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特許7380359冗長化経路の管理方式、冗長化経路の管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】冗長化経路の管理方式、冗長化経路の管理方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20231108BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20231108BHJP
   H04L 12/46 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H04L7/00 990
H04L12/28 200Z
H04L12/46 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020045890
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021150693
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】田島 昌明
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017940(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108387(WO,A1)
【文献】特開2000-004248(JP,A)
【文献】国際公開第2014/044487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
H04L 12/28
H04L 12/46
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻同期するマスター・スレーブ間を主従の経路に冗長化したネットワークの管理方式であって、
前記マスター・前記スレーブ間における往路と復路の伝送時間の平均値としての「Meanpath」を算出し、算出された前記「Meanpath」のマイナス状態が継続すればタイムスタンプの異常と判定し、
前記判定に応じて前記経路の主従を切り替えることを特徴とする冗長化経路の管理方式。
【請求項2】
前記「Meanpath」がマイナスとなった回数が、事前設定の閾値を越えた場合に前記タイムスタンプの異常と判定する
ことを特徴とする請求項1記載の冗長化経路の管理方式。
【請求項3】
前記判定は、前記マスター・前記スレーブ間の主経路だけでなく、従経路に対しても行われる
ことを特徴とする請求項1または2記載の冗長化経路の管理方式。
【請求項4】
前記従系路に異常判定の状態が継続していれば、例外的に前記主経路への切り替えを行わないことを特徴とする請求項3記載の冗長化経路の管理方式。
【請求項5】
前記異常と判定した場合には外部に通知することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の冗長化経路の管理方式。
【請求項6】
前記マスター・スレーブ間において前記時刻同期に必要なパケットをブロートキャストで送信する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の冗長化経路の管理方式。
【請求項7】
時刻同期するマスター・スレーブ間を主従の経路に冗長化したネットワークの管理方法であって、
前記マスター・前記スレーブ間における往路と復路の伝送時間の平均値としての「Meanpath」を算出するステップと、
前記算出された前記「Meanpath」のマイナス状態が継続すればタイムスタンプの異常と判定するステップと、
前記判定に応じて前記経路の主従を切り替えるステップと、
を有することを特徴とする冗長化経路の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にPTPに準拠した通信機器を用いて主従の経路(ルート)に冗長化されたネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
PTP(Precision Time Protocol)は、利用環境をLANに制限することで高精度な時刻同期を得るために作られた比較的新しいプロトコルであり、PTPの仕様はIEEE1588として定められている。
【0003】
「PTP」では、「Grandmaster(GM)」が高度な時刻配信を行い、スレーブが時刻を受け取る。また、「PTP」ではネットワークインターフェースチップの「MAC」や「PHY」に実装されたハードウェアスタンプ機能を用いてマイクロ秒RMS以下のタイムスタンプ精度を実現する。
