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特許7380461足回り用配線モジュール及び足回り用配線モジュールの配索構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】足回り用配線モジュール及び足回り用配線モジュールの配索構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20231108BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60K7/00
H02G3/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020119752
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022024246
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】村田 高弘
(72)【発明者】
【氏名】山竹 尚文
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107659(JP,A)
【文献】特開平06-135253(JP,A)
【文献】特開2020-104766(JP,A)
【文献】特開2017-190117(JP,A)
【文献】特開2016-088269(JP,A)
【文献】特開2016-063608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 7/00
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側機器と車輪側機器とを接続する配線部材と、
前記配線部材を支持する支持部材と、
を備え、
前記配線部材は、第1線状伝送部材と、前記第1線状伝送部材よりも細い第2線状伝送部材とを含み、
前記支持部材は、前記配線部材の少なくとも一部において、前記第1線状伝送部材が前記第2線状伝送部材よりも操舵回転中心軸の近くに位置するように、前記配線部材を支持し、
前記支持部材は、前記配線部材の少なくとも一部が前記操舵回転中心軸に対して平行となるように、前記配線部材を支持し、
前記配線部材のうち前記操舵回転中心軸に対して平行な部分において、前記第1線状伝送部材が前記第2線状伝送部材よりも前記操舵回転中心軸の近くに位置する、足回り用配線モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の足回り用配線モジュールであって、
前記支持部材は、前記配線部材の少なくとも一部が前記操舵回転中心軸に沿うように、前記配線部材を支持し、
前記配線部材のうち前記操舵回転中心軸に沿う部分において、前記第1線状伝送部材が前記第2線状伝送部材よりも前記操舵回転中心軸の近くに位置する、足回り用配線モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の足回り用配線モジュールであって、
前記配線部材のうち前記操舵回転中心軸に沿う部分において、前記配線部材の横断面における最小包含円内を、前記操舵回転中心軸が通過する、足回り用配線モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の足回り用配線モジュールであって、
前記第1線状伝送部材は電源線であり、前記第2線状伝送部材は信号線である、足回り用配線モジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1つに記載の足回り用配線モジュールであって、
前記配線部材は、前記第1線状伝送部材を複数含み、
前記配線部材の少なくとも一部において、前記複数の第1線状伝送部材が束ねられており、前記第2線状伝送部材が前記操舵回転中心軸に対して前記複数の第1線状伝送部材よりも離れた位置で前記複数の第1線状伝送部材間の隙間に嵌っている、足回り用配線モジュール。
【請求項6】
車体側機器と車輪側機器とを接続する配線部材を備え、
前記配線部材の一部が操舵回転中心軸を経由し、
前記配線部材は、第1線状伝送部材と、前記第1線状伝送部材よりも細い第2線状伝送部材とを含み、
前記配線部材の少なくとも一部において、前記第1線状伝送部材が前記第2線状伝送部材よりも操舵回転中心軸の近くに位置し、かつ、前記配線部材の少なくとも一部が前記操舵回転中心軸に対して平行となるように、前記配線部材が配策され、
