(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 53/00 20060101AFI20231108BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20231108BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F04B53/00 J
F04B53/16 A
F04C15/00 E
(21)【出願番号】P 2020058545
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梶田 国博
(72)【発明者】
【氏名】水谷 真澄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198517(WO,A1)
【文献】特開2017-057828(JP,A)
【文献】特開2007-141959(JP,A)
【文献】特開2019-140191(JP,A)
【文献】特許第6108590(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/00
F04B 53/16
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータに連結されるポンプ機構と、
前記モータと上下方向に並んで配置され前記モータの上側に位置する制御基板と、
前記モータを収容するモータハウジングと、
前記制御基板を収容する基板ハウジングと、
を備え、
前記基板ハウジングは、前記モータハウジングと連結される下側ケースと、前記下側ケースに上側から固定される上側ケースと、を有し、
前記上側ケースは、
前記上側ケースの周縁部よりも上側に突出し、下面側に収容凹部を有する部品収容部と、
前記部品収容部の側面から前記上側ケースの周縁部に向かって延びる1つまたは複数の第1リブと、
前記上側ケースを上下方向に貫通する貫通孔と、
前記貫通孔に配置されるブリーザと、
を有し、
前記ブリーザは、上側から見て、前記部品収容部と、前記上側ケースの周縁部と、前記第1リブとに囲まれる、
電動ポンプ。
【請求項2】
前記ブリーザの上面は、前記部品収容部の上面よりも低い、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記部品収容部は、第1方向に延びる第1側面と、前記第1側面と谷状の角を挟んで第1方向とは異なる第2方向に延びる第2側面とを有し、
前記第1リブは、前記第1側面から前記上側ケースの周縁部に向かって、前記第2側面と対向しながら延びており、
前記ブリーザは、前記第1側面と前記第2側面と前記第1リブとに囲まれる領域に位置する、
請求項1または2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記部品収容部は、前記第2側面と山状の角を挟んで前記第1方向に延びる第3側面を有し、
前記第3側面から前記上側ケースの周縁部に向かって延び、前記ブリーザの側面と対向する他の第1リブを有する、
請求項3に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記上側ケースは、前記部品収容部の側面から前記上側ケースの周縁部に向かって互いに並んで延びる一対の前記第1リブを有し、
前記ブリーザは、前記部品収容部の前記側面と前記一対の第1リブとに囲まれる領域に位置する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記ブリーザは、上側から見て、前記部品収容部の側面および前記第1リブの側面から離れて配置される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記上側ケースは、前記ブリーザと前記上側ケースの周縁部との間に位置する第2リブを有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項8】
前記第2リブは、上側から見て、前記ブリーザの側面に倣う曲線形状を有する、
請求項7に記載の電動ポンプ。
【請求項9】
前記ブリーザは、上側から見て、前記第2リブから離れて配置される、
請求項7または8に記載の電動ポンプ。
【請求項10】
前記第1リブと前記第2リブとは、互いに離れて配置される、
請求項7から9のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項11】
