(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】摩擦ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20231108BHJP
F16F 7/08 20060101ALI20231108BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F16F15/02 E
F16F7/08
E04H9/02 311
(21)【出願番号】P 2020061357
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】内海 良和
(72)【発明者】
【氏名】鈴井 康正
(72)【発明者】
【氏名】富居 勝宏
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-197189(JP,A)
【文献】特開2001-182155(JP,A)
【文献】特開2009-002120(JP,A)
【文献】特開2021-092298(JP,A)
【文献】特開2014-137071(JP,A)
【文献】特開2015-197188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
F16F 7/08
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造材及び第2構造材の相対移動に伴いエネルギーを吸収する摩擦ダンパであって、
前記第1構造材に設けられ、対向して配置されている2つの第1摺動板と、
前記第2構造材に設けられ、前記2つの第1摺動板の間に挟み込まれ、前記2つの第1摺動板と摺動可能な第2摺動板と、
前記第1構造材に設けられ、前記第2摺動板と共に前記2つの第1摺動板に挟み込まれている中間部材と、を備え、
前記中間部材は、
前記2つの第1摺動板のうち一方の摺動板のみと第1締結部材により締結されている第1締結部と、
前記2つの第1摺動板のうち他方の摺動板のみと第2締結部材により締結されている第2締結部と、を備える、摩擦ダンパ。
【請求項2】
前記中間部材のうち前記第1締結部は、前記2つの第1摺動板に挟まれた位置で、前記2つの第1摺動板のうち前記他方の摺動板から離間しており、
前記中間部材のうち前記第2締結部は、前記2つの第1摺動板に挟まれた位置の外側に設けられている、請求項1に記載の摩擦ダンパ。
【請求項3】
前記中間部材は、
前記2つの第1摺動板のうち前記一方の摺動板のみに対して前記第1締結部材により締結される前記第1締結部を備える第1プレートと、
前記2つの第1摺動板のうち前記他方の摺動板のみに対して前記第2締結部材により締結される前記第2締結部を備える第2プレートと、を備える、請求項1又は2に記載の摩擦ダンパ。
【請求項4】
前記第2締結部材は、前記2つの第1摺動板のうち前記他方の摺動板、前記第1プレート、及び、前記第2プレート、を重ねて締結する、請求項3に記載の摩擦ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は摩擦ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の架構の振動を減衰する制振装置として、架構を構成する構造材に取り付けられる摩擦ダンパが知られている。特許文献1には、この種の摩擦ダンパが開示されている。特許文献1に記載の摩擦ダンパは、一方のフランジ分断片のフランジの両面にそれぞれフィラープレートを介在してボルト止めされた対面する2つの第1圧接板と、これら2つの第1圧接板の間に介在され他方のフランジ分断片のフランジがそのまま流用された第2圧接板と、この第2圧接板の両方の面側にそれぞれ設けられ、第2圧接板とともに第1圧接板を両面から所定の圧接力で挟み込む2つの第3圧接板と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の摩擦ダンパは、例えば、圧接板同士の摩擦抵抗を大きくすることで、建物の架構に大荷重が作用した場合でも、高い制振性能を発揮し得る。しかしながら、摩擦ダンパでの摩擦抵抗を大きくした場合、この摩擦抵抗に耐えるために、例えば、摩擦ダンパが設けられる構造材の剛性についても高める必要がある。そのため、特許文献1の摩擦ダンパでは、例えば、フランジの厚みを厚くする等の対応が必要となる。特許文献1の2つの摺動板としての第1圧接板は、相互間に摺動板としての第2圧接板を挟み込む間隙を確保するため、フランジの両面にそれぞれフィラープレートを介在させてボルト止めされている。そのため、フランジの厚みが厚くなると、2つの第1圧接板をフランジに締結するためのボルト長も長くなる。ボルト長が長くなると締結効率が下がるため、使用するボルトは短いことが好ましい。
【0005】
