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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】レトルト食品用シーラントフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231108BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231108BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
B65D81/24 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020040241
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021138119
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 隆浩
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-154332(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018282(WO,A1)
【文献】特開平9-262948(JP,A)
【文献】特開2003-237002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
B65D 81/24 - 81/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1層、第2層および第3層をこの順に積層した積層体であって、第1層が下記成分(A)及び下記成分(B)を含むポリプロピレン系樹脂層Iからなり、第2層が下記成分(B)及び下記成分(C)を含むエチレン系樹脂層IIからなり、第3層が、下記成分(D)を含むポリプロピレン系樹脂層IIIからなることを特徴とする積層体からなるレトルト食品用シーラントフィルム。

成分(A):下記(A-i)~(A-ii)の特性を有するプロピレン系樹脂
(A-i)メルトフローレート(230℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、10g/10分以下
(A-ii)曲げ弾性率が1400MPa以上、2000MPa以下

成分(B):下記(B-i)~(B-ii)の特性を有するエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体
(B-i)メルトフローレート(190℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、5.0g/10分以下
(B-ii)密度が0.915g/cm以上、0.930g/cm以下

成分(C):高密度ポリエチレン

成分(D)プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体
【請求項2】
第1層が下記成分(A)85重量%以上、95重量%以下、及び下記成分(B)5重量%以上、15重量%以下を含有するプロピレン系樹脂層Iからなり、第2層が下記成分(B)51重量%以上、85重量%以下、及び下記成分(C)15重量%以上、49重量%以下を含有するエチレン系樹脂層IIからなり、第3層が下記成分(D)を含有するプロピレン系樹脂層IIIからなることを特徴とする請求項1に記載のレトルト食品用シーラントフィルム。

成分(A):下記(A-i)~(A-iii)の特性を有するプロピレン系樹脂
(A-i)メルトフローレート(230℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、10g/10分以下
(A-ii)曲げ弾性率が1400MPa以上、2000MPa以下
(A-iii)ブロックPPであること

成分(B):下記(B-i)~(B-ii)の特性を有するエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体
(B-i)メルトフローレート(190℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、5.0g/10分以下
(B-ii)密度が0.915g/cm以上、0.930g/cm以下

成分(C):下記(C-i)~(C-ii)の特性を有する高密度ポリエチレン
(C-i)メルトフローレート(190℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、10g/10分以下
(C-ii)密度が0.950g/cm以上、0.965g/cm以下

成分(D):下記(D-i)の特性を有するプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体
(D-i)メルトフローレート(230℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、10g/10分以下
【請求項3】
前記第1層について第2層側の面とは反対側の面に、成形時にコロナ処理を施した処理面があり、前記第3層について、第2層側の面とは反対側の面をヒートシール面とした、請求項1または2のいずれか1項に記載のレトルト食品用シーラントフィルム。
【請求項4】
請求項3に記載のレトルト食品用シーラントフィルムの前記処理面側にPET、Ny、OPP、ALから選ばれる基材層を積層したレトルト食品用シーラントフィルム。
【請求項5】
請求項4に記載のレトルト食品用シーラントフィルムを使用したパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温耐衝撃性と高温耐熱性のバランスに優れたレトルト食品用シーラントフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ライフスタイルの変化(一人世帯の増加、個食化)により、レトルト食品の需要が増えている。それに伴い、レトルト食品用包装材の需要も伸びている。特に、電子レンジ対応パウチが急伸している。また、常温保存のみならず、低温流通(冷凍~チルド)に適したレトルト食品用包装材も求められている。
このようなフィルムの構成として、以下のような例が挙げられる。
PET // Ny // PO、蒸着PET // Ny // PO(ここで、POとはPP(ポリプロピレン)またはPE(ポリエチレン)を意味し、PETはポリエチレンテレフタレート、Nyはナイロン、//とは接着剤を意味する。以下同様である。)
このうち、POフィルムには、ヒートシール性、低温耐衝撃性、透明性等が求められる。一般に、冷凍~チルド向けには、低温耐衝撃性に優れるポリエチレン樹脂を選択することが好ましい。
通常、ポリエチレン樹脂をレトルト高温殺菌に適用できるように耐熱性を向上させるためには、密度を高く設定する必要がある。しかしながら、密度の高いポリエチレン樹脂を用いて製造された一般的なポリエチレン単層フィルムでは、低温耐衝撃性が低下する。低温耐衝撃性の低下は、圧縮強度の低下、落下強度の低下につながり、低温運搬中の内容物の漏れなどのリスクを生じる。
【0003】
例えば、熱可塑性樹脂を主樹脂とする第一層を最表面に備え、前記第一層に続いて第二層及び第三層をこの順に備える包装材用フィルムであって、 前記第一層は、厚さが1μm以上、3μm以下であり、 前記第二層は、前記第一層の一方の面に形成され、樹脂密度が前記第一層及び第三層よりも低く、 前記第三層は、前記第二層の前記第一層に向かう面の裏面に形成されることを特徴とする包装材用フィルムが提案されている。(特許文献1)
しかしながら、上記の包装材用フィルムは、高温耐熱性が十分でないという大きな問題があった。当該包装材用フィルムを125℃の条件で加熱加圧殺菌処理を行うと、フィルムが融着してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-177565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低温耐衝撃性と高温耐熱性(ハイレトルト領域(120℃超~130℃未満)の加熱加圧殺菌処理対応)のバランスに優れたレトルト食品用シーラントフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のプロピレン系樹脂、特定のエチレン・α-オレフィン共重合体、特定の高密度ポリエチレン、特定のプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体を用いて、それらを積層させることにより、上記課題を解決できることを見出した。それらの知見に、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、少なくとも第1層、第2層および第3層をこの順に積層した積層体であって、第1層が下記成分(A)及び下記成分(B)を含むポリプロピレン系樹脂層Iからなり、第2層が下記成分(B)及び下記成分(C)を含むエチレン系樹脂層IIからなり、第3層が、下記成分(D)を含むポリプロピレン系樹脂層IIIからなることを特徴とする積層体からなるレトルト食品用シーラントフィルムである。

