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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/38 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
H01H50/38 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020114971
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012847
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 亮太
(72)【発明者】
【氏名】川口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 航平
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-35561(JP,A)
【文献】特開2017-10719(JP,A)
【文献】特開2016-31803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/00-50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定端子と、
可動接触片と、
前記固定端子及び前記可動接触片のいずれか一方に配置される第1接点と、
前記第1接点と接触可能であり、前記固定端子及び前記可動接触片のいずれか他方に配置される第2接点と、
前記第1接点と前記第2接点とが接触する閉位置と、前記第1接点と前記第2接点とが開離した開位置とに前記可動接触片を移動させる可動機構と、
前記第1接点と前記第2接点との間で生じるアークにローレンツ力を作用させる磁界を発生させる磁石部と、
を備え、
前記磁石部は、前記アークに流れる電流が前記第2接点から前記第1接点に向かうときに第1方向に前記ローレンツ力が作用するように配置され、
前記第1接点及び前記第2接点のいずれか一方は、前記第1接点及び前記第2接点のいずれか他方よりも前記第1方向に突出し、
前記第1接点と前記第2接点とが接触した状態において、前記第1接点の中心位置と前記第2接点の中心位置とは、前記第1方向に互いにずれている、
電磁継電器。
【請求項2】
前記第1接点は、前記第2接点よりも前記第1方向に突出する、
請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記第2接点は、前記第1接点よりも前記第1方向と反対の第2方向に突出し、
前記磁石部は、前記アークに流れる電流が前記第1接点から前記第2接点に向かうときに前記第2方向に前記ローレンツ力が作用するように配置されている、
請求項2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記第1接点と前記第2接点とが開離した状態において、前記第1接点の中心位置と前記第2接点の中心位置とは、前記第1方向に互いにずれている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路を開閉する電磁継電器が知られている。例えば、特許文献1の電磁継電器は、固定端子と、固定端子に配置された固定接点と、可動接触片と、可動接触片に配置された可動接点と、を備えている。可動接点は、固定接点に接触可能であり、可動接点が固定接点に接触又は固定接点から開離することで、電気回路が開閉される。また、電磁継電器には、可動接点が固定接点から開離するときに発生するアークを伸長させるための永久磁石が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-142195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電磁継電器では、アークが発生したときに、固定接点及び可動接点の端部、或いは接点と端子との境界部分にアークが膠着して、アークの移動が阻害されるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、電磁継電器において、アークを迅速に移動させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、固定端子と、可動接触片と、第1接点と、第2接点と、可動機構と、磁石部とを備える。