【0004】
現在、「PTP」のプロトコルには2バージョンあり、「Version1」では大規模な展開を行うためにセグメントを区切る「Boundary Clock(BC)」が用意されている。
【0005】
「Version2」では遅延管理機能を持つスイッチングハブ「Transparent Clock(TC)」が用意され、より柔軟で精度の高い展開が可能となっている。
【0006】
このPTP機能を組み込んだ通信機器、即ちL2(レイヤー2)のスイッチングハブ(以下、PTPハブとする。)は、GMとの高精度の時刻同期が可能となっている。また、PTPハブ同士を接続してPTPハブ同士でPTPパケットを交換することにより、PTPハブ同士の中から自動でマスターを選出し(マスター選出処理)、選出されたマスターのPTPハブの時刻に他のPTPハブがスレーブとなって時刻同期することが可能となっている。
【0007】
マスターとなったPTPハブは、時刻同期を維持するために他のPTPハブに対して一定周期にPTPパケットを送信する。また、すべてのPTPハブは、オリジナル機能としてPTPハブ内部の状態情報(PTP情報)を一定時間ごとにPTP以外の周辺機器にPTP情報パケットとして通知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-174445
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
仮想LAN(VLAN)は、企業内ネットワーク(LAN)において、物理的な接続形態とは独立に端末の仮想的なグループを設定する。ここではLANスイッチと呼ばれる通信機器(ハブ:HUB)の機能を利用して端末の持つMACアドレスやIPアドレスなどの利用するプロトコルに応じてグループ化が行われる。これにより端末の物理的な位置にかかわらず、ネットワーク構成を変更でき、また端末を移動しても設定を変更する必要が無いなどのメリットがある。
【0010】
そして、PTPのVLANを使ったVLAN二重化の冗長化機能を持ったハブ(以下、PTPハブとする。)を使用することでVLAN二重化による冗長化が可能となる。このときPTPハブ間は二重化したルート内で条件の良いルートを選択して接続するルート切替機能を持っている。このようなPTPの時刻同期を仮想LANに適用した技術として特許文献1が公知となっている。
【0011】
しかしながら、PTPハブ間にVLAN二重化に対応できないハブ(PTP機能を有するもののVLAN二重化機能を持たないハブ/VLAN二重化の機能を持つが此方が想定するVLAN二重化による冗長化が十分に機能しないハブ)が存在すれば、時刻同期の処理に悪影響を与えるおそれがある。
【0012】
この場合に一方のルートが急激に悪化すれば、冗長化により他のルートへの切り替えが実行される。ところが、PTPハブ間の時刻同期精度が悪化している場合やPTPパケットが途中で転送されなくなる場合には、他のルートへの切り替えに相当な時間がかかったり、一方または両方のルートのPTP処理が実行できなくなるおそれがある。
【0013】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、冗長化されたVLANのルート異常を早期に検出し、適切な対処を図ることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の一態様は、時刻同期するマスター・スレーブ間を主従の経路に冗長化したネットワークの管理方式であって、
前記マスター・前記スレーブ間における往路と復路の伝送時間の平均値としての「Meanpath」を算出し、算出された前記「Meanpath」のマイナス状態が継続すればタイムスタンプの異常と判定し、
前記判定に応じて前記経路の主従を切り替えることを特徴としている。
【0015】
(2)本発明の他の態様は、時刻同期するマスター・スレーブ間を主従の経路に冗長化したネットワークの管理方法であって、
前記マスター・前記スレーブ間における往路と復路の伝送時間の平均値としての「Meanpath」を算出するステップと、
前記算出された前記「Meanpath」のマイナス状態が継続すればタイムスタンプの異常と判定するステップと、
前記判定に応じて前記経路の主従を切り替えるステップと、
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冗長化されたVLANのルート異常を早期に検出し、適切な対処を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】PTPハブのVLAN二重化接続(正常)例を示すネットワーク構成図、
