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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/24 20060101AFI20231108BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60R19/24 M
B62D25/08 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020070410
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021167126
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】嘉数 道夫
(72)【発明者】
【氏名】西山 知宏
(72)【発明者】
【氏名】原 泰久
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-024463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/24
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータと、
少なくとも一部が前記ラジエータの前面を覆う態様で配置されて同ラジエータを支持するラジエータサポートと、
前記ラジエータサポートにおける前記ラジエータの前面を覆う部分の前面に設けられる前方部材と、
前記前方部材よりも前方に配置されて開口部を有するバンパー部材と、を備える車両前部構造であって、
前記前方部材の外面の少なくとも一部は、前記開口部を介して車両内部に取り入れられて後方に向かう空気の流れを前記覆う部分から離間する方向に偏向して案内する傾斜面をなしており、
前記傾斜面は、前記前方部材と前記覆う部分とに接する仮想面を描いた場合において当該仮想面上で延びている、車両前部構造。
【請求項2】
前記前方部材は、衝撃吸収用のアブソーバ部材と、同アブソーバ部材および前記ラジエータサポートの間に介設されて前記アブソーバ部材を前記ラジエータサポートに支持するリテーナ部材と、を有し、
前記リテーナ部材の外面の少なくとも一部が前記傾斜面をなす
請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記前方部材は、車両上下方向に延びる貫通孔を有している
請求項1または2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記車両前部構造は、クロスカントリー車に適用される
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータが設けられている車両前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の前部に、空冷式の熱交換器であるラジエータや、同ラジエータを固定および支持するラジエータサポートを設けることが多用されている(特許文献1参照)。
また、車両の前端に緩衝装置としてのバンパー部材を設けることが多用されている。通常、バンパー部材には、ラジエータに吹き付ける空気を車両内部に取り入れるための開口部が設けられている。
【0003】
近年における車両の高機能化に伴って、バンパー部材とラジエータとの間に、歩行者保護用の衝撃吸収部材などの種々の前方部材を設けることも実用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-178050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前方部材を有する車両では、バンパー部材とラジエータとの間のスペースが複雑な構造になるため、同スペースを通過する空気の流れに乱れが生じ易くなってしまう。その結果、ラジエータに吹き付けられる空気量の減少、ひいてはラジエータによる冷却効率の低下を招き易くなる。
【0006】
こうした車両において、上記空気量の減少を抑えるうえでは、バンパー部材の開口部を大きくすることが考えられる。ただし、この場合には、バンパー部材における開口部の配置の自由度が低くなるため、同バンパー部材の設計についての自由度の低下を招いてしてしまう。
【0007】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、バンパー部材の設計についての自由度の低下を抑えつつ、ラジエータの冷却効率の低下を抑制できる車両前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための車両前部構造は、ラジエータと、少なくとも一部が前記ラジエータの前面を覆う態様で配置されて同ラジエータを支持するラジエータサポートと、前記ラジエータサポートにおける前記ラジエータの前面を覆う部分の前面に設けられる前方部材と、前記前方部材よりも前方に配置されて開口部を有するバンパー部材と、を備える車両前部構造であって、前記前方部材の外面の少なくとも一部は、前記開口部を介して車両内部に取り入れられて後方に向かう空気の流れを前記覆う部分から離間する方向に偏向して案内する傾斜面をなしている。
