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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】鋳型処理システム及び鋳型処理方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 47/02 20060101AFI20231108BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20231108BHJP
   B22C 23/00 20060101ALI20231108BHJP
   B22C 25/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B22D47/02
B22D45/00 Z
B22C23/00 Z
B22C25/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020114156
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012359
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 康明
(72)【発明者】
【氏名】小倉 和憲
(72)【発明者】
【氏名】石川 敏之
(72)【発明者】
【氏名】杉野 剛大
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-244504(JP,A)
【文献】特開平05-329622(JP,A)
【文献】特開昭60-106660(JP,A)
【文献】実開昭60-136841(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 47/02
B22D 45/00
B22C 23/00
B22C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の静止時間で間欠的に鋳型を搬送する搬送ラインと、
前記搬送ライン上の前記鋳型に処理を行う処理装置と、
前記処理装置を前記搬送ラインに沿って搬送する搬送装置と、
前記処理装置及び前記搬送装置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記搬送装置を制御して前記処理装置を前記搬送ラインの第1位置に対応する位置に配置させ、前記処理装置を制御して、前記鋳型が前記第1位置に搬送されたタイミングから前記静止時間内に前記第1位置に搬送された前記鋳型に対して前記処理の一部を行い、
前記処理の一部の完了後に前記搬送装置を制御して前記処理装置を前記搬送ラインにおいて前記第1位置より下流の第2位置に対応する位置へ移動させ、前記処理装置を制御して、前記処理の一部が行われた前記鋳型が前記第2位置に搬送されたタイミングから前記静止時間内に、前記第2位置に搬送され前記処理の一部が行われた前記鋳型に対して前記処理のうちの残余の処理を行う、
鋳型処理システム。
【請求項2】
前記処理装置は、前記鋳型に識別子を刻印する刻印装置である、請求項1に記載の鋳型処理システム。
【請求項3】
前記処理装置は、前記鋳型にガス抜き穴を設けるガス穴明け装置である、請求項1に記載の鋳型処理システム。
【請求項4】
前記第1位置及び前記第2位置は隣接し、
前記搬送ラインは、複数の鋳型を搬送し、
前記複数の鋳型は、前記処理が行われる第1鋳型と前記処理が行われない第2鋳型とを含み、
前記搬送ラインは、前記第1鋳型と前記第2鋳型とを交互に順次搬送し、
前記制御部は、
前記第1鋳型に対する前記残余の処理の完了後に前記搬送装置を制御して前記処理装置を前記第1位置に対応する前記位置へ戻し、前記第1位置へ次に搬送される前記第1鋳型に対して前記処理の一部を行う、
請求項1~3の何れか一項に記載の鋳型処理システム。
【請求項5】
鋳型処理システムによる鋳型処理方法であって、
前記鋳型処理システムは、
所定の静止時間で間欠的に鋳型を搬送する搬送ラインと、
前記搬送ライン上の前記鋳型に処理を行う処理装置と、
前記処理装置を前記搬送ラインに沿って搬送する搬送装置と、
を備え、
前記鋳型処理方法は、
前記搬送装置が前記処理装置を前記搬送ラインの第1位置に対応する位置に配置させるステップと、
前記鋳型が前記第1位置に搬送されたタイミングから前記静止時間内に、前記第1位置に搬送された前記鋳型に対して前記処理装置が前記処理の一部を行うステップと、
前記処理の一部の完了後に前記搬送装置が前記処理装置を前記搬送ラインにおいて前記第1位置より下流の第2位置に対応する位置へ移動させるステップと、
前記処理の一部が行われた前記鋳型が前記第2位置に搬送されたタイミングから前記静止時間内に、前記第2位置に搬送され前記処理の一部が行われた前記鋳型に対して前記処理装置が前記処理のうちの残余の処理を行うステップと、