図2図1のルートの一部に異常発生した状態図、
図3】VLAN二重化の接続を示す他のネットワーク構成図。
図4】PTPハブのVLAN二重化可能領域と不可能領域とが混在した状態図。
図5】本発明の実施形態に係る冗長化経路の管理方式の全体処理を示すフローチャート。
図6図5中のS09の詳細を示すフローチャート。
図7図5中のS10の詳細を示すフローチャート。
図8図7中のS37の詳細を示すフローチャート。
図9図8中のS47の詳細を示すフローチャート。
図10図6中のS28および図7中のS39の詳細を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る冗長化経路の管理方式(方法)の詳細を説明する。ここでは複数のPTPハブを使用したネットワーク、即ちVLAN二重化により冗長化ルートされたネットワークを想定し、各ルートの管理により異常発生に適切に対処する。
【0019】
図1に基づき説明すれば、PTPハブ1,2間はVLAN1,5により二重化されたルートを有し、VLAN1側をAルートと呼び、VLAN5側をBルートと呼ぶ。PTPハブ1,2間はAルート,Bルートにより冗長化され、いずれかのルートによりPTPの時刻同期が実行されている。
【0020】
このときPTPハブ1がマスター状態であり、PTPハブ2がスレーブ状態であり、AルートをメインVLAN(主経路)とする一方、BルートをサブVLAN(従経路)として動作している。図1中の「V2-M-Aroot」はメインルートとしてのAルートを示し、同「V5-S-Broot」はサブVLANとしてのBルートを示している。
【0021】
メインVLANは、主にPTP処理によるAルートの評価(以下、評価Aとする。)と時刻同期とを実行する。また、サブVLANは、主にPTP処理によるBルートの評価(以下、評価Bとする。)のみを実行する。ここでAルートの断線/評価Aが評価Bより悪化して切替条件を満たせば、BルートがメインVLANに切り替わり、かつAルートがサブVLANに切り替わる。
【0022】
PTPハブ1,2間に介在しているハブ(HUB)A~Dは、PTP機能を持っているが、VLAN二重化に対応できない。例えば「EtoE」接続時に透過できない/複数のドメインに対応できない/タイムスタンプ(Time Stamp:以下、「TS」とする。)処理方法が異なる/ステップ2のみ対応/機能異常・故障中などのハブとする。
【0023】
≪冗長化経路の管理方式(方法)の処理内容≫
(1)VLAN使用時冗長化処理
図5に基づき前記冗長化経路の管理方式のメインとなるVLAN使用時冗長化処理(S01~S11)を説明する。この処理中のS01~S8,S11は、マスターのPTP1とスレーブのPTP2の双方で実行され、
ここでは事前にユーザのコマンド入力により初期情報A~Cを設定し、初期設定ファイルFA1に書き込んでおくものとする。
A:ポート単位にマルチキャストからブロードキャストへの変更の要否を判定するための情報(以下、ポートのBC変換要否情報D1とする。)
B:時刻同期に関連する異常が発生したときに最終的に異常と判定を下すまでの異常判定の回数(以下、TS異常判定回数D2とする。)
C:前記判定時に最終的に正常と判定を下すまでの正常判定の回数(以下、TS正常判定回数D3とする。)
S01,S02:PTPハブ1,2の起動により処理が開始される。処理の開始時に初期設定が必要か否か確認される。この確認の結果、必要がなければ処理を終了する一方、必要があれば初期設定ファイルFA1からポートのBC変換要否情報D1・TS異常判定回数D2・TS正常判定回数D3の情報が読み込まれてセットされる(S02)。
【0024】
その後、従来のPTPハブの処理が実行され、前述のマスター選出処理によりPTPハブ1がマスターに選出される一方、PTPハブ2がスレーブとしてPTPハブ1に時刻同期する。このマスター状態・スレーブ状態のいずれかに遷移するまで必要に応じてS03~S08,S11の処理が実行される。マスター・スレーブへの状態遷移後にはS04~S11の処理が実行される。
【0025】
S03:異常カウンタ(異常判定の回数をカウント)D4,正常カウンタ(正常判定をカウント),切替ロックフラグF1その他の必要な情報を初期化する。
【0026】
S04~S06:本来のマルチキャストパケットだけでなく、ブロードキャストパケットも受信する必要があるか否かを確認するため、ポートのBC変換要否情報を確認する(S04)。確認の結果、必要があればS05に進んでブローキャストパケット受信用の処理を実行する(S05)一方、必要がなければS06に進んで従来のマルチキャストパケット受信用の処理を実行する(S06)。
【0027】