前記ブリーザの上面は、前記第2リブの上端よりも低い、
請求項7から10のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項12】
前記第1リブおよび前記第2リブは、前記ブリーザから水平方向に見て互いに重なる部位を有する、
請求項7から11のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電動ポンプにおいて、特許文献1に記載のように、基板を収容するケース部材の天井部に、電動ポンプ内の気圧調整のためのベンド部が設けられた構成が知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ケース部材の天井部に配置されるベンド部は、ケース部材から上側へ突出するため、ベンド部に対して外力が作用しやすい構造であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、モータと、前記モータに連結されるポンプ機構と、前記モータと上下方向に並んで配置され前記モータの上側に位置する制御基板と、前記モータを収容するモータハウジングと、前記制御基板を収容する基板ハウジングと、を備える電動ポンプが提供される。前記基板ハウジングは、前記モータハウジングと連結される下側ケースと、前記下側ケースに上側から固定される上側ケースと、を有する。前記上側ケースは、前記上側ケースの周縁部よりも上側に突出し、下面側に収容凹部を有する部品収容部と、前記部品収容部の側面から前記上側ケースの周縁部に向かって延びる1つまたは複数の第1リブと、前記上側ケースを上下方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔に配置されるブリーザと、を有する。前記ブリーザは、上側から見て、前記部品収容部と、前記上側ケースの周縁部と、前記第1リブとに囲まれる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の態様によれば、外力の影響を受けにくいブリーザを備えた電動ポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の電動ポンプの断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電動ポンプの一部断面を含む斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態の電動ポンプを上側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態である電動ポンプ100について、図面を参照して説明する。
本発明の実施形態では、モータ20と制御基板40とが並ぶ方向を上下方向として規定する。図面には、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。本実施形態の電動ポンプ100は、モータ20と制御基板40とがZ軸方向に沿って並ぶ例である。本実施形態では、Z軸方向が、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向に対応する。各図においてX軸方向およびY軸方向は、Z軸方向と直交する水平方向である。X軸方向とY軸方向とは、互いに直交する方向である。
【0009】
本明細書では、各図に適宜示す仮想軸である中心軸Jの軸方向は、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。以下の説明においては、中心軸Jの軸方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。また、特に断りのない限り、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0010】
なお、上下方向、水平方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
本実施形態の電動ポンプ100は、水、オイルなどの流体を吸入して、吐出する。電動ポンプ100は、例えば、流体を流路に循環させる機能を有する。流体がオイルの場合、電動ポンプ100は、電動オイルポンプと言い換えてもよい。特に図示しないが、電動ポンプ100は、例えば車両の駆動装置に搭載される。つまり電動ポンプ100は、車両に搭載される。
【0012】
図1に示すように、電動ポンプ100は、モータ20と、ポンプ機構90と、制御基板40と、モータハウジング30と、基板ハウジング60と、を備える。