成分(A):下記(A-i)~(A-ii)の特性を有するプロピレン系樹脂
(A-i)メルトフローレート(230℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、10g/10分以下
(A-ii)曲げ弾性率が1400MPa以上、2000MPa以下

成分(B):下記(B-i)~(B-ii)の特性を有するエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体
(B-i)メルトフローレート(190℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、5.0g/10分以下
(B-ii)密度が0.915g/cm以上、0.930g/cm以下

成分(C):高密度ポリエチレン

成分(D)プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体

本発明の第2の発明によれば、第1層が下記成分(A)85重量%以上、95重量%以下、及び下記成分(B)5重量%以上、15重量%以下を含有するプロピレン系樹脂層Iからなり、第2層が下記成分(B)51重量%以上、85重量%以下、及び下記成分(C)15重量%以上、49重量%以下を含有するエチレン系樹脂層IIからなり、第3層が下記成分(D)を含有するプロピレン系樹脂層IIIからなることを特徴とする請求項1に記載のレトルト食品用シーラントフィルムである。

成分(A):下記(A-i)~(A-iii)の特性を有するプロピレン系樹脂
(A-i)メルトフローレート(230℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、10g/10分以下
(A-ii)曲げ弾性率が1400MPa以上、2000MPa以下
(A-iii)ブロックPPであること

成分(B):下記(B-i)~(B-ii)の特性を有するエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体
(B-i)メルトフローレート(190℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、5.0g/10分以下
(B-ii)密度が0.915g/cm以上、0.930g/cm以下

成分(C):下記(C-i)~(C-ii)の特性を有する高密度ポリエチレン
(C-i)メルトフローレート(190℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、10g/10分以下
(C-ii)密度が0.950g/cm以上、0.965g/cm以下

成分(D):下記(D-i)の特性を有するプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体
(D-i)メルトフローレート(230℃、21.18N荷重)が0.1g/10分以上、10g/10分以下

本発明の第3の発明によれば、前記第1層について第2層側の面とは反対側の面に、成形時にコロナ処理を施した処理面があり、前記第3層について、第2層側の面とは反対側の面をヒートシール面とした、請求項1または2のいずれか1項に記載のレトルト食品用シーラントフィルムである。

本発明の第4の発明によれば、第3の発明におけるレトルト食品用シーラントフィルムの前記処理面側にPET、Ny、OPP、ALから選ばれる基材層を積層したレトルト食品用シーラントフィルムである。

本発明の第5の発明によれば、第4の発明におけるレトルト食品用シーラントフィルムを使用したパウチである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、低温耐衝撃性と高温耐熱性(ハイレトルト領域(120℃程度~130℃程度)の加熱加圧殺菌処理対応)のバランスに優れたレトルト食品用シーラントフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、レトルト食品用シーラントフィルムについて、項目ごとに詳細に説明する。
【0009】
本発明の積層体は、少なくとも第1層、第2層および第3層をこの順に積層した積層体であって、第1層が、特定のプロピレン系樹脂、及び、エチレン・α-オレフィン共重合体を含み、第2層が、特定のエチレン・α‐オレフィン共重合体、及び特定の高密度ポリエチレンを含み、かつ、第3層が、特定のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含むことを特徴とするレトルト食品用シーラントフィルムである。
【0010】
1.第1層
本発明の積層体の第1層は、プロピレン系樹脂(成分(A))及びエチレン・α-オレフィン共重合体(成分(B))を含有すればよいが、好ましくは、プロピレン系樹脂(成分(A))85重量%以上、95重量%以下、及びエチレン・α‐オレフィン共重合体(成分(D))5重量%以上、15重量%以下、を含有するエチレン系樹脂層Iからなる。
【0011】
(1)成分(A)
本発明の積層体の第1層に用いるプロピレン系樹脂(成分(A))は、下記(A-i)~(A-iii)の特性を有する。

(A-i)メルトフローレート(MFR)
本発明の積層体の第1層に用いる成分(A)のMFR(230℃ 、21.18N荷重)は、0.1g/10分以上、10g/10分以下であり、好ましくは0.1g/10分以上、5g/10分以下であり、より好ましくは0.5g/10分以上~3.0g/10分以下である。成分(A)のMFRが0.1g/10分以上であると、樹脂圧力が低く成形性が良好であり、10g/10分以下であると、インフレーション成形時、バブルが安定になり成形性が良好になり、また、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムに皺が生じる等の耐熱性に劣る挙動を示す恐れもなく、好ましい。
ここで、成分(A)のプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K6921-2:1997附属書(230℃、21.18N荷重)に準拠して測定する。

(A-ii)曲げ弾性率
本発明の積層体の第1層に用いる成分(A)の曲げ弾性率は、1400MPa以上、2000MPa以下であり、好ましくは、1500MPa以上、1900MPa以下、より好ましくは、1600MPa以上、1800MPa以下である。成分(A)の曲げ弾性率が1400MPa以上であると、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムに皺が生じる等の耐熱性に劣る挙動を示す恐れもなく、好ましい。また、2000MPa以下であると、耐衝撃性に優れ、好ましい。
ここで、成分(A)のプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定する。


(A-iii)樹脂種
本発明の積層体の第1層に用いる成分(A)は、ブロックPPであることが好ましい。
ブロックPPとは、プロピレンとエチレン等をブロック的に共重合したタイプであり、インパクトコポリマーとも言われる。乳白色な外観で、このブロック部分がエラストマー的性質を有するため、剛性、耐熱性を保持したまま低温環境下においても耐衝撃性に優れる。
ブロックPPであれば、衝撃強度の低下、耐熱性の低下の恐れがなく好ましい。

