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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】エージェント制御装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/44 20180101AFI20231108BHJP
【FI】
G06F9/44
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020087036
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021182055
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相原 聖
【審査官】渡辺 順哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-248200(JP,A)
【文献】特開2017-046285(JP,A)
【文献】特開2016-101785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
G06F 8/00-8/77
G06F 9/44-9/445
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエージェントを実行可能なエージェント制御装置であって、
所定の契機に各前記エージェントの実行を要求する要求部と、
実行されている一の前記エージェントの各機能に対する、又は前記一のエージェントの実行状況に対する実行の中断可否を規定した中断可否リストを記憶している記憶部と、
前記一のエージェントの実行に伴い、前記中断可否リストを参照して他の前記エージェントの実行可否に係る可否情報を設定する設定部と、
前記一のエージェントの実行中に前記要求部から前記他のエージェントの実行についての要求があり、かつ前記可否情報が前記他のエージェントの実行不可を示している場合、前記要求に応じずに前記一のエージェントを継続するように管理する管理部と、
を備えるエージェント制御装置。
【請求項2】
前記中断可否リストには、前記一のエージェントの継続性が要求される機能に対し、中断不可と規定されており、
前記設定部は、前記中断可否リストにおいて中断不可とされる機能の実行開始時に前記可否情報を前記他のエージェントが実行不可になるように設定し、前記機能の終了時に前記可否情報を前記他のエージェントが実行可能に設定する請求項1に記載のエージェント制御装置。
【請求項3】
前記可否情報はフラグであって、前記中断可否リストには、前記一のエージェントの機能毎に中断可否が規定されている請求項1又は2に記載のエージェント制御装置。
【請求項4】
前記可否情報は前記一のエージェントの実行状況に応じて変動するレベルであって、前記中断可否リストには、前記レベルに応じた中断可否が規定されている請求項1又は2に記載のエージェント制御装置。
【請求項5】
前記管理部は、
前記一のエージェントの実行中に前記要求部から前記他のエージェントの実行についての要求があり、かつ前記可否情報が前記他のエージェントの実行不可を示している場合、前記要求を保留して前記一のエージェントを継続させ、継続して実行されている前記一のエージェントの実行が終了した後、保留された前記要求に応じて前記他のエージェントを実行する請求項1~4の何れか1項に記載のエージェント制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの要求に応じてエージェントに係る処理を実行するエージェント制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力音声信号を受け付け、前記入力音声信号に対して音声認識処理を行い音声認識処理の結果と、エージェント情報とに基づいて、当該入力音声信号に基づく処理を何れのエージェントで行うかを決定する音声対話エージェントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-189984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通話や決済処理など、サービス特性の観点やセキュリティの観点から継続性が求められる機能を一のエージェントが実行中に他のエージェントが起動されてしまうことで、それまでのセッションが一時中断もしくは終了してしまうことは好ましくない。
【0005】