ポンプ機構90は、ポンプ90aと、ポンプカバー95と、を備える。すなわち、電動ポンプ100は、モータ20と、ポンプ90aとを備える。ポンプ機構90は、圧送される流体がオイルである場合には、オイルポンプ機構である。
【0013】
モータハウジング30は、モータ20を収容する。モータハウジング30は、モータ20とともに、ポンプ90aを収容する。つまりモータハウジング30は、モータハウジングとポンプハウジングとを兼ねる。本実施形態によれば、モータ20およびポンプ90aがモータハウジング30に収容されるので、電動ポンプ100の構造を簡素化できる。したがって本実施形態の電動ポンプ100は、効率よく組み立てられる。
【0014】
モータハウジング30は、金属製である。モータハウジング30は、収容筒部12aと、フランジ部12bと、ポンプ収容部12cと、ベアリング保持筒部12dと、底壁部12eと、を有する。モータハウジング30の上記各部は、単一の部材により構成される。
【0015】
収容筒部12aは、軸方向に延びる筒状である。本実施形態では、収容筒部12aは円筒状である。収容筒部12aには、モータ20が収容される。フランジ部12bは、収容筒部12aの上側の端部における外周面から径方向外側に突出する。フランジ部12bは、上側を向く面に、上側に開口して軸方向に延びるネジ穴を有する。フランジ部12bは、後述する基板ハウジング60の下面と軸方向に対向する。フランジ部12bのネジ穴には、基板ハウジング60をモータハウジング30に固定するねじ18が締め込まれる。
【0016】
ポンプ収容部12cは、収容筒部12aの下側の端部に配置される。ポンプ収容部12cは、収容筒部12aの径方向内側に配置される。ポンプ収容部12cは、収容筒部12aの下側の開口を塞ぐ底壁部12eに支持される。底壁部12eは、板面が軸方向を向く板状である。本実施形態では、底壁部12eは、円環板状である。ポンプ収容部12cは、軸方向に延びる筒状である。ポンプ収容部12cの上側にベアリング保持筒部12dが連結される。ポンプ収容部12cは、底壁部12eの内周端から上側へ凹むポンプ収容穴12fを有する。ポンプ収容穴12fに、ポンプ90aが収容される。ポンプ収容穴12fは、軸方向から見て丸穴状である。ポンプ収容穴12fは、軸方向から見て、底壁部12eの中心部に配置される。
【0017】
ベアリング保持筒部12dは、ポンプ収容部12cの上端から上側に延びる筒状である。ベアリング保持筒部12dは、モータ20の後述する第2ベアリング37と、オイルシール32とを保持する。第2ベアリング37は、モータ20において軸方向に互いに間隔をあけて配置される複数のベアリングのうち、後述するロータコア23の下側に位置するベアリングである。第2ベアリング37は、ベアリング保持筒部12dの内周面に嵌合する。
【0018】
オイルシール32は、ベアリング保持筒部12dの内部において、第2ベアリングの下側に収容される。オイルシール32は、中心軸Jを中心とする環状である。オイルシール32は、シャフト22の外周面に接触し、ポンプ90aからモータ20へのオイルの侵入を抑制する。オイルシール32は、必要に応じて配置される。
【0019】
ベアリング保持筒部12dの上側に、モータ20が固定される。
モータ20は、ロータ21と、ステータ26と、第1ベアリング36と、第2ベアリング37と、を有する。ロータ21は、シャフト22と、シャフト22に固定されるロータ本体21aとを有する。ロータ本体21aは、ロータコア23と、マグネット24とを有する。
【0020】
シャフト22は、中心軸Jに沿って延びる。シャフト22は、中心軸Jを中心として上下方向に延びる。シャフト22は、中心軸Jを中心として回転する。シャフト22は、第1ベアリング36および第2ベアリング37により中心軸J回りに回転自在に支持される。つまり第1ベアリング36および第2ベアリング37は、シャフト22を回転自在に支持する。第1ベアリング36および第2ベアリング37は、例えばボールベアリングである。第1ベアリング36は、シャフト22のロータコア23よりも上側に位置する部分を支持する。第2ベアリング37は、シャフト22のロータコア23よりも下側に位置する部分を支持する。
【0021】
シャフト22の上端部は、第1ベアリング36よりも上側へ突出する。シャフト22の上端に、センサマグネット46が取り付けられる。シャフト22の下側部分は、第2ベアリング37よりも下側に突出する。シャフト22の下端部は、ポンプ収容穴12f内において、後述するインナーロータ91にスプライン嵌合される。