前記配線部材のうち前記操舵回転中心軸に対して平行な部分において、前記第1線状伝送部材が前記第2線状伝送部材よりも前記操舵回転中心軸の近くに位置する、足回り用配線モジュールの配策構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、足回り用配線モジュール及び足回り用配線モジュールの配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インホイールモータ用の動力ケーブルを開示している。3本の動力ケーブルの車体側端は、クランプ部材によってクランプされている。3本の動力ケーブルのモータ側端は、インホイールモータ駆動装置に設けられた動力ケーブル端子箱に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-65545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるインホイールモータ用の動力ケーブルのような足回り用配線モジュールは、操舵による車輪の回転に追随して繰り返し変形する。
【0005】
繰り返し変形に対する足回り用配線モジュールの耐性をさらに改善させることが要請されている。
【0006】
そこで、本開示は、繰り返し変形に対する足回り用配線モジュールの耐性をさらに改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の足回り用配線モジュールは、車体側機器と車輪側機器とを接続する配線部材と、前記配線部材を支持する支持部材と、を備え、前記配線部材は、第1線状伝送部材と、前記第1線状伝送部材よりも細い第2線状伝送部材とを含み、前記支持部材は、前記配線部材の少なくとも一部において、前記第1線状伝送部材が前記第2線状伝送部材よりも操舵回転中心軸の近くに位置するように、前記配線部材を支持する、足回り用配線モジュールである。
【0008】
また、本開示の足回り用配線モジュールの配索構造は、車体側機器と車輪側機器とを接続する配線部材を備え、前記配線部材の一部が操舵回転中心軸を経由するように配索されている、足回り用配線モジュールの配索構造である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、繰り返し変形に対する足回り用配線モジュールの耐性がさらに改善される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は実施形態に係る足回り用配線モジュールの配索構造を示す概略断面図である。
図2図2図1におけるII-II線概略断面図である。
図3図3図1のIII-III線における概略断面図である。
図4図4は変形例に係る配線部材を示す断面図である。
図5図5は変形例に係る配線部材を示す断面図である。
図6図6は変形例に係る配線部材を示す断面図である。
図7図7は変形例に係る配線部材を示す断面図である。
図8図8は変形例に係る配線部材を示す断面図である。
図9図9は変形例に係る配線部材を示す断面図である。
図10図10は変形例に係る支持部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
本開示の足回り用配線モジュールは、次の通りである。
【0013】
(1)車体側機器と車輪側機器とを接続する配線部材と、前記配線部材を支持する支持部材と、を備え、前記配線部材は、第1線状伝送部材と、前記第1線状伝送部材よりも細い第2線状伝送部材とを含み、前記支持部材は、前記配線部材の少なくとも一部において、前記第1線状伝送部材が前記第2線状伝送部材よりも操舵回転中心軸の近くに位置するように、前記配線部材を支持する、足回り用配線モジュールである。この足回り用配線モジュールによると、操舵回転軸を中心として車輪が回転した場合、太い第1線状伝送部材は曲げ変形し難く、細い第2線状伝送部材は第1線状伝送部材よりも曲げ変形し易い。このため、足回り用配線モジュール全体として、繰り返し曲げ変形に対する足回り用配線モジュールの耐性がさらに改善される。
【0014】
(2)(1)の足回り用配線モジュールであって、前記支持部材は、前記配線部材の少なくとも一部が前記操舵回転中心軸に対して平行となるように、前記配線部材を支持し、前記配線部材のうち前記操舵回転中心軸に対して平行な部分において、前記第1線状伝送部材が前記第2線状伝送部材よりも前記操舵回転中心軸の近くに位置していてもよい。操舵回転中心軸を中心として車輪が回転した場合において、前記配線部材のうち前記操舵回転中心軸に対して平行な部分において、操舵回転中心軸に近い第1線状伝送部材が曲げ変形し難い
【0015】