本発明は、一のエージェントの実行中に他のエージェントが起動されて、当該一のエージェントが中断してしまうことを抑制可能なエージェント制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のエージェント制御装置は、複数のエージェントを実行可能なエージェント制御装置であって、所定の契機に各前記エージェントの実行を要求する要求部と、実行されている一の前記エージェントの各機能に対する、又は前記一のエージェントの実行状況に対する実行の中断可否を規定した中断可否リストを記憶している記憶部と、前記一のエージェントの実行に伴い、前記中断可否リストを参照して他の前記エージェントの実行可否に係る可否情報を設定する設定部と、前記一のエージェントの実行中に前記要求部から前記他のエージェントの実行についての要求があり、かつ前記可否情報が前記他のエージェントの実行不可を示している場合、前記要求に応じずに前記一のエージェントを継続するように管理する管理部と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載のエージェント制御装置は複数のエージェントを実行可能としている。当該エージェント制御装置では、記憶部が実行されている一のエージェントの各機能に対する、又は一のエージェントの実行状況に対する実行の中断可否を規定した中断可否リストを記憶している。また、当該エージェント制御装置では、要求部が所定の契機に各エージェントの実行を要求し、設定部が一のエージェントの実行に伴い、中断可否リストを参照して他のエージェントの実行可否に係る可否情報を設定する。ここで、「所定の契機」とは、例えば、ユーザのマイクに対する発話、PTT(プッシュ・トゥ・トーク)スイッチの押下である。
【0008】
そして、管理部が一のエージェントの実行中に他のエージェントの実行についての要求があり、かつ可否情報が他のエージェントの実行不可を示している場合、当該一のエージェントを継続するように管理する。当該エージェント制御装置によれば、一のエージェントの実行中に他のエージェントが起動されて、当該一のエージェントが中断してしまうことを抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載のエージェント制御装置は、請求項1に記載のエージェント制御装置において、前記中断可否リストには、前記一のエージェントの継続性が要求される機能に対し、中断不可と規定されており、前記設定部は、前記中断可否リストにおいて中断不可とされる機能の実行開始時に前記可否情報を前記他のエージェントが実行不可になるように設定し、前記機能の終了時に前記可否情報を前記他のエージェントが実行可能に設定する。
【0010】
請求項2に記載のエージェント制御装置では、一のエージェントにおける継続性が要求される機能の実行中は中断がされない。そのため、当該エージェント制御装置によれば、例えば、一のエージェントが通話を実行中に通話が中断されたり、決済処理中に決済処理が中断されたりすることが抑制される。
【0011】
請求項3に記載のエージェント制御装置は、請求項1又は2に記載のエージェント制御装置において、前記可否情報はフラグであって、前記中断可否リストには、前記一のエージェントの機能毎に中断可否が規定されている。
【0012】
請求項3に記載のエージェント制御装置によれば、異なる機能の複数のエージェントをフラグのON、OFFにより一括で管理することができる。
【0013】
請求項4に記載のエージェント制御装置は、請求項1又は2に記載のエージェント制御装置において、前記可否情報は前記一のエージェントの実行状況に応じて変動するレベルであって、前記中断可否リストには、前記レベルに応じた中断可否が規定されている。
【0014】
請求項4に記載のエージェント制御装置によれば、エージェントが実行している機能の実行状況に応じて中断の可否を管理することができる。
【0015】
請求項5に記載のエージェント制御装置は、請求項1~4の何れか1項に記載のエージェント制御装置において、前記管理部は、前記一のエージェントの実行中に前記要求部から前記他のエージェントの実行についての要求があり、かつ前記可否情報が前記他のエージェントの実行不可を示している場合、前記要求を保留して前記一のエージェントを継続させ、継続して実行されている前記一のエージェントの実行が終了した後、保留された前記要求に応じて前記他のエージェントを実行する
【0016】
請求項5に記載のエージェント制御装置は、一のエージェントの実行中に他のエージェントが実行できない場合であっても、他のエージェントの実行要求を破棄せずに保留する。そのため、当該エージェント制御装置によれば、一のエージェントの終了後において、再度、他のエージェントの要求を行うことなく、他のエージェントを実行することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一のエージェントの実行中に他のエージェントが起動されて、当該一のエージェントが中断してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係るエージェントシステムの概略構成を示す図である。
図2】第1の実施形態の車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態の中断可否リストの内容を示す図である。
図4】第1の実施形態のヘッドユニットの機能構成を示すブロック図である。
図5】第1の実施形態のエージェントシステムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
