含むツリー構造で表される。そうして、搬送指示で指定された搬送先のアドレスが、上記設備を示す際には、搬送ロボット20が次のように動作する。搬送ロボット20は、データベースの保有する情報に基づいて、当該設備に属する載置箇所のうち、予め定められた載置優先順位に従った、搬送対象物が載置されていない載置箇所に、前記搬送対象物を載置する。
【0022】
本適用例に係る搬送システムでは、搬送ロボットによる搬送を実行させるための指示において、搬送先の設備が複数の載置箇所を備えている際に、そのうちのどの載置箇所に搬送物を載置するのかを、制御装置がいちいち指定して行う必要が必ずしもない。よって制御装置のリソースの消費が抑制される。あるいは、搬送ロボットによる搬送を実行させるための指示が、人にとって理解しやすい態様である搬送システムを実現できる。そのため、管理者や作業者による搬送システムの監視、メンテナンス、改良等の管理業務が、より容易に行うことができるようになる。
【0023】
§2 構成例
<搬送システムの構成>
以下に、搬送システムのより具体的な構成例と動作が説明される。
図2は、本構成例に係る搬送システム1の構成を示すブロック図である。搬送システム1は、制御装置10と搬送ロボット20とを備える。
図2において、搬送ロボット20は1台分が表されているが、
図1に示されるように制御装置10が取り扱う搬送ロボット20は、通常複数台である。
【0024】
制御装置10は、搬送システムサーバ(AMHSサーバ:Automated Material Handling System Server)等の名称で呼ばれることもある、搬送についての管理を担う情報処理システムである。制御装置10は、上位情報処理システム等からの指令に基づいて、搬送システム1中の搬送ロボット20に、より具体的な搬送指示を送信する。制御装置10は、このような処理を実行し得る情報処理システムであればよく、物理的に1筐体に納められた装置で有る必要は無い。
【0025】
搬送システム1が適用される場面が生産工場である場合、生産工場における製品の生産を管理する上位情報処理システムは、製造実行システムサーバ(MESサーバ:Manufacturing Execution System Server)と呼称されることがある。搬送システム1が適用される場面が物流倉庫である場合には、物流倉庫における保管品の入庫・出庫を管理する上位情報処理システムは、倉庫管理システムサーバ(WMSサーバ:Warehouse Management System Server)と呼称されることがある。なお、制御装置10が受け付ける搬送に関する指令は、上位情報処理システムに限らず、工場や倉庫等の管理者や作業者によって与えられたものであってもよい。
【0026】
<制御装置の構成>
図2に示されるように、制御装置10は、指令受付部11、指示発行部12、管理部13及びデータベース14を有している。指令受付部11は、搬送対象物の搬送についての指令を、上位情報処理システム等から受け付ける機能ブロックである。指示発行部12は、管理する搬送ロボット20の状態を考慮して、それぞれの搬送ロボット20に対する搬送対象物の搬送についての搬送指示を作成し、それぞれの搬送ロボット20に送出する機能ブロックである。
【0027】
管理部13は、管理する搬送ロボット20の状態を監視し、またデータベース14に記録する機能ブロックである。データベース14は、搬送ロボット20、棚30、生産設備40の機能及び状態、搬送対象物に関する情報を保持する機能ブロックである。そのような情報のひとつとして、データベース14は棚30や生産設備40の載置箇所への在荷の状態を示す在荷情報を保有する。
【0028】
<搬送ロボットの構成>
図2に示されるように、搬送ロボット20は、指示受付部21、状態報知部22、在荷情報取得部23、選択部24、記録部25、アーム制御部26、ロボットアーム27、走行制御部28、及び、走行機構部29を有している。指令受付部11は、制御装置10からの、搬送ロボット20に対する搬送指示を受け付ける機能ブロックである。
【0029】
状態報知部22は、搬送ロボット20の状態、例えば、現在位置や、搬送対象物の保持の状態、動作の状態、バッテリー残量等を、制御装置10に対して通知する機能ブロックである。在荷情報取得部23は、制御装置10のデータベース14を参照して、上記在荷情報を取得する機能ブロックである。
【0030】