(3)(1)又は(2)の足回り用配線モジュールであって、前記支持部材は、前記配線部材の少なくとも一部が前記操舵回転中心軸に沿うように、前記配線部材を支持し、前記配線部材のうち前記操舵回転中心軸に沿う部分において、前記第1線状伝送部材が前記第2線状伝送部材よりも前記操舵回転中心軸の近くに位置してもよい。ステアリング操舵による車輪の回転に追随して、前記配線部材のうち操舵回転中心軸に沿う部分が捩れることができ、配線部材の曲げ変形が抑制される。特に、太い第1線状伝送部材が捻れによって車輪の回転に追随できるため、劣化し難い。このため、足回り用配線モジュール全体として、繰り返し変形に対する耐性がさらに改善される。
【0016】
(4)(3)の足回り用配線モジュールであって、前記配線部材のうち前記操舵回転中心軸に沿う部分において、前記配線部材の横断面における最小包含円内を、前記操舵回転中心軸が通過してもよい。
【0017】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの足回り用配線モジュールであって、前記第1線状伝送部材は電源線であり、前記第2線状伝送部材は信号線であってもよい。太い電源線は曲げ変形し難く、細い第2線状伝送部材は第1線状伝送部材よりも曲げ変形し易い。このため、足回り用配線モジュール全体として、繰り返し変形に対する足回り用配線モジュールの耐性がさらに改善される。
【0018】
(6)(1)から(5)の何れか1つの足回り用配線モジュールであって、前記配線部材は、前記第1線状伝送部材を複数含み、前記配線部材の少なくとも一部において、前記複数の第1線状伝送部材が束ねられており、前記第2線状伝送部材が前記操舵回転中心軸に対して前記複数の第1線状伝送部材よりも離れた位置で前記複数の第1線状伝送部材間の隙間に嵌っていてもよい。配線部材を細くしつつ、複数の第1線状伝送部材を第2線状伝送部材よりも操舵回転中心軸の近くに配置できる。
【0019】
本開示の足回り用配線モジュールの配索構造は、次の通りである。
【0020】
(7)車体側機器と車輪側機器とを接続する配線部材を備え、前記配線部材の一部が操舵回転中心軸を経由するように配索されている、足回り用配線モジュールの配索構造である。この足回り用配線モジュールによると、操舵回転軸を中心として車輪が回転した場合、太い第1線状伝送部材は曲げ変形し難く、細い第2線状伝送部材は第1線状伝送部材よりも曲げ変形し易い。このため、足回り用配線モジュール全体として、繰り返し曲げ変形に対する足回り用配線モジュールの耐性がさらに改善される。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の足回り用配線モジュール及び足回り用配線モジュールの配索構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
[実施形態]
以下、実施形態に係る足回り用配線モジュール及び足回り用配線モジュールの配索構造について説明する。図1は足回り用配線モジュール40の配索構造30を示す概略断面図である。図1は車体10の前後方向に対して直交し、かつ、車輪20の中心軸を通る面における概略断面図である。図2図1におけるII-II線概略断面図である。図3図1のIII-III線における概略断面図である。図2は主に車輪20周りの部分を示している。図3は主に操舵回転中心軸Xと配線部材50と車輪側機器との関係を示している。
【0023】
足回り用配線モジュール40は、配線部材50と、支持部材60とを備える。配線部材50は、車体側機器18と車輪側機器28とを接続する配線用の部材である。配線部材50は、車体側機器18と車輪側機器28とを接続する経路に沿って配索される。支持部材60は、配線部材50を支持する部材である。
【0024】
説明の便宜上、足回り用配線モジュール40が配索される対象部分の構成について説明する。
【0025】
足回り用配線モジュール40の一部が配索される車体10は、自動車における車体である。図1では車体10のうち前側の車輪20周りの部分が図示される。足回り用配線モジュール40は、ステアリング操舵によって操舵される車輪20用であることが想定される。例えば、車輪20は前輪である。なお、後輪が操舵される場合には、足回り用配線モジュールが当該後輪用に用いられてもよい。
【0026】
車体10は、フロア部分12と、ボディ部分14とを備える。フロア部分12は、地面に面する部分である。ボディ部分14は、フロア部分12の上側に設けられ、車体10の外装をなす。車体10は、剛性体であるフレームとボディとを一体化したモノコックボディであってもよいし、フレーム上にボディを搭載した構成であってもよい。なお、本実施形態において、自動車が通常走行する場合の走行方向を前、その反対側を後ろという場合がある。
【0027】
