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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】シールド導電路
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6592 20110101AFI20231108BHJP
   H01R 24/38 20110101ALI20231108BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01R13/6592
H01R24/38
H01R4/18 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020092133
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021190215
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 和明
(72)【発明者】
【氏名】小島 佑介
(72)【発明者】
【氏名】村田 敦
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-244815(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026561(WO,A1)
【文献】特開2002-216916(JP,A)
【文献】特開2010-170934(JP,A)
【文献】特開2017-126551(JP,A)
【文献】特開2000-12162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/648
H01R 24/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線をシールド層で包囲し、前記シールド層をシースで包囲したシールド電線と、
前記芯線に接続される内導体と、オープンバレル状の圧着部が形成された外導体を有するシールド端子とを備え、
前記シールド電線の前端部においては、前記シースが除去され、前記シールド層が前記シースの前端よりも前方の領域のみに露出し、
前記圧着部は、突起状の第1係止部が形成された第1かしめ部と、第2係止部が形成された第2かしめ部を有し、
前記第1係止部は前記第1かしめ部の後端部に形成され、
前記第2係止部は前記第2かしめ部の後端部に形成され、
前記圧着部を前記シールド電線に圧着した状態では、前記第1かしめ部と前記第2かしめ部のうち前記第1係止部及び前記第2係止部よりも前方の領域が前記シールド層の露出部位に外嵌され、前記第1係止部と前記第2係止部が前記シースの外周面に外嵌された状態で周方向に係止し、
前記第1係止部と前記第2係止部の径方向の係止代が、前記第2かしめ部の板厚の範囲内であるシールド導電路。
【請求項2】
前記第1係止部が、前記第1かしめ部の先端部を折り返し状に屈曲した形態である請求項1に記載のシールド導電路。
【請求項3】
前記第1係止部が、前記第1かしめ部の一部を前記第1かしめ部の板厚方向へ切り起こした形態である請求項1に記載のシールド導電路。
【請求項4】
前記第1係止部は、前記第1かしめ部を周方向の折り目に沿って曲げ加工した形態である請求項1に記載のシールド導電路。
【請求項5】
前記第1かしめ部が前記第2かしめ部の外周側に積層されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシールド導電路。
【請求項6】
前記第1かしめ部と前記第2かしめ部には、互いに当接することによって前記第1かしめ部と前記第2かしめ部の軸線方向への相対変位を規制可能な変位規制部が形成されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシールド導電路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールド導電路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外導体端子に形成したU字形のかしめ部を、シールド電線のシールド導体の外周に圧着する構造が開示されている。かしめ部の一方の端部には、折り返し状に屈曲した第一の鈎状片が形成され、かしめ部の他方の端部には、折り返し状に屈曲した第二の鈎状片が形成されている。かしめ部をシールド電線に圧着した状態では、第一の鈎状片と第二の鉤状片が係合することによって、かしめ部の拡開変形が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-060105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のかしめ部は、折り返し状をなす第一の鉤状片と折り返し状をなす第二の鉤状片とが、径方向に4層に重なるように係合しているため、かしめ部による圧着部分が径方向に大型化するという問題がある。