【0009】
上記構成によれば、バンパー部材の開口部を介して取り入れられてラジエータに向かう空気の流れが、ラジエータサポートにおける上記ラジエータの前面を覆う部分の前面に衝突し難い構造にすることができる。これにより、ラジエータの前方において空気の流れに乱れが生じ難くなるため、同ラジエータに吹き付けられる空気量の減少、ひいてはラジエータによる冷却効率の低下を抑えることができる。しかも、ラジエータに効率良く空気を吹き付けることが可能になるため、バンパー部材の開口部を介して車両内部に取り入れる空気の量を少なくすることができる。これにより、バンパー部材の開口部の開口面積を小さくすることが可能になるため、その分だけバンパー部材における開口部の配置の自由度の低下を抑えることができ、ひいてはバンパー部材の設計の自由度の低下を抑えることができる。
【0010】
上記車両前部構造において、前記傾斜面は、前記前方部材と前記覆う部分とに接する仮想面を描いた場合において当該仮想面上で延びていることが好ましい。
上記構成によれば、前方部材の外面をなす傾斜面の形状を、空気の流れの偏向の度合いが大きくなることが抑えられる形状であり、且つ、ラジエータサポートにおける前記ラジエータの前面を覆う部分に空気の流れが衝突し難くなる形状にすることができる。そのため、ラジエータの冷却効率の低下を好適に抑えることができる。
【0011】
上記車両前部構造において、前記前方部材は、衝撃吸収用のアブソーバ部材と、同アブソーバ部材および前記ラジエータサポートの間に介設されて前記アブソーバ部材を前記ラジエータサポートに支持するリテーナ部材と、を有し、前記リテーナ部材の外面の少なくとも一部が前記傾斜面をなす。
【0012】
上記構成では、バンパー部材とラジエータとの間において複数の部材が車両の前後方向に並んでいるため、バンパー部材の開口部を介して車両内部に取り入れられて後方に向かう空気の流れに乱れが生じ易く、同ラジエータに吹き付けられる空気量の減少を招き易いと云える。上記構成によれば、そうした車両において、ラジエータの冷却効率の低下を抑えることができるようになる。
【0013】
上記車両前部構造において、前記前方部材は、車両上下方向に延びる貫通孔を有していることが好ましい。
上記構成によれば、貫通孔を介して、前方部材の上部に溜まった水分、あるいは前方部材の内部に進入した水分を同前方部材の外部に排出することができる。
【0014】
上記車両前部構造は、クロスカントリー車に適用される。
オフロード向けの車両、いわゆるクロスカントリー車では、バンパー部材とラジエータサポートとの前後方向における距離が長く、それらバンパー部材およびラジエータサポートの間のスペースにおける空気の流れに乱れが生じやすい。上記構成によれば、そうしたクロスカントリー車において、ラジエータの冷却効率の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バンパー部材の設計についての自由度の低下を抑えつつ、ラジエータの冷却効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の車両前部構造の概略構成を示す側面図。
図2】同車両前部構造の概略構成を示す平面図。
図3】リテーナ部材およびその周辺の部分側断面図。
図4】リテーナ部材の斜視図。
図5】リテーナ部材の図4の5-5線に沿った端面図。
図6】リテーナ部材の平面図。
図7】車両前部構造における空気の流れを説明するための説明図。
図8】比較例の車両前部構造における空気の流れを説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、車両前部構造の一実施形態について説明する。
図1図3に示すように、車両10の前部には、空冷式の熱交換器であるラジエータ11と、同ラジエータ11を支持するラジエータサポート20とが設けられている。ラジエータサポート20は枠状をなす枠状部21を有している。枠状部21は、車幅方向に延びて上部を構成するアッパー部22と、車幅方向に延びて下部を構成するロア部23と、上下方向に延びて両方の側部を構成する一対のサイド部24とを有している。ラジエータ11は、枠状部21の内部に納められる態様で同枠状部21に固定されている。
【0018】
