(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】磁気検出装置及び磁気検出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20231108BHJP
G01R 33/12 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01R33/02 Z
G01R33/02 L
G01R33/12 Z
(21)【出願番号】P 2020063695
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100203264
【氏名又は名称】塩川 未久
(72)【発明者】
【氏名】竹中 一馬
(72)【発明者】
【氏名】野口 直記
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-151535(JP,A)
【文献】特開2001-289926(JP,A)
【文献】特表2015-524933(JP,A)
【文献】特開2016-148639(JP,A)
【文献】特開2020-060565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置と、
磁性材を含む線状の第1導体を含む少なくとも1つの伝送線路を有する伝送線路セットと、を備え、
前記検出装置は、
前記伝送線路セットの一端の第1端から第1入射波としてのパルス信号を入力して、前記第1端から第1反射波を検出し、
前記伝送線路セットの他端の第2端から第2入射波としてのパルス信号を入力して、前記第2端から第2反射波を検出し、
前記第1反射波と前記第2反射波との合成に基づいて、前記伝送線路セットに印加された磁界の強度を検出する、磁気検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気検出装置であって、
前記検出装置は、前記第1入射波を入力した時刻から前記第1反射波を検出した時刻までの時間に基づいて、前記伝送線路セットに印加された磁界の位置を検出する、磁気検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気検出装置であって、
前記少なくとも1つの伝送線路は、
誘電体と、第2導体と、をさらに含み、
同軸ケーブル、平行二線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路及び導波管の何れかである、磁気検出装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の磁気検出装置であって、
前記第1導体において磁性材が略均一に分布するか、又は、前記第1導体の導体表面に磁性材を含む磁性膜が形成されている、磁気検出装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の磁気検出装置であって、
前記少なくとも1つの伝送線路は、複数の前記第1導体を含む、磁気検出装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の磁気検出装置であって、
前記磁気検出装置は、前記少なくとも1つの伝送線路に、バイアス磁界を印加可能なコイルをさらに備える、磁気検出装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の磁気検出装置であって、
前記検出装置は、
第1時間に対する前記第1反射波の電圧を示す第1電圧データを取得し、前記第1時間は、前記第1入射波を入力した時刻から前記第1反射波を検出した時刻までの時間であり、
第2時間に対する前記第2反射波の電圧を示す第2電圧データを取得し、前記第2時間は、前記第2入射波を入力した時刻から前記第2反射波を検出した時刻までの時間であり、
前記第1電圧データ及び前記第2電圧データの一方を、パルス信号が前記伝送線路セットの中点と前記検出装置との間を往復する時間である基準時間を対称軸として、反転させることにより、合成データを取得し、
前記合成データに基づいて、前記伝送線路セットに印加された磁界の強度を検出する、磁気検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気検出装置であって、
前記伝送線路セットは、1つの前記伝送線路を含み、
前記第1端は、前記伝送線路セットの一端としての前記1つの伝送線路の一端に位置し、前記第2端は、前記伝送線路セットの他端としての前記1つの伝送線路の他端に位置し、
前記検出装置は、
前記第1入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して前記第1端に入力し、前記第1端から前記第1反射波を検出し、
掃引して入力された前記第1入射波の周波数毎に、前記第1入射波に対する前記第1反射波の反射率及び位相差を取得し、取得した前記第1入射波に対する前記第1反射波の反射率に基づいて第1反射率の周波数領域データを取得し、取得した前記第1入射波に対する前記第1反射波の位相差に基づいて第1位相差の周波数領域データを取得し、
前記第1反射率の周波数領域データ及び前記第1位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換することにより、前記第1電圧データとしての前記第1反射波の時間領域データを取得し、
前記第2入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して前記第2端に入力し、前記第2端から前記第2反射波を検出し、
掃引して入力された前記第2入射波の周波数毎に、前記第2入射波に対する前記第2反射波の反射率及び位相差を取得し、取得した前記第2入射波に対する前記第2反射波の反射率に基づいて第2反射率の周波数領域データを取得し、取得した前記第2入射波に対する前記第2反射波の位相差に基づいて第2位相差の周波数領域データを取得し、
前記第2反射率の周波数領域データ及び前記第2位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換することにより、前記第2電圧データとしての前記第2反射波の時間領域データを取得する、磁気検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気検出装置であって、
前記検出装置は、
前記第1反射率の周波数領域データ及び前記第1位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換してインパルス応答として前記第1反射波の時間領域データを取得するか、又は、逆フーリエ変換された前記第1反射率の周波数領域データ及び前記第1位相差の周波数領域データを積分してステップ応答として前記第1反射波の時間領域データを取得し、
前記第2反射率の周波数領域データ及び前記第2位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換してインパルス応答として前記第2反射波の時間領域データを取得するか、又は、逆フーリエ変換された前記第2反射率の周波数領域データ及び前記第2位相差の周波数領域データを積分してステップ応答として前記第2反射波の時間領域データを取得する、磁気検出装置。
【請求項10】
請求項1から7までの何れか一項に記載の磁気検出装置であって、
前記伝送線路セットは、前記少なくとも1つの伝送線路として、第1伝送線路と第2伝送線路とを含み、前記第1伝送線路と前記第2伝送線路とは、平行に配置されており、
前記第1端は、前記伝送線路セットの一端の側の前記第1伝送線路の端に位置し、
前記第2端は、前記伝送線路セットの他端の側の前記第2伝送線路の端に位置する、磁気検出装置。
【請求項11】
請求項7、請求項8、請求項9又は請求項7に従属する請求項10に記載の磁気検出装置であって、
前記検出装置は、
前記伝送線路セットに検出対象の磁界が印加されているときに検出した前記第1反射波のデータから、前記伝送線路セットに検出対象の磁界が印加されていないときに検出した第1オフセットデータを引くことにより、前記第1電圧データを取得し、
前記伝送線路セットに検出対象の磁界が印加されているときに検出した前記第2反射波のデータから、前記伝送線路セットに検出対象の磁界が印加されていないときに検出した第2オフセットデータを引くことにより、前記第2電圧データを取得する、磁気検出装置。
【請求項12】
磁気検出方法であって、
磁性材を含む線状の第1導体を含む少なくとも1つの伝送線路を有する伝送線路セットの一端の第1端から第1入射波としてのパルス信号を入力して、前記第1端から第1反射波を検出することと、
前記伝送線路セットの他端の第2端から第2入射波としてのパルス信号を入力して、前記第2端から第2反射波を検出することと、
前記第1反射波と前記第2反射波との合成に基づいて、前記伝送線路セットに印加された磁界の強度を検出することと、を含む、磁気検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気検出装置及び磁気検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界を検出する装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、分布定数回路の内部に磁性体を配置する磁界検出装置が開示されている。この磁性体は、磁界を与えると透磁率が変化する。特許文献1に記載の磁界検出装置は、発振器によって分布定数回路を励振し、進行波及び反射波を発生させることにより、分布定数回路に定在波を発生させる。特許文献1に記載の磁界検出装置は、分布定数回路に発生した定在波の電圧を検出することにより、この分布定数回路内の電磁場分布の変化を検出し、磁界を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、進行波及び反射波は、分布定数回路を伝播することにより、減衰する場合がある。進行波及び反射波が減衰すると、磁界検出装置は、磁界を精度良く検出するできなくなる場合がある。
【0006】
そこで、本開示は、磁界を精度良く検出可能な、磁気検出装置及び磁気検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る磁気検出装置は、検出装置と、磁性材を含む線状の第1導体を含む少なくとも1つの伝送線路を有する伝送線路セットと、を備え、前記検出装置は、前記伝送線路セットの一端の第1端から第1入射波としてのパルス信号を入力して、前記第1端から第1反射波を検出し、前記伝送線路セットの他端の第2端から第2入射波としてのパルス信号を入力して、前記第2端から第2反射波を検出し、前記第1反射波と前記第2反射波との合成に基づいて、前記伝送線路セットに印加された磁界の強度を検出する。このように第1反射波と第2反射波とを合成することにより、磁界を検出する際のノイズの影響が低減され得る。このような構成とすることで、検出装置は、磁界強度を精度良く検出することができる。
【0008】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記検出装置は、前記第1入射波を入力した時刻から前記第1反射波を検出した時刻までの時間に基づいて、前記伝送線路セットに印加された磁界の位置を検出してもよい。このような構成とすることで、検出装置は、伝送線路に印加されている磁界の強度と、磁界が印加されている位置を、同時に検出することができる。
【0009】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記少なくとも1つの伝送線路は、誘電体と、第2導体と、をさらに含み、同軸ケーブル、平行二線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路及び導波管の何れかであってもよい。伝送線路を同軸ケーブルとして構成することにより、伝送線路は、柔軟性を有し得る。また、フレキシブル基板により、平行二線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路及び導波管を構成することにより、伝送線路は、柔軟性を有し得る。伝送線路が柔軟性を有することにより、伝送線路の配置の自由度が高まり得る。
【0010】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記第1導体において磁性材が略均一に分布するか、又は、前記第1導体の導体表面に磁性材を含む磁性膜が形成されていてもよい。このような構成とすることで、第1導体では、ヒステリシスが生じにくくなり得る。第1導体においてヒステリシスが生じにくくなることにより、伝送線路によって高感度で磁界が検出され得る。
【0011】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記少なくとも1つの伝送線路は、複数の前記第1導体を含んでもよい。このような構成とすることで、複数の第1導体の全体としての抵抗損失が小さくなり得る。
【0012】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記磁気検出装置は、前記少なくとも1つの伝送線路に、バイアス磁界を印加可能なコイルをさらに備えてもよい。このような構成とすることで、磁気検出装置は、伝送線路に印加された磁界の強度だけでなく、正の磁界が印加されたか、負の磁界が印加されたかを判定することができる。
【0013】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記検出装置は、第1時間に対する前記第1反射波の電圧を示す第1電圧データを取得し、前記第1時間は、前記第1入射波を入力した時刻から前記第1反射波を検出した時刻までの時間であり、第2時間に対する前記第2反射波の電圧を示す第2電圧データを取得し、前記第2時間は、前記第2入射波を入力した時刻から前記第2反射波を検出した時刻までの時間であり、前記第1電圧データ及び前記第2電圧データの一方を、パルス信号が前記伝送線路セットの中点と前記検出装置との間を往復する時間である基準時間を対称軸として、反転させることにより、合成データを取得し、前記合成データに基づいて、前記伝送線路セットに印加された磁界の強度を検出してもよい。第1電圧データ及び第2電圧データの一方を基準時間に対して反転させることにより、第1電圧データの電圧のピーク位置と、第2電圧データの電圧のピーク位置とを一致させることができる。
【0014】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記検出装置は、前記合成データのピーク値によって、前記伝送線路セットに印加された磁界の強度を検出してもよい。このような構成とすることで、検出装置は、磁界強度を精度良く検出することができる。