本発明は、構造材に摺動板を締結する締結部材の長さを短くすることが可能な構成を有する摩擦ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての摩擦ダンパは、第1構造材及び第2構造材の相対移動に伴いエネルギーを吸収する摩擦ダンパであって、前記第1構造材に設けられ、対向して配置されている2つの第1摺動板と、前記第2構造材に設けられ、前記2つの第1摺動板の間に挟み込まれ、前記2つの第1摺動板と摺動可能な第2摺動板と、前記第1構造材に設けられ、前記第2摺動板と共に前記2つの第1摺動板に挟み込まれている中間部材と、を備え、前記中間部材は、前記2つの第1摺動板のうち一方の摺動板のみと第1締結部材により締結されている第1締結部と、前記2つの第1摺動板のうち他方の摺動板のみと第2締結部材により締結されている第2締結部と、を備える。
【0007】
本発明の1つの実施形態として、前記中間部材のうち前記第1締結部は、前記2つの第1摺動板に挟まれた位置で、前記2つの第1摺動板のうち前記他方の摺動板から離間しており、前記中間部材のうち前記第2締結部は、前記2つの第1摺動板に挟まれた位置の外側に設けられている。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記中間部材は、前記2つの第1摺動板のうち前記一方の摺動板のみに対して前記第1締結部材により締結される前記第1締結部を備える第1プレートと、前記2つの第1摺動板のうち前記他方の摺動板のみに対して前記第2締結部材により締結される前記第2締結部を備える第2プレートと、を備える。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記第2締結部材は、前記2つの第1摺動板のうち前記他方の摺動板、前記第1プレート、及び、前記第2プレート、を重ねて締結する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構造材に摺動板を締結する締結部材の長さを短くすることが可能な構成を有する摩擦ダンパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態としての摩擦ダンパが設けられた建物の架構の立面図である。
【
図2】
図1に示す摩擦ダンパを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る摩擦ダンパの実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態としての摩擦ダンパ10が設けられた建物の架構1の立面図である。
図2は、
図1に示す1つの摩擦ダンパ10を拡大して示す図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の架構1は、H形鋼のブレース2を備える鉄骨造の柱梁架構である。ブレース2は、ブレース長手方向Aにおいて間隔S1を隔てて、一方側に位置する第1構造材2aとしての第1ブレース片と、他方側に位置する第2構造材2bとしての第2ブレース片と、に分断されている。摩擦ダンパ10は、H形鋼のブレース2に組み込まれている。より具体的に、本実施形態の摩擦ダンパ10は、第1構造材2aとしての第1ブレース片と、第2構造材2bとしての第2ブレース片と、の間に設けられている。摩擦ダンパ10は、例えば大地震時などにおいて、建物の架構1に大荷重が作用した場合に、第1構造材2a及び第2構造材2bの相対移動に伴い摺動する部位を備え、この摺動によりエネルギーを吸収する。これにより、摩擦ダンパ10は、架構1の振動エネルギーを吸収し、建物の架構1の振動を減衰させることができる。
【0015】
本実施形態の摩擦ダンパ10は、第1構造材2aとしての第1ブレース片と、第2構造材2bとしての第2ブレース片と、の間に設けられているが、この構成に限られない。摩擦ダンパ10は、相互間で相対移動可能な複数の構造材の間に設けられていればよい。したがって、摩擦ダンパ10は、例えば、架構1の間柱などに組み込まれていてもよい。以下、本実施形態では、複数の構造材の一例として、第1ブレース片及び第2ブレース片の間に設けられた摩擦ダンパ10について例示説明する。
【0016】
また、本実施形態では、H形鋼のブレース2の上フランジ、下フランジ及びウェブそれぞれに別々の摩擦ダンパ10が組み込まれている。具体的に、本実施形態では、第1構造材2aとしての第1ブレース片の上フランジ51aと、第2構造材2bとしての第2ブレース片の上フランジ51bと、の間に摩擦ダンパ10が設けられている。また、本実施形態では、第1構造材2aとしての第1ブレース片の下フランジ52aと、第2構造材2bとしての第2ブレース片の下フランジ52bと、の間に別の摩擦ダンパ10が設けられている。更に、本実施形態では、第1構造材2aとしての第1ブレース片のウェブ53aと、第2構造材2bとしての第2ブレース片のウェブ53bと、の間に、更に別の摩擦ダンパ10が設けられている。これら摩擦ダンパ10は、取り付け位置が異なるが、構成は共通する。したがって、本実施形態では、第1構造材2aとしての第1ブレース片の上フランジ51aと、第2構造材2bとしての第2ブレース片の上フランジ51bと、の間に設けられている摩擦ダンパ10についてのみ例示説明する。したがって、以下、特に説明をしない限り、「摩擦ダンパ10」とは、第1構造材2a及び第2構造材2bの上フランジ51a及び51bの間に設けられている摩擦ダンパ10を意味する。
【0017】
