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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】フロントカウル
(51)【国際特許分類】
   B62J 23/00 20060101AFI20231108BHJP
   B62J 6/02 20200101ALI20231108BHJP
   B62J 45/40 20200101ALI20231108BHJP
【FI】
B62J23/00 A
B62J6/02
B62J45/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020042729
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021142875
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】西口 正記
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-179792(JP,A)
【文献】国際公開第2019/224957(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/186948(WO,A1)
【文献】特開2012-071779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 23/00
B62J 6/02
B62J 45/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転支援制御が実施される鞍乗型車両の車両前部を覆うフロントカウルであって、
車両前方を照らすヘッドランプの透光面を露出させた第1のカウルと、
前記第1のカウルの下方から車両前方に突出した第2のカウルと、を備え、
前記第2のカウルの上面には基端側から先端側に向かって凹部が形成され、
前記第2のカウルの凹部の基端側は前記第1のカウルの下方に入り込んでおり、
前記第2のカウルの凹部によって前記第1のカウルの下方に運転支援用センサの少なくとも一部が収容されていることを特徴とするフロントカウル。
【請求項2】
前記第2のカウルの先端側は、前記運転支援用センサよりも車両前方に突出していることを特徴とする請求項1に記載のフロントカウル。
【請求項3】
前記第2のカウルの基端側の凹部底面が水平に形成され、前記第2のカウルの先端側の凹部底面が車両前方に向かって低くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフロントカウル。
【請求項4】
車両側面視で前記第2のカウルの側壁に前記運転支援用センサ全体が重なることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロントカウル。
【請求項5】
車両前面視で前記ヘッドランプから前記運転支援用センサが離間していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフロントカウル。
【請求項6】
前記運転支援用センサの検出面が前記ヘッドランプの透光面よりも車両前方に位置していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフロントカウル。
【請求項7】
前輪の上部を覆うフロントフェンダの前端側まで、前記第2のカウルの先端側が突出していることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフロントカウル。
【請求項8】
前記第2のカウルの先端側の一対の凹部側面は車両前方に向かって対向間隔が大きくなるように傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のフロントカウル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントカウルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、四輪車においては、加減速等の運転操作を自動制御する運転支援技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の車両は、運転支援用センサによって車両周辺の走行環境を検出し、ECU(Electronic Control Unit)によって運転支援用センサの出力結果を解析して走行環境に応じた運転支援を実施している。運転支援技術が採用された車両には、運転支援用センサとして、例えば、カメラ、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)センサ、GPS(Global Positioning System)センサが設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-019308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような運転支援技術を鞍乗型車両等の鞍乗型車両に適用すると、鞍乗型車両に運転支援用センサの設置スペースを確保することが難しい。設置スペースの確保の際に、運転支援用センサの検出精度だけでなく、車両外部の異物からの保護性能も考慮しなければならない。