【0015】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記伝送線路セットは、1つの前記伝送線路を含み、前記第1端は、前記伝送線路セットの一端としての前記1つの伝送線路の一端に位置し、前記第2端は、前記伝送線路セットの他端としての前記1つの伝送線路の他端に位置し、前記検出装置は、前記第1入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して前記第1端に入力し、前記第1端から前記第1反射波を検出し、掃引して入力された前記第1入射波の周波数毎に、前記第1入射波に対する前記第1反射波の反射率及び位相差を取得し、取得した前記第1入射波に対する前記第1反射波の反射率に基づいて第1反射率の周波数領域データを取得し、取得した前記第1入射波に対する前記第1反射波の位相差に基づいて第1位相差の周波数領域データを取得し、前記第1反射率の周波数領域データ及び前記第1位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換することにより、前記第1電圧データとしての前記第1反射波の時間領域データを取得し、前記第2入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して前記第2端に入力し、前記第2端から前記第2反射波を検出し、掃引して入力された前記第2入射波の周波数毎に、前記第2入射波に対する前記第2反射波の反射率及び位相差を取得し、取得した前記第2入射波に対する前記第2反射波の反射率に基づいて第2反射率の周波数領域データを取得し、取得した前記第2入射波に対する前記第2反射波の位相差に基づいて第2位相差の周波数領域データを取得し、前記第2反射率の周波数領域データ及び前記第2位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換することにより、前記第2電圧データとしての前記第2反射波の時間領域データを取得してもよい。このような構成とすることで、検出装置は、入射波に揺らぎがあっても、揺らぎをキャンセルして入射波に対する反射波の反射率及び位相差を検出することができる。換言すると、検出装置は、入射波のジッターを除去することができ、時間的な信号の揺らぎの無い、同期の取れた測定を行うことができる。
【0016】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記検出装置は、前記第1反射率の周波数領域データ及び前記第1位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換してインパルス応答として前記第1反射波の時間領域データを取得するか、又は、逆フーリエ変換された前記第1反射率の周波数領域データ及び前記第1位相差の周波数領域データを積分してステップ応答として前記第1反射波の時間領域データを取得し、前記第2反射率の周波数領域データ及び前記第2位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換してインパルス応答として前記第2反射波の時間領域データを取得するか、又は、逆フーリエ変換された前記第2反射率の周波数領域データ及び前記第2位相差の周波数領域データを積分してステップ応答として前記第2反射波の時間領域データを取得してもよい。インパルス応答又はステップ応答としての第1反射波の時間領域データ及び第2反射波の時間領域データを取得することにより、検出装置は、磁界強度を精度良く検出することができる。
【0017】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記伝送線路セットは、前記少なくとも1つの伝送線路として、第1伝送線路と第2伝送線路とを含み、前記第1伝送線路と前記第2伝送線路とは、平行に配置されており、前記第1端は、前記伝送線路セットの一端の側の前記第1伝送線路の端に位置し、前記第2端は、前記伝送線路セットの他端の側の前記第2伝送線路の端に位置してもよい。伝送線路セットが第1伝送線路及び第1伝送線路を含むことにより、検出装置は、第1伝送線路の第1端に第1入射波を入力しつつ、第2伝送線路の第2端に第2入射波を入力することができる。このような構成とすることで、検出装置が磁界の強度及び位置を検出する際に係る時間が短くなり得る。
【0018】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記検出装置は、前記伝送線路セットに検出対象の磁界が印加されているときに検出した前記第1反射波のデータから、前記伝送線路セットに検出対象の磁界が印加されていないときに検出した第1オフセットデータを引くことにより、前記第1電圧データを取得し、前記伝送線路セットに検出対象の磁界が印加されているときに検出した前記第2反射波のデータから、前記伝送線路セットに検出対象の磁界が印加されていないときに検出した第2オフセットデータを引くことにより、前記第2電圧データを取得してもよい。このような第1オフセットデータ及び第2オフセットデータを用いることにより、検出対象の磁界が伝送線路に印加されること以外の他の要因で生じた反射波の影響が低減され得る。
【0019】
幾つかの実施形態に係る磁気検出方法は、磁性材を含む線状の第1導体を含む少なくとも1つの伝送線路を有する伝送線路セットの一端の第1端から第1入射波としてのパルス信号を入力して、前記第1端から第1反射波を検出することと、前記伝送線路セットの他端の第2端から第2入射波としてのパルス信号を入力して、前記第2端から第2反射波を検出することと、前記第1反射波と前記第2反射波との合成に基づいて、前記伝送線路セットに印加された磁界の強度を検出することと、を含む。このように第1反射波と第2反射波とを合成することにより、磁界を検出する際のノイズの影響が低減され得る。このような構成とすることで、検出装置は、磁界強度を精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、磁界を精度良く検出可能な、磁気検出装置及び磁気検出方法が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る磁気検出装置の概略構成を示す図である。
【
図2】伝送線路を分布定数回路として表した図である。
【
図3】同軸ケーブルとして構成された伝送線路の概略構成を示す図である。
【
図4】
図1に示す構成における入射波と反射波の一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態における時間に対する反射波の電圧データを示す図である。
【
図6】第1実施形態における伝搬距離に対する反射波の電圧データを示す図である。
【
図7】第1実施形態における伝搬距離に対する反射波の電圧データを示す図である。
【
図8】第1実施形態における伝搬距離に対する反射波の合成データを示す図である。
【
図9】
図1に示す検出装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【
図10】第1実施形態に係る磁気検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第1実施形態に係る磁気検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図12】比較例に係る伝搬距離に対する反射波の電圧データを示す図である。
【
図13】第1実施形態に係る合成データを示す図である。
【
図14】第2実施形態に係る磁気検出装置の概略構成を示す図である。
【
図15】
図14に示す構成における入射波と反射波の一例を示す図である。
【
図16】第2実施形態における時間に対する反射波の電圧データを示す図である。
【
図17】第2実施形態における伝搬距離に対する反射波の電圧データを示す図である。
【
図18】第2実施形態における伝搬距離に対する反射波の電圧データを示す図である。
【
図19】第2実施形態における伝搬距離に対する反射波の合成データを示す図である。
【
図20】
図14に示す検出装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【
図21】第2実施形態に係る磁気検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図22】同軸ケーブルとして構成された伝送線路の他の例を示す図である。
【
図23】同軸ケーブルとして構成された伝送線路のさらに他の例を示す図である。
【
図24】平行二線路として構成された伝送線路の概略構成を示す図である。
【
図25】ストリップ線路として構成された伝送線路の概略構成を示す図である。
【
図26】マイクロストリップ線路として構成された伝送線路の概略構成を示す図である。
【
図27】コプレーナ線路として構成された伝送線路の概略構成を示す図である。
【
図28】コイルが配置された伝送線路の一例を示す図である。
【
図29】バイアス磁界が印加された状態における磁界と反射波の振幅との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示において「外部磁界」は、外部から伝送線路に印加される磁界であって、初期状態では伝送線路に印加されていない磁界を意味する。外部磁界は、磁石等により生成され得る。
【0023】
本開示において「環境磁界」は、初期状態から伝送線路に印加されている磁界であって、地磁気又は他の電子機器等から発生する磁界を意味する。環境磁界は、検出対象の磁界が外部磁界である場合、ノイズとなり得る。
【0024】
本開示において「バイアス磁界」は、コイル等によってセンサに予め印加される磁界を意味する。バイアス磁界によって、センサ出力に極性を付加したり、直線性を良くしたりすることができる。
【0025】
本開示において「磁界」は、外部磁界、環境磁界、及びバイアス磁界を含む磁界の総称を意味する。
【0026】
本開示において「所定(任意)の位置における磁界」は、その位置における外部磁界及び環境磁界を含む磁界を意味する。
【0027】
本開示において「軸方向」とは、線状の伝送線路に沿う方向を意味する。本開示において「周方向」とは、線状の伝送線路を周回する方向を意味する。
【0028】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の図面に示す構成要素において、同じ構成要素には、同じ符号を付す。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る磁気検出装置1の概略構成を示す図である。磁気検出装置1は、伝送線路セット2と、検出装置30とを備える。第1実施形態では、伝送線路セット2は、1つの伝送線路20を有する。検出装置30は、接続端C1及び接続端C2を含む。磁気検出装置1は、第1導線10及び第2導線11をさらに備えてよい。
【0030】
磁気検出装置1では、伝送線路20に、磁石3によって外部磁界が印加され得る。
図1に示す構成では、磁石3によって伝送線路20に印加される外部磁界が、検出対象の磁界となり得る。ただし、伝送線路20に外部磁界を印加する要素は、磁石3に限定されない。例えば、ヘルムホルツコイルによる外部磁界、磁性材料からの漏れによる外部磁界、又は渦電流により生じた外部磁界等が、伝送線路20に印加されていてもよい。このような外部磁界であっても、磁気検出装置1の検出対象の磁界となり得る。また、磁気検出装置1の検出対象の磁界は、外部磁界に限定されない。例えば、磁気検出装置1の検出対象の磁界は、地磁気等による環境磁界であってもよい。
【0031】
磁気検出装置1では、検出装置30が、伝送線路20に、入射波としてのパルス信号を入力する。後述のように、検出装置30は、パルス信号を適宜解析することにより、伝送線路20に印加された外部磁界の強度及び位置を検出し得る。
【0032】
第1導線10及び第2導線11は、線状の導体である。第1導線10及び第2導線11は、非磁性の導体であってよい。第1導線10は、接続端C1と、伝送線路20の第1端T1とを接続している。第2導線11は、接続端C1と、伝送線路20の第2端T2とを接続している。
【0033】
第1導線10の長さと、第2導線11の長さとは、同じ長さAである。ただし、第1導線10の長さと、第2導線11の長さとは、異なってよい。第1導線10の長さ及び第2導線11の長さは、検出対象の磁界分布、伝送線路20の電気的特性、及び検出装置30が伝送線路20に入力するパルス信号の立ち上がり時間等を考慮して、適宜調整されてよい。
【0034】
伝送線路20は、線状の伝送線路である。伝送線路20の長さは、長さBである。伝送線路20の一端には、第1端T1が位置する。伝送線路20の他端には、第2端T2が位置する。第1端T1は、第1導線10の一端に接続されている。第2端T2は、第2導線11の一端に接続されている。伝送線路20の一端の第1端T1は、第1導線10を介して、検出装置30の接続端C1に接続されている。伝送線路20の他端の第2端T2は、第2導線11を介して、検出装置30の接続端C2に接続されている。ただし、磁気検出装置1が第1導線10及び第2導線11を備えない場合、伝送線路20の一端の第1端T1は、第1導線10を介さずに、検出装置30の接続端C1に直接接続されてよい。また、伝送線路20の他端の第2端T2は、第2導線11を介さずに、検出装置30の接続端C2に直接接続されてよい。
【0035】
伝送線路20は、所定の特性インピーダンスを有する。特性インピーダンスは、線状の伝送線路20の長さに依拠しないインピーダンスである。特性インピーダンスは、伝送線路20の種類及び構造等に応じて決まり得る。
【0036】
伝送線路20は、
図2に示すような分布定数回路として表すことができる。
図2において、抵抗成分Rは、伝送線路20の軸方向の単位長さ当たりの抵抗成分である。インダクタンス成分Lは、伝送線路20の単位長さ当たりのインダクタンス成分である。容量成分Cは、伝送線路20の単位長さ当たりの容量成分である。容量成分Cは、伝送線路20に含まれる導体間の容量成分となり得る。ここで、
図2に示すような分布定数回路に、伝送線路20の単位長さ当たりのコンダクタンス成分Gが含まれてよい。コンダクタンス成分Gは、伝送線路20に含まれる導体間のコンダクタンス成分となり得る。コンダクタンス成分Gは、伝送線路20の構造によっては、微小になり得る。例えば、伝送線路20の構造が後述の
図3に示すような同軸ケーブルである場合、コンダクタンス成分Gは、微小になり得る。コンダクタンス成分Gが微小になる場合、
図2に示すように、分布定数回路において、コンダクダンス成分は、省略され得る。
【0037】
伝送線路20の特性インピーダンスZ
0は、伝送線路20を
図2に示すような分布定数回路として表した場合、以下の数式(1)によって表され得る。
【数1】
数式(1)において、角周波数ωは、伝送線路20を流れる高周波電流の角周波数である。数式(1)において、コンダクタンス成分Gは、上述のように、省略され得る。
【0038】
伝送線路20は、同軸ケーブル又はフレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)等として構成されていてよい。ただし、伝送線路20は、特性インピーダンスを有する構造であれば、任意の構造に構成されていてよい。伝送線路20を同軸ケーブル又はフレキシブル基板として構成することにより、伝送線路20は、柔軟性を有し得る。伝送線路20が柔軟性を有することにより、伝送線路20は、伝送線路20の配置箇所に応じて、自在に曲がり得る。このような構成とすることで、伝送線路20の配置の自由度が高まり得る。
【0039】
図3には、同軸ケーブルとして構成された伝送線路20の概略構成を示す。
図3に示すように、伝送線路20は、第1導体(信号線)21と、誘電体22と、第2導体(シールド線)23と、被覆24とを含む。
【0040】
伝送線路20を同軸ケーブルとして構成する場合、数式(1)及び
図2に示すような、抵抗成分Rは、第1導体21の単位長さ当たりの抵抗成分となる。インダクタンス成分Lは、第1導体21の単位長さ当たりのインダクタンス成分となる。容量成分Cは、第1導体21と第2導体23との間の単位長さ当たりの容量成分となる。コンダクタンス成分Gは、第1導体21と第2導体23との間の単位長さ当たりの漏洩抵抗に相当するコンダクタンス成分となる。当該漏洩抵抗が微小であることにより、コンダクタンス成分Gは、微小となる。伝送線路20を同軸ケーブルとして構成する場合、
図2及び数式(1)において、コンダクタンス成分Gは、省略され得る。
【0041】
第1導体21において表皮効果(skin effect)が顕著になる場合(表皮の深さδ<<第1導体21の半径a)、伝送線路20のインピーダンスZは、以下の数式(2)によって表される。
【数2】
数式(2)において、角周波数ωは、第1導体21を流れる高周波電流の角周波数である。半径aは、第1導体21の半径である。電気抵抗率ρは、第1導体21の電気抵抗率である。抵抗R
