(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】成形活性炭への包装材巻き付け装置及び包装材巻き付け方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/14 20060101AFI20231108BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20231108BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20231108BHJP
【FI】
B01D39/14 M
B01D39/16 A
B01D39/16 D
C02F1/28 D
(21)【出願番号】P 2020041531
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 寛和
(72)【発明者】
【氏名】小澤 稔
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-274209(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188627(WO,A1)
【文献】特開2010-234266(JP,A)
【文献】特開平06-063322(JP,A)
【文献】特開2018-183713(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106995068(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D27/00-39/20
B01D46/00-46/90
C02F1/28
B01J20/00-20/34
B65B11/00-11/58
B65B49/00-49/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の成形活性炭の外周に包装材が巻かれた成形活性炭カートリッジの製造に用いられ、成形活性炭へ包装材を巻き付ける装置であって、
包装材を間欠的に送り出す包装材搬送手段と、
前記包装材搬送手段により送り出された前記包装材の幅方向の両端部を保持する機構であって、成形活性炭からはみ出して巻かれる箇所の包装材を保持し、保持した状態のまま、包装材の幅方向の外側に向かって移動でき、かつ、成形活性炭の周方向に沿って包装材同士が重なるまで移動できる端部保持機構と、
前記端部保持機構により保持された前記包装材の全幅にわたり、前記包装材搬送手段が送り出す方向とは逆方向に張力を付与する包装材張力付与手段と、
前記端部保持機構によって前記成形活性炭の外周に巻かれた前記包装材の重なった部分を、成形活性炭の長手方向の全長にわたって熱溶着するヒーターと、
前記ヒーターによって熱溶着された前記包装材の前記成形活性炭に巻かれていない部分を全幅にわたって切断する切断機構と、
を備えた、成形活性炭用包装材巻き付け装置。
【請求項2】
筒状の成形活性炭の外周に包装材が巻かれた成形活性炭カートリッジの製造方法であって、
包装材を前記成形活性炭に向けて間欠的に送り出す包装材供給工程と、
前記送り出された包装材の先頭部分の幅方向の両端部で、前記成形活性炭からはみ出して巻かれる箇所を把持する包装材把持工程と、
前記包装材の幅方向の両端部を把持したまま、
包装材の両端部を幅方向の外側に向かって引っ張る引っ張り工程と、
前記包装材を全幅にわたり、前記包装材供給工程での送り出す方向とは逆方向に引っ張る張力付与工程と、
前記包装材を前記成形活性炭の外周に、包装材同士が重なるまで巻き付ける巻き付け工程と、
前記包装材の重なった部分を、前記成形活性炭の長手方向の全長にわたって熱溶着する溶着工程と、
前記包装材の前記成形活性炭に巻かれていない部分を全幅にわ
たって切断する切断工程と、
をこの順に行う、成形活性炭カートリッジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形活性炭の外周部に巻き付ける包装材の巻き付け装置及び巻き付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浄水用フィルターのろ材として、臭気成分や有機物質等を吸着除去できる活性炭を固化した成形活性炭が知られている。例えば、家庭用の浄水用フィルターでは、円筒状に成形された成形活性炭の内外周及び側面を不織布等の包装材で覆い、両端部に流路を備えたキャップを取り付けることで浄水器本体と系合させている。水をキャップの流路から、成形活性炭の内径部に入れ、径方向へ流通させることで、塩素等の有害物質の吸着・除去を行っている。
