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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20231108BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20231108BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W40/08
G08G1/16 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020106333
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001456
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-024288(JP,A)
【文献】特開2019-182012(JP,A)
【文献】特開2014-024368(JP,A)
【文献】特開2014-019390(JP,A)
【文献】特開2018-024287(JP,A)
【文献】特開2017-144808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転するために前記車両の運転者によって操作される運転操作子の操作量についての情報を取得するセンサであって、前記運転操作子は、前記車両を加速するために操作されるアクセル操作子を少なくとも含む、センサと、
前記運転操作子の前記操作量についての前記情報に基いて、前記車両の走行中に前記運転者が前記車両を運転する能力を失っている異常状態にあるか否かを繰り返し判定し、
前記運転者が前記異常状態にあるとの判定が継続した場合、前記車両に制動力を付与して前記車両を停止させる停止制御を実行し、
前記停止制御により前記車両を停止させた以降において、前記車両に前記制動力を付与し続けることによって前記車両を停止状態に保持する停止保持制御を実行する
ように構成された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記停止保持制御の実行中において、前記アクセル操作子の前記操作量が所定の閾値より大きいときに成立する第1条件が成立するとき、前記停止保持制御の解除を禁止するように構成された、
車両制御装置において、
前記制御装置は、前記停止保持制御の実行中において、
前記第1条件に加えて、前記運転者が現在救助されている蓋然性が高いときに成立する第2条件が成立するとき、前記停止保持制御を解除するための所定の解除操作が行われても前記停止保持制御の解除を禁止するように構成され、
更に、
前記制御装置は、前記停止保持制御の実行中に前記第1条件が成立した場合でも、
前記第2条件が成立せず、且つ、前記停止保持制御を解除するための前記所定の解除操作が行われたとき、前記停止保持制御を解除するように構成された、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記制御装置は、前記運転者の座席に対応するドアが開状態であるとの条件、及び、前記運転者の座席のシートベルトが解除状態であるとの条件の少なくとも一方が成立したとき、前記第2条件が成立したと判定するように構成された、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が異常状態にあると判定した場合に、車両を停止させるように構成された車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転者が異常状態にあると判定した場合に、車両を強制的に停止させる装置(以下、「従来装置」と称呼する。)が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。ここで、異常状態は、運転者が車両を運転する能力を失っている状態を意味し、例えば、居眠り運転状態及び心身機能停止状態等を含む。
【0003】
従来装置の一つは、車両が停止された以降において、車両を停止状態に保持する停止保持制御を実行する。更に、従来装置は、停止保持制御の実行中において運転者が車両を運転するための操作子(例えば、アクセルペダル)を操作した場合、運転者の状態が異常状態から正常状態に戻ったと判定し、停止保持制御を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-023831号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、停止保持制御に実行中において、救助者が運転者を救助する場合がある。その際に、例えば、運転者の足がアクセルペダルに触れてしまう場合がある。この場合、従来装置は、停止保持制御を解除する。従って、従来装置においては、運転者の救助中にもかかわらず、車両が発進してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、運転者の救助中に車両が発進する可能性を低減することが可能な車両制御装置を提供することである。
【0007】
本発明の車両制御装置は、
車両を運転するために前記車両の運転者によって操作される運転操作子の操作量についての情報を取得するセンサ(11)であって、前記運転操作子は、前記車両を加速するために操作されるアクセル操作子(11a)を少なくとも含む、センサと、
前記運転操作子の前記操作量についての前記情報に基いて、前記車両の走行中に前記運転者が前記車両を運転する能力を失っている異常状態にあるか否かを繰り返し判定し、
前記運転者が前記異常状態にあるとの判定が継続した場合、前記車両に制動力を付与して前記車両を停止させる停止制御を実行し(ステップ505、ステップ604)、
前記停止制御により前記車両を停止させた以降において(ステップ603:No)、前記車両に前記制動力を付与し続けることによって前記車両を停止状態に保持する停止保持制御を実行する(ステップ701:Yes、ステップ702)
ように構成された制御装置(10)と、
を備え、
前記制御装置は、前記停止保持制御の実行中において、前記アクセル操作子の前記操作量が所定の閾値より大きいときに成立する第1条件が成立するとき(ステップ705:Yes)、前記停止保持制御の解除を禁止するように構成されている。
【0008】
上記構成によれば、第1条件が成立する場合には、停止保持制御の解除が禁止される。従って、救助者が運転者を救助する際に運転者の足がアクセル操作子に触れた場合でも、車両が発進するのを防ぐことができる。
【0009】
本発明の一態様において、前記制御装置は、前記停止保持制御の実行中において、前記第1条件に加えて(ステップ705:Yes)、前記運転者が現在救助されている蓋然性が高いときに成立する第2条件が成立するとき(ステップ901:Yes)、前記停止保持制御の解除を禁止するように構成されている。
【0010】
上記構成によれば、運転者が救助されている蓋然性が高いときに、停止保持制御の解除が禁止される。
【0011】