S07~S11:前記マスター選出処理の結果、マスター状態となっているか否かを確認する(S07)。確認の結果、マスター状態であればS09に進んでPTPパケット送信処理(マスター)を実行する。
【0028】
一方、マスター状態でなければ、S08に進んでスレーブ状態か否かを確認する。確認の結果、スレーブ状態であればS10のPTPパケット送信処理(スレーブ)を実行する。
【0029】
図1のネットワーク構成では、PTPハブ1がマスター状態なため、S09のPTPパケット送信処理を実行する。一方、PTPハブ2がスレーブ状態なため、S10のPTPパケット送信処理を実行する。なお、S08の確認の結果、スレーブ状態でなければ従来のPTP処理、即ち前記マスター選出処理などが実行される(S11)。
【0030】
(2)PTPパケット送信処理(マスター)
図6に基づきS09のPTPパケット送信処理の詳細を説明する。この処理は、マスターとなるPTPハブ1により実行される。
【0031】
S21:処理が開始されると、受信したパケットPがPTP処理リセット準備要求か否かを確認する。確認の結果、PTP処理リセット準備要求であればS22に進む一方、PTP処理リセット準備要求でなければS23に進む。
【0032】
S22:PTP処理をリセットするための準備フラグ(PTP処理リセット準備フラグF2)を有効設定する。ここでは前記フラグF2に「有効=1」をセットし、S29に進む。
【0033】
S23:受信したパケットPがPTP処理リセット開始要求か否かが確認される。確認の結果、PTP処理リセット開始要求であればS24に進む一方、PTP処理リセット開始要求でなければS26に進む。
【0034】
S24:PTP処理リセット準備フラグF2を確認し、該フラグF2が有効の場合にはS25に進む一方、無効の場合にはS29に進む。
【0035】
S25:従来と同様なPTPリセット処理を実行する。
【0036】
S26:パケット送信以外の処理は、従来のPTP処理を実行する。
【0037】
S27~S29:PTPパケットの送信が可能か否かを確認される(S27)。確認の結果、送信が可能であればS28に進む。
【0038】
S28では、本来のマルチキャスト送信をブロードキャスト送信に変換してPTPポートからPTPパケットの送信を実行する。一方、送信が可能でなければS29に進んで、従来のPTPタイマー処理を実行し、実行後に処理を終了する。
【0039】
(3)PTPパケット送信処理(スレーブ)
図7に基づきS10のPTPパケット送信処理の詳細を説明する。この処理は、スレーブとなるPTPハブ2により実行される。
【0040】
S31~S36:S21~S26と同様な処理が行われる。
【0041】
S37:TS異常時処理が行われる。
【0042】
S38~S40:S27~S29と同様な処理が行われる。
【0043】
(4)TS異常時処理
図8に基づきS37のTS異常時処理を説明する。ここではTS異常発生の判定に「Meanpath」を用いる。
【0044】
すなわち、マスター・スレーブ間における往路と復路の伝送時間の平均値を「Meanpath」と呼ぶ。この「Meanpath」の値は、通常マイナスになることはないが、系統によっては一時的に発生する可能がある。ただし、長時間継続する場合にはPTPハブ1,2間にTS異常を発生させる何らかの要因(PTPハブのTS処理の異常の場合もある。)が発生していると想定される。
【0045】
そのため、そのまま放置すると時刻同期が次第にずれ、数時間後には同期異常が発生し、また一定のずれが継続し続けるおそれがある。このような場合には、TS異常の発生したルートを使用することなく、ルートを切り替えて異常原因の早期対処が必要となる。
【0046】
S41:処理が開始されると、TS異常が発生しているか否かが確認される。具体的には「Meanpath」がマイナスとなっている場合にはTS異常の発生と確認される。この確認の結果、異常が発生していればS42に進む一方、異常が発生していなければS48に進む。
【0047】
S42,S43:まず、異常カウンタD4に「1」を加算する(S42)。この加算後の異常カウンタD4の数値が、TS異常判定回数D2の回数をオーバーしているか否を確認する(S43)。確認の結果、オーバーしていればS44に進む一方、オーバーしていなければ処理を終了する。
【0048】
S44~S47:判定対象ルート、即ちA,BルートのうちTS異常の発生したルートの切替ロックフラグF1に「有効=1」をセットとする(S44)。これにより判定対象ルートは最終的にTS異常が発生しているものと判定され、フラグF1の内容「有効=1」をPTP情報パケット(PTPハブ1,2間において一定周期で送信)に含めるなどの手段によりTS異常発生を外部の機器に通知する(S45)。
【0049】