(2)成分(B)
本発明の積層体の第1層に用いるエチレン・α-オレフィン共重合体(成分(B))は、エチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体である。該共重合体は、下記(B-i)~(B-vii)の特性を有するエチレン・α-オレフィン共重合体である。
以下、構成モノマー、重合法及びそれが有する特性について、順次説明する。
【0012】
(B-i)メルトフローレート(MFR)
本発明の積層体の第1層に用いる成分(B)のMFR(190℃ 、21.18N荷重)は、0.1g/10分以上、5.0g/10分以下であり、好ましくは0.1g/10分以上、4.5g/10分以下であり、より好ましくは0.5g/10分以上~3.0g/10分以下であり、さらに好ましくは1.0g/10分以上、2.5g/10分以下である。成分(A)のMFRが0.1g/10分以上であると、樹脂圧力が低く成形性が良好であり、5.0g/10分以下であると、インフレーション成形時、バブルが安定になり成形性が良好になり、また、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムに皺が生じる等の耐熱性に劣る挙動を示す恐れもなく、好ましい。
ここで、成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体のMFRは、JIS K6922-2:1997附属書(190℃ 、21.18N荷重)に準拠して測定する。
【0013】
(B-ii)密度
本発明の積層体の第1層に用いる成分(B)の密度は、0.915g/cm以上、0.930g/cm以下、好ましくは0.917g/cm以上、0.925g/cm以下、より好ましくは0.918g/cm以上、0.923g/cm以下、さらに好ましくは、0.919g/cm以上、0.922g/cm以下である。成分(B)の密度が0.915g/cm以上では、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムが溶融してしまう恐れがなく、0.930g/cm以下であると、低温耐衝撃強度が低下する恐れがなく、好ましい。
ここで、成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、JIS K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して23℃で測定する。
【0014】
成分(B)のエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体は、更に以下の(B-iii)~(B-Viii)の特性を有することが好ましい。
【0015】
(B-iii)モノマー構成
本発明の積層体の第1層に用いる成分(B)は、エチレンから誘導される構成単位を主成分としたエチレンとα-オレフィンのランダム共重合体である。
コモノマーとして用いられるα-オレフィンは、好ましくは炭素数3~12のα-オレフィンである。具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1 、4-メチル-ヘキセン-1 、4, 4-ジメチルペンテン-1等を挙げることができる。かかるエチレン・α-オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1 - ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-ペンテン-1共重合体が挙げられる。また、α-オレフィンは1種または2種以上の組み合わせでもよい。2種のα-オレフィンを組み合わせてターポリマーとする場合は、エチレン・プロピレン・ヘキセンターポリマー、エチレン・ブテン・ヘキセンターポリマー、エチレン・プロピレン・オクテンターポリマー、エチレン・ブテン・オクテンターポリマーが挙げられる。
【0016】
(B-iv)重合触媒及び重合法
本発明の積層体の第1層に用いる成分(B)は、チーグラー触媒、バナジウム触媒、メタロセン触媒、好ましくはメタロセン触媒を使用して製造することができる。製造法は、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法が挙げられる。

(B-v)α-オレフィンの含有量
本発明の積層体の第1層に用いる成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体中のα-オレフィンの含有量は3重量%以上、40重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以上、30重量%以下、さらに好ましくは8重量%以上、20重量%以下である。α-オレフィンの含有量が3重量%以上である場合、フィルムの衝撃強度、及び柔軟性が得られ、40重量%以下の場合は耐熱性が損なわれない。ここでα-オレフィンの含有量は、下記の条件の13C-NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子製 JEOL-GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
【0017】
なお、成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0018】
(B-vi)重量均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)
成分(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.0以上、4.0以下であることが好ましい。好ましくは、1.5以上、3.5以下、より好ましくは、2.0以上、3.0以下である。重量均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.0以上であると、成形時に樹脂圧が上がる恐れがなく、好ましい。また、重量均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.0以下であると、低温耐衝撃強度が低下する恐れがなく、好ましい。Mw/Mnを所定の範囲に調整する方法としては、適当なメタロセン触媒を選択する方法等が挙げられる。
なお、(Mw/Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行い、測定条件は次のとおりである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=-3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=-3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分。
【0019】
(B-vii)融解ピーク温度の最大値
本発明の積層体の第1層に用いる成分(B)は、DSC測定において、融解ピークの最大温度が115℃以上、130℃未満であることが好ましい。
融解ピーク温度の最大値が115℃以上であると、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後に、しわが発生する可能性が低い。また、融解ピーク温度の最大値が130℃未満であると、低温耐衝撃強度が低下する恐れがなく、好ましい。なお、本発明においては、JIS K7121に基づき、セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、30℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度を確認した。
【0020】
(B-viii)溶出ピーク温度
溶出ピーク温度の最大値は、TREFにより、求めた。
TREFによって得られる溶出曲線の測定:本発明におけるTREFによる溶出曲線の測定は、以下のようにして行った。測定装置としてクロス分別装置(三菱化学株式会社製、CFC・T150A)を使用し、附属の操作マニュアルの測定法に従って行った。このクロス分別装置は、試料を、溶解温度の差を利用して分別する温度上昇溶離分別(TREF)機構と、分別された区分を更に分子サイズで分別するサイズ排除クロマトグラフ(Size Exclusion Chromatography:SEC)とをオンラインで接続した装置である。
まず、測定すべきサンプル(エチレン・α-オレフィン共重合体)について、溶媒(o-ジクロロベンゼン)を用いて濃度が4mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入した。以下の測定は、設定条件に従って自動的に行われた。
サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmの装置附属のステンレス製カラム)に0.4ml注入された。該サンプルは、1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却され、上記不活性担体にコーティングされた。このとき、高結晶成分(結晶しやすいもの)から低結晶成分(結晶しにくいもの)の順で不活性担体表面にポリマー層が形成される。TREFカラムを0℃で更に30分間保持した後、0℃の温度で溶解している成分2mlを、1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工株式会社製、AD80M・S、3本)へ注入した。SECで分子サイズでの分別が行われている間に、TREFカラムでは次の溶出温度(5℃)に昇温され、その温度に約30分間保持された。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行われた。溶出温度としては以下の温度が用いられ、段階的に昇温された。
溶出温度(℃):0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140℃。
該SECカラムで分子サイズによって分別された溶液について、装置附属の赤外分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度を測定し(波長3.42μm、メチレンの伸縮振動で検出)、各溶出温度区分のクロマトグラムを得た。内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理した。各クロマトグラムの面積が積分され、積分溶出曲線が計算された。また、この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が計算された。計算結果の作図はプリンターに出力した。出力された微分溶出曲線の作図は、横軸に溶出温度を100℃当たり89.3mm、縦軸に微分量(溶出分率:全積分溶出量を1.0に規格し、1℃の変化量を微分量とした)0.1当たり76.5mmで行った。
次に、この微分溶出曲線から、最大のピークを溶出ピーク温度とした。
【0021】
溶出ピーク温度は、60℃以上、100℃以下であることが好ましい。より好ましくは65℃以上、95℃以下、さらに好ましくは、70℃以上、80℃以下である。
溶出ピーク温度が60℃以上であると、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後に、しわが発生する可能性が低い。また、溶出ピーク温度が100℃以下であると、低温耐衝撃強度が低下する恐れがなく、好ましい。

