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  • 特許-キートップ構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】キートップ構造
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/02 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G06F3/02 400
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020049027
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021149538
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】中村 周太
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-278280(JP,A)
【文献】特開2006-100017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された筐体と、この筐体に設けられた基板と、この基板に実装されると共に前記貫通孔の中心線上に配置された押しボタンスイッチと、この押しボタンスイッチの押し方向上で前記筐体に移動可能に設けられた棒状のキートップと、前記筐体に設けられ前記キートップの移動方向上に前記キートップの外径よりも小さい径の小孔が形成された孔あき板と、を備えたキートップ構造であって、
前記キートップには、このキートップの側面から外径方向に皿状に広がる皿部が設けられ、
前記筐体は、前記貫通孔の縁から前記押しボタンスイッチに向かって延びていると共に前記キートップを案内する案内部を有し、
この案内部の長さは、
前記皿部が前記案内部の端部に当接することで、前記キートップの前記小孔側の端部が前記小孔から所定の距離だけ離れた位置に移動が制限される長さであり、且つ、
指で前記小孔の周辺が押されたときに前記孔あき板が撓む撓み量よりも、前記小孔からの所定の距離の方が大きくなるような長さに設定されていることを特徴とするキートップ構造。
【請求項2】
前記皿部には、前記筐体に設けられ弾性力を有して前記キートップを所定の位置に付勢する弾性ヒンジ部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のキートップ構造。
【請求項3】
前記皿部は、前記皿部の外縁から前記小孔側に延びる筒状部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキートップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リセットボタン等に使用されるキートップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の中にはリセットボタンを有するものがある。一部のリセットボタンは、指等による誤操作を防ぐために、ボールペンのペン先等でなければ押せないように小さく形成されている。このような細い突起で操作するボタン構造の従来技術として、特許文献に開示されたボタン構造がある。
【0003】
特許文献1に示されるボタン構造は、筐体に押し込み可能に設けられたプッシュキーのキートップの表面に、ペン先の操作に感応するペン入力スイッチが設けられてなる。キートップの中央部にペン先挿し込み用の小さな凹部が形成されており、この凹部にペン先を挿し込むことでペン入力スイッチが操作される。ペン入力スイッチは、いわゆるキートップの構造となっており、筐体の表面に対して垂直方向に移動可能に設けられている。ペン入力スイッチの奥には押しボタンスイッチが配置され、ペン先を凹部に挿し込んでペン入力スイッチを押すことで押しボタンスイッチが押される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-19919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような小さな凹部や孔等にペン先のような細い突起を挿し込んで操作するボタン構造として、一般的に図4の(a)に示すようなリセットスイッチとしてのキートップ構造がある。図4の(a)のキートップ構造の電気機器100は、貫通孔102が形成された筐体101と、貫通孔102から下方に延びた筒状の案内部103と、この案内部103に移動可能に設けられたキートップ104と、筐体101に設けられた基板105と、この基板105に設けられキートップ104の下方に配置された押しボタンスイッチ106と、を備えている。さらに、筐体101の表面には小さな径の小孔107が形成された銘板108が設けられており、この小孔107にペン先を挿し込むことで、キートップ104を介して押しボタンスイッチ106が押される。
【0006】
しかし、図4の(a)のキートップ構造の電気機器100では、銘板108の小孔107から押しボタンスイッチ106までの側面距離が短く、帯電した人が電気機器100に接触あるいは充分に接近した時に発生する静電気放電に対する耐性が低く、改善の余地があった。そこで、静電気放電に対する耐性を高くすることができるキートップ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明では、貫通孔が形成された筐体と、この筐体に設けられた基板と、この基板に実装されると共に前記貫通孔の中心線上に配置された押しボタンスイッチと、この押しボタンスイッチの押し方向上で前記筐体に移動可能に設けられた棒状のキートップと、前記筐体に設けられ前記キートップの移動方向上に前記キートップの外径よりも小さい径の小孔が形成された孔あき板と、を備えたキートップ構造であって、
前記キートップには、このキートップの側面から外径方向に皿状に広がる皿部が設けられ、
