(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】制振構造、制振ユニット及び設置方法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20231108BHJP
F16F 7/08 20060101ALI20231108BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F16F15/02 E
F16F7/08
E04H9/02 311
(21)【出願番号】P 2020061358
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】内海 良和
(72)【発明者】
【氏名】鈴井 康正
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲巳
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-231897(JP,A)
【文献】特開2014-109286(JP,A)
【文献】特開2016-142111(JP,A)
【文献】特開2020-172813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
F16F 7/08
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる構造材に取り付けられている第1引張部材及び第2引張部材と、
前記第1引張部材及び前記第2引張部材の相互間で支持されている制振装置と、を備え、
前記制振装置は、
前記第1引張部材に支持されている第1摺動部材と、
前記第2引張部材に支持され、前記第1摺動部材を相互間で挟み込み、前記第1摺動部材との間で摺動可能な第2摺動部材及び第3摺動部材と、を備え、
前記第2引張部材は、前記第2摺動部材及び前記第3摺動部材の少なくとも一方の摺動部材に対して、前記第1摺動部材が位置する内側とは反対の外側で、前記少なくとも一方の摺動部材を支持する支持部を備える、制振構造。
【請求項2】
前記第2摺動部材及び前記第3摺動部材は、前記第2引張部材に対して回動軸を介して回動可能に支持されており、
前記第2引張部材の前記支持部は、前記第2摺動部材及び前記第3摺動部材の前記少なくとも一方の摺動部の前記外側で、前記回動軸を支持している、請求項1に記載の制振構造。
【請求項3】
前記第2引張部材の前記支持部は、前記第2摺動部材の前記外側及び前記第3摺動部材の前記外側で、前記回動軸を支持している、請求項2に記載の制振構造。
【請求項4】
前記第1引張部材及び前記第2引張部材それぞれは、
一端側が前記構造材に取り付けられる長尺な本体部材と、
前記本体部材の他端側と前記制振装置とを接続する接続部材と、を備える、請求項1から3のいずれか1つに記載の制振構造。
【請求項5】
前記第2引張部材の前記接続部材は、
前記制振装置を支持する前記支持部を含む連結部材と、
前記本体部材及び前記連結部材と接合されている継手部材と、を備え、
前記本体部材は、前記本体部材及び前記継手部材を貫通する第1締結部材により、前記継手部材と締結されており、
前記連結部材は、前記本体部材が締結されている位置とは異なる位置で、前記連結部材及び前記継手部材を貫通する第2締結部材により、前記継手部材と締結されている、請求項4に記載の制振構造。
【請求項6】
異なる構造材に取り付けられている長尺な2つの本体部材に対して接続可能な第1接続部材及び第2接続部材と、前記第1接続部材及び前記第2接続部材の相互間で支持される制振装置と、を備える制振ユニットであって、
前記制振装置は、
前記第1接続部材に支持されている第1摺動部材と、
前記第2接続部材に支持され、前記第1摺動部材を相互間で挟み込み、前記第1摺動部材との間で摺動可能な第2摺動部材及び第3摺動部材と、を備え、
前記第2接続部材は、前記第2摺動部材及び前記第3摺動部材の少なくとも一方の摺動部材に対して、前記第1摺動部材が位置する内側とは反対の外側で、前記少なくとも一方の摺動部材を支持する支持部を備える、制振ユニット。
【請求項7】
異なる構造材に取り付けられている第1引張部材及び第2引張部材の相互間に制振装置を設置する設置方法であって、
前記制振装置は、
第1摺動部材と、
前記第1摺動部材を相互間で挟み込み、前記第1摺動部材との間で摺動可能な第2摺動部材及び第3摺動部材と、を備え、
前記第1引張部材を、前記第1摺動部材に取り付ける工程と、
前記第2引張部材のうち、前記第2摺動部材及び前記第3摺動部材の少なくとも一方の摺動部材を支持する支持部を、前記少なくとも一方の摺動部材に対して、前記第1摺動部材が位置する内側とは反対の外側に取り付ける工程と、を含む、設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振構造、制振ユニット及び設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、架構フレーム内で引張材によって支持された振動減衰装置を備える制振構造が知られている。特許文献1には、この種の制振構造が記載されている。特許文献1には、振動減衰装置のダンパの一例として、上板材と、この上板材を挟み込む両下板材と、の間で摩擦板及び滑動板が摺動してエネルギー吸収する摩擦ダンパが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の制振構造によれば、優れた制振効果を得ることができる。しかしながら、特許文献1に記載の制振構造は、例えば大地震時など、架構フレームに大荷重が作用した場合の制振性能(以下、「大荷重制振性能」と記載する。)の観点で、依然として改善の余地がある。
【0005】
特許文献1に記載の制振構造において大荷重制振性能を確保する場合に、一例として、摩擦ダンパでの摩擦抵抗を大きくすることが考えられる。摩擦ダンパでの摩擦抵抗を大きくした場合、この摩擦抵抗に耐えるために、例えば、引張部材としての引張材と、制振装置としての振動減衰装置と、の間の接合強度を高める必要がある。
図11は、特許文献1に記載の制振構造を示す図である。
図11に示すように、特許文献1に記載の制振構造1001において、引張材1004の偏平部1004aにおける振動減衰装置1005との接合部は、両下板材1008A、1008Bの間に配置されている。そのため、接合強度を高める目的で、引張材1004における振動減衰装置1005との接合部である偏平部1004aを大型化(厚肉化)させると、両下板材1008A、1008Bの間の上板材1009が挟み込まれる間隙も拡がる。これにより、摩擦ダンパの摺動部を構成する上板材1009、両下板材1008A、1008B、摩擦板1019A及び滑動板1019Bの厚みについても調整が必要になり得る。このように、特許文献1に記載の制振構造は、求められる制振性能の相違に対応し難い。
【0006】
本発明は、求められる制振性能の相違に対して容易に対応可能な、制振構造、制振ユニット、及び、設置方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様としての制振構造は、異なる構造材に取り付けられている第1引張部材及び第2引張部材と、前記第1引張部材及び前記第2引張部材の相互間で支持されている制振装置と、を備え、前記制振装置は、前記第1引張部材に支持されている第1摺動部材と、前記第2引張部材に支持され、前記第1摺動部材を相互間で挟み込み、前記第1摺動部材との間で摺動可能な第2摺動部材及び第3摺動部材と、を備え、前記第2引張部材は、前記第2摺動部材及び前記第3摺動部材の少なくとも一方の摺動部材に対して、前記第1摺動部材が位置する内側とは反対の外側で、前記少なくとも一方の摺動部材を支持する支持部を備える。
この構成により、求められる制振性能の相違に対して容易に対応できる。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記第2摺動部材及び前記第3摺動部材は、前記第2引張部材に対して回動軸を介して回動可能に支持されており、前記第2引張部材の前記支持部は、前記第2摺動部材及び前記第3摺動部材の前記少なくとも一方の摺動部の前記外側で、前記回動軸を支持している。