摩擦ダンパ10は、第1構造材2aとしての第1ブレース片に設けられている3つの第1摺動板11a、11b及び11cを備える。3つの第1摺動板11a、11b及び11cは、ブレース長手方向Aと直交する、上フランジ51aの厚み方向に、対向して配置されている。本実施形態の3つの第1摺動板11a、11b及び11cのうち1つの第1摺動板11aは、第1構造材2aとしての第1ブレース片の上フランジ51aにより構成されている。別の2つの第1摺動板11b及び11cは、上フランジ51aの厚み方向の両側に配置されている。具体的に、本実施形態の第1摺動板11bは、上フランジ51aの上側で、上フランジ51aと対向して配置されている。また、本実施形態の第1摺動板11cは、上フランジ51aの下側で、上フランジ51aと対向して配置されている。ここで「上フランジの上側」とは、上フランジの厚み方向で、上フランジを挟んで下フランジがある側とは反対側を意味する。また、「上フランジの下側」とは、上フランジの厚み方向で、上フランジを挟んで下フランジがある側を意味する。また、以下、3つの第1摺動板11a、11b及び11cを区別なく記載する場合は、単に「第1摺動板11」と記載する。
【0018】
より具体的に、第1摺動板11bは、第1摺動板11aを構成する上フランジ51aの上側で、中間部材20を介在させて、ボルト部材等の締結部材3により、上フランジ51aに対して締結されている。また、第1摺動板11cは、第1摺動板11aを構成する上フランジ51aの下側で、中間部材20を介在させて、ボルト部材等の締結部材3により、上フランジ51aに対して締結されている。詳細は後述するが、第1摺動板11b及び11cそれぞれは、締結部材3として、第1締結部材3a及び第2締結部材3bを用いて、上フランジ51aに対して締結されている。本実施形態の締結部材3は、例えば、高力ボルトである。高力ボルトは、複数の部材に形成されている挿通孔に挿通可能である。高力ボルトは、その頭部と、先端部に螺着されるナット部材4と、で上記複数の部材を挟み込むことができる。高力ボルトは、このようにして、上記複数の部材を締結することができる。
【0019】
本実施形態では、3つの第1摺動板11が第1構造材2aに設けられているが、第1摺動板11の数は複数であればよく、その数は特に限定されない。したがって、第1構造材2aのとしての第1ブレース片には、2つ以上の第1摺動板11が設けられていればよい。
【0020】
また、摩擦ダンパ10は、第2構造材2bとしての第2ブレース片に設けられている2つの第2摺動板12a及び12bを備える。2つの第2摺動板12a及び12bは、ブレース長手方向Aと直交する、上フランジ51bの厚み方向に、対向して配置されている。本実施形態の2つの第2摺動板12a及び12bは、上フランジ51bの厚み方向の両側に配置されている。具体的に、本実施形態の第2摺動板12aは、上フランジ51bの上側で、フィラープレート23を介在させて、ボルト部材等の締結部材3により、上フランジ51bに締結されている。また、本実施形態の第2摺動板12bは、上フランジ51bの下側で、フィラープレート24を介在させて、ボルト部材等の締結部材3により、上フランジ51bに締結されている。以下、2つの第2摺動板12a及び12bを区別なく記載する場合は、単に「第2摺動板12」と記載する。
【0021】
第2摺動板12は、2つの第1摺動板11の間に挟み込まれ、2つの第1摺動板11と摺動可能に構成されている。具体的に、本実施形態の第2摺動板12aは、2つの第1摺動板11a及び11bの間に挟み込まれている。また、本実施形態の第2摺動板12bは、2つの第1摺動板11a及び11cの間に挟み込まれている。
【0022】
本実施形態では、2つの第2摺動板12が第2構造材2bに設けられているが、第2摺動板12の数は第1摺動板11の数に応じて適宜設計可能であり、その数は特に限定されない。したがって、第2構造材2bとしての第2ブレース片には、1つ以上の第2摺動板12が設けられていればよい。
【0023】
3つの第1摺動板11の相互間に挟み込まれる中間部材20は、第1構造材2aとしての第1ブレース片に設けられている。具体的に、第1構造材2aには、2つの第1摺動板11a及び11bの相互間に、第2摺動板12aと共に挟み込まれる上側中間部材21が設けられている。また、第1構造材2aには、2つの第1摺動板11a及び11cの相互間に、第2摺動板12bと共に挟み込まれる下側中間部材22が設けられている。
【0024】
第2構造材2bとしての第2ブレース片の上フランジ51bと第2摺動板12との相互間に挟み込まれるフィラープレートは、第2構造材2bとしての第2ブレース片に設けられている。具体的に、第2構造材2bには、上フランジ51bと第2摺動板12aとの相互間に挟み込まれるフィラープレート23が設けられている。また、第2構造材2bには、上フランジ51bと第2摺動板12bとの相互間に挟み込まれるフィラープレート24が設けられている。
【0025】
ここで、中間部材20としての上側中間部材21及び下側中間部材22それぞれは、第1締結部31及び第2締結部32を備える。
【0026】
上側中間部材21の第1締結部31は、2つの第1摺動板11a及び11bのうち一方の摺動板である第1摺動板11bのみと、ボルト部材等の第1締結部材3aにより締結されている。また、上側中間部材21の第2締結部32は、2つの第1摺動板11a及び11bのうち他方の摺動板である第1摺動板11aのみと、ボルト部材等の第2締結部材3bにより締結されている。
【0027】