を含む、鋳型処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋳型処理システム及び鋳型処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鋳型搬送手段と識別表示形成用ツールとを備える鋳型造型装置を開示する。鋳型造型装置は、鋳型搬送手段によって順次搬送される鋳型に識別表示形成用ツールを押し付けて鋳型に識別表示を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-11245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、所定の静止時間で間欠的に鋳型を搬送する搬送ラインにおいて、ライン上の搬送される鋳型に処理を行うことが考えられる。この場合、搬送に影響を与えずに処理するためには所定の静止時間内に処理を完了する必要がある。処理装置が所定の静止時間内に処理を行えない場合には、複数の処理装置を搬送ラインに沿って並べて、複数の処理装置それぞれが処理を分担することが考えられるが、これでは構造が複雑になる。本開示は、鋳型の搬送に影響を与えることなく、簡易な構成で鋳型に処理を行う技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る鋳型処理システムは、所定の静止時間で間欠的に鋳型を搬送する搬送ラインと、搬送ライン上の鋳型に処理を行う処理装置と、処理装置を搬送ラインに沿って搬送する搬送装置と、処理装置及び搬送装置を制御する制御部とを備える。制御部は、搬送装置を制御して処理装置を搬送ラインの第1位置に対応した位置に配置させ、処理装置を制御して、鋳型が第1位置に搬送されたタイミングから静止時間内に第1位置に搬送された鋳型に対して処理の一部を行う。制御部は、処理の一部の完了後に搬送装置を制御して処理装置を搬送ラインにおいて第1位置よりも下流の第2位置に対応する位置へ移動させ、処理装置を制御して、処理の一部が行われた鋳型が第2位置に搬送されたタイミングから静止時間内に、第2位置に搬送され処理の一部が行われた鋳型に対して処理のうちの残余の処理を行う。
【0006】
この鋳型処理システムでは、鋳型は所定の静止時間で間欠的に搬送ライン上を搬送される。鋳型に処理を行う処理装置は、搬送ラインの第1位置に対応する位置へ搬送装置によって配置される。鋳型が第1位置に搬送されると、第1位置に搬送されたタイミングから静止時間内に、第1位置に搬送された鋳型に対して処理の一部が処理装置によって行われる。処理の一部の完了後、処理装置は、搬送ラインの第2位置に対応する位置へ搬送装置によって移動される。鋳型が第2位置に搬送されると、第2位置に搬送されたタイミングから静止時間内に、処理の一部が行われた鋳型に対して処理のうちの残余の処理が処理装置によって行われる。このように、処理装置は、鋳型と共に移動し、鋳型が第1位置に位置している間に完了できなかった処理を、鋳型が下流の第2位置へ移動した後に続けて行える。つまり、この鋳型処理システムは、静止時間以上の時間が必要な処理であっても、処理を分割して行うことによって静止時間を延長することを回避できる。さらに、この鋳型処理システムにおいては、処理装置が鋳型と共に移動するため、複数の処理装置を用意する必要が無い。よって、この鋳型処理システムは、鋳型の搬送に影響を与えることなく、簡易な構成で鋳型に処理を行える。
【0007】
一実施形態においては、処理装置は鋳型に識別子を刻印する刻印装置であってもよい。
【0008】
一実施形態においては、処理装置は鋳型にガス抜き穴を設けるガス穴明け装置であってもよい。
【0009】
一実施形態においては、第1位置及び第2位置は隣接し、搬送ラインは、複数の鋳型を搬送し、複数の鋳型は、処理が行われる第1鋳型と処理が行われない第2鋳型とを含み、搬送ラインは、第1鋳型と第2鋳型とを交互に順次搬送し、制御部は、第1鋳型に対する残余の処理の完了後に搬送装置を制御して処理装置を第1位置に対応する位置へ戻し、第1位置へ次に搬送される第1鋳型に対して処理の一部を行ってもよい。第1鋳型と第2鋳型とが交互に順次搬送されることで、第1位置には第1鋳型の後に第2鋳型が配置され、第2位置には第2鋳型の後に第1鋳型が配置される。つまり、第1位置及び第2位置に同時に第1鋳型が配置されないことから、処理装置は、第1位置に対応する位置及び第2位置に対応する位置を行き来するだけで、順次搬送される第1鋳型それぞれに処理を行える。
【0010】
本開示の他の側面に係る鋳型処理方法は、鋳型処理システムによる鋳型処理方法である。鋳型処理システムは、所定の静止時間で間欠的に鋳型を搬送する搬送ラインと、搬送ライン上の鋳型に処理を行う処理装置と、処理装置を搬送ラインに沿って搬送する搬送装置とを備える。鋳型処理方法は、搬送装置が処理装置を第1位置に対応した位置に配置させるステップと、鋳型が搬送ラインの第1位置に搬送されたタイミングから静止時間内に、第1位置に搬送された鋳型に対して処理装置が処理の一部を行うステップと、処理の一部の完了後に搬送装置が処理装置を搬送ラインにおいて第1位置よりも下流の第2位置に対応する位置へ移動させるステップと、処理の一部が行われた鋳型が第2位置に搬送されたタイミングから静止時間内に、第2位置に搬送され処理の一部が行われた鋳型に対して処理装置が処理のうちの残余の処理を行うステップとを含む。
【0011】