ラジエータサポート20は、一対のサイド部24の間に架設されるクロス部25を有している。クロス部25は、アッパー部22とロア部23との間で車幅方向において直線状に延びている。クロス部25は、前方に向けて凸の断面U字状をなす突条部26と同突条部26の両端から上下方向に延びる一対の足部27とからなる断面ハット形状をなしている。本実施形態では、クロス部25の足部27の後面がラジエータサポート20のサイド部24の前面に固定されている。これにより、クロス部25はラジエータ11の前面の一部を覆う態様で配置されている。なお本実施形態では、クロス部25が、ラジエータサポート20における上記ラジエータ11の前面を覆う部分に相当する。
【0019】
車両10の前部におけるラジエータサポート20のクロス部25よりも前方には、衝撃吸収部材であるアブソーバ部材12と、緩衝装置としてのバンパー部材13と、それらアブソーバ部材12およびバンパー部材13をラジエータサポート20のクロス部25に支持させるためのリテーナ部材30とが設けられている。各部材は、車両10の前方からバンパー部材13、アブソーバ部材12、リテーナ部材30の順に並ぶ態様で配置されている。本実施形態では、バンパー部材13とクロス部25との間やアブソーバ部材12とクロス部25との間に共用のリテーナ部材30が設けられており、このリテーナ部材30を介してアブソーバ部材12およびバンパー部材13がクロス部25に支持されている。本実施形態では、これらアブソーバ部材12およびリテーナ部材30が前方部材に相当する。
【0020】
本実施形態の車両10は、オフロード向けの車両であるクロスカントリー車、具体的には、ラダーフレームが採用された四輪駆動車である。クロスカントリー車は、バンパー部材13とラジエータサポート20との間のスペースが大きく、それらバンパー部材およびラジエータサポートの前後方向における間隔が長い。本実施形態では、こうした車両10において、リテーナ部材30を介して、アブソーバ部材12およびバンパー部材13がラジエータサポート20のクロス部25に支持されている。本実施形態では、リテーナ部材30を設けることにより、アブソーバ部材12の前後方向の長さが適度に短くされて、車両衝突時におけるアブソーバ部材12の前後方向の変形量が適当な量になるように調整されている。また、リテーナ部材30を設けることにより、バンパー部材13をラジエータサポート20のクロス部25に取り付けるためのアーム14(図3)の前後方向の長さが短くされて、同アーム14が不要に長くなることが抑えられている。
【0021】
リテーナ部材30は、硬質の合成樹脂材料によって形成されている。リテーナ部材30は、車幅方向に延設される態様で、ラジエータサポート20のクロス部25の前面に固定されている。
【0022】
図4に示すように、リテーナ部材30は、略有底四角筒状をなす部分31,32を複数(本実施形態では、13個)有している。リテーナ部材30は、それら部分31,32のうちの上方に開口する態様で配設される上方開口部分31と、下方に開口する態様で配設される下方開口部分32とが車幅方向において交互に並ぶ形状をなしている。
【0023】
図3に示すように、リテーナ部材30における上方開口部分31の底壁311の外面は、バンパー部材13の開口部15を介して車両10内部に取り入れられて後方に向かう空気の流れを、ラジエータサポート20のクロス部25から離間する方向(下方)に偏向して案内する傾斜面をなしている。詳しくは、上方開口部分31の底壁311の下面は、同上方開口部分31の下部とクロス部25の下部とに接する仮想面S(図3中に一点鎖線で示す平面)を描いた場合において同仮想面S上で延びており、後方に向けて下りになる下り坂状をなしている。
【0024】
図5および図6に示すように、上方開口部分31の底壁311は上下方向に延びる貫通孔33を有している。この貫通孔33を介して、上方開口部分31の内部に進入する水分が同上方開口部分31の外部に排出されるようになっている。
【0025】
図3および図4に示すように、リテーナ部材30を構成する複数の下方開口部分32のうちの2つには、その上部をなす蓋壁321に、上方および後方に突出する固定部34が設けられている。リテーナ部材30は、2つの固定部34の後端面とラジエータサポート20のクロス部25の足部27の前面とが合わせられるとともに、上方開口部分31および下方開口部分32の後面とラジエータサポート20のクロス部25の突条部26の前面とが合わせられた状態で、クロス部25に固定されている。
【0026】
また、リテーナ部材30を構成する複数の下方開口部分32のうちの4つには、その蓋壁321に、上記バンパー部材13のアーム14の先端が係止される構造の係止部35が設けられている。
【0027】
アブソーバ部材12は、合成樹脂材料によって形成されている。アブソーバ部材12は、車幅方向および前後方向に延びる略平板形状をなしている。アブソーバ部材12の後面とリテーナ部材30の前面とが合わせられた状態で、アブソーバ部材12はリテーナ部材30に取り付けられている。アブソーバ部材12はリテーナ部材30の前面から前方に突出する形状をなしている。
【0028】