DCは、第1導体21の直流抵抗である。透磁率μは、第1導体21の周方向の透磁率である。磁界強度H
EXは、伝送線路20に印加されている外部磁界の磁界強度である。
【0042】
第1導体21は、線状の導体である。第1導体21は、磁性材を含む導体である。
図3に示すような第1導体21では、第1導体21に含まれる磁性材は、第1導体21に略均一に分布している。ただし、第1導体21に含まれる磁性材は、少なくとも、その表面に存在していればよい。磁性材が第1導体21に略均一に分布することにより、第1導体21では、ヒステリシスが生じにくくなり得る。
【0043】
第1導体21は、軟磁性材を含む導体であってよい。第1導体21に含まれる軟磁性材は、保持力が小さく透磁率が高いものであってよい。例えば、第1導体21は、アモルファス合金又はパーマロイを含んでよい。
【0044】
アモルファス合金及びパーマロイは、高い透磁率の磁性材を含む。第1導体21がアモルファス合金又はパーマロイを含むことにより、第1導体21を含む伝送線路20では、周方向の透磁率及び軸方向の透磁率が高くなり得る。周方向の透磁率及び軸方向の透磁率が高くなることにより、伝送線路20に外部磁界が印加されたときに、第1導体21の表面における後述の磁気インピーダンス効果及び第1導体21の内部の磁化(磁壁移動)の効果の少なくとも一方の効果が高くなり得る。これらのうちの少なくとも一方の効果が高くなることにより、伝送線路20では、外部磁界が印加された位置での後述のインピーダンスの変化が大きくなり得る。
【0045】
例えば、原子が不規則に配列したアモルファス合金は、Fe基アモルファス合金であるFe-Co-Si-B合金(Feリッチ)、Fe-Si-B-C系合金、Fe-Si-B系合金、Fe-Si-B-Nb-Cu系合金、又はFe-P-B系合金等であってよい。また、アモルファス合金は、Co基アモルファス合金であるFe-Co-Si-B系合金(Coリッチ)、Co-Fe-Cr-Si-B系合金、又はCo-Fe-Mn-Cr-Si-B系合金等であってよい。また、アモルファス合金は、Ni基アモルファス合金であってよい。
【0046】
例えば、Fe及びNiを主成分とした合金であるパーマロイは、Ni含有量78.5%の78-パーマロイ(JIS規格:パーマロイA)、Ni含有量45%(40~50%)の45-パーマロイ(JIS規格:パーマロイB)、又は78-パーマロイにMo、Cu若しくはCr等を添加したパーマロイ(JIS規格:パーマロイC)等であってよい。
【0047】
パーマロイの体積抵抗率は、68μΩcm程度である。この体積抵抗率は、銅の体積抵抗率1.68μΩcmの40倍以上の体積抵抗率である。
【0048】
第1導体21は、アモルファス合金及びパーマロイ以外の他の軟磁性材として、Fe-Si-Al系合金(例えばセンダスト)、Fe-Co系合金(例えばパーメンジュール)、Mn-Zn系合金若しくはNi-Zn系合金(例えばソフトフェライト)、又はFe-Si系合金(例えば珪素鋼若しくは電磁鋼)等を含んでよい。
【0049】
伝送線路20に印加される磁界が10[Oe(エルステッド)]程度の比較的大きい磁界である場合、第1導体21は、Fe、Ni又はCo等の単金属を磁性材として含んでよい。
【0050】
第1導体21は、ナノ結晶粒をアモルファス相に分散させたナノ結晶軟磁性材を含んでよい。
【0051】
誘電体22は、円筒状である。誘電体22は、第1導体21の表面を覆っている。誘電体22は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)又はポリエチレン等の絶縁物であってよい。
【0052】
第2導体23は、円筒状である。第2導体23は、誘電体22の表面を覆っている。第2導体23は、例えば、銅線によって構成される網組線であってよい。
【0053】
被覆24は、円筒状である。被覆24は、第2導体23の表面を覆っている。被覆24は、その内部に、第1導体21、誘電体22、及び第2導体23を収容している。被覆24は、第1導体21、誘電体22及び第2導体23を、その内部に収容することにより、保護する。
【0054】
第1導体21、誘電体22、第2導体23、及び被覆24は、柔軟性を有する材料で構成されていてよい。このような構成とすることで、伝送線路20は、柔軟性を有し得る。
【0055】
図1に示すように、伝送線路20に磁界強度H
EXの外部磁界が印加されると、外部磁界が印加されている位置では、磁気インピーダンス効果によって、伝送線路20のインピーダンスが変化し得る。例えば、伝送線路20の第1導体21には、後述の検出装置30からパルス信号が入力されることにより、高周波電流が流れ得る。第1導体21に高周波電流が流れると、第1導体21は、周方向において一方に磁化される。第1導体21が周方向において一方に磁化されることにより、第1導体21の周方向に磁気モーメントが誘起され得る。この状態において、
図1に示すように、伝送線路20の軸方向に磁界強度H
EXの外部磁界が印加されていると、第1導体21の周方向に誘起された磁気モーメントが磁界強度H
EXの外部磁界の印加された方向に沿って回転する。この磁気モーメントの回転により、第1導体21の周方向の透磁率が変化する。伝送線路20のインピーダンスは、第1導体21の周方向の透磁率に依存する。そのため、外部磁界が印加された位置における第1導体21の周方向の透磁率が変化すると、外部磁界が印加された位置における伝送線路20のインピーダンスが変化する。
【0056】
磁気インピーダンス効果によって変化する伝送線路20のインピーダンスZ
Mは、第1導体21における表皮効果が顕著な場合(表皮の深さδ<<第1導体21の半径a)、以下の数式(3)によって表され得る。
【数3】
【0057】
数式(3)を参照すると、第1導体21の周方向の透磁率μが変化すると、インダクタンス成分Lだけでなく、抵抗成分Rも変化することが分かる。また、数式(3)から、伝送線路20のインピーダンスZMを検出することにより、外部磁界の磁界強度HEXが検出可能であることが分かる。
【0058】
図4には、
図1に示す構成における入射波と反射波の一例を示す。位置Pは、伝送線路20において磁石3によって外部磁界が印加される位置である。位置Pと第1端T1との間の距離は、距離Xである。
【0059】
位置Pでの伝送線路20のインピーダンスは、上述したように、磁気インピーダンス効果によって変化する。位置Pでは、伝送線路20のインピーダンスの不整合が生じ得る。位置Pで伝送線路20のインピーダンスの不整合が生じることにより、入射波が位置Pに入射すると、反射波が発生し得る。このときの入射波に対する反射波の反射率rは、以下の数式(4)によって表され得る。
【数4】
数式(4)において、変化量ΔZは、インピーダンスZ
MのインピータンスZ
0からの変化量(ΔZ=Z
M-Z
0)である。
【0060】
また、位置Pでの入射波の電圧V
iと反射波の電圧V
Rとの間の関係は、以下の数式(5)によって表され得る。
【数5】
【0061】
数式(3)を参照して上述したように、磁気インピーダンス効果によって変化する伝送線路20のインピーダンスZMを検出することにより、外部磁界の磁界強度HEXを検出することができる。また、位置Pでの入射波の電圧Viと反射波の電圧VRを検出することにより、数式(5)から、変化量ΔZ(=ZM-Z0)を検出することができる。さらに、インピーダンスZ0は、数式(1)から分かるように、既知である。インピーダンスZ0が既知であることにより、入射波の電圧Viと反射波の電圧VRとによって数式(5)から変化量ΔZを検出すれば、数式(3)から、外部磁界の磁界強度HEXを検出することができる。
【0062】
つまり、検出装置30が、接続端C1を介して伝送線路20の第1端T1に、入射波を入力する。この入射波が位置Pに進行することにより、位置Pで反射波が生じ得る。この際、検出装置30が、位置Pでの入射波の電圧Viと反射波の電圧VRを検出する。さらに、検出装置30が、検出した入射波の電圧Vi及び反射波の電圧VRによって、数式(5)から変化量ΔZを検出する。このような構成により、数式(3)から、外部磁界の磁界強度HEXを算出(検出)することができる。
【0063】
ところで、
図4に示すような、外部磁界が印加される位置Pは、磁石3の位置に応じて変化し得る。位置Pが磁石3の位置に応じて変化することにより、検出装置30が、位置Pでの入射波の電圧V
i及び反射波の電圧V
Rを直接検出することは困難になり得る。ここで、伝送線路20の第1端T1から入射波が入力される場合、位置Pで生じた反射波は、入射波の進行方向とは逆方向に進行し、第1端T1に到達し得る。検出装置30は、伝送線路20の第1端T1に到達した反射波の電圧を、接続端C1から検出することができる。つまり、位置Pでの反射波の電圧V
Rの代わりに、検出装置30は、伝送線路20の第1端T1での反射波の電圧を用いることができる。また、検出装置30は、位置Pでの入射波の電圧V
iの代わりに、伝送線路20の第1端T1での入射波の電圧を用いることができる。従って、検出装置30は、伝送線路20の第1端T1での入射波の電圧と、伝送線路20での第1端T1での反射波の電圧とによって、数式(5)から変化量ΔZを検出することができる。
【0064】
ここで、伝送線路20の第1端T1に入力された入射波は、伝送線路20を伝搬して位置Pに到達し得る。入射波は、伝送線路20を伝搬するに連れて、伝送線路20の抵抗損失及び誘電損失等により、減衰し得る。そのため、位置Pでの入射波の電圧は、伝送線路20の第1端T1での入射波の電圧よりも、小さくなり得る。また、位置Pで発生した反射波は、伝送線路20を伝搬して、伝送線路20の第1端T1に到達し得る。反射波は、伝送線路20を伝搬するに連れて、伝送線路20の抵抗損失及び誘電損失等により、減衰し得る。そのため、伝送線路20の第1端T1に到達したときの反射波の電圧は、位置Pでの反射波の電圧よりも、小さくなり得る。つまり、入射波及び反射波が伝送線路20を伝搬する伝搬距離が長いほど、後述の
図12に示すように、第1端T1に到達したときの反射波の電圧が、小さくなり得る。第1端T1に到達したときの反射波の電圧が小さくなると、当該反射波の電圧は、ノイズの影響を受けやすくなり得る。当該反射波の電圧がノイズの影響を受けやすくなると、数式(5)から変化量ΔZを精度良く検出できなくなり得る。その結果、外部磁界の磁界強度H
EXを精度良く検出することが困難となり得る。
【0065】
そこで、検出装置30は、伝送線路20の第1端T1から第1入射波を入力して第1反射波を取得することに加えて、伝送線路20の第2端T2からも第2入射波を入力して第2反射波を取得する。さらに、検出装置30は、取得した第1反射波と、取得した第2反射波とを合成する。第1反射波と第2反射波とを合成したものは、
図13を参照して後述するように、ノイズの影響を受けにくくなり得る。このような構成とすることで、検出装置30は、外部磁界の磁界強度H
EXを精度良く検出することができる。
【0066】
<磁界強度の検出処理>
図4に示すように、検出装置30は、接続端C1に、第1入射波としてのパルス信号を入力し得る。検出装置30が生成するパルス信号は、任意の形状であってよい。検出装置30が生成するパルス信号は、例えば、矩形波状、正弦波状、三角波状、又は鋸波状等であってよい。接続端C1から入力された第1入射波は、第1導線10を伝搬した後、第1端T1から伝送線路20に入力される。第1端T1から入力された第1入射波は、第1端T1から第2端T2に向かう方向に、伝送線路20を進行する。第1入射波が、伝送線路20のインピーダンスの不整合が生じている位置に、例えば位置Pに、進行すると、当該インピーダンスの不整合が生じている位置で、第1反射波が生じ得る。インピーダンスの不整合が生じている位置で生じた第1反射波は、第1入射波の進行方向とは逆方向に、すなわち、第2端T2から第1端T1に向かう方向に、伝送線路20を進行する。第1入射波の進行方向とは逆方向に進行した第1反射波は、第1端T1及び第1導線10を経由して、接続端C1に到達し得る。
【0067】
検出装置30は、接続端C1から第1反射波を検出し得る。また、検出装置30は、第1時間を取得し得る。第1時間は、検出装置30が第1入射波を入力した時刻から、検出装置30が第1反射波を検出した時刻までの時間である。第1時間は、パルス信号が、接続端C1と、第1反射波が生じた位置との間を往復する時間となる。
【0068】
検出装置30は、接続端C2に、第2入射波としてのパルス信号を入力し得る。第2入射波としてのパルス信号の電圧は、第1入射波としてのパルス信号の電圧と同じであってよい。接続端C2から入力されたパルス信号は、第2導線11を伝搬した後、第2端T2から伝送線路20に入力される。第2端T2から入力された第2入射波は、第2端T2から第1端T1に向かう方向に、伝送線路20を進行する。第2入射波が、伝送線路20のインピーダンスの不整合が生じている位置に、例えば位置Pに、進行すると、当該インピーダンスの不整合が生じている位置で、第2反射波が生じ得る。インピーダンスの不整合が生じている位置で生じた第2反射波は、第2入射波の進行方向とは逆方向に、すなわち、第1端T1から第2端T2に向かう方向に、伝送線路20を進行する。第2入射波の進行方向とは逆方向に進行した第2反射波は、第2端T2及び第2導線11を経由して、接続端C2に到達し得る。
【0069】
検出装置30は、接続端C2から第2反射波を検出し得る。また、検出装置30は、第2時間を取得し得る。第2時間は、検出装置30が第2入射波を入力した時刻から、検出装置30が第2反射波を検出した時刻までの時間である。第2時間は、パルス信号が、接続端C2と、第2反射波が生じた位置との間を往復する時間となる。
【0070】
検出装置30が第1反射波及び第2反射波を検出することにより、
図5に示すような電圧データが得られる。
【0071】
図5には、時間に対する反射波の電圧データを示す。
図5では、第1時間に対する第1反射波の電圧を示す第1電圧データと、第2時間に対する第2反射波の電圧を示す第2電圧データとを合わせて示す。
図5では、第1時間と第2時間とを、同じ時間の軸に示す。
【0072】
図5では、
図4に示すような第1入射波及び第2入射波として、限定ではないが、正のパルス信号が用いられている。そのため、第1反射波及び第2反射波の両方が、正のパルス信号となる。第2入射波として負のパルス信号が用いられる場合、後述の
図16に示すように、第2反射波は、負のパルス信号となる。同様に、第1入射波として負のパルス信号が用いられる場合、第1反射波は、負のパルス信号となる。
【0073】
第1反射波の電圧は、第1時間Δt1で、ピークとなる。第1時間Δt1は、パルス信号が、接続端C1と、位置Pとを往復する時間となり得る。第2反射波の電圧は、第2時間Δt2でピークとなる。第2時間Δt2は、パルス信号が、接続端C2と、位置Pとを往復する時間となり得る。
【0074】
基準時間tMは、パルス信号が、接続端C1又は接続端C2すなわち検出装置30と、伝送線路20の中点との間を往復する時間である。上述のように、本実施形態では、第1導線10の長さと第2導線11の長さとは、同じ長さAである。第1導線10の長さと第2導線11の長さとが同じ長さAであることにより、パルス信号が接続端C1と伝送線路20の中点との間を往復する時間と、パルス信号が接続端C2と伝送線路20の中点との間を往復する時間とは、同じになる。そのため、位置Pが伝送線路20の中点に位置する場合、第1時間Δt1と第2時間Δt2とは、同じ基準時間tMとなる。
【0075】
図5では、
図4に示すような位置Pと第1端T1との間の距離Xは、位置Pと第2端T2との間の距離(B-X)よりも、短い。そのため、第1入射波及び第1反射波が伝送線路20を伝搬する距離の方が、第2入射波及び第2反射波が伝送線路20を伝搬する距離よりも、短くなり得る。その結果、第1反射波の減衰の方が、第2反射波の減衰よりも、小さくなる。第1反射波の電圧のピーク値の方が、第2反射波の電圧のピーク値よりも、大きくなる。