この構成により、支持部を簡易な構成としつつ、求められる制振性能の相違に対して容易に対応できる。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記第2引張部材の前記支持部は、前記第2摺動部材の前記外側及び前記第3摺動部材の前記外側で、前記回動軸を支持している。
この構成により、支持部の、第2摺動部材の外側、及び、第3摺動部材の外側、それぞれを小型化できると共に、第1摺動部材を挟む両側での支持部の剛性差の発生を抑制できる。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記第1引張部材及び前記第2引張部材それぞれは、一端側が前記構造材に取り付けられる長尺な本体部材と、前記本体部材の他端側と前記制振装置とを接続する接続部材と、を備える。
この構成により、制振装置の現場での組み立てを無くし、施工効率を高めることができる。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記第2引張部材の前記接続部材は、前記制振装置を支持する前記支持部を含む連結部材と、前記本体部材及び前記連結部材と接合されている継手部材と、を備え、前記本体部材は、前記本体部材及び前記継手部材を貫通する第1締結部材により、前記継手部材と締結されており、前記連結部材は、前記本体部材が締結されている位置とは異なる位置で、前記連結部材及び前記継手部材を貫通する第2締結部材により、前記継手部材と締結されている。
この構成により、第1締結部材及び第2締結部材それぞれの長さを、連結部材及び本体部材を一緒に締結するための締結部材の長さよりも短くすることができ、汎用性の高い高力ボルトなどが利用可能となる。
【0012】
本発明の第2の態様としての制振ユニットは、異なる構造材に取り付けられている長尺な2つの本体部材に対して接続可能な第1接続部材及び第2接続部材と、前記第1接続部材及び前記第2接続部材の相互間で支持される制振装置と、を備える制振ユニットであって、前記制振装置は、前記第1接続部材に支持されている第1摺動部材と、前記第2接続部材に支持され、前記第1摺動部材を相互間で挟み込み、前記第1摺動部材との間で摺動可能な第2摺動部材及び第3摺動部材と、を備え、前記第2接続部材は、前記第2摺動部材及び前記第3摺動部材の少なくとも一方の摺動部材に対して、前記第1摺動部材が位置する内側とは反対の外側で、前記少なくとも一方の摺動部材を支持する支持部を備える。
この構成により、求められる制振性能の相違に対して容易に対応できる。
【0013】
本発明の第1の態様としての設置方法は、異なる構造材に取り付けられている第1引張部材及び第2引張部材の相互間に制振装置を設置する設置方法であって、前記制振装置は、第1摺動部材と、前記第1摺動部材を相互間で挟み込み、前記第1摺動部材との間で摺動可能な第2摺動部材及び第3摺動部材と、を備え、前記第1引張部材を、前記第1摺動部材に取り付ける工程と、前記第2引張部材のうち、前記第2摺動部材及び前記第3摺動部材の少なくとも一方の摺動部材を支持する支持部を、前記少なくとも一方の摺動部材に対して、前記第1摺動部材が位置する内側とは反対の外側に取り付ける工程と、を含む。
この方法により、求められる制振性能の相違に対して容易に対応できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、求められる制振性能の相違に対して容易に対応可能な、制振構造、制振ユニット、及び、設置方法、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態としての制振構造を示す図である。
【
図2】
図1に示す制振構造における本発明の一実施形態としての制振ユニットを拡大して示す拡大図である。
【
図5】本発明の一実施形態としての制振装置を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態としての制振装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る、制振構造、制振ユニット、及び、設置方法、の実施形態について図面を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての制振構造1を示す図である。
図1に示すように、制振構造1は、架構フレーム2と、複数の引張部材3と、制振装置4と、を備える。
図1では、制振装置4を簡略化して示している。制振装置4の詳細は後述する(
図2等参照)。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の架構フレーム2は、異なる構造材として、建物の2本の柱部材5と、この2本の柱部材5に架設されている2本の上下の梁部材6と、を備える。本実施形態の架構フレーム2は、構面に垂直な方向から見た正面視(
図1参照)において、2本の柱部材5及び2本の梁部材6からなる矩形状であるが、架構フレーム2の正面視での形状は特に限定されない。柱部材5は、例えば角形鋼管により構成されてよい。また、梁部材6は、例えばH形鋼により構成されてよい。但し、柱部材5及び梁部材6の断面形状及び材料は、上述の断面形状及び材料に限定されない。また、後述する引張部材3は、本実施形態では、架構フレーム2における構造材としての柱部材5及び梁部材6に取り付けられているが、架構フレーム2以外の構造材に取り付けられてもよい。
【0019】
図1に示すように、複数の引張部材3は、架構フレーム2の異なる位置に取り付けられている。具体的に、本実施形態の制振構造1は、4本の長尺な引張部材3としての引張ブレースを備える。本実施形態の4本の長尺な引張部材3それぞれは、架構フレーム2の四隅それぞれに取り付けられている。より具体的に、各引張部材3の一端側は、柱部材5及び梁部材6の接合部の近傍に設けられたガゼットプレートなどの固定部7に対して、例えば高力ボルトなどの締結部材8を用いて締結されている。各引張部材3の他端側は、固定部7に固定されている一端側から、架構フレーム2の中央に向かって対角線上に延在している。各引張部材3の他端は、架構フレーム2の中央部で終端している。
【0020】
本実施形態の制振構造1は、4本の引張部材3を備えるが、2本以上であればその数は特に限定されない。また、本実施形態の各引張部材3の一端側は、柱部材5及び梁部材6の接合部近傍に接合されているが、その接合位置は特に限定されない。したがって、引張部材3の一端側が、柱部材5の柱脚部又は柱頭部に接合されていてもよく、上下いずれかの梁部材6に接合されていてもよい。更に、本実施形態の各引張部材3の他端側は、柱部材5及び梁部材6の接合部近傍に接合されている一端側から架構フレーム2の対角線上に延在しているが、その延在方向についても特に限定されない。複数の引張部材3は、架構フレーム2に層間変位が生じる際に、その引張力が制振装置4に対して作用するように配置されていれば、その構成及び配置は特に限定されない。
【0021】
図1に示すように、制振装置4は、複数の引張部材3の相互間で支持されている。具体的に、本実施形態の制振装置4は、各引張部材3のうち固定部7に固定されている一端側とは反対側の他端側で、4本の引張部材3の相互間で支持されている。より具体的に、本実施形態の制振装置4は、架構フレーム2の中央部で、4本の引張部材3の相互間で支持されている。換言すれば、制振装置4は、異なる構造材に取り付けられている第1引張部材3a及び第2引張部材3bの相互間に支持されている。
図1に示す例では、架構フレーム2の各対角線上に位置し、制振装置4を挟んで両側に位置する2つの引張部材3が、上述の第1引張部材3a及び第2引張部材3bに該当する。
【0022】
図2は、
図1の制振装置4近傍を拡大して示す拡大図である。
図3は、
図2のI-I線に沿う断面図である。
図4は、
図2のII-II線に沿う断面図である。
図2~