より具体的に、上側中間部材21のうち第1締結部31は、2つの第1摺動板11a及び11bに挟まれた位置で、2つの第1摺動板11a及び11bのうち他方の摺動板である第1摺動板11aから離間して配置されている。ここで、「2つの第1摺動板11a及び11bに挟まれた位置」とは、対向する2つの第1摺動板11a及び11bの対向方向において、2つの第1摺動板11a及び11bの間の位置を意味し、本実施形態では、第1摺動板11a及び11bの厚み方向(
図2では上下方向)における、2つの第1摺動板11a及び11bの間の位置を意味する。また、上側中間部材21のうち第2締結部32は、2つの第1摺動板11a及び11bに挟まれた位置の外側に設けられている。「2つの第1摺動板11a及び11bに挟まれた位置の外側」とは、2つの第1摺動板11a及び11bの対向方向で2つの第1摺動板11a及び11bに挟まれた位置に対して、対向方向と直交する方向での外側、すなわち、2つの第1摺動板11a及び11bの摺動面方向での外側、を意味する。したがって、本実施形態の第2締結部32は、2つの第1摺動板11a及び11bの対向方向(
図2では上下方向)で2つの第1摺動板11a及び11bに挟まれた位置に対して、対向方向と直交する方向(
図2では左右方向)の外側(
図2では左側)に、設けられている。この状態で、第1締結部材3aは、上側中間部材21の第1締結部31及び第1摺動板11bを締結しており、これらと第1摺動板11aとを締結していない。逆に、第2締結部材3bは、上側中間部材21の第2締結部32及び第1摺動板11aを締結しており、これらと第1摺動板11bとを締結していない。
【0028】
また、下側中間部材22の第1締結部31は、2つの第1摺動板11a及び11cのうち一方の摺動板である第1摺動板11cのみと、締結部材3としての第1締結部材3aにより締結されている。また、下側中間部材22の第2締結部32は、2つの第1摺動板11a及び11cのうち他方の摺動板である第1摺動板11aのみと、締結部材3としての第2締結部材3bにより締結されている。
【0029】
より具体的に、下側中間部材22のうち第1締結部31は、2つの第1摺動板11a及び11cに挟まれた位置で、2つの第1摺動板11a及び11cのうち他方の摺動板である第1摺動板11aから離間して配置されている。また、下側中間部材22のうち第2締結部32は、2つの第1摺動板11a及び11cに挟まれた位置の外側に設けられている。この状態で、第1締結部材3aは、下側中間部材22の第1締結部31及び第1摺動板11cを締結しており、これらと第1摺動板11aとを締結していない。逆に、第2締結部材3bは、下側中間部材22の第2締結部32及び第1摺動板11aを締結しており、これらと第1摺動板11cとを締結していない。
【0030】
なお、本実施形態では、上側中間部材21を第1摺動板11aに締結する第2締結部材3bは、下側中間部材22を第1摺動板11aに締結する第2締結部材3bと共通化させている。つまり、本実施形態の上側中間部材21及び下側中間部材22は、例えば高力ボルトなどの共通の第2締結部材3bにより、第1摺動板11aに締結されている。但し、上側中間部材21を第1摺動板11aに締結する第2締結部材3bは、下側中間部材22を第1摺動板11aに締結する第2締結部材3bと別であってもよく、その構成は特に限定されない。
【0031】
以上のように、摩擦ダンパ10では、第1構造材2aに設けられた中間部材20としての上側中間部材21及び下側中間部材22それぞれが、上述の第1締結部31及び第2締結部32を備える。この構成とすることで、2つの第1摺動板11を共に締結する締結部材3を用いなくてもよい。つまり、2つの第1摺動板11それぞれを、中間部材20の別々の位置で、中間部材20に締結すればよい。そのため、2つの第1摺動板11及び中間部材20をすべて貫通する締結部材3を用いる場合と比較して、第1締結部材3a及び第2締結部材3bの必要長さを短くすることができる。これにより、例えば所定長さ以下の汎用品の高力ボルトなどを利用し得るため、制振性能として大荷重対応が求められる場合であっても、製造コストを低減できる。
【0032】
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態の摩擦ダンパ10の更なる詳細について説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の摩擦ダンパ10は、第1構造材2aとしての第1ブレース片の一端側と、第2構造材2bとしての第2ブレース片の一端側と、の間に設けられている。第1ブレース片及び第2ブレース片それぞれの他端側は、架構1の柱梁の接合部に取り付けられている。
【0034】
[第1摺動板11]
上述したように、本実施形態の摩擦ダンパ10は、第1構造材2aとしての第1ブレース片に設けられた3つの第1摺動板11a、11b及び11cを備える。
【0035】