【0003】
このような浄水用フィルターの製造では、不織布筒の外周部に活性炭を堆積・硬化させて円筒状の成形活性炭を作成し、成形活性炭の外周部に包装材として不織布を巻き付けて溶着固定した後、軸方向の両端からはみ出た不織布を端面に折り返して密着させ、両端部にキャップを接着固定している。
【0004】
ここで、成形活性炭の外周部に不織布を巻き付ける方法としては、成形活性炭の円筒軸方向に平行な第1ヒーターと接線方向に平行な第2ヒーターにより、成形活性炭の円筒軸方向及び円周方向に沿って、カット済みの不織布を熱溶着する方式が提案されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
円筒形状の成形活性炭に水を流す際に、径方向への通水抵抗によって成形活性炭に負荷がかかり、割れや潰れ等が発生することがある。その場合、成形活性炭の割れや潰れの箇所に水が偏流し、所望のろ過性能が得られない。特に、成形活性炭の内周側から外周へ通水させる場合においては、支えとなる部材がないため、水圧による負荷がかかる際に成形活性炭の割れが避けがたくなる。これを防止するためには、成形活性炭の周方向に張力を付与しながら包装材を巻き付けることが有効となる。
【0007】
しかし、特許文献1に開示されているような、カット済みの不織布を成形活性炭に直接溶着する方法は、不織布を成形活性炭の外周部に巻き付ける際に、不織布の走行方向に対して張力をかける機構が無いため、張力をかけて巻くことはできない。また、不織布の先頭部が成形活性炭の表層部に直接溶着されているが、この状態で不織布を引っ張ると、溶着された箇所の活性炭が脱落して不織布が容易に剥がれるため、装置を改造して不織布に張力をかける機構を追加することもできない。
【0008】
すなわち、特許文献1の方法では、不織布に張力をかける機構が無い上に、成形活性炭の表層部に直接溶着された不織布は非常に剥がれやすいため、不織布に張力をかけることができない。
【0009】
本発明は、従来の不織布巻き付け作業では、成形活性炭の外周部に張力をかけて不織布を巻き付ける作業を行えなかった問題点を解決するためになされたものであり、付与した張力を確実に保持しながら成形活性炭に巻き付けることができる成形活性炭への包装材巻き付け装置及び包装材巻き付け方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の成形活性炭用包装材巻き付け装置は、筒状の成形活性炭の外周に包装材が巻かれた成形活性炭カートリッジの製造に用いられ、成形活性炭へ包装材を巻き付ける装置であって、
包装材を間欠的に送り出す包装材搬送手段と、
上記包装材搬送手段により送り出された上記包装材の幅方向の両端部を保持する機構であって、成形活性炭からはみ出して巻かれる箇所の包装材を保持し、保持した状態のまま、包装材の幅方向の外側に向かって移動でき、かつ、成形活性炭の周方向に沿って包装材同士が重なるまで移動できる端部保持機構と、
上記端部保持機構により保持された上記包装材の全幅にわたり、上記包装材搬送手段が送り出す方向とは逆方向に張力を付与する包装材張力付与手段と、
上記端部保持機構によって上記成形活性炭の外周に巻かれた上記包装材の重なった部分を、成形活性炭の長手方向の全長にわたって熱溶着するヒーターと、
上記ヒーターによって熱溶着された上記包装材の前記成形活性炭に巻かれていない部分を全幅にわたって切断する切断機構と、を備えている。
【0011】
上記課題を解決する本発明の成形活性炭カートリッジの製造方法は、筒状の成形活性炭の外周に包装材が巻かれた成形活性炭カートリッジの製造方法であって、
包装材を前記成形活性炭に向けて間欠的に送り出す包装材供給工程と、
上記送り出された包装材の先頭部分の幅方向の両端部で、上記成形活性炭からはみ出して巻かれる箇所を把持する包装材把持工程と、
上記包装材の幅方向の両端部を把持したまま、
包装材の両端部を幅方向の外側に向かって引っ張る引っ張り工程と、
上記包装材を全幅にわたり、上記包装材供給工程での送り出す方向とは逆方向に引っ張る張力付与工程と、
上記包装材を上記成形活性炭の外周に、包装材同士が重なるまで巻き付ける巻き付け工程と、
上記包装材の重なった部分を、上記成形活性炭の長手方向の全長にわたって熱溶着する溶着工程と、