この鋳型処理方法では、鋳型は所定の静止時間で間欠的に搬送ライン上を搬送される。鋳型に処理を行う処理装置は、搬送ラインの第1位置に対応する位置へ搬送装置によって配置される。鋳型が第1位置に搬送されると、第1位置に搬送されたタイミングから静止時間内に、処理装置によって第1位置に搬送された鋳型に対して処理の一部が行われる。処理の一部の完了後に処理装置は、搬送ラインの第2位置に対応する位置へ搬送装置によって移動される。鋳型が第2位置に搬送されると、第2位置に搬送されたタイミングから静止時間内に、処理装置によって第1位置に搬送され処理の一部が行われた鋳型に対して処理のうちの残余の処理が行われる。このように、処理装置は、鋳型と共に移動し、鋳型が第1位置に静止している間に完了できなかった処理を、鋳型が下流の第2位置へ移動した後に続けて行える。つまり、この鋳型処理システムは、静止時間以上の時間が必要な処理であっても、処理を分割して行うことによって静止時間を延長することを回避できる。さらに、この鋳型処理システムにおいては、処理装置が鋳型と共に移動するため、複数の処理装置を用意する必要が無い。よって、この鋳型処理システムによる鋳型処理方法は、鋳型の搬送に影響を与えることなく、簡易な構成で鋳型に処理を行える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、鋳型の搬送に影響を与えることなく、簡易な構成で鋳型に処理を行う技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る鋳造システムの一例を概略的に示す構成図である。
図2】第1位置に配置された処理装置が鋳型に処理を行う一例を示す鋳型処理システムの断面図である。
図3】第2位置に移動された処理装置が鋳型に処理を行う一例を示す鋳型処理システムの断面図である。
図4】第2位置から第1位置に移動された処理装置が鋳型に処理を行う一例を示す鋳型処理システムの断面図である。
図5】鋳型処理システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図6】上型への処理から下型への処理へ変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。
図7】上型への処理から下型への処理へ変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。
図8】上型への処理から下型への処理へ変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。
図9】下型への処理から上型への処理へ変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。
図10】下型への処理から上型への処理へ変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。
図11】下型への処理から上型への処理へ空枠を用いて変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。
図12】下型への処理から上型への処理へ空枠を用いて変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。
図13】下型への処理から上型への処理へ空枠を用いて変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。
図14】処理装置及び搬送装置が他の搬送手段によって移動される場合における鋳型処理システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0015】
[鋳造システムの一例]
図1は、実施形態に係る鋳型処理システムが備わる鋳造システムの一部の一例を概略的に示す構成図である。図1に示される鋳造システム1は、鋳物を製造するためのシステムである。鋳造システム1は、造型機2、搬送ライン3、鋳型処理システム4、注湯機5、ライン制御部6及び枠合わせ装置7を備える。図中のX方向及びY方向が水平方向であり、Z方向が垂直方向である。X方向、Y方向及びZ方向は、3次元空間の直交座標系における互いに直交する軸方向である。
【0016】
造型機2は、鋳型Mを製造する装置である。造型機2は、鋳枠Fを用いて鋳型Mを形成する。造型機2は、ライン制御部6と通信可能に接続される。造型機2は、ライン制御部6から造型開始信号を受信した場合、造型エリアにおいて鋳型Mの製造を開始する。造型機2は、製品の模型であるパターンが配置された鋳枠F内に砂(鋳物砂)を投入し、鋳枠F内の砂を加圧して固める。造型機2は、固められた砂からパターンを取り出すことにより鋳型Mを形成する。鋳型Mは、一対で構成される上型M1及び下型M2を含む。上型及び下型は、枠合わせされた状態で注湯される。造型機2は、造型結果信号をライン制御部6に送信する。造型結果信号は、造型機2が正常に動作したか否かを示す信号である。
【0017】