図4に示すように、制振装置4は、第1摺動部材11と、第2摺動部材12と、第3摺動部材13と、を備える。本実施形態の第1摺動部材11は、中板である。また、本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、外板である。
【0023】
第1摺動部材11は、複数の引張部材3のうち第1引張部材3aに支持されている。本実施形態の制振構造1は、2本の第1引張部材3aを備える。また、第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、複数の引張部材3のうち第2引張部材3bに支持されている。本実施形態の制振構造1は、2本の第2引張部材3bを備える。更に、第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、第1摺動部材11を相互間で挟み込み、第1摺動部材11との間で摺動可能に構成されている。本実施形態の制振装置4の詳細については後述する。
【0024】
ここで、第2引張部材3bは、第2摺動部材12の外側及び第3摺動部材13の外側で、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を支持する支持部21を備える。「第2摺動部材12の外側」とは、第2摺動部材12に対して第1摺動部材11が位置する内側とは反対側を意味し、
図4では第2摺動部材12に対して左側を意味する。また、「第3摺動部材13の外側」とは、第3摺動部材13に対して第1摺動部材11が位置する内側とは反対側を意味し、
図4では第3摺動部材13に対して右側を意味する。より具体的には、
図2~
図4に示すように、本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13それぞれには、回動軸を挿通可能な軸挿通孔12a、13aが形成されている。そして、本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13では、上述の軸挿通孔12a、13aに、共通の回動軸としての第2回動軸部材62が挿通されている。本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、第2回動軸部材62を回動軸として第2回動軸部材62周りを回動可能である。また、本実施形態の第2引張部材3bの支持部21は、この第2回動軸部材62を、第2摺動部材12の外側及び第3摺動部材13の外側で支持している。詳細は後述するが、本実施形態の支持部21は、第2引張部材3bの接続部材32の軸挿通孔32aの内面により構成されている(
図4参照)。つまり、本実施形態の第2引張部材3bの支持部21は、第2摺動部材12の外側、及び、第3摺動部材13の外側で、第2回動軸部材62を介して、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を支持している。この詳細は後述する。
【0025】
なお、本実施形態の支持部21は、第2摺動部材12の外側及び第3摺動部材13の外側の両方の位置で、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を支持しているが、この構成に限られない。支持部21は、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の少なくとも一方の摺動部材に対して、その外側で、この少なくとも一方の摺動部材を支持していてもよい。但し、本実施形態の支持部21のように、第2摺動部材12の外側及び第3摺動部材13の外側の両方の位置で、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を支持することが好ましい。この詳細は後述する。
【0026】
以上のように、第2引張部材3bの支持部21が、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の少なくとも一方の摺動部材を、その外側で支持することにより、その内側で支持する構成と比較して、支持部21が大型化しても、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の内側の間隙の大きさには影響し難い。つまり、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の間に挟み込まれる第1摺動部材11が、支持部21の大型化に伴って大型化することを抑制できる。そのため、制振構造1によれば、求められる制振性能の相違に対して容易に対応できる。
【0027】
以下、
図2~
図4を参照して、本実施形態の複数の引張部材3及び制振装置4の更なる詳細について説明する。
【0028】
[引張部材3]
本実施形態の複数の引張部材3としての引張ブレースそれぞれは、長尺な本体部材31と、接続部材32と、を備える。本実施形態の本体部材31は、帯板状の本体ブレース材である。また、第1引張部材3aにおいて、本実施形態の接続部材32は、本体ブレース材と制振装置4とを接続する接合プレートにより構成される。その一方で、第2引張部材3bにおいて、本実施形態の接続部材32は、本体ブレース材と制振装置4とを接続する接合プレート及びスプライスプレートにより構成される。
【0029】
長尺な本体部材31は、一端側が架構フレーム2(
図1参照)に取り付けられている。より具体的に、本実施形態の本体部材31の一端部は、上述したように、架構フレーム2(
図1参照)の四隅のいずれかに固定されている。本実施形態の本体部材31は、上記一端部から他端側に向かって架構フレーム2(
図1参照)の対角線上に延在している。
【0030】
接続部材32は、長尺な本体部材31の他端側と制振装置4とを接続している。本体部材31及び接続部材32は、本体部材31及び接続部材32に形成されている挿通孔を貫通する例えば高力ボルトなどの締結部材8を用いて締結されている。この詳細は後述する。制振装置4及び接続部材32には、回動軸としての第1回動軸部材61及び第2回動軸部材62を挿通可能な軸挿通孔が形成されている。制振装置4及び接続部材32は、これら制振装置4及び接続部材32に形成された軸挿通孔に挿通される第1回動軸部材61及び第2回動軸部材62の外周面により、第1回動軸部材61周り及び第2回動軸部材62周りを回動可能に支持される。この詳細は後述する。
【0031】
本実施形態の各引張部材3では、本体部材31及び接続部材32が高力ボルトなどの締結部材8を用いて締結されている。
図4に示すように、第1引張部材3aでは、帯板状の鋼材からなる本体部材31と、平板状の鋼材からなる接続部材32とが、フィラープレート33を間に挟み込んだ状態で、締結部材8としての高力ボルトにより、締結されている。
【0032】
図4に示すように、第2引張部材3bの接続部材32は、連結部材51としての接合プレート、及び、継手部材52としてのスプライスプレート、を備える。第2引張部材3bでは、帯板状の鋼材からなる本体部材31と、平板状の鋼材からなる継手部材52とが、締結部材8としての高力ボルトにより、締結されている。また、平板状の鋼材からなる継手部材52と、同じく平板状の連結部材51とが、フィラープレート34を間に挟み込んだ状態で、締結部材8としての高力ボルトにより、締結されている。なお、
図4では、締結部材8が簡略化されて描かれている。
【0033】
このように、本実施形態の制振構造1では、制振装置4を相互間で支持する複数の引張部材3それぞれが、本体部材31と接続部材32とを備える。このようにすることで、制振装置4の輸送性を高めることができる。つまり、接続部材32を制振装置4に対して接続した制振ユニット100の状態で輸送することにより、予め完成した制振装置4を建設現場に輸送できる。そのため、建設現場で制振装置4を組み立てる手間を無くし、施工効率を高めることができる。
【0034】