本実施形態の第1摺動板11aは、摩擦板41aと、保持板42aと、を備える。摩擦板41aは、保持板42aの厚さ方向の両面それぞれに移動不能に固着されている。本実施形態の第1摺動板11aの保持板42aは、第1構造材2aとしての第1ブレース片の上フランジ51aがそのまま用いられている。保持板42aのうち、摩擦板41aが固着されていない位置には、第2締結部材3bとしてのボルト部材を挿通可能な、厚み方向に貫通する締結挿通孔42a1が形成されている。締結挿通孔42a1は、保持板42aのうち、摩擦板41aが固着されている位置よりも、第1構造材2aとしての第1ブレース片の他端側の位置に形成されている。また、第1摺動板11aの摩擦板41aが設けられている位置には、後述する圧力調整機構13のボルト部材45を挿通可能な、厚み方向に貫通する圧力調整用挿通孔11a1が形成されている。
【0036】
本実施形態の第1摺動板11bは、摩擦板41bと、保持板42bと、を備える。摩擦板41bは、矩形状の保持板42bの第1摺動板11aに対向する面に移動不能に固着されている。保持板42bのうち、摩擦板41bが固着されていない位置には、第2締結部材3bとしてのボルト部材を挿通可能な、厚み方向に貫通する締結挿通孔42b1が形成されている。締結挿通孔42b1は、保持板42bのうち、摩擦板41bが固着されている位置よりも、第1構造材2aとしての第1ブレース片の他端側の位置に形成されている。また、第1摺動板11bの摩擦板41bが設けられている位置には、後述する圧力調整機構13のボルト部材45を挿通可能な、厚み方向に貫通する圧力調整用挿通孔11b1が形成されている。
【0037】
本実施形態の第1摺動板11cは、摩擦板41cと、保持板42cと、を備える。摩擦板41cは、矩形状の保持板42cの第1摺動板11aに対向する面に移動不能に固着されている。保持板42cのうち、摩擦板41cが固着されていない位置には、第2締結部材3bとしてのボルト部材を挿通可能な、厚み方向に貫通する締結挿通孔42c1が形成されている。締結挿通孔42c1は、保持板42cのうち、摩擦板41cが固着されている位置よりも、第1構造材2aとしての第1ブレース片の他端側の位置に形成されている。また、第1摺動板11cの摩擦板41cが設けられている位置には、後述する圧力調整機構13のボルト部材45を挿通可能な、厚み方向に貫通する圧力調整用挿通孔11c1が形成されている。
【0038】
第1摺動板11a、11b及び11cの保持板42a、42b及び42cへの摩擦板41a、41b及び41cの固着方法は特に限定されないが、例えば接着等により行うことができる。
【0039】
本実施形態の第1摺動板11は、摩擦板及び保持板により構成されているが、この構成に限られない。第1摺動板11は、例えば、単一の板部材で構成されていてもよい。
【0040】
[第2摺動板12]
上述したように、本実施形態の摩擦ダンパ10は、第2構造材2bとしての第2ブレース片に設けられた2つの第2摺動板12a及び12bを備える。
【0041】
本実施形態の第2摺動板12aは、滑動板43aと、保持板44aと、を備える。滑動板43aは、例えば矩形状のステンレス板である。但し、滑動板43aの構成材料は特に限定されない。滑動板43aは、保持板44aの厚さ方向の両面それぞれに移動不能に固着されている。保持板44aのうち第1摺動板11aと対向する面に固着されている滑動板43aは、第1摺動板11aの摩擦板41aと当接して摺動する。保持板44aのうち第1摺動板11bと対向する面に固着されている滑動板43aは、第1摺動板11bの摩擦板41bと当接して摺動する。保持板44aのうち、滑動板43aが固着されていない位置には、締結部材3としてのボルト部材を挿通可能な、厚み方向に貫通する締結挿通孔44a1が形成されている。締結挿通孔44a1は、保持板44aのうち、滑動板43aが固着されている位置よりも、第2構造材2bとしての第2ブレース片の他端側の位置に形成されている。また、第2摺動板12aの滑動板43aが設けられている位置には、後述する圧力調整機構13のボルト部材45を挿通可能な、厚み方向に貫通する圧力調整用挿通孔12a1が形成されている。圧力調整用挿通孔12a1は、上述の第1摺動板11a、11b及び11cに形成されている圧力調整用挿通孔11a1、11b1及び11c1と比較して長い長孔である。
【0042】
本実施形態の第2摺動板12bは、滑動板43bと、保持板44bと、を備える。滑動板43bは、例えば矩形状のステンレス板である。但し、滑動板43bの構成材料は特に限定されない。滑動板43bは、保持板44bの厚さ方向の両面それぞれに移動不能に固着されている。保持板44bのうち第1摺動板11aと対向する面に固着されている滑動板43bは、第1摺動板11aの摩擦板41aと当接して摺動する。保持板44bのうち第1摺動板11cと対向する面に固着されている滑動板43bは、第1摺動板11cの摩擦板41cと当接して摺動する。保持板44bのうち、滑動板43bが固着されていない位置には、締結部材3としてのボルト部材を挿通可能な、厚み方向に貫通する締結挿通孔44b1が形成されている。締結挿通孔44b1は、保持板44bのうち、滑動板43bが固着されている位置よりも、第2構造材2bとしての第2ブレース片の他端側の位置に形成されている。また、第2摺動板12bの滑動板43bが設けられている位置には、後述する圧力調整機構13のボルト部材45を挿通可能な、厚み方向に貫通する圧力調整用挿通孔12b1が形成されている。圧力調整用挿通孔12b1は、上述の第1摺動板11a、11b及び11cに形成されている圧力調整用挿通孔11a1、11b1及び11c1と比較して長い長孔である。
【0043】