選択部24は、ロボットアーム27を動作させるためのロボットアーム制御プログラムを選択する機能ブロックである。記録部25は、棚30や生産設備40の複数の載置箇所それぞれへの搬送対象物の載置または取り出しを実行するための複数のロボットアーム制御プログラムを保持する。また、記録部25は、棚30や生産設備40における複数の前記載置箇所についての載置優先順位の情報を保持する。
【0031】
アーム制御部26は、ロボットアーム制御プログラムを実行することで、ロボットアーム27を制御し、所要の動作を行わせる、機能ブロックである。ロボットアーム27は、搬送対象物を把持し、載置箇所への載置(プレース動作)や、載置からの取り出し(ピック動作)を実行できる多関節のマニピュレータである。また、搬送ロボット20には、搬送対象物を載置する複数のステージ(
図4に図示)が設けられている。ロボットアーム27は、ステージへの搬送対象物の載置、及びステージからの搬送対象物の取り出しを行うことが可能である。
【0032】
走行制御部28は、走行機構部29を制御し、搬送ロボット20を所望の位置に移動させる、機能ブロックである。走行機構部29は、搬送ロボット20が走行するための機構である。搬送ロボット20は、上記ステージに搬送対象物を載置した状態で、走行することで、搬送対象物を工場100のフロア内で移動させることが可能である。
【0033】
<アドレスの指定方法>
図3は、搬送指示において、搬送対象物の搬送先または搬送元を表す、アドレスの構成方法を示す説明図である。図示されるように、これらのアドレス群の構造は、搬送システム1が搬送指示の対象とする全ての指定先を含む集合をルートとする、ツリー構造を構成する。
図3において、ルートには「対象」と表示されている。
【0034】
ルートの次の階層は、工場や倉庫等の一定の領域を示す第1階層である。ここでは例示として、第1階層が「Facility」と名付けられている。
図3の例では、第1階層(「Facility」レベル)のノードとして、「FAB1」、「FAB2」、「FAB3」と名付けられたノードが示されている。図示されるように、第1階層の各ノードには、識別番号(Facility ID)が付されていてもよい。
【0035】
第1階層の次の階層は、棚30、生産設備40等の設備、あるいは搬送ロボット20を示す、第2階層である。ここでは例示として、第2階層が「Equip」と名付けられている。
図3の例では、第2階層(「Equip」レベル)のノードとして、「FAB1」に属する「Shelf1」、「Etcher1」、「MobileRobot1」と名付けられたノードが示されている。
【0036】
図示されるように、第2階層の各ノードには、識別番号(Equip ID)が付されていてもよい。
図1の工場100のフロアマップと対比すると、工場100が例えば、ノード「FAB1」に対応し、工場100内の棚30、生産設備40及び搬送ロボット20が、第1階層のノード「FAB1」に属する第2階層の各ノードに対応する。
【0037】
第2階層の次の階層は、棚30、生産設備40等の設備における載置箇所や、搬送ロボット20におけるステージを示す、第3階層である。ここでは例示として、第3階層が「UMLp」(Unique Motion Line Priority)と名付けられている。「Shelf1」は、棚30のうちの特定の棚30Aを表すノードの例である。「Shelf1」に属する第3階層(「UMLp」レベル)のノードとして、「Top1」、「Top2」、「Btm1」、「Btm2」と名付けられたノードが示されている。
【0038】
図4は、ノード「Shelf1」が示す特定の棚30Aにおいて、ノード「MobileRobot1」が示す特定の搬送ロボット20Aが搬送対象物90の載置を実行する状況を示す図である。
図4において、棚30Aには、上側の棚板と下側の棚板が設けられている。上側の棚板は順に、ノード「Top1」が示す載置箇所301、ノード「Top2」が示す載置箇所302を有している。下側の棚板は順に、ノード「Btm1」が示す載置箇所303、ノード「Btm2」が示す載置箇所304を有している。
【0039】
棚30Aの各載置場所には、載置優先順位が定められている。ここでは、載置箇所301、載置箇所302、載置箇所303、載置箇所304の順であり、