【0005】
本開示のシールド導電路は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小径化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のシールド導電路は、
芯線をシールド層で包囲したシールド電線と、
前記芯線に接続される内導体と、オープンバレル状の圧着部が形成された外導体を有するシールド端子とを備え、
前記圧着部は、突起状の第1係止部が形成された第1かしめ部と、第2係止部が形成された第2かしめ部を有し、前記第1係止部を前記第2係止部に係止させた状態で前記シールド層の外面に圧着され、
前記第1係止部と前記第2係止部の径方向の係止代が、前記第2かしめ部の板厚の範囲内である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、小径化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1のシールド導電路の平面図である。
図2図2は、シールド導電路の側断面図である。
図3図3は、図1のX-X線断面図である。
図4図4は、圧着前の圧着部の形態をあらわす斜視図である。
図5図5は、圧着部の展開図である。
図6図6は、実施例2における圧着前の圧着部の形態をあらわす斜視図である。
図7図7は、実施例2のシールド導電路のX-X相当断面図である。
図8図8は、実施例3のシールド導電路のX-X相当断面図である。
図9図9は、実施例4のシールド導電路のX-X相当断面図である。
図10図10は、実施例5のシールド導電路の部分平面図である。
図11図11は、図10のY-Y線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のシールド導電路は、
(1)芯線をシールド層で包囲したシールド電線と、前記芯線に接続される内導体と、オープンバレル状の圧着部が形成された外導体を有するシールド端子とを備え、前記圧着部は、突起状の第1係止部が形成された第1かしめ部と、第2係止部が形成された第2かしめ部を有し、前記第1係止部を前記第2係止部に係止させた状態で前記シールド層の外面に圧着され、前記第1係止部と前記第2係止部の径方向の係止代が、前記第2かしめ部の板厚の範囲内である。本開示のシールド導電路は、第1係止部と第2係止部の径方向の係止代が第2かしめ部の板厚の範囲内であるから、第1係止部と第2係止部の径方向の係止代を第1かしめ部及び第2かしめ部の板厚の範囲外に確保するものに比べると、小径化を図ることができる。
【0010】
(2)(1)において、前記第1係止部が、前記第1かしめ部の先端部を折り返し状に屈曲した形態であることが好ましい。この構成によれば、第1かしめ部の先端縁部を直角に曲げた形態のものに比べると、係止強度が高い。
【0011】
(3)(1)において、前記第1係止部が、前記第1かしめ部の一部を前記第1かしめ部の板厚方向へ切り起こした形態であることが好ましい。この構成によれば、第1かしめ部の外周縁から面一状に延出された部位を曲げ加工するものに比べると、材料コストを低減できる。
【0012】
(4)(1)において、前記第1係止部は、前記第1かしめ部を周方向の折り目に沿って曲げ加工した形態であることが好ましい。この構成によれば、第1係止部は、周方向の外力に対して高い剛性を有しているので、第1係止部の変形に起因する圧着部の拡開変形を防止することができる。
【0013】
(5)前記第1かしめ部が前記第2かしめ部の外周側に積層されていることが好ましい。この構成によれば、第1係止部における第2係止部との係止部位が、第2かしめ部の外周面に露出しないので、第1係止部における第2係止部との係止部位が異物の干渉によって第2係止部から外れることを防止できる。
【0014】
(6)前記第1かしめ部と前記第2かしめ部には、互いに当接することによって前記第1かしめ部と前記第2かしめ部の軸線方向への相対変位を規制可能な変位規制部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1かしめ部と第2かしめ部の軸線方向への相対変位が変位規制部によって防止されるので、第1係止部と第2係止部との係止状態を保持することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1を、図1図5を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、図1,2における左方を前方と定義する。上下の方向については、図2,3にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。