【0022】
ロータコア23は、第1ベアリング36と第2ベアリング37との間に位置するシャフト22の外周面に固定される。ロータコア23は、中心軸Jを中心として周方向に延びる環状である。ロータコア23は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア23は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。
【0023】
マグネット24は、ロータコア23の径方向外側面に配置される。マグネット24は、複数設けられる。複数のマグネット24は、ロータコア23の径方向外側面に、互いに周方向に間隔をあけて配置される。なお、マグネット24は、ロータコア23の内部に固定されていていてもよい。マグネット24は、例えば1つの円筒状のリングマグネットでもよい。ロータ本体21aは、マグネット24をロータコア23に固定するロータカバーを備えていてもよい。
【0024】
ステータ26は、ロータ21の径方向外側に配置される。ステータ26は、ロータ21と径方向に隙間を空けて対向する。ステータ26は、周方向の全周にわたって、ロータ21を径方向外側から囲う。ステータ26は、ステータコア27と、複数のインシュレータ28と、複数のコイル29と、を有する。
【0025】
ステータコア27は、中心軸Jを中心とする円環状のコアバックと、コアバックの内周端から径方向内側へ延びる複数のティースとを有する。ステータコア27は、本実施形態では、複数の電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板である。ステータコア27は、中心軸Jを中心とする環状である。ステータコア27は、ロータ21の径方向外側においてロータ21を囲む。ステータコア27は、ロータ21の径方向外側に配置される。ステータコア27は、ロータ21と径方向に隙間をあけて対向する。
【0026】
ステータコア27のコアバックの径方向外側面は、収容筒部12aの内周面に固定される。複数のティースは、コアバックの径方向内側面に、周方向に互いに間隔をあけて配置される。複数のティースの径方向内側面は、マグネット24の径方向外側面に、径方向外側から隙間をあけて対向する。
【0027】
インシュレータ28は、ステータコア27のティースに装着される。インシュレータ28は、ティースを覆う部分を有する。インシュレータ28の材料は、絶縁性樹脂である。コイル29は、インシュレータ28を介してステータコア27に装着される。複数のコイル29は、各々のティースにインシュレータ28を介して巻線が巻き回されることにより、それぞれ構成される。コイル29のワイヤ端は、ステータ26の上側に引き出され、基板ハウジング60内へ延びる。
【0028】
基板ハウジング60は、モータハウジング30の上端部に連結される下側ケース80と、下側ケース80の上端部に連結される上側ケース70とを有する。上側ケース70と下側ケース80との間に、制御基板40と、回路基板45とが収容される。
【0029】
下側ケース80は、平面視で概ね矩形状のケース本体81と、ケース本体81の外周部に位置する複数のインサートブッシュ82と、ケース本体81の外周端から径方向外側および上側へ突出するコネクタ83と、を有する。
【0030】
ケース本体81は、ケース本体81の下面から下側へ突出するベアリング保持部84を有する。ベアリング保持部84は、軸方向に延びる円筒状である。ベアリング保持部84は、下端部の内周面に第1ベアリング36を保持する。ケース本体81は、ベアリング保持部84の外周面から径方向外側へ放射状に延びる複数のリブ85を有する。複数のリブ85は、ケース本体81の下面に接続される。
【0031】
第1ベアリング36の上面に、ウェーブワッシャが配置されていてもよい。ウェーブワッシャを配置することで、ウェーブワッシャにより第1ベアリング36の外輪の上面を下側に押し、第1ベアリング36および第2ベアリング37に対して与圧を付与できる。
【0032】
ケース本体81は、インサート成形によりケース本体81の内部に保持される複数のバスバー86を有する。バスバー86の一方側の端部には、ステータ26のコイル29から延びる引出線が接続される。バスバー86の他方側の端部は、制御基板40に接続される。
【0033】
ケース本体81は、上面から下側へ凹む収容凹部181と、軸方向から見て、収容凹部181の周囲を一周にわたって囲む周壁部182と、を有する。