第1接点は、固定端子及び可動接触片のいずれか一方に配置される。第2接点は、第1接点と接触可能であり、固定端子及び可動接触片のいずれか他方に配置される。可動機構は、第1接点と第2接点とが接触する閉位置と、第1接点と第2接点とが開離した開位置とに可動接触片を移動させる。磁石部は、第1接点と第2接点との間で生じるアークにローレンツ力を作用させる磁界を発生させる。磁石部は、アークに流れる電流が第2接点から第1接点に向かうときに第1方向にローレンツ力が作用するように配置される。第1接点及び第2接点のいずれか一方は、第1接点及び第2接点のいずれか他方よりも第1方向に突出する。第1接点と第2接点とが接触した状態において、第1接点の中心位置と第2接点の中心位置とは、第1方向に互いにずれている。
【0007】
この電磁継電器では、例えば、第1接点が第2接点よりも第1方向に突出している場合、第1方向に位置する第1接点の端部までの距離が、第2接点の第1方向に位置する第2接点の端部までの距離よりも大きくなる。このため、第1接点側のアークの端部は、第2接点側のアークの端部よりも第1方向に移動する。これにより、アークに作用するローレンツ力の方向が変化して、第2接点が配置される端子(固定端子及び可動接触片のいずれか一方)に第2接点側のアークの端部が端子に移動し易くなる。すなわち、アークに作用するローレンツ力の方向が変化することで、第2接点が配置される端子に第2接点側のアークの端部を迅速に移動させることができる。その結果、第1方向にアークを迅速に移動させることができる。
【0008】
第1接点は、第2接点よりも第1方向に突出してもよい。この場合、アークに流れる電流が第2接点から第1接点に向かうときに、陰極側接点となる第1接点よりもアークの端部が移動し易い陽極側接点となる第2接点側のアークの端部が端子に移動する方向にローレンツ力が作用する。これにより、より効果的にアークの端部の一方を端子に移動させることができるので、さらにアークを迅速に移動させることができる。
【0009】
第2接点は、第1接点よりも第1方向と反対の第2方向に突出してもよい。磁石部は、アークに流れる電流が第1接点から第2接点に向かうときに第2方向にローレンツ力が作用するように配置されてもよい。この場合は、いずれの通電方向であっても、陽極側接点となる第1接点及び第2接点のいずれか一方の接点が配置される端子にアークの端部を迅速に移動させることができる。
【0010】
第1接点と第2接点とが開離した状態において、第1接点の中心位置と第2接点の中心位置とは、第1方向に互いにずれていてもよい。この場合においても、第1方向にアークを迅速に移動させることができる。
【0011】
本発明によれば、電磁継電器において、アークを迅速に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電磁継電器の断面模式図である。
図2】電磁継電器の断面模式図である。
図3】接点ケースの内部を上方から見た模式図である。
図4】可動接点が開位置にあるときの可動接点周辺を図3のL-L線で切断した断面模式図である。
図5】可動接点が閉位置にあるときの可動接点周辺を図3のL-L線で切断した断模式面図である。
図6】他の実施形態に係る接点ケースの内部を上方から見た模式図である。
図7】可動接点が開位置にあるときの可動接点周辺を図6のL1-L1線で切断した断面模式図である。
図8】他の実施形態に係る接点ケースの内部を上方から見た模式図である。
図9】他の実施形態に係る接点ケースの内部を上方から見た模式図である。
図10】他の実施形態に係る接点ケースの内部を上方から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について、図面を参照して説明する。 なお、図面を参照するときにおいて、説明を分かり易くするために図1における上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」として説明する。また、図1の紙面と直交する方向を前後方向として説明する。これらの方向は、説明の便宜上、定義されるものであって、電磁継電器100の配置方向を限定するものではない。
【0014】
図1及び図2は電磁継電器100の断面模式図である。電磁継電器100は、接点ケース2、接点装置3と、駆動装置4と、磁石部5とを備えている。
【0015】
接点ケース2は、略四角形の箱型であり、絶縁性を有する材料で形成されている。本実施形態では、接点ケース2は樹脂製である。接点ケース2内には、接点装置3が収容されている。