本発明の一態様において、前記制御装置は、前記停止保持制御の実行中に前記第1条件が成立した場合でも(ステップ705:Yes)、前記第2条件が成立せず、且つ、前記停止保持制御を解除するための所定の解除操作が行われたとき(ステップ901:No、且つ、ステップ706:Yes)、前記停止保持制御を解除する(ステップ707)ように構成されている。
【0012】
第2条件が成立しない場合には、運転者の状態が異常状態から正常状態に戻り、運転者が、車両の走行をすぐに再開するためにアクセル操作子に触れている可能性がある。上記構成によれば、運転者がアクセル操作子に触れていたとしても、第2条件が成立しないときには、運転者が解除操作を行うことにより停止保持制御を解除することができる。従って、運転者による運転再開の意思を反映させることができる。
【0013】
本発明の一態様において、前記制御装置は、前記運転者の座席に対応するドアが開状態であるとの条件、及び、前記運転者の座席のシートベルトが解除状態であるとの条件の少なくとも一方が成立したとき、前記第2条件が成立したと判定するように構成されている。
【0014】
上記構成によれば、運転者の座席に対応するドア、及び/又は、運転者の座席のシートベルトの状態に応じて、運転者が救助されている蓋然性が高いかを判定できる。
【0015】
一以上の実施形態において、上記の制御装置は、本明細書に記述される1以上の機能を実行するためにプログラムされたマイクロプロセッサにより実施されてもよい。一以上の実施形態において、制御装置は、1以上のアプリケーションに特化された集積回路、即ち、ASIC等により構成されたハードウェアによって、全体的に或いは部分的に実施されてもよい。上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る車両制御装置(第1装置)の概略構成図である。
図2図1に示した車両制御装置の作動を説明するための図である。
図3】第1装置の運転支援ECUのCPU(以下、単に「CPU」と称呼する。)が実行する「異常状態判定ルーチン」を示したフローチャートである。
図4】CPUが実行する「第1モード制御ルーチン」を示したフローチャートである。
図5】CPUが実行する「第2モード制御ルーチン」を示したフローチャートである。
図6】CPUが実行する「第3モード制御ルーチン」を示したフローチャートである。
図7】CPUが実行する「第4モード制御ルーチン」を示したフローチャートである。
図8】第1装置の変形例に係る「第4モード制御ルーチン」を示したフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る車両制御装置(第2装置)のCPUが実行する「第4モード制御ルーチン」を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る車両制御装置(以下、「第1装置」と称呼される場合がある。)は、図1に示すように、車両VAに適用される。車両制御装置は、運転支援ECU10、エンジンECU20、ブレーキECU30、電動パーキングブレーキECU(以下、「EPB・ECU」と称呼する。)40、ステアリングECU50、メーターECU60、警報ECU70、及び、ボディECU80を備える。
【0018】
これらECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電気制御装置(Electric Control Unit)であり、CAN(Controller Area Network)100を介して相互に情報を送信可能及び受信可能に接続されている。ECU10乃至80は、幾つか又は全部が1つのECUに統合されてもよい。
【0019】
本明細書において、マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース(I/F)等を含む。CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。例えば、運転支援ECU10は、CPU10a、ROM10b、RAM10c、不揮発性メモリ10d及びインターフェース(I/F)10e等を含むマイクロコンピュータを備える。
【0020】
運転支援ECU10は、後述するセンサ及びスイッチと接続されていて、それらの検出信号又は出力信号を受信するようになっている。
【0021】
アクセルペダル操作量センサ11は、アクセルペダル(アクセル操作子)11aの操作量APを検出し、アクセルペダル操作量APを表す信号を出力する。運転者がアクセルペダル11aを操作していない場合、アクセルペダル操作量APは「0」になる。運転者がアクセルペダル11aを踏み込む量が大きくなるほど、アクセルペダル操作量APは大きくなる。
【0022】
ブレーキペダル操作量センサ12は、ブレーキペダル(ブレーキ操作子)12aの操作量BPを検出し、ブレーキペダル操作量BPを表す信号を出力する。運転者がブレーキペダル12aを操作していない場合、ブレーキペダル操作量BPは「0」になる。運転者がブレーキペダル12aを踏み込む量が大きくなるほど、ブレーキペダル操作量BPは大きくなる。
【0023】
操舵トルクセンサ13は、運転者の操舵ハンドルSWに対する操作(操舵操作)によってステアリングシャフトUSに作用する操舵トルクTraを検出し、操舵トルクTraを表す信号を出力する。運転者が操舵ハンドルSWを操作していない場合、操舵トルクTraは「0」になる。更に、操舵トルクTraの値は、操舵ハンドルSWを第1方向(左方向)に回転させた場合に正の値となり、操舵ハンドルSWを第2方向(右方向)に回転させた場合に負の値になる。操舵角センサ14は、車両VAの操舵角θを検出し、その操舵角θを表す信号を出力する。車速センサ15は、車両VAの走行速度(以下、「車速」と称呼する。)SPDを検出し、その車速SPDを表す信号を出力する。
【0024】
以降において、アクセルペダル11a、ブレーキペダル12a及び操舵ハンドルSWは、車両VAを運転するために運転者によって操作される操作子であることから、まとめて「運転操作子」と称呼される場合がある。
【0025】
周囲センサ16は、車両VAの周辺状況を検出するセンサである。周囲センサ16は、車両VAの周囲の道路(例えば、車両VAが走行している走行レーン)に関する情報、及び、道路に存在する立体物に関する情報を取得する。立体物は、例えば、歩行者、四輪車及び二輪車などの移動物、並びに、ガードレール及びフェンスなどの固定物を含む。以下、これらの立体物は「物標」と称呼される場合がある。周囲センサ16は、レーダセンサ16a及びカメラセンサ16bを備えている。
【0026】
レーダセンサ16aは、例えば、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」と称呼する。)を車両VAの周辺領域に放射し、放射範囲内に存在する物標によって反射されたミリ波(即ち、反射波)を受信する。レーダセンサ16aは、物標の有無について判定するとともに、車両VAと物標との相対関係を示す情報を演算する。車両と物標との相対関係を示す情報は、車両VAと物標との距離、車両VAに対する物標の方位(又は位置)、及び、車両VAに対する物標の相対速度等を含む。レーダセンサ16aから得られた情報(車両VAと物標との相対関係を示す情報を含む。)は「物標情報」と称呼される。
【0027】