【0076】
検出装置30は、第1反射波と第2反射波との合成に基づいて、伝送線路20に印加された磁界の磁界強度HEXを検出する。第1反射波と第2反射波とを合成する処理例について説明する。
【0077】
<合成処理の例1>
検出装置30は、第1反射波と第2反射波とを合成して、合成値を取得してよい。検出装置30は、第1電圧データのピーク値と第2電圧データのピーク値とを合成することにより、合成値を取得してよい。
【0078】
例えば、検出装置30は、第1入射波及び第2入射波の両方が、正のパルス信号又は負のパルス信号である場合、第1電圧データのピーク値と第2電圧データのピーク値とを加算することにより、合成値を取得してよい。
【0079】
例えば、検出装置30は、第1入射波が正のパルス信号であり、第2入射波が負のパルス信号である場合、第1電圧データのピーク値から第2電圧データのピーク値を減算することにより、合成値を取得してよい。
【0080】
例えば、検出装置30は、第1入射波が負のパルス信号であり、第2入射波が正のパルス信号である場合、第2電圧データのピーク値から第1電圧データのピーク値を減算することにより、合成値を取得してよい。
【0081】
検出装置30は、合成値に基づいて、伝送線路20に印加された磁界の磁界強度HEXを検出する。例えば、検出装置30は、合成値を、数式(5)のVRに代入し、接続端C1及び接続端C2から入力する入射波の電圧を、数式(5)のViに代入する。検出装置30は、これらの値を数式(5)に代入することにより、変化量ΔZを検出する。検出装置30は、数式(3)のZMに、(Z0+ΔZ)を代入することにより、伝送線路20に印加されている磁界強度HEXを検出する。ここで、数式(3)の角周波数ωは、パルス信号を正弦波として近似したときの角周波数であってよい。角周波数ωについて、次に、より詳細に説明する。パルス信号の波形は、正弦波の-T/2~T/2(Tは正弦波の周期)の時間幅の波形で近似できる。例えば、パルス信号の電圧のピーク値の高さが電圧Vとなる場合、当該パルス信号の波形は、電圧V/2の正弦波に、電圧V/2のオフセットが加わった波形となる。そのため、当該パルス信号の立ち上がり時間は、時間tr≒T/2=1/(2f)となる。また、当該パルス信号の角周波数は、角周波数ω=2πfとなる。なお、パルス信号の波形を正弦波として近似するのは一例であり、他の波形で近似してもよい。また、検出装置30は、磁界強度HEXを検出する際、数式(3)の代わりに、数式(3)を近似した式(例えば、直線近似式)を用いることにより、磁界強度HEXを算出(検出)してもよい。また、検出装置30は、磁界強度HEXを検出する際、数式(3)の代わりに、予め取得された、インピーダンスZMを磁界強度HEXに直接関連付けたものを用いることにより、磁界強度HEXを算出(検出)してもよい。
【0082】
<合成処理の例2>
検出装置30は、
図5に示すような第1電圧データと第2電圧データとを、合成してよい。検出装置30は、第1電圧データと第2電圧データとを合成することにより、合成データを取得してよい。以下、第1電圧データと第2電圧データとの合成処理を、
図6を参照して説明する。
【0083】
図6には、伝搬距離に対する反射波の電圧を示す電圧データを示す。
図6では、説明の便宜上、
図5に示す時間が、パルス信号がその時間に伝搬する伝搬距離に変換される。第1時間は、第1距離に変換される。第1距離は、パルス信号が第1時間に伝搬する距離である。第2時間は、第2距離に変換される。第2距離は、パルス信号が第2時間に伝搬する距離である。
【0084】
例えば、
図5において第1時間Δt1は、パルス信号が接続端C1と位置Pとの間を往復する時間となる。そのため、第1時間Δt1は、
図6では、第1距離p1に変換される。第1距離p1は、パルス信号が、接続端C1と位置Pとの間を往復する際に、伝搬する距離である。第1距離p1は、接続端C1と位置Pとの間の距離の2倍(2(A+X))である。
【0085】
例えば、
図5において第2時間Δt2は、パルス信号が接続端C2と位置Pとの間を往復する時間となる。そのため、第2時間Δt2は、
図6では、第2距離p2に変換される。第2距離p2は、パルス信号が、接続端C2と位置Pとの間を往復する際に、伝搬する距離となる。第2距離p2は、接続端C2と位置Pとの間の距離の2倍(2(A+(B-X)))である。
【0086】
例えば、
図5において基準時間tMは、パルス信号が、接続端C1又は接続端C2すなわち検出装置30と、伝送線路20の中点との間を往復する時間である。そのため、基準時間tMは、
図6では、基準距離DMに変換される。基準距離DMは、パルス信号が、接続端C1又は接続端C2すなわち検出装置30と伝送線路20の中点との間を往復する際に、伝搬する距離である。基準距離DMは、距離(2(A+B/2))である。
【0087】
ところで、位置Pが伝送線路20の中点にある場合、第1導線10の長さと第2導線11の長さとが同じ長さAであることにより、接続端C1と位置Pとの間の距離と、接続端C2と位置Pとの間の距離は、等しくなる。そのため、位置Pが伝送線路20の中点にある場合、第1距離p1と第2距離p2とは、
図6に示すような電圧データ上では、伝搬距離の軸上の、同じ基準距離DMに位置する。ここで、位置Pが伝送線路20の中点よりも第1端T1の方に距離(B/2-X)だけシフトする場合、接続端C1と位置Pとの間の距離は、基準距離DMよりも、距離(2×(B/2-X)=B-2X)だけ短くなる。この場合、第1距離p1は、
図6に示すような電圧データの伝搬距離の軸上では、基準距離DMよりも距離(B-2X)だけ短い距離に位置する。また、位置Pが伝送線路20の中点よりも第1端T1の方に距離(B/2-X)だけシフトする場合、接続端C1と位置Pとの間の距離は、基準距離DMよりも、距離(2×(B/2-X)=B-2X)だけ長くなる。この場合、第2距離p2は、
図6に示すような電圧データの伝搬距離の軸上では、基準距離DMよりも距離(B-2X)だけ長い距離に位置する。つまり、位置Pの位置にかかわらず、
図6に示すような電圧データの伝搬距離の軸上において、基準距離DMと第1距離p1との間の差(B-2X)と、第2距離p2と基準距離DMとの間の差(B-2X)とは、等しくなり得る。
【0088】
そこで、検出装置30は、第1電圧データ及び第2電圧データの一方を、基準距離DMを対称軸として反転させる。例えば、検出装置30は、
図7に示すように、第2電圧データを、基準距離DMを対称軸として反転させてよい。検出装置30は、第1電圧データ及び第2電圧データの一方を、基準距離DMを対称軸として反転させることにより、電圧データの伝搬距離の軸上において、第1距離p1の位置及び第2距離の位置の一方を、距離(2B-4X)シフトさせることができる。
図7に示す例では、検出装置30は、伝搬距離の軸上において、第2距離p2の位置を、第1距離p1の方へ距離(2B-4X)シフトさせることができる。検出装置30は、電圧データの伝搬距離の軸上において、第1距離p1の位置及び第2距離の位置の一方を、距離(2B-4X)シフトさせることで、第1距離p1の位置と第2距離p2の位置とを一致させることができる。つまり、検出装置30は、電圧データの伝搬距離の軸上において、第1電圧データの電圧のピーク位置と、第2電圧データの電圧のピーク位置とを一致させることができる。
【0089】
検出装置30は、第1電圧データ及び第2電圧データの一方を、基準距離DMを対称軸として反転させると、第1電圧データと第2電圧データとを合成して、合成データを取得する。例えば、検出装置30は、
図8に示すように、第1電圧データと第2電圧データとを合成して、合成データを取得する。
【0090】
例えば、検出装置30は、第1入射波及び第2入射波の両方が、正のパルス信号又は負のパルス信号である場合、第1電圧データ及び第2電圧データの一方を、基準距離DMを対称軸として反転させると、第1電圧データと第2電圧データとを足し合わせてよい。検出装置30は、第1電圧データと電圧データとを足し合わせることにより、合成データを取得してよい。
図7に示す例では、検出装置30は、第1電圧データと電圧データとを足し合わせることにより、
図8に示すような合成データを取得する。
【0091】
例えば、検出装置30は、第1入射波が正のパルス信号であり、第2入射波が負のパルス信号である場合、第1電圧データ及び第2電圧データの一方を、基準距離DMを対称軸として反転させると、第1電圧データから第2電圧データを引いてよい。検出装置30は、第1電圧データから第2電圧データを引くことにより、合成データを取得してよい。
【0092】
例えば、検出装置30は、第1入射波が負のパルス信号であり、第2入射波が正のパルス信号である場合、第1電圧データ及び第2電圧データの一方を、基準距離DMを対称軸として反転させると、第2電圧データから第1電圧データを引いてよい。検出装置30は、第2電圧データから第1電圧データを引くことにより、合成データを取得してよい。
【0093】
検出装置30は、合成データに基づいて、伝送線路20に印加された磁界の磁界強度H
EXを検出する。例えば、検出装置30は、
図8に示すような合成データの電圧のピーク値を、合成値として取得してよい。検出装置30は、合成値に基づいて、合成処理の例1と同様にして、伝送線路20に印加された磁界の磁界強度H
EXを検出してよい。
【0094】
ここで、合成処理の例2では、説明の便宜上、第1時間に対する第1反射波の電圧を示す第1電圧データと、第2時間に対する第2反射波の電圧を示す第2電圧データとの合成を、
図6から
図8を用いて説明した。ただし、第1時間と第1距離とは、互換可能である。また、第2時間と第2距離とは、互換可能である。従って、
図6から
図8に示すような第1距離に対する第1反射波の電圧を示す第1電圧データ及び第2距離に対する第2反射波の電圧を示す第2電圧データに対する処理は、
図5に示すような第1電圧データ及び第2電圧データに対する処理と言い換えられ得る。例えば、
図6に示すような第1電圧データ及び第2電圧データの一方を、基準距離DMを対称軸として反転させる処理は、
図5に示すような第1電圧データ及び第2電圧データの一方を、基準時間tMを対称軸として反転させる処理と言い換えられ得る。また、
図8に示すような伝搬距離の軸上で第1電圧データと第2電圧データとを合成する処理は、第1時間及び第2時間の時間軸上で第1電圧データと第2電圧データとを合成する処理と言い換えられ得る。
【0095】
<磁界位置の検出処理>
検出装置30は、第1時間及び第2時間の少なくとも何れかを用いることにより、磁界強度HEXの外部磁界が印加されている位置Pを検出することができる。以下、この処理を詳細に説明する。
【0096】
第1時間Δt1は、上述のように、パルス信号が、接続端C1と位置Pとの間を往復する時間とみなされ得る。ここで、接続端C1から位置Pまでの距離D1は、第1導線10の長さAに、第1端T1から位置Pまでの距離Xを加算した値となる(すなわち、D1=A+X)。接続端C1から位置Pまでの距離D1は、数式(6)によって表され得る。
【数6】
数式(6)において、時間Δt1aは、接続端C1と位置Pとの間を往復する際、パルス信号が第1導線10を往復する時間である。時間Δt1xは、接続端C1と位置Pとの間を往復する際、パルス信号が伝送線路20において第1端T1と位置Pとの間を往復する時間である。短縮率αは、第1導線10内における及び第2導線11内における波長短縮率である。短縮率βは、伝送線路20内における波長短縮率である。速度cは、真空中の電磁波の伝搬速度である。
【0097】
ここで、短縮率αは、第1導線10及び第2導線11を構成する部材に依拠する値であり、既知である。短縮率βは、誘電体22等の伝送線路20を構成する部材に依存する値であり、既知である。速度cは、真空中の光速3.0×108[m/s]であり、既知である。時間Δt1aは、パルス信号が第1導線10を往復する時間を事前に測定することにより、既知である。時間Δt1xは、第1時間Δt1から時間Δt1aを減算することにより(すなわち、Δt1x=Δt1-Δt1a)、算出され得る。つまり、検出装置30は、第1時間Δt1から時間Δt1aを減算することにより時間Δt1xを算出し、算出した時間Δt1xを数式(6)に代入することにより、外部磁界が印加されている位置P、すなわち、距離Xを算出(検出)することができる。
【0098】
検出装置30は、数式(6)に、第1時間Δt1の代わりに、第2時間Δt2を適用することにより、接続端C2から位置Pまでの距離D2を算出(検出)することができる。距離D2は、第2導線11の長さAに、第2端T2から位置Pまでの距離(B-X)を加算した値となる(すなわち、D2=A+(B-X))。この場合、検出装置30は、数式(6)の時間Δt1aの代わりに、時間Δt2aを代入する。時間Δt2aは、パルス信号が接続端C2と位置Pとの間を往復する際、パルス信号が第2導線11を往復する時間である。時間Δt2aは、第1導線10と同様に、パルス信号が第2導線11を往復する時間を事前に測定することにより、既知である。時間Δt2aに、時間Δt1aの測定値が用いられてもよい。また、検出装置30は、数式(6)の時間Δt1xの代わりに、時間Δt2xを代入する。時間Δt2xは、パルス信号が接続端C2と位置Pとの間を往復する際、パルス信号が伝送線路20において第2端T2と位置Pとの間を往復する時間である。時間Δt2xは、第2時間Δt2から時間t2aを減算することにより(すなわち、Δt2x=Δt2-Δt2a)、算出され得る。つまり、検出装置30は、第2時間Δt2から時間Δt2aを減算することにより時間Δt2xを算出し、算出した時間Δt2xを数式(6)に代入することにより、外部磁界が印加されている位置P、すなわち、距離Xを算出(検出)することができる。
【0099】
このように検出装置30は、伝送線路20に印加されている磁界の磁界強度HEXと、外部磁界が印加されている位置Pとを、同時に検出することができる。
【0100】
(検出装置の構成例)
図9を参照して、検出装置30の詳細な構成の一例を説明する。以下、ベクトルネットワークアナライザとして検出装置30を構成する例を説明する。ただし、検出装置30の構成は、これに限定されない。例えば、検出装置30の構成は、後述の
図20に示すような構成であってよい。
【0101】
図9に示すように、検出装置30は、信号発生器31と、方向性結合器32と、方向性結合器33と、信号検波器34と、記憶部35と、制御部36とを有する。
【0102】
信号発生器31は、正弦波状のパルス信号を生成する。本開示において「正弦波状のパルス信号」は、正弦波状の波形の1周期分を示す。つまり、「正弦波状のパルス信号」は、正弦波状の波形の正側の部分と負側の部分の両方を有する。
【0103】
信号発生器31は、正弦波状のパルス信号を掃引して出力する。本開示において「掃引して出力する」とは、正弦波状のパルス信号の周波数を変えながら出力することを意味する。信号発生器31は、正弦波状のパルス信号の周波数を低い周波数から高い周波数へ連続的に変えながら出力してよい。例えば、信号発生器31は、正弦波状のパルス信号の周波数を、10MHzから50GHzまで変えながら、正弦波状のパルス信号を出力してよい。
【0104】
信号発生器31は、方向性結合器32及び信号検波器34に接続されている。信号発生器31が掃引して出力する正弦波状のパルス信号は、第1入射波として、方向性結合器32及び信号検波器34に入力される。
【0105】
信号発生器31は、方向性結合器33及び信号検波器34に接続されている。信号発生器31が掃引して出力する正弦波状のパルス信号は、第2入射波として、方向性結合器33及び信号検波器34に入力される。
【0106】
信号発生器31が第1入射波として掃引して出力する正弦波状のパルス信号の電圧振幅は、周波数に対して一定であってよい。信号発生器31が第2入射波として掃引して出力する正弦波状のパルス信号の電圧振幅は、周波数に対して一定であってよい。第1入射波としてのパルス信号の電圧振幅と、第2入射波としてのパルス信号の電圧振幅とは、同じであってよい。