【0016】
図3は、接点ケース2の内部を上方から見た模式図である。接点ケース2は、第1~第4内側面2a~2dを含む。第1~第4内側面2a~2dのそれぞれは、前後左右に位置する接点ケース2の内側面である。第1内側面2a及び第2内側面2bは、前後方向に互いに対向して配置されている。第1内側面2a及び第2内側面2bは、上下方向及び左右方向に延びている。第3内側面2c及び第4内側面2dは、左右方向に互いに対向して配置されている。第3内側面2c及び第4内側面2dは、上下方向かつ前後方向に延びている。
【0017】
接点装置3は、固定端子6,7と、固定接点8a,8bと、可動接触片9と、可動接点10a,10bと、可動機構11とを含む。固定端子6,7、固定接点8a,8b、可動接触片9及び可動接点10a,10bは、導電性を有する材料で形成されている。本実施形態における固定接点8a及び可動接点10bは、第1接点の一例であり、本実施形態における固定接点8b及び可動接点10aは第2接点の一例である。
【0018】
固定端子6,7は、板状の端子であり、左右方向に延びている。固定端子6,7は、左右方向に互いに間隔を隔てて配置されている。固定端子6は、接点ケース2から左方に突出する外部接続部6aを含む。固定端子7は、接点ケース2から右方に突出する外部接続部7aを含む。
【0019】
固定接点8a,8bは、接点ケース2内に配置されている。固定接点8a,8bは、上下方向から見て、略矩形状である。固定接点8a,8bは、端部が面取りされていてもよい。固定接点8aは、固定端子6に配置されている。固定接点8aは、固定端子6の可動接触片9に対向する面から可動接触片9に向かって突出している。ここでは、固定接点8aは、固定端子6から上方に突出している。固定接点8bは、固定端子7に配置されている。固定接点8bは、固定端子7の可動接触片9に対向する面から可動接触片9に向かって突出している。
【0020】
可動接触片9は、一方向に長い板状部材であり、接点ケース2内で左右方向に延びている。本実施形態では、可動接触片9の長手方向は、左右方向と一致する。また、可動接触片9の短手方向は、前後方向と一致する。可動接触片9は、可動接点10a,10bと一体的に移動する。可動接触片9は、第1内側面2a及び第2内側面2bと前後方向に間隔を隔てて配置されている。可動接触片9と第1内側面2aとの間、及び可動接触片9と第2内側面2bとの間には、アークを伸長させるためのアーク伸長空間12a,12bが設けられている。
【0021】
可動接点10a,10bは、可動接触片9に配置されている。可動接点10a,10bは、上下方向から見て、略矩形状である。可動接点10a,10bは、端部が面取りされていてもよい。可動接点10a,10bは、固定接点8a,8bに接触する閉位置(図1に示す位置)と固定接点8a,8bから開離した開位置(図2に示す位置)とに移動可能である。可動接点10a,10bは、固定接点8a,8bに接触する接触方向Z1と開離する開離方向Z2とに移動可能である。本実施形態では、接触方向Z1及び開離方向Z2は、上下方向と一致する。
【0022】
可動接点10aは、固定接点8aと対向する位置に配置され、可動接触片9から固定接点8aに向かって突出している。可動接点10bは、固定接点8bと対向する位置に配置され、可動接触片9から固定接点8bに向かって突出している。
【0023】
可動機構11は、図1に示す閉位置と、図2に示す開位置とに可動接触片9を移動させる。可動機構11は、可動接触片9を介して可動接点10a,10bを移動させる。可動機構11は、駆動軸21と、第1保持部材22と、第2保持部材23と、接点バネ24とを含む。駆動軸21は、可動接触片9に連結される。駆動軸21は、上下方向に延びており、可動接触片9を上下方向に貫通している。駆動軸21は、接触方向Z1及び開離方向Z2に移動可能に設けられる。
【0024】
第1保持部材22は、可動接触片9よりも上方で駆動軸21に固定されている。第2保持部材23は、可動接触片9よりも下方で駆動軸21に固定されている。接点バネ24は、可動接触片9と第2保持部材23の間に配置されている。接点バネ24は、第2保持部材23を介して可動接触片9を接触方向Z1に付勢する。
【0025】
駆動装置4は、電磁力によって可動機構11を接触方向Z1及び開離方向Z2に移動させる。本実施形態では、駆動装置4は、駆動軸21を介して可動接触片9を接触方向Z1及び開離方向Z2に移動させる。駆動装置4は、コイル31と、可動鉄心32と、固定鉄心33と、ヨーク34と、復帰バネ35と、を含む。