特に、車両が未舗装路を走行して、石、砂、泥、水等の異物が運転支援用センサに付着すると、運転支援用センサの検出精度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、運転支援用センサが設置されたときに、運転支援用センサの検出精度を維持しつつ、保護性能を向上できるフロントカウルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のフロントカウルは、運転支援制御が実施される鞍乗型車両の車両前部を覆うフロントカウルであって、車両前方を照らすヘッドランプの透光面を露出させた第1のカウルと、前記第1のカウルの下方から車両前方に突出した第2のカウルと、を備え、前記第2のカウルの上面には基端側から先端側に向かって凹部が形成され、前記第2のカウルの凹部の基端側は前記第1のカウルの下方に入り込んでおり、前記第2のカウルの凹部によって前記第1のカウルの下方に運転支援用センサの少なくとも一部を収容する収容空間が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のフロントカウルによれば、第2のカウルの凹部によって第1のカウルの下方に運転支援用センサの設置スペースが確保される。運転支援用センサの少なくとも一部が外部に露出されるため、他部材によって運転支援用センサの検出面が遮られることがなく検出精度を維持することができる。また、第2のカウルが車両前方に突出しているため、下方から跳ね上げられた異物から運転支援用センサが保護され、運転支援用センサの検出面の汚れによる検出精度の低下が抑えられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例のフロントカウルを採用した鞍乗型車両の左側面図である。
図2】本実施例の車両前部の前面図である。
図3】本実施例の車両前部の斜視図である。
図4】本実施例の車両前部の断面図である。
図5】本実施例の運転支援用センサの側面図である。
図6】本実施例の運転支援用センサ周辺の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のフロントカウルは、運転支援制御が実施される鞍乗型車両の車両前部を覆う第1のカウルと第2のカウルとを備えている。第1のカウルは車両前方を照らすヘッドランプの透光面を露出させ、第2のカウルは第1のカウルの下方から車両前方に突出している。第2のカウルの上面には基端側から先端側に向かって凹部が形成され、第2のカウルの凹部によって第1のカウルの下方に運転支援用センサの少なくとも一部が収容される設置スペースが確保される。運転支援用センサの少なくとも一部が外部に露出されるため、他部材によって運転支援用センサの検出面が遮られることがなく検出精度が維持される。また、第2のカウルが車両前方に突出しているため、下方から跳ね上げられた異物から運転支援用センサが保護され、運転支援用センサの検出面の汚れによる検出精度の低下が抑えられている。
【実施例
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。図1は、本実施例のフロントカウルを採用した鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アルミ鋳造によって形成されるツインスパー型の車体フレーム10に、V型二気筒のエンジン16や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ11(図4参照)から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム(不図示)とを有している。一対のメインフレーム12によってエンジン16の後部が支持され、一対のダウンフレームによってエンジン16の前部が支持されている。エンジン16が車体フレーム10に支持されることで、車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム12の前部は燃料タンク17を支持するタンクレール13になっており、タンクレール13の前部は燃料タンク17によって側方から覆われている。メインフレーム12の後部はエンジン16の後方に位置するボディフレーム14になっており、ボディフレーム14の上下方向の略中間位置にスイングアーム18が揺動可能に支持されている。ボディフレーム14の上部からはシートレール(不図示)とバックステー15が後方に向かって延びている。シートレール上には、ライダーシート21及びピリオンシート22が設けられている。
【0013】
ヘッドパイプ11には、ステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク23が操舵可能に支持されている。フロントフォーク23の下部には前輪25が回転可能に支持されており、前輪25の上部はフロントフェンダ26に覆われている。スイングアーム18はボディフレーム14から後方に向かって延びている。スイングアーム18の後端には後輪27が回転可能に支持され、後輪27の上方はリヤフェンダ28に覆われている。後輪27にはチェーンドライブ式の減速機構を介してエンジン16が連結されており、減速機構を介してエンジン16からの動力が後輪27に伝達されている。
【0014】
鞍乗型車両1の車体フレーム10には、車体外装として各種カバーが装着されている。例えば、車両前部はボディカウル(第1のカウル)41、センターボディカウル(第2のカウル)42等のフロントカウル40に覆われている。車両側部は燃料タンク17の前方が一対のサイドカバー31によって覆われており、燃料タンク17の後方が一対のフレームカバー32によって覆われている。車両上部は一対のサイドカバー31を連ねるセンターカバー33、ライダーシート21、ピリオンシート22によって覆われている。また、一対のフレームカバー32の後方かつピリオンシート22の下方は一対のリアカバー34に覆われている。