搬送ライン3は、鋳型を上流から下流に搬送する設備である。搬送ライン3は、造型機2から鋳型Mを受け取り、下流の注湯機5に向けて鋳型Mを搬送する。一例として、搬送ライン3は、上型M1と下型M2とを交互に搬送する。搬送ライン3は、例えば、ローラコンベヤ、レール、鋳型M(上型M1又は下型M2)及び鋳枠Fが載置されレール上を走行する台車、造型機2側に配置されたプッシャ装置、及び、注湯機5側に配置されたクッション装置などを有してもよい。搬送ライン3がローラコンベアを有する場合、鋳枠Fにはローラ走行面が設けられる。ローラコンベヤ又はレールは、造型機2から注湯機5に向けて直線状に延びる。ローラコンベヤ又はレールは、直線状に延びる場合に限定されず、例えば階段状に延びていてもよい。ローラコンベヤ又はレールは、造型機2と注湯機5との間で一筆書き状に延びていてもよい。搬送ライン3は、ローラコンベヤ又はレール上に等間隔で配列された複数の鋳型M及び鋳枠Fを造型機2から注湯機5に向けて順次搬送する。搬送ライン3は、間欠駆動され、鋳型M及び鋳枠Fを所定の枠分ずつ搬送する。所定の枠分は1枠でもよいし複数枠でもよい。搬送ライン3は、ライン制御部6と通信可能に接続される。搬送ライン3は、ライン制御部6から枠送り信号を受信すると、複数の鋳型M及び鋳枠Fを所定の枠分搬送する。搬送ライン3は、所定の枠分の搬送を完了すると、ライン制御部6に枠送り完了信号を送信する。搬送ライン3は、搬送された鋳型M及び鋳枠Fの位置決めを完了したときに、ライン制御部6に枠送り完了信号を送信してもよい。
【0018】
鋳型処理システム4は、搬送ライン3に設けられ、搬送ライン3上の鋳型Mに対して処理を行う。処理は、加工、付加及び測定などのことである。鋳型処理システム4は、ライン制御部6と通信可能に接続され得る。鋳型処理システム4、搬送ライン3及びライン制御部6は、協働して動作してもよい。鋳型処理システム4は、例えば、刻印装置、湯口成形装置、ガス穴明け装置、サンドカット装置、モールドシール施工装置、中子セット装置、塗型塗布装置、鋳型強度計測装置及び鋳型寸法計測装置などの処理装置10を含んでもよい。刻印装置は、レーザ刻印装置、打刻式刻印装置又は切削式刻印装置を含んでもよい。鋳型処理システム4の詳細は後述する。
【0019】
鋳型処理システム4が中子セット装置ではない場合、造型機2と注湯機5との間には、中子セット場Wが設けられてもよい。中子セット場Wには、作業者が駐留しており、鋳型Mに中子をセットする。または、中子セット装置が鋳型Mに中子を自動でセットしてもよい。一対の上型M1と下型M2とは、中子がセットされた後に枠合わせ装置7によって枠合わせされる。
【0020】
注湯機5は、鋳型Mに溶湯を流し込む装置である。注湯機5は、ライン制御部6と通信可能に接続される。注湯機5は、ライン制御部6から枠送り完了信号を受信した場合、注湯エリアに位置する枠合わせされた鋳型Mを注湯対象として、当該鋳型Mに溶湯を流し込む。注湯機5は、ライン制御部6から鋳型情報を受信し、鋳型情報に基づいた条件で注湯を行う。鋳型情報は、例えば、製品重量、鋳込み重量及び製品の識別情報などである。注湯された鋳型Mは、搬送ライン3により後工程を行うエリアへと搬送される。
【0021】
ライン制御部6は、鋳造システム1を統括制御するコントローラである。ライン制御部6は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)として構成される。ライン制御部6は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(RandomAccess Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス、キーボード、ディスプレイなどの入出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置とを含むコンピュータシステムとして構成されてもよい。ライン制御部6は、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、ライン制御部6の機能を実現する。
【0022】
ライン制御部6は、搬送ライン3を制御して所定の静止時間で間欠的に鋳型Mを搬送する。静止時間は、鋳型Mが搬送ライン3上で静止している時間であり、鋳型Mが移動する時間と交互になるように予め定められる。例えば、搬送ライン3は、ローラコンベア上の鋳型Mを、1枠分だけ下流へ搬送し、静止させる。搬送ライン3は、所定の静止時間が経過した後に、ローラコンベア上の鋳型Mを、1枠分だけ下流へ搬送し、静止させる。搬送ライン3は、鋳型Mの搬送と静止とを、所定の静止時間に基づいて繰り返し行う。
【0023】
[鋳型処理装置の詳細]
図2は、第1位置に配置された処理装置が鋳型に処理を行う一例を示す鋳型処理システムの断面図である。鋳型処理システム4は、搬送ライン3、処理装置10、搬送装置20及び制御部30を備える。搬送ライン3は、鋳型Mを搬送する一例として、上型M1Aと下型M2Aとを交互に搬送する。
【0024】
処理装置10は、搬送ライン3上の鋳型Mに処理を行う。一例として、処理装置10が、レーザ刻印装置である場合について説明する。処理装置10は、レーザ光Lを鋳型Mへ照射して、鋳型に識別子を刻印する。識別子とは対象物に付与される文字、数字又は記号などのことであり、刻印するとは、文字、数字又は記号などを鋳型に付与することである。以下では、処理装置10が行う処理の一例として、上型M1A(第1鋳型の一例)に対して刻印する刻印処理を説明する。
【0025】