図6】第1の実施形態のエージェントシステムにおける処理の流れを示すシーケンス図であって、図5の続きの図である。
図7】第2の実施形態のエージェントシステムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
図8】第3の実施形態の中断可否リストの内容を示す図である。
図9】第3の実施形態のエージェントシステムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
図10】第3の実施形態のエージェントシステムにおける処理の流れを示すシーケンス図であって、図9の続きの図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
図1及び図2に示されるように、第1の実施形態のエージェントシステム10は、車両12と、自社サーバ14と、他社サーバ16と、を含んで構成されている。車両12には、エージェント制御装置としてのヘッドユニット20と、通信装置22と、タッチパネル24と、スピーカ26と、マイク28と、が搭載されている。車両12の通信装置22、自社サーバ14及び他社サーバ16は、それぞれ、ネットワークNを介して相互に接続されている。
【0020】
自社サーバ14は、車両12の製造元としての自社が保有するサーバである。自社サーバ14は、自社のサービスである自社エージェントの機能が実現されるようにユーザUの発話の意図を推定する機能を有している。自社エージェントには、通話、決済、天気・ニュース取得、車両情報取得、目的地検索、救援要請等の機能がある。自社エージェントは一のエージェントの一例である。
【0021】
他社サーバ16は、車両12の製造元ではない他社が保有するサーバである。他社サーバ16は、他社のサービスである他社エージェントの機能が実現されるようにユーザUの発話の意図を推定する機能を有している。他社エージェントには、音楽提供、オーディオブック、通話、天気・ニュース取得、等の機能がある。他社エージェントは他のエージェントの一例である。なお、自社エージェントと他社エージェントとで同種の機能が実現されてもよい。
【0022】
(車両)
図2に示されるように、ヘッドユニット20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、ストレージ20D、通信I/F(Inter Face)20E及び入出力I/F20Fを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、ストレージ20D、通信I/F20E及び入出力I/F20Fは、内部バス20Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0023】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20B又はストレージ20Dからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0024】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM20Bには、ヘッドユニット20を制御するための制御プログラムが記憶されている。
【0025】
RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0026】
記憶部としてのストレージ20Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のストレージ20Dは、処理プログラム100と中断可否リスト110とを記憶している。
【0027】
処理プログラム100は、自社エージェント及び他社エージェントを制御するためのプログラムである。
【0028】
図3に示されるように、中断可否リスト110は、自社エージェントの各機能の実行における当該機能の中断可否が規定されたリストである。中断可否リスト110では、自社エージェントの継続性が要求される機能の場合、他社エージェントが要求されても実行中の機能は中断不可に規定されている。例えば、実行される自社エージェントの機能が「通話」の場合及び「決済」の場合は、当該機能の中断を不可能とする「不可」と規定されている。
【0029】
また例えば、実行される自社エージェントの機能が「天気・ニュース取得」の場合及び「車両情報取得」の場合は、当該機能の中断を可能とする「可」と規定されている。さらに、実行される自社エージェントの機能が「目的地検索」の場合、他のエージェントが要求されても保留とし、当該機能の終了後に実行させることを可能とする「保留」と規定されている。
【0030】
図2に示されるように、通信I/F20Eは、通信装置22と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、例えば、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。通信I/F20Eは、外部バス20Hに対して接続されている。
【0031】
