(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】受電電圧が変更可能な受変電設備および受電電圧変更方法
(51)【国際特許分類】
H02B 5/00 20060101AFI20231108BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02B5/00
H02J3/00 160
(21)【出願番号】P 2020056002
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】冨手 直人
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】本田 智之
(72)【発明者】
【氏名】藍 譲二郎
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-023958(JP,A)
【文献】特開昭60-208814(JP,A)
【文献】特開2002-034110(JP,A)
【文献】特開平07-264736(JP,A)
【文献】特開2007-037329(JP,A)
【文献】特開2004-312989(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 29/00 - 38/12
H01F 38/16
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回線を備える受変電設備であって、各回線は、
各々が異なる受電電圧に対応する複数の入力端、および、配電電圧を出力する出力端を有する変圧器と、
前記複数の入力端よりも上流側に配置され、異なる受電電圧で作動可能な上流側開閉設備と、
を備え、
前記複数の回線のそれぞれは、別個の前記変圧器および前記上流側開閉設備を有する、
受変電設備。
【請求項2】
請求項1に記載の受変電設備の受電電圧を変更する方法であって、
前記複数の回線のうちの一部の回線の受電電圧を変更する第1の変更ステップと、
前記第1の変更ステップの後に、前記複数の回線のうちの残りの回線の受電電圧を変更する第2の変更ステップと、
を含み、
前記第1の変更ステップは、
前
記一部の回線の上流側開閉設備を開くステップと、
前記一部の回線の上流側開閉設備と接続されている変圧器の入力端を、変更後の受電電圧に対応する入力端に変更するステップと、
前記一部の回線の上流側開閉設備の入力電圧を、変更後の受電電圧に切り替えるステップと、
前記一部の回線の上流側開閉設備を閉じるステップと、
を含み、
前記第2の変更ステップは、
前
記残りの回線の上流側開閉設備を開くステップと、
前記残りの回線の上流側開閉設備と接続されている変圧器の入力端を、変更後の受電電圧に対応する入力端に変更するステップと、
前記残りの回線の上流側開閉設備の入力電圧を、変更後の受電電圧に切り替えるステップと、
を含む、
方法。
【請求項3】
複数の回線を備える受変電設備の受電電圧を変更する方法であって、
各回線は、
各々が異なる受電電圧に対応する複数の入力端、および、配電電圧を出力する出力端を有する変圧器と、
前記複数の入力端よりも上流側に配置され、異なる受電電圧で作動可能な上流側開閉設備と、
を備え、
前記方法は、
前記複数の回線のうちの一部の回線の上流側開閉設備を開くステップと、
前記一部の回線の上流側開閉設備と接続されている変圧器の入力端を、変更後の受電電圧に対応する入力端に変更するステップと、
前記一部の回線の上流側開閉設備の入力電圧を、変更後の受電電圧に切り替えるステップと、
前記一部の回線の上流側開閉設備を閉じるステップと、
前記複数の回線のうちの残りの回線の上流側開閉設備を開くステップと、
前記残りの回線の上流側開閉設備と接続されている変圧器の入力端を、変更後の受電電圧に対応する入力端に変更するステップと、
前記残りの回線の上流側開閉設備の入力電圧を、変更後の受電電圧に切り替えるステップと、
を含み、
前記方法は、
前記一部の回線の上流側開閉設備が開いているときに、前記一部の回線のうちの1つの回線の上流側開閉設備と変圧器との間に、VCTを接続するステップと、
前記残りの回線の上流側開閉設備が開いているときに、前記残りの回線に接続されているVCTを除去するステップと、