【0015】
このような鞍乗型車両1に運転支援技術を適用するためには、加減速等の運転操作を自動制御するための運転支援用センサ51を車両に設置する必要がある。運転支援用センサ51の検出精度を考慮した設置スペースとなると、車両外部に運転支援用センサ51が露出されるため、石、砂、泥、水等の異物から運転支援用センサ51を保護しなければならない。そこで、ボディカウル41の下方から車両前方にセンターボディカウル42を大きく突出させたカウル構造とし、このセンターボディカウル42の上面に凹部44(図3参照)を形成して運転支援用センサ51の設置スペースを確保している。
【0016】
図2から図4を参照して、鞍乗型車両のフロントカウルについて説明する。図2は、本実施例の車両前部の前面である。図3は、本実施例の車両前部の斜視図である。図4は、本実施例の車両前部の断面図である。
【0017】
図2から図4に示すように、鞍乗型車両1には、車両側部を覆う樹脂製の一対のサイドカバー31が取り付けられている。一対のサイドカバー31は、前端部35が側面視クチバシ状に突出したメインカバー36と、メインカバー36に取り付けられるサブカバー37とを有している。メインカバー36は、クチバシ状の前端部35よりも下側が、前端縁から後方に向かって側面視略三角形状に切り欠かれ、このメインカバー36の切り欠き部分に側面視略三角形状のサブカバー37が取り付けられている。前面視にて一対のサイドカバー31の前端部35は車両前方に向かって対向間隔が狭くなるように湾曲している。
【0018】
一対のサイドカバー31の前端部35の間には、ヘッドランプ55の透光面を露出させたボディカウル41と、ボディカウル41の下方から車両前方に突出したセンターボディカウル42とから成る樹脂製のフロントカウル40が設けられている。ボディカウル41はカウリングブレース61(特に図4参照)を介してヘッドパイプ11に取り付けられ、ヘッドランプ55はステー62(特に図4参照)を介してカウリングブレース61に取り付けられている。ボディカウル41の前面はヘッドランプ55の周囲を覆う枠状に形成されている。ボディカウル41の上部には、ウインドスクリーンブレース63を介してウインドスクリーン64が設けられている。
【0019】
センターボディカウル42の基端側はボディカウル41の下部に取り付けられ、センターボディカウル42はボディカウル41から車両前方に側面視クチバシ状に突出している。センターボディカウル42の下部にはボディカウルロア43(特に図4参照)が取り付けられている。センターボディカウル42とボディカウルロア43の両側部には一対のサイドカバー31の前端部35が取り付けられ、センターボディカウル42とボディカウルロア43によって一対のサイドカバー31の前端部35が連結されている。なお、カウルやカバー等の外装部材同士の取り付けには、ネジ止め、掛け止め、クリップ止めのいずれの取り付け方法が用いられてもよい。
【0020】
センターボディカウル42の上面には、基端側から先端側に向かって凹部44が形成されている。センターボディカウル42の凹部44の基端側はボディカウル41の下方に入り込んでおり、センターボディカウル42の凹部44とボディカウル41の下部によって直方体形状の運転支援用センサ51を収容する収容空間が形成されている。運転支援用センサ51の後端側はボディカウル41の下方に収容され、運転支援用センサ51の前端側はボディカウル41の前方に突出している。このため、運転支援用センサ51の前端側の検出面52がセンターボディカウル42の凹部44上で外部に露出している。
【0021】
センターボディカウル42の先端側は、運転支援用センサ51よりも車両前方のフロントフェンダ26の前端側まで突出している。前輪25の上部がフロントフェンダ26に覆われ、さらにフロントフェンダ26の上方がセンターボディカウル42によって覆われるため、前輪25によって跳ね上げられた異物から運転支援用センサ51及びヘッドランプ55が有効に保護されている。このように、車両前部の保護部材として機能するセンターボディカウル42の上面に凹部44が設けられ、車両前方の走行環境を検出するための運転支援用センサ51の設置スペースが確保されている。
【0022】
センターボディカウル42の一対の側壁45は基端側から先端側に向かって低くなるが、運転支援用センサ51が凹部44に設置された位置では、運転支援用センサ51の高さよりも側壁45の高さが大きくなっている。すなわち、車両側面視でセンターボディカウル42の側壁45に運転支援用センサ51が全体的に重なっている。このため、側壁45によって車両側方の異物から運転支援用センサ51が有効に保護される。また、センターボディカウル42によって車両側方から運転支援用センサ51が見えなくなるため、運転支援用センサ51が目立たなくなって鞍乗型車両1の外観性が向上する。
【0023】
センターボディカウル42の凹部44は先端側まで延在しており、運転支援用センサ51の検出面52の前方を遮るものがない。運転支援用センサ51の検出面52はヘッドランプ55の透光面よりも車両前方に位置付けられている。このため、運転支援用センサ51の指向範囲がヘッドランプ55に狭められことがなく、運転支援用センサ51の指向範囲が広くなって検出精度が向上される。また、車両前面視で運転支援用センサ51はヘッドランプ55から下方に離間しているため、ヘッドランプ55の近辺に運転支援用センサ51が設置されても、運転支援用センサ51によってヘッドランプ55の照射領域が狭まることがない。