入出力I/F20Fは、車両12に搭載されるタッチパネル24、スピーカ26及びマイク28と通信するためのインタフェースである。なお、タッチパネル24、スピーカ26及びマイク28は、内部バス20Gに対して直接接続されていてもよい。
【0032】
通信装置22は、自社サーバ14及び他社サーバ16と通信するための無線通信モジュールである。当該無線通信モジュールは、例えば、5G、LTE、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。通信装置22は、ネットワークNに対して接続されている。
【0033】
タッチパネル24は、インストルメントパネル等に設けられ、表示部としての液晶ディスプレイと、入力部としてのタッチパッドとを兼ねている。
【0034】
スピーカ26は、インストルメントパネル、センタコンソール、フロントピラー、ダッシュボード等に設けられ、自社エージェント及び他社エージェントに係る音声を出力するための装置である。
【0035】
マイク28は、車両12のフロントピラーやダッシュボード等に設けられ、車両12の乗員であるユーザUが発した音声を集音する装置である。
【0036】
図4に示されるように本実施形態のヘッドユニット20では、CPU20Aが、処理プログラム100を実行することで、要求部200、第一実行部220、第二実行部230、設定部240、及び管理部250として機能する。
【0037】
要求部200は、所定の契機にエージェントの実行を要求する機能を有している。ここで、「所定の契機」には、ユーザUのマイク28に対する発話、ステアリング等に設けられた図示しないPTT(プッシュ・トゥ・トーク)スイッチの押下などがある。要求部200は、ユーザUの発話による音声情報に自社エージェント用のウェイクワードが含まれる場合、当該音声情報を自社サーバ14に送信して自社エージェントの実行を要求する。また、要求部200は、ユーザUの発話による音声情報に他社エージェント用のウェイクワードが含まれる場合、当該音声情報を他社サーバ16に送信して他社エージェントの実行を要求する。
【0038】
第一実行部220は、自社エージェントを実行する機能を有している。第一実行部220は、発話による音声情報を送信した自社サーバ14から提供された意図情報を基に自社エージェントの機能を実行する。
【0039】
第二実行部230は、他社エージェントを実行する機能を有している。第二実行部230は、発話による音声情報を送信した他社サーバ16から提供された意図情報を基に他社エージェントの機能を実行する。
【0040】
設定部240は、中断可否リスト110を参照して各エージェントの実行可否に係る可否情報を設定する機能を有している。本実施形態の可否情報はON、OFFに設定可能なフラグである占有フラグであって、設定部240は、中断可否リスト110に規定されている自社エージェントにおける機能毎の中断可否に基づいて占有フラグを設定する。具体的に、設定部240は自社エージェントのある機能が中断不可の場合、自社エージェントの当該機能の実行開始時に占有フラグをONに設定し、当該機能の終了時に占有フラグをOFFに設定する。
【0041】
管理部250は、各エージェントの実行を管理する機能を有している。本実施形態の管理部250は、自社エージェントの実行中に要求部200から他社エージェントの実行についての要求があり、かつ占有フラグがONの場合、他社エージェントの実行についての要求に応じずに自社エージェントを継続するように管理する。
【0042】
(制御の流れ)
本実施形態のエージェントシステム10において実行される処理の流れについて、図5及び図6のシーケンス図を用いて説明する。ヘッドユニット20における処理は、CPU20Aが、上述した要求部200、第一実行部220、第二実行部230、設定部240、及び管理部250として機能することにより実現される。
【0043】
図5のステップS10において、ユーザUはヘッドユニット20に向けて発話を行う。例えば、ユーザUは「Agent、Xさんに電話して」、「Assistant、音楽を掛けて」などと発話をしてエージェントに対して要求を行う。
【0044】
ステップS11において、ヘッドユニット20はユーザUの発話による音声の音声認識を行う。
【0045】
ステップS12において、ヘッドユニット20は音声認識による音声情報を基に、起動する自社エージェント及び他社エージェントのいずれかを検出する。例えば、ヘッドユニット20は発話の音声に「Agent」のウェイクワードが存在している場合、自社エージェントを起動するエージェントとして検出する。また、ヘッドユニット20は発話の音声に「Assistant」のウェイクワードが存在している場合、他社エージェントを起動するエージェントとして検出する。
【0046】
ステップS13において、ヘッドユニット20は占有フラグがOFFであるか否かの判定を行う。ヘッドユニット20は占有フラグがOFFではない、すなわちONであると判定した場合、ステップS14に進む。一方、ヘッドユニット20は占有フラグがOFFであると判定した場合、ステップS15に進む。
【0047】