バンパー部材13は、リテーナ部材30やアブソーバ部材12よりも前方に配置されて、車両10の前端部分を構成している。バンパー部材13は前方側と後方側とを連通する開口部15を有している。本実施形態の車両10では、バンパー部材13の開口部15を介して、ラジエータ11に吹き付けられる空気がバンパー部材13の後方側、すなわちエンジンルーム内に取り入れられる。バンパー部材13は、その後面から後方に延びるアーム状をなすアーム14を有している。このアーム14の先端がリテーナ部材30の係止部35に係止されることで、バンパー部材13はリテーナ部材30に係止されている。
【0029】
以下、本実施形態の車両前部構造による作用について説明する。
図7に示すように、本実施形態の車両10では、バンパー部材13の開口部15を介して車両内部内に取り入れられる空気が、ラジエータ11に吹き付けられるようになる。
【0030】
このようにしてラジエータ11に向かう空気の流れは、リテーナ部材30における上方開口部分31の下方においては、同上方開口部分31の底壁311の下面に沿って流れるようになる。そのため、ラジエータ11に向かう空気の流れは、リテーナ部材30の上方開口部分31の底壁311の下面によってラジエータサポート20のクロス部25から離間する方向(具体的には下方)に偏向されて、同クロス部25の前面を避ける態様で流れるようになる。このように本実施形態の車両10は、バンパー部材13の開口部15を介して取り入れられてラジエータ11に向かう空気の流れが、ラジエータサポート20のクロス部25の前面に衝突し難い構造になっている。
【0031】
図8に比較例の車両前部構造を示す。この例では、図8中に矢印で示すように、バンパー部材13の開口部15を介して車両内部に取り入れられてラジエータ11に向かう空気の流れが、ラジエータサポート20のクロス部25(詳しくは、その足部27)の前面に衝突する。この場合には、空気の流れが衝突する部分である足部27の周辺において空気の流れに乱れが生じてしまい、同足部27の周辺を空気が通過し難くなるため、その分だけラジエータ11に吹き付けられる空気の量が減少してしまう。
【0032】
本実施形態では、図7に示すように、ラジエータ11に向かう空気の流れがラジエータサポート20のクロス部25の前面に衝突し難い構造になっている。そのため、ラジエータサポート20のクロス部25の周辺、すなわちラジエータ11の前方において空気の流れに乱れが生じ難くなり、同ラジエータ11に吹き付けられる空気量の減少が抑えられるようになる。
【0033】
このように本実施形態によれば、バンパー部材13とラジエータ11との間のスペースがアブソーバ部材12やリテーナ部材30、クロス部25を有する複雑な構造になっているとはいえ、同リテーナ部材30を、ラジエータ11に吹き付けられる空気量の減少を抑えることの可能な形状に形成して配設することができる。これにより、ラジエータ11による冷却効率の低下を抑えることができるようになる。
【0034】
しかも、ラジエータ11に効率良く空気を吹き付けることが可能になるため、バンパー部材13の開口部15を介して車両内部に取り入れる空気の量を少なくすることができる。これにより、比較例の車両前部構造(図8参照)が採用される場合と比べて、バンパー部材13の開口部15の開口面積を小さくすることが可能になるため、その分だけバンパー部材13における開口部15の配置の自由度を高くすることができ、ひいてはバンパー部材13の設計の自由度を高くすることができる。
【0035】
ここで、ラジエータ11に向かう空気の流れの偏向の度合いを大きくし過ぎると、同ラジエータ11における空気が吹き付けられ難くなる部分の範囲が広くなって、同ラジエータ11に吹き付けられる空気量の減少を招いてしまうおそれがある。この点、本実施形態では、リテーナ部材30の上方開口部分31の底壁311の下面が、同上方開口部分31の下部とラジエータサポート20のクロス部25の下部とに接する仮想面S上で延びている。これにより、上方開口部分31の底壁311の下面に沿う空気の流れがクロス部25の下端(足部27の先端)から離間してしまう状況になることが抑えられている。そして、その上で、上方開口部分31の底壁311の下面の形状が、ラジエータサポート20のクロス部25に空気の流れが衝突し難くなる形状にされている。したがって本実施形態によれば、ラジエータ11による冷却効率の低下を好適に抑えることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)リテーナ部材30における上方開口部分31の底壁311の外面を、バンパー部材13の開口部15を介して車両内部に取り入れられて後方に向かう空気の流れを、ラジエータサポート20のクロス部25から離間する方向に偏向して案内する傾斜面にした。そのため、バンパー部材13の設計についての自由度の低下を抑えつつ、ラジエータ11の冷却効率の低下を抑制することができる。
【0037】