上記包装材の上記成形活性炭に巻かれていない部分を全幅にわたって切断する切断工程と、をこの順に行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明の成形活性炭用包装材巻き付け装置および成形活性炭カートリッジの製造方法を用いれば、成形活性炭と成形活性炭の軸方向の長さよりも広幅の包装材を用いることで、成形活性炭の外周部に張力をかけて包装材を巻き付け、固定することができる。
【0013】
さらに、包装材の先頭部は、成形活性炭の表層部に沿わせた状態で、最初に幅方向に引っ張って伸ばすので、後から搬送方向に張力をかけても、包装材の先頭部が伸びて変形することが無い。その結果、包装材の巻き始めの部分が、成形活性炭の表層部に直線状に密着した状態となるため、包装材を巻き重ねた後に、巻き始め部分が透けて見えても、外観の品位が良い。
【0014】
本発明による成形活性炭への包装材巻き付け装置および包装材巻き付け方法とを、成形活性炭の包装材巻き付け工程に適用すれば、包装材同士の重なった箇所の外観の品位が良い状態で、包装材に高い張力をかけて成形活性炭に巻き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】家庭用浄水器の交換用浄水カートリッジ1の側断面図である。
【
図2】本発明の成形活性炭への包装材巻き付け装置の概略側面である。
【
図3】本発明の成形活性炭への包装材巻き付け装置の概略正面図である。
【
図4】本発明の成形活性炭への包装材巻き付け装置の第2のチャック周辺部を示す概略正面図である。
【
図5A】本発明の成形活性炭への包装材巻き付け方法の工程1~2をステップ的に示す説明図である。
【
図5B】本発明の成形活性炭への包装材巻き付け方法の工程3~4をステップ的に示す説明図である。
【
図5C】本発明の成形活性炭への包装材巻き付け方法の工程5~6をステップ的に示す説明図である。
【
図5D】本発明の成形活性炭への包装材巻き付け方法の工程7~8をステップ的に示す説明図である。
【
図5E】本発明の成形活性炭への包装材巻き付け方法の工程9~10をステップ的に示す説明図である。
【
図6】包装材の両端部を把持して走行方向に張力をかけた時の包装材の状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を、家庭用浄水器を例として図面を参照しながら説明する。
図1は、交換用浄水カートリッジ1の側断面図を例示している。ただし、好ましい態様や例示はこれに限られるものではない。
【0017】
交換用浄水カートリッジ1の成形活性炭2は、円筒形状に成形されており、内壁部には不織布を筒状に成形した筒状部材3を有する。ここで、筒状部材3は、樹脂製のフレームに不織布を巻きつける構成であってもよい。成形活性炭2の外周部には、全長に渡って包装材である不織布4が巻きつけられており、この不織布4は、成形活性炭2の軸方向に対し両端面の少なくとも一部を覆っている。
【0018】
さらに、成形活性炭2の軸方向に対し両端面には、円盤形状の端部キャップ5が取り付けられている。また、端部キャップ5の中心部には、軸方向に対して流路6が貫通孔として備えられ、筒状部材3の内壁部への導入口または導出口となっている。なお、家庭用浄水器との接続箇所にはOリング7を備えてシール性を確保している。
【0019】
[成形活性炭への包装材巻き付け装置]
図2を参照する。
図2は、成形活性炭への包装材巻き付け装置10の概略側面図である。成形活性炭への包装材巻き付け装置10は、1本の張力付与ローラー12と、その両側に2本のガイドローラー11が配置されており、ウェブ状の包装材13が巻きかけられている。張力付与ローラー12は、図のY方向へ昇降可能なリニアガイド14に接続されており、自重により包装材13へ張力をかけることができる。また、張力付与ローラー12には、図示しない錘が設けられており、包装材13への張力を自在に設定することができる。 更に、リニアガイド14の可動部は、図示しない滑車を介して、図示しないワイヤーと図示しない錘に接続されており、張力付与ローラー12の自重をキャンセルする方向へ荷重をかけることができる。これにより、包装材13へかける張力を張力付与ローラー12の自重以下に設定することもできる。
【0020】
張力付与ローラー12の上流側には、ロール状の包装材13を送り出す巻出し機15を設けており、巻出し機15には図示しないサーボモータを搭載しているので、包装材13の送り出し量を自在に設定することができる。更に、サーボモータは、図示しない制御装置を介して、リニアガイド14に設けられている図示しないエンコーダと電気的に接続されており、張力付与ローラー12の位置に連動して包装材13の送り量をコントロールすることができる。