(3)他の添加成分
本発明のエチレン系樹脂層Iには、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリエチレン系樹脂材料に使用される酸化防止剤(中でも、フェノール系、及びリン系酸化防止剤が好ましい)、アンチブロッキング剤、中和剤、熱安定剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤等を挙げることができる。
また、柔軟性を付与するため、EBR、EPR等のエチレン・α-オレフィンエラストマー、SEBS 、HSBR等のスチレン系エラストマー等のゴム系化合物を配合することができる。
特に、後述する成分(C)を更に樹脂成分として添加することが好ましく挙げられる。成分(C)を添加する場合の割合としては、樹脂層Iを構成する樹脂成分の合計量100重量%に対して、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%の範囲が挙げられる。
【0022】
(4)成分(A)、成分(B)の配合割合
本発明のプロピレン系樹脂層I中には、成分(A)及び成分(B)が含まれればよい。好ましい成分(A)及び成分(B)の配合割合は、成分(A)85重量%以上、95重量%以下に対し、成分(B)5重量%以上、15重量%以下であり、好ましくは、成分(A)87重量%以上、92重量%以下に対し、成分(B)8重量%以上、13重量%以下である。(樹脂層Iを構成する樹脂成分の合計量を100重量%とする。)
成分(A)及び成分(B)が含まれると、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムに皺が生じる等耐熱性に劣る挙動を示す恐れがなく、好ましい。
【0023】
(5)プロピレン系樹脂層Iの調整方法
プロピレン系樹脂層Iに含有される成分(A)、及び成分(B)は、必要に応じて溶融混練により調製することができる。
より具体的には、成分(A)、及び成分(B)を、あらかじめドライブレンドし、そのブレンド物をそのまま成形機のホッパーに投入してもよい。また、そのブレンド物を押出機、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー等を用いて溶融、混練し、通常用いられている方法でペレット状とし、フィルムもしくはシートを製造することもできる。
【0024】
2.第2層
本発明の積層体の第2層は、エチレン・α-オレフィン共重合体(成分(B))、及び高密度ポリエチレン(成分(C))を含有すればよいが、好ましくは、エチレン・α-オレフィン共重合体(成分(B))51重量%以上、85重量%以下、及び高密度ポリエチレン(成分(C))15重量%以上、45重量%以下、より好ましくは、エチレン・α-オレフィン共重合体(成分(B))60重量%以上、80重量%以下、及び高密度ポリエチレン(成分(C))20重量%以上、40重量%以下を含有するエチレン系樹脂層IIからなる。

(2)成分(B)
本発明の積層体の第2層に用いるエチレン・α-オレフィン共重合体(成分(B))は、エチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体である。該共重合体は、下記(B-i)~(B-ii)の特性を有するエチレン・α-オレフィン共重合体である。
以下、構成モノマー、重合法及びそれが有する特性について、順次説明する。
【0025】
(B-i)メルトフローレート(MFR)
本発明の積層体の第2層に用いる成分(B)のMFR(190℃ 、21.18N荷重)は、0.1g/10分以上、5.0g/10分以下であり、好ましくは0.1g/10分以上、4.5g/10分以下であり、より好ましくは0.5g/10分以上~3.0g/10分以下であり、さらに好ましくは1.0g/10分以上、2.5g/10分以下である。成分(B)のMFRが0.1g/10分以上であると、樹脂圧力が低く成形性が良好であり、5.0g/10分以下であると、インフレーション成形時、バブルが安定になり成形性が良好になり、また、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムに皺が生じる等の耐熱性に劣る挙動を示す恐れもなく、好ましい。
ここで、成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体のMFRは、JIS K6922-2:1997附属書(190℃ 、21.18N荷重)に準拠して測定する。
【0026】
(B-ii)密度
本発明の積層体の第2層に用いる成分(B)の密度は、0.915g/cm以上、0.930g/cm以下、好ましくは0.917g/cm以上、0.925g/cm以下、より好ましくは0.918g/cm以上、0.923g/cm以下、さらに好ましくは、0.919g/cm以上、0.922g/cm以下である。成分(B)の密度が0.915g/cm以上では、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムが溶融してしまう恐れがなく、0.930g/cm以下であると、低温耐衝撃強度が低下する恐れがなく、好ましい。
ここで、成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、JIS K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して23℃で測定する。
【0027】
成分(B)のエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体は、更に以下の(B-iii)~(B-Viii)の特性を有することが好ましい。
【0028】
(B-iii)モノマー構成
本発明の積層体の第2層に用いる成分(B)は、エチレンから誘導される構成単位を主成分としたエチレンとα-オレフィンのランダム共重合体である。
コモノマーとして用いられるα-オレフィンは、好ましくは炭素数3~12のα-オレフィンである。具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1 、4-メチル-ヘキセン-1 、4, 4-ジメチルペンテン-1等を挙げることができる。かかるエチレン・α-オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1 - ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-ペンテン-1共重合体が挙げられる。また、α-オレフィンは1種または2種以上の組み合わせでもよい。2種のα-オレフィンを組み合わせてターポリマーとする場合は、エチレン・プロピレン・ヘキセンターポリマー、エチレン・ブテン・ヘキセンターポリマー、エチレン・プロピレン・オクテンターポリマー、エチレン・ブテン・オクテンターポリマーが挙げられる。
【0029】
(B-iv)重合触媒及び重合法
本発明の積層体の第2層に用いる成分(B)は、チーグラー触媒、バナジウム触媒、メタロセン触媒、好ましくはメタロセン触媒を使用して製造することができる。製造法は、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法が挙げられる。