をさらに含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受変電設備、変圧器および受電電圧の変更方法に関し、特に異なる受電電圧で受電可能な変圧器、該変圧器を有する受変電設備、および該受変電設備の受電電圧を変更する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の需要家が、一般送配電事業者による送電電力を受電して所望の配電電圧に変換して構内に配電するに際し、需要家は、一般送配電事業者の送電電圧と同一の受電電圧で受電可能な受変電設備を用意する必要がある。
図6に一般的な受変電設備90の構成を示す。
【0003】
受変電設備90は、本線と予備線の2本の送電線94の各々から電力を受電し、変圧器92で受電電圧から配電電圧に降圧して、構内に配電するための配電設備であるスイッチギア93に電力を供給する。送電電圧は154kV、66kV、6kVなど複数の種類があるため、需要家は、開閉器91や変圧器92などの受変電設備90の各機器も受電電圧に対応したものを用意する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各送電電圧には対応する電力容量が設定されており、需要家が現在の受電電圧に対応する電力容量を超える電力量を所望する場合には、より高い受電電圧に変更する必要がある。また、需要家の近郊に所望する送電電圧の送電系統が設置されていない場合には、送電系統の設置を待って受電電圧を変更する必要がある。
【0005】
このように、一般送配電事業者の送電電圧が変更されるときには、需要家の受電電圧も変更する必要があり、これには受変電設備の変更を伴う。しかしながら、受変電設備90の変圧器92の変圧比は機器製作後に変更することができない。そのため、需要家は新たに受変電設備を設置する必要があり、莫大な工事費用や時間が発生してしまう。工事を行っている期間は、構内に配電するためのスイッチギア93の電力供給を止めるか、別の受変電設備から電力供給を行う必要があった。また、受変電設備は30年以上使用されることが多いが、新たな受変電設備で受電を開始した後は、従前の受変電設備は不使用の遊休設備となるか、撤去されることになり撤去される場合はさらに除却費用が発生してしまう。
【0006】
このため、受電電圧が変更可能な変圧器や受変電設備が求められていた。また、受変電設備全体の遮断期間を短く抑えながら、受電電圧の変更が可能な方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、各々が異なる受電電圧に対応する複数の入力端(21、23)と、配電電圧を出力する出力端(22)とを有する変圧器(112、122、212、222)や、複数の回線(100、200)を備える受変電設備(10)であって、各回線は、各々が異なる受電電圧に対応する複数の入力端(21、23)、および、配電電圧を出力する出力端(22)を有する変圧器(112、122、212、222)と、複数の入力端よりも上流側に配置され、異なる受電電圧で作動可能な上流側開閉設備と、を備える、受変電設備(10)により解決することができる。
【0008】
すなわち、異なる受電電圧に対応する複数の入力端を有する変圧器を用いることで、配線を変更するだけで変圧比を変更することが可能となるため、受電電圧を変更しても変圧器を交換する必要がない。また、複数の受電電圧で作動可能な上流側開閉設備を用いることで、受電電圧を変更しても上流側開閉設備をそのまま使用することができる。このように、複数の受電電圧に対応可能な受変電設備を採用することで、一般送配電事業者の送電電圧の変更により需要者の受変電設備の受電電圧を変更することが必要となった場合でも、既存の受変電設備をそのまま利用することが可能となる。
ここで、変圧器の「複数の入力端よりも上流側」とは、電力回路上において、変圧器の複数の入力端よりも回線の入力側に位置することを意味する。また、「開閉設備」とは、開閉器、遮断器などのように、電力回路の接続と遮断とを行う機能を有する設備を意味する。したがって、「上流側開閉設備」とは、変圧器の複数の入力端と回線の入力端との間の電力回路上に配置され、当該電力回路の接続と遮断とを行う機能を有する設備を意味する。
【0009】