前記筐体は、前記貫通孔の縁から前記押しボタンスイッチに向かって延びていると共に前記キートップを案内する案内部を有し、
この案内部の長さは、
前記皿部が前記案内部の端部に当接することで、前記キートップの前記小孔側の端部が前記小孔から所定の距離だけ離れた位置に移動が制限される長さであり、且つ、
指で前記小孔の周辺が押されたときに前記孔あき板が撓む撓み量よりも、前記小孔からの所定の距離の方が大きくなるような長さに設定されていることを特徴とする
【0008】
請求項2に係る発明では、好ましくは、前記皿部には、前記筐体に設けられ弾性力を有して前記キートップを所定の位置に付勢する弾性ヒンジ部が設けられている。
【0010】
請求項3に係る発明では、好ましくは、前記皿部は、前記皿部の外縁から前記小孔側に延びる筒状部を備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、キートップ構造は、貫通孔が形成された筐体と、基板と、この基板に実装されると共に貫通孔の中心線上に配置された押しボタンスイッチと、筐体に移動可能に設けられた棒状のキートップと、小孔が形成された孔あき板と、を備える。キートップには、このキートップの側面から外径方向に皿状に広がる皿部が設けられているので、孔あき板の小孔から押しボタンスイッチまでの側面距離を皿部の分だけ長くすることができる。このため、帯電した人が電気機器に接触あるいは充分に接近した時に発生する静電気放電に対する耐性を高くすることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、皿部には、筐体に設けられ弾性力を有してキートップを所定の位置に付勢する弾性ヒンジ部が設けられているので、電気機器を振った時などでもキートップが移動することなく部品同士の接触を抑制でき、異音の発生を防止することができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、筐体は、貫通孔の縁から押しボタンスイッチに向かって延びていると共にキートップを案内する案内部を有する。この案内部の長さは、皿部が案内部の端部に当接することで、キートップの小孔側の端部が小孔から所定の距離だけ離れた位置に移動が制限される長さであり、且つ、指で小孔の周辺が押されたときに孔あき板が撓む撓み量よりも、小孔からの所定の距離の方が大きくなるような長さに設定されている。このため、指で小孔の周辺を押しても撓んだ孔あき板がキートップに届かず、キートップが押しボタンスイッチを押すことがないので、リセットボタンとしての機能を果たすことができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、皿部は、皿部の外縁から小孔側に延びる筒状部を備えているので、孔あき板の小孔から押しボタンスイッチまでの距離をより長くでき、より静電気放電に対する耐性を高くすることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例に係る電気機器を表側から見た状態の分解斜視図である。
図2】実施例に係る電気機器を裏側から見た状態の分解斜視図である。
図3】(a)は実施例に係る電気機器を裏側から見た状態の斜視図である。(b)は(a)のb部拡大図である。
図4】(a)は比較例のキートップ構造の要部断面図である。(b)は実施例のキートップ構造の要部断面図である。
図5】実施例のキートップ構造の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。尚、図面は便宜上、模式的に示している。
【実施例
【0017】
本発明の実施形態について説明する。図1図2に示されるように、キートップ構造は電気機器10に使用されている。キートップ構造は、貫通孔25が形成された筐体20と、この筐体20と係合される本体部(不図示)に設けられた基板11と、この基板11に実装されると共に貫通孔25の中心線上に配置された押しボタンスイッチ12と、この押しボタンスイッチ12の押し方向上で筐体20に移動可能に設けられた棒状のキートップ40と、筐体20に設けられキートップ40の移動方向上にキートップ40の外径よりも小さい径の小孔31が形成された孔あき板30と、を備えている。
【0018】
電気機器10は、本体部及び蓋部からなる箱状の筐体20と、この筐体20に収納される基板11と、筐体20に取り付けられる孔あき板30と、筐体20に設けられるキートップ40と、を主な構成要素としている。
【0019】
筐体20は樹脂製であり、このうち蓋部となる部分は、爪部21を備えており、この爪部21が本体部(不図示)に係合され全体として箱状となる。尚、蓋部となる筐体20の本体部への結合は爪部21によらず、締結部材等で結合してもよい。蓋部となる筐体20(以下、単に筐体という)は、表面22及び裏面23を有し、表面22に凹状に形成されている取付部24に孔あき板30が嵌め込まれている。
【0020】
筐体20は、取付部24内に貫通孔25が形成され、この貫通孔25の縁から押しボタンスイッチ12に向かって延びていると共にキートップ40を案内する案内部26を有している。基板11は締結部材(不図示)によって筐体20に締結されている。
【0021】
図2図3の(a)、(b)に示されるように、筐体20の裏面23には、キートップ40を固定するためのボス27と、キートップ40を位置決めするための位置決めピン28と、後述する弾性ヒンジ部43の変形を防止する支持ピン29が形成されている。位置決めピン28は、案内部26とボス27の間に形成されている。支持ピン29は、案内部26を囲うように案内部26の周縁に形成されている。
【0022】
図3の(a)、(b)、図4の(b)に示されるように、キートップ40は、円筒状の案内部26の内部を案内部26の軸線に沿って移動可能に設けられている。キートップ40は、このキートップ40の長手方向中間部の側面から外径方向に皿状(ドーナツ状)に広がる皿部41と、この皿部41の外縁から小孔31側に延びる筒状部42と、を備えている。なお筒状部42は皿部41の一部を形成しており、この筒状部42には、筐体20に設けられ弾性力を有してキートップ40を所定の位置に付勢する弾性ヒンジ部43が設けられている。