【0021】
張力付与ローラー12の下流側には、3つ目のガイドローラー11と搬送ローラー16が配置されている。搬送ローラー16には、図示しないサーボモータを搭載しており、包装材13の送り出し量を自在に設定することができる。
【0022】
搬送ローラー16の上部にはニップローラー17が設けられており、ニップローラー17は、第1の昇降装置18に接続され、搬送ローラー16へ押し当てられている。ここで、第1の昇降装置18は、油圧シリンダー、単軸ロボット等どの様なものを用いてもよいが、搬送ローラーへの押し付け力の調整が容易で安価なエアシリンダーを用いることが好ましい。更に、ニップローラー17の表層部は、包装材13の滑りを防止するためにゴムで被覆されている。
【0023】
搬送ローラー16の下流側には、包装材13を切断するため、包装材13の下側に固定刃19が、包装材13の上側に可動刃20が、それぞれ包装材13の全幅に亘って配置されている。
【0024】
可動刃20は、第2の昇降装置21に接続されており、固定刃19との交差位置まで動作することで、包装材13を切断できる構成となっている。ここで、第2の昇降装置21は、油圧シリンダー、単軸ロボット等どの様なものを用いてもよいが、刃の押し付け力の調整が容易で安価なエアシリンダーを用いることが好ましい。
【0025】
固定刃19と搬送ローラー16との間には、第1の案内板22が設けられており、固定刃19の下流側には第2の案内板23が設けられている。また、第1の案内板22と第2の案内板23は、包装材13を下から支える配置となっている。
【0026】
第2の案内板23の上方には、第1のチャック24で円筒側面を把持された成形活性炭2が配置されており、第1のチャック24は、図示しない搬送装置により、図のY方向へ昇降できる構成となっている。ここで、第1のチャック24は、電磁式、油圧式等、どの様な駆動方式のものでもよいが、把持力の調整が容易で安価なエア駆動式が好ましい。
【0027】
第2の案内板23の下方には、ヒーター25が配置されている。ヒーター25は、第3の昇降装置26に接続されY方向へ自在に昇降可能となっており、ヒーター25が第3の昇降装置26により上昇した際に成形活性炭2の下面に押し当てられる構成となっている。ヒーター25の長さは、成形活性炭2の長手方向の全長にわたる長さであればよく、成形活性炭2の長手方向の全長よりも長くてもよい。また、ヒーター25は、第3の昇降装置26で上昇した時に第2の案内板23に干渉しない位置に配置されている。ここで、第3の昇降装置26は、油圧シリンダー、単軸ロボット等どの様なものを用いてもよいが、成形活性炭への押し付け力の調整が容易で安価なエアシリンダーを用いることが好ましい。
【0028】
ヒーター25の材質は、アルミニウムや銅等、使用温度に十分耐えることのできる金属であればどの様なものでもよいが、防錆性が高く、傷が付きにくいステンレスが、長期間の使用を考慮すると好ましい。
【0029】
さらに、ヒーター25を成形活性炭へ押し当てた際、包装材13が溶融してヒーター25へ付着することを防ぐため、ヒーター25の包装材13との接触面には、剥離性を高めるシリコン系やフッ素系の表面処理を施すことが、実用上好ましい。
【0030】
そして、ヒーター25は、温度制御手段である温度制御装置27と電気的に接続されており、ヒーター25に内蔵された図示しない熱電対により、測定された温度データが温度制御装置27へと伝達されることで、ヒーター25の温度制御が行われる。温度条件変更時は、温度制御装置27と電気的に接続された操作盤28に適宜設定温度を入力すれば、それが温度制御装置27に伝達されて、ヒーター25を制御して温度変更が実現できる。
【0031】
次に、
図3を参照する。
図3は、
図2をA方向から見た、成形活性炭への包装材巻き付け装置10の正面図である。但し、固定刃19より上流側に配置されているものは全て省略している。
【0032】
成形活性炭2の長手方向の両端の外側には、成形活性炭2の軸芯と一致する様に1組のピン29が配置されている。ピン29は段付き形状となっており、先端部の外径D1は筒状部材3の内径dよりも小さく、根本部の外径D2は筒状部材3の内径dよりも大きい。
【0033】