【0024】
センターボディカウル42の基端側の凹部底面46は水平に形成され、センターボディカウル42の先端側の凹部底面47は車両前方に向かって低くなるように傾斜している。水平な凹部底面46に運転支援用センサ51が設置されることで検出精度が向上され、傾斜した凹部底面47によって凹部44内の排水性が向上される。また、凹部底面47の傾斜によって運転支援用センサ51の鉛直方向の指向範囲が広げられている。なお、水平な凹部底面46とは、完全に水平な凹部底面46に限定されず、実質的に水平と見做せる程度の誤差がある凹部底面46も含んでいる。
【0025】
センターボディカウル42の基端側の一対の凹部側面48は一定の対向間隔を維持するように平行に形成され、センターボディカウル42の先端側の一対の凹部側面49は車両前方に向かって対向間隔が大きくなるように傾斜している(図5参照)。平行な一対の凹部側面48の内側に運転支援用センサ51が設置されることで位置決めされ、傾斜した一対の凹部側面49によって運転支援用センサ51の水平方向の指向範囲が広げられている。なお、平行な一対の凹部側面48とは、完全に平行な一対の凹部側面48に限定されず、実質的に平行と見做せる程度の誤差がある一対の凹部側面48も含んでいる。
【0026】
運転支援用センサ51は、車両前方の走行環境を検出する装置である。運転支援用センサ51としては、例えば、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサによって走行環境を画像認識するカメラ、電波の放出によって走行環境を検出するミリ波レーダ、レーザ照射によって走行環境を検出するLiDARセンサが設置される。走行環境としては、例えば、車両周辺の歩行者、他車両、障害物の有無、走行路の延在方向が検出される。運転支援用センサ51の検出結果は、ライダーシート21(図1参照)の下方のECU29に出力されて、ECU29によって車両の走行環境が監視されている。
【0027】
ECU29は、運転支援用センサ51の出力結果を解析して、走行環境に応じた運転支援を実施している。運転支援とは、加減速等の運転操作の一部又は全部をライダーの代わりにECU29が実施することを示している。ECU29による運転支援の一例として、例えば、先行車両に車間距離を維持しながら追従走行するACC(Adaptive Cruise Control)や、車線中央を維持しながら走行するLKAS(Lane Keeping Assistant System)が実施される。なお、運転支援用センサ51は、カメラ、ミリ波レーダ、LiDARセンサ等の少なくとも1つでもよいし、複数のセンサから成るセンサユニットでもよい。
【0028】
図5及び図6を参照して、運転支援用センサの設置構造について説明する。図5は、本実施例の運転支援用センサの側面図である。図6は、本実施例の運転支援用センサ周辺の上面図である。
【0029】
図5及び図6に示すように、センターボディカウル42の凹部44には、ヘッドランプ55の透光面から前端側を突出した状態で運転支援用センサ51が設置されている。上記したように、凹部底面46が水平に形成され、一対の凹部側面48が平行に形成されているため、凹部底面46及び一対の凹部側面48によって運転支援用センサ51が水平姿勢に位置決めされる。また、ボディカウル41の下部によって運転支援用センサ51の上面が押さえられている。走行時の振動等によって運転支援用センサ51の設置姿勢が変わらず、運転支援用センサ51の検出精度の悪化が防止されている。
【0030】
凹部底面47が車両前方に向かって低くなるように傾斜し、一対の凹部側面49が車両前方に向かって対向間隔が大きくなるように傾斜している。運転支援用センサ51の前方空間が広がるため、運転支援用センサ51の指向範囲RAが水平方向及び鉛直方向に広げられて検出精度が向上される。このため、凹部底面46に対する凹部底面47の傾斜角度及び凹部側面48に対する凹部側面49の傾斜角度は、運転支援用センサ51の指向範囲RAに基づいて設計されることが好ましい。このように、走行路から所定の高さ位置に運転支援用センサ51が水平姿勢に設置されて、運転支援用センサ51の適切な指向範囲RAが実現されている。
【0031】
センターボディカウル42の先端はフロントフェンダ26の前端側まで突出しているため、車両前方に跳ね上げられた異物から運転支援用センサ51が有効に保護される。運転支援用センサ51の設置箇所では、センターボディカウル42の一対の側壁45が高く形成されているため、車両側方に跳ね上げられた異物から運転支援用センサ51が有効に保護される。また、センターボディカウル42の凹部44に水滴等の異物が入り込んだ場合には、運転支援用センサ51の前方の凹部底面47の傾斜によって異物が排出される。このため、運転支援用センサ51の指向範囲RAへの異物の入り込みが抑えられる。
【0032】
以上、本実施例によれば、センターボディカウル42の凹部44によってボディカウル41の下方に運転支援用センサ51の設置スペースが確保される。運転支援用センサ51の少なくとも一部が外部に露出されるため、他部材によって運転支援用センサ51の検出面52が遮られることがなく検出精度を維持することができる。また、センターボディカウル42が車両前方に突出しているため、下方から跳ね上げられた異物から運転支援用センサ51が保護され、運転支援用センサ51の検出面52の汚れによる検出精度の低下が抑えられている。