【0016】
本実施例1のシールド導電路Aは、シールド電線10と、シールド電線10に外嵌されたスリーブ15と、シールド電線10の前端部にスリーブ15を用いて接続されたシールド端子20とを備えている。シールド電線10は、芯線11を絶縁被覆12で包囲し、絶縁被覆12の外周に筒状のシールド層13を重ね、シールド層13の外周をシース14で包囲した形態である。
【0017】
シールド電線10の前端部は、軸線方向を前後方向に向けて配置されている。以下の説明において、前後方向と軸線方向は同義で用いる。図2に示すように、シールド電線10の前端部においては、シース14と絶縁被覆12が除去されて、芯線11が絶縁被覆12の前方へ露出し、シース14が除去されてシールド層13が露出している。シールド層13の外周には、金属等の導電性を有するスリーブ15が外嵌されている。シールド層13の前端部は、後方へ折り返されてスリーブ15の外周を覆っている。
【0018】
シールド端子20は、芯線11の前端部に接続した内導体21と、内導体21を収容した誘電体22と、誘電体22の外周を包囲した状態で誘電体22に取り付けられた外導体23とを備えて構成されている。外導体23は、外導体23の前端部を構成する角筒状の本体部24と、本体部24の後端に連って外導体23の後端部を構成する円筒状の圧着部25とを備えて構成されている。外導体23の軸線方向は、シールド電線10の軸線方向と同軸状をなし、前後方向を向いている。本体部24内には、内導体21と誘電体22が収容されている。
【0019】
圧着部25は、外導体23をシールド電線10の外周に固着するための部位である。圧着部25は、本体部24の後端から後方へ延出した基板部26と、基板部26から周方向における一方向へ延出した第1かしめ部27と、基板部26から周方向において第1かしめ部27とは反対方向へ延出した第2かしめ部28とを有している。図4に示すように、圧着部25がシールド電線10に圧着されていない状態では、圧着部25は前端から後端に向かって次第に拡径するようなテーパ状をなす。第1かしめ部27の延出方向先端縁部である第1延出端縁部29と、第2かしめ部28の延出方向先端縁部である第2延出端縁部30とが周方向に離隔した状態となっている。
【0020】
第1延出端縁部29には、第1係止部31と第1変位規制部35が形成されている。第1係止部31は、第1延出端縁部29の後端部に配置されている。第1係止部31は、第1延出端縁部29の後端部から第2延出端縁部30に向かって周方向に突出した基部32と、基部32の突出端から周方向逆方向へ折り返した折返部33とを有する。基部32は、第1かしめ部27に対して面一状に連なっている。換言すると、基部32の外周面と第1かしめ部27の外周面は滑らかに連続し、基部32の内周面と第1かしめ部27の内周面は滑らかに連続している。したがって、基部32と第1かしめ部27との境界部分には、径方向の段差が存在しない。
【0021】
折返部33は、基部32の内周面に密着した状態、又は基部32の内周面に対して近接して対向するように配置されている。折返部33の軸線方向の幅寸法は、基部32の軸線方向の幅寸法と同じ寸法である。折返部33は、基部32及び第1かしめ部27の内周面よりも径方向内側へ突出した形態である。折返部33の先端面は、第1かしめ部27よりも径方向内側に配置され、周方向において第1かしめ部27及び基板部26側に臨み、かつ周方向と直交する第1係止面34として機能する。第1係止部31は、第1かしめ部27から径方向内側へ突出した突起状をなしている。
【0022】
第1変位規制部35は、第1延出端縁部29のうち第1係止部31よりも前方の領域に形成されている。第1変位規制部35は、前後方向に間隔を空けた一対の第1突部36と、両第1突部36の間に形成された第1凹部37とを有する。第1突部36は、第1延出端縁部29から第2延出端縁部30に向かって突出した形態である。第1凹部37は、第1延出端縁部29を凹ませた形態である。
【0023】
第2延出端縁部30には、第2係止部38と第2変位規制部41が形成されている。第2係止部38は、第2延出端縁部30の後端部に配置されている。第2係止部38は、第2延出端縁部30の後端部から第1延出端縁部29に向かって周方向に突出している。第2係止部38は、第2かしめ部28に対して面一状に連なっている。換言すると、第2係止部38の外周面と第2かしめ部28の外周面は滑らかに連続し、第2係止部38の内周面と第2かしめ部28の内周面は滑らかに連続している。したがって、第2係止部38と第2かしめ部28との境界部分には、径方向の段差が存在しない。