(B-v)α-オレフィンの含有量
本発明の積層体の第2層に用いる成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体中のα-オレフィンの含有量は3重量%以上、40重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以上、30重量%以下、さらに好ましくは8重量%以上、20重量%以下である。α-オレフィンの含有量が3重量%以上である場合、フィルムの衝撃強度、及び柔軟性が得られ、40重量%以下の場合は耐熱性が損なわれない。ここでα-オレフィンの含有量は、下記の条件の13C-NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子製 JEOL-GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
【0030】
なお、成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0031】
(B-vi)重量均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)
成分(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.0以上、4.0以下であることが好ましい。好ましくは、1.5以上、3.5以下、より好ましくは、2.0以上、3.0以下である。重量均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.0以上であると、成形時に樹脂圧が上がる恐れがなく、好ましい。また、重量均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.0以下であると、低温耐衝撃強度が低下する恐れがなく、好ましい。Mw/Mnを所定の範囲に調整する方法としては、適当なメタロセン触媒を選択する方法等が挙げられる。
なお、(Mw/Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行い、測定条件は次のとおりである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=-3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=-3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分。
【0032】
(B-vii)融解ピーク温度の最大値
本発明の積層体の第2層に用いる成分(B)は、DSC測定において、融解ピークの最大温度が115℃以上、130℃未満であることが好ましい。
融解ピーク温度の最大値が115℃以上であると、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後に、しわが発生する可能性が低い。また、融解ピーク温度の最大値が130℃未満であると、低温耐衝撃強度が低下する恐れがなく、好ましい。なお、本発明においては、JIS K7121に基づき、セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、30℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度を確認した。
【0033】
(B-viii)溶出ピーク温度
溶出ピーク温度の最大値は、TREFにより、求めた。
TREFによって得られる溶出曲線の測定:本発明におけるTREFによる溶出曲線の測定は、以下のようにして行った。測定装置としてクロス分別装置(三菱化学株式会社製、CFC・T150A)を使用し、附属の操作マニュアルの測定法に従って行った。このクロス分別装置は、試料を、溶解温度の差を利用して分別する温度上昇溶離分別(TREF)機構と、分別された区分を更に分子サイズで分別するサイズ排除クロマトグラフ(Size Exclusion Chromatography:SEC)とをオンラインで接続した装置である。
まず、測定すべきサンプル(エチレン・α-オレフィン共重合体)について、溶媒(o-ジクロロベンゼン)を用いて濃度が4mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入した。以下の測定は、設定条件に従って自動的に行われた。
サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmの装置附属のステンレス製カラム)に0.4ml注入された。該サンプルは、1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却され、上記不活性担体にコーティングされた。このとき、高結晶成分(結晶しやすいもの)から低結晶成分(結晶しにくいもの)の順で不活性担体表面にポリマー層が形成される。TREFカラムを0℃で更に30分間保持した後、0℃の温度で溶解している成分2mlを、1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工株式会社製、AD80M・S、3本)へ注入した。SECで分子サイズでの分別が行われている間に、TREFカラムでは次の溶出温度(5℃)に昇温され、その温度に約30分間保持された。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行われた。溶出温度としては以下の温度が用いられ、段階的に昇温された。
溶出温度(℃):0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140℃。
該SECカラムで分子サイズによって分別された溶液について、装置附属の赤外分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度を測定し(波長3.42μm、メチレンの伸縮振動で検出)、各溶出温度区分のクロマトグラムを得た。内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理した。各クロマトグラムの面積が積分され、積分溶出曲線が計算された。また、この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が計算された。計算結果の作図はプリンターに出力した。出力された微分溶出曲線の作図は、横軸に溶出温度を100℃当たり89.3mm、縦軸に微分量(溶出分率:全積分溶出量を1.0に規格し、1℃の変化量を微分量とした)0.1当たり76.5mmで行った。
次に、この微分溶出曲線から、最大のピークを溶出ピーク温度とした。
【0034】
溶出ピーク温度は、60℃以上、100℃以下であることが好ましい。より好ましくは65℃以上、95℃以下、さらに好ましくは、70℃以上、80℃以下である。
溶出ピーク温度が60℃以上であると、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後に、しわが発生する可能性が低い。また、溶出ピーク温度が100℃以下であると、低温耐衝撃強度が低下する恐れがなく、好ましい。