また、判定対象ルートのマスター、即ちPTPハブ1よりも上位のPTPハブへリセット準備を通知する(S46)。この通知後にマスター/スレーブVLAN切替判定処理が実行される(S47)。
【0050】
S48:切替ロックフラグF1の有効/無効を確認する。確認の結果、有効であればS49に進む一方、無効であれば処理を終了する。
【0051】
S49,S50:正常カウンタD5へ「1」を加算する(S49)。この加算後の正常カウンタD5の数値が、TS正常判定回数D3をオーバーしているか否かを確認する(S50)。確認の結果、オーバーしていればS51に進む一方、オーバーしていなければそのまま処理を終了する。
【0052】
S51,S52:異常カウンタD4および正常カウンタD5をクリアし(S51)、切替ロックフラグに「無効=0」をセットする(S52)。これにより判定対象のルートは最終的に正常と判定され、その後に処理を終了する。
【0053】
(5)マスター/スレーブVLAN切替判定処理
図9に基づきS47のVLAN切替判定処理の詳細を説明する。
【0054】
S61:処理が開始されると、切替ロックフラグF1の情報とマスター収集データD6とスレーブ収集データD7とに基づきAルート評価値AD,Bルート評価値BDを取得する。このとき切替ロックフラグF1の情報「有効=1」の場合には、前記両評価値AD,BDの評価値を「0」とする。これを評価値の最小値とする。
【0055】
S62:Aルート評価値ADが、ルート評価許容評価値RDより小さいか否か確認する。確認の結果、小さければS63に進む一方、小さくなければ処理を終了する。このとき切替ロックフラグF1の情報「有効=1」の場合は、前述のように評価値が最小なため、前記許容評価値RDよりも小さくなる。
【0056】
S63,S64:「(スレーブ側のBルート評価値BD)―(マスター側のAルート評価値AD)」の差分を算出する(S63)。ここで算出された差分が切替判定閾値Sよりも大きいか否かを確認し(S64)、大きければS65に進む一方、大きくなければ処理を終了する。
【0057】
前記閾値Sとして、例えば両ルート評価値AD,BDが同等と想定すれば「0」の値を用いることができる。この場合にAルート評価値ADおよびBルート評価値BDが共に最小値「0」であれば、閾値を越えないのでルートを切り替えることなく処理を終了する一方、Bルート評価値が最小値「0」でなければ、閾値を越えるのでS65に進む。
【0058】
S65:マスター側のAルートのVLAN関連データ(VLAN情報D8,マスター収集データD6,マスター収集完了フラグF3など)と、スレーブ側のBルートのVLAN関連データ(VLAN情報D8,スレーブ収集データD7,スレーブ収集完了フラグF4など)を入れ替えられ、その後に処理を終了する。
【0059】
(5)BC変換送信処理
図10に基づきS28,S39のBC変換送信処理の詳細を説明する。
【0060】
S71:処理が開始されると、PTPパケットを送信するため、対象のPTPポートPoを順に選択する。
【0061】
S72:選択された対象のPTPポートPoが、ポート送信可能な正常状態であればS73に進む一方、正常状態でなければS77に進む。
【0062】
S73,S74:ポートのBC変換要否情報D1を参照して、選択された対象のPTPポートPoのBC変換が必要か否かを確認する。確認の結果、必要であればS75に進む一方、必要でなければ従来のPTP処理を実行して(S74)、S76に進む。
【0063】
S75,S76:本来のマルチキャストからブロードキャストに変更したPTPパケットを生成する(S75)。生成されたPTPパケットを選択された対象のPTPポートPoから送信する(S76)。
【0064】
S77:選択された対象ポートPoのすべてについてS71~S76の処理が終了したか否かが確認される。確認結果、終了していなければS71に戻って処理を再開する一方、終了していればBC変換送信処理を終了する。
(6)作用効果
前記冗長化経路の管理方式によれば、次の効果A~Cを得ることができる。
【0065】
A:すなわち、VLAN二重化による冗長化されたネットワーク構成において、従来はルート評価に時間を要していた。これに対して前記冗長化経路の管理方式によれば、時刻同期処理時の「Meanpathe」値が一定回数マイナスになればTS異常と検出する。
【0066】
したがって、マスター側のメインVLANのTS異常を早期に検出し、冗長化されたスレーブ側のサブVLANルートに迅速に切り替え、この点で適切な対処を採ることが可能となる。ただし、異常検出はメインVLAN側だけでなく、サブVLAN側でも行われるため(S63)、サブVLAN側の評価が低い場合には切替は行われない。
【0067】