図3では、「UMLp No」(Unique Motion Line Priority Number)として示されている。載置優先順位(「UMLp No」)は、棚30A内における載置箇所の識別番号としての意味合いも有しており、特定の設備の中で、載置優先順位は重複しない。
【0040】
図3のノード「Etcher1」は、生産設備40のうちの特定の生産設備を示すノードである。ノード「Etcher1」に属する第3階層の各ノードは、当該生産設備の有する載置箇所(受け入れ/受け出しポート)を示し、ノード「Shelf1」の場合と同様にして規定されている。
【0041】
図3には、特定の搬送ロボット20Aを示すノード「MobileRobot1」に属する第3階層(「UMLp」レベル)のノードとして、「LWorkStage」、「RWorkStage」と名付けられたノードが示されている。
図4において、搬送ロボット20Aは、搬送対象物を載置する2つのステージである、左ステージ201と、右ステージ202とが設けられており、それぞれノード「LWorkStage」、ノード「RWorkStage」に対応する。
【0042】
搬送ロボット20Aの各ステージには、載置優先順位が定められている。ここでは、左ステージ201と、右ステージ202の順であり、
図3では、「Shelf1」に属する第3階層のノードの場合と同様に、「UMLp No」として示されている。載置優先順位(「UMLp No」)は、搬送ロボット20A内における載置箇所の識別番号としての意味合いも有しており、棚30A(ノード「Shelf1」)の場合と同様である。
【0043】
搬送システム1での搬送指示において、棚30Aを示すアドレスは、「FAB1/Shelf1」の様にルート側からの各ノード名を連ねて記述される。また、棚30Aの載置箇所302を示すアドレスは、「FAB1/Shelf1/Top2」の様に記述される。このようなアドレスを用いることで、搬送指示において、搬送先や搬送元として、載置箇所を指示することも、設備を指示することも、統一的に記述できる。更に、管理者や作業者にとって、理解しやすい搬送指示となる。
【0044】
<搬送動作例1:エントラステッド>
搬送指示における各種のコマンドを以下に例示する。これら各コマンドの記述は例示であり、各動作の指示を別の名称のコマンドで記述しても、本質的に変わるものではない。棚30あるいは生産設備40の載置箇所から、搬送ロボット20が、搬送対象物を取り出すことを指示するコマンドを、「Boarding From」と記述する。そうして次に、搬送対象物を、搬送ロボット20のステージに載置することを指示するコマンドを、「Boarding To」と記述する。
【0045】
搬送ロボット20が、搬送ロボット20のステージに載置された搬送対象物を取り出すことを指示するコマンドを、「Alighting From」と記述する。そうして次に、搬送対象物を、棚30あるいは生産設備40の載置箇所に載置することを指示するコマンドを、「Alighting To」と記述する。
【0046】
特定の生産設備(ノード「Etcher1」)の複数の特定の載置箇所(ノード「LoadPort1」、ノード「LoadPort2」)から、特定の搬送ロボット20A(ノード「MobileRobot1」)によって、棚30A(ノード「Shelf1」)に搬送対象物を搬送する搬送指示は、例えば次のように記述できる:
Boarding From: Fab1/Etcher1/LoadPort1,
Fab1/Etcher1/LoadPort2
Boarding To: Fab1/MobileRobot1/
Alighting From: Fab1/MobileRobot1/
Alighting To: Fab1/Shelf1/
以上。
【0047】
搬送動作例1では、搬送元である特定の生産設備から搬送対象物90を取り出すに当たっては、個々の載置箇所(「Fab1/Etcher1/LoadPort1」、「Fab1/Etcher1/LoadPort2」)を指定しているが、搬送先の棚30Aについては、個々の載置箇所の指定はされず、棚30Aを示すアドレス「Fab1/Shelf1/」が指定されている。このように、搬送システム1では、棚30Aにおいて、どの設置箇所が空いているかを確認しながら、どの載置箇所に搬送対象物90を順番に載置していくかの細かい指示を出す必要は無い。
【0048】