収容凹部181内に制御基板40と回路基板45とが配置される。制御基板40と回路基板45は、いずれもプリント回路基板である。
【0034】
本実施形態の場合、制御基板40には、モータ20を駆動制御する制御IC、インバータ、および電源回路が実装される。
図1に示すコンデンサ47は、電源回路の一部である。回路基板45には、ロータ21の回転位置を検出する回転センサ44が実装される。制御基板40と回路基板45とは、図示しない配線部材を介して互いに電気的に接続される。制御基板40および回路基板45に実装される電気回路は、本実施形態の構成に限定されず、電動ポンプ100の構成に応じて適宜変更可能である。
【0035】
制御基板40は、モータ20と電気的に接続される。制御基板40上の制御ICは、回路基板45の回転センサ44を介して、シャフト22の上端に位置するセンサマグネット46の磁界を検出し、ロータ21の回転位置を検出する。制御基板40の制御ICは、検出されたロータ21の回転位置情報に基づいて、モータ20のステータ26に制御された電流を供給し、ロータ21を回転させる。
【0036】
本実施形態では、下側ケース80が、制御基板40の下側に回路基板45を収容する。この構成によれば、制御基板40と回路基板45とが別々の基板であることにより、制御基板40の面積を小型化できる。また、回路基板45は、制御基板40と軸方向に重なる位置に配置されるので、回路基板45によって下側ケース80が径方向に大型化することもない。本実施形態によれば、径方向に小型化された電動ポンプを実現できる。
【0037】
周壁部182は、下側を向く第1封止面191と、上側を向く第2封止面192とを有する。周壁部182は、第1封止面191に開口し中心軸J回りに延びる第1溝183を有する。周壁部182は、第2封止面192に開口し中心軸J回りに延びる第2溝184を有する。
【0038】
第1封止面191の第1溝183は、ケース本体81の周縁に沿って延びる。第1溝183の内部に、環状の第1シール部材185が配置される。
下側ケース80は、モータハウジング30のフランジ部12bに連結される。下側ケース80の第1封止面191が、モータハウジング30の上側を向く端面と軸方向に対向して接触することで、第1溝183内の第1シール部材185が圧縮される。第1シール部材185によって、モータハウジング30と下側ケース80との連結部が封止される。
【0039】
第2封止面192の第2溝184は、ケース本体81の周縁に沿って延びる。第2溝184の内部に、環状の第2シール部材186が配置される。
下側ケース80の上端部に、上側ケース70が装着される。上側ケース70は、本実施形態では金属製の蓋である。上側ケース70は、制御基板40を上側から覆う。上側ケース70は、下面側に収容凹部71を有する。本実施形態の場合、上側ケース70の内側の収容凹部71に、制御基板40に実装されるコンデンサ47が収容される。収容凹部71には、コンデンサ47以外の電子部品が収容されてもよい。
【0040】
上側ケース70は、上側ケース70の外周縁に沿って延びる周縁部72を有する。周縁部72は、軸方向と直交する方向に広がる板状部であり、軸方向から見て、上側ケース70の周縁に沿って一周する環状である。上側ケース70は、周縁部72において下側ケース80の周壁部182に連結される。
【0041】
上側ケース70の周縁部72の下面と、下側ケース80の第2封止面192とが軸方向に対向して接触することで、第2溝184内の第2シール部材186が圧縮される。第2シール部材186によって、上側ケース70と下側ケース80との連結部が封止される。
【0042】
本実施形態の場合、上側ケース70と下側ケース80は、上側ケース70の周縁部72と下側ケース80の周壁部182を軸方向に貫通する複数のねじ18により、モータハウジング30に締結される。この構成によれば、少ない本数のねじ18によって上側ケース70および下側ケース80を固定できる。上側ケース70と下側ケース80とを締結するねじと、下側ケース80とモータハウジング30とを締結するねじとを、別々のねじとしてもよい。
【0043】
図2および
図3に示すように、上側ケース70は、上側ケース70の周縁部72よりも上側に突出し、下面側に収容凹部71を有する部品収容部73と、部品収容部73の側方に位置するブリーザ120と、を有する。
【0044】
上側ケース70は、
図2に示すように、上側ケース70を上下方向に貫通する貫通孔75を有する。貫通孔75は、上側ケース70の下面の収容凹部71内に開口する。貫通孔75は、収容凹部71以外の上側ケース70の下面に開口していてもよい。上側ケース70の貫通孔75に、ブリーザ120が装着される。