処理装置10は、レーザ光Lを刻印予定箇所で集束させる。処理装置10は、レーザ光を発生させる光源(不図示)を有する。処理装置10は、一例として、ガルバノミラー(不図示)及び集束レンズ(不図示)を有し、レーザ光Lの照射位置及び焦点距離を調整する。処理装置10は、レーザ光Lの焦点距離を上型M1Aの表面の処理予定位置P1に集束させて識別子を刻印する。処理予定位置P1は、上型M1Aの予め定められた範囲に設定される。
【0026】
処理装置10は、搬送ライン3上で静止する上型M1Aの位置に対応して配置される。図2では、一例として、処理装置10は、上型M1Aの上方に位置するように配置される。処理装置10は、上型M1Aの上面に設けられる処理予定位置P1に向かって処理を行う。処理装置10は、搬送ライン3の下方に位置するように配置されてもよい。この場合、処理装置10は、上型M1Aの下面に設けられる処理予定位置に向かって処理を行う。
【0027】
搬送装置20は、処理装置10を搬送ライン3に沿って搬送する。搬送装置20は、一例として、ケース11内のフレーム部材12に設けられる3軸ロボットである。処理装置10が搬送ライン3の上方に配置される場合、搬送装置20は、処理装置10の上方に設けられ、処理装置10を搬送可能に支持する。搬送装置20は、処理装置10が処理を行う際に、処理装置10の位置を調整してもよい。例えば、搬送装置20は、処理装置10が、処理予定位置P1の上方に位置するように、X方向、Y方向及びZ方向を調整してもよい。処理装置10が搬送ライン3の下方に配置される場合、搬送装置20は、処理装置10の下方に設けられてもよい。
【0028】
制御部30は、処理装置10及び搬送装置20を制御する。制御とは、位置及び動作を決定することをいう。制御部30は、一例としてPLCとして構成される。制御部30は、上述したコンピュータシステムとして構成されてもよい。制御部30は、ケース11の外側に配置されてもよいし、ケース11の内側に配置されても構わない。制御部30は、ライン制御部6と通信可能に接続されてもよい。
【0029】
搬送ライン3上には、鋳型Mが静止する位置が設けられる。図2では、一例として、ケース11の内部に第1位置B1及び第2位置B2が設けられる。第1位置B1は第2位置B2の上流に設けられ、第2位置B2は第1位置B1の下流に設けられる。第1位置B1及び第2位置B2は隣接している。搬送ライン3上を上流から搬送される鋳型Mは、第1位置B1において静止する。
【0030】
制御部30は、搬送装置20を制御して処理装置10を第1位置B1に対応する位置へ配置する。第1位置B1に対応する位置とは、第1位置B1に搬送された上型M1Aに対して処理装置10が処理を行うことが可能な位置である。制御部30は、処理装置10が第1位置B1に対応する位置へ配置され、第1位置B1に上型M1Aが搬送されたタイミングから処理装置10に処理を開始させる。制御部30は、検出器(不図示)などに基づいて、上型M1A及び処理装置10が配置されたことを検知してもよい。
【0031】
処理装置10は、第1位置B1において、上型M1Aに対して処理の一部を静止時間内に行う。処理は、上型M1Aに対して予め設定され、処理の一部とは、当該処理に含まれる部分的な工程である。例えば、上型M1Aに2つの製品部が設けられ、上型M1Aに対して2つの製品部それぞれを処理することが予め設定されている場合、そのうち1つの製品部に対する処理が、処理の一部となる。製品部は、パターンから製品形状が転写された部分のことをいう。処理の一部は、上型M1Aが第1位置B1に静止する静止時間内に完了するように設定される。換言すれば、上型M1Aに対して設定された処理は、静止時間内に完了可能な複数の処理に分割される。制御部30は、処理の一部が完了したことに応じて、処理装置10を下流の第2位置B2に搬送する。
【0032】
図3は、鋳型処理システムが処理装置を下流に搬送して処理を行う一例を示す断面図である。搬送ライン3は、所定の静止時間の経過後にローラコンベア上の鋳型Mを一斉に1枠搬送する。上型M1Aは、第1位置B1から第2位置B2へ搬送される。上型M1Aと対になる下型M2A(第2鋳型の一例)は、上流から第1位置B1へ搬送される。下型M2Aは、処理予定位置P1を有さないため、処理装置10による処理は行われない。
【0033】
制御部30は、処理装置10が第2位置B2に対応する位置へ配置され、第2位置B2に上型M1Aが搬送されたタイミングから処理装置10に処理を開始させる。第2位置B2に上型M1A及び処理装置10が配置されるとは、第2位置B2内の予め定められた位置に上型M1Aが静止して、静止した上型M1Aに処理が可能な位置に処理装置10が搬送されたことをいう。制御部30は、検出器(不図示)などに基づいて、上型M1A及び処理装置10が配置されたことを検出してもよい。
【0034】
処理装置10は、第2位置B2において、上型M1Aに対して残余の処理を静止時間内に行う。残余の処理とは、上型M1Aに対して予め設定された処理から、上述した処理の一部を少なくとも除いた処理である。例えば上述のように、上型M1Aに2つの製品部が設けられ第1位置B1において1つの製品部に対する処理が行われた場合、処理が行われていない残りの1つの製品部に対する処理が、残余の処理である。残余の処理は、上型M1Aが第2位置B2に静止する静止時間内に完了するように設定される。第2位置B2において、処理装置10は、上型M1Aに対する処理を全て完了する。
【0035】