【0024】
第2係止部38は、方形の開口部39を有している。開口部39は、第2かしめ部28を外周面から内周面まで貫通するように切り欠いた形態である。開口部39の内周面は、圧着部25の周方向に間隔を空けた2つの内側面と、軸線方向に間隔を空けた前面及び後面とを有する。2つの内側面のうち第1延出端縁部29に近い側の内側面は、第2係止面40として機能する。第2係止面40は、第2かしめ部28及び第2係止部38の板厚の範囲内のみ配置され、周方向において第2かしめ部28及び基板部26側に臨み、かつ周方向と直交している。
【0025】
第2変位規制部41は、第2延出端縁部30のうち第2係止部38よりも前方の領域に形成されている。第2変位規制部41は、前後方向に間隔を空けた一対の第2凹部42と、両第2凹部42の間に形成された第2突部43とを有する。第2凹部42は、第2延出端縁部30を凹ませた形態である。第2突部43は、第2延出端縁部30から第1延出端縁部29に向かって突出した形態である。
【0026】
第1かしめ部27のうち第1延出端縁部29よりも基板部26側で、かつ第1係止部31よも前方の位置には、第1かしめ部27の一部を径方向内側へ斜め前方へ延出するように切り起こした形態のストッパ44が形成されている。第2かしめ部28のうち第2延出端縁部30よりも基板部26側で、かつ第2係止部38よも前方の位置には、第2かしめ部28の一部を径方向内側へ斜め前方へ延出するように切り起こした形態のストッパ44が形成されている。
【0027】
シールド電線10に対する圧着部25の圧着は、圧着部25とシールド電線10の前端部をアプリケータ(図示省略)にセットして行う。圧着工程では、第1かしめ部27と第2かしめ部28が、縮径変形し、シールド電線10の外周に対して巻き付くようにかしめ付けられる。圧着部25をシールド電線10に圧着した状態では、第1かしめ部27と第2かしめ部28のうち第1係止部31と第2係止部38が形成されている後端部が、シース14の前端部に外嵌される。
【0028】
圧着部25のうちシース14に圧着されている部位では、図3に示すように、第1延出端縁部29が第2延出端縁部30及び第2係止部38の外周面に重ねられている。詳細には、第1係止部31のうち周方向において最も基板部26に近い部位である基端部は、第2係止部38のうち周方向において基板部26から最も遠い部位である先端部の外周に重ねられている。折返部33が開口部39内に収容され、第1係止面34と第2係止面40とが面当たり状態で周方向に当接している。この両係止面34,40の当接による係止作用によって、第1かしめ部27と第2かしめ部28が周方向に離隔するように相対変位することが防止され、圧着部25がシールド電線10の外周に対して確実に固着されている。
【0029】
第1かしめ部27と第2かしめ部28のうち第1係止部31及び第2係止部38よりも前方の領域、即ち、第1変位規制部35と第2変位規制部41が形成されている領域は、シース14よりも前方のシールド層13が露出している領域に外嵌されている。第1かしめ部27と第2かしめ部28は、第1突部36と第2凹部42を嵌合させ、第1凹部37と第2突部43を嵌合させた状態でシールド層13の外周に圧着されている。第1突部36と第2凹部42との嵌合と、第1凹部37と第2突部43との嵌合によって、第1かしめ部27と第2かしめ部28が軸線方向への相対変位を規制されている。
【0030】
本実施例1のシールド導電路Aは、芯線11をシールド層13で包囲したシールド電線10と、シールド端子20とを備えている。シールド端子20は、芯線11に接続される内導体21と、オープンバレル状の圧着部25が形成された外導体23を有している。圧着部25は、突起状の第1係止部31が形成された第1かしめ部27と、第2係止部38が形成された第2かしめ部28を有している。圧着部25は、第1係止部31を第2係止部38に係止させた状態で、シールド層13の外面に圧着されている。第1係止部31と第2係止部38の径方向の係止代、即ち、両係止部31,38の板厚方向における第1係止面34と第2係止面40の係止範囲は、第2かしめ部28(第2係止部38)の板厚の範囲内に限られている。
【0031】
シールド電線10の外周側に、第1係止部31と第2係止部38との係止代を、第1かしめ部27及び第2かしめ部28の板厚の範囲外に確保した場合には、第1かしめ部27の層と第2かしめ部28の層に、両係止部31,38の係止代の層が加わった3層の積層構造となるため、外径寸法が大きくなる。
【0032】