B:また、VLAN二重化による冗長化ネットワークにVLAN二重化に対応できないハブが存在する場合、S28,S39のBC変換送信処理により正規のマルチキャスト送信をブロードキャスト送信に変更することができる。その結果、VLAN二重化に対応できないハブがスルーされ、この点PTPハブ1,2間でのPTP処理が可能となる。
【0068】
C:さらに前記BC変換送信処理は、VLAN二重化による冗長化されたネットワーク構成以外にも適用可能であり、管理対象外のため除外したいPTPハブが存在する場合などに回避策として利用することできる。なお、前記BC変換送信処理は、VLAN二重化に対応したハブとVLAN二重化に未対応のハブが混在したネットワーク構成であっても、問題なく使用することができる。
【0069】
≪実施例1≫
図2に基づき前記冗長化経路の管理方式の実施例1を説明する。ここでは図1に示すVLAN二重化接続のネットワーク構成中のハブAに問題(PTP処理の変更、機能異常・故障など)が発生し、PTPハブ2側の「Meanpath」値がマイナスとなり、TS異常が生じてPTP時刻同期の計算が正しくできなくなった事態を想定する。
【0070】
このときPTPハブ2は、「Meanpath」値がマイナスとなる状況をTS異常と検出し(S41)、異常カウンタD4に加算する(S42)。この状況が一定時間(時間は可変)継続する場合には、異常カウンタD4の値がTS異常判定回数D2をオーバーする(S43)。
【0071】
したがって、Aルートの切替ロックフラグF1がセットされ(S44)、Aルート評価値ADが最低値「0」に強制的に引き下げられる(S61)。その結果、S62~S64に従うことを条件にAルートとBルートとが切り替えられる。
【0072】
すなわち、「V2-M-Aroot」(Aルート)および「V5-S-Broot」(Bルート)を、「V5-M-Broot」(Bルート)および「V2-S-Aroot」(Aルート)に切り替える。
【0073】
このときPTP情報パケットを使ってAルートにTS異常が発生していることを外部に通知する(S45,S46)。その後もAルートは、PTPハブ2で評価され続けられるが、ハブAが故障から復帰してもBルートの断線時など切替条件(S61~S64)を満たさない限り、マスター側に復帰することができない。なお、ハブA復帰後の処置として、遠隔操作によりPTPハブ1またはPTPハブ2のみを再起動することも可能となっている。
【0074】
≪実施例2≫
図3に基づき前記冗長化経路の管理方式の実施例2を説明する。ここではPTPハブ1-1,1-2間は、マスター側のメインVLAN(V2-M-Aroot)と、スレーブ側のサブVLAN(V5-S-Broot)とに冗長化されている。
【0075】
また、PTPハブ2-1,2-2間は、マスター側のメインVLAN(V3-M-Aroot)と、スレーブ側のサブVLAN(V6-S-Broot)とに冗長化されている。
【0076】
このときPTPハブ1-1,1-2間はハブA,Bを経由している一方、PTPハブ2-1,2-2間はハブC,Dを経由している。
【0077】
このハブA~DがVLAN二重化に対応できないハブの場合、PTPハブ2-1,2-2間とPTPハブ2-1,2-2間の一方/双方が接続できない状態となる。
【0078】
このような場合、ハブA~Dと接続するPTPハブ1-1~2-2のポートをBC変換要(S73)とすれば、ハブA~D間はブロードキャストで送信されるため、PTP処理されずに転送される。これによりPTPハブが、PTPハブ2-1,2-2間・PTPハブ2-1,2-2間を送信できるようになる。
【0079】
≪実施例3≫
図4に基づき前記冗長化経路の管理方式の実施例3を説明する。ここでは領域AのPTPハブ1から領域B~Eに属するPTPハブ2~7にPTP接続するネットワーク構成を想定する。このとき領域A,C,Dの内部はPTPハブを使用しているものの、領域B,EについてはVLAN二重化による冗長化に対応できないハブが使用されている。
【0080】
このネットワーク構成によれば、通常は領域A,C間でしかPTP接続ができないものの、領域Bを通過するPTPハブ2,4のポートおよび領域Eを通過するPTPハブ5,7のポートをBC変換要(S73)とすれば、領域A,C,Dは正規のマルチキャストを使って送信される一方、領域B,Eはブロードキャストを使って送信される。
【0081】
したがって、領域AのPTPハブ1をマスターとしたPTP通信が、領域BのPTPハブ4・領域CのPTPハブ5・領域DのPTPハブ6・領域EのPTPハブ7との間で可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1~7,1-1,1-2,2-1,2-2…PTPハブ
A~D…ハブ
図1
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図10