【0045】
ブリーザ120は、軸方向に延びる円筒部121と、円筒部121のリア側の端部から径方向外側に広がる円板部122と、円板部122に固定される円板状の蓋部123と、を有する。図示は省略するが、ブリーザ120は、円板部122の上面に位置し、円筒部121の内孔を上側から覆うフィルタを有する。
【0046】
ブリーザ120の円筒部121は、先端部の外周面から径方向外側に突出する爪121aを有する。ブリーザ120は、円筒部121を下側へ向けて貫通孔75に挿入される。円筒部121の爪121aが、貫通孔75の下側の端部に引っ掛けられることにより、ブリーザ120が上側ケース70に固定される。
【0047】
ブリーザ120の円筒部121の付け根部分に、Oリング124が取り付けられる。Oリング124は、ブリーザ120が貫通孔75に取り付けられた状態において、貫通孔75の内周面に接触する。Oリング124は、ブリーザ120の円筒部121の外周面と、貫通孔75の内周面との間を封止する。
【0048】
部品収容部73は、上側から見て、上側ケース70のX軸方向の中央部に位置する。部品収容部73は、上側ケース70の上面側において、径方向外側を向く複数の側面を有する。
【0049】
部品収容部73は、径方向外側を向く側面として、第1側面171と、第2側面172と、第3側面173と、第4側面174と、第5側面175と、第6側面176と、を有する。
第1側面171は、部品収容部73の側方に位置するブリーザ120に面する。第1側面171は、+X側を向く側面であり、ブリーザ120の側面とX軸方向に対向する。
第2側面172は、第1側面171の+Y側の端部から+X側に延び、-Y側を向く側面である。第2側面172は、ブリーザ120の側面とY軸方向に対向する。
第3側面173は、第2側面172の+X側の端部から+Y側へ延び、+X側を向く側面である。第3側面173は、コネクタ83の上側ケース70側を向く面とX軸方向に対向する。
第4側面174は、第1側面171の-Y側の端部から-X側へ延び、-Y側を向く側面である。第5側面175は、上側から見て、第4側面174と反対側の部品収容部73の辺縁に位置する。第5側面175は、第3側面173の+Y側の端部から-X側へ延び、+Y側を向く側面である。
第6側面176は、第1側面171から第3側面173と反対側の部品収容部73の辺縁に位置する。第6側面は、-X側を向く側面である。
【0050】
上側ケース70は、部品収容部73の側面から上側ケース70の周縁部72に向かって延びる複数のリブを有する。上側ケース70は、部品収容部73の側面から+X側へ延びる第1リブ131a、131b、131c、131dを有する。
【0051】
第1リブ131aは、第1側面171と第4側面174とが交差する角77dから、第1側面171が向いている方向(+X側)へ延びる。第1リブ131aの先端部は、周縁部72に位置する。
【0052】
第1リブ131bは、第2側面172と第3側面173とが交差する角77bから+X側へ延びる。第1リブ131cは、第3側面173のY軸方向の中央部から+X側へ延びる。第1リブ131dは、第3側面173と第5側面175とが交差する角77cから+X側へ延びる。
【0053】
ブリーザ120は、上側から見て、第1側面171と周縁部72とによって、X軸方向に挟まれる。また、ブリーザ120は、上側から見て、第1リブ131aと、第2側面172および第1リブ131bとによって、Y軸方向に挟まれる。すなわち、ブリーザ120は、上側から見て、部品収容部73と、周縁部72と、第1リブ131aとに囲まれる。
【0054】
本実施形態の構成によれば、上側ケース70上面の突起物である部品収容部73と第1リブ131aが、ブリーザ120の側面に対して、少なくとも二方向から対向して配置される。これにより、上側ケース70の上面へ物体が飛来または接近したとしても、上記物体とブリーザ120との接触を抑制できる。ブリーザ120に対して外力が作用するのを抑制できるので、使用中のブリーザ120の破損などを抑制できる。
【0055】
また本実施形態では、部品収容部73は、第1方向(Y軸方向)に延びる第1側面171と、第1側面171と谷状の角77aを挟んで、第1方向(Y軸方向)とは異なる第2方向(X軸方向)に延びる第2側面172とを有する。第1リブ131aは、第1側面171から上側ケース70の周縁部に向かって、第2側面172と対向しながら延びているう。ブリーザ120は、第1側面171と第2側面172と第1リブ131aとに囲まれる領域に位置する。上記構成によれば、上側から見て、ブリーザ120が三方向から囲まれるので、より効果的にブリーザ120を保護できる。