(2)成分(C)
本発明の積層体の第2層に用いる高密度ポリエチレン(成分(C))は、下記(C-i)~(C-ii)の特性を有する。

(C-i)メルトフローレート(MFR)
本発明の積層体の第2層に用いる高密度ポリエチレンのMFR(190℃ 、21.18N荷重)は、0.1g/10分以上、10g/10分未満であり、好ましくは0.5g/10分以上、8.0g/10分以下であり、より好ましくは0.7g/10分以上、3.0g/10分以下である。高密度ポリエチレンのMFRが0.1g/10分未満では樹脂圧力が高く成形性が不良となり、10g/10分を超えると、インフレーション成形時、バブルが不安定になり成形性が不良になる恐れがあり、好ましく無い。
ここで、高密度ポリエチレンのMFRは、JIS K6922-2:1997附属書(190℃ 、21.18N荷重)に準拠して測定する。

(C-ii)密度
本発明の積層体の第2層に用いる高密度ポリエチレンの密度は、0.950g/cm以上、0.965g/cm以下、好ましくは0.953g/cm以上、0.960g/cm以下、さらに好ましくは0.955g/cm以上、0.960g/cm以下である。高密度ポリエチレンの密度が0.950g/cm未満では、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムが溶融してしまう恐れがあり、0.965g/cmを超えると、透明性が低下する恐れがあり、好ましく無い。
ここで、高密度ポリエチレンの密度は、JIS K6922-2:1997附属書に準拠して23℃で測定する。
【0035】
(3)他の添加成分
本発明のエチレン系樹脂層IIには、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリエチレン系樹脂材料に使用される酸化防止剤(中でも、フェノール系、及びリン系酸化防止剤が好ましい)、アンチブロッキング剤、中和剤、熱安定剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤等を挙げることができる。
また、柔軟性を付与するため、EBR、EPR等のエチレン・α-オレフィンエラストマー、SEBS 、HSBR等のスチレン系エラストマー等のゴム系化合物を配合することができる。
【0036】
(4)成分(B)、成分(C)の配合割合
本発明のエチレン系樹脂層II中には、成分(B)、及び成分(C)が含まれればよい。好ましい成分(B)、及び成分(C)の配合割合は、成分(B)51重量%以上、85重量%以下に対し、成分(C)15重量%以上、49重量%以下であり、好ましくは、成分(B)55重量%以上、80重量%以下に対し、成分(C)20重量%以上、45重量%以下である。(樹脂層IIを構成する樹脂成分の合計量を100重量%とする。)
成分(B)、及び成分(C)が含まれると、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムに皺が生じる等耐熱性に劣る挙動を示す恐れがなく、好ましい。
【0037】
(5)エチレン系樹脂層IIの調整方法
エチレン系樹脂層IIに含有される成分(B)、成分(C)は、必要に応じて溶融混練により調製することができる。
より具体的には、成分(B)、成分(C)を、あらかじめドライブレンドし、そのブレンド物をそのまま成形機のホッパーに投入してもよい。また、そのブレンド物を押出機、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー等を用いて溶融、混練し、通常用いられている方法でペレット状とし、フィルムもしくはシートを製造することもできる。
【0038】
3.第3層
本発明の積層体の第3層は、プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体を含有するプロピレン系樹脂層IIIからなる。
【0039】
(1)成分(D)
本発明の積層体の第3層に用いるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(成分(D))は、下記(D-i)、好ましくは更に(D-ii)~(D-iii)の特性を有するプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体である。
以下、構成モノマー、重合法及びそれが有する特性について、順次説明する。

(D-i)メルトフローレート(MFR)
本発明の積層体の第3層に用いる成分(D)のMFR(230℃ 、21.18N荷重)は、0.1g/10分以上、10g/10分以下であり、好ましくは0.1g/10分以上、5.0g/10分以下であり、より好ましくは1.0g/10分以上~4.0g/10分以下である。成分(A)のMFRが0.1g/10分以上であると、樹脂圧力が低く成形性が良好であり、10g/10分以下であると、インフレーション成形時、バブルが安定になり成形性が良好になり、また、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムに皺が生じる等の耐熱性に劣る挙動を示す恐れもなく、好ましい。ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、触媒量、分子量調節剤としての水素の供給量など適宜調節する方法をとることができる。
ここで、成分(D)のプロピレン・α-オレフィン共重合体のMFRは、JIS K6921-2:1997附属書(230℃、21.18N荷重)に準拠して測定する。

(D-ii)重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)
成分(D)に使用されるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.5~3.5、好ましくは1.8~3.3、より好ましくは2.0~3.0である。Mw/Mnが3.5を超えないと、透明性が低下するおそれがなく、1.5未満の場合には、押出負荷が上昇するおそれがなく、シャークスキンが発生しにくくなるなど、加工適性が良化する。
Mw/Mnを所定の範囲にする方法としては、適当なメタロセン触媒を選択する方法等が挙げられる。
なお、上記Mw/Mnの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行い、測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー社製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリプロピレンの粘度式を用いてポリプロピレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=-3.967であり、ポリプロピレンはα=0.707、logK=-3.616である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10ml
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
【0040】
(D-iii)融解ピーク温度(Tm)
成分(D)に使用されるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、示差走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が121~150℃、好ましくは125~150℃、より好ましくは128~145℃、さらに好ましくは130~145℃である。Tmが121℃以上の場合には、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後に、耐熱性や透明性が得られ、150℃以下の場合には、柔軟性に欠けるおそれがないため、好ましい。
Tmは、α-オレフィン含量やその種類およびプロピレン構成単位のレジオ規則性などの影響を受けうる。α-オレフィンがエチレンの場合には、その含有量は0.5~6重量%程度であり、α-オレフィンが1-ブテンの場合には、その含有量が0.5~15重量%程度である。
Tmは、共重合させるα-オレフィンの種類と量を制御することにより適宜調整することができる。
なお、Tmの測定は、セイコー社製DSCを用い、サンプル量は5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させた後に1分間保持し、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときのピーク温度で評価する。また、融解ピーク温度(Tm)は融点ということもあり、同義である。
【0041】
(2)成分(D)の配合割合
本発明のプロピレン系樹脂層IIIには、プロピレン・α‐オレフィン共重合体(成分(D))を60重量%以上含有することが好ましく、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。(樹脂層IIIを構成する樹脂成分の合計量を100重量%とする。)
成分(D)がこの配合割合で含まれると、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理後にシーラントフィルムに皺が生じる等耐熱性に劣る挙動を示す恐れがなく、好ましい。
【0042】
(3)他の添加成分
本発明のプロピレン系樹脂層IIIには、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン系樹脂材料に使用される酸化防止剤(中でも、フェノール系、及びリン系酸化防止剤が好ましい)、結晶核剤、透明化剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤等を挙げることができる。
また、柔軟性を付与するため、EBR、EPR等のエチレン・α-オレフィンエラストマー、SEBS 、HSBR等のスチレン系エラストマー等のゴム系化合物を配合することができる。