より具体的に、本実施形態の制振装置4は、第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を挟む一対のリンク部材14としての一対の縦板を備える。また、本実施形態の第1回動軸部材61及び第2回動軸部材62それぞれは、第1摺動部材11、第2摺動部材12、第3摺動部材13及び一対のリンク部材14を全てに挿通されている。更に、第1回動軸部材61及び第2回動軸部材62それぞれは、引張部材3の接続部材32の軸挿通孔32aにも挿通されている。ここで、第1回動軸部材61及び第2回動軸部材62の軸方向において、引張部材3の接続部材32は、一対のリンク部材14の間に位置する。そのため、引張部材3の接続部材32は、制振装置4の一対のリンク部材14のいずれかを取り外さない限り、第1回動軸部材61及び第2回動軸部材62から着脱できない。つまり、本実施形態の引張部材3の接続部材32は、制振装置4を分解しない限り、制振装置4に対して着脱できない。したがって、仮に、引張部材3が架構フレーム2(
図1参照)に取り付けられている一端側から、制振装置4を支持する他端側まで、一体の材料で形成されている場合、制振装置4は、建設現場において組み立てる必要がある。これに対して、本実施形態の引張部材3は、本体部材31と接続部材32とに分離可能である。そのため、接続部材32を制振装置4に取り付けた状態で、予め制振装置4を完成させておくことで、制振装置4の現場での組み立てを無くし、施工効率を高めることができる。
【0035】
また、本実施形態の複数の引張部材3は、第1引張部材3aと、第2引張部材3bと、を含む。第1引張部材3aは、第1摺動部材11を回動可能に支持する。第2引張部材3bは、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を回動可能に支持する。
【0036】
より具体的に、第1引張部材3aの接続部材32には、第1回動軸部材61を挿通可能な軸挿通孔32aが形成されている。また、制振装置4の第1摺動部材11には、第1回動軸部材61を挿通可能な軸挿通孔11aが形成されている。更に、制振装置4の一対のリンク部材14の各リンク部材14a、14bにおいても、第1回動軸部材61を挿通可能な軸挿通孔14a1、14b1が形成されている。したがって、第1回動軸部材61は、第1引張部材3aの接続部材32の軸挿通孔32aと、制振装置4の第1摺動部材11の軸挿通孔11aと、制振装置4の一対のリンク部材14の軸挿通孔14a1、14b1と、に貫通している。これにより、制振装置4の第1摺動部材11及び各リンク部材14a、14bは、第1引張部材3aの接続部材32に対して、第1回動軸部材61を介して、回動可能に支持される。なお、本実施形態のように、各リンク部材14a、14bと、接続部材32との間に、軸挿通孔63aが形成されている板状のスペーサ63が配置されてもよい。
【0037】
また、第2引張部材3bの接続部材32には、第2回動軸部材62を挿通可能な軸挿通孔32aが形成されている。また、制振装置4の第2摺動部材12には、第2回動軸部材62を挿通可能な軸挿通孔12aが形成されている。更に、制振装置4の第3摺動部材13には、第2回動軸部材62を挿通可能な軸挿通孔13aが形成されている。また更に、制振装置4の一対のリンク部材14の各リンク部材14a、14bには、第2回動軸部材62を挿通可能な軸挿通孔14a2、14b2が形成されている。したがって、第2回動軸部材62は、第2引張部材3bの接続部材32の軸挿通孔32aと、制振装置4の第2摺動部材12の軸挿通孔12aと、制振装置4の第3摺動部材13の軸挿通孔13aと、制振装置4の一対のリンク部材14の軸挿通孔14a2、14b2と、に貫通している。これにより、制振装置4の第2摺動部材12、第3摺動部材13及び各リンク部材14a、14bは、第2引張部材3bの接続部材32に対して、第2回動軸部材62を介して、回動可能に支持される。
【0038】
上述したように、本実施形態の第2引張部材3bの接続部材32は、連結部材51及び継手部材52を備える。連結部材51は、制振装置4を支持する支持部21を含む。また、継手部材52は、本体部材31及び連結部材51と接合されている。本実施形態の第2引張部材3bの本体部材31は、本体部材31及び継手部材52を貫通する第1締結部材8aとしての高力ボルトにより、継手部材52と締結(本実施形態ではねじ締結)されている。また、本実施形態の第2引張部材3bの連結部材51は、本体部材31が締結されている位置とは異なる位置で、連結部材51及び継手部材52を貫通する第2締結部材8bとしての高力ボルトにより、継手部材52と締結(本実施形態ではねじ締結)されている。このようにすることで、第1締結部材8a及び第2締結部材8bそれぞれの長さを、連結部材51及び本体部材31を一緒に締結するための締結部材の長さよりも短くすることができる。このようにすることで、第1締結部材8a及び第2締結部材8bとして、汎用性の高い高力ボルトなどが利用可能となる。そのため、求められる制振性能の変化に対応し易くなると共に、部品コストを下げることができる。
【0039】
なお、本実施形態の各引張部材3の接続部材32は、帯板状の本体部材31の厚み方向の両面それぞれに取り付けられている。
【0040】
本実施形態において、第1引張部材3aの2つの接続部材32それぞれは、本体部材31の表面上に積層される単一の板体から構成されている。第1引張部材3aの2つの接続部材32それぞれと、本体部材31と、の相互間にはフィラープレート33が挟み込まれている。
【0041】
これに対して、本実施形態において、第2引張部材3bの2つの接続部材32それぞれは、上述したように、連結部材51及び継手部材52により構成されている。第2引張部材3bの連結部材51及び継手部材52は、相互間にフィラープレート34が挟み込まれている状態で、高力ボルトなどの第2締結部材8bにより締結されている。
【0042】
なお、第2引張部材3bは、本体部材31の厚み方向の一方側の面に取り付けられる1つのみの接続部材32を備える構成であってもよい。但し、本実施形態のように、第2引張部材3bは、本体部材31の厚み方向の両面それぞれに取り付けられる2つの接続部材32を備えることが好ましい。このようにすることで、第2引張部材3bの引張力は、本体部材31の厚み方向の両側で、制振装置4に作用する。これにより、第2引張部材3bの引張力が、本体部材31の厚み方向の一方側に偏って、制振装置4に作用することを抑制できる。
【0043】
換言すれば、接続部材32の数、及び、接続部材32の本体部材31に対する固定位置は、制振装置4に対して意図しない外力が入力されないように、制振装置4の構成に合わせて適宜設計されればよい。なお、本実施形態の4本の引張部材3の4つの本体部材31の引張軸線は、制振装置4の第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13による摺動面と略平行な同一面内で作用する。更に、本実施形態の4本の引張部材3の4つの本体部材31の引張軸線は、制振装置4の重心位置又はその近傍を通過する。このような本体部材31の場合は、本実施形態のように、本体部材31を挟んで両側に接続部材32を取り付けることが特に好ましい。このようにすることで、制振装置4を偏心させるような不要な外力が作用することを、より抑制できる。
【0044】
[制振装置4]
本実施形態の制振装置4は、上述した第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13に加えて、2組の一対のリンク部材14を備える。以下、各部材の詳細について説明する。
【0045】
本実施形態の第1摺動部材11は、第1摺動材41と、この第1摺動材41を保持する保持板42と、を備える。本実施形態の保持板42は、第1回動軸部材61を介して、第1引張部材3aに対して回動可能に支持されている。保持板42の両面それぞれには、第1摺動材41が取り付けられている。第1摺動材41は保持板42に対して固着されていればよく、例えば接着など、その取り付け方法は特に限定されない。第1摺動材41は、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の第1摺動部材11と対向する面に取り付けられた後述の第2摺動材43と摺動する。制振装置4は、第1摺動材41及び第2摺動材43が相互間で摺動することにより、例えば地震エネルギーなどの、架構フレーム2(