図4は、鋳型処理システムが処理装置を上流に搬送して処理を行う一例を示す断面図である。制御部30は、上型M1Aに対するすべての処理を完了した処理装置10を第1位置B1に対応する位置へ戻す。搬送ライン3は、ローラコンベア上の鋳型Mを一斉に1枠搬送する。上型M1Aは、第2位置B2から下流へ搬送される。上型M1Aと対になる下型M2Aは、第1位置B1から第2位置B2へ搬送される。処理が行われていない新たな上型M1Aが、上流から第1位置B1へ搬送される。制御部30は、新たな上型M1Aが第1位置B1へ搬送されたタイミングから処理装置10に処理を開始させる。処理装置10は、第1位置B1において、新たな上型M1Aに対して処理の一部を静止時間内に行う。
【0036】
上述のように、処理装置10は、第1位置B1と第2位置B2との間を往復して、所定の静止時間で間欠的に搬送される鋳型Mの上型M1Aに対して繰り返し処理を行う。この鋳型処理システム4は、鋳型Mの搬送に影響を与えることなく、簡易な構成で鋳型Mに処理を行える。
【0037】
[鋳型処理システムの動作]
図5は、鋳型処理システムの動作の一例を示すフローチャートである。図5に示されるフローチャートは、例えば、作業員の開始指示に基づいて開始される。最初に、搬送装置20は、処理装置10を第1位置B1に対応する位置に配置する(ステップS10)。制御部30が、搬送装置20を制御して処理装置10を第1位置B1に対応する位置に配置してもよい。
【0038】
次に、鋳型Mが第1位置B1に搬送されたタイミングから静止時間内に、第1位置B1に搬送された鋳型Mに対して処理装置10が処理の一部を行う(ステップS20)。制御部30が、処理装置10を制御して静止時間内に処理の一部を行わせてもよい。
【0039】
次に、処理の一部の完了後に搬送装置20が処理装置10を第2位置B2に対応する位置へ移動させる(ステップS30)。制御部30が、搬送装置20を制御して処理装置10を第2位置B2に対応する位置へ移動させてもよい。
【0040】
最後に、処理の一部が行われた鋳型Mが第2位置B2に搬送されたタイミングから静止時間内に、第2位置B2に搬送され処理の一部が行われた鋳型Mに対して処理装置10が処理のうちの残余の処理を行う(ステップS40)。制御部30が、処理装置10を制御して静止時間内に残余の処理を行わせてもよい。
【0041】
図6図8は、上型への処理から下型への処理へ変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。鋳型処理システム4は、例えばパターンが変更されたときに、上型への処理から下型への処理へ変更する。搬送ライン3を搬送される鋳型Mは、一例として、処理が行われる上型M1A及び処理が行われない下型M2Aの組み合わせ(図6参照)から、処理が行われない上型M1B及び処理が行われる下型M2B(図8参照)の組み合わせに変更される。下型M2Bの上面には、処理予定位置P2(図8参照)が設けられる。図6において、残余の処理が行われる上型M1Aは、上型M1A及び下型M2Aの組み合わせから上型M1B及び下型M2Bの組み合わせに変更される直前の上型M1Aである。
【0042】
図6に示される状態において上型M1Aに残余の処理が行われた後、図7に示される状態となる。この場合、第1位置B1には、処理が不要な上型M1Bが配置される。処理装置10は、上型M1Aに対して行っていた処理を開始せず、第1位置B1に対応する位置へ配置された状態で待機する。
【0043】
処理装置10が待機した後に、図8に示される状態となる。制御部30は、下型M2Bが第1位置B1へ搬送されたタイミングから処理装置10に処理を開始させる。処理装置10は、第1位置B1において、下型M2Bに対して処理の一部を静止時間内に行う。制御部30は、処理の一部が完了したことに応じて、処理装置10を下流の第2位置B2に搬送する。
【0044】
搬送ライン3は、静止時間の経過後にローラコンベア上の鋳型Mを一斉に1枠搬送する。下型M2Bは、第1位置B1から第2位置B2へ搬送される。処理装置10は、第2位置B2において、下型M2Bに対して残余の処理を静止時間内に行う(不図示)。これらの動作は、ライン制御部6が、造型機2のパターン変更情報に基づいて制御してもよい。搬送ライン3に設けられる検出部(不図示)などが、パターンの変更を検出してもよい。上述のように、処理装置10は、第1位置B1と第2位置B2との間を往復して、所定の静止時間で間欠的に搬送される鋳型Mの下型M2Bに対して繰り返し処理を行う。
【0045】
以上、図6図8に示されるように、鋳型処理システム4は、パターンの変更によって処理が行われない鋳型Mが連続する場合でも、搬送ライン3の搬送に影響を与えることなく、鋳型Mに処理を行うことができる。
【0046】
図9及び図10は、下型への処理から上型への処理へ変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。鋳型処理システム4は、例えばパターンが変更されたときに、下型への処理から上型への処理へ変更する。図9に示されるように、第1位置B1及び第2位置B2には、それぞれ処理が必要な鋳型Mが配置される。一例として、第2位置B2に配置される下型M2Bは、処理予定位置P2を有する。第1位置B1に配置される上型M1Aは処理予定位置P1を有する。下型M2Bと上型M1Aとは、対にならない下型と上型である。第2位置B2において、処理装置10は、下型M2Bに対して残余の処理を完了する。