【0023】
詳細には、弾性ヒンジ部43の一端には固定部44が設けられ、この固定部44が締結部材13により、筐体20のボス27に締結されている。また、固定部44の近傍には、位置決め孔45が形成され、この位置決め孔45には筐体20の位置決めピン28が嵌められる。
【0024】
キートップ40は、案内部26に収納されている円柱状の基部40bと、皿部41よりも先端側の平面視で十字状に形成され押しボタンスイッチ12を押す先端部40aと、を備えている。換言すれば、皿部41は、基部40bと先端部40aとの境界に形成されている、ということができる。
【0025】
次に比較例のキートップ構造の作用を説明する。
【0026】
図4(a)に示されるように、比較例のキートップ構造の電気機器100は、キートップ104が略円柱状であり、その一端が銘板108の近傍に位置し、その他端が押しボタンスイッチ106に接している。比較例のキートップ構造は、銘板108の小孔107から押しボタンスイッチ106までの側面距離が短く、帯電した人が電気機器100に接触あるいは充分に接近した時に矢印(1)のように発生する静電気放電に対する耐性が低い。
【0027】
また、キートップ104が案内部103にフリー状態でセットされているため、電気機器100を振った時などに部品同士が接触して異音が発生することがある。また、銘板108の小孔107周辺を指で押したとき、指に押された銘板108が撓み、この撓みによってキートップ104が押され、キートップ104の他端により押しボタンスイッチ106が押されてしまう。すなわち、本来、ペン先などの細い突起でリセットすべきところ、誤って指でリセットされる虞がある。
【0028】
次に実施例のキートップ構造の作用を説明する。
【0029】
図4(b)に示されるように、実施例のキートップ構造の電気機器10は、キートップ40に径方向に延びている皿部41と、押しボタンスイッチ12を基準として皿部41の先端から離れる方向に延びる筒状部42と、が設けられている。そのため、矢印(2)によって示すように、孔あき板30の小孔31から押しボタンスイッチ12までの側面距離が図4の(a)に比較して長い。このため、帯電した人が電気機器10に接触あるいは充分に接近した時に矢印(2)のように発生する静電気放電に対する耐性が高い。
【0030】
また、キートップ40は弾性ヒンジ部43により径方向への移動が規制されると共に、軸線方向への移動は許容されている。このため、電気機器10を振った時などでも部品同士が接触して異音が発生することがない。
【0031】
図5に示されるように、案内部26の長さは、皿部41が案内部26の端部に当接することで、キートップ40の小孔31側の端部が小孔31から所定の距離L1だけ離れた位置に移動が制限される長さである。さらに、指15で孔あき板30の小孔31周辺が押されたときに孔あき板30が撓む撓み量よりも、小孔31からの所定の距離L1の方が大きくなるような長さに設定されている。このため、本来、ペン先14などの細い突起でリセットできるうえで、誤って指15でリセットされる虞がない。
【0032】
次に、本発明の効果を説明する。
【0033】
以上に述べたように、キートップ40には、このキートップ40の側面から外径方向に皿状に広がる皿部41が設けられているので、孔あき板30の小孔31から押しボタンスイッチ12までの側面距離を長くすることができる。このため、帯電した人が電気機器10に接触あるいは充分に接近した時に発生する静電気放電に対する耐性を高くすることができる。
【0034】
さらに、皿部41には、筐体20に設けられ弾性力を有してキートップ40を所定の位置に付勢する弾性ヒンジ部43が設けられているので、電気機器10を振った時などでもキートップ40が移動することなく部品同士の接触を抑制でき、異音の発生を防止することができる。
【0035】
さらに、案内部26の長さは、皿部41が案内部26の端部に当接することで、キートップ40の小孔31側の端部が小孔31から所定の距離L1だけ離れた位置に移動が制限される長さであり、且つ、指15で小孔31周辺が押されたときに孔あき板30が撓む撓み量よりも、小孔31からの所定の距離L1の方が大きくなるような長さに設定されている。このため、指15で小孔31周辺を押しても撓んだ孔あき板30がキートップ40に届かず、キートップ40が押しボタンスイッチ12を押すことがないので、リセットボタンとしての機能を果たすことができる。
【0036】
さらに、皿部41は、皿部41の外縁から小孔31側に延びる筒状部42を備えているので、孔あき板30の小孔31から押しボタンスイッチ12までの距離をより長くでき、より静電気放電に対する耐性を高くすることができる。
【0037】
尚、実施例では、電気機器10の用途を限定していないが、例えば中継接続装置、スイッチ装置、制御装置等としてもよい。
【0038】
また、実施例では、電気機器10が図面上に縦向きとしたが、これに限定されず、横向き、斜め向きなど、電気機器10の向きは問わない。
【0039】
また、実施例では、皿部41の縁から筒状部42が延びるものとしたが、これに限定されず、筒状部42の部分を斜めに傾斜して広がる形状にしてもよく、さらには筒状部42がなくてもよい。
【0040】
また、実施例では、弾性ヒンジ部43を筒状部42の小孔31側の端部に設けたが、これに限定されず、弾性ヒンジ部43を筒状部42の基端側に設けてもよい。
【0041】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のキートップ構造は、リセットボタン等を有する電気機器に好適である。
【符号の説明】
【0043】
10…電気機器、11…基板、12…押しボタンスイッチ、20…筐体、25…貫通孔、26…案内部、30…孔あき板、31…小孔、40…キートップ、41…皿部、42…筒状部、43…弾性ヒンジ部、L1…小孔から所定の距離だけ離れた長さ。
図1
図2
図3
図4
図5