ステップS14において、ヘッドユニット20はエージェントに対する要求を破棄する。そして、エージェントの実行処理は終了する。
【0048】
ステップS15において、ヘッドユニット20はステップS12において検出されたエージェントのサーバに対して、音声情報を送信する。図5は、自社エージェントに係る要求を行う例であって、「Agent、Xさんに電話して」とユーザUが発話した場合、「Xさんに電話して」という内容の音声情報が自社サーバ14に送信される。
【0049】
ステップS16において、自社サーバ14は受信した音声情報を基に音声認識を行い、意図抽出を実行する。例えば、「Xさんに電話して」の音声情報からXさんに電話を掛けるという意図を抽出する。
【0050】
ステップS17において、自社サーバ14は抽出された意図を意図情報としてヘッドユニット20に送信する。
【0051】
ステップS18において、ヘッドユニット20は自社エージェントの実行を開始する。すなわち、ヘッドユニット20は自社サーバ14からXさんに電話を掛けるという意図情報を受信すると通話機能を起動し、自社サーバ14から取得した、又はストレージ20Dに記憶されているXさんの連絡先を参照してXさんに電話を掛ける。これにより、ヘッドユニット20では通話が開始される。
【0052】
ステップS19において、ヘッドユニット20は中断可否リスト110を参照する。例えば図3に示されるように、自社エージェントが通話を行っている場合、自社エージェントの中断を不可能とする「不可」の情報を取得する。
【0053】
図5のステップS20において、ヘッドユニット20は自社エージェントが中断不可であるか否かの判定を行う。ヘッドユニット20は自社エージェントが中断不可であると判定した場合、ステップS21に進む。一方、ヘッドユニット20は自社エージェントが中断不可ではないと判定した場合、図6のステップS22に進む。
【0054】
ステップS21において、ヘッドユニット20は占有フラグをONに設定する。
【0055】
図6のステップS22からステップS26までの処理は、上述のステップS10からステップS14までの処理と同じである。
【0056】
ステップS27において、ヘッドユニット20は自社エージェントが終了しているか否かの判定を行う。ヘッドユニット20は自社エージェントが終了していないと判定した場合、すなわち、自社エージェントがまだ実行中である場合、ステップS22に戻る。一方、ヘッドユニット20は自社エージェントが終了していると判定した場合、ステップS28に進む。
【0057】
ステップS28において、ヘッドユニット20は占有フラグをOFFに設定する。そして、エージェントの実行処理は終了する。
【0058】
ステップS25において占有フラグがOFFであると判定されている場合、ステップS29において、ヘッドユニット20はステップS24において検出されたエージェントのサーバに対して、音声情報を送信する。図6は、他社エージェントに係る要求を行う例であって、「Assistant、音楽を掛けて」とユーザUが発話した場合、「音楽を掛けて」という内容の音声情報が他社サーバ16に送信される。
【0059】
ステップS30において、他社サーバ16は受信した音声情報を基に音声認識を行い、意図抽出を実行する。例えば、「音楽を掛けて」の音声情報から音楽を再生するという意図を抽出する。
【0060】
ステップS31において、他社サーバ16は抽出された意図を意図情報としてヘッドユニット20に送信する。
【0061】
ステップS32において、ヘッドユニット20は他社エージェントの実行を開始する。この場合、実行中の自社エージェントが中断されて終了する。例えば、ヘッドユニット20は他社サーバ16から音楽を再生するという意図情報を受信すると、実行中の自社エージェントを終了させて他社サーバ16から受信した音楽を再生する。
【0062】
(第1の実施形態のまとめ)
本実施形態のヘッドユニット20は複数のエージェントとして、自社エージェント及び他社エージェントを実行可能としている。ヘッドユニット20では、実行される自社エージェントの各機能に対する中断可否を規定した中断可否リスト110がストレージ20Dに記憶されている。また、本実施形態では、要求部200が発話、PTTスイッチの操作等による所定の契機にエージェントの実行を要求し、設定部240が自社エージェントの実行に伴い、中断可否リスト110を参照して他社エージェントの実行可否に係る可否情報を占有フラグとして設定する。そして、管理部250が自社エージェントの実行中に他社エージェントの実行についての要求があり、かつ占有フラグがONの場合に、自社エージェントを継続するように管理している。
【0063】
本実施形態のヘッドユニット20によれば、自社エージェントの実行中に他社エージェントが起動されて、自社エージェントが中断してしまうことを抑制することができる。
【0064】