【0056】
本実施形態では、第1側面171と第2側面172とは、上側から見て直交するが、この構成に限られない。第1側面171と第2側面172の両方がブリーザ120の側面と水平方向に対向する範囲で、第1側面171と第2側面172との交差角度を変更可能である。
【0057】
本実施形態では、
図5に示すように、ブリーザ120の上面120aは、部品収容部73の上面73aよりも低い位置に位置する。この構成によれば、上側ケース70の上面への飛来物などによってブリーザ120に外力が作用するのをさらに抑制できる。
【0058】
また本実施形態では、部品収容部73は、第2側面172と山状の角77bを挟んで第1方向(X軸方向)に延びる第3側面173を有する。上側ケース70は、第3側面173から上側ケース70の周縁部72に向かって延び、ブリーザ120の側面と対向する第1リブ131bを有する。この構成によれば、ブリーザ120の周囲に、2つの第1リブ131a、131bと、第1側面171とが配置される。したがって、上側から見て、ブリーザ120が三方向から囲まれるので、より効果的にブリーザ120を保護できる。
【0059】
本実施形態において、第1リブ131aと第1リブ131bは、互いに並んでX軸方向へ延びる一対の第1リブを構成する。この構成によれば、Y軸方向において、ブリーザ120が2つの第1リブ131a、131bに挟まれるので、ブリーザ120に対して外力がより作用しにくくなる。ブリーザ120の保護機能が向上する。
【0060】
本実施形態では、ブリーザ120の+Y側に、第2側面172と第1リブ131bとが配置されるが、この構成に限られない。例えば、第2側面172が、
図4に示す角77aから、周縁位置72aまで延びている構成であってもよく、第1リブ131bが、角77aから周縁位置72aまで延びている構成であってもよい。すなわち、ブリーザ120の側面とY軸方向に対向する位置に、第2側面172と第1リブ131bのいずれか一方のみが配置されている構成であってもよい。
【0061】
本実施形態において、ブリーザ120は、上側から見て、部品収容部73の第1側面171、第2側面172、および第1リブ131a、131bの側面から離れて配置される。すなわち、ブリーザ120と、ブリーザ120を囲む側面との間には、隙間が存在する。この構成によれば、ブリーザ120の周囲に水が付着した場合でも、上記の隙間があることで水が流れやすくなり、ブリーザ120の周囲に水が溜まるのを抑制できる。水によってブリーザ120を介した呼吸が阻害されるのを抑制できる。
【0062】
上側ケース70は、
図3および
図4に示すように、ブリーザ120と、上側ケース70の周縁部72との間に位置する第2リブ132を有する。第2リブ132は、ブリーザ120の+X側に位置する。したがって、ブリーザ120は、X軸方向において、第1側面171と、第2リブ132とに挟まれる。この構成によれば、上側から見て、ブリーザ120は、第1側面171、第2側面172、第1リブ131a、131b、および第2リブ132によって、四方を囲まれる。したがって、上側ケース70の上面への飛来物などによってブリーザ120に外力が作用するのをさらに抑制できる。
【0063】
本実施形態では、第2リブ132は、上側から見て、ブリーザ120の側面に倣う曲線形状を有する。より詳細には、第2リブ132は、上側から見て円形状のブリーザ120の側面に倣う円弧状である。この構成によれば、第2リブ132がブリーザ120の側面に沿って配置されるので、ブリーザ120の側面の広い範囲を第2リブ132によってカバーしやすくなる。これにより、ブリーザ120に外力が作用するのを抑制できる。
【0064】
本実施形態では、ブリーザ120は、上側から見て、第2リブ132から離れて配置される。すなわち、ブリーザ120と第2リブ132との間には、隙間が存在する。この構成によれば、ブリーザ120の周囲に水が付着した場合でも、上記の隙間があることで水が流れやすくなり、ブリーザ120の周囲に水が溜まるのを抑制できる。水によってブリーザ120を介した呼吸が阻害されるのを抑制できる。
【0065】
本実施形態では、第1リブ131a、131bと、第2リブ132とは、互いに離れて配置される。すなわち、