【0033】
なお、本実施例では、運転支援用センサとして、障害物等を検出するカメラ、ミリ波レーダ、LiDARセンサが例示されたが、運転支援用センサは自車両の位置を検出するためのGPSセンサや、自車両の姿勢等を検出するための加速度センサでもよい。
【0034】
また、本実施例では、運転支援用センサがセンターボディカウルの凹部に設置されているが、カメラ等の比較的小型のセンサはヘッドランプに内蔵され、ミリ波レーダ、LiDARセンサ等の比較的大型のセンサが凹部に設置されてもよい。
【0035】
また、本実施例では、ボディカウルとセンターボディカウルが別体に形成されたが、ボディカウルとセンターボディカウルが一体に形成されてもよい。
【0036】
また、本実施例では、センターボディカウルの凹部によってボディカウルの下方に運転支援用センサの後端側が収容される構成にしたが、ボディカウルの下方に運転支援用センサの少なくとも一部が収容されればよい。このため、センターボディカウルの凹部によってボディカウルの下方に運転支援用センサ全体が収容されてもよい。
【0037】
また、本実施例では、センターボディカウルの先端側がフロントフェンダの前端側まで突出する構成にしたが、運転支援用センサの保護性能が十分に得られる場合には、センターボディカウルの先端側がフロントフェンダの前端側まで突出していなくてもよい。
【0038】
また、本実施例では、センターボディカウルの水平な凹部底面に運転支援用センサが設置される構成にしたが、運転支援用センサが設置可能であれば、凹部底面の面形状は特に限定されない。
【0039】
また、本実施例では、運転支援用センサが直方体形状に形成されたが、センターボディカウルの凹部に設置可能であれば、運転支援用センサの外形形状は特に限定されない。
【0040】
また、本実施例の鞍乗型車両のフロントカウルは、アドベンチャータイプの自動二輪車に限らず、他のタイプの自動二輪車に採用されてもよい。また、鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0041】
以上の通り、本実施例のフロントカウル(40)は、運転支援制御が実施される鞍乗型車両(1)の車両前部を覆うフロントカウルであって、車両前方を照らすヘッドランプ(55)の透光面を露出させた第1のカウル(ボディカウル41)と、第1のカウルの下方から車両前方に突出した第2のカウル(センターボディカウル42)と、を備え、第2のカウルの上面には基端側から先端側に向かって凹部(44)が形成され、第2のカウルの凹部によって第1のカウルの下方に運転支援用センサ(51)の少なくとも一部が収容されている。この構成によれば、第2のカウルの凹部によって第1のカウルの下方に運転支援用センサの設置スペースが確保される。運転支援用センサの少なくとも一部が外部に露出されるため、他部材によって運転支援用センサの検出面(52)が遮られることがなく検出精度を維持することができる。また、第2のカウルが車両前方に突出しているため、下方から跳ね上げられた異物から運転支援用センサが保護され、運転支援用センサの検出面の汚れによる検出精度の低下が抑えられている。
【0042】
本実施例のフロントカウルにおいて、第2のカウルの先端側は、運転支援用センサよりも車両前方に突出している。この構成によれば、第2のカウルによって前方の異物から運転支援用センサが有効に保護される。
【0043】
本実施例のフロントカウルにおいて、第2のカウルの基端側の凹部底面(46)が水平に形成され、第2のカウルの先端側の凹部底面(47)が車両前方に向かって低くなるように傾斜している。この構成によれば、水平な凹部底面に運転支援用センサが設置されることで検出精度が向上され、傾斜した凹部底面によって凹部内の排水性が向上される。
【0044】
本実施例のフロントカウルにおいて、両側面視で第2のカウルの側壁(45)に運転支援用センサ全体が重なる。この構成によれば、第2のカウルによって車両側方の異物から運転支援用センサが有効に保護される。また、車両側方からセンサが見えなくなるため、センサが目立たなくなって車両の外観性が向上する。
【0045】
本実施例のフロントカウルにおいて、車両前面視でヘッドランプから運転支援用センサが離間している。この構成によれば、運転支援用センサによってヘッドランプの照射領域が狭まることがない。
【0046】
本実施例のフロントカウルにおいて、運転支援用センサの検出面がヘッドランプの透光面よりも車両前方に位置している。この構成によれば、運転支援用センサの前方を遮るものがなく、センサの検出精度が向上する。
【0047】
本実施例のフロントカウルにおいて、前輪(25)の上部を覆うフロントフェンダ(26)の前端側まで、第2のカウルの先端側が突出している。この構成によれば、前輪の上方が第2のカウルによって覆われるため、前輪に跳ね上げられた異物から運転支援用センサがより有効に保護される。
【0048】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0049】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0050】
1 :鞍乗型車両
25:前輪
26:フロントフェンダ
40:フロントカウル
41:ボディカウル(第1のカウル)
42:センターボディカウル(第2のカウル)
44:凹部
45:側壁
46:基端側の凹部底面
47:先端側の凹部底面
51:運転支援用センサ
55:ヘッドランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6