車体10に車輪20が回転可能に支持される。図1に示す例では、フェンダーエプロン16内に車輪20が回転可能に支持される。懸架装置は、独立懸架方式等、如何なる懸架方式で車輪20を支持するものであってもよい。図1に示す例では、ロアアーム32とダンパ36とによって車輪20が支持される例が示される。図1に示す懸架装置は、ストラット式の懸架装置の一例である。
【0028】
より具体的には、車輪20は、ホイール22とタイヤ24とを備える。ホイール22は、鉄、アルミニウム等の金属によって形成されている。ホイール22は、ディスク部22aと、タイヤ装着部22bとを備える。ディスク部22aは円板状に形成されている。タイヤ装着部22bは、ディスク部22aの周囲から車幅方向内側に突出する環状部分である。タイヤ装着部22bの両側縁に環状のリムが突出している。ゴム等の弾性部材によって形成されたタイヤ24が、上記タイヤ装着部22bの外周に装着される。
【0029】
上記車輪20に車輪側機器28が設けられる。ここでは、車輪側機器28がインホイールモータ(In-wheel motor)であることを想定した説明がなされる。なお、インホイールモータは、車輪20に組込まれ、当該車輪20を回転させる走行用のモータである。ここでは、車輪側機器28がタイヤ装着部22b内に配設された状態で、車輪側機器(インホイールモータ)28のシャフト28aがディスク部22aの中央部分に連結される。これにより、車輪側機器28が車輪20に一体的に組込まれる。
【0030】
車輪側機器28に上側ナックル部25と下側ナックル部26とが取付けられている。上側ナックル部25は、車輪側機器28の上部から車幅方向内側に向けて延びる。下側ナックル部26は、車輪側機器28の下部から車幅方向内側に向けて延びる。下側ナックル部26には、ステアリング操舵の力を受けるアーム部26aが突設されている。ここでは、アーム部26aは、下側ナックル部26のうち車幅方向内側から後方に向けて延出している。車輪側機器28がインホイールモータでは無い場合、上記上側ナックル部25及び下側ナックル部26は、車輪20を回転可能に支持する軸受部から車幅方向内側に延び出る場合がある。
【0031】
ロアアーム32は金属等によって形成された部材である。ロアアーム32の基端部は、車輪20に対して車幅方向内側の位置で、フロア部分12に対して揺れ動き可能に支持される。ロアアーム32の基端部が揺れ動く際に中心となる軸は、車体10の前後方向に沿っている。ロアアームの基端部は、車輪に対して斜め前方、内側、斜め後方、後方等でフロア部分に揺れ動き可能に支持されていてもよい。これらの場合において、ロアアームが揺れ動く際の回転軸は、車体の左右方向に沿っていてもよいし、前後方向に沿っていてもよいし、左右方向及び前後方向の両方に対して斜め方向に沿っていてもよい。
【0032】
ロアアーム32の先端部は、フロア部分12からフェンダーエプロン16内に向けて(ここでは車幅方向外側に向けて)延びる。ロアアーム32の先端部には、軸受部33が設けられている。下側ナックル部26が軸受部33を介してロアアーム32の先端部に回転可能に支持される。軸受部33による回転軸は、車輪20がフェンダーエプロン16内で回転する操舵回転中心軸Xである。
【0033】
上側ナックル部25と車体10との間にバネ35及びダンパ36が設けられている。より具体的には、ダンパ36の上端部が車輪20の上側で車体10に対して支持されている。上側ナックル部25が軸受部37を介してダンパ36の下端部に回転可能に支持される。軸受部37による回転軸は、車輪20がフェンダーエプロン16内で回転する操舵回転中心軸Xである。
【0034】
上記したように、ロアアーム32の基端部がフロア部分12に対して揺れ動き可能に支持されているため、ロアアーム32は、車輪20を、フェンダーエプロン16内で上下方向に移動可能に支持している。ロアアーム32によって車輪20の移動方向が規制された状態で、ダンパ36が上側ナックル部25と車体10との間に介在する。このダンパ36と当該ダンパ36に外装されたバネ35とが、走行時における路面の凹凸による衝撃を吸収する。
【0035】
本実施形態では、軸受部33の回転軸と軸受部37の回転軸とは、車輪20の操舵回転中心軸X上に位置する。また、ダンパ36の中心軸も、車輪20の操舵回転中心軸X上に位置する。なお、ダンパの中心軸が操舵回転中心軸Xと一致している必要は無い。
【0036】