(4)プロピレン系樹脂層IIIの調整方法
プロピレン系樹脂層IIIに含有される成分(D)に、他の付加的任意成分を配合する場合、必要に応じて溶融混練により調製することができる。
より具体的には、成分(D)及び付加的任意成分を、あらかじめドライブレンドし、そのブレンド物をそのまま成形機のホッパーに投入してもよい。また、そのブレンド物を押出機、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー等を用いて溶融、混練し、通常用いられている方法でペレット状とし、フィルムもしくはシートを製造することもできる。
【0043】
4.積層体
本発明の積層体は、少なくとも上記第1層、第2層及び第3層をこの順で積層したものであればよいが、上記第1層、第2層及び第3層のほかに、かかる積層体に一般的に使用される各種の層を適宜必要に応じて設けることができる。具体的には、各種の層間に接着層やEVOH、Ny等のガスバリアー層を設けることができる。
さらに、本発明の積層体の厚みは、30~100μmが好ましい。上記範囲内であれば透明性に優れるフィルムが安定的に成形できるので好ましい。
【0044】
本発明の積層体の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。空冷インフレーション法により製造するのが好ましい。
具体的には、上述の第1層、第2層、第3層用樹脂材料をそれぞれ押出機及び円形ダイスを用いて共押出し、溶融チューブ内に空気を入れ膨張させつつ、周りの空気で冷却する空冷インフレーション成形法により製膜される。成形温度は160~280℃、好ましくは170~230℃である。
また、前記第1層について第2層側の面とは反対側の面に、成形時にコロナ処理を施した処理面があり、前記第3層について、第2層側の面とは反対側の面がヒートシール面であることが好ましい。また、この場合、処理面側にPET、Ny、OPP、ALから選ばれる基材層を積層することが好ましい。基材層は、例えば、PET//AL//PET、PET//AL//Nyのように複数の基材を接着剤で貼り合わせたものでもよい。(ALはアルミニウムを意味する。)
【0045】
5.用途
本発明の積層体からなるレトルト食品用シーラントフィルムは、特に、120℃超~130℃未満の加熱加圧殺菌処理用途に好適に使用できる。
また、本発明の積層体からなるレトルト食品用シーラントフィルムは、処理面側に、PET//AL//PET、PET//AL//Nyを積層したのちに、液体の自動充てん機にて、縦ピロー包装する際にも、好適に用いることが可能である。具体的には、シール温度が可能な範囲(液漏れが確認されない)が広くなる。シール温度と耐圧強度のバランスに優れたものとなる。
【実施例
【0046】
以下、本発明を実施例によって、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
【0047】
1.樹脂物性の評価方法
(1)メルトフローレート(MFR):前述のように、成分(B)及び成分(C)のMFRは、JIS K6922-2:1997附属書(190℃ 、21.18N荷重)に準拠して測定した。
成分(A)及び成分(D)のMFRは、前述のように、JIS K6921-2:1997附属書(230℃ 、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度:前述のように、成分(B)の密度は、JIS K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して23℃で測定した。また、成分(C)の密度は、JIS K6922-2:1997附属書に準拠して23℃で測定した。
(3)α-オレフィン含有量:前述のように、α-オレフィンの含有量は、13C-NMR法によって計測した。
(4)Mw/Mn:前述のように、GPCにより測定した。
(5)融解ピーク:前述のように、DSCにより求めた。
(6)曲げ弾性率:前述のように、JIS K7171に準拠して測定した。
(7)溶出ピーク温度:前述のように、TREFにより測定した。
【0048】
2.積層体の成形方法
以下のインフレーションフィルム製膜機(成形装置)を用いて、下記の成形条件で、表2に記載の配合で、インフレーションフィルムを成形し、評価した。
【0049】
(3種3層空冷インフレーション成形機)
装置:空冷インフレーション成形装置(装置名:DIREX、メーカー:プラコー)
押出機スクリュー径:外層(第I層)/中間層(第II層)/内層(第III層)
=50mmφ/55mmφ/50mmφ
ダイ径:200mmφ
押出量:59kg/hr
ダイリップギャップ:3mm
引取速度:25m/分
ブローアップ比:2.0
成形樹脂温度:180℃
フィルム厚み:40μm
冷却リング:2段式風冷リング
コロナ処理有(初期濡れ張力:45dyn/cm以上)
【0050】
3.パウチの製造方法
積層体について、マルチコーター(装置型番:M500、メーカー:ヒラノテクシード)を活用し、二軸延伸ナイロン(ONy)とラミネートを行い、ドライラミネートフィルムを作製した。
構成:ONy//PEフィルム
ONy:ユニチカ製:ONM 厚み:15μm
接着剤: 東洋モートン製TM-570(ポリエステル系樹脂)
東洋モートン製CAT-RT37(ポリイソシアネート系)を使用
ドライラミネートフィルムを縦方向に二つ折りし、縦150mm×横50mmとなるように三方シールを行い、水道水20mlを充填したパウチを準備した。
シールは、インパルスシーラー(装置型番:P-300、メーカー:富士インパルス)で行った。
【0051】
4.パウチの評価方法
パウチについて、高温高圧調理殺菌試験機(装置型番:YRF-40・50EZ、発売:サクラエスアイ、製造:チヨダエレクトリック、方式:熱水シャワー式)を用いて、125℃加熱加圧殺菌処理を実施した。
これらのパウチについて、外観、シール層同士の融着有無、寸法安定性を評価した。
【0052】
(1)外観
異常(皺、破袋など)が見られなかった場合を「○」、見られた場合を「×」とした。
【0053】
(2)融着
融着が見られなかった場合を「○」、見られた場合を「×」とした。
【0054】
(3)寸法安定性
パウチの処理前後でドライラミネートフィルムの縦方向の長さを比較した。縦方向の長さの変化が±10%以内であれば「○」、±10%を超える場合を「×」とした。
【0055】
4.使用樹脂
(1)成分(A):プロピレン系樹脂
成分(A)として、次の樹脂を用いた。表1に示す。
A-1:日本ポリプロ社製ノバテックPP BC6DRF(MFR 2.5g/10min)