カメラセンサ16bは、車両VAの前方の風景を撮影して画像データを取得する。カメラセンサ16bは、その画像データに基いて、車両VAが走行している走行レーンを規定する複数の区画線(例えば、左白線及び右白線)を認識する。更に、カメラセンサ16bは、走行レーンの形状を示すパラメータ(例えば、曲率)、及び、車両VAと走行レーンとの位置関係を示すパラメータ等を演算する。車両VAと走行レーンとの位置関係を示すパラメータは、例えば、車両VAの車幅方向の中心位置と左白線又は右白線上の任意の位置との間の距離を含む。カメラセンサ16bによって取得された情報は「車線情報」と称呼される。なお、カメラセンサ16bは、画像データに基いて、物標の有無を判定し、物標情報を演算するように構成されてもよい。
【0028】
周囲センサ16は、「物標情報及び車線情報」を含む車両の周辺状況に関する情報を「車両周辺情報」として運転支援ECU10に出力する。
【0029】
操作スイッチ18は、操舵ハンドルSWに設けられており、運転支援制御を開始/終了させるときに運転者により操作される各種スイッチを含む。運転支援制御は、追従車間距離制御及び車線維持制御を含む。
【0030】
追従車間距離制御は、周知であり(例えば、特開2014-148293号公報、特開2006-315491号公報、及び、特許第4172434号明細書等を参照。)、「アダプティブ・クルーズ・コントロール(Adaptive Cruise Control)」と称呼される場合がある。以降において、追従車間距離制御を単に「ACC」と称呼する。
【0031】
車線維持制御は、周知であり(例えば、特開2008-195402号公報、特開2009-190464号公報、特開2010-6279号公報、及び、特許第4349210号明細書、等を参照。)、「レーン・キーピング・アシスト(Lane Keeping Assist)」又は「レーン・トレーシング・アシスト(Lane Tracing Assist)」と称呼される場合がある。以降において、車線維持制御を単に「LKA」と称呼する。
【0032】
操作スイッチ18は、ACCスイッチ18a及びLKAスイッチ18bを備えている。ACCスイッチ18aは、ACCを開始/終了させるときに運転者によって操作されるスイッチである。LKAスイッチ18bは、LKAを開始/終了させるときに運転者によって操作されるスイッチである。
【0033】
更に、エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21に接続されている。エンジンアクチュエータ21は、内燃機関22のスロットル弁の開度を変更するスロットル弁アクチュエータを含む。エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を駆動することによって、内燃機関22が発生するトルクを変更することができる。内燃機関22が発生するトルクは、図示しないトランスミッションを介して駆動輪に伝達される。従って、エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を制御することによって、車両VAの駆動力を制御し加速状態(加速度)を変更することができる。
【0034】
なお、車両VAが、ハイブリッド車両である場合、エンジンECU20は、車両駆動源としての「内燃機関及び電動機」の何れか一方又は両方によって発生する駆動力を制御することができる。更に、車両VAが電気自動車である場合、エンジンECU20は、車両駆動源としての電動機によって発生する駆動力を制御することができる。
【0035】
ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31に接続されている。ブレーキアクチュエータ31は、摩擦ブレーキ機構32を制御するアクチュエータであり、公知の油圧回路を含む。摩擦ブレーキ機構32は、車輪に固定されるブレーキディスク32aと、車体に固定されるブレーキキャリパ32bとを備える。ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキECU30からの指示に応じてブレーキキャリパ32bに内蔵されたホイールシリンダに供給する油圧を調整し、その油圧によりブレーキパッドをブレーキディスク32aに押し付けて摩擦制動力を発生させる。従って、ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31を制御することによって車両VAの制動力を制御し加速状態(減速度、即ち、負の加速度)を変更することができる。
【0036】
EPB・ECU40は、パーキングブレーキアクチュエータ(以下、「PKB・アクチュエータ」と称呼する。)41に接続されている。PKB・アクチュエータ41は、ブレーキパッドをブレーキディスク32aに押し付けるか、又は、ドラムブレーキを備えている場合には車輪と共に回転するドラムにシューを押し付けて摩擦制動力を発生させる。従って、EPB・ECU40は、PKB・アクチュエータ41を用いてパーキングブレーキ力を車輪に加えて、車両を停止状態に維持することができる。以下、PKB・アクチュエータ41を作動させることによる車両VAの制動を単に「EPB」と称呼する。
【0037】
ステアリングECU50は、周知の電動パワーステアリングシステムの制御装置であって、モータドライバ51に接続されている。モータドライバ51は、転舵用モータ52に接続されている。モータ52は、車両VAのステアリング機構(操舵ハンドルSW、ステアリングシャフトUS及び操舵用ギア機構等を含む)に組み込まれている。モータ52は、モータドライバ51から供給される電力によってトルクを発生し、このトルクによって操舵アシストトルクを加えたり、左右の操舵輪を転舵したりすることができる。
【0038】
メーターECU60は、図示しないデジタル表示式メーターに接続されると共に、ハザードランプ61及びストップランプ62に接続されている。メーターECU60は、運転支援ECU10からの指示に応じて、ハザードランプ61の点滅及びストップランプ62の点灯を制御することができる。
【0039】
警報ECU70は、ブザー71及び表示器72に接続されている。警報ECU70は、運転支援ECU10からの指示に応じて、ブザー71を鳴動させて運転者への注意喚起を行ったり、表示器72に注意喚起用のマーク(ウォーニングランプ)を表示したりすることができる。
【0040】
ボディECU80は、ドアロック装置81、ホーン82、ドアセンサ83、及び、シートベルトセンサ84に接続されている。ボディECU80は、運転支援ECU10からの指示に応じてドアロック装置81を制御し、車両VAのドアをロックしたり、ロックを解除したりできる。更に、ボディECU80は、運転支援ECU10からの指示に応じてホーン82を鳴動させることができる。ドアセンサ83は、車両VAの各ドアの状態(開状態及び閉状態の何れか)を表す信号を出力する。シートベルトセンサ84は、車両VAの各座席のシートベルトの状態(装着状態及び解除状態の何れか)を表す信号を出力する。
【0041】
以下、運転支援ECU10によって実行される「ACC及びLKA」について簡単に説明する。
【0042】
(ACC)