図1参照)に入力される入力エネルギーを吸収できる。
【0046】
第1摺動材41は、滑動板又は摩擦板のいずれか一方である。滑動板は、例えばステンレス、チタンなどの金属から構成される。摩擦板は、滑動板との間で適当な摩擦力を発生するものであればよい。第1摺動材41が摩擦板であり、後述する第2摺動材43がステンレス製の滑動板である場合には、第1摺動材41としての摩擦板は、例えば、熱硬化性樹脂を結合材として、主に、繊維材料と、摩擦調整材と、充填剤と、から構成される摩擦材料により形成可能である。繊維材料としては、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、カーボンファイバーなどが挙げられる。摩擦調整材としては、例えば、カシューダスト、鉛などが挙げられる。充填剤としては、例えば、硫酸バリュームなどが挙げられる。摩擦板には、上述の摩擦材料を単独で用いてもよく、上述の摩擦材料に鋼板などを裏打ちして強度を高めたものを用いてもよい。
【0047】
本実施形態の第1摺動部材11は、第1摺動材41及び保持板42により構成されているが、この構成に限られない。第1摺動部材11は、第2摺動部材12及び第3摺動部材13に挟み込まれて、第2摺動部材12及び第3摺動部材13に対して摺動することにより、所望の制振性能を得られるものであれば特に限定されず、例えば、単一の板材により構成されていてもよい。
【0048】
第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、第2引張部材3bに対して、回動軸としての第2回動軸部材62を介して回動可能に支持されている。より具体的に、本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13それぞれは、第2摺動材43と、この第2摺動材43を保持する保持板44と、を備える。本実施形態の保持板44は、第2回動軸部材62を介して、第2引張部材3bに対して回動可能に支持されている。第2摺動部材12及び第3摺動部材13それぞれの保持板44の両面のうち第1摺動部材11の保持板42と対向する対向面には、第2摺動材43が取り付けられている。第2摺動材43は保持板44に対して固着されていればよく、例えば接着など、その取り付け方法は特に限定されない。第2摺動材43は、第1摺動部材11の保持板42に取り付けられている上述の第1摺動材41と摺動する。
【0049】
第2摺動材43は、滑動板又は摩擦板のいずれか一方である。具体的に、第1摺動材41が滑動板である場合、第2摺動材43は摩擦板である。また、第1摺動材41摩擦板である場合、第2摺動材43は滑動板である。なお、第1摺動材41及び第2摺動材43のうち、摺動し得る面積が広いものを滑動板により構成し、摺動し得る面積が小さいものを摩擦板により構成することが好ましい。
【0050】
本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13それぞれは、第2摺動材43及び保持板44により構成されているが、この構成に限られない。第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、相互間に第1摺動部材11を挟み込み、第1摺動部材11に対して摺動することにより、所望の制振性能を得られるものであれば特に限定されない。したがって、第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、例えば、単一の板材により構成されていてもよい。また、第2摺動部材12及び第3摺動部材13のいずれか一方のみが、例えば、単一の板材により構成されていてもよい。
【0051】
図2~
図4に示すように、本実施形態の制振装置4では、第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13が積層されている積層部4aを備える。本実施形態の積層部4aでは、第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13が、架構フレーム2の正面視(
図1参照)で奥行き方向に積層されている。以下、この第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13が積層されている方向を単に「積層方向A」と記載する。
【0052】
上述した第1摺動部材11の第1摺動材41、並びに、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の第2摺動材43、は積層部4aにおいて相互に当接している。したがって、本実施形態の制振装置4は、この積層部4aで、第1摺動部材11の第1摺動材41と、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の第2摺動材43と、が積層方向Aと直交する方向に摺動することで、摩擦ダンパとして機能する。以下、説明の便宜上、「積層方向Aと直交する方向」を単に「摺動面内方向B」と記載する。積層部4aでの第1摺動材41及び第2摺動材43の相互間での積層方向Aの押圧力は、積層部4aで第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を貫通する高力ボルト等の締結部材8と、この締結部材8に連結されている弾性部材としての皿ばね64と、を含む押圧機構を用いて調整される。第1摺動部材11の積層部4aの位置には、押圧機構の締結部材8が摺動面内方向Bに移動可能な長孔11bが形成されている。但し、押圧機構は、第1摺動材41及び第2摺動材43の相互間の積層方向Aの押圧力を調整可能であればよく、その構成は本実施形態の構成に限定されない。
【0053】
また、本実施形態の第1摺動部材11は、積層部4a以外の位置で、第1引張部材3aに対して回動可能に連結されている。具体的には、
図4に示すように、本実施形態の第1摺動部材11の保持板42は、積層部4aの位置から積層部4aの外側、すなわち、第2摺動部材12及び第3摺動部材13と重ならない位置まで延在している。より具体的に、本実形態の第1摺動部材11の保持板42は、積層部4aの位置から摺動面内方向Bのうち鉛直方向下側に向かって延設されている。本実施形態の保持板42には、積層部4aの外側であって、第1摺動材41が積層されていない位置に、第1回動軸部材61を挿通可能な、積層方向Aに貫通する軸挿通孔11aが形成されている。本実施形態の第1摺動部材11は、保持板42の軸挿通孔11aに第1回動軸部材61が挿通されることで、第1回動軸部材61の外周面上に支持される。この第1回動軸部材61は、上述したように、保持板42の軸挿通孔11aのみならず、第1引張部材3aに形成されている軸挿通孔32aにも挿通されている。つまり、本実施形態の保持板42及び第1引張部材3aは、共通の第1回動軸部材61の外周面上に回動可能に支持されている。これにより、本実施形態の第1摺動部材11は、積層部4a以外の位置で、第1回動軸部材61を介して、第1引張部材3aに対して回動可能に支持されている。
【0054】
更に、本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、積層部4a以外の位置で、第2引張部材3bに対して回動可能に連結されている。具体的に、本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13の保持板44は、積層部4aの位置から積層部4aの外側、すなわち、第1摺動部材11と重ならない位置まで延在している。より具体的に、本実形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13の保持板44は、積層部4aの位置から摺動面内方向Bのうち鉛直方向上側に向かって延設されている。本実施形態の保持板44には、積層部4aの外側であって、第2摺動材43が積層されていない位置に、第2回動軸部材62を挿通可能な、積層方向Aに貫通する軸挿通孔12a、13aが形成されている。本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、保持板44の軸挿通孔12a、13aに第2回動軸部材62が挿通されることで、第2回動軸部材62の外周面上に支持される。この第2回動軸部材62は、保持板44の軸挿通孔12a、13aのみならず、第2引張部材3bに形成されている軸挿通孔32aにも挿通されている。つまり、本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13の保持板44、並びに、第2引張部材3bは、共通の第2回動軸部材62の外周面上に回動可能に支持されている。これにより、本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、第2回動軸部材62を介して、第2引張部材3bに対して回動可能に支持されている。