アーム部26aの先端部にタイロッド38が連結されている。運転者によるステアリング操舵によってステアリングホイール19が回転すると、その回転運動が、ステアリングシャフト19a及びラックアンドピニオン機構等の伝達機構19bを介して、車幅方向の動きとしてタイロッド38に伝達される。タイロッド38が車幅方向に動くと、下側ナックル部26が軸受部33の回転軸(つまり、操舵回転中心軸X)を中心として回転することができる。これにより、ステアリング操舵によって、車輪20が操舵回転中心軸Xを中心として回転することができる。車輪20が操舵回転中心軸Xを中心として回転することによって、車体10の進行方向が変えられる。つまり、操舵回転中心軸Xとは、ステアリングホイール19に対する操作によって、車輪20が回転する際の中心軸であってもよい。操舵回転中心軸Xは、水平方向よりも重力方向に近い軸であると把握されてもよい。操舵回転中心軸Xは、車体10の進行方向を変えるために車輪20が回転する中心軸であると把握されてもよい。
【0037】
車体10側に車体側機器18が設けられ、車輪20側に車輪側機器28が設けられる。車輪側機器28は、車輪20に組込まれ、車体10に対して当該車輪20と共に操舵回転中心軸Xの周りに回転する機器である。上記したように、車輪側機器28としてインホイールモータであることが想定されると、車体側機器18は当該インホイールモータを駆動する駆動ユニットであることが想定される。例えば、インホイールモータが3相誘導電動機である場合、車体側機器18は、インホイールモータ駆動用のU相、V相、W相の三相交流を与えるためのインバータユニットであることが想定される。なお、車体側機器18は、車体10に設けられており、車輪20が操舵回転中心軸X周りに回転しても回転しない機器である。
【0038】
車輪側機器28がインホイールモータであることは必須ではない。車輪側機器28は、インホイールモータに代えて、又は、加えて、センサ、電動ブレーキ等であることが想定される。例えば、センサは、車輪の回転速度を検出するセンサであってもよいし、インホイールモータ等の温度を検知する温度センサであってもよい。車輪側機器28は、モータ等を含み、電気を動力として車輪20の回転を制動する電動ブレーキであってもよい。電動ブレーキは、自動車の駐停車時に使用される電動パーキングブレーキであってもよいし、自動車の走行時に使用されるブレーキであってもよい。車体側機器18は、これらの車輪側機器28との間で信号を送受したり、電力を供給したりする機器であればよい。例えば、車体側機器18は、センサからの信号を受信したり、上記電動ブレーキを制御したりするECU(Electronic Control Unit)としての機能を含むものであってもよい。車体側機器18は、車体10内に設けられてもよいし、車体10外に設けられてもよい。ここでは、車体側機器18は、車体10内に設けられている。
【0039】
配線部材50は、第1線状伝送部材52と第2線状伝送部材53とを含む。配線部材50の一端部は車体側機器18に接続されている。配線部材50の他端部は車輪側機器28に接続されている。第1線状伝送部材52及び第2線状伝送部材53は、電気又は光を伝送する線状の部材である。第2線状伝送部材53は、第1線状伝送部材52よりも細い。ここでは、第1線状伝送部材52が電源線52であり、第2線状伝送部材53が信号線53である例が示される(図3参照)。電源線52は、芯線52aの周囲に被覆52bが形成された電線である。電源線52は、例えば、インホイールモータに3相交流を供給する電源線であり、図3では3本の電源線52が示される。信号線53は、芯線53aの周囲に被覆53bが形成された電線である。信号線53は、信号を伝達する線であり、例えば、センサ28b(図1参照)用又は制御用の信号線であり、図3では2本の信号線53が図示される。電源線52には、信号線53よりも大きい電流が流れ得るため、芯線53aは芯線52aよりも細い。また、信号線53全体としても電源線52より細い。配線部材50は、電源線52、信号線53に代えて又は加えて、光ファイバケーブルを含んでいてもよい。第1線状伝送部材52及び第2線状伝送部材53の両方が電源線又は信号線であり、前者よりも後者が細くてもよい。
【0040】
複数の線状伝送部材(ここでは、電源線52と信号線53)は、1つにまとめられてもよい。電源線52と信号線53を1つにまるめる構成は、如何なる構成であってもよい。例えば、電源線52と信号線53とは、保護部によって1つにまとめられていてもよい。保護部は、例えば、コルゲートチューブであってもよいし、螺旋巻された粘着テープであってもよいし、電源線52と信号線53とを覆うように押出被覆されたシースであってもよいし、樹脂又は金属チューブであってもよい。電源線52と電源線52とは、その長手方向全体に亘って保護部等によって1つにまとめられている必要は無い。例えば、上記保護部が省略され、電源線52と信号線53とが、配線部材50を一定位置に支持するブラケットによって1つにまとめられていてもよい。ここでのブラケットは、支持部材60であってもよい。ここでは、複数の電源線52と信号線53とが上支持部62及び下支持部64で1つにまとめられる例が示される。