このように、搬送元を指定する際に、載置箇所レベル(第3階層)で指定し、搬送先を指定する際に設備レベル(第2階層)で指定する搬送の指定方法は、エントラステッド(Entrusted)指定と称することとする。個々の載置箇所の指定が必要ないことは、搬送元から取り出した搬送対象物90を、搬送ロボット20Aのステージに載置するコマンド「Boarding To」、搬送対象物90を搬送ロボット20Aのステージから取り出すコマンド「Alighting From」においても同様である。これらの場合には、搬送ロボット20Aを示すアドレス「Fab1/MobileRobot1/」が指定され得る。
【0049】
搬送ロボット20Aが、搬送ロボット20Aのステージに載置された搬送対象物90を取り出し、棚30Aの所要の載置箇所に載置する際を例とし、搬送先を指定する際に設備レベル(第2階層)で指定する搬送の指定方法における動作を以下に詳細に説明する。
【0050】
コマンド「Alighting From: Fab1/MobileRobot1/」は、搬送ロボット20Aのステージに載置された搬送対象物90を取り出すことを指示するコマンドである。コマンド「Alighting To: Fab1/Shelf1/」は、次に搬送対象物90を、棚30Aの載置箇所に載置することを指示するコマンドである。搬送ロボット20Aが棚30Aに搬送対象物を搬送することを表しているため、走行制御部28が、走行機構部29を制御し、搬送ロボット20Aが、棚30Aの前に移動する。
【0051】
コマンド「Alighting From: Fab1/MobileRobot1/」において、ステージ(載置箇所)の指定が無く、第2階層の搬送ロボット20Aまでのレベルでアドレスが指定されているのみである。選択部24は、搬送ロボット20Aの載置箇所である、左ステージ201と、右ステージ202について、搬送対象物90が載置されているか否かを確認する。
【0052】
すると、左ステージ201(「UMLp No:1」)、右ステージ202(「UMLp No:2」)のいずれにも搬送対象物90が載置されているため、選択部24は、記録部25の載置優先順位情報に基づいて、載置優先順位が劣位の載置箇所である、右ステージ202を選択する。
【0053】
なお、搬送ロボット20Aの載置箇所に、搬送対象物90が載置されているか否かの情報は、在荷情報取得部23が、制御装置10のデータベース14に問い合わせることで、取得するようにしてもよい。あるいは、左ステージ201と、右ステージ202のそれぞれについて、搬送ロボット20Aが載置の有無を検知するセンサを有しており、それらにより取得するようにしてもよい。
【0054】
コマンド「Alighting To: Fab1/Shelf1/」において、載置箇所の指定が無く、第2階層の棚30Aにおけるレベルでアドレスが指定されているのみである。選択部24は、在荷情報取得部23を通じて、制御装置10のデータベース14から、棚30Aの載置箇所である、載置箇所301、載置箇所302、載置箇所303、載置箇所304について、搬送対象物90が載置されているか否かの情報を取得する。
【0055】
例えば、載置箇所301(「UMLp No:1」)、載置箇所302(「UMLp No:2」)には、搬送対象物90が載置されており、載置箇所303(「UMLp No:3」)、載置箇所304(「UMLp No:4」)には、搬送対象物90が載置されていないものとする。すると。選択部24は、記録部25の載置優先順位情報に基づいて、搬送対象物90が載置されていない載置箇所のうちから、載置優先順位が優位の載置箇所である、載置箇所303を選択する。
【0056】
次に、選択部24は、記録部25に記録されているロボットアーム制御プログラムのうちから、搬送ロボット20Aの右ステージ202から搬送対象物90を取り出し、棚30Aの載置箇所303に載置するロボットアーム制御プログラムを選択する。アーム制御部26が選択されたロボットアーム制御プログラムに従って、ロボットアームを動作させると、右ステージ202から載置箇所303への搬送対象物の移動が行われる。
【0057】
選択部24は、搬送ロボット20Aの載置箇所に搬送対象物90が載置されている限り、上述の動作を繰り返す。すると、次に左ステージ201から載置箇所304への搬送対象物90の移動が行われ、搬送対象物90の移動が完了する。
【0058】