(2)成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(B)として、次の樹脂を用いた。表1に示す。
B-1:日本ポリエチレン社製ハーモレックス NF366A(MFR 1.5g/10min、密度 0.919g/cm
B-2:日本ポリエチレン社製ハーモレックス NF444A(MFR 2.0g/10min、密度 0.912g/cm
B-3:日本ポリエチレン社製カーネル KF370(MFR 3.5g/10min、密度 0.905g/cm

(3)成分(C):高密度ポリエチレン
C-1:日本ポリエチレン社製ノバテックHD HY444(MFR 1.1g/10min、密度 0.956g/cm

(4)成分(D):プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体
D-1:日本ポリプロ社製ウィンテック WFW4M(MFR 7.0g/10min)
D-2:日本ポリプロ社製ウィンテック WFW5T(MFR 3.5g/10min)
【0056】
【表1】
【0057】
[実施例1]
第1層に、(A-1)90重量%、(B-1)8重量%、(C-1)2重量%を配合したプロピレン系樹脂層Iを用い、第2層には、(B-1)72重量%、(C-1)28重量%を配合したエチレン系樹脂層IIを用い、第3層には、(D-1)100重量%からなるプロピレン系樹脂層IIIを用いた。

第1層及び第3層に、スリップ剤が1000ppmとなるように、添加した。また、第2層にも、スリップ剤が600ppmとなるように、添加した。
さらに、第3層に、アンチブロッキング剤が940ppmとなるように添加した。いずれも、成形時にマスターバッチを用いて添加した。
マスターバッチは以下のものを用いた。
スリップ剤マスターバッチ
日本ポリプロ社製ノバテックPP MBS10B(第1層及び第3層に添加)
スリップ剤10重量%のマスターバッチ
日本ポリエチレン社製カーネル KMB05S(第2層に添加)
スリップ剤5重量%のマスターバッチ
アンチブロッキング剤マスターバッチ
日本ポリプロ社製ノバテックPP FMB1650B
アンチブロッキング剤20重量%のマスターバッチ

これら各層の樹脂材料を、上記プラコー社製3種3層空冷インフレーション成形機に各々セットし、上記条件で空冷インフレーション成形を行って、厚さ40μm(層比:第1層/第2層/第3層=1/3/1)の積層体を得て、評価を行った。さらに、パウチを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0058】
[実施例2]
層比を、第1層/第2層/第3層=1/1/1としたこと以外は、実施例1と同様に積層体を得て、評価を行った。結果を表2に示す。

[実施例3]
第2層に、(B-1)64重量%、(C-1)36重量%を配合したエチレン系樹脂層IIを用いたこと以外は、実施例1と同様に積層体を得て、評価を行った。結果を表2に示す。

[実施例4]
第2層に、(B-2)70重量%、(C-1)30重量%を配合したエチレン系樹脂層IIを用いたこと以外は、実施例1と同様に積層体を得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0059】
[比較例1]
第3層に、(A-1)90重量%、(B-1)8重量%、(C-1)2重量%からなるプロピレン系樹脂層IIIを用いたこと以外は、実施例1と同様に積層体を得て、評価を行った。結果を表2に示す。
このものは、125℃の加熱加圧殺菌処理後に融着が発生した。

[比較例2]
第1層に、(B-1)80重量%、(C-1)20重量%を配合した以外は、実施例1と同様に積層体を得て、評価を行った。結果を表2に示す。
このものは、125℃の加熱加圧殺菌処理後に、皺が発生し、寸法安定性が悪化した。
【0060】
[比較例3]
第1層と第3層に、(D-2)100重量%を配合した以外は、実施例1と同様に積層体を得て、評価を行った。結果を表2に示す。
このものは、125℃の加熱加圧殺菌処理後に、皺が発生した。

[比較例4]
第2層に、(B-3)72重量%、(C-1)28重量%からなるエチレン系樹脂層IIを用いたこと以外は、実施例1と同様に積層体を得て、評価を行った。結果を表2に示す。
このものは、125℃の加熱加圧殺菌処理後に融着が発生した。
【0061】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の積層体からなるレトルト食品用シーラントフィルムは、低温耐衝撃性とハイレトルト領域(120℃超~130℃未満)の高温耐熱性のバランスに優れるため、常温保存のみならず、低温流通(冷凍~チルド)にも、好適に使用できる。