【0026】
コイル31は、電圧が印加されて励磁されると、可動鉄心32を接触方向Z1に移動させる電磁力を発生させる。可動鉄心32は、駆動軸21に一体移動可能に連結されている。固定鉄心33は、可動鉄心32と対向する位置に配置されている。ヨーク34は、コイル31を囲むように配置されている。復帰バネ35は、可動鉄心32と固定鉄心33の間に配置されている。復帰バネ35は、可動鉄心32を開離方向Z2に付勢する。
【0027】
磁石部5は、固定接点8aと可動接点10aとの間、及び固定接点8bと可動接点10bとの間で生じるアークにローレンツ力F1,F2を作用させる磁界を発生させる。磁石部5は、アークに流れる電流が可動接点10aから固定接点8a(図3の紙面の奥から手前)に向かうときに、固定接点8aと可動接点10aとの間で生じるアークに第1方向D1にローレンツ力F1が作用するように配置されている。すなわち、第1方向D1は、固定接点8aと可動接点10aとの間で生じるアークが伸長される方向である。ただし、本実施形態では、アークに作用するローレンツ力F1の方向がアークの移動に伴い変化する。このため、より正確には、第1方向D1は、固定接点8aと可動接点10aとの間でアークが発生した時点のアークに作用するローレンツ力F1の方向を意味する。本実施形態における第1方向D1は、前方である。第1方向D1は、可動接触片9の短手方向に平行であり、可動接触片9から第1内側面2aに向かう方向である。
【0028】
磁石部5は、第1磁石5aと、第2磁石5bとを含む。第1磁石5a及び第2磁石5bは、永久磁石である。第1磁石5a及び第2磁石5bは、略矩形状であり、前後方向かつ上下方向に延びている。第1磁石5aは、固定端子6の下方で接点ケース2の外周に配置されている。第2磁石5bは、固定端子7の下方で接点ケース2の外周に配置されている。第1磁石5aは、第2磁石5bと左右方向に対向して配置されている。第1磁石5aと第2磁石5bとは、可動接触片9の長手方向に異極が互いに対向するように配置されている。第1磁石5aは、N極が接点ケース2に面して配置されている。第2磁石5bは、S極が接点ケース2に面して配置されている。
【0029】
このように配置された第1磁石5aと第2磁石5bとによって、第1磁石5aから第2磁石5bに向かう方向に磁束が流れる。すなわち、固定接点8a,8b及び可動接点10a,10bの周辺には、可動接触片9の長手方向と略平行な方向に磁束が流れる。したがって、例えば、可動接点10aから固定接点8aに向けて電流が流れる場合は、固定接点8aと可動接点10aとの間で生じるアークにローレンツ力F1が作用して、アークがアーク伸長空間12aに移動する。一方、固定接点8bと可動接点10bとの間で生じるアークには、第1方向D1と反対方向の第2方向D2にローレンツ力F2が作用する。すなわち、固定接点8bと可動接点10bとの間で生じるアークには、第2内側面2bに向かう方向にローレンツ力F2が作用して、アークがアーク伸長空間12bに移動する。なお、本実施形態では、特に断りがない限り、電流が流れる方向を可動接点10aから固定接点8aに向かう方向として説明する。したがって、可動接点10b側では、固定接点8bから可動接点10bに向かう方向に電流が流れる。
【0030】
次に、電磁継電器100の動作について説明する。駆動装置4が励磁されていない状態では、図1に示すように、可動接点10a,10bが開位置にある。駆動装置4が励磁されると、図2に示すように、可動接点10a,10bが開位置から閉位置に移動する。詳細には、コイル31に電圧が印加されると、可動鉄心32が復帰バネ35の弾性力に抗して接触方向Z1に移動する。可動鉄心32の接触方向Z1の移動に伴い、駆動軸21及び可動接触片9が接触方向Z1に移動することで、可動接点10a,10bが閉位置に移動して固定接点8a,8bに接触する。一方、コイル31への電圧の印加が停止されると、可動鉄心32が復帰バネ35の弾性力によって可動接触片9とともに開離方向Z2に移動することで、可動接点10a,10bが閉位置に移動する。
【0031】
次に、固定接点8aと可動接点10aの詳細について説明する。図4は、可動接点10aが開位置にあるときの可動接点10a周辺を図3のL-L線で切断した断面模式図である。図4では、固定接点8aと可動接点10aとの間で生じたアークが伸長されていく様子を模式的に示している。図5は、可動接点10aが閉位置にあるときの可動接点10a周辺を図3のL-L線で切断した断面模式図である。