ピン29は、第1の接続板30を介してモータ31に接続されており、モータ31の回転軸とピン29は軸芯が一致している。また、第1の接続板30には、第1の移動装置32を介して第2のチャック33が設けられており、第2のチャック33が図のX方向へ移動できると共に、モータの回転により第2のチャック33が回転する構成となっている。
【0034】
更に、第2のチャック33周辺部を詳しく示している
図4を参照すると、第2のチャック33は、チャックハンド34を備えており、第2のチャック33が開の状態では、チャックハンド34の間に包装材13が入り(
図4の(a)の状態)、第2のチャック33が閉の状態では、チャックハンド34が成形活性炭2の外径よりも内側に収まる配置(
図4の(b)の状態)となっている。これにより、包装材13を重ねて巻き付けた際に、上に巻かれた包装材13とチャックハンド34とが干渉することを防ぐことができる。
【0035】
再び
図3を参照すると、第1の移動装置32は、油圧シリンダー、単軸ロボット等どの様なものを用いてもよいが、ストローク調整が容易で、図に示す機器の配置を簡便に実現できる様に、ロッドを有するシリンダータイプの単軸ロボットを用いることが好ましい。また、第2のチャック33は、電磁式、油圧式等、どの様な駆動方式のものでもよいが、把持力の調整が容易で安価なエア駆動式が好ましい。更に、モータ31は、インバータモータやステッピングモータ等、どの様なものでも良いが、動作の繰り返し再現性が高いサーボモータを用いることが、包装材の巻き付け量を一定に管理する上で好ましい。
【0036】
モータ31は、第2の接続板35を介して第2の移動装置36に接続されており、図のX方向へ自在に移動可能となっている。ここで、第2の移動装置36は、油圧シリンダー、エアシリンダー等どの様なものを用いてもよいが、品種切り替え等で成形活性炭の全長が変わっても、ピン29の停止位置を容易に変更できる単軸ロボットを用いることが好ましい。
【0037】
[成形活性炭への包装材巻き付け方法]
次に
図5A、B、C、D、Eを参照しながら、成形活性炭への包装材巻き付け装置10を用いて、成形活性炭2へ包装材13を巻き付ける、成形活性炭への包装材巻き付け方法を、工程1~10で示すステップを追って説明する。
図5A、B、C、D、Eは、成形活性炭への包装材巻き付け方法の一態様をステップ的に示す説明図である。
【0038】
図5A(a)を見ると、図の右側には成形活性炭への包装材巻き付け装置10の概略側面図が、図の左側には概略側面図をF方向から見た概略正面図が示されている。なお、概略正面図は一部を省略して描いており、また、線k-kに対して対象の形状である。
【0039】
まず側面図を見ると、ロール状に巻かれた包装材13が巻き出し機15から巻き出され、張力付与ローラー12とガイドローラー11を通って、搬送ローラー16に巻きかけられている。搬送ローラー16の上部には、第1の昇降装置18に接続されたニップローラー17が設けられており、搬送ローラー16の下流側には、包装材13の下側に固定刃19が、包装材13の上側に可動刃20が配置されている。可動刃20は、第2の昇降装置21に接続されており、固定刃19と搬送ローラー16との間には、第1の案内板22が配置されている。また、固定刃19の下流側には第2の案内板23と第3の昇降装置26に接続されたヒーター25が配置されている。そして、ヒーター25の上方には、第1のチャック24で把持された成形活性炭2が配置されている。
【0040】
次に、F方向から見た正面図を見ると、ヒーター25の上方側面には、ピン29が第1の接続板30を介してモータ31に接続されており、また、第1の接続板30には、第1の移動装置32を介して第2のチャック33が接続されている。更に、モータ31は第2の接続板35を介して第2の移動装置36に接続されている。
【0041】
<工程1>(
図5Aの(a)の状況)
準備工程である。張力付与ローラー12が最上位置Zmにあり、ニップローラー17が搬送ローラー16へ押し当てられて、包装材13を把持している。包装材13の先頭部は、固定刃19の位置で切断されており、可動刃20が、最上位置で待機している。また、ヒーター25は所定の温度まで昇温して最下位置で待機している。
【0042】
更に、第1のチャック24は閉じた状態で成形活性炭2を把持しており、図示しない搬送装置により、最上位置で待機している。一方、第1の移動装置32は左端位置で待機しており、第2のチャック33は開いている。モータ31は、第2のチャック33を下死点の位置で待機させ、第2の移動装置36は、右端位置で待機している。
【0043】
<工程2>(
図5Aの(b)の状況)