(2)リテーナ部材30の上方開口部分31の底壁311の外面を、同上方開口部分31の下部とラジエータサポート20のクロス部25の下部とに接する仮想面S上で延びる形状にした。そのため、ラジエータ11による冷却効率の低下を好適に抑えることができる。
【0038】
(3)車両10におけるバンパー部材13とラジエータ11との間のスペースに、アブソーバ部材12およびリテーナ部材30が前後方向に並ぶ態様で配置されている。この車両10では、バンパー部材13の開口部15を介して車両内部に取り入れられてラジエータ11に向かう空気の流れに乱れが生じ易く、同ラジエータ11に吹き付けられる空気量の減少を招き易い。本実施形態によれば、そうした車両10において、ラジエータ11の冷却効率の低下を抑えることができるようになる。
【0039】
(4)リテーナ部材30の上方開口部分31の底壁311に貫通孔33を設けるようにした。そのため、この貫通孔33を介して、上方開口部分31の内部に進入する水分を同上方開口部分31の外部に排出することができる。
【0040】
(5)車両10をクロスカントリー車にした。クロスカントリー車では、バンパー部材13とラジエータサポート20との前後方向における距離が長く、それらバンパー部材13およびラジエータサポート20の間のスペースにおける空気の流れに乱れが生じやすい。本実施形態によれば、そうしたクロスカントリー車において、ラジエータ11の冷却効率の低下を抑えることができる。
【0041】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0042】
・貫通孔33を省略することができる。
・上方開口部分31の底壁311の外面を、仮想面S(図3参照)上で延びる形状にすることに限らず、仮想面Sよりも若干下方で延びる形状にしたり、仮想面Sよりも若干上方で延びる形状にしたりしてもよい。
【0043】
・上方開口部分31の底壁311の外面を、平面状にすることの他、下方に向けて凸をなす態様で前後方向に湾曲する湾曲面状にしたり、上方に向けて凸をなす態様で前後方向に湾曲する湾曲面状にしたりすることができる。上方開口部分31の底壁311の外面の形状は、バンパー部材13の開口部15から後方に向かう空気の流れがラジエータサポート20のクロス部25から離間する方向に偏向および案内される傾斜面形状であれば、任意に変更することができる。
【0044】
・リテーナ部材30の基本形状は任意に変更することができる。例えば、リテーナ部材30として、外面四角柱状のものを採用したり、複数の上方開口部分31が車幅方向において連続して並ぶ形状のものを採用したりすることができる。これら構成においては、リテーナ部材の下面全体を上記傾斜面形状にすることが好ましい。
【0045】
・上記実施形態にかかる車両前部構造は、ラジエータサポート20のクロス部25の前面にアブソーバ部材12が直接取り付けられる構造の車両にも適用することができる。この場合には、アブソーバ部材12の下面を上記傾斜面形状にすればよい。上記構成においては、アブソーバ部材12に上下方向に延びる貫通孔を設けることが好ましい。同構成によれば、貫通孔を介して、アブソーバ部材12の上部に付着した水分を同アブソーバ部材12の外部に排出することができる。しかも、貫通孔を形成することにより、アブソーバ部材12の特定の部分に他の部分と比較して脆弱な部分を形成することができる。そのため、貫通孔の配設を通じてアブソーバ部材12に変形しやすい部分を設定することができ、同アブソーバ部材12の変形態様を所望の態様で容易にコントロールすることができる。
【0046】
・上記実施形態にかかる車両前部構造は、ロア部23における上記ラジエータ11の前面を覆う部分の前面に前方部材(リテーナ部材30やアブソーバ部材12)が設けられる車両や、アッパー部22における上記ラジエータ11の前面を覆う部分の前面に前方部材が設けられる車両にも適用することができる。
【0047】
・上記実施形態にかかる車両前部構造は、ラジエータサポートを構成する各部材のうちの上下方向に延びる部材A(詳しくは、同部材Aにおけるラジエータの前面を覆う部分)の前面に前方部材が設けられる車両にも適用可能である。この場合には、前方部材の外面の少なくとも一部を、バンパー部材の開口部から後方に向かう空気の流れを、上記部材Aから離間する方向(具体的には、車両右側、または車両左側)に偏向して案内する傾斜面にすればよい。
【0048】
・上記実施形態にかかる車両前部構造は、クロスカントリー車以外のタイプの車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…車両
11…ラジエータ
12…アブソーバ部材
13…バンパー部材
15…開口部
20…ラジエータサポート
25…クロス部
30…リテーナ部材
31…上方開口部分
311…底壁
33…貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8