【0032】
固定接点8aは、可動接点10aよりも第1方向D1(ここでは前方)に突出している。可動接点10aは、第1方向D1において、固定接点8aよりも短い。固定接点8aは、可動接点10aに対して第1方向D1にずれている。すなわち、固定接点8aは、可動接点10aに対してアークが伸長される方向(ローレンツ力F1と同じ方向)にずれている。
【0033】
図4及び図5に示すように、固定接点8aと可動接点10aとが接触した状態及び開離した状態において、固定接点8aの中心位置C1と可動接点10aの中心位置C2とは、第1方向D1に互いにずれている。固定接点8aの中心位置C1は、前後方向における固定接点8aの中心に位置している。可動接点10aの中心位置C2は、前後方向における可動接点10aの中心に位置している。図3に示すように、可動接点10aの移動方向からみて、固定接点8aの中心位置C1と可動接点10aの中心位置C2とは、第1方向D1に互いにずれている。すなわち、固定接点8aの中心位置C1は、可動接点10aの中心位置C2と上下方向に重ならない。本実施形態では、固定接点8aの中心位置C1は、可動接点10aの中心位置C2に対して第1方向D1にずれている。
【0034】
図4に示すように、固定接点8aと可動接点10aの間で生じたアークにローレンツ力F1が作用すると、固定接点8a側のアークの第1端部A1と、可動接点10a側のアークの第2端部A2とが第1内側面2aに近づく方向に移動する。このとき、固定接点8aが可動接点10aに対してアークが伸長される第1方向D1にずれているので、アークの第1端部A1は、アークの第2端部A2よりも第1内側面2aに近づく方向に移動する。これにより、アークの第1端部A1とアークの第2端部A2とが上下方向にずれるので、アークに作用するローレンツ力F1の方向が前方かつ開離方向Z2に向かう方向に変化する。すなわち、アークの第2端部A2が可動接点10aから可動接触片9に移動し易くなる方向にローレンツ力F1が作用する。これにより、可動接触片9にアークの第2端部A2を迅速に移動させることができる。その結果、第1方向D1にアークを迅速に移動させることができる。
【0035】
ここで、固定接点8aと可動接点10aの間で生じたアークは、固定接点8aの端部及び可動接点10aの端部において膠着し易いといった特性がある。また、アークは、陽極側接点よりも陰極側接点の方が移動し易いといった特性がある。陽極側接点及び陰極側接点は、電流が流れる方向によって定まる。具体的には、固定接点8aと可動接点10aとにおいて、電流が流れる方向の上流側に位置する接点が陽極側接点であり、下流側に位置する接点が陰極側接点である。したがって、可動接点10aから固定接点8aに向かう方向に電流が流れる場合は、可動接点10aが陽極側接点、固定接点8aが陰極側接点となる。本実施形態では、固定接点8a側のアークの第1端部A1よりも移動し易い可動接点10a側のアークの第2端部A2が可動接触片9に移動する方向にローレンツ力F1が作用する。これにより、より効果的にアークの端部を可動接触片9に移動させることができるので、さらにアークを迅速に移動させることができる。
【0036】
なお、可動接点10b側では、図3に示すように、陰極側接点である可動接点10bを陽極側接点である固定接点8bに対して第2方向D2にずらすことが好ましい。これにより、可動接点10a側と同様の効果を得ることができる。
【0037】
以上、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、接点ケース2、接点装置3及び駆動装置4の形状、或いは配置が変更されてもよい。前記実施形態では、プランジャ型の電磁継電器を例示して本発明を説明したが、例えば、ヒンジ型の電磁継電器に本発明を適用してもよい。ヒンジ型の電磁継電器の場合、固定端子7、固定接点8b及び可動接点10bに対応する構成は、省略されてもよい。また、可動接触片9が固定端子6,7に向けて引き込まれるように動作する電磁継電器に本発明を適用してもよい。
【0038】
前記実施形態では、固定接点8aが可動接点10aよりも第1方向D1に突出していたが、可動接点10aが固定接点8aよりも第1方向D1に突出する構成であってもよい。すなわち、前記実施形態における固定接点8aの形状を可動接点10aの形状にして、前記実施形態における可動接点10aの形状を固定接点8aの形状にしてもよい。この場合は、可動接点10aが第1接点の一例、固定接点8aが第2接点の一例となり、アークの第1端部A1をローレンツ力F1によって固定端子6に迅速に移動させることができる。