また、上記課題は、上述した受電電圧に対応可能な受変電設備(10)の受電電圧を変更する方法(40)であって、複数の回線(100、200)のうちの一部の回線(200)の上流側開閉設備を開くステップ(51)と、一部の回線(200)の上流側開閉設備と接続されている変圧器(212、222)の入力端(23)を、変更後の受電電圧に対応する入力端(21)に変更するステップ(52)と、一部の回線(200)の上流側開閉設備の入力電圧を、変更後の受電電圧に切り替えるステップ(55)と、一部の回線(200)の上流側開閉設備を閉じるステップ(56)と、複数の回線(100、200)のうちの残りの回線(100)の上流側開閉設備を開くステップ(61)と、残りの回線(100)の上流側開閉設備と接続されている変圧器(112、122)の入力端(23)を、変更後の受電電圧に対応する入力端(21)に変更するステップと、残りの回線(100)の上流側開閉設備の入力電圧を、変更後の受電電圧に切り替えるステップ(62)とを含む、方法によっても解決することができる。
【0010】
すなわち、受変電設備は信頼性向上や、回路の故障時に受変電設備からの電力供給が止まって停電となることが無いように、複数の回線を有するが、回線ごとに受電電圧を変更することにより、受変電設備全体を遮断する期間を短期間に抑えながら、受電電圧の変更が可能となる。
ここで、「上流側開閉設備を開く」とは、回線の入力端と変圧器の入力端との間の回路を遮断するように、上流側開閉設備を動作することを意味する。したがって、上流側開閉設備が複数の開閉設備を含む場合には、少なくとも1つ以上の開閉設備を開いて回線の入力端と変圧器の入力端との間の回路を遮断してもよく、必ずしも全ての開閉設備を開く必要はない。
一方、「上流側開閉設備を閉じる」とは、回線の入力端と変圧器の入力端との間の回路を接続するように、上流側開閉設備を動作することを意味する。したがって、回線の入力端と変圧器の入力端との間に並列して複数の電力経路がある場合には、少なくとも1つの経路上にある開閉設備を閉じればよく、必ずしも複数の電力経路にある全ての開閉設備を閉じる必要はない。
【0011】
また、上記方法は、一部の回線(200)の上流側開閉設備が開いているときに、一部の回線(200)のうちの1つの回線の上流側開閉設備と変圧器(212、222)との間に、VCT(205)を接続するステップ(53)と、残りの回線(100)の上流側開閉設備が開いているときに、残りの回線(100)に接続されているVCT(105)を除去するステップ(63)とをさらに含むことが望ましい。
【0012】
VCTは、受変電設備に1台だけ、すなわち、複数の回線のうち実際に受変電を行っているアクティブな回線のみに設置することが望ましい。回線単位で受電電圧の変更を行うことから、アクティブな回線の変更にあわせてVCTも変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る受変電設備10の概略構成図である。
【
図2】本発明に係る変圧器112、122、212、222の概略構成図である。
【
図3a】本発明に係る受電電圧を変更する方法の状態図である。
【
図3b】本発明に係る受電電圧を変更する方法の状態図である。
【
図3c】本発明に係る受電電圧を変更する方法の状態図である。
【
図4】本発明に係る受電電圧を変更する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の実施態様である受変電設備10の概略構成図を
図1に示す。受変電設備10は、154kVと66kVの異なる2つの送電電圧を受電可能で、受電電圧を22kVの配電電圧にヘ変換して需要家の配電装置に供給することが可能な受変電設備である。
【0015】
受変電設備10は、第1回線100と第2回線200の2つの回線を備え、第1回線100は送電線11、第2回線200は送電線12に接続されている。各回線100、200は、送電線11、12からの電力を受電する入力端131、231と、入力端131、231に接続された開閉器101、201と、開閉器101、201の出力側に並列に接続された2つの変圧器112、122、212、222とを備える。変圧器112、122、212、222の出力は、各回線100、200の出力端115、125、215、225を介して、スイッチギア13などの需要家の配電装置に接続することができる。
【0016】
図1の例では、第1回線100が常用回線であるため、第1回線100の出力端115がスイッチギア13に接続され、また、開閉器101と変圧器112、122との間にVCT105が設置されている。2つの回線100、200の間は、VCT105の入力側と出力側にそれぞれ連絡線が設置されている。入力側の連絡線の第1回線100側には開閉器103が、第2回線200側には開閉器203が接続されている。また、出力側の連絡線の第1回線100側には開閉器104が、第2回線200側には開閉器204がそれぞれ接続されている。さらに、VCT105の入力側には、連絡線との分岐点を挟んで、開閉器106、107がVCT105と直列に配置され、VCT105の出力側には、開閉器108が配置されている。第1回線100の開閉器106、107、108と対応する第2回線200の位置にも、開閉器206、207、208が配置されている。