【0055】
また、本実施形態の制振装置4は、上述したように、2組の一対のリンク部材14を備える。1組の一対のリンク部材14は、摺動面内方向Bのうち水平方向の一方側(本実施形態では架構フレーム2の正面視(
図1参照)における左側)に配置されている。また、別の1組の一対のリンク部材14は、摺動面内方向Bのうち水平方向の他方側(本実施形態では架構フレーム2の正面視(
図1参照)における右側)に配置されている。一対のリンク部材14のうち一方のリンク部材14aは、第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を挟んで積層方向Aの一方側(本実施形態では架構フレーム2の正面視(
図1参照)における手前側)に配置されている。また、一対のリンク部材14の他方のリンク部材14bは、第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を挟んで積層方向Aの他方側(本実施形態では架構フレーム2の正面視(
図1参照)における奥行き側)に配置されている。
【0056】
更に、一対のリンク部材14の各リンク部材14a、14bは、帯板状の外形を有する。そして、一対のリンク部材14は、第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を挟んで積層方向Aに対向して配置されている。また、上述したように、各リンク部材14a、14bには、第1回動軸部材61を挿通可能な軸挿通孔14a1、14b1と、第2回動軸部材62を挿通可能な軸挿通孔14a2、14b2と、の両方が形成されている。そのため、第1回動軸部材61は、上述した第1摺動部材11に加えて、対向して配置される一対のリンク部材14にも挿通されている。また、第2回動軸部材62は、上述した第2摺動部材12及び第3摺動部材13に加えて、対向して配置されている一対のリンク部材14にも挿通されている。したがって、各リンク部材14a、14bは、第1回動軸部材61及び第2回動軸部材62のそれぞれの外周面上に回動可能に支持されている。
【0057】
以上のように、本実施形態の制振装置4では、第1摺動部材11及び各リンク部材14a、14bが、第1回動軸部材61を介して、第1引張部材3aに対して、積層方向Aと直交する面内で回動可能に支持されている。また、本実施形態の制振装置4では、第2摺動部材12、第3摺動部材13及び各リンク部材14a、14bが、第2回動軸部材62を介して、第2引張部材3bに対して、積層方向Aと直交する面内で回動可能に支持されている。より具体的に、本実施形態の第1回動軸部材61は、架構フレーム2の正面視(
図1参照)において、第1摺動部材11の鉛直方向下側の左右の両端部それぞれで、第1摺動部材11及び各リンク部材14a、14bに挿通されている。また、本実施形態の第2回動軸部材62は、架構フレーム2の正面視(
図1参照)において、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の鉛直方向上側の左右の両端部それぞれで、第2摺動部材12、第3摺動部材13及び各リンク部材14a、14bに挿通されている。そして、本実施形態の2本の第1回動軸部材61の鉛直方向の位置は略等しい。また、本実施形態の2本の第2回動軸部材62の鉛直方向の位置についても略等しい。更に、架構フレーム2の正面視(
図1参照)で左右方向の一方側に位置する1本の第1回動軸部材61と1本の第2回動軸部材62の左右方向の位置は略等しい。また更に、架構フレーム2の正面視(
図1参照)で左右方向の他方側に位置する1本の第1回動軸部材61と1本の第2回動軸部材62の左右方向の位置についても略等しい。
【0058】
このようにすることで、本実施形態の第1摺動部材11、第2摺動部材12、第3摺動部材13、及び、2組の一対のリンク部材14は、1つの平行リンク機構を構成している。つまり、この平行リンク機構では、2組の一対のリンク部材14の各リンク部材14a、14bが、2本の第1回動軸部材61及び2本の第2回動軸部材62を関節軸として第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13に対して、積層方向Aと直交する面内で回動する。これにより、第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、第1摺動部材11と、第2摺動部材12及び第3摺動部材13それぞれと、が互いに平行な姿勢を保ったまま、相対移動することができる。この平行リンク機構は、制振対象となる架構フレーム2(
図1参照)と機構上略相似になるように設計されている。
【0059】
図1に示すように、架構フレーム2が変形していない定常状態では、平行リンク機構の関節軸をなす4本の回動軸部材(2本の第1回動軸部材61及び2本の第2回動軸部材62)に対し、4本の引張部材3を介して架構フレーム2の対角線方向に均等な力が作用する。そのため、
図1では、第1摺動部材11、第2摺動部材12、第3摺動部材13及び2組の一対のリンク部材14、で構成される平行リンク機構が、架構フレーム2の形状と相似形をなす長方形に保持されている。
【0060】
これに対して、架構フレーム2が水平荷重により変形した非定常状態では、架構フレーム2の2本の対角線のうち一方の対角線上に張られた2本の引張部材3の張力が、他方の対角線上に張られた2本の引張部材3の張力よりも大きくなる。そのため、平行リンク機構は、架構フレーム2に追従して変形する。このような平行リンク機構を用いることで、第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、第1摺動部材11と、第2摺動部材12及び第3摺動部材13それぞれと、が互いに平行な姿勢に保たれたまま、相対移動する。そのため、第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の摺動方向を、直動方向に保持することができる。このように、第1摺動部材11、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の摺動方向を直動方向にガイドする平行リンク機構を設けることで、高い制振性能を効率よく発揮できる制振装置4を実現し易くなる。
【0061】
[第2引張部材3bの支持部21]
次に、本実施形態の第2引張部材3bの支持部21の詳細について説明する。上述したように、本実施形態の第2引張部材3bの支持部21は、第2摺動部材12の外側、及び、第3摺動部材13の外側で、回動軸としての第2回動軸部材62を支持している。すなわち、本実施形態の第2引張部材3bの支持部21は、回動軸としての第2回動軸部材62を介して、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を間接的に支持している。
【0062】