【0039】
図6は、他の実施形態に係る接点ケース2の内部を上方から見た模式図である。図7は、可動接点10aが開位置にあるときの可動接点10a周辺を図6のL1-L1線で切断した断面模式図である。図6及び図7に示すように、可動接点10aは、固定接点8aよりも第2方向D2に突出してもよい。なお、前記実施形態と同様に、固定接点8aは、可動接点10aよりも第1方向D1に突出している。磁石部5は、アークに流れる電流が固定接点8aから可動接点10a(図6の紙面の手前から奥)に向かうときに、固定接点8aと可動接点10aとの間で生じるアークに第2方向D2にローレンツ力F2が作用するように配置されている。磁石部5の構成は、前記実施形態と同様である。この場合は、アークに流れる電流が固定接点8aから可動接点10aに向かうときに、陽極側接点となる固定接点8aのアークの第1端部A1が固定端子6に移動する方向にローレンツ力F2が作用する。すなわち、通電方向が変化した場合であっても、陽極側接点となる固定接点8a又は可動接点10aが配置される固定端子6又は可動接触片9にアークの端部を迅速に移動させることができる。
【0040】
なお、可動接点10b側については、固定接点8bを可動接点10bに対して第1方向D1にずらすことが好ましい。これにより、可動接点10b側についても、可動接点10a側と同様の効果を得ることができる。
【0041】
磁石部5の構成は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、第1磁石5aと第2磁石5bは、可動接触片9の長手方向にN極が互いに対向するように配置されてもよい。すなわち、固定接点8a及び可動接点10a周辺に第1磁石5aから第2磁石5bに向かう方向に磁束が流れ、固定接点8b及び可動接点10b周辺に第2磁石5bから第1磁石5aに向かう方向に磁束が流れるように磁石部5が構成されてもよい。固定接点8a及び可動接点10aは、図6に示す構成と同じである。固定接点8b及び可動接点10bは、固定接点8a及び可動接点10bと同様の構成である。この場合は、通電方向が変化した場合であっても、可動接点10a側及び可動接点10b側において、常に陽極側接点が陰極側接点よりもアークが伸長される方向に短くなるので、アークの端部を迅速に移動させることができる。
【0042】
図9に示すように、第1磁石5aと第2磁石5bは、可動接触片9の長手方向にS極が互いに対向するように配置されてもよい。すなわち、固定接点8a及び可動接点10a周辺に第2磁石5bから第1磁石5aに向かう方向に磁束が流れ、固定接点8b及び可動接点10b周辺に第1磁石5aから第2磁石5bに向かう方向に磁束が流れるように磁石部5が構成されてもよい。固定接点8a,8b及び可動接点10a,10bは、図6に示す固定接点8b及び可動接点10bと同様の構成である。
【0043】
図10に示すように、可動接触片9の短手方向と略平行な方向に磁束が流れるように磁石部5が構成されてもよい。例えば、第1磁石5aと第2磁石5bとが可動接触片9の短手方向に対向して配置されてもよい。また、リレーが極性を有する構造の場合や、第2内側面2bから第1内側面2aに向かう方向に磁束が流れる構成の場合は、図10に示すうように、固定接点8a,8bと可動接点10a,10bをアークが伸長される方向(ここでは、左右方向)にずらして配置してもよい。この場合は、ローレンツ力F1,F2が作用する方向が可動接触片9の長手方向と平行になる。可動接点10aから固定接点8aに向かう方向に電流が流れる場合は、固定接点8aと可動接点10aとの間で生じるアークに対して、ローレンツ力F1が第3内側面2cに向かう方向に作用する。一方、固定接点8aから可動接点10aに向かう方向に電流が流れる場合は、固定接点8bと可動接点10bとの間で生じるアークに対して、ローレンツ力F2が第4内側面2dに向かう方向に作用する。この場合でも、常に陽極側接点が陰極側接点よりもアークが伸長される方向に短くなるので、アークの端部を迅速に移動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、電磁継電器において、アークを迅速に移動させることができる。
【符号の説明】
【0045】
5 磁石部
6 固定端子
7 可動接触片
8a 固定接点
10a 可動接点
11 可動機構
100 電磁継電器
D1 第1方向
D2 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10