【0017】
開閉器101、201は、送電線11、12との接続および遮断を行う開閉器である。開閉器101、201を開じると、送電線11、12と回線100、200とが接続され、開くと遮断される。
図1に示す例では、常用回線である第1回線の開閉器101が閉じて送電線11と接続され、第1回線100がアクティブとなっている。一方、第2回線200は予備回線であるため、第2回線200の開閉器201は開いて送電線12と遮断されていてもよく、その場合には第2回線200は非アクティブとなる。なお、予備回線である第2回線から給電する場合には、開閉器201を閉じて送電線12と接続し、第2回線200をアクティブにする。一方、第1回線100の開閉器101は開いて送電線11と遮断し、第1回線100を非アクティブにする。
【0018】
開閉器101、201や開閉器106、107、108、206、207、208は、154kVまで交流電力の開閉動作ができるように設計されている。このため、開閉器101、201は、66kVと154kVのいずれの受電電圧でも作動可能である。このように、異なる複数のレベルの受電電圧のうち最大の受電電圧で作動可能な開閉器を利用することにより、最大の受電電圧より小さな異なる複数の受電電圧に対応することが可能となる。
【0019】
図2に変圧器112、122、212、222の概略構成を示す。各変圧器112、122、212、222は、各々が異なる受電電圧に対応する2つの入力端21、23と、配電電圧を出力する1つの出力端22とを有する。より具体的には、入力端21は154kVの受電電圧を入力する入力端であり、入力端23は66kVの受電電圧を入力する入力端である。送電線11、12の送電電圧に基づいて2つの入力端21、23のいずれかに選択的に受電電力を入力する。いずれの入力端21、23に入力された受電電力も、22kVの配電電圧に変圧され、出力端22から出力される。
【0020】
連絡用開閉器103、104、203、204は、一方の回線で受電した電力を一時的に他方の回線に流して変圧するときに、連絡線を導通させるための開閉器であり、開閉器103および203が閉じるとVCT105の入力側の連絡線が導通し、開閉器104および204が閉じるとVCT105の出力側の連絡線が導通する。
【0021】
VCT105は、常用回線を流れる電力量を測定するための電力量計を接続するための計器用変成器である。VCT105は、受変電設備に1台だけ、すなわち、複数の回線のうち実際に受変電を行っているアクティブな回線のみに設置することが望ましい。第1回線100に設置されているVCT105は、66kVの受電電圧に対応している。
【0022】
VCT105や変圧器112、122、212、222の入力側と出力側には、短絡事故などのよる過剰電流から、これらの機器を保護するために、遮断器が設置されている。すなわち、VCT105の入力側には遮断器102が、VCT105と第1回線100の2つの変圧器112、122との間にはそれぞれ遮断器111、121が、変圧器112、122の出力側にはそれぞれ遮断器113、123が設置されている。
【0023】
図1に示す例では、予備回線である第2回線200にはVCTが設置されていないが、第2回線200を利用する際にVCTを取り付け可能なように、第1回線100の遮断器102、111、121と対応する箇所に、それぞれ遮断器202、211、221が設置されている。第2回線200に利用する場合には、開閉器207と開閉器208との間にVCTを接続する。また、変圧器212、222の出力側にはそれぞれ遮断器213、223が設置されている。
【0024】
さらに、各回線100、200の出力端115、125、215、225にも、過剰電流からスイッチギア13などの需要家の配電装置を保護するための遮断器114、124、214、224が設置されている。遮断器102、111、121、202、211、221は、いずれも66kVと154kVのいずれの受電電圧でも作動可能なように設計されている。