第2摺動板12a及び12bの滑動板43a及び43bは、第1摺動板11a、11b及び11cの摩擦板41a、41b及び41cとの間で適当な摩擦力を発生するものであれば特に限定されない。滑動板43a及び43bがステンレス板の場合には、摩擦板41a、41b及び41cは、例えば、熱硬化性樹脂を結合材として、主に、繊維材料と、摩擦調整材と、充填剤と、から構成される摩擦材料により形成可能である。繊維材料としては、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、カーボンファイバーなどが挙げられる。摩擦調整材としては、例えば、カシューダスト、鉛などが挙げられる。充填剤としては、例えば、硫酸バリュームなどが挙げられる。摩擦板41a、41b及び41cには、上述の摩擦材料を単独で用いてもよく、上述の摩擦材料に鋼板などを裏打ちして強度を高めたものを用いてもよい。
【0044】
第2摺動板12a及び12bの保持板44a及び44bへの滑動板43a及び43bの固着方法は特に限定されないが、例えば接着等により行うことができる。
【0045】
本実施形態の第2摺動板12は、滑動板及び保持板により構成されているが、この構成に限られない。第2摺動板12は、例えば、単一の板部材により構成されていてもよい。
【0046】
[圧力調整機構13]
本実施形態の圧力調整機構13は、ボルト部材45と、ナット部材46と、皿ばね47と、を備える。
【0047】
ボルト部材45は、第1摺動板11a、11b及び11cの圧力調整用挿通孔11a1、11b1及び11c1と、第2摺動板12a及び12bの圧力調整用挿通孔12a1及び12b1と、をすべて貫通するように挿通されている。ボルト部材45の先端部にはナット部材46が螺着されている。3つの第1摺動板11及び2つの第2摺動板12は、ボルト部材45及びナット部材46によって挟み込まれ、厚み方向に押圧力が付与されている。皿ばね47は、ナット部材46と第1摺動板11bとの間に挟み込まれている。皿ばね47の弾性力により、3つの第1摺動板11及び2つの第2摺動板12に付与される押圧力の大きさを安定化させることができる。但し、圧力調整機構13は、皿ばね47を備えない構成であってもよい。
【0048】
上述したように、第2摺動板12a及び12bに形成されている圧力調整用挿通孔12a1及び12b1は長孔であり、ボルト部材45は、圧力調整用挿通孔12a1及び12b1の範囲で、第1摺動板11a、11b及び11cと共に移動できる。この移動により、第1摺動板11と第2摺動板12とが摺動し、架構1に入力される振動エネルギーを吸収し、振動を減衰させることができる。
【0049】
[中間部材20]
本実施形態の3つの第1摺動板11は、隣接する2つの第1摺動板11の相互間に中間部材20を挟み込んだ状態で、第1締結部材3a及び第2締結部材3bにより締結されている。
【0050】
具体的に、第1摺動板11a及び11bは、上側中間部材21を相互間に挟み込んでいる。本実施形態の上側中間部材21は、第1プレート61と、第2プレート71と、を備える。本実施形態の第1プレート61及び第2プレート71は一部が重なる状態で積層されている。また、本実施形態の第1プレート61は、少なくとも2つの第1摺動板11a及び11bの間に介在し、第2プレート71に積層されていない部分61aを含む。また、本実施形態の第2プレート71は、2つの第1摺動板11a及び11bの間に介在しない部分71aを含む。
【0051】
第1プレート61は、2つの第1摺動板11a及び11bのうち第1摺動板11bのみに対して、第1締結部材3aとしてのボルト部材により締結される第1締結部31を備える。本実施形態の第1締結部31は、第1プレート61のうち、少なくとも2つの第1摺動板11a及び11bの間に介在し、第2プレート71に積層されていない部分61aである。この第1プレート61の第1締結部31と第1摺動板11aとの間は、第2プレート71により、間隙S2が形成されている。第1プレート61の第1締結部31には、第1締結部材3aとしてのボルト部材を挿通可能な挿通孔31aが形成されており、第1締結部材3aとしてのボルト部材は、第1摺動板11bの締結挿通孔42b1と、第1プレート61の第1締結部31の挿通孔31aと、に挿通されている。第1締結部材3aとしてのボルト部材は、上述した間隙S2を利用して、第1摺動板11bと、第1プレート61の第1締結部31と、を締結している。つまり、第1締結部材3aとしてのボルト部材は、第1摺動板11aの締結挿通孔42a1には挿通されておらず、2つの第1摺動板11a及び11bを締結していない。なお、本実施形態の第1プレート61は、上述した第1締結部31以外に、第1摺動板11a及び11bの間に介在せず、第2プレート71に積層されている積層部分61bを含み、この積層部分61bに別の挿通孔61b1が形成されている。
【0052】