【0107】
方向性結合器32は、接続端C1と、信号発生器31と、信号検波器34とを相互に接続する。信号発生器31からの第1入射波は、方向性結合器32、接続端C1、及び第1導線10を介して、伝送線路20の第1端T1に入力される。伝送線路20の第1端T1からの第1反射波は、第1導線10、接続端C1、及び方向性結合器32を介して、信号検波器34に入力される。
【0108】
方向性結合器33は、接続端C2と、信号発生器31と、信号検波器34とを相互に接続する。信号発生器31からの第2入射波は、方向性結合器33、接続端C2、及び第2導線11を介して、伝送線路20の第2端T2に入力される。伝送線路20の第2端T2からの第2反射波は、第2導線11、接続端C2、及び方向性結合器33を介して、信号検波器34に入力される。
【0109】
信号検波器34は、信号発生器31から入力される第1入射波、及び、方向性結合器32から入力される第1反射波を検波する。信号検波器34は、信号発生器31が掃引して出力する正弦波状のパルス信号の周波数毎に、第1入射波に対する第1反射波のベクトル比を検出してよい。本開示において「ベクトル比」とは、入射波に対する反射波の反射率及び位相差によって規定されるベクトルである。ここで、入射波に対する反射波の反射率とは、反射波の電圧振幅を入射波の電圧振幅で割ったものであってよい。また、入射波に対する反射波の位相差とは、反射波の位相から入射波の位相を引いたものであってよい。
【0110】
信号検波器34は、信号発生器31から入力される第2入射波、及び、方向性結合器33から入力される第2反射波を検波する。信号検波器34は、信号発生器31が掃引して出力する正弦波状のパルス信号の周波数毎に、第2入射波に対する第2反射波のベクトル比を検出してよい。
【0111】
このように、信号検波器34は、入射波に対する反射波の反射率及び位相差を相対値として検出することができる。このような構成とすることで、信号検波器34は、入射波に揺らぎがあっても、揺らぎをキャンセルして入射波に対する反射波の反射率及び位相差を検出することができる。換言すると、信号検波器34は、入射波のジッターを除去することができ、時間的な信号の揺らぎの無い、同期の取れた測定を行うことができる。
【0112】
信号検波器34は、通過帯域が可変なフィルタ(例えば、バンドパスフィルタ又はIF(Intermediate Frequency)フィルタ)を含んで構成されていてよい。フィルタがバンドパスフィルタである場合、バンドパスフィルタの通過帯域は、制御部36からの指令に応じて制御され得る。制御部36は、信号発生器31が出力している正弦波状のパルス信号を通過させ、その他の周波数の信号を減衰させるように、バンドパスフィルタの通過帯域を制御する。このような構成とすることで、信号検波器34が含むバンドパスフィルタは、反射波に含まれるノイズのうち、信号発生器31が出力している正弦波状のパルス信号の周波数以外の周波数帯のノイズを減衰させることができる。従って、信号検波器34は、検出装置30が受信する反射波のSN比を改善させることができる。
【0113】
なお、信号検波器34がバンドパスフィルタを含むことは、必須ではない。信号検波器34は、バンドパスフィルタを含んでいなくてもよい。
【0114】
信号検波器34は、アナログ信号の状態で入射波及び反射波を検波してもよい。信号検波器34は、デジタル信号の状態で入射波及び反射波を検波してもよい。
【0115】
記憶部35は、例えば、半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限定されない。記憶部35は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部35には、検出装置30の動作に用いられるデータと、検出装置30の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0116】
制御部36は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。制御部36は、検出装置30の各部を制御しながら、検出装置30の動作に関わる処理を実行する。
【0117】
制御部36は、信号発生器31を制御して、信号発生器31に、第1入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して出力させる。信号発生器31が第1入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して出力することにより、制御部36に、信号検波器34を介して第1入射波が入力される。また、制御部36に、方向性結合器32及び信号検波器34を介して第1反射波が入力される。
【0118】
制御部36は、信号検波器34から、第1入射波の周波数毎に、第1入射波に対する第1反射波の反射率及び位相差を取得する。制御部36は、第1入射波に対する第1反射波の反射率に基づいて、反射率の周波数領域デーを取得する。以下、第1入射波に対する第1反射波の反射率に基づいて取得される反射率の周波数領域データは、「第1反射率の周波数領域データ」とも記載される。制御部36は、第1入射波に対する第1反射波の位相差に基づいて、位相差の周波数領域データを取得する。以下、第1入射波に対する第1反射波の位相差に基づいて取得される位相差の周波数領域データは、「第1位相差の周波数領域データ」とも記載される。制御部36は、第1反射率の周波数領域データ及び第1位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換して、第1反射波の時間領域データを取得する。この第1反射波の時間領域データは、
図5に示すような第1時間に対する第1反射波の電圧を示す第1電圧データに対応し得る。
【0119】
制御部36は、信号発生器31を制御して、信号発生器31に、第2入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して出力させる。信号発生器31が第2入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して出力することにより、制御部36に、信号検波器34を介して第2入射波が入力される。また、制御部36に、方向性結合器33及び信号検波器34を介して第2反射波が入力される。
【0120】
制御部36は、信号検波器34から、第2入射波の周波数毎に、第2入射波に対する第2反射波の反射率及び位相差を取得する。制御部36は、第2入射波に対する第2反射波の反射率に基づいて、反射率の周波数領域データを取得する。以下、第2入射波に対する第2反射波の反射率に基づいて取得される反射率の周波数領域データは、「第2反射率の周波数領域データ」とも記載される。制御部36は、第2入射波に対する第2反射波の位相差に基づいて、位相差の周波数領域データを取得する。以下、第2入射波に対する第2反射波の位相差に基づいて取得される位相差の周波数領域データは、「第2位相差の周波数領域データ」とも記載される。制御部36は、第2反射率の周波数領域データ及び第2位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換して、第2反射波の時間領域データを取得する。第2反射波の時間領域データは、
図5に示すような第2時間に対する第2反射波の電圧を示す第2電圧データに対応し得る。
【0121】
制御部36は、第1電圧データとして第1反射波の時間領域データを用い、第2電圧データとして第2反射波の時間領域データを用いることにより、上述のようにして、伝送線路20に印加された磁界の強度及び位置を検出する。
【0122】
制御部36は、伝送線路20に印加された磁界の強度及び位置を検出する際、第1オフセットデータ及び第2オフセットデータを用いてもよい。第1オフセットデータは、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されていないときに検出された第1反射波のデータである。第2オフセットデータは、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されていないときに検出された第2反射波のデータである。
【0123】
制御部36は、第1生データから、第1オフセットデータを引くことにより、検出対象の磁界の強度及び位置を検出するための第1電圧データを取得してよい。第1生データは、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されているときに検出された第1反射波のデータである。制御部36は、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されているときに検出した第1反射率の周波数領域データ及び第1位相差の周波数領域データを、第1生データとして用いてよい。この場合、制御部36は、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されていないときに検出した第1反射率の周波数領域データ及び第1位相差の周波数領域データを、第1オフセットデータとして記憶部35に格納させてよい。また、制御部36は、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されているときに検出した第1反射波の時間領域データを、第1生データとして用いてもよい。この場合、制御部36は、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されていないときに検出した第1反射波の時間領域データを、第1オフセットデータとして記憶部35に格納させてよい。
【0124】
制御部36は、第2生データから、第2オフセットデータを引くことにより、検出対象の磁界の強度及び位置を検出するための第2電圧データを取得してよい。第2生データは、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されているときに検出された第2反射波のデータである。制御部36は、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されているときに検出した第2反射率の周波数領域データ及び第2位相差の周波数領域データを、第2生データとして用いてよい。この場合、制御部36は、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されていないときに検出した第2反射率の周波数領域データ及び第2位相差の周波数領域データを、第2オフセットデータとして記憶部35に格納させてよい。また、制御部36は、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されているときに検出した第2反射波の時間領域データを、第2生データとして用いてもよい。この場合、制御部36は、伝送線路20に検出対象の磁界が印加されていないときに検出した第2反射波の時間領域データを、第2オフセットデータとして記憶部35に格納させてよい。
【0125】
このような第1オフセットデータ及び第2オフセットデータを用いることにより、検出対象の磁界が伝送線路20に印加されること以外の他の要因で生じた反射波の影響が低減され得る。他の要因は、例えば、伝送線路20の構成要素の機械的な公差、伝送線路20の曲げ等により生じる歪み、初期状態から印加されている環境磁界、及び伝送線路間(例えば、50Ω同軸ケーブルと伝送線路20)のインピーダンス不整合等である。初期状態から印加されている環境磁界は、例えば、地磁気又は電子機器等から発生する磁界である。
【0126】
(磁気検出装置の動作例)
以下、磁気検出装置1の動作の一例を、
図10及び
図11を参照して説明する。以下、検出対象の磁界は、伝送線路に印加される外部磁界であるとする。また、制御部36が
図10に示す処理を実行する際、伝送線路20に外部磁界が印加されていないものとする。
【0127】
制御部36は、伝送線路20に外部磁界が印加されていないときに、信号発生器31を制御して、信号発生器31に、第1入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して出力させる(ステップS10)。信号発生器31が第1入射波として掃引して出力する正弦波状のパルス信号の電圧振幅は、周波数に対して一定であってよい。
【0128】
制御部36は、信号検波器34を介して入力される第1入射波と、方向性結合器32及び信号検波器34を介して入力される第1反射波とによって、第1反射率の周波数領域データ及び第1位相差の周波数領域データを、取得する(ステップS11)。
【0129】
制御部36は、ステップS11の処理で取得した第1反射率の周波数領域データ及び第1位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換することにより、第1反射波の時間領域データに変換する(ステップS12)。ステップS12の処理において、制御部36は、この第1反射波の時間領域データを、第1オフセットデータとして取得して、記憶部35に格納させる。この第1反射波の時間領域データは、ステップS10の処理において信号発生器31が出力するパルス信号の電圧振幅が周波数に対して一定である場合、インパルス信号としての第1入射波に対するインパルス応答となり得る。
【0130】
制御部36は、伝送線路20に外部磁界が印加されていないときに、信号発生器31を制御して、信号発生器31に、第2入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して出力させる(ステップS13)。信号発生器31が第2入射波として掃引して出力する正弦波状のパルス信号の電圧振幅は、周波数に対して一定であってよい。
【0131】
制御部36は、信号検波器34を介して入力される第2入射波と、方向性結合器33及び信号検波器34を介して入力される第2反射波とによって、第2反射率の周波数領域データ及び第2位相差の周波数領域データを、取得する(ステップS14)。
【0132】
制御部36は、ステップS14の処理で取得した第2反射率の周波数領域データ及び第2位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換することにより、第2反射波の時間領域データに変換する(ステップS15)。ステップS15の処理において、制御部36は、この第2反射波の時間領域データを、第2オフセットデータとして取得して、記憶部35に格納させる。この第2反射波の時間領域データは、ステップS13の処理において信号発生器31が出力するパルス信号の電圧振幅が周波数に対して一定である場合、インパルス信号としての第2入射波に対するインパルス応答となり得る。
【0133】
ステップS15の処理が実行された後、伝送線路20に外部磁界が印加される。検出装置30は、
図11に示すような処理に進む。
【0134】
制御部36は、伝送線路20に外部磁界が印加されているときに、信号発生器31を制御して、信号発生器31に、第1入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して出力させる(ステップS16)。ステップS16の処理で信号発生器31が出力する第1入射波の波形は、ステップS10の処理で信号発生器31が出力する第1入射波の波形と同じである。
【0135】
制御部36は、信号検波器34を介して入力される第1入射波と、方向性結合器32及び信号検波器34を介して入力される第1反射波とによって、第1反射率の周波数領域データ及び第1位相差の周波数領域データを、取得する(ステップS17)。
【0136】