包装材供給工程である。巻き出し機15と搬送ローラー16が駆動して、包装材13を同じ送り速度で送り出し、包装材13の先端が第2の案内板23からはみ出た位置で、搬送ローラー16のみが停止する。次いで、張力付与ローラー12が下降し、1本の成形活性炭2の巻き付けに必要な包装材13の長さをLとした場合、初期位置である最上位置ZmからL/2だけ下方にある準備位置Zpに張力付与ローラー12が到達した時点で巻き出し機15が停止する。
そして、図示しない搬送装置により第1のチャック24が下降し、筒状部材3の軸芯とピン29の軸芯が一致する位置で待機する。
【0044】
<工程3>(
図5Bの(c)の状況)
包装材把持工程である。第2の移動装置36が移動してピン29が筒状部材3の内側に挿入され、ピン29の段付き部と筒状部材3が接触する位置で第2の移動装置36が停止する。次いで、第2のチャック33が閉じて、成形活性炭2の軸方向の端部からはみ出ている包装材13を把持する。そして、第1のチャック24が開いて成形活性炭の把持を解除した後、図示しない搬送装置により第1のチャック24が上昇して退避する、
<工程4>(
図5Bの(d)の状況)
包装材13の引っ張り工程である。第1の移動装置32が、成形活性炭2の軸方向に対して外側に向かって移動し、第2のチャック33で把持されている包装材13を同じ方向へ引っ張る。
【0045】
<工程5>(
図5Cの(e)の状況)
包装材13への張力付与工程である。第1の昇降装置18が上昇してニップローラー17が搬送ローラー16から離れ、搬送ローラー16より下流の包装材13に、張力付与ローラー12で発生している搬送方向の張力が作用する。
【0046】
<工程A6>(
図5Cの(f)の状況)
成形活性炭2への包装材巻き付け工程である。モータ31が回転して、第2のチャック33で把持された包装材13が、成形活性炭2の外周部に巻き付けられる。そして、巻き付けられた包装材13が、成形活性炭2の下部で重なった時点でモータ31が停止する。この間、張力付与ローラー12は、1本の成形活性炭2の巻き付けに必要な包装材長さをLとした場合、L/2だけ上方にある最上位置Zmまで上昇して停止する。
【0047】
<工程7>(
図5Dの(g)の状況)
包装材13の溶着工程である。第3の昇降装置26が上昇し、昇温が完了したヒーター25を、成形活性炭2下部の包装材13が重なった箇所に成形活性炭2の長手方向の全長にわたって、所定の時間だけ押し当てた後、第3の昇降装置26が下降し、ヒーター25が下端位置へ退避する。
【0048】
<工程A8>(
図5Dの(h)の状況)
包装材13の切断工程である。第1の昇降装置18を下降させることでニップローラー17を搬送ローラー16へ押し当てて包装材13を把持する。そして、第2のチャック33を開き、第1の移動装置32を成形活性炭2の軸方向外側に移動することで、第2のチャック33を包装材13の端部位置から退避させる。
次いで、第2の昇降装置21が下降し、可動刃20が固定刃19に擦り合わされて、包装材13が切断された後、第2の昇降装置21が上昇し、可動刃20が上端へ移動する。
【0049】
<工程9>(
図5Eの(i)の状況)
包装材13の末端処理工程である。包装材の切断稜線が成形活性炭2の下死点に来るようにモータ31を回転させる。次いで、第3の昇降装置26が上昇し、昇温が完了したヒーター25を包装材13の切断稜線に所定の時間だけ押し当てた後、第3の昇降装置26が下降し、ヒーター25が下端位置へ退避する。
【0050】
<工程10>(
図5Eの(j)の状況)
成形活性炭2の取り出し工程である。図示しない搬送装置により第1のチャック24が下降した後、第1のチャック24を閉じて成形活性炭2の外周部を把持する。次いで、第2の移動装置36が成形活性炭2の軸方向外側に移動することで、ピン29を筒状部材3の内側から引き抜いて退避させる。そして、図示しない搬送装置により第1のチャック24を上昇させて、成形活性炭2を搬出する。
【0051】
以上の本発明の成形活性炭への包装材巻き付け方法の一態様で、成形活性炭2の軸方向の両端からはみ出た状態の包装材13の両端部を第2のチャック33で把持することで、包装材13の先頭部分を確実に把持し、更に、包装材13の上流側から引っ張ることで搬送方向に高い張力をかけながら成形活性炭3の外周部に包装材13を巻き付けることができる。
【0052】
また、第1の移動装置32を用いることで、包装材13の搬送方向に張力をかける前に、包装材13の両端部を把持している第2のチャック33を包装材13の幅方向へ移動させることができる。