【0047】
続いて、図10に示されるように、制御部30は、処理装置10が全部の処理を完了したことに応じて、処理装置10を第1位置B1に移動する。このとき、搬送ライン3は、ローラコンベア上に並ぶ鋳型Mを搬送しない。処理予定位置P1を有する上型M1Aは、第1位置B1に留まる。換言すれば、鋳型Mの静止時間が延長される。これらの動作は、ライン制御部6が、造型機2のパターン変更情報に基づいて制御してもよい。搬送ライン3に設けられる検出部(不図示)などが、パターンの変更を検出してもよい。制御部30は、処理装置10が第1位置B1に対応する位置へ移動されたタイミングから処理装置10に処理を開始させる。処理装置10は、第1位置B1において、上型M1Aに対して処理の一部を延長された静止時間内に行う。制御部30は、処理の一部が完了したことに応じて、処理装置10を下流の第2位置B2に搬送する。
【0048】
搬送ライン3は、延長された静止時間の経過後にローラコンベア上の鋳型Mを一斉に1枠搬送する。上型M1Aは、第1位置B1から第2位置B2へ搬送される。処理装置10は、第2位置B2において、上型M1Aに対して残余の処理を所定の静止時間内に行う(不図示)。上述のように、パターンが変更された後の処理装置10は、第1位置B1と第2位置B2との間を往復して、所定の静止時間で間欠的に搬送される鋳型Mの上型M1Aに対して繰り返し処理を行う。
【0049】
以上、図9及び図10に示されるように、鋳型処理システム4は、搬送ライン3の搬送を一時的に停止することで、パターンの変更によって処理が行われる鋳型Mが連続する場合でも、鋳型Mに処理を行うことができる。
【0050】
以下では、搬送ライン3の搬送が停止しないように、下型への処理から上型への処理へ変更する一例を説明する。図11図13は、空枠を用いて下型への処理から上型への処理へ変更する場面における鋳型処理システムの断面図である。空枠とは、鋳型Mが造型されない鋳枠Fを指す。一例として、図11に示されるように、第2位置B2に処理が必要な下型M2Bが配置され、第1位置B1には処理が必要な鋳型Mは配置されない。第2位置B2に配置される下型M2Bは処理予定位置P2を有する。第1位置B1及び第1位置B1と隣り合う上流の位置には鋳枠F(空枠)が配置される。第2位置B2において、処理装置10は、下型M2Bに対して残余の処理を完了する。
【0051】
次に、図12に示されるように、搬送ライン3は、ローラコンベア上の鋳型M及び鋳枠Fを一斉に1枠搬送する。第2位置B2に配置されていた下型M2Bは、第2位置B2の下流へ搬送される。第1位置B1に配置されていた鋳枠Fは、第2位置B2へ搬送される。第1位置B1の上流に配置されていた鋳枠Fは、第1位置B1へ搬送される。処理装置10は、処理を開始せず、第1位置B1に対応する位置へ配置された状態で待機する。
【0052】
続いて、図13に示されるように、搬送ライン3は、ローラコンベア上の鋳型M及び鋳枠Fを一斉に1枠搬送する。鋳枠Fは、第2位置B2から下流へ搬送される。第1位置B1に配置されていた鋳枠Fは、第2位置B2へ搬送される。第1位置B1の上流に配置されていた上型M1Aは、第1位置B1へ搬送される。制御部30は、上型M1Aが第1位置B1へ搬送されたタイミングから処理装置10に処理を開始させる。処理装置10は、第1位置B1において、パターンが変更された上型M1Aに対して処理の一部を静止時間内に行う。この場合、静止時間は延長されない。制御部30は、処理の一部が完了したことに応じて、処理装置10を下流の第2位置B2に対応する位置へ搬送する。
【0053】
搬送ライン3は、所定の静止時間の経過後にローラコンベア上の鋳型M及び鋳枠Fを一斉に1枠搬送する。上型M1Aは、第1位置B1から第2位置B2へ搬送される。処理装置10は、第2位置B2において、上型M1Aに対して残余の処理を所定の静止時間内に行う(不図示)。上述のように、パターンが変更された後の処理装置10は、第1位置B1と第2位置B2との間を往復して、所定の静止時間で間欠的に搬送される鋳型Mの上型M1Aに対して繰り返し処理を行う。
【0054】
以上、図11図13に示されるように、鋳型処理システム4は、搬送ライン3に空枠を搬送させることで、処理が行われる鋳型Mが連続する並びを、処理が行われない鋳型Mが連続する並びに変更できる。
【0055】
[実施形態のまとめ]
鋳型処理システム4及び鋳型処理方法によれば、鋳型Mは所定の静止時間で間欠的に搬送ライン3上を搬送される。鋳型Mに処理を行う処理装置10は、鋳型Mが静止する搬送ライン3上の第1位置B1に対応する位置へ搬送装置20によって配置される。鋳型Mが第1位置B1に搬送されると、第1位置B1に搬送されたタイミングから静止時間内に、処理装置10によって第1位置B1に搬送された鋳型Mに対して処理の一部が行われる。処理の一部の完了後に処理装置10は、鋳型Mが静止する搬送ライン3上の第2位置B2に対応する位置へ搬送装置20によって移動される。鋳型Mが第2位置B2に搬送されると、第2位置B2に搬送されたタイミングから静止時間内に、処理装置10によって第1位置B1に搬送され処理の一部が行われた鋳型Mに対して処理のうちの残余の処理が行われる。このように、処理装置10は、鋳型Mと共に移動し、鋳型Mが第1位置B1に静止している間に完了できなかった処理を、鋳型Mが下流の第2位置B2へ移動した後に続けて行える。つまり、この鋳型処理システム4は、静止時間以上の時間が必要な処理であっても、処理を分割して行うことによって静止時間を延長することを回避できる。さらに、この鋳型処理システム4においては、処理装置10が鋳型Mと共に移動するため、複数の処理装置を用意する必要が無い。よって、この鋳型処理システム4は、鋳型Mの搬送に影響を与えることなく、簡易な構成で鋳型Mに処理を行える。