但し、第2引張部材3bの支持部21は、第2摺動部材12の外側、及び、第3摺動部材13の外側、のいずれか一方で、回動軸としての第2回動軸部材62を支持していてもよい。このようにすることで、支持部21を簡易な構成としつつ、求められる制振性能の相違に対して容易に対応可能な制振構造1を実現できる。但し、本実施形態のように、第2引張部材3bの支持部21は、第2摺動部材12の外側、及び、第3摺動部材13の外側、の両方で、回動軸としての第2回動軸部材62を支持していることが好ましい。このようにすれば、支持部21の、第2摺動部材12の外側、及び、第3摺動部材13の外側、それぞれを小型化(薄肉化)できると共に、第1摺動部材11を挟む両側での支持部21の剛性差の発生を抑制できる。これにより、制振装置4の一部に意図しない局所的な外力が作用することを抑制できる。
【0063】
上述したように、本実施形態の第2引張部材3bの接続部材32には、第2回動軸部材62が挿通される軸挿通孔32aが形成されている。つまり、本実施形態の第2引張部材3bの支持部21は、上述の接続部材32の軸挿通孔32aの内面により構成されている。より具体的に、本実施形態の第2引張部材3bの支持部21は、接続部材32の連結部材51に形成されている軸挿通孔32aの内面により構成されている。
【0064】
また、上述したように、本実施形態の第2引張部材3bは、本体部材31の厚み方向(本実施形態では積層方向Aと同じ方向)の両側に取り付けられている2つの接続部材32を備える。そして、第2回動軸部材62は、2つの接続部材32の両方の軸挿通孔32aに挿通されている。そのため、本実施形態の第2引張部材3bの支持部21は、2つの接続部材32の軸挿通孔32aの内面により構成されている。
【0065】
以下、
図4を参照して、第1引張部材3a、第2引張部材3b、及び、制振装置4の各部材、の積層方向Aにおける位置関係について説明する。
【0066】
図4に示すように、本実施形態において、第1引張部材3aの本体部材31、第1摺動部材11、及び、第2引張部材3bの本体部材31、は積層方向Aの同一層内に配置されている。以下、説明の便宜上、第1引張部材3aの本体部材31、第1摺動部材11、及び、第2引張部材3bの本体部材31が属する層を「第1層」と記載する。本実施形態の第1引張部材3a、第2引張部材3b、及び、制振装置4の各部材は、第1層を挟んで積層方向Aの両側で対称な構造を有する。したがって、ここでは、第1層を挟んで積層方向Aの一方側の構成について説明する。
【0067】
図4に示すように、本実施形態において、第1層に対して積層方向Aの一方側に隣接する位置に、第1引張部材3aの接続部材32、第2摺動部材12(他方側は第3摺動部材13)、及び、第2引張部材3bの接続部材32の継手部材52、が属する第2層が設けられている。更に、この第2層に対して第1層側とは反対側で隣接する位置には、第2引張部材3bの接続部材32の連結部材51、及び、スペーサ63、が属する第3層が設けられている。また、この第3層に対して第1層側とは反対側で隣接する位置には、一対のリンク部材14のうち一方のリンク部材14aが属する第4層が設けられている。
【0068】
このように、第2引張部材3bの連結部材51は、積層方向Aにおいて第3層に属し、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の間の第1層には属さない。そのため、例えば接合強度などの理由で、連結部材51が積層方向Aに厚肉化されたとしても、これによって、第1層の層厚が厚肉化されない。そのため、第1層に属する第1摺動部材11の肉厚を変動させずに、上述した連結部材51を厚肉化できる。
【0069】
したがって、架構フレーム2(
図1参照)に取り付けられている複数の引張部材3の相互間に制振装置4を設置する設置方法としては、本実施形態のように第1引張部材3aを、第1摺動部材11に取り付ける工程と、本実施形態のように第2引張部材3bを、第2摺動部材12及び第3摺動部材13に取り付ける工程と、を含むものとする。そして、第2引張部材3bのうち、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の少なくとも一方の摺動部材を支持する支持部21を、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の少なくとも一方に対して、第1摺動部材11が位置する内側とは反対の外側に取り付ける。このようにすれば、第1層に属する第1摺動部材11の肉厚を変動させずに、上述した支持部21を含む連結部材51を厚肉化させ易くなる。
【0070】
また、本実施形態の制振構造1では、積層方向Aで第1層の両側それぞれに支持部21を含む連結部材51が配置されている。このようにすることで、連結部材51が1つのみの場合と比較して、各連結部材51で負担する力を減らし、各連結部材51を小型化(本実施形態では板状の連結部材51を薄肉化)できる。また、複数の連結部材51を第2回動軸部材62に連結させることで、第2引張部材3bの積層方向Aへの曲げ剛性を高め、積層方向Aへの曲げ変形を抑制できる。
【0071】
更に、本実施形態の制振構造1の第2引張部材3bは、第2回動軸部材62を介して、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を間接的に支持しているが、この構成に限られない。第2引張部材3bは、第2摺動部材12及び第3摺動部材13を直接的に支持していてもよい。また、例えば、第2引張部材3bが回動軸を備え、この回動軸上で第2摺動部材12及び第3摺動部材13が支持されてもよい。以上のように、第2引張部材3bが第2摺動部材12及び第3摺動部材13を支持する具体的態様は特に限定されず、第2引張部材3bは、第2摺動部材12及び第3摺動部材13の少なくとも一方の摺動部材の外側に、支持部21を備えていればよい。
【0072】
なお、
図4に示すように、第1層~第4層の相互間で積層方向Aに生じる間隙には、フィラープレート33及び34、スペーサ63が配置されているが、この構成に特に限定されない。積層方向Aにおいて隣接する2つの部材が、積層方向Aにおけて所定の間隙を隔てて配置されていればよく、摺動面内方向Bの力の伝達が不要な場合は、上述のスペーサ63などのスペーサ部材が配置されればよい。スペーサ部材は、積層方向Aにおいてスペーサ部材を挟む両部材に対して摺動し、一方の部材から他方の部材に摺動面内方向Bの力を伝達し難い、又は、伝達される力が十分に小さい。これに対して、積層方向Aにおいて隣接する2つの部材間で、摺動面内方向Bの力の伝達が必要な場合は、上述のフィラープレート33及び34などのフィラー部材を挟み込めばよい。フィラー部材は、積層方向Aにおいてフィラー部材を挟み込む両部材に対して摺動せず、又は、摺動し難い。そのため、積層方向Aにおいて隣接する2つの部材間にフィラー部材を挟み込むことで、これら隣接する2つの部材の摺動面内方向Bの力の伝達効率を高めることができる。
【0073】
<第2実施形態>
次に、
図5~
図7を参照して、別の実施形態としての制振構造101について例示説明する。なお、本実施形態の制振構造101は、上述した制振構造1と同様の架構フレーム2及び引張部材3を備える。そのため、ここでは架構フレーム2及び引張部材3の説明は省略する。
図5は、制振構造101の架構フレーム2の正面視における制振装置104を示す図である。
図6は、
図5のIII-III線に沿う断面図である。
図7は、
図5のIV-IV線に沿う断面図である。
【0074】
本実施形態の制振構造101は、上述した制振構造1と比較して、制振装置104の摺動部材の積層数が主に相違する。具体的に、上述した制振構造1の制振装置4の積層部4aでは、第1摺動部材11としての中板、第2摺動部材12及び第3摺動部材13としての外板、の3つの部材が積層されていたが、本実施形態の制振装置104の積層部104aでは、第1摺動部材11、第2摺動部材12、第3摺動部材13、第4摺動部材114及び第5摺動部材115の5つの部材が積層されている。具体的に、本実施形態の第1摺動部材11は中板である。また、本実施形態の第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、中板を挟み込む両側の外板である。更に、本実施形態の第4摺動部材114及び第5摺動部材115は、中板を挟み込む両側の外板を更に挟み込む外板である。
【0075】