制御部36は、ステップS17の処理で取得した第1反射率の周波数領域データ及び第1位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換することにより、第1反射波の時間領域データに変換する(ステップS18)。ステップS18の処理において、制御部36は、この第1反射波の時間領域データを、第1生データとして取得する。
【0137】
制御部36は、ステップS18の処理で取得した第1生データから、ステップS12の処理で取得した第1オフセットデータを引くことにより、第1電圧データを取得する(ステップS19)。
【0138】
制御部36は、伝送線路20に外部磁界が印加されているときに、信号発生器31を制御して、信号発生器31に、第2入射波としての正弦波状のパルス信号を掃引して出力させる(ステップS20)。ステップS20の処理で信号発生器31が出力する第2入射波の波形は、ステップS13の処理で信号発生器31が出力する第1入射波の波形と同じである。
【0139】
制御部36は、信号検波器34を介して入力される第2入射波と、方向性結合器33及び信号検波器34を介して入力される第2反射波とによって、第2反射率の周波数領域データ及び第2位相差の周波数領域データを、取得する(ステップS21)。
【0140】
制御部36は、ステップS21の処理で取得した第2反射率の周波数領域データ及び第2位相差の周波数領域データを逆フーリエ変換することにより、第2反射波の時間領域データに変換する(ステップS22)。ステップS22の処理において、制御部36は、この第2反射波の時間領域データを、第2生データとして取得する。
【0141】
制御部36は、ステップS22の処理で取得した第2生データから、ステップS15の処理で取得した第2オフセットデータを引くことにより、第2電圧データを取得する(ステップS23)。
【0142】
制御部36は、ステップS19の処理で取得した第1電圧データと、ステップS23の処理で取得した第2電圧データとを合成して、合成データを生成する(ステップS24)。
【0143】
制御部36は、ステップS24の処理で取得した合成データに基づいて、伝送線路20に印加された磁界の強度を検出する(ステップS25)。ステップS25の処理では、制御部36は、第1時間及び第2時間の少なくとも何れかに基づいて、伝送線路20に印加された磁界の位置を検出する。
【0144】
なお、ステップS12の処理において、制御部36は、ステップS11の処理で取得した第1反射率の周波数領域データ及び第1位相差の周波数領域データを、第1オフセットデータとして取得して、記憶部35に格納させてもよい。この場合、制御部36は、ステップS18の処理において、ステップS17の処理で取得した第1反射率の周波数領域データ及び第1位相差の周波数領域データを、第1生データとして取得してよい。ステップS19の処理において、制御部36は、第1生データを逆フーリエ変換したものから、第1オフセットデータを逆フーリエ変換したものを引くことにより、第1電圧データを取得してよい。
【0145】
また、ステップS15の処理において、制御部36は、ステップS14の処理で取得した第2反射率の周波数領域データ及び第2位相差の周波数領域データを、第2オフセットデータとして取得して、記憶部35に格納させてもよい。この場合、制御部36は、ステップS22の処理において、ステップS21の処理で取得した第2反射率の周波数領域データ及び第2位相差の周波数領域データを、第2生データとして取得してよい。ステップS23の処理において、制御部36は、第2生データを逆フーリエ変換したものから、第2オフセットデータを逆フーリエ変換したものを引くことにより、第2電圧データを取得してよい。
【0146】
また、ステップS12の処理にて取得される第1反射波の時間領域データは、ステップS10の処理にて信号発生器31が出力するパルス信号の電圧振幅が周波数に対して一定である場合、インパルス信号としての第1入射波に対するインパルス応答となり得る。ステップS12の処理において、制御部36は、インパルス信号を時間に対して積分することにより、ステップ信号に変換してもよい。この場合、第1反射波の時間領域データは、ステップ信号としての第1入射波に対するステップ応答となり得る。ステップS12の処理と同様に、ステップS18の処理において、制御部36は、インパルス信号を時間に対して積分することにより、ステップ信号に変換してもよい。
【0147】
また、ステップS12,S18の処理において、制御部36は、第1反射率の周波数領域データ及び第1位相差の周波数領域データについて、逆フーリエ変換をしてから積分する代わりに、周波数領域で畳み込み積分処理を行ってから逆フーリエ変換をしてもよい。このような処理により、制御部36は、逆フーリエ変換をしてから積分処理をする場合に比べて、計算にかかる時間を低減することができる。
【0148】
また、ステップS15の処理にて取得される第2反射波の時間領域データは、ステップS13の処理にて信号発生器31が出力するパルス信号の電圧振幅が周波数に対して一定である場合、インパルス信号としての第2入射波に対するインパルス応答となり得る。ステップS15の処理において、制御部36は、インパルス信号を時間に対して積分することにより、ステップ信号に変換してもよい。この場合、第2反射波の時間領域データは、ステップ信号としての第2入射波に対するステップ応答となり得る。ステップS15の処理と同様に、ステップS22の処理において、制御部36は、インパルス信号を時間に対して積分することにより、ステップ信号に変換してもよい。
【0149】
また、ステップS15,S22の処理において、制御部36は、第2反射率の周波数領域データ及び第2位相差の周波数領域データについて、逆フーリエ変換をしてから積分する代わりに、周波数領域で畳み込み積分処理を行ってから逆フーリエ変換をしてもよい。このような処理により、制御部36は、逆フーリエ変換をしてから積分処理をする場合に比べて、計算にかかる時間を低減することができる。
【0150】
このような第1実施形態に係る磁気検出装置1によれば、以下に説明するように、外部磁界の磁界強度HEXを精度良く検出することができきる。
【0151】
比較例として、
図4に示すような、検出装置30が、接続端C1を介して伝送線路20の第1端T1からのみ入射波を入力して、反射波の電圧を検出する例を挙げる。この比較例では、
図4に示すような第1端T1と位置Pとの間の距離Xが長くなるほど、入射波及び反射波が伝送線路20を伝搬する伝搬距離が長くなることにより、接続端C1に到達したときの反射波が減衰し得る。例えば、
図12に示すように、伝搬距離が長くなるほど、接続端C1に到達したときの反射波の電圧は、小さくなり得る。
図12における伝搬距離は、入射波及び反射波としてのパルス信号が接続端C1と位置Pとを往復する際に伝搬する距離である。上述のように、反射波の電圧が小さくなると、反射波の電圧がノイズの影響を受けやすくなる。反射波の電圧がノイズの影響を受けやすくなると、上述のように、外部磁界の磁界強度H
EXを精度良く検出することが困難となり得る。
【0152】
これに対し、第1実施形態に係る磁気検出装置1では、検出装置30が、第1反射波と第2反射波とを合成する。例えば、検出装置30は、第1電圧データと第2電圧データとを合成することにより、合成データを取得する。合成データは、以下に説明するように、伝搬距離への依存が小さくなり得る。
【0153】
図13には、伝搬距離に対する合成データの一例を示す。第1電圧データは、第1伝搬距離に対する第1反射波の電圧を示す。第1伝搬距離は、第1入射波及び第1反射波としてのパルス信号が、
図4に示すような接続端C1と位置Pとを往復する際に伝搬する距離である。第2電圧データは、第2伝搬距離に対する第2反射波の電圧を示す。第2伝搬距離は、第2入射波及び第2反射波としてのパルス信号が、
図4に示すような接続端C2と位置Pとを往復する際に伝搬する距離である。合成データは、第1電圧データと第2電圧データとを合成したものである。
【0154】
例えば、
図13における第1伝搬距離は、
図4に示すような第1端T1と位置Pとの間の距離Xが長くなるほど、長くなり得る。つまり、第1端T1と位置Pとの間の距離Xが長くなるほど、
図13に示すように、第1伝搬距離が長くなり、第1反射波の電圧の減衰が大きくなり得る。これに対し、
図13における第2伝搬距離は、第1端T1と位置Pとの間の距離Xが長くなるほど、短くなり得る。つまり、第1端T1と位置Pとの間の距離Xが長くなるほど、
図13に示すように、第2伝搬距離が短くなり、第2反射波の電圧の減衰が小さなり得る。このような第1反射波と第2反射波とを合成することにより、合成データは、伝搬距離への依存が小さくなり得る。合成データが伝搬距離への依存が小さくなることにより、磁界を検出する際のノイズの影響が低減され得る。
【0155】
よって、本実施形態では、検出装置30が第1反射波と第2反射波とを合成することにより、磁界を検出する際のノイズの影響が低減され得る。このような構成とすることで、本実施形態に係る検出装置30及び磁気検出方法は、外部磁界の磁界強度HEXを精度良く検出することができる。
【0156】
また、第1実施形態に係る磁気検出装置1によれば、伝送線路20に印加された外部磁界の強度と、当該外部磁界の位置とを、同時に検出することができる。このような構成とすることで、伝送線路20において検出対象から発生した不均一な外部磁界を検出することができる。従って、磁気検出装置1は、検出対象である磁性材の磁化分布により発生した外部磁界、及び測定対象である金属表面の欠陥による磁界分布により発生した外部磁界等を検出することが可能となる。また、磁気検出装置1は、地磁気検出、渦電流探傷、磁気顕微鏡、電流センサ、及び脳磁計等のような、多種多様な計測機器に対して適用可能である。
【0157】
また、第1実施形態に係る磁気検出装置1によれば、伝送線路セット2は、1つの伝送線路20を含んで構成される。伝送線路セット2が1つの伝送線路20を含んで構成されることにより、伝送線路セット2の構成が簡素化され得る。
【0158】
また、第1実施形態に係る磁気検出装置1によれば、検出装置30は、インパルス応答又はステップ応答としての第1反射波の時間領域データ及び第2反射波の時間領域データを取得することができる。このような構成とすることで、検出装置30は、磁界強度を精度良く検出することができる。
【0159】
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態に係る磁気検出装置101の概略構成を示す図である。磁気検出装置101は、伝送線路セット102と、検出装置130とを備える。磁気検出装置101は、第1導線10及び第2導線11と、終端抵抗40及び終端抵抗41とをさらに備えてよい。
【0160】
伝送線路セット102は、伝送線路(第1伝送線路)120Aと、伝送線路(第2伝送線路)120Bとを含む。伝送線路120Aの長さと伝送線路120Bの長さとは、同じ長さBである。伝送線路120A及び伝送線路120Bは、
図1に示すような伝送線路20と同じ構成であってよい。伝送線路120Aの特性インピーダンスと、伝送線路120Bの特性インピーダンスとは、略等しくてよい。
【0161】
線状の伝送線路120Aと、線状の伝送線路120Bとは、平行に配置されている。伝送線路120Aの軸方向と、伝送線路120Bの軸方向とは、同じ方向に沿ってよい。平行に配置される伝送線路120Aと伝送線路120Bとの間の間隔は、検出対象の磁界分布及び伝送線路120A,120Bの電気的特性等を考慮して、適宜設定されてよい。
【0162】
伝送線路セット102の一端の側には、伝送線路120Aの端と伝送線路120Bの端が位置する。第1端T1は、伝送線路セット102の一端の側に位置する、伝送線路120Aの端及び伝送線路120Bの端のうち、伝送線路120Aの端に位置する。伝送線路120Aの2つの端のうちの、伝送線路120Aの第1端T1が位置しない方の端には、第3端T3が位置する。
【0163】
伝送線路セット102の他端の側には、伝送線路120Aの端と伝送線路120Bの端が位置する。第2端T2は、伝送線路セット102の他端の側に位置する、伝送線路120Aの端及び伝送線路120Bの端のうち、伝送線路120Bの端に位置する。伝送線路120Bの2つの端のうちの、伝送線路120Bの第2端T2が位置しない方の端には、第4端T4が位置する。
【0164】
終端抵抗40は、第3端T3に接続されている。終端抵抗40は、伝送線路120Aの特性インピーダンスと略等しい抵抗値を有し得る。第3端T3に終端抵抗40が接続されていることにより、第3端T3では、反射波の発生が低減され得る。第3端T3は、終端抵抗40の代わりに、アッテネータ(減衰器)に接続されてもよい。
【0165】
終端抵抗41は、第4端T4に接続されている。終端抵抗41は、伝送線路120Bの特性インピーダンスと略等しい抵抗値を有し得る。第4端T4に終端抵抗41が接続されていることにより、第4端T4では、反射波の発生が低減され得る。第4端T4は、終端抵抗41の代わりに、アッテネータ(減衰器)に接続されてもよい。
【0166】
図15には、
図14に示す構成における入射波と反射波の一例を示す。位置Pは、伝送線路セット102において磁石3によって外部磁界が印加される位置である。位置Pと第1端T1との間の距離は、距離Xである。
【0167】
検出装置130は、接続端C1に、第1入射波としてパルス信号を入力し得る。接続端C1から入力された第1入射波は、第1導線10を伝搬した後、第1端T1から伝送線路120Aに入力される。第1端T1から入力された第1入射波は、第1端T1から第3端T3に向かう方向に、伝送線路120Aを進行する。第1入射波が、伝送線路120Aのインピーダンスの不整合が生じている位置に、例えば位置Pに、進行すると、当該インピーダンスの不整合が生じている位置で、第1反射波が生じ得る。第1反射波は、第1入射波の進行方向とは逆方向に、すなわち、第3端T3から第1端T1に向かう方向に、伝送線路120Aを進行する。第1入射波の進行方向とは逆方向に進行した第1反射波は、第1端T1及び第1導線10を経由して、接続端C1に到達し得る。
【0168】
検出装置130は、接続端C1から第1反射波を検出し得る。また、検出装置130は、第1実施形態と同様に、第1時間を検出し得る。
【0169】
検出装置130は、接続端C2に、第2入射波としてパルス信号を入力し得る。接続端C2から入力された第2入射波は、第2導線11を伝搬した後、第2端T2から伝送線路120Bに入力される。第2端T2から入力された第2入射波は、第2端T2から第4端T4に向かう方向に、伝送線路120Bを進行する。第2入射波が、伝送線路120Bのインピーダンスの不整合が生じている位置に、例えば位置Pに、進行すると、当該インピーダンスの不整合が生じている位置で、第2反射波が生じ得る。第2反射波は、第2入射波の進行方向とは逆方向に、すなわち、第4端T4から第2端T2に向かう方向に、伝送線路120Bを進行する。第2入射波の進行方向とは逆方向に進行した第2反射波は、第2端T2及び第2導線11を経由して、接続端C2に到達し得る。
【0170】
検出装置130は、接続端C2から第2反射波を検出し得る。また、検出装置130は、第1実施形態と同様に、第2時間を検出し得る。
【0171】
検出装置130は、接続端C1に第1入射波を入力しながら、接続端C2に第2入射波を入力してもよい。この場合、検出装置130は、接続端C1から第1反射波を検出しながら、接続端C2から第2反射波を検出してもよい。
【0172】
検出装置130が第1反射波及び第2反射波を検出することにより、
図16に示すような電圧データが得られる。
【0173】
図16には、時間に対する反射波の電圧データを示す。
図16では、第1時間に対する第1反射波の電圧を示す第1電圧データと、第2時間に対する第2反射波の電圧を示す第2電圧データとを合わせて示す。
図16では、第1時間と第2時間とを、同じに時間の軸に示す。
【0174】
図16では、
図15に示すような第1入射波として、限定ではないが、正のパルス信号が用いられている。そのため、第1反射波は、正のパルス信号となる。また、