第2プレート71は、2つの第1摺動板11a及び11bのうち第1摺動板11aのみに対して、第2締結部材3bとしてのボルト部材により締結される第2締結部32を備える。本実施形態の第2締結部32は、第2プレート71のうち、2つの第1摺動板11a及び11bの間に介在しない部分71aである。この第2プレート71の第2締結部32には、第2締結部材3bとしてのボルト部材を挿通可能な挿通孔32aが形成されており、第2締結部材3bとしてのボルト部材は、第1摺動板11aの締結挿通孔42a1と、第2プレート71の第2締結部32の挿通孔32aと、第1プレート61の積層部分61bの挿通孔61b1と、に挿通されている。第2締結部材3bとしてのボルト部材は、第1摺動板11aと、第2プレート71の第2締結部32と、第1プレート61の積層部分61bと、を締結している。つまり、第2締結部材としてのボルト部材は、第1摺動板11bの締結挿通孔42b1には挿通されておらず、2つの第1摺動板11a及び11bを締結していない。
【0053】
このように、中間部材20としての上側中間部材21が、上述の第1締結部31及び第2締結部32を備えることで、第1締結部材3a及び第2締結部材3bはいずれも、2つの第1摺動板11a及び11bを共に貫通しておらず、2つの第1摺動板11a及び11bを締結していない。これにより、第1締結部材3a及び第2締結部材3bとして、短いものを利用し易くなる。
【0054】
なお、本実施形態の第2締結部材3bとしてのボルト部材は、第1摺動板11a、及び、第2プレート71の第2締結部32、に加えて、第1プレート61の積層部分61bを締結しているが、この構成に限られない。第2締結部材3bは、第1摺動板11a、及び、第2プレート71、のみを締結していてもよい。但し、本実施形態のように、第2締結部材3bは、第1摺動板11a、第1プレート61、及び、第2プレート71、を重ねて締結していることが好ましい。このようにすることで、第1プレート61及び第2プレート71を容易に締結できる。
【0055】
また、本実施形態の上側中間部材21は、第1プレート61及び第2プレート71により構成されているが、この構成に限られない。上側中間部材21は、上述した第1締結部31及び第2締結部32を備える構成であれば、例えば、単一の部材により構成されてもよく、3つ以上の板部材により構成されていてもよい。但し、本実施形態のように、上側中間部材21は、積層されている複数のプレートにより構成されることが好ましい。このようにすることで、上側中間部材21を容易に実現できる。
【0056】
更に、本実施形態の上側中間部材21を構成する第1プレート61及び第2プレート71は、2つの第1摺動板11a及び11bの相互間で摺動面内方向での力を伝達するフィラー部材であればよく、その構成材料は特に限定されない。
【0057】
次に、下側中間部材22について説明する。下側中間部材22は、第1摺動板11a及び11cの相互間には挟み込まれている。下側中間部材22は、第1プレート62及び第2プレート72を備える。本実施形態の第1プレート62及び第2プレート72は一部が重なる状態で積層されている。また、本実施形態の第1プレート62は、少なくとも2つの第1摺動板11a及び11cの間に介在し、第2プレート72に積層されていない部分62aを含む。また、本実施形態の第2プレート72は、2つの第1摺動板11a及び11cの間に介在しない部分72aを含む。
【0058】
第1プレート62は、2つの第1摺動板11a及び11cのうち第1摺動板11cのみに対して、第1締結部材3aとしてのボルト部材により締結される第1締結部31を備える。本実施形態の第1締結部31は、第1プレート62のうち、少なくとも2つの第1摺動板11a及び11cの間に介在し、第2プレート72に積層されていない部分62aである。この第1プレート62の第1締結部31と第1摺動板11aとの間は、第2プレート72により、間隙S2が形成されている。第1プレート62の第1締結部31には、第1締結部材3aとしてのボルト部材を挿通可能な挿通孔31aが形成されており、第1締結部材3aとしてのボルト部材は、第1摺動板11cの締結挿通孔42c1と、第1プレート62の第1締結部31の挿通孔31aと、に挿通されている。第1締結部材3aとしてのボルト部材は、上述した間隙S2を利用して、第1摺動板11cと、第1プレート62の第1締結部31と、を締結している。つまり、第1締結部材3aとしてのボルト部材は、第1摺動板11aの締結挿通孔42a1には挿通されておらず、2つの第1摺動板11a及び11cを締結していない。なお、本実施形態の第1プレート62は、上述した第1締結部31以外に、第1摺動板11a及び11cの間に介在せず、第2プレート72に積層されている積層部分62bを含み、この積層部分62bに別の挿通孔62b1が形成されている。
【0059】
第2プレート72は、2つの第1摺動板11a及び11cのうち第1摺動板11aのみに対して、第2締結部材3bとしてのボルト部材により締結される第2締結部32を備える。本実施形態の第2締結部32は、第2プレート72のうち、2つの第1摺動板11a及び11cの間に介在しない部分72aである。この第2プレート72の第2締結部32には、第2締結部材3bとしてのボルト部材を挿通可能な挿通孔32aが形成されており、第2締結部材3bとしてのボルト部材は、第1摺動板11aの締結挿通孔42a1と、第2プレート72の第2締結部32の挿通孔32aと、第1プレート62の積層部分62bの挿通孔62b1と、に挿通されている。第2締結部材3bとしてのボルト部材は、第1摺動板11aと、第2プレート72の第2締結部32と、第1プレート62の積層部分62bと、を締結している。つまり、第2締結部材としてのボルト部材は、第1摺動板11cの締結挿通孔42c1には挿通されておらず、2つの第1摺動板11a及び11cを締結していない。