ここで、自社エージェントが通話を実行中に、他社エージェントの要求に伴い通話が中断する場合、会話が強制的に中断されてしまう。また、自社エージェントが決済を実行中に、他社エージェントの要求に伴い決済処理が中断する場合、決済トラブルが生じる可能性がある。これに対して、本実施形態のヘッドユニット20では、自社エージェントにおける継続性が要求される通話や決済等の機能の実行中は、当該機能が中断されないように形成されている。すなわち、本実施形態によれば、自社エージェントが通話を実行中に通話が中断されたり、決済処理中に決済処理が中断されたりすることが抑制される。
【0065】
さらに、本実施形態によれば、可否情報として占有フラグを設けることで、異なる機能のエージェントを占有フラグのON、OFFにより一括で管理することができる。
【0066】
[第2の実施形態]
第1の実施形態は、占有フラグがONの場合、新たなエージェントの実行要求は破棄されるものであった。これに対して、第2の実施形態は、占有フラグがONの場合、新たなエージェントの実行要求を保留するように形成されている。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。なお、その他の構成については、第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0067】
本実施形態の管理部250は、自社エージェントの実行中に要求部200から他社エージェントの実行についての要求があり、かつ占有フラグがONの場合、他社エージェントの実行についての要求を保留して自社エージェントを継続させる。そして、管理部250は、継続して実行されている自社エージェントが終了した後、要求が保留中の他社エージェントを実行させる。
【0068】
本実施形態のエージェントシステム10において実行される処理の第1の実施形態との相違点は図7に示すとおりである。すなわち、図6のステップS26からステップS28までの処理に替えて、ステップS40からステップS42までの処理が実行される。
【0069】
ステップS25において占有フラグがOFFではないと判定されている場合、ステップS40において、ヘッドユニット20はエージェントに対する要求を保留する。
【0070】
ステップS41において、ヘッドユニット20は自社エージェントが終了しているか否かの判定を行う。ヘッドユニット20は自社エージェントが終了していないと判定した場合、すなわち、自社エージェントがまだ実行中である場合、ステップS22に戻る。一方、ヘッドユニット20は自社エージェントが終了していると判定した場合、ステップS42に進む。
【0071】
ステップS42において、ヘッドユニット20は占有フラグをOFFに設定する。そしてステップS29に進む。
【0072】
なお、ステップS40において保留されたエージェントに対する要求は、ステップS29からステップS32に反映される。これにより、ステップS32において、保留されていた他社エージェントの実行が開始される。
【0073】
(第2の実施形態のまとめ)
第2の実施形態のヘッドユニット20は、自社エージェントの実行中に他社エージェントが実行できない場合であっても、他社エージェントの実行要求を破棄せずに保留するように形成されている。そのため、本実施形態によれば、自社エージェントの終了後において、再度、他社エージェントの要求を行うことなく、他社エージェントを実行させることができる。
【0074】
[第3の実施形態]
第1の実施形態は、実行される自社エージェントの機能毎に当該機能の中断の可否が判断されるものであった。これに対して、第3の実施形態は、自社エージェントの実行状況に応じて、実行中の機能の中断の可否が判断されるものである。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。なお、その他の構成については、第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0075】
本実施形態の中断可否リスト110は、自社エージェントの実行状況に応じたレベルに対する自社エージェントの中断可否が規定されたリストである。図8に示されるように、中断可否リスト110には、自社エージェントの機能毎に実行状況と、各実行状況に対応するレベルと、レベルと関連付けられた中断不可の情報が規定されている。
【0076】
例えば、自社エージェントの機能が「ショッピング」の場合、決済処理中は処理の中断を不可能とするレベルA、購入手続き中は他社エージェントの実行を保留とするレベルB、品物検索中は処理の中断を可能とするレベルC、と規定されている。また、例えば、自社エージェントの機能が「ドライブアシスト」の場合、警告中は処理の中断を不可能とするレベルA、危険予告中は他社エージェントの実行を保留とするレベルB、通常時は処理の中断を可能とするレベルC、と規定されている。
【0077】
本実施形態では、自社エージェントの実行状況に応じて変動するレベルを可否情報としている。そして、設定部240は、実行中の自社エージェントのレベルが設定された閾値レベルを超えた場合に他社エージェントが実行不可能になるように設定し、閾値レベル以下になった場合に他社エージェントが実行可能になるように設定する。
本実施形態ではレベルAが最も高く、レベルB、レベルCの順にレベルが低くなるように設定されており、レベルBが閾値として設定されている。そのため、本実施形態では、レベルBを超えた場合、すなわち、レベルAになった場合に他社エージェントが実行不可能になるように形成されている。