ACCは、定速走行制御と先行車追従制御の2種類の制御を含む。定速走行制御は、アクセルペダル11a及びブレーキペダル12aの操作を要することなく、車両VAの走行速度を目標速度(設定速度)Vsetと一致させるように車両VAを走行させる制御である。先行車追従制御は、アクセルペダル11a及びブレーキペダル12aの操作を要することなく、先行車(追従対象車両)と車両VAとの車間距離を目標車間距離Dsetに維持しながら追従対象車両に対して車両VAを追従させる制御である。追従対象車両は、車両VAの前方領域であって車両VAの直前を走行している車両である。
【0043】
運転支援ECU10は、ACCスイッチ18aがオン状態に設定されると、車両周辺情報に含まれる物標情報に基いて追従対象車両が存在しているか否かを判定する。運転支援ECU10は、追従対象車両が存在しないと判定した場合、定速走行制御を実行する。運転支援ECU10は、車速SPDが目標速度Vsetに一致するように、エンジンECU20を用いてエンジンアクチュエータ21を制御して駆動力を制御するとともに、必要に応じてブレーキECU30を用いてブレーキアクチュエータ31を制御して制動力を制御する。
【0044】
これに対し、運転支援ECU10は、追従対象車両が存在すると判定した場合、先行車追従制御を実行する。運転支援ECU10は、目標車間時間twに車速SPDを乗じることにより、目標車間距離Dsetを演算する。目標車間時間twは、図示しない車間時間スイッチを用いて設定される。運転支援ECU10は、車両VAと追従対象車両との間の車間距離が目標車間距離Dsetに一致するように、エンジンECU20を用いてエンジンアクチュエータ21を制御して駆動力を制御するとともに、必要に応じてブレーキECU30を用いてブレーキアクチュエータ31を制御して制動力を制御する。
【0045】
(LKA)
LKAは、区画線を活用して設定される目標走行ラインに沿って車両VAが走行するように車両VAの操舵輪の転舵角を変更する制御(操舵制御)である。運転支援ECU10は、ACCスイッチ18aがオン状態である状況においてLKAスイッチ18bがオン状態に設定されると、LKAを実行する。
【0046】
具体的には、運転支援ECU10は、車両周辺情報に含まれる車線情報に基いて、車両VAが走行している走行レーンの「左白線及び右白線」についての情報を取得する。運転支援ECU10は、左白線と右白線との間の走行レーンの幅方向における中央位置を結ぶラインを「レーンの中央ラインLM」として推定する。運転支援ECU10は、中央ラインLMを目標走行ラインTLとして設定する。
【0047】
運転支援ECU10は、LKAを実行するために必要なLKA制御パラメータを演算する。LKA制御パラメータは、目標走行ラインTLの曲率CL(=中央ラインLMの曲率半径Rの逆数)、距離dL、及び、ヨー角θL等を含む。距離dLは、目標走行ラインTLと、車両VAの車幅方向の中心位置との間の(実質的には道路幅方向における)距離である。ヨー角θLは、目標走行ラインTLに対する車両VAの前後方向軸の角度である。
【0048】
運転支援ECU10は、LKA制御パラメータ(CL,dL,θL)を用いて、公知の手法に従って、車両VAの位置を目標走行ラインTLに一致させるための自動操舵トルクTrbを演算する。自動操舵トルクTrbは、運転者による操舵ハンドルSWの操作なしに、モータ52の駆動によりステアリング機構に付与されるトルクである。運転支援ECU10は、ステアリング機構に付与される実際のトルクが自動操舵トルクTrbに一致するように、モータドライバ51を介してモータ52を制御する。即ち、運転支援ECU10は、操舵制御を実行する。
【0049】
(作動の概要)
運転支援ECU10は、ACC及びLKAが実行されている場合、運転者が「車両を運転する能力を失っている異常状態(以下、単に「異常状態」と称呼する。)」にあるか否かを繰り返し判定する。異常状態は、上述したように、例えば、居眠り運転状態及び心身機能停止状態等を含む。運転支援ECU10は、運転者が異常状態にあるとの判定が継続した場合、複数の運転モードに応じた車両制御を実行する。以下、図2を用いて、これらの複数の運転モードの制御について説明する。
【0050】
・通常モード
図2に示した例においては、時点t1以前において、ACC及びLKAの両方が正常に実行されている。時点t1にて、運転支援ECU10は、運転者が運転操作子を操作していない状態であることを検出する。以降において、このような状態を「特定状態(又は無操作状態)」と称呼する。特定状態とは、運転者の運転操作によって変化する「アクセルペダル操作量AP、ブレーキペダル操作量BP、及び、操舵トルクTra」の1つ以上の組み合わせからなるパラメータの何れもが変化しない状態である。本例においては、運転支援ECU10は、「アクセルペダル操作量AP、ブレーキペダル操作量BP及び操舵トルクTra」の何れもが変化せず且つ操舵トルクTraが「0」のままである状態を特定状態と見做す。
【0051】
運転支援ECU10は、特定状態が最初に検出された時点(t1)以降において、ACC及びLKAを継続する。時点t1にて、特定状態が検出されたものの、まだ異常状態は検出されてない。このように、異常状態が検出されることなくACC及びLKAの両方が実行される運転モードを「通常モード」と称呼する。なお、ACC及びLKAが開始された時点にて実行されるイニシャライズルーチンにおいて、運転支援ECU10は、運転モードを通常モードに設定する。
【0052】
・第1モード
時点t2は、時点t1から第1時間閾値Tth1が経過した時点である。特定状態が最初に検出された時点t1から特定状態が第1時間閾値Tth1だけ継続した場合、運転支援ECU10は、運転者が異常状態であると判定する。運転者が異常状態であると判定した時点t2にて、運転支援ECU10は、運転モードを通常モードから第1モードへと変更する。
【0053】
第1モードにおいて、運転支援ECU10は、運転者に対する警告処理を開始する。具体的には、運転支援ECU10は、ブザー71から警告音を発生させるとともに、表示器72にウォーニングランプを表示する。なお、運転支援ECU10は、時点t2以降においても、ACC及びLKAを継続する。
【0054】
運転者が、上記の警告処理に気が付いて運転操作を再開させた場合、運転操作子のパラメータ(AP、BP及びTra)の1つ以上が変化する。この場合、運転支援ECU10は、運転者の状態が異常状態から正常状態に戻ったと判定する。従って、運転支援ECU10は、運転モードを第1モードから通常モードへと変更する。これにより、運転支援ECU10は、警告処理を終了させる。
【0055】
・第2モード
時点t3は、時点t2から第2時間閾値Tth2が経過した時点である。異常状態が最初に検出された時点t2から特定状態が第2時間閾値Tth2だけ継続した場合(即ち、時点t3にて)、運転支援ECU10は、運転モードを第1モードから第2モードへと変更する。
【0056】
第2モードにおいて、運転支援ECU10は、通常のACCに代えて、第1減速度(負の加速度)α1で車両VAを減速させる第1減速制御を実行する。なお、運転支援ECU10は、LKAを継続する。
【0057】
運転支援ECU10は、時点t3以降においても、警告処理を継続する。なお、運転支援ECU10は、時点t3以降において、ブザー71の警告音の音量及び/又は発生間隔を変更してもよい。更に、運転支援ECU10は、図示しないオーディオ機器をオン状態からオフ状態に設定してもよい。これにより、運転者がブザー71の警告音に気づきやすくなる。