これに対し、本実施例1では、第1係止部31と第2係止部38の径方向の係止代を第2かしめ部28の板厚の範囲内に確保しているので、シールド電線10の外周には第1かしめ部27と第2かしめ部28のみの2層構造となっている。したがって、シールド電線10と圧着部25の圧着部位における小径化を図ることができる。第1係止部31は、第1かしめ部27の先端部を折り返し状に屈曲した形態であるから、第1かしめ部27の先端縁部を直角に曲げた形態のものに比べると、係止強度が高い。
【0033】
第1かしめ部27の第1延出端縁部29は、第2かしめ部28の第2延出端縁部30の外周側に積層されている。この構成によれば、第1係止部31における第2係止部38との係止部位(折返部33と第1係止面34)が、第2かしめ部28の外周面に露出しない。したがって、第1係止部31における第2係止部38との係止部位(折返部33と第1係止面34)が異物の干渉によって第2係止部38(第2係止面40)から外れることを防止できる。
【0034】
第1かしめ部27には第1変位規制部35が形成され、第2かしめ部28には第2変位規制部41が形成されている。第1変位規制部35と第2変位規制部41が互いに当接することによって、第1かしめ部27と前記第2かしめ部28の軸線方向への相対変位が規制されているので、第1係止部31と第2係止部38との係止状態を保持することができる。
【0035】
圧着部25をシールド電線10に圧着した状態では、一対のストッパ44が、スリーブ15に対して後方から当接するように、又はスリーブ15に対して後方から近接して対向するように配置されている。シールド電線10が後方へ引っ張られても、スリーブ15の後端がストッパ44に突き当たることによって、シールド端子20に対するシールド電線10の後方への相対変位を防止することができる。
【0036】
[実施例2]
本開示を具体化した実施例2を、図6図7を参照して説明する。本実施例2のシールド導電路Bは、圧着部50を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0037】
本実施例2の圧着部50は、外導体23の本体部24の後端から後方へ延出した基板部51と、基板部51から周方向における一方向へ延出した第1かしめ部52と、基板部51から周方向において第1かしめ部52とは反対方向へ延出した第2かしめ部53とを有している。図6に示すように、圧着部50がシールド電線10に圧着されていない状態では、圧着部50は前端から後端に向かって次第に拡径するようなテーパ状をなす。
【0038】
第1かしめ部52の延出方向先端縁部である第1延出端縁部54には、第1係止部55が形成されている。第1係止部55は、第1延出端縁部54の後端部から第2かしめ部53の第2延出端縁部59に向かって周方向に突出した基部56と、基部56の突出端から周方向逆方向へ折り返した折返部57とを有する。基部56は、第1かしめ部52に対して面一状に連なっている。
【0039】
折返部57は、基部56の内周面に密着した状態、又は基部56の内周面に対して近接して対向するように配置されている。折返部57は、基部56及び第1かしめ部52の内周面よりも径方向外側へ突出した形態である。折返部57の先端面は、周方向において第1かしめ部52及び基板部51側に臨み、かつ周方向と直交する第1係止面58として機能する。第1係止部55は、第1かしめ部52から径方向外側へ突出した突起状をなしている。
【0040】
第2かしめ部53の延出方向先端縁部である第2延出端縁部59には、第2係止部60が形成されている。第2係止部60は、第2延出端縁部59の後端部から第1延出端縁部54に向かって周方向に突出している。第2係止部60は、第2かしめ部53に対して面一状に連なっている。第2係止部60は、方形の開口部61を有している。開口部61は、第2かしめ部53を外周面から内周面まで貫通するように切り欠いた形態である。
【0041】
開口部61の内周面は、圧着部50の周方向に間隔を空けた2つの内側面と、軸線方向に間隔を空けた前面63及び後面64とを有する。2つの内側面のうち第1延出端縁部54に近い側の内側面は、第2係止面62として機能する。第2係止面62は、第2かしめ部53及び第2係止部60の板厚の範囲内のみ配置され、周方向において第2かしめ部53及び基板部51側に臨み、かつ周方向と直交している。
【0042】
圧着部50をシールド電線10に圧着した状態では、第1かしめ部52と第2かしめ部53のうち第1係止部55と第2係止部60が形成されている後端部が、シース14の前端部に外嵌される。図7に示すように、第2係止部60が第1係止部55の外周面に重ねられている。第2係止部60のうち周方向において基板部51から最も遠い部位である先端部は、第1係止部55のうち周方向において最も基板部51に近い部位である基端部の外周に重ねられている。
【0043】