【0041】
配線部材50の横断面の外形状は如何なる形状であってもよい。図3では、複数の電源線52が並列状にまとめられており、その並列方向一側側に信号線53がまとめられており、配線部材50の横断面の外形状が偏平形状をなす例が示される。配線部材50の横断面の外形状は、円形状、楕円形等をなしていてもよい。なお、横断面とは、配線部材50の軸に対して直交する面における断面である。
【0042】
配線部材50の一端部は、車体側機器18に対してコネクタ接続されていてもよい。配線部材50は、車体側機器18から直接引出されていてもよい。配線部材50の一端部は、他の配線部材を介して車体側機器18に接続されてもよい。
【0043】
配線部材50の他端部は、車輪側機器28に対してコネクタ51を介して接続されていてもよい。配線部材50の他端部がコネクタを介さずに車輪側機器28に直接接続されてもよい。配線部材50の他端部において、複数の電線が分岐し、それぞれ別箇所に接続されてもよい。
【0044】
配線部材50が、操舵回転中心軸Xを経由するように配索されていてもよい。ここで、配線部材50が操舵回転中心軸Xを経由するとは、配線部材50の長手方向におけるいずれかの横断面における最小包含円C内を、操舵回転中心軸Xが通過する位置関係にあることをいう。なお、最小包含円Cとは、横断面に表れる配線部材50部分を含むことができる最小円である。例えば、配線部材50の横断面形状が円形である場合には、当該横断面に表れる配線部材50の外形円が最小包含円Cである。また、最小包含円C内を操舵回転中心軸Xが通過するとは、操舵回転中心軸Xが最小包含円の境界線を通過する場合を含む。
【0045】
操舵回転中心軸Xが最小包含円C内を通過すればよく、従って、配線部材50が操舵回転中心軸Xを経由する場合は、配線部材50が操舵回転中心軸Xと交差する場合及び配線部材50の一部が操舵回転中心軸Xに沿った状態となっている場合とを含む。図1では、配線部材50の一部50aが、操舵回転中心軸Xに沿った状態となっている例が示されている。操舵回転中心軸Xが最小包含円Cを通過すればよいため、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xに沿う部分において、配線部材50の中心軸と操舵回転中心軸Xとが一致している必要は無い。
【0046】
つまり、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xを経由する部分(交差する部分)、あるいは、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xに沿う部分において、配線部材50の横断面における最小包含円C内を、操舵回転中心軸Xが通過する位置関係であればよい。
【0047】
配線部材50の曲げ変形を抑制するためには、配線部材50が操舵回転中心軸Xに沿う部分の長さを長くすることが好ましい。また、支持部材60が、配線部材50が操舵回転中心軸Xを経由するように、配線部材50を支持しているとは、配線部材50が操舵回転中心軸Xを経由しつつその延在方向に沿って移動できる場合、移動できない場合の両方を含む。
【0048】
配線部材50が、操舵回転中心軸Xを経由するように配索されていることは必須ではない。配線部材50が操舵回転中心軸Xから離れた位置を通るように配索されていてよい。この場合においても、配線部材50の少なくとも一部が操舵回転中心軸Xと平行となっていることが好ましい。もっとも、配線部材50は、操舵回転中心軸Xと平行な方向に沿っていることは必須ではない。
【0049】
支持部材60は、配線部材50の少なくとも一部において、第1線状伝送部材52(ここでは電源線52)が第2線状伝送部材53(ここでは信号線53)よりも操舵回転中心軸Xの近くに位置するように、配線部材50を支持する。支持部材60は、配線部材50を上記形態で支持するものであればよく、そのための構成は特に限定されない。支持部材は、単一の支持部材であってもよいし、複数の支持部分を含んでもよい。支持部材は、車体10側に支持されていてもよいし、車輪20側に支持されていてもよい。ここで、支持部材が車体10側に支持されるとは、操舵回転中心軸Xを中心として車輪20が回転しても回転しない部分に支持されていることをいう。例えば、支持部材が上記ダンパ36又はロアアーム32に支持されている場合である。また、支持部材60が車輪20側に支持されるとは、操舵回転中心軸Xを中心として車輪20が回転するとこれに追随して回転する部分に支持されていることをいう。例えば、支持部材が上記上側ナックル部25又は下側ナックル部26に支持されている場合である。