図15に示すような第2入射波として、限定ではないが、負のパルス信号が用いられている。そのため、第2反射波は、負のパルス信号となる。
【0175】
検出装置130は、第1実施形態と同様に、第1反射波と第2反射波とを合成して、合成値を取得してよい。検出装置130は、第1実施形態と同様に、第1電圧データの電圧のピーク値と第2電圧データの電圧のピーク値とを合成することにより、合成値を取得してよい。この際、
図16に示す例では、検出装置130は、第1電圧データの電圧のピーク値から第2電圧データの電圧のピーク値を減算することにより、合成値を取得してよい。検出装置130は、第1実施形態と同様に、合成値に基づいて、伝送線路20に印加された磁界の磁界強度H
EXを検出してよい。
【0176】
検出装置130は、第1実施形態と同様に、第1電圧データと、第2電圧データとを、合成してよい。検出装置30は、第1電圧データと第2電圧データとを合成することにより、合成データを取得してよい。
【0177】
図17には、伝搬距離に対する反射波の電圧を示す電圧データを示す。
図17でも、
図6と同様に、説明の便宜上、
図16に示す時間が、パルス信号がその時間に伝搬する伝搬距離に変換される。
【0178】
第1実施形態にて上述したように、位置Pの位置にかかわらず、
図17に示すような電圧データの伝搬距離の軸上において、基準距離DMと第1距離p1との間の差(B-2X)と、第2距離p2と基準距離DMとの間の差(B-2X)とは、等しくなり得る。
【0179】
第1実施形態と同様に、検出装置130は、第1電圧データ及び第2電圧データの一方を、基準距離DMを対称軸として反転させる。例えば、
図18に示すように、検出装置130は、第2電圧データを、基準距離DMを対称軸として反転させてよい。
【0180】
検出装置130は、第1電圧データ及び第2電圧データの一方を、基準距離DMを対称軸として反転させると、第1実施形態と同様に、第1電圧データと第2電圧データとを合成して、合成データを取得する。この際、
図18に示す例では、検出装置130は、第1電圧データから第2電圧データを引くことにより、合成データを取得する。このような処理により、検出装置130は、
図19に示すような合成データを取得する。
【0181】
検出装置130は、第1実施形態と同様に、
図19に示すような合成データの電圧のピーク値を、合成値として取得してよい。検出装置130は、合成値に基づいて、第1実施形態と同様にして、伝送線路セット102に印加された磁界の磁界強度H
EXを検出する。
【0182】
ここで、説明の便宜上、第1時間に対する第1反射波の電圧を示す第1電圧データと、第2時間に対する第2反射波の電圧を示す第2電圧データとの合成を、
図17から
図19を用いて説明した。ただし、第1実施形態と同様に、第1距離に対する第1反射波の電圧を示す第1電圧データ及び第2距離に対する第2反射波の電圧を示す第2電圧データに対する処理は、
図16に示すような第1電圧データ及び第2電圧データに対する処理と言い換えられ得る。例えば、
図17に示すような第1電圧分布及び第2電圧分布の一方を、基準距離DMを対称軸として反転させる処理は、
図16に示すような第1電圧分布及び第2電圧分布の一方を、基準時間tMを対称軸として反転させる処理と言い換えられ得る。また、
図19に示すような伝搬距離の軸上で第1電圧データと第2電圧データとを合成する処理は、第1時間及び第2時間の時間軸上で第1電圧データと第2電圧データとを合成する処理と言い換えられ得る。
【0183】
検出装置130は、第1実施形態と同様に、第1時間及び第2時間の少なくとも何れかを用いることにより、磁界強度HEXの外部磁界が印加されている位置Pを検出してよい。
【0184】
(検出装置の構成例)
図20を参照して、検出装置130の詳細な構成の一例を説明する。ただし、検出装置130の構成は、
図20に示すような構成に限定されない。例えば、検出装置130は、
図9に示すようなベクトルネットワークアナライザとして構成されてもよい。
【0185】
図20に示すように、検出装置130は、信号発生器131と、コネクタ132,133と、入力回路134,135と、ADC(Analog-to-digital converter)136,137と、記憶部138と、制御部139とを有する。
【0186】
信号発生器131は、電圧パルス信号を生成する。信号発生器131は、コネクタ132に接続されている。信号発生器131が生成したパルス信号は、第1入射波として、コネクタ132に入力される。また、信号発生器131は、コネクタ133に接続されている。信号発生器131が生成したパルス信号は、第2入射波として、コネクタ133に入力される。
【0187】
信号発生器131は、パルス信号として、短パルス信号又は立ち上がり時間が高速なパルス信号を生成してよい。このようなパルス信号を生成することにより、検出装置130が複数の反射波を検出する場合、複数の反射波を分離することが容易なり得る。また、このようなパルス信号を生成することにより、信号発生器131の消費電力が低減され得る。
【0188】
信号発生器131が生成するパルス信号は、特に限定しないが、例えば、立ち上がり時間が200[ps]、パルス幅が500[ps]、及びパルス高さが1[V]等であってよい。
【0189】
信号発生器131が生成するパルス信号は、任意の形状であってよい。信号発生器131が生成するパルス信号は、例えば、矩形波状、正弦波状、三角波状、又は鋸波状等であってよい。
【0190】
信号発生器131は、第1入射波としてのパルス信号と、第2入射波としてのパルス信号とを同時に生成してもよい。第1入射波及び第2入射波を同時に生成する場合、信号発生器131は、電圧の正負の極性が同じ第1入射波及び第2入射波を生成してもよいし、電圧の正負の極性が異なる第1入射波及び第2入射波を生成してもよい。電圧の正負の極性が異なる第1入射波及び第2入射波を生成する場合、信号発生器131は、差動出力によって、第1入射波としてのパルス信号及び第2入射波としてのパルス信号を生成してもよい。
【0191】
コネクタ132は、信号発生器131と、入力回路134と、接続端C1とを相互に接続する。コネクタ132は、例えば、T型コネクタであってよい。信号発生器131からの第1入射波は、コネクタ132、接続端C1、及び第1導線10を介して、伝送線路120Aの第1端T1に入力される。また、信号発生器131からの第1入射波は、コネクタ132を介して、入力回路134に入力される。伝送線路120Aの第1端T1からの第1反射波は、第1導線10、接続端C1、及びコネクタ132を介して、入力回路134に入力される。
【0192】
コネクタ133は、信号発生器131と、入力回路135と、接続端C2とを相互に接続する。コネクタ133は、例えば、T型コネクタであってよい。信号発生器131からの第2入射波は、コネクタ133、接続端C2、及び第2導線11を介して、伝送線路120Bの第2端T2に入力される。また、信号発生器131からの第2入射波は、コネクタ133を介して、入力回路135に入力される。伝送線路120Bの第2端T2からの第2反射波は、第2導線11、接続端C2、及びコネクタ133を介して、入力回路135に入力される。
【0193】
入力回路134は、信号発生器131からコネクタ132を介して入力される第1入射波を検出する。入力回路134は、伝送線路120Aの第1端T1から、第1導線10、接続端C1、及びコネクタ132を介して入力される第1反射波を検出する。入力回路134は、減衰回路及びプリアンプ等を含んで構成されていてよい。入力回路134は、アナログ信号として入力される第1入射波及び第1反射波の電圧振幅が、ADC136の入力仕様に対し適切な範囲になるように、第1入射波及び第1反射波の電圧振幅を調整する。入力回路134は、調整したアナログ信号を、ADC136に出力する。
【0194】
入力回路135は、信号発生器131からコネクタ133を介して入力される第2入射波を検出する。入力回路135は、伝送線路120Bの第2端T2から、第2導線11、接続端C2、及びコネクタ133を介して入力される第2反射波を検出する。入力回路135は、減衰回路及びプリアンプ等を含んで構成されていてよい。入力回路135は、アナログ信号として入力される第2入射波及び第2反射波の電圧振幅が、ADC137の入力仕様に対し適切な範囲になるように、第2入射波及び第2反射波の電圧振幅を調整する。入力回路135は、調整したアナログ信号を、ADC137に出力する。
【0195】
ADC136には、入力回路134から、アナログ信号が入力される。ADC136は、入力されるアナログ信号を、デジタルデータに変換する。ADC136は、変換したデジタルデータを、制御部139に出力する。
【0196】
ADC137には、入力回路135から、アナログ信号が入力される。ADC137は、入力されるアナログ信号を、デジタルデータに変換する。ADC137は、変換したデジタルデータを、制御部139に出力する。
【0197】
記憶部138は、例えば、半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限定されない。記憶部138は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部138には、検出装置130の動作に用いられるデータと、検出装置130の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0198】
制御部139は、
図9に示すような制御部36と同様に、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。制御部139は、検出装置130の各部を制御しながら、検出装置130の動作に関わる処理を実行する。
【0199】
制御部139は、信号発生器131を制御して、信号発生器131に、第1入射波を出力させる。信号発生器131が第1入射波を出力することにより、制御部139は、ADC136から、第1入射波及び第1反射波のデジタルデータを取得する。制御部139は、取得したデジタルデータに基づいて、第1時間及び第1反射波の電圧を検出する。制御部139は、第1時間及び第1反射波の電圧を検出することにより、
図16に示すような第1電圧データを取得する。
【0200】
制御部139は、信号発生器131を制御して、信号発生器131に、第2入射波を出力させる。信号発生器131が第2入射波を出力することにより、制御部139は、ADC137から、第2入射波及び第2反射波のデジタルデータを取得する。制御部139は、取得したデジタルデータに基づいて、第2時間及び第2反射波の電圧を検出する。制御部139は、第2時間及び第2反射波の電圧を検出することにより、
図16に示すような第2電圧データを取得する。
【0201】
制御部139は、第1電圧データ及び第2電圧データを用いることにより、上述のようにして、伝送線路セット102に印加された磁界の強度を検出する。また、制御部139は、第1時間及び第2時間の少なくとも何れかを用いることにより、伝送線路セット102に印加された磁界の位置を検出する。
【0202】
第1実施形態と同様に、制御部139は、伝送線路セット102に印加された磁界の強度及び位置を検出する際、第1オフセットデータ及び第2オフセットデータを用いてよい。
【0203】
制御部139は、第1生データから、第1オフセットデータを引くことにより、検出対象の磁界の強度及び位置を検出するための第1電圧データを取得してよい。第1生データは、伝送線路セット102に検出対象の磁界が印加されているときに検出した第1電圧データである。
【0204】
制御部139は、第2生データから、第2オフセットデータを引くことにより、検出対象の磁界の強度及び位置を検出するための第2電圧データを取得してよい。第2生データは、伝送線路セット102に検出対象の磁界が印加されているときに検出した第2電圧データである。
【0205】
制御部139は、伝送線路セット102に検出対象の磁界が印加されていないときに検出した第1電圧データを、第1オフセットデータとして記憶部138に格納させてよい。制御部139は、伝送線路セット102に検出対象の磁界が印加されていないときに検出した第2電圧データを、第2オフセットデータとして記憶部138に格納させてよい。
【0206】
このような第1オフセットデータ及び第2オフセットデータを用いることにより、第1実施形態にて上述したように、検出対象の磁界が伝送線路セット102に印加されること以外の他の要因で生じた反射波の影響が低減され得る。
【0207】
(磁気検出装置の動作例)
以下、磁気検出装置101の動作の一例を、
図21を参照して説明する。以下、検出対象の磁界は、伝送線路セット102に印加される外部磁界であるとする。制御部139がステップS30の処理を実行する際、伝送線路セット102に外部磁界が印加されていないものとする。
【0208】
制御部139は、伝送線路セット102に外部磁界が印加されていないときに、信号発生器131を制御して、信号発生器131に、第1入射波を出力させる(ステップS30)。
【0209】
制御部139は、ADC136から、第1入射波及び第1反射波のデジタルデータを取得して、第1電圧データを取得する(ステップS31)。ステップS31の処理において、制御部139は、この第1電圧データを、第1オフセットデータとして取得して、記憶部138に格納させる。
【0210】
制御部139は、伝送線路セット102に外部磁界が印加されていないときに、信号発生器131を制御して、信号発生器131に、第2入射波を出力させる(ステップS32)。
【0211】
制御部139は、ADC137から、第2入射波及び第2反射波のデジタルデータを取得して、第2電圧データを取得する(ステップS33)。ステップS33の処理において、制御部139は、この第2電圧データを、第2オフセットデータとして取得して、記憶部138に格納させる。
【0212】
ステップS33の処理が実行された後、伝送線路セット102に外部磁界が印加される。
【0213】
制御部139は、伝送線路セット102に外部磁界が印加されているときに、信号発生器131を制御して、信号発生器131に、第1入射波を出力させる(ステップS34)。
【0214】
制御部139は、ADC136から、第1入射波及び第1反射波のデジタルデータを取得して、第1電圧データを取得する(ステップS35)。ステップS35の処理において、制御部139は、この第1電圧データを、第1生データとして取得する。
【0215】
制御部139は、ステップS35の処理で取得した第1生データから、ステップS31の処理で取得した第1オフセットデータを引くことにより、第1電圧データを取得する(ステップS36)。
【0216】
制御部139は、伝送線路セット102に外部磁界が印加されているときに、信号発生器131を制御して、信号発生器131に、第2入射波を出力させる(ステップS37)。
【0217】
制御部139は、ADC137から、第2入射波及び第2反射波のデジタルデータを取得して、第2電圧データを取得する(ステップS38)。ステップS38の処理において、制御部139は、この第2電圧データを、第2生データとして取得する。
【0218】
制御部139は、ステップS38の処理で取得した第2生データから、ステップS33の処理で取得した第2オフセットデータを引くことにより、第2電圧データを取得する(ステップS29)。
【0219】
制御部139は、ステップS36の処理で取得した第1電圧データと、ステップS39の処理で取得した第2電圧データとを合成して、合成データを生成する(ステップS40)。
【0220】
制御部139は、ステップS40の処理で生成した合成データに基づいて、伝送線路セット102に印加された磁界の強度を検出する(ステップS41)。ステップS41の処理では、制御部36は、第1時間及び第2時間の何れかに基づいて、伝送線路20に印加された磁界の位置を検出する。
【0221】