【0056】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記の例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0057】
処理装置10は、ガス穴明け装置であってもよい。ガス穴明け装置は、鋳型Mにガス抜き穴を設ける穿設処理を行う。ガス抜き穴は、鋳型の内部と外部とを貫通する孔である。注湯後に鋳型Mの内部で発生するガスは、ガス抜き穴によって、鋳型Mの外部へ放出される。ガス抜き穴は、ガス穴明け装置が有する針又はドリルなどによって穿設される。
【0058】
搬送装置20は、3軸ロボットなどの直交ロボットに限定されない。搬送装置20は、例えば、多関節ロボットなどの多軸ロボット、スカラーロボット及びパラレルリンクロボットであってもよい。
【0059】
処理装置10及び搬送装置20は、他の搬送手段によって一体として移動されてもよい。図14は、処理装置10及び搬送装置20が他の搬送手段によって移動される場合における鋳型処理システム4の断面図である。図14に示される他の搬送手段は、一例として、台車装置40である。台車装置40は、伸縮部41、台車部42及び接続部材43を有する。搬送装置20の一例である3軸ロボットは、台車部42に載置される。X軸方向に伸縮する伸縮部41は、接続部材43によって接続された台車部42を移動させる。伸縮部41は、例えば、シリンダ機構(油圧、空圧又は電動)、又はラックアンドピニオン機構によって構成される。この場合、処理装置10及び搬送装置20は、第1位置B1と第2位置B2との間を、台車装置40によって一体として移動される。
【0060】
鋳型Mは、鋳枠F付きの鋳型に限定されず、例えば無枠の鋳型、自硬性鋳型、中子及び鋳型Mにセットされた中子であってもよい。
【0061】
搬送ライン3は、処理が必要な鋳型Mと処理が不要な鋳型Mを、交互に搬送しなくてもよい。例えば、搬送ライン3は、処理が必要な鋳型Mを必要な間隔を空けて間欠的に搬送してもよい。制御部30は、残余の処理の完了後に搬送装置20を制御して、処理装置10を、第1位置B1へ移動させなくてもよい。
【0062】
搬送ライン3における鋳型Mが静止する位置は、3つ以上あってもよい。一例として、搬送ライン3における鋳型Mが静止する位置は、第3位置を有してもよい。処理装置10が搬送される位置は、3つ以上あってもよい。処理装置10は、3つ以上の位置を跨いで移動してもよい。一例として、処理装置10は、第3位置に対応する位置に移動されてもよい。
【0063】
所定の静止時間内に処理を全て行える鋳型Mが搬送される場合、処理装置10は、移動されなくてもよい。また、所定の静止時間内に処理を全て行える鋳型Mが連続して搬送される場合、空枠は、搬送されなくてもよい。
【0064】
鋳型処理システム4は、搬送ライン3に捨て枠を搬送させることで、処理が行われる鋳型Mが連続する並びを、処理が行われない鋳型Mが連続する並びに変更してもよい。捨て枠とは、造型後に処理が行われない鋳型Mを指す。
【0065】
上述の実施形態では、鋳造システム1の一例として、上型M1Aを造型した後に下型M2Bを造型し、上型から下型への順番で造型及び搬送を繰り返す、上型先行の鋳造システム1について記載した。しかし、鋳造システム1は、変形例として、下型M2Bを造型した後に上型M1Aを造型し、下型から上型への順番で造型及び搬送を繰り返す、下型先行の鋳造システム1であってもよい。
【0066】
鋳型処理システム4は、鋳型Mを予め定められた作業位置に機械的に固定する位置決め部を備えてもよい。位置決め部は、第1位置B1及び第2位置B2の少なくとも一方に設けられる。一例として、位置決め部は、ピンを有する。ピンは、鋳型Mの進行方向に対して直交する方向に進退するくさび部材である。ピンは、先端に向かって細くなる形状を有する。鋳枠Fには、ピンと係合する穴が設けられる。穴の径はピンの径よりも若干大きい。穴は、底部に向かって徐々に径が小さくなる内面を有する。鋳型Mが予め定められた作業位置に搬入された場合、ピンは穴に挿入される。ピンと穴の内面とが係合することによって、搬送ライン3上の鋳型Mは予め定められた作業位置に正確に固定される。制御部30は、鋳型Mが固定されたことに応じて、処理装置10に処理を開始させてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…鋳造システム、2…造型機、3…搬送ライン、4…鋳型処理システム、5…注湯機、6…ライン制御部、M…鋳型、F…鋳枠、10…処理装置、20…搬送装置、30…制御部、B1…第1位置、B2…第2位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14