なお、搬送ロボット20Aが、特定の生産設備に載置された搬送対象物90を取り出し、搬送ロボット20Aのステージに載置する際にも、搬送ロボット20Aのステージが指定されていないが、上記同様にして、搬送対象物90が載置されていないステージのうちから、載置優先順位に基づいて、順次搬送対象物90の移動が実行される。
【0059】
<搬送動作例2:ヒープ>
特定の生産設備(ノード「Etcher1」)から、特定の搬送ロボット20A(ノード「MobileRobot1」)によって、棚30Aに搬送対象物を搬送する搬送指示は、例えば次のように記述できる:
Boarding From: Fab1/Etcher1/
Boarding To: Fab1/MobileRobot1/
Alighting From: Fab1/MobileRobot1/
Alighting To: Fab1/Shelf1/
以上。
【0060】
搬送動作例2では、搬送元である特定の生産設備から搬送対象物90を取り出すに当たっては、個々の載置箇所(「Fab1/Etcher1/LoadPort1」、「Fab1/Etcher1/LoadPort2」等)は指定されず、特定の生産設備を示すアドレス「Fab1/Shelf1/」が指定されている。また搬送先については搬送動作例1と同様に、棚30Aを示すアドレス「Fab1/Shelf1/」が指定されている。このように、搬送システム1では、搬送元及び搬送先において、設置箇所への載置の有無を確認しながら、どの載置箇所に搬送対象物90を順に載置していくかの細かい指示を出す必要は無い。
【0061】
このように、搬送元及び搬送先を指定する際に、設備レベル(第2階層)で指定する搬送の指定方法は、ヒープ指定と称することとする。搬送ロボット20Aが、特定の生産設備に載置された搬送対象物90を取り出す際には、特定の生産設備に関する在荷情報と、載置優先順位情報に基づいて、上述の手法と同様にしてロボットアーム制御プログラムが順次選択されて、順次取り出しが行われる。
【0062】
搬送動作例1や搬送動作例2に示されるように、搬送システム1では搬送ロボット20への指示において、搬送元や搬送先を示すアドレスが、ツリー構造を構成するノードを用いて記述される。そのため、工場や倉庫等の管理者や作業者が指示の内容を理解しやすい。更に、搬送ロボット20に対して、搬送先や搬送元の設置箇所、あるいは搬送ロボット20のステージをいちいち指定しなくても、載置優先順位に従って搬送ロボット20が適切に搬送を実行する。
【0063】
よって、搬送状況の監視時や、作業確認または調査等のための搬送の指示のログ参照時に、工場や倉庫等の管理者や作業者が内容を読み解きやすくなり、搬送システム1の管理が非常に行いやすくなる。またこのような処理は、主に搬送ロボット20によって実現されている。そのため、搬送システムサーバ等の制御装置10に過度に負担が掛ることが無い、分散型処理が実現される。
【0064】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置10の機能ブロック(特に、指令受付部11、指示発行部12、管理部13)あるいは、搬送ロボット20の機能ブロック(特に、指示受付部21、状態報知部22、在荷情報取得部23、選択部24、アーム制御部26、走行制御部28)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0065】
後者の場合、制御装置10あるいは搬送ロボット20は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。
【0066】
上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを更に備えていてもよい。
【0067】
また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0068】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 搬送システム
10 制御装置
11 指令受付部
12 指示発行部
13 管理部
14 データベース
20、20A 搬送ロボット
21 指示受付部
22 状態報知部
23 在荷情報取得部
24 選択部
25 記録部
26 アーム制御部
27 ロボットアーム
28 走行制御部
29 走行機構部
201 左ステージ
202 右ステージ
100 工場
30、30A 棚
301、302、303、304 載置箇所
40 生産設備
90 搬送対象物