図4に示すように、第1リブ131aの+X側の端部と、第2リブ132の-Y側の端部との間には、上側から見て隙間135が存在する。また、第1リブ131bの+X側の端部と、第2リブ132の+Y側の端部との間には、上側から見て隙間136が存在する。この構成によれば、ブリーザ120の周囲に水が付着した場合でも、隙間135および隙間136を通じて、水を外部へ排出できる。これにより、ブリーザ120の周囲に水が溜まりにくくなる。
【0066】
本実施形態では、
図5に示すように、ブリーザ120の上面120aは、第2リブ132の上端132aよりも低い位置に位置する。この構成によれば、上側ケース70の上面への飛来物などによってブリーザ120に外力が作用するのをさらに抑制できる。
【0067】
本実施形態では、
図4および
図5に示すように、第1リブ131a、131bと第2リブ132は、ブリーザ120から水平方向に見て互いに重なる部位を有する。より詳細には、第1リブ131aと第2リブ132とは、Y軸方向から見て、範囲R1において互いに重なって配置される。また、第1リブ131bと第2リブ132とは、Y軸方向から見て、範囲R2において互いに重なって配置される。この構成によれば、ブリーザ120の周囲に、第1リブ131aと第2リブ132とにより二重に囲まれる領域と、第1リブ131bと第2リブ132とにより二重に囲まれる領域とが存在する。これにより、水平方向からブリーザ120に飛来または接近する物体から、ブリーザ120を保護することができる。
【0068】
上側ケース70は、部品収容部73の第6側面176から-X方向に延びる複数の第3リブ133を有する。本実施形態の場合、上側ケース70は、7本の第3リブ133を有する。第3リブ133は、部品収容部73を挟んでブリーザ120と反対側に位置する。第3リブ133は、上側ケース70の補強部材と、制御基板40上の電子素子の冷却部材を兼ねる。
【0069】
図2に示すように、上側ケース70は、伝熱部材48を介して制御基板40と上下方向に繋がる。伝熱部材48は、例えば、制御基板40に実装されるインバータ用トランジスタの熱を、上側ケース70に移動させる。上側ケース70は、複数の第3リブ133の表面から空気中に熱を放散させる。上側ケース70において、第3リブ133は、必要に応じて設置すればよい。
【0070】
ポンプ90aは、電動ポンプ100の下側の部分に位置する。すなわちポンプ90aは、モータ20の下側に配置される。ポンプ90aは、モータ20の動力により駆動される。ポンプ90aは、オイル等の流体を吸入し、吐出する。ポンプ90aは、電動ポンプ100において下側に突出する外部接続部96を介して、車両の駆動装置等に設けられるオイル等の流体の流路と繋がる。電動ポンプ100においてポンプ90aが位置する下側の部分は、車両の部材に固定される。
【0071】
本実施形態では、ポンプ90aが、トロコイドポンプ構造を有する。ポンプ90aは、インナーロータ91と、アウターロータ92と、を有する。インナーロータ91およびアウターロータ92は、それぞれトロコイド歯形を有する。インナーロータ91は、シャフト22の下側の端部に連結される。アウターロータ92は、インナーロータ91の径方向外側に配置される。アウターロータ92は、インナーロータ91を、径方向外側から周方向の全周にわたって囲う。ポンプカバー95は、モータハウジング30の下側の端部に固定されて、ポンプ90aを下側から覆う。
【0072】
以上に説明した本実施形態の電動ポンプ100は、オイルポンプまたはウォーターポンプとして用いることができる。本実施形態によれば、径方向に小型化された電動ポンプ100が提供される。
【0073】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
【0074】
本実施形態では、モータ20と制御基板40とがZ軸方向に並ぶ構成について説明したが、制御基板40がモータ20の径方向外側に位置する構成であってもよい。例えば、モータ20と制御基板40とがX軸方向に並び、モータハウジング30の収容筒部12aの外周面に、基板ハウジング60が連結される構成であってもよい。この場合、X軸方向に沿う方向が、「上下方向」として定義される。
【符号の説明】
【0075】
100…電動ポンプ、20…モータ、30…モータハウジング、40…制御基板、60…基板ハウジング、70…上側ケース、71…収容凹部、72…周縁部、73…部品収容部、73a,120a…上面、75…貫通孔、77a,77b,77c,77d…角、80…下側ケース、90…ポンプ機構、90a…ポンプ、120…ブリーザ、131a,131b,131c,131d…第1リブ、132…第2リブ、132a…上端、171…第1側面、172…第2側面、173…第3側面