【0078】
(制御の流れ)
本実施形態のエージェントシステム10において実行される処理の流れについて、図9及び図10のシーケンス図を用いて説明する。
【0079】
図9のステップS50からステップS52までの処理は、上述のステップS10からステップS12までの処理と同じであり、ステップS53からステップS56までの処理は、上述のステップS15からステップS18までの処理と同じである。
【0080】
ステップS57において、ヘッドユニット20は中断可否リスト110を参照する。例えば、自社エージェントがショッピングを行っている場合、品物検索、購入手続き、決済処理の各実行状況に応じたレベルの情報を取得する。
【0081】
ステップS58において、ヘッドユニット20は自社エージェントの実行状況に応じたレベルを設定する。
【0082】
図10のステップS59からステップS61までの処理は、上述のステップS22からステップS24までの処理と同じである。
【0083】
ステップS62において、ヘッドユニット20は設定されたレベルがレベルCか否かの判定を行う。ヘッドユニット20は設定されたレベルがレベルCではないと判定した場合、ステップS63に進む。一方、ヘッドユニット20は設定されたレベルがレベルCであると判定した場合、ステップS67に進む。
【0084】
ステップS63において、ヘッドユニット20は設定されたレベルがレベルAか否かの判定を行う。ヘッドユニット20は設定されたレベルがレベルAではないと判定した場合、ステップS65に進む。一方、ヘッドユニット20は設定されたレベルがレベルAであると判定した場合、ステップS64に進む。
【0085】
ステップS64において、ヘッドユニット20はエージェントに対する要求を破棄する。そして、ステップS58に戻る。すなわち、ヘッドユニット20は実行状況に応じたレベルの再設定を行う。
【0086】
ステップS62においてレベルCではないと判定され、かつステップS63においてレベルAではないと判定された場合、すなわち、レベルBであると判定されている場合、ステップS65において、ヘッドユニット20はエージェントに対する要求を保留する。
【0087】
ステップS66において、ヘッドユニット20は要求保留時における自社エージェントのイベントが終了しているか否かの判定を行う。ヘッドユニット20は自社エージェントのイベントが終了していないと判定した場合、ステップS58に戻る。すなわち、ヘッドユニット20は実行状況に応じたレベルの再設定を行う。一方、ヘッドユニット20は自社エージェントのイベントが終了していると判定した場合、ステップS67に進む。
【0088】
図10のステップS67からステップS70までの処理は、上述のステップS29からステップS32までの処理と同じである。
【0089】
(第3の実施形態のまとめ)
第3の実施形態のエージェント制御装置は、自社エージェントの実行状況に応じて変動するレベルにより、他社エージェントの実行可否を設定することを特徴としている。すなわち、本実施形態によれば、エージェントが実行している機能の実行状況に応じて中断の可否を管理することができる。
【0090】
[備考]
上記各実施形態では、中断可否リスト110に記憶されている自社エージェントの実行可否に基づいて他社エージェントの実行を制御していたが、これに限らない。すなわち、他社エージェントの実行可否を中断可否リスト110に記憶し、他社エージェントの実行可否に基づいて自社エージェントの実行を制御してもよい。
【0091】
第2及び第3の実施形態のヘッドユニット20は、他社エージェントの要求を保留可能に形成されており、自社エージェントが終了した段階で保留にされていた要求が音声情報として他社サーバ16に送信される。しかしこれに限らず、ヘッドユニット20が他社エージェントの要求を破棄した場合、自社エージェントが終了した段階でユーザUに対して要求を聞き返す、つまり、発話を求めるように形成してもよい。
【0092】
なお、上記実施形態でCPU20Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した受付処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0093】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、ヘッドユニット20における処理プログラム100は、ストレージ20Dに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0094】
上記実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
20 ヘッドユニット(エージェント制御装置)
20D ストレージ(記憶部)
110 中断可否リスト
200 要求部
240 設定部
250 管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10