上述した開閉器や遮断器は、本発明における「開閉設備」に相当する。また、受変電設備10においては、変圧器112、122、212、222よりも電力回路上の上流に位置する、開閉器101、103、104、106、107、108、201、203、204、206、207、208や、遮断器102、111、121、202、211、221は、本発明における「上流側開閉設備」に相当する。
【0025】
以上で説明したように、異なる受電電圧に対応する複数の入力端を有する変圧器を用いることで、配線を変更するだけで変圧比を変更することが可能となるため、受電電圧を変更しても変圧器を交換する必要がない。また、複数の受電電圧で作動可能な上流側開閉設備を用いることで、受電電圧を変更しても上流側開閉設備をそのまま使用することができる。このように、複数の受電電圧に対応可能な受変電設備を採用することで、一般送配電事業者の送電電圧の変更により需要者の受変電設備の受電電圧を変更することが必要となった場合でも、既存の受変電設備をそのまま利用することが可能となる。
【0026】
次に、本願発明に係る受電電圧を変更する方法について、受変電設備10の受電電圧を66kVから154kVに変更する方法40を例にとって、
図3a~cの状態図および
図4のフローチャートを参照しながら説明を行う。方法40は、第2回線200側の変更工程50と、第1回線100側の変更工程60を有する。なお、
図3a~cの状態図では、アクティブな状態を実線で、非アクティブな状態を破線で示している。
【0027】
変更前の初期状態では、各送電線11、12には66kVの電力が流れており、受変電設備10は、第1回線100を利用して66kVの受電電圧を22kVの配電電圧に変換して、需要家の配電設備であるスイッチギア13に供給している。変圧器112、122、212、222は、いずれも入力端23から66kVの電力が入力されている。
【0028】
はじめに、第2回線200の上流側開閉設備を開いて、第2回線200を送電線12から遮断する(ステップ51)。具体的には、開閉器201、206、207、208および遮断器202、211、221を開いて、第2回線200を送電線12から遮断する。このときの状態を
図3aに示す。
【0029】
次に、第2回線200の上流側開閉設備と接続されている2つの変圧器212、222の入力を、66kV用の入力端23から、154kV用の入力端21に変更する(ステップ52)。より具体的には、遮断器211、221と変圧器212、222の入力端23とを接続してるケーブルまたは架線を、入力端21に切り替える。この切替により、第2回線200の開閉器201、206、207、208および遮断器202、211、221と接続されている変圧器212、222の入力端23が、変更後の受電電圧154kVに対応する入力端21に変更される。
【0030】
また、154kV用のVCT205を、上流側開閉設備と変圧器との間に接続する。具体的には、VCT205を、開閉器207と開閉器208との間に接続する(ステップ53)。これにより、第2回線200を流れる電力は全てVCT205を流れることになる。ただし、この時点では第2回線200は送電線12から遮断されているため、電流は流れていない。
【0031】
さらに、受変電設備10の出力を、第1回線100の出力端115から、第2回線200の出力端215に変更する(ステップ54)。より具体的には、出力端115とスイッチギア13とを接続しているケーブルを取り外し、出力端215とスイッチギア13とを接続する。変更後の状態を
図3bに示す。ケーブルの接続変更に代えて、出力端115、215の出力をスイッチギア13に開閉器を介して接続しておき、出力端115に接続された開閉器を開いて、出力端215に接続された開閉器を閉じることにより、受変電設備10の出力端の変更を行ってもよい。さらに、
図5のように、別のスイッチギア14を予め出力端215に接続しておき、遮断器114とスイッチギア13をオフにして、遮断器214とスイッチギア14をオンにすることにより、切替をおこなってもよい。受変電設備10の出力端の変更時には、受変電設備10全体を停止する必要がある。
【0032】
上流側開閉設備である開閉器201、206、207、208や、連絡用開閉器203、204、遮断器202、211、221は、66kVおよび154kVのいずれの受電電圧でも作動可能であるため、機器自体を取り替える必要ないが、制御設定などを必要に応じて154kV向けに切り替える。
【0033】