【0058】
更に、運転支援ECU10は、時点t3以降において、車両VAの周囲の他車両及び歩行者等に対する報知処理を実行する。具体的には、運転支援ECU10は、メーターECU60に対してハザードランプ61の点滅指令を出力し、ハザードランプ61を点滅させる。
【0059】
運転者が、上記の警告処理に気が付いて運転操作を再開させた場合、運転支援ECU10は、運転モードを第2モードから通常モードへと変更する。これにより、運転支援ECU10は、第1減速制御、警告処理及び報知処理を終了させる。そして、運転支援ECU10は、上述のように、追従対象車両の有無に応じて、定速走行制御及び先行車追従制御の何れかを再開させる。
【0060】
・第3モード
時点t4は、時点t3から第3時間閾値Tth3が経過した時点である。このように、時点t3から特定状態が第3時間閾値Tth3だけ継続した場合(即ち、時点t4にて)、運転支援ECU10は、運転モードを第2モードから第3モードへと変更する。
【0061】
第3モードにおいて、運転支援ECU10は、第1減速制御に代えて、第2減速度(負の加速度)α2で車両VAを減速させる第2減速制御を実行する。なお、運転支援ECU10は、LKAを継続する。第2減速度α2の大きさ(絶対値)は、第1減速度α1の大きさよりも大きい。これにより、運転支援ECU10は、車両VAを減速させて車両VAを強制的に停止させる。なお、運転支援ECU10は、車両VAが停止するまでLKAを継続する。
【0062】
時点t4以降においても、運転支援ECU10は、警告処理及び報知処理を継続する。なお、報知処理において、運転支援ECU10は、以下の追加の処理を実行する。運転支援ECU10は、メーターECU60に対してストップランプ62の点灯指令を出力し、ストップランプ62を点灯させる。加えて、運転支援ECU10は、ボディECU80にホーン82の鳴動指令を出力し、ホーン82を鳴動させる。
【0063】
運転者が、上記の警告処理に気が付いて運転操作を再開させた場合、運転支援ECU10は、運転モードを第3モードから通常モードへと変更する。これにより、運転支援ECU10は、第2減速制御、警告処理及び報知処理を終了させる。そして、運転支援ECU10は、追従対象車両の有無に応じて、定速走行制御及び先行車追従制御の何れかを再開させる。
【0064】
以降において、上述のように「車両VAに制動力を付与して車両VAを停止させる制御(第2モードの第1減速制御及び第3モードの第2減速制御)」を、まとめて「停止制御」と称呼する場合がある。
【0065】
・第4モード
時点t5は、第2減速制御により車両VAが停止された時点である。時点t5にて、運転支援ECU10は、運転モードを第3モードから第4モードへと変更する。運転支援ECU10は、LKAを終了させる。更に、運転支援ECU10は、第2減速制御を終了させる。加えて、運転支援ECU10は、ボディECU80に対してドアロック解除指令を出力し、ドアロック装置81にドアロックを解除させる。
【0066】
第4モードにおいて、運転支援ECU10は、停止保持制御を実行する。停止保持制御は、EPBにより車両VAに制動力を付与し続けることによって、車両VAを停止状態に保持する制御である。
【0067】
運転支援ECU10は、時点t5以降においても、警告処理及び報知処理を継続する。報知処理において、運転支援ECU10は、ストップランプ62の点灯を終了させて、ハザードランプ61の点滅及びホーン82の鳴動のみを継続する。
【0068】
・停止保持制御の解除
上述したように、車両VAが停止された後、救助者が車両VAの運転者を救助する場合がある。救助者が運転者を救助する際に、例えば、運転者の足がアクセルペダル11aに触れてしまう場合がある。従来装置においては、運転者の救助中にもかかわらず、停止保持制御が解除されて車両VAが発進してしまう可能性がある。
【0069】
そこで、運転支援ECU10は、停止保持制御が実行中において、所定の第1条件が成立するか否かを繰り返し判定する。第1条件は、アクセルペダル操作量APが所定の操作量閾値APthより大きいときに成立する。本例において、操作量閾値APthは、「0」である。なお、操作量閾値APthは、車両VAが急に発進されない程度に小さい値に設定されてもよい。
【0070】
運転支援ECU10は、第1条件が成立する場合、停止保持制御の解除を禁止する。従って、救助者が運転者を救助する際に運転者の足がアクセルペダル11aに触れた場合でも(第1条件が成立しても)、運転支援ECU10は、停止保持制御を解除することなく継続する。これにより、運転者の救助中に停止保持制御が解除されて車両が急発進することを防ぐことができる。
【0071】
運転支援ECU10は、第1条件が成立せず、且つ、所定の解除操作が行われた場合にのみ、停止保持制御を解除する。本例において、解除操作は、LKAスイッチ18bの押下操作である。なお、解除操作は、これに限定されない。解除操作用の図示しないボタンが運転者の座席付近に設けられてもよい。解除操作は、当該ボタンの押下操作であってもよい。
【0072】
(作動)
運転支援ECU10のCPU(以下、単に「CPU」と称呼する。)は、所定時間dTが経過する毎に、図3乃至図7に示したルーチンのそれぞれを実行するようになっている。
【0073】
なお、CPUは、所定時間dTが経過するごとに、センサ11乃至16並びに各種スイッチ18a及び18bから、それらの検出信号又は出力信号を受信してRAMに格納している。
【0074】
所定のタイミングになると、CPUは、図3のルーチンのステップ300から処理を開始してステップ301に進み、ACC及びLKAが現時点にて実行されているか否かを判定する。ACC及びLKAが現時点にて実行されていない場合、ステップ301にて「No」と判定してステップ395に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0075】
ACC及びLKAが現時点にて実行されている場合、CPUは、ステップ301にて「Yes」と判定してステップ302に進み、運転モードが通常モードであるか否かを判定する。運転モードが通常モードでない場合、CPUは、ステップ302にて「No」と判定してステップ395に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0076】
いま、ACC及びLKAが開始された直後であると仮定すると、運転モードは通常モードである。この場合、CPUは、ステップ302にて「Yes」と判定してステップ303に進み、各種センサ(11、12及び13)の検出信号に基いて、特定状態が検出されているか否かを判定する。上述のように、「アクセルペダル操作量AP、ブレーキペダル操作量BP及び操舵トルクTra」の何れもが変化せず且つ操舵トルクTraが「0」のままである場合、CPUは、特定状態を検出する。
【0077】
CPUは、特定状態が検出された場合、ステップ303にて「Yes」と判定してステップ304に進み、第1継続時間T1を所定時間dTだけ増加させる。第1継続時間T1は、特定状態が継続している時間を表す。時間dTは、上述のように、図3のルーチンの実行周期に相当する時間である。なお、第1継続時間T1は、上述のイニシャライズルーチンにおいて「0」に設定されている。