【0053】
これにより、予め包装材13の先頭部分を、包装材13の幅方向に向かって引っ張ることができるので、後に包装材13の搬送方向へ張力をかけた時に、包装材13の先頭部分が変形して成形活性炭2の表層部から浮き上がる状態を防止でき、外観品位が整った成形活性炭カートリッジを製造することができる。その理由を以下に具体的に述べる。
【0054】
包装材13には、不織布の様に伸縮性を持つものが用いられることが多く、この場合、
図6に示す様に、包装材13の両端部を把持しただけで、包装材13の幅方向に張力をかけない状態で、包装材13の搬送方向に張力Tをかけると、両端の把持部から遠い包装材13の中央部分に変形が集中し、成形活性炭2の表層部から包装材13が浮き上がる状態となる。この状態で、成形活性炭2に包装材13を巻きつけると、変形して浮き上がった包装材13が、その形状のまま内側に巻き込まれる。包装材13が不織布の場合、重なった部分では内層の包装材13が透けて見えるため、外観が乱れてしまう。
【0055】
そこで、予め包装材13の先頭部分を幅方向に十分に伸ばしておくことで、後に搬送方向に張力をかけても、包装材13はそれ以上伸びることができないので、変形して浮き上がることを防止することができる。
【0056】
以上で述べた、第1の移動装置32を備えた第2のチャック33を用いることで、包装材13の先頭部が浮き上がることを防止できるので、包装材13の先頭部を成形活性炭に一直線状に密着させた状態で巻き付けることができ、その結果、外観の乱れを防止することができる。
【0057】
本発明の包装材13に適用できる不織布としては、浄水用フィルターを浄水器本体に組み付けた後の通水の際に脱落した活性炭を捕捉できれば、どの様な製法で作成されたものでもよく、スパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法等の既知の手法で作成された不織布から適宜選定すればよい。また、不織布の材質としては、浄水用途で用いるため、耐水性があればどの様なものでもよく、代表的なものとしてポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル等が挙げられ、これらを単一素材で用いても、2種類以上の混合素材として用いてもよい。
【実施例】
【0058】
本発明の成形活性炭への包装材巻き付け装置の一実施態様を以下に説明するが、本発明の内容はこれらに限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
成形活性炭への包装材巻き付け装置として、
図2に示す成形活性炭への包装材巻き付け装置10を用いて、成形活性炭2の外周部に張力をかけて包装材13を巻き付け、包装材13の重なった部分を溶着固定する処理を行った。
【0060】
まず、張力付与ローラー12には、直径50mm、幅200mmのステンレス製のものを用い、最大ストローク150mmのリニアガイド14の可動部に固定した。張力付与ローラー12は、図示しない錘を用いて、包装材13の搬送方向に対して500gfの張力が発生する様に調整を行った。
【0061】
そして、ガイドローラー11は、直径50mm、幅200mmのステンレス製のものを用い、張力付与ローラー12への不織布の巻き付け角度が180度となる様に、張力付与ローラー12の両側面へ2本配置した。
【0062】
更に、搬送ローラー16は、直径100mm、幅200mmのステンレス製のものを用い、角度150度で包装材13を巻き付ける様に、搬送ローラー16の下部に3本目のガイドローラー11を配置した。この搬送ローラー16の上部に配置するニップローラー17は、直径40mm、幅200mmのステンレス製とし、表層部には厚さ3mmのNBR製のゴム層を設けた上で、第1の昇降装置18としてエアシリンダーに接続した。
【0063】
次に、固定刃19と可動刃20は、それぞれ有効切断長さが230mmのものを用い、可動刃20には第2の昇降装置21としてエアシリンダーを接続した。
【0064】
また、ヒーター25は、成形活性炭2との接触部の幅が3mm、長さが155mmのものを用い、第3の昇降装置26としてエアシリンダーに接続した。
【0065】
成形活性炭2は、ポリプロピレン製の格子状フレームの外周部にポリエステル製不織布を巻き付けて溶着し、内径φ12mm、外径14mm、長さ150mmの円筒状に成形した筒状部材3の外周部に、湿式成形法にて外周部にφ30mmの活性炭を筒状に堆積させた後、100度のオーブンで5時間乾燥させたものを用いた。