【0060】
このように、中間部材20としての下側中間部材22が、上述の第1締結部31及び第2締結部32を備えることで、第1締結部材3a及び第2締結部材3bはいずれも、2つの第1摺動板11a及び11cを共に貫通しておらず、2つの第1摺動板11a及び11cを締結していない。これにより、第1締結部材3a及び第2締結部材3bとして、短いものを利用し易くなる。
【0061】
なお、本実施形態の第2締結部材3bとしてのボルト部材は、第1摺動板11a、及び、第2プレート72の第2締結部32、に加えて、第1プレート62の積層部分62aを締結しているが、この構成に限られない。第2締結部材3bは、第1摺動板11a、及び、第2プレート72、のみを締結していてもよい。但し、本実施形態のように、第2締結部材3bは、第1摺動板11a、第1プレート62、及び、第2プレート72、を重ねて締結していることが好ましい。このようにすることで、第1プレート62及び第2プレート72を容易に締結できる。
【0062】
また、本実施形態の下側中間部材22は、第1プレート62及び第2プレート72により構成されているが、この構成に限られない。下側中間部材22は、上述した第1締結部31及び第2締結部32を備える構成であれば、例えば、単一の部材により構成されてもよく、3つ以上の板部材により構成されていてもよい。但し、本実施形態のように、下側中間部材22は、積層されている複数のプレートにより構成されることが好ましい。このようにすることで、下側中間部材22を容易に実現できる。
【0063】
更に、本実施形態の下側中間部材22を構成する第1プレート62及び第2プレート72は、2つの第1摺動板11a及び11cの相互間で摺動面内方向での力を伝達するフィラー部材であればよく、その構成材料は特に限定されない。
【0064】
なお、本実施形態において、第1摺動板11a、上側中間部材21の第2締結部32、及び、下側中間部材22の第2締結部32、は共通の第2締結部材3bとしてのボルト部材により締結されているが、別々の第2締結部材3bとしてのボルト部材により締結してもよい。但し、本実施形態のように、第1摺動板11a、上側中間部材21の第2締結部32、及び、下側中間部材22の第2締結部32、を共通の第2締結部材3bにより締結することが好ましい。このようにすることで、用いる第2締結部材3bの数を減らすことができる。
【0065】
本発明に係る摩擦ダンパは、上述した実施形態で示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。上述した実施形態の摩擦ダンパ10では、3つの第1摺動板11のうちの1つの第1摺動板11aとして、上フランジ51aを利用しているが、この構成に限られない。3つの第1摺動板11が、上フランジ51aとは別の3つの板部材により構成されてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、第1ブレース片に設けられた3つの摺動板11を「第1摺動板」とし、第2ブレース片に設けられた2つの摺動板12を「第2摺動板」としたが、逆であってもよい。つまり、第2ブレース片を「第1構造材」とし、上述した2つの摺動板12を「2つの第1摺動板」とし、第1ブレース片を「第2構造材」とし、上述した3つの摺動板11の1つである摺動板11aを「2つの第1摺動板の間に挟み込まれる第2摺動板」としてもよい。かかる場合には、2つの摺動板12の間に、上述したような中間部材20を介在させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は摩擦ダンパに関する。
【符号の説明】
【0068】
1:架構
2:ブレース
2a:第1構造材
2b:第2構造材
3:締結部材
3a:第1締結部材
3b:第2締結部材
4:ナット部材
10:摩擦ダンパ
11、11a、11b、11c:第1摺動板
11a1、11b1、11c1:圧力調整用挿通孔
12、12a、12b:第2摺動板
12a1、12b1:圧力調整用挿通孔
13:圧力調整機構
20:中間部材
21:上側中間部材
22:下側中間部材
23:フィラープレート
24:フィラープレート
31:第1締結部
31a:挿通孔
32:第2締結部
32a:挿通孔
41a、41b、41c:第1摺動板の摩擦板
42a、42b、42c:第1摺動板の保持板
42a1、42b1、42c1:第1摺動板の締結挿通孔
43a、43b:第2摺動板の滑動板
44a、44b:第2摺動板の保持板
44a1、44b1:第2摺動板の締結挿通孔
45:ボルト部材
46:ナット部材
47:皿ばね
51a:第1構造材の上フランジ
51b:第2構造材の上フランジ
52a:第1構造材の下フランジ
52b:第2構造材の下フランジ
53a:第1構造材のウェブ
53b:第2構造材のウェブ
61、62:第1プレート
61a、62a:少なくとも2つの第1摺動板の間に介在し、第2プレートに積層されていない部分
61b、62b:積層部分
61b1、62b1:挿通孔
71、72:第2プレート
71a、72a:2つの第1摺動板の間に介在しない部分
A:ブレース長手方向
S1:ブレース片同士の間隙
S2:第1締結部と第1摺動板との間の間隙