【0078】
次に、CPUは、ステップ305に進むと、第1継続時間T1が第1時間閾値Tth1以上であるか否かを判定する。現時点が、特定状態が最初に検出された直後の時点であると仮定すると、第1継続時間T1が第1時間閾値Tth1よりも小さい。CPUは、ステップ305にて「No」と判定してステップ395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0079】
これに対し、特定状態が継続したことから第1継続時間T1が第1時間閾値Tth1以上になった場合、CPUは、ステップ305にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ306及びステップ307の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0080】
ステップ306:CPUは、運転者の状態が異常状態であると判定して、運転モードを第1モードに設定する。
ステップ307:CPUは、第1継続時間T1を「0」にリセットする。
【0081】
なお、CPUは、ステップ303にて「No」と判定した場合、ステップ308に進み、第1継続時間T1を「0」にリセットし、その後、ステップ395に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0082】
更に、所定のタイミングになると、CPUは、図4のルーチンのステップ400から処理を開始してステップ401に進み、運転モードが第1モードであるか否かを判定する。運転モードが第1モードでない場合、CPUは、ステップ401にて「No」と判定してステップ495に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0083】
これに対し、運転者の状態が異常状態であると判定されたことから、現在の運転モードが第1モードであると仮定する。この場合、CPUは、ステップ401にて「Yes」と判定してステップ402に進む。
【0084】
ステップ402にて、CPUは、特定状態が検出されているか否かを判定する。CPUは、特定状態が検出されている場合、ステップ402にて「Yes」と判定してステップ403に進み、第2継続時間T2を時間dTだけ増加させる。第2継続時間T2は、第1モードの制御に移行された時点(即ち、ステップ306の処理が実行された時点)から特定状態が継続している時間を表す。他の言い方をすれば、第2継続時間T2は、運転者が異常状態であると最初に判定された時点から異常状態が継続している時間を表す。なお、第2継続時間T2は、上述のイニシャライズルーチンにおいて「0」に設定されている。
【0085】
次に、CPUは、ステップ404に進むと、第2継続時間T2が第2時間閾値Tth2未満であるか否かを判定する。運転モードが第1モードに移行した直後においては第2継続時間T2が第2時間閾値Tth2よりも小さい。従って、CPUは、ステップ404にて「Yes」と判定してステップ405に進み、前述のように警告処理を実行する。具体的には、CPUは、ブザー71から警告音を発生させるとともに、表示器72にウォーニングランプを表示する。その後、CPUは、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0086】
運転者が、警告処理に気が付いて運転操作を再開させたと仮定する。この状況において、CPUがステップ402に進むと、CPUは、そのステップ402にて「No」と判定して、以下に述べるステップ406及びステップ407の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ406:CPUは、運転モードを通常モードに設定する。これにより、CPUは、ステップ401にて「No」と判定するので、警告処理が終了される。
ステップ407:CPUは、第2継続時間T2を「0」にリセットする。
【0087】
これに対し、特定状態が継続したことから第2継続時間T2が第2時間閾値Tth2以上になったと仮定する。この場合、CPUは、ステップ404にて「No」と判定して、以下に述べるステップ408及びステップ409の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ408:CPUは、運転モードを第2モードに設定する。
ステップ409:CPUは、第2継続時間T2を「0」にリセットする。
【0088】
更に、所定のタイミングになると、CPUは、図5のルーチンのステップ500から処理を開始してステップ501に進み、運転モードが第2モードであるか否かを判定する。運転モードが第2モードでない場合、CPUは、ステップ501にて「No」と判定してステップ595に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0089】
これに対し、運転モードが第2モードである場合、CPUは、ステップ501にて「Yes」と判定してステップ502に進み、特定状態が検出されているか否かを判定する。CPUは、特定状態が検出されている場合、ステップ502にて「Yes」と判定してステップ503に進み、第3継続時間T3を所定時間dTだけ増加させる。第3継続時間T3は、第2モードの制御に移行された時点(即ち、ステップ408の処理が実行された時点)から特定状態が継続している時間を表す。他の言い方をすれば、第3継続時間T3は、第2モードの制御に移行された時点から異常状態が継続している時間を表す。なお、第3継続時間T3は、上述のイニシャライズルーチンにおいて「0」に設定されている。
【0090】
次に、CPUは、ステップ504に進むと、第3継続時間T3が第3時間閾値Tth3未満であるか否かを判定する。運転モードが第2モードに移行した直後においては第3継続時間T3が第3時間閾値Tth3よりも小さい。従って、CPUは、ステップ504にて「Yes」と判定して、以下に述べるステップ505乃至ステップ507の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0091】
ステップ505:CPUは、通常のACCに代えて、第1減速度α1で車両VAを減速させる第1減速制御を実行する。
ステップ506:CPUは、前述のように警告処理を実行する。具体的には、CPUは、ブザー71から警告音を発生させるとともに、表示器72にウォーニングランプを表示する。
ステップ507:CPUは、前述のように報知処理を実行する。具体的には、CPUは、ハザードランプ61を点滅させる。
【0092】
運転者が、警告処理に気が付いて運転操作を再開させたと仮定する。この状況において、CPUがステップ502に進むと、CPUは、そのステップ502にて「No」と判定し、以下に述べるステップ508及びステップ509の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0093】
ステップ508:CPUは、運転モードを通常モードに設定する。これにより、CPUがステップ501にて「No」と判定するので、第1減速制御、警告処理及び報知処理が終了される。そして、CPUは、追従対象車両の有無に応じて、定速走行制御及び先行車追従制御の何れかを再開させる。