折返部57が開口部61内に収容され、第1係止面58と第2係止面62とが面当たり状態で周方向に当接している。この両係止面58,62の当接による係止作用によって、第1かしめ部52と第2かしめ部53が周方向に離隔するように相対変位することが防止され、圧着部50がシールド電線10の外周に対して確実に固着されている。
【0044】
折返部57の前縁部は、開口部61の前面63に対して後方から近接して対向し、折返部57の後縁部は、開口部61の後面64に対して前方から近接して対向している。第1かしめ部52と第2かしめ部53に対し、第1かしめ部52を前方へ相対変位させようとする外力が作用したときには、折返部57の前縁部が開口部61の前面63に当接することによって、第1かしめ部52の相対変位が防止される。第1かしめ部52と第2かしめ部53に対し、第1かしめ部52を後方へ相対変位させようとする外力が作用したときには、折返部57の後縁部が開口部61の後面64に当接することによって、第1かしめ部52の相対変位が防止される。
【0045】
[実施例3]
本開示を具体化した実施例3を、図8を参照して説明する。本実施例3のシールド導電路Cは、圧着部70を構成する第1係止部71を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0046】
本実施例3の第1係止部71は、第1かしめ部27(第1係止部71)の一部を径方向内周側へ切り起こした切起片72を有している。切起片72は、屈曲部73と突当部74とを有する。屈曲部73は、第1係止部71の先端部から周方向に突出し、かつ第1係止部71の先端部よりも径方向内側へ突出するように屈曲した形状である。突当部74は、屈曲部73の突出端から基板部26側へ周方向に延出した形態である。第1係止部71からの突当部74の径方向内側への突出寸法は、第2かしめ部28の第2係止部38の板厚と同じ寸法である。突当部74の延出端面は、周方向に対して直交する第1係止面75として機能する。
【0047】
圧着部70をシールド電線10に圧着した状態では、第1係止部71が第2係止部38の外周に重ね合わされ、屈曲部73の一部と突当部74の全体が、第2係止部38の開口部39内周に収容される。第1係止面75が開口部39との第2係止面40に対して周方向に突き当たる。この突き当たりにより、第1かしめ部27と第2かしめ部28の周方向への拡開変形が防止され、シールド電線10に対して圧着部70の圧着状態が保持される。
【0048】
第1係止部71は、第1かしめ部27の一部を第1かしめ部27の板厚方向へ切り起こした形態である。第1かしめ部27の外周縁から面一状に延出された部位を曲げ加工するものに比べると、本実施例3のシールド導電路Cは、材料コストを低減できる。
【0049】
[実施例4]
本開示を具体化した実施例4を、図9を参照して説明する。本実施例4のシールド導電路Dは、圧着部80を構成する第1係止部81を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0050】
本実施例4の第1係止部81は、第1かしめ部27の一部を径方向内周側へ切り起こした切起片82を有している。切起片82は、第1係止部81の先端部から基板部26に向かって周方向に突出し、かつ第1係止部81の先端部よりも径方向内側へ突出するように屈曲した形状である。第1係止部81からの切起片82の径方向内側への突出寸法は、第2かしめ部28の第2係止部38の板厚と同じ寸法である。
【0051】
圧着部80をシールド電線10に圧着した状態では、第1係止部81が第2係止部38の外周に重ね合わされ、切起片82の一部が第2係止部38の開口部39内周に収容される。切起片82の突出端縁が、開口部39の第2係止面40に対し、線接触状態で周方向に突き当たる。この突き当たりにより、第1かしめ部27と第2かしめ部28の周方向への拡開変形が防止され、シールド電線10に対して圧着部80の圧着状態が保持される。
【0052】
第1係止部81は、第1かしめ部27の一部を第1かしめ部27の板厚方向へ切り起こした形態である。第1かしめ部27の外周縁から面一状に延出された部位を曲げ加工するものに比べると、本実施例4のシールド導電路Dは、材料コストを低減できる。
【0053】
[実施例5]
本開示を具体化した実施例5を、図10図11を参照して説明する。本実施例5のシールド導電路Eは、圧着部90を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0054】
本実施例5の圧着部90は、基板部(図示省略)と、基板部から周方向における一方向へ延出した第1かしめ部91と、基板部から周方向において第1かしめ部91とは反対方向へ延出した第2かしめ部92とを有している。