本実施形態では、制振装置104の第1摺動部材11、第4摺動部材114及び第5摺動部材115が、回動軸としての第1回動軸部材61を介して、第1引張部材3aに回動可能に支持されている。制振装置104の第2摺動部材12及び第3摺動部材13は、上述した制振装置4(
図4等参照)と同様、回動軸としての第2回動軸部材62を介して、第2引張部材3bに回動可能に支持されている。
【0076】
第4摺動部材114は、第2摺動部材12の外側に積層されている。第4摺動部材114は、第1摺動部材11と同様、第1摺動材41及び保持板42により構成されている。但し、第4摺動部材114の第1摺動材41は、保持板42のうち第2摺動部材12と対向する面のみに取り付けられている。また、本実施形態の第2摺動部材12の第2摺動材43は、第1摺動部材11に対向する保持板44の内面のみならず、第4摺動部材114と対向する保持板44の外面にも取り付けられている。第2摺動部材12の第2摺動材43と、第4摺動部材114の第1摺動材41とは、第1実施形態と同様の押圧機構を用いて相互に押圧されており、相互間で摺動することによりエネルギーを吸収できる。
【0077】
第5摺動部材115は、第3摺動部材13の外側に積層されている。第5摺動部材115は、第1摺動部材11と同様、第1摺動材41及び保持板42により構成されている。但し、第5摺動部材115の第1摺動材41は、保持板42のうち第3摺動部材13と対向する面のみに取り付けられている。また、本実施形態の第3摺動部材13の第2摺動材43は、第1摺動部材11に対向する保持板44の内面のみならず、第5摺動部材115と対向する保持板44の外面にも取り付けられている。第3摺動部材13の第2摺動材43と、第5摺動部材115の第1摺動材41とは、第1実施形態と同様の押圧機構を用いて相互に押圧されており、相互間で摺動することによりエネルギーを吸収できる。
【0078】
以上のように、本実施形態の制振構造101の制振装置104によれば、第1摺動部材11と、第2摺動部材12及び第3摺動部材13それぞれと、の間での摺動によるエネルギー吸収に加えて、第2摺動部材12と第4摺動部材114との間、及び、第3摺動部材13と第5摺動部材115との間、での摺動によるエネルギー吸収が可能となる。そのため、本実施形態の制振装置104によれば、第1実施形態の制振構造1の制振装置4(
図2等参照)と比較して、エネルギー吸収効率を高めることができる。
【0079】
なお、本実施形態では第1摺動部材11~第5摺動部材115の5層構造としたが、3層以上の構造であればよく、4層構造であっても、6層以上の構造であってもよい。
【0080】
また、本実施形態の制振装置104の積層部104aに設けられる押圧機構は、上述した制振装置4の積層部4a(
図4等参照)に設けられる押圧機構と同様であるが、長孔が形成されている位置が異なる。具体的に、本実施形態では、第2摺動部材12及び第3摺動部材13に長孔12b及び13bが形成されており、第1摺動部材11、第4摺動部材114及び第5摺動部材115には長孔は形成されておらず、押圧機構の締結部材8を挿通可能な締結部材8の外径よりも若干大きい内径を有する挿通孔が形成されている。また、
図5~
図7では、押圧機構を構成する締結部材8の数及び配置が、
図2~
図4に示す押圧機構の締結部材8の数及び配置と相違するが、所望の押圧力などに応じて適宜変更可能である。
【0081】
更に、本実施形態の第1引張部材3a及び第2引張部材3bは、架構フレーム2(
図1参照)に取り付けられているが、第1実施形態と同様、この構成に限られない。第1引張部材3a及び第2引張部材3bは、架構フレーム2とは関係なく、異なる構造材に取り付けられていてもよい。
【0082】
<第3実施形態>
次に、
図8~
図10を参照して、別の実施形態としての制振構造201について例示説明する。なお、本実施形態の制振構造201は、上述した制振構造101と比較して、第2引張部材の接続部材の構成が主に相違する。
図8は、制振構造201の架構フレーム2の正面視における制振装置204を示す図である。
図9は、
図8のV-V線に沿う断面図である。
図10は、
図8のVI-VI線に沿う断面図である。
【0083】
本実施形態の制振構造201は、第1実施形態の制振構造1及び第2実施形態の制振構造101と同様の架構フレーム2を備えるため、ここでは説明を省略する。
【0084】
本実施形態の制振構造201の制振装置204は、第2実施形態の制振構造101の制振装置104(
図5等参照)と同様、第1摺動部材11~第5摺動部材115を備える。本実施形態の制振装置204は、第2実施形態の制振装置104(
図5等参照)と比較して、積層部204aに設けられる押圧機構や、第1摺動部材11~第5摺動部材115の形状・寸法など、が相違するが、これらの相違点は、所望の押圧力などに応じて適宜変更可能である。
【0085】
本実施形態の制振構造201の複数の引張部材3のうち第1引張部材3aは、第2実施形態の制振構造101と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0086】
本実施形態の制振構造201の複数の引張部材3のうち第2引張部材203bは、第2実施形態の制振構造101の第2引張部材3bと相違する。第2引張部材203bとしての引張ブレースは、本体部材31としての本体ブレース材、及び、接続部材32としての接合プレート、を備える。本実施形態の本体部材31は、上述した第2実施形態と同様であるが、本実施形態の接続部材32は、上述した第2実施形態と異なる。上述した第2実施形態の接続部材32は、連結部材51(
図7等参照)としての接合プレート、及び、継手部材52(
図7等参照)としてのスプライスプレートから構成されていたが、本実施形態の接続部材32は、単一の板体としての接合プレートから構成されており、本体部材31との間にフィラープレート35を挟み込んだ状態で、高力ボルトなどの締結部材8により締結されている。第2引張部材203bの接続部材32をこのような構成とすることで、第2引張部材203bの構成を、第1実施形態及び第2実施形態よりも簡略化できる。但し、第1実施形態で説明したように、締結部材8の長尺化を避けるため、接続部材32は、連結部材51(
図4、
図7等参照)としての接合プレート及び継手部材52(
図4、
図7等参照)を備える構成とされてもよい。
【0087】
本発明に係る制振構造、制振ユニット、及び、設置方法は、上述した実施形態に具体的に示す構造・工程に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、制振構造、制振ユニット及び設置方法に関する。
【符号の説明】
【0089】
1、101、201:制振構造
2:架構フレーム
3:引張部材
3a:第1引張部材
3b、203b:第2引張部材
4、104、204:制振装置
4a、104a、204a:積層部
5:柱部材(構造材)
6:梁部材(構造材)
7:固定部
8:締結部材
8a:第1締結部材
8b:第2締結部材
11:第1摺動部材
11a:軸挿通孔
11b:長孔
12:第2摺動部材
12a:軸挿通孔
12b:長孔
13:第3摺動部材
13a:軸挿通孔
13b:長孔
14、14a、14b:リンク部材
14a1、14a2、14b1、14b2:軸挿通孔
21:支持部
31:本体部材
32:接続部材
32a:軸挿通孔
33:フィラープレート
34:フィラープレート
35:フィラープレート
41:第1摺動材
42:保持板
43:第2摺動材
44:保持板
51:連結部材
52:継手部材
61:第1回動軸部材
62:第2回動軸部材(回動軸)
63:スペーサ
63a:軸挿通孔
64:皿ばね
100:制振ユニット
114:第4摺動部材
115:第5摺動部材
1001:従来の制振構造
1004:従来の制振構造の引張材
1004a:従来の制振構造の引張材の偏平部
1005:従来の制振構造の振動減衰装置
1008A、1008B:従来の制振構造の下板材
1009:従来の制振構造の上板材
1019A:従来の制振構造の摩擦板
1019B:従来の制振装置の滑動板
A:積層方向
B:摺動面内方向