次に、第2回線200の上流側開閉設備の入力電圧を、変更後の受電電圧である154kVに変更する(ステップ55)。具体的には、開閉器201の入力電圧を、変更後の受電電圧である154kVに変更する。この変更は、第2回線200の入力端231に接続されている送電線12の送電電圧を154kVに変更することにより実施してもよいし、第2回線200の入力を、送電電圧66kVの送電線から、154kVの送電線に切り替えることにより実施してもよい。この時点では、第1回線100の受電電圧(66kV)と、第2回線200の受電電圧(154kV)とが異なっている。
【0034】
その後、第2回線200の上流側開閉設備を閉じる(ステップ56)。具体的には、開閉器201、206、207、208および遮断器202、211、221を閉じる。開閉器201、206、207、208および遮断器202、211、221の閉鎖により、第2回線200がアクティブな状態になり、受変電設備10は、送電線12から受電電圧154kVの交流電力を受電し、配電電圧22kVの交流電力をスイッチギア13に供給することができる。以上で、第2回線200の変更工程50が完了する。
【0035】
続いて、第1回線100の変更工程60を実施する。まず、第1回線100の上流側開閉設備を開いて、第1回線100を送電線11から遮断する(ステップ61)。具体艇には、開閉器101、106、107、108および遮断器102、111、121を開いて、第1回線100を送電線11から遮断する。次に、第1回線100の上流側開閉設備と接続されている2つの変圧器112、122の入力を、66kV用の入力端23から、154kV用の入力端21に変更する(ステップ62)。より具体的には、遮断器111、121と変圧器112、122の入力端23とを接続してるケーブルまたは架線を、入力端21に切り替える。この切替により、第1回線100の開閉器101、106、107、108および遮断器102、111、121と接続されている変圧器112、122の66kV用の入力端23、変更後の受電電圧154kVに対応する入力端21に変更される。また、第1回線100に接続されている66kV用のVCT105を除去する(ステップ63)。変更後の状態を
図3cに示す。
【0036】
開閉器101、106、107、108や、連絡用開閉器103、104、遮断器102、111、121は、66kVおよび154kVのいずれでも作動可能であるため、装置全体を取り替える必要ないが、制御設定などを必要に応じて154kV向けに切り替える。
【0037】
次に、第1回線100の上流側開閉設備の入力電圧を、変更後の受電電圧である154kVに変更する(ステップ65)。具体的には、開閉器101の入力電圧を、変更後の受電電圧である154kVに変更する。この変更は、第1回線100の入力端131に接続されている送電線11の送電電圧を154kVに変更することにより実施してもよいし、第1回線100の入力を、送電電圧66kVの送電線から、154kVの送電線に切り替えることにより実施してもよい。その後、必要に応じて、第1回線100の上流側開閉設備を閉じて、第1回線100をアクティブな状態にする。具体的には、開閉器101、106、107、108および遮断器102、111、121を閉じて、第1回線100をアクティブな状態にする。以上で、第1回線100の変更工程60が完了する。
【0038】
なお、66kVと154kVでガス絶縁開閉装置(GIS:Gas Insulated Switchgear)を流用する場合には、避雷器(LA:Lightning Arresters)、電力需給用計器用変圧変流器(VCT:Voltage Current Transformer)等の架線の接続や、変流器(CT:Current Transformer)や変成器(VT:Voltage Transformer)などの取り替え、送電線の短絡電流や遮断容量の確認やリレー試験などが必要となることがある。
【0039】
また、上述した方法40では、変更後の常用回線は第2回線となるが、第1回線100を常用回線として使用したい場合には、第2回線200の変更工程50においてVCTの接続を行わず(すなわち、ステップ53を実施せず)、代わりに第1回線100の変更工程60において、除去した66kV用のVCT105に替えて154kV用のVCT205を接続する(すなわち、ステップ63はVCTの除去ではなく、VCTの交換となる)。
【0040】