【0055】
第1かしめ部91の第1延出端縁部93には、第1係止部94が形成されている。第1係止部94は、基部95と、前後一対の屈曲部96とを有する。基部95は、第1延出端縁部93の後端部から第2かしめ部92側に向かって周方向に突出した形態である。基部95は、第1かしめ部91に対して面一状に連なっている。
【0056】
一対の屈曲部96は、基部95の前縁部と後縁部を基部95と直角に曲げ加工したものである。基部95と屈曲部96との境界線、つまり屈曲部96の折り目98は、周方向に沿って延びている。屈曲部96は、基部95及び第1かしめ部91の内周面よりも径方向内側へ突出した形態である。屈曲部96の径方向ーの突出寸法は、第2かしめ部92及び第2係止部100の板厚と同じ寸法である。屈曲部96のうち周方向において基板部側に臨む面は、周方向と直交する第1係止面99として機能する。第1係止部94は、第1かしめ部91から径方向内側へ突出した突起状をなしている。
【0057】
第2かしめ部92の第2延出端縁部97には、第2係止部100が形成されている。第2係止部100は、第2延出端縁部97の後端部から第1かしめ部91側に向かって周方向に突出している。第2係止部100は、第2かしめ部92に対して面一状に連なっている。第2係止部100は、方形の開口部101を有している。開口部101は、第2かしめ部92を外周面から内周面まで貫通するように切り欠いた形態である。開口部101の内周面は、圧着部90の周方向に間隔を空けた2つの内側面と、軸線方向に間隔を空けた前面及び後面とを有する。2つの内側面のうち第1延出端縁部93に近い側の内側面は、第2係止面102として機能する。第2係止面102は、第2かしめ部92及び第2係止部100の板厚の範囲内のみ配置され、周方向において第2かしめ部92及び基板部側に臨み、かつ周方向と直交している。
【0058】
圧着部90のうちシース14に圧着されている部位では、第1係止部94が第2係止部100の外周面に重ねられている。前後両屈曲部96が開口部101内に収容され、第1係止面99と第2係止面102とが面当たり状態で周方向に当接している。この両係止面99,102の当接による係止作用によって、第1かしめ部91と第2かしめ部92が周方向に離隔するように相対変位することが防止され、圧着部90がシールド電線の外周に対して確実に固着されている。第1係止部94は、第1かしめ部91を周方向の折り目98に沿って曲げ加工した形態であるから、周方向の外力に対して高い剛性を有している。したがって、第1係止部94の変形に起因する圧着部90の拡開変形を防止することができる。
【0059】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1では、第1かしめ部と第2かしめ部に変位規制部を形成したが、実施例1は変位規制部を有しない形態でもよい。
上記実施例1の変位規制部は、実施例2~5に形成してもよい。
上記実施例1~5では、第2係止部が、開口縁が全周に亘って繋がった窓孔状をなすが、第2係止部は、第2かしめ部の外縁部に開口するように切り欠いた形態であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
A…シールド導電路
B…シールド導電路
C…シールド導電路
D…シールド導電路
E…シールド導電路
10…シールド電線
11…芯線
12…絶縁被覆
13…シールド層
14…シース
15…スリーブ
20…シールド端子
21…内導体
22…誘電体
23…外導体
24…本体部
25…圧着部
26…基板部
27…第1かしめ部
28…第2かしめ部
29…第1延出端縁部
30…第2延出端縁部
31…第1係止部
32…基部
33…折返部
34…第1係止面
35…第1変位規制部
36…第1突部
37…第1凹部
38…第2係止部
39…開口部
40…第2係止面
41…第2変位規制部
42…第2凹部
43…第2突部
44…ストッパ
50…圧着部
51…基板部
52…第1かしめ部
53…第2かしめ部
54…第1延出端縁部
55…第1係止部
56…基部
57…折返部
58…第1係止面
59…第2延出端縁部
60…第2係止部
61…開口部
62…第2係止面
63…開口部の前面
64…開口部の後面
70…圧着部
71…第1係止部
72…切起片
73…屈曲部
74…突当部
75…第1係止面
80…圧着部
81…第1係止部
82…切起片
90…圧着部
91…第1かしめ部
92…第2かしめ部
93…第1延出端縁部
94…第1係止部
95…基部
96…屈曲部
97…第2延出端縁部
98…折り目
99…第1係止面
100:第2係止部
101:開口部
102:第2係止面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11