ステップ509:第3継続時間T3を「0」にリセットする。
【0094】
これに対し、特定状態が継続したことから第3継続時間T3が第3時間閾値Tth3以上になったと仮定する。この場合、CPUは、ステップ504にて「No」と判定して、以下に述べるステップ510及びステップ511の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0095】
ステップ510:CPUは、運転モードを第3モードに設定する。
ステップ511:第3継続時間T3を「0」にリセットする。
【0096】
更に、所定のタイミングになると、CPUは、図6のルーチンのステップ600から処理を開始してステップ601に進み、運転モードが第3モードであるか否かを判定する。運転モードが第3モードでない場合、CPUは、ステップ601にて「No」と判定してステップ695に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0097】
これに対し、運転モードが第3モードである場合、CPUは、ステップ601にて「Yes」と判定してステップ602に進み、特定状態が検出されているか否かを判定する。CPUは、特定状態が検出されている場合、ステップ602にて「Yes」と判定してステップ603に進み、車速SPDが「0」より大きいか否かを判定する。車両VAがまだ停止していない場合、CPUは、そのステップ603にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ604乃至ステップ606の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0098】
ステップ604:CPUは、第1減速制御に代えて、第2減速度α2で車両VAを減速させる第2減速制御を実行する。
ステップ605:CPUは、前述のように警告処理を実行する。
ステップ606:CPUは、前述のように報知処理を実行する。具体的には、CPUは、ハザードランプ61を点滅させる。更に、CPUは、ストップランプ62を点灯させるとともに、ホーン82を鳴動させる。
【0099】
運転者が、警告処理に気が付いて運転操作を再開させたと仮定する。この状況において、CPUがステップ602に進むと、CPUは、そのステップ602にて「No」と判定してステップ607に進み、運転モードを通常モードに設定する。これにより、CPUがステップ601にて「No」と判定するので、第2減速制御、警告処理及び報知処理が終了される。そして、CPUは、追従対象車両の有無に応じて、定速走行制御及び先行車追従制御の何れかを再開させる。
【0100】
一方、第2減速制御により車両VAが停止したと仮定する。この場合、CPUは、ステップ603にて「No」と判定し、以下に述べるステップ608及びステップ609の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0101】
ステップ608:CPUは、LKAを終了させる。
ステップ609:CPUは、運転モードを第4モードに設定する。なお、CPUは、この時点にて、ドアロック装置81を制御し、車両VAのドアロックを解除する。
【0102】
更に、所定のタイミングになると、CPUは、図7のルーチンのステップ700から処理を開始してステップ701に進み、所定の停止保持条件が成立するか否かを判定する。停止保持条件は、運転モードが第4モードであり、且つ、解除フラグX1の値が「0」であるときに成立する。解除フラグX1は、停止保持制御を解除するかどうかを表すフラグであり、後述するように、停止保持制御が解除/終了されるときに「1」に設定される。なお、解除フラグX1は、上述のイニシャライズルーチンにおいて「0」に設定されている。
【0103】
停止保持条件が成立しない場合、CPUは、ステップ701にて「No」と判定してステップ795に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0104】
これに対し、運転モードが第4モードに移行した直後の時点では、停止保持条件が成立する。この場合、CPUは、ステップ701にて「Yes」と判定して、以下に述べるステップ702乃至ステップ704の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ705に進む。
【0105】
ステップ702:CPUは、前述のように停止保持制御を実行する。
ステップ703:CPUは、前述のように警告処理を実行する。
ステップ704:CPUは、前述のように報知処理を実行する。具体的には、CPUは、ハザードランプ61を点滅させるとともに、ホーン82を鳴動させる。
【0106】
CPUは、ステップ705に進むと、第1条件が成立するか否か(即ち、アクセルペダル操作量APが操作量閾値APthより大きいか否か)を判定する。第1条件が成立する場合、CPUは、ステップ705にて「Yes」と判定してステップ795に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、解除フラグX1の値が「0」に維持されるので、停止保持制御が継続される。
【0107】
これに対し、第1条件が成立しない場合、CPUは、ステップ705にて「No」と判定してステップ706に進み、所定の解除操作が行われたか否かを判定する。解除操作が行われていない場合、CPUは、ステップ706にて「No」と判定してステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。解除フラグX1の値が「0」に維持されるので、停止保持制御が継続される。
【0108】
一方、解除操作が行われた場合、CPUは、ステップ706にて「Yes」と判定してステップ707に進み、解除フラグX1の値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。これにより、ステップ701にてCPUが「No」と判定する。従って、CPUは、停止保持制御を終了させるとともに、警告処理及び報知処理を終了させる。
【0109】
なお、停止保持制御が終了された後に運転者がACC及びLKAを再開させたい場合、運転者は、ACCスイッチ18a及びLKAスイッチ18bを操作する。この操作に応じて、CPUは、運転モードを通常モードに設定してACC及びLKAを再開する。
【0110】
上記構成を備える第1装置は、救助者が運転者を救助する際に運転者の足がアクセルペダル11aに触れた場合においても、停止保持制御を解除することなく継続する。従って、運転者の救助中に車両が発進する可能性を低減することができる。
【0111】
更に、運転者の足がアクセルペダル11aに触れた状態で解除操作が誤って行われた場合(救助者又は運転者の腕がLKAスイッチ18bに触れた場合)でも、第1装置は、停止保持制御が解除することなく継続することができる。
【0112】