なお、制御部139は、ステップS30の処理と、ステップS32の処理とを同時に実行してもよい。また、制御部139は、ステップS34の処理と、ステップS37の処理とを同時に実行してもよい。
【0222】
このように第2実施形態では、伝送線路セット102が、伝送線路120Aと、伝送線路120Bとを含む。伝送線路セット102が伝送線路120A及び伝送線路120Bを含むことにより、検出装置130は、伝送線路120Aの第1端T1に第1入射波を入力しつつ、伝送線路120Bの第2端T2に第2入射波を入力することができる。このような構成とすることで、第2実施形態では、検出装置130が磁界の強度及び位置を検出する際にかかる時間が短くなり得る。
【0223】
また、第2実施形態では、検出装置130は、第1電圧データ及び第2電圧データを、逆フーリエ変換等の演算処理を実行せずに、取得することができる。このような構成により、検出装置130の演算処理が簡易化され得る。
【0224】
第2実施形態に係る検出装置130のその他の構成及び効果は、第1実施形態に係る検出装置30と同様である。
【0225】
(同軸ケーブルの他の例)
図22には、同軸ケーブルの他の例を示す。
図22に示すような同軸ケーブルは、
図1に示すような伝送線路20として採用されてもよいし、
図14に示すような伝送線路120A,120Bとして採用されてよい。
【0226】
伝送線路220は、第1導体(信号線)221と、誘電体222と、第2導体(シールド線)223と、被覆224とを含む。誘電体222、第2導体223、及び被覆224の各々は、
図3に示すような誘電体22、第2導体23、及び被覆24の各々と同様の構成である。
【0227】
第1導体221は、導体225と、磁性膜226とを含む。導体225は、非磁性の導体である。磁性膜226は、磁性材を含む膜である。磁性膜226は、導体225の表面(導体表面)に形成されている。磁性膜226が含む磁性材は、
図3に示すような第1導体21が含む磁性材と同様の磁性材であってよい。
【0228】
磁性膜226は、例えば、めっき、蒸着、スパッタリング、又はCVD(Chemical Vapor Deposition)等により、導体225の表面に形成されてよい。
【0229】
第1導体221の内部では、導体225が非磁性の導体であることにより、磁化(磁壁移動)によるインピーダンス変化が起こりにくくなり得る。そのため、第1導体221では、ヒステリシスが生じにくくなり得る。このような構成とすることで、伝送線路220によって、高感度で磁界が検出され得る。
【0230】
(同軸ケーブルのさらに他の例)
図23には、同軸ケーブルのさらに他の例を示す。
図23に示すような同軸ケーブルは、
図1に示すような伝送線路20として採用されてもよいし、
図14に示すような伝送線路120A,120Bとして採用されてよい。
【0231】
伝送線路320は、複数の第1導体(信号線)321と、誘電体322と、第2導体(シールド線)323と、被覆324とを含む。誘電体322、第2導体323及び被覆324の各々は、
図3に示すような誘電体22、第2導体23、及び被覆24の各々と同様の構成である。
【0232】
複数の第1導体321の各々の構成は、
図3に示すような第1導体21と同様の構成であってよい。複数の第1導体321は、誘電体322の内部で束ねられている。
【0233】
このように複数の第1導体321を束ねた構成とすることで、複数の第1導体321の全体としての抵抗損失が小さくなり得る。そのため、伝送線路320の長さが長い場合であっても、入射波及び反射波の減衰が小さくなり得る。従って、長い伝送線路320を用いて、伝送線路320に印加された磁界の位置及び強度を検出することが可能になる。
【0234】
(伝送線路の他の例)
伝送線路20,120A,120Bは、特性インピーダンスを有する構造であれば、同軸ケーブルとして構成されていなくてもよい。例えば、伝送線路20,120A,120Bは、平行二線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路又は導波管として構成されていてもよい。
図24から
図27には、伝送線路20,120A,120Bに採用可能な同軸ケーブル以外の構成例を示す。
【0235】
図24は、平行二線路として構成された伝送線路420の概略構成を示す図である。
図24は、伝送線路の断面図に相当する。伝送線路420は、第1導体(信号線)421と、誘電体422と、第2導体(シールド線)423とを含む。第1導体421は、
図3に示すような第1導体21と同様に磁性材を含む。第1導体421は、誘電体422上に薄膜として形成されている。
【0236】
図25は、ストリップ線路として構成された伝送線路520の概略構成を示す図である。
図25は、伝送線路520の断面図に相当する。伝送線路520は、第1導体(信号線)521と、誘電体522と、第2導体(シールド線)523とを含む。第1導体521は、
図3に示すような第1導体21と同様に磁性材を含む。第1導体521は、誘電体522の内部において薄膜として形成されている。
【0237】
図26は、マイクロストリップ線路として構成された伝送線路620の概略構成を示す図である。
図26は、伝送線路620の断面図に相当する。伝送線路620は、第1導体(信号線)621と、誘電体622と、第2導体(シールド線)623とを含む。第1導体621は、
図3に示すような第1導体21と同様に磁性材を含む。第1導体621は、誘電体622上に薄膜として形成されている。
【0238】
図27は、コプレーナ線路として構成された伝送線路720の概略構成を示す図である。
図27は、伝送線路720の断面図に相当する。伝送線路720は、第1導体(信号線)721と、誘電体722と、第2導体(シールド線)723とを含む。第1導体721は、
図3に示すような第1導体21と同様に磁性材を含む。第1導体721は、誘電体722上に薄膜として形成されている。
【0239】
図24から
図27の各々に示すような誘電体422,522,622,722は、
図3に示すような誘電体22と同様に、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)又はポリエチレン等の絶縁物であってよい。
【0240】
図24から
図27の各々に示すような第2導体423,523,623,723は、
図3に示すような第2導体23と同様に、例えば銅を材料として構成されていてよい。
【0241】
以下、
図24から
図27に示すような伝送線路420,520,620,720における磁気インピーダンス効果について説明する。伝送線路420,520,620,720は、各々、薄膜形状の第1導体421,521,621,721を含む。第1導体421,521,621,721の各々の厚さをdとすると、表皮効果が顕著な場合(表皮の深さδ<<d/2)、磁気インピーダンス効果によって変化する伝送線路のインピーダンスZは、以下の数式(7)及び数式(8)で表される。
【0242】
【数7】
【数8】
数式(7)において、幅wは、第1導体421,521,621,721の幅である。長さlは、第1導体421,521,621,721の長さである。
【0243】
図3に示すような同軸ケーブルとして構成される伝送線路20と同様に、
図24から
図26に示すような伝送線路420,520,620,720においても、磁気モーメントの回転により、第1導体421,521,621,721の周方向の透磁率が変化する。伝送線路420,520,620,720のインピーダンスは、第1導体421,521,621,721の周方向の透磁率に依存する。そのため、外部磁界が印加された位置における第1導体421,521,621,721の周方向の透磁率が変化すると、外部磁界が印加された位置における伝送線路420,520,620,720のインピーダンスが変化する。
【0244】
図1に示すような検出装置30は、伝送線路20の代わりに、
図24から
図27に示すような伝送線路420,520,620,720が用いられる場合、磁界強度H
EXを検出する際、数式(3)の代わりに、数式(7)を用いてよい。
図14に示すような検出装置130は、伝送線路120A,120Bの代わりに、
図24から
図27に示すような伝送線路420,520,620,720が用いられる場合、磁界強度H
EXを検出する際、数式(3)の代わりに、数式(7)を用いてよい。また、検出装置30,130は、磁界強度H
EXを検出する際、数式(7)の代わりに、数式(7)を近似した式(例えば、直線近似式)を用いることにより、磁界強度H
EXを算出(検出)してもよい。また、検出装置30,130は、磁界強度H
EXを検出する際、数式(7)の代わりに、予め取得された、インピーダンスZ
Mを磁界強度H
EXに直接関連付けたものを用いることにより、磁界強度H
EXを算出(検出)してもよい。
【0245】
図24から
図27に示すような伝送線路420,520,620,720は、例えば、フレキシブル基板により構成されてよい。伝送線路420,520,620,720は、フレキシブル基板として構成されることにより、柔軟性を有し得る。伝送線路420,520,620,720が柔軟性を有することにより、同軸ケーブルで構成した場合と同様に、伝送線路420,520,620,720の配置の自由度が高まり得る。
【0246】
図24から
図27に示すような伝送線路420,520,620,720は、
図22に示すような第1導体221と同様に、非磁性の導体の表面に磁性膜が形成された構成であってもよい。
【0247】
図24から
図27に示すような伝送線路420,520,620,720は、
図23に示すような伝送線路320と同様に、各々、複数の第1導体421,521,621,721を含む構成であってもよい。
【0248】
(バイアス磁界の印加)
図1に示すような磁気検出装置1は、
図28に示すように、伝送線路20の周囲にコイル50を備えていてもよい。コイル50は、バイアス磁界を印加可能である。例えば、コイル50には、
図28に示すように、バイアス電流を流すことができる。コイル50にバイアス電流を流すことにより、伝送線路20の軸方向(長手方向)にバイアス磁界が印加され得る。
【0249】
コイル50によって伝送線路20にバイアス磁界が正の方向に均一に印加されると、伝送線路20の特性インピーダンスは、インピーダンスZ
0からインピーダンスZ
1(Z
0<Z
1)に変化する。伝送線路20の特性インピーダンスが変化することにより、伝送線路20に印加された磁界と反射波の電圧V
Rとの関係は、
図29に示すように、グラフV
R0(H
EX)からグラフV
R1(H
EX)へオフセットされ得る。伝送線路20に外部磁界が加えられていない状態では、特性インピーダンスがZ
1で均一となることにより、反射波が生じない。
【0250】
外部磁界が正の磁界であると、伝送線路20には、バイアス磁界に加えて外部磁界が印加される。そのため、伝送線路20において磁界が印加された位置の特性インピーダンスは、インピーダンス(Z1+ΔZ)となる。伝送線路20においてインピーダンス(Z1+ΔZ)となる位置では、入射波と同相の反射波が生じ得る。例えば、入射波が正のパルス信号であれば、正のパルス信号の反射波が生じ得る。
【0251】
外部磁界が負の磁界であると、伝送線路20には、バイアス磁界と逆向きの外部磁界が印加される。そのため、伝送線路20において磁界が印加された位置の特性インピーダンスは、インピーダンス(Z1-ΔZ)となる。伝送線路20においてインピーダンス(Z1-ΔZ)となる位置では、入射波とは逆相の反射波が生じる。例えば、入射波が正のパルス信号であれば、負のパルス信号の反射波が生じ得る。
【0252】
このような構成とすることで、磁気検出装置1は、伝送線路20に印加された磁界の強度だけでなく、正の磁界が印加されたか、負の磁界が印加されたかを判定することができる。バイアス磁界の強度は、飽和磁界(
図12のH
sで示す範囲の磁界)より小さてよい。また、バイアス磁界の強度は、センサとして直線性が良くなるような(
図12のH
sLで示す範囲が略直線的になるように)強度であってよい。ただし、バイアス磁界の強度は、任意であってよい。
【0253】
図1に示すような磁気検出装置1と同様に、
図14に示すような磁気検出装置101は、伝送線路120A及び伝送線路120Bの各々の周囲に、コイル50を備えていてもよい。
【0254】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。従って、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含される。
【0255】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0256】
例えば、検出装置30及び検出装置130が第1反射波と第2反射波とを合成する処理は、上述した処理に限定されない。入射波及び反射波の減衰の態様は、伝送線路の構成に応じて、異なる場合がある。例えば、反射波の減衰の度合いは、伝搬距離に比例する場合もあるし、伝搬距離が長くなるに連れて大きくなる場合もある。検出装置30及び検出装置130は、減衰の態様に応じた補正を、第1反射波と第2反射波とを合成する処理において、実行してもよい。
【0257】
例えば、
図1に示すような検出装置30は、磁界強度H
EXを検出する際、数式(3)の代わりに、伝送線路セット2の構成に応じては、数式(2)を用いてよい。また、
図14に示すような検出装置130は、磁界強度H
EXを検出する際、数式(3)の代わりに、伝送線路セット102の構成に応じては、数式(2)を用いてよい。ここで、検出装置30及び検出装置130は、磁界強度H
EXを検出する際、数式(2)の代わりに、数式(2)を近似した式(例えば、直線近似式)を用いることにより、磁界強度H
EXを算出(検出)してもよい。また、検出装置30及び検出装置130は、磁界強度H
EXを検出する際、数式(2)の代わりに、予め取得された、インピーダンスZ
Mを磁界強度H
EXに直接関連付けたものを用いることにより、磁界強度H
EXを算出(検出)してもよい。
【0258】
例えば、検出装置30は、
図5に示すような第1電圧データ及び第2電圧データを、第1時間及び第2時間の各々を数式(6)によって第1距離及び第2距離に変換することにより、
図6に示すような第1電圧データ及び第2電圧データに変換してもよい。この場合、検出装置30は、
図6に示すような第1距離に対する第1反射波の電圧を示す第1電圧データ、及び、第2距離に対する第2反射波の電圧を示す第2電圧データに対して、上述の合成処理を実行してよい。
【0259】
例えば、検出装置130は、
図16に示すような第1電圧データ及び第2電圧データを、第1時間及び第2時間の各々を数式(6)によって第1距離及び第2距離に変換することにより、
図17に示すような第1電圧データ及び第2電圧データに変換してもよい。この場合、検出装置130は、
図17に示すような第1距離に対する第1反射波の電圧を示す第1電圧データ、及び、第2距離に対する第2反射波の電圧を示す第2電圧データに対して、上述の合成処理を実行してよい。
【符号の説明】
【0260】
1,101 磁気検出装置
2,102 伝送線路セット
3 磁石
10 第1導線
11 第2導線
20,220,320,420,520,620,720 伝送線路
21,221,321,421,521,621,721 第1導体
22,222,322,422,522,622,722 誘電体
23,223,323,423,523,623,723 第2導体
24,224,324 被覆
30,130 検出装置
31,131 信号発生器
32 方向性結合器
33 方向性結合器
34 信号検波器
35,138 記憶部
36,139 制御部
40,41 終端抵抗
50 コイル
120A 伝送線路(第1伝送線路)
120B 伝送線路(第2伝送線路)
132,133 コネクタ
134,135 入力回路
136,137 ADC
225 導体
226 磁性膜