また、受電電圧変更の前後で常用回線の変更はないことから、受変電設備10の出力端の変更(ステップ54)を実施する必要がない。さらに、予備回線の第2回線200は非アクティブな状態のままでもよいため、第2回線200の変更工程50の最後に上流側開閉設備である開閉器201、206、207、208および遮断器202、211、221を閉じる必要がない。すなわち、ステップ56は必ずしも実施する必要がない。代わりに第1回線100の変更工程60の最後に(すなわち、ステップ65の後に)、第1回線100の上流側開閉設備を閉じて、第2回線200がアクティブにすることが必要となる。すなわち、開閉器101、106、107、108および遮断器102、111、121を閉じて、第2回線200がアクティブにすることが必要となる。
【0041】
以上で説明したように、複数の回線を有する受変電設備を、回線ごとに受電電圧を変更することにより、受変電設備全体を遮断する期間を短期間に抑えながら、受電電圧の変更が可能となる。
【0042】
以上、本願発明にかかる変圧器、受変電設備および受電電圧を変更する方法に関する説明を行ったが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。例えば、上述した実施態様では、154kVおよび66kVの受電電圧を選択的に入力し、22kVの配電電圧を出力するために、三巻変圧器を用いているが、154kV、66kV、6kV等さらに多レベルの受電電圧の入力や、22kV、400V等の複数レベルの配電電圧を出力するために、さらに多くの入力端および出力端を備えた多巻変圧器を用いてもよい。
【0043】
また、上述した実施態様では、受変電設備10内の回線数が2であるため、1回線ずつ受電電圧の変更を行っているが、回線数は3以上であってもよい。この場合には、受変電設備内の回線を2つのグループに分けて、1番目のグループに対して変更工程50に相当する変更工程を実施した後に、2番目のグループに対して変更工程60に相当する変更工程を実施してもよい。すなわち、特許請求の範囲の「複数の回線のうちの一部の回線」、および、「複数の回線のうちの残りの回線」のそれぞれは、1つの回線である必要はなく、複数の回線を含む回線群であってもよい。
【0044】
さらに、上述した実施態様では、受電方式が常用・予備方式の受変電設備10を例として本願発明の説明を行ったが、ループ受電やスポットネットワーク方式等の受電方式でもよい。また、VCT105、205の上下の開閉器107、108、207、208や回線間の連絡用開閉器104、204を遮断器に変更してもよい。また、母線構造は単母線でも二重母線でもよい。さらに、上述した実施態様では、各回線ごとに変圧器が2台ずつ設置されているが、1台であってもよいし、3台以上であってもよい。
【0045】
また、上述した実施態様では、変圧器112、122は、第1回線100がアクティブなときに電力が供給され、非アクティブなときには機能していないが、連絡用開閉器104、204を閉じることにより、第1回線100が非アクティブなときにも第2回線200からの電力を変圧器112、122に供給することが可能となる。同様に、変圧器212、222は、第2回線200がアクティブなときに電力が供給され、非アクティブなときには機能していないが、連絡用開閉器104、204を閉じることにより、第2回線200が非アクティブなときにも第1回線100から変圧器212、222に電力を供給することが可能となる。
【0046】
第1回線100、第2回線200がアクティブであった場合、もしくは、変圧器112、122、212、222がアクティブであった場合、
図4の受電電圧を変更する方法40を開始する以前に第2回線200側は遮断器214、224を遮断することで配電装置を非アクティブにする。第2回線200側から配電している配電装置が非アクティブになるのを避けたい場合、事前にアクティブな第1回線100側で配電している配電装置に切り替えておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0047】
10,90…受変電設備、11,12,94…送電線、13,14…スイッチギア、21,23…変圧器の入力端、22…変圧器の出力端、92,112,122,212,222…変圧器、100,200…回線、102,111,113,114,121,123,124,202,211,213,214,221,223,224…遮断器、
103,104,203,204…連絡用開閉器、105,205…VCT(計器用変成器)、91,101,103,104,106,107,108,201,203,204,206,207,208…開閉器、115,125,215,225…回線の出力端、131,231…回線の入力端