なお、CPUは、図7のルーチンに代えて、図8のルーチンを実行してもよい。図8のルーチンは、図7のステップ706が、ステップ704とステップ705の間に挿入されたルーチンである。この構成において、CPUが図8のルーチンのステップ706に進んだときに解除操作が行われた場合、CPUはそのステップ706にて「Yes」と判定してステップ705に進み、第1条件が成立するか否かを判定する。第1条件が成立する場合、CPUは、ステップ705にて「Yes」と判定してステップ795に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、解除フラグX1の値が「0」に維持されるので、停止保持制御が継続される。このように、CPUは、解除操作が行われた時点にて第1条件が成立するか否かを判定し、第1条件が成立した場合に解除操作を無効化してもよい。
【0113】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る車両制御装置(以下、「第2装置」と称呼される場合がある。)について説明する。第2装置は、第1条件に加えて、運転者が現在救助されている蓋然性が高いときに成立する第2条件が成立するか否かを更に判定する点において、第1装置と相違している。以下、この相違点を中心に記述する。
【0114】
(作動)
第2装置の運転支援ECU10のCPUは、図7に示したルーチンに代えて、図9に示したルーチンを実行するようになっている。図9に示したルーチンは、図7のルーチンにステップ901を追加したルーチンである。従って、図9に示したステップのうち、図7と同じ符号を付したステップについての説明は省略される。
【0115】
CPUは、図9のルーチンのステップ900から処理を開始する。CPUがステップ705にて「Yes」と判定してステップ901に進むと、CPUは、運転者が現在救助されている蓋然性が高いときに成立する所定の第2条件が成立するか否かを判定する。第2条件は、運転者の座席に対応するドアが開状態であるときに成立する。CPUは、ドアセンサ83の出力信号に基いて、運転者のドアが開状態であるか否かを判定できる。
【0116】
第2条件が成立する場合、CPUは、ステップ901にて「Yes」と判定してステップ995に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、停止保持制御が解除されることなく継続される。
【0117】
一方、第2条件が成立しない場合、CPUは、ステップ801にて「No」と判定してステップ706に進み、解除操作が行われたか否かを判定する。解除操作が行われた場合、CPUは、ステップ706にて「Yes」と判定して、前述のようにステップ707の処理を実行する。従って、停止保持制御、警告処理及び報知処理が終了される。
【0118】
これに対し、解除操作が行われていない場合、CPUは、ステップ706にて「No」と判定してステップ995に進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、停止保持制御が解除されることなく継続される。
【0119】
上記構成を備える第2装置は、救助者が運転者を救助している蓋然性が高い場合にのみ、停止保持制御を解除することなく継続する。
【0120】
車両VAが停止した後に運転者の状態が異常状態から正常状態に戻ったと仮定する。このとき、運転者は、車両VAの走行をすぐに再開するために、アクセルペダル11aに触れている可能性がある。このような状況において、運転者が解除操作を行ったとしても、第1装置は、停止保持時制御を解除することなく継続する。従って、運転者による運転再開の意思がすぐに反映されない可能性がある。これに対し、第2装置は、運転者がアクセルペダル11aに触れていたとしても、第2条件が成立しないときには、運転者が解除操作を行うことにより停止保持制御を解除することができる。
【0121】
なお、図8のルーチンと同じように、図9のルーチンにおいて、ステップ706が、ステップ704とステップ705の間に挿入されてもよい。この場合、CPUは、解除操作が行われた時点にて第1条件及び第2条件が成立するか否かを判定し、第1条件及び第2条件が成立した場合に解除操作を無効化する。
【0122】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0123】
第2条件は、上述の例に限定されない。CPUは、以下の条件A1及び条件A2の一方又は両方が成立したときに、第2条件が成立したと判定してもよい。
条件A1:運転者の座席に対応するドアが開状態である。
条件A2:運転者のシートベルトが解除状態である。CPUは、シートベルトセンサ84の出力信号に基いて、運転者のシートベルトセンサ84が解除状態であるか否かを判定できる。
【0124】
例えば、運転支援ECU10は、特開2013-152700号公報等に開示されている所謂「ドライバモニタ技術」を利用して、運転者が異常状態であるか否かを判定してもよい。より具体的に述べると、車室内の部材(例えば、ステアリングホイール及びピラー等)に運転者を撮影するカメラが設けられてもよい。運転支援ECU10は、カメラの撮影画像を用いて運転者の視線の方向又は顔の向きを監視する。運転支援ECU10は、運転者の視線の方向又は顔の向きが前方向以外の方向に継続している場合、運転者が異常状態であると判定する。従って、運転者の視線の方向又は顔の向きが前方向以外の方向に継続している時間が、前述の「第1継続時間T1」、「第2継続時間T2」及び「第3継続時間T3」として用いられてもよい。
【0125】
アクセル操作子は、アクセルペダル11aに限定されず、例えば、アクセルレバーであってもよい。ブレーキ操作子は、ブレーキペダル12aに限定されず、例えば、ブレーキレバーであってもよい。
【0126】
第1モード乃至第4モードの制御において、運転支援ECU10は、アクセルペダル操作量APの変化に基づく車両の加速を禁止してもよい。換言すると、運転支援ECU10は、第1モード乃至第4モードの制御の実行中において、アクセルペダル11aが操作された場合でも、その操作に基く加速要求を無効化してよい(即ち、内燃機関22に対する要求トルクをゼロに設定する)。
【0127】
運転支援ECU10は、第4モードの制御(停止保持制御)を開始する時点までACCの先行車追従制御を継続させてもよい。この構成において、運転支援ECU10は、追従対象車両が急減速した場合にのみ、先行車追従制御を実行する。例えば、運転支援ECU10が第3モードの制御を実行している状況において追従対象車両が急減速した場合、運転支援ECU10は、それに応じて第2減速度α2よりも大きい減速度で車両VAを減速させる。
【0128】
図2の例において、時点t1から時点t2までの期間において警告処理が行われてもよい。例えば、時点t1から特定状態が所定時間(<Tth1)継続した場合、運転モードが第1モードに移行されるまで、運転支援ECU10は、表示器72にウォーニングランプを点灯させてもよい。このウォーニングランプは、「操舵ハンドルSWの保持を促す」旨のメッセージ又はマークであってもよい。
【符号の説明】
【0129】
10…運転支援ECU、11a…アクセルペダル、11…アクセルペダル操作量センサ、12a…ブレーキペダル、12…ブレーキペダル操作量センサ、13…操舵トルクセンサ、20…エンジンECU、30…ブレーキECU。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9