【0066】
そして、包装材13として、幅160mmで巻き量1000mのポリエステル製の不織布ロールを巻出し機15に装着し、ヒーター25の温度を操作盤28にて190度に設定した。
【0067】
不織布は、成形活性炭2に1周半巻き付けることとしたため、必要な不織布長さLは、
L=30mm×3.14(円周率)×1.5(周)=141.3mm
となる。そして、張力付与ローラーの降下量は、L/2であるため、
L/2=141.3mm÷2=70.65mm
となる。そこで、張力付与ローラー12の降下量が、70.65mmの時点で、巻き出し機15が停止する様に、図示しない制御装置への設定を行った上で、不織布の巻き付けを開始した。
【0068】
まず、成形活性炭2が第1のチャック24からピン29へ受け渡された後、不織布が送り出され、張力付与ローラー12が、初期位置から70.65mm降下した時点で、不織布の供給が止まった。
【0069】
次いで、成形活性炭2の端部から、片側5mmはみ出た不織布を第2のチャック33で把持し、第1の移動装置32により不織布を幅方向へ1.5mm引っ張った。そして、ニップローラー17が上昇し、500gfの張力をかけながら、成形活性炭の外周部に不織布が1.5周巻き付けられた。そして、ヒーター25が1.0秒押し付けられて、不織布同士が溶着された後、可動刃20が昇降して不織布が切断された。
【0070】
最後に、切断された不織布の終端部が、ヒーター25の上部に来るように、成形活性炭2が回転し、ヒーター25を1.0秒押し付けた後、第1のチャック24により成形活性炭2が把持され搬出された。
【0071】
この動作を繰り返すことで合計100本の成形活性炭2への不織布の巻き付け処理を行った。
【0072】
100本の巻き付け動作の中で、張力により第2のチャック33から不織布が外れたり、ずれたことは1度も無く、100本全数において、成形活性炭2の外周部に張力をかけて不織布を巻き付けることができた。
【0073】
また、不織布の巻き付け処理が完了した成形活性炭2を目視確認した結果、不織布が重なった箇所において、下層の不織布を透かして見ることが出来たが、不織布の先頭部分は、100本全て一直線状に整った状態で巻き込まれており、外観品位は良好であった。
【0074】
このことから、成形活性炭への包装材巻き付け装置10を用いた、成形活性炭への包装材巻き付け方法は、不織布の先頭部分の変形が起因である不織布の重なった箇所の外観を乱すことなく、また、不織布の先頭部分を、チャックでしっかり把持することで、不織布に高い張力をかけて成形活性炭に巻き付けることができることがわかった。
【0075】
[参考例1]
第1の移動装置32における不織布の引っ張り量を0mmとした以外は、実施例1と同じ成形活性炭、同じ不織布、同じ装置、同じ方法により、成形活性炭への不織布の巻き付け処理を100本行った。
【0076】
結果、100本の巻き付け動作の中で、張力により第2のチャック33から不織布が外れたり、ずれたことは0回であった。しかし、不織布の巻き付け処理が完了した成形活性炭2を目視確認した結果、不織布が重なった箇所において、下層の不織布を透かして見ると、100本全数において、不織布の先頭部分が変形した状態で成形活性炭2に巻き付けられており、外観検査にて100本全数が不合格となった。
【0077】
実施例1と参考例1の結果から、外観品位に拘らないのであれば、不織布を予め幅方向へ引っ張らずとも、成形活性炭の外周に張力をかけて不織布を巻き付けることができることがわかる。
【0078】
また、同時に、不織布の先頭部分を予め幅方向へ引っ張ることで、搬送方向の張力がかかった時に不織布の変形を防止でき、その結果、不織布の重なった箇所における外観の乱れを防止できるということも明白である。
【符号の説明】
【0079】
1 交換用浄水カートリッジ
2 成形活性炭
3 筒状部材
4 不織布
5 端部キャップ
6 流路
7 Oリング
10 成形活性炭への包装材巻き付け装置
11 ガイドローラー
12 張力付与ローラー
13 包装材
14 リニアガイド
15 巻出し機
16 搬送ローラー
17 ニップローラー
18 第1の昇降装置
19 固定刃
20 可動刃
21 第2の昇降装置
22 第1の案内板
23 第2の案内板
24 第1のチャック
25 ヒーター
26 第3の昇降装置
27 温度制御装置
28 操作盤
29 ピン
30 第1の接続板
31 モータ
32 第1の移動装置
33 第2のチャック
34 チャックハンド
35 第2の接続板
36 第2の移動装置