【0050】
本実施形態では、支持部材60は、上支持部62と、下支持部64とを含む。下支持部64は、上支持部62よりも下側に設けられている。そして、配線部材50が上支持部62及び下支持部64によって支持されることによって、配線部材50が、上支持部62と下支持部64との間で、操舵回転中心軸Xを経由する。
【0051】
より具体的には、上側ナックル部25の先端部と下側ナックル部26の先端部との間に、上支持部62と下支持部64とが設けられる。上側ナックル部25の先端部と、上支持部62と、下支持部64と、下側ナックル部26の先端部とは、この順で操舵回転中心軸Xに沿って上から下に間隔をあけて並ぶ。上支持部62と下支持部64とは、延長支持部61によってダンパ36の先端部に対して支持されている。延長支持部61は、ダンパ36の下端部から上側ナックル部25の先端部を迂回して操舵回転中心軸Xと平行な姿勢で下方に向っている。延長支持部61は、ダンパ36に対して溶接、ネジ止等によって固定されていてもよい。延長支持部61の先端部は、下側ナックル部26の先端部よりも手前に達している。上支持部62及び下支持部64は、延長支持部61を介してダンパ36に支持されているから、操舵回転中心軸Xを中心とする車輪20の回転には追随しない。従って、上支持部62及び下支持部64は、車体10側に支持されている。
【0052】
上支持部62は、延長支持部61の延在方向中間部に支持されている。上支持部62は、延長支持部61と一体形成されていてもよいし、延長支持部61に溶接、ネジ止等によって固定されていてもよい。上支持部62は、操舵回転中心軸Xに沿って上側ナックル部25の先端部から下方に離れた位置に設けられる。この配設位置で、上支持部62は、配線部材50の一部を操舵回転中心軸X上の位置で支持する。上支持部62は、配線部材50の一部を一定位置に支持する構成であればよい。例えば、上支持部62は、配線部材50が挿通される孔を有する環状部材であってもよい。上支持部62は、一対の挟込み片が配線部材50の一部を挟み込んだ状態でネジ止される構成であってもよい。上支持部62は、配線部材50の一部に加締め固定される加締め片を有する構成であってもよい。上支持部62は、配線部材50の一部を回転不能な状態で支持していてもよい。
【0053】
下支持部64は、延長支持部61の先端部に支持されている。下支持部64は、延長支持部61と一体形成されていてもよいし、延長支持部61に溶接、ネジ止等によって固定されていてもよい。下支持部64は、操舵回転中心軸Xに沿って上支持部62から下方に離れ、かつ、下側ナックル部26の先端部から上方に離れた位置に設けられる。この配設位置で、下支持部64は、配線部材50の一部を操舵回転中心軸X上の位置で支持する。
【0054】
下支持部64は、操舵回転中心軸Xを中心とする回転を許容する状態で配線部材50を支持する構成であってもよい。
【0055】
ここでは、下支持部64は、外側本体部64aと、内側回転支持部64bとを含む。外側本体部64aは、上記延長支持部61によってダンパ36に支持されている。このため、外側本体部64aは、操舵回転中心軸Xを中心として車輪20が回転しても回転しない部分である。内側回転支持部64bは、外側本体部64aに対して回転可能に支持されている。かかる下支持部64としては、転がり軸受、流体軸受等の各種軸受構造が採用されてもよい。内側回転支持部64bは、回転を許容する状態で配線部材50を支持していてもよいし、回転不能な状態で配線部材50を支持していてもよい。後者の場合、配線部材50の捻れると、内側回転支持部64bが外側本体部64aに対して回転するので、配線部材50と内側回転支持部64bとの間で擦れ等が生じ難い。また、内側回転支持部64b内において配線部材50内の配置が乱れ難い。ここでは、内側回転支持部64bに、配線部材50の横断面形状と同様の保持孔が形成されている。内側回転支持部64bに対して配線部材50は回転不能な状態に保持される。配線部材50は、内側回転支持部64bと共に、外側本体部64aに対して回転することができる。
【0056】
下支持部64は、配線部材50の最小包含円Cよりも大きい内径を有する環形状に形成されていてもよい。この場合、配線部材50は、下支持部64の孔内で回転し得る。
【0057】
配線部材50は、車体10内の車体側機器18から延出して、フェンダーエプロン16を貫通し、上側ナックル部25の先端部に向けて導かれる。配線部材50は、上側ナックル部25の先端部と上支持部62との間を経由して上支持部62によって操舵回転中心軸X上で支持される。さらに、配線部材50は、下支持部64に向けて導かれ、下支持部64によって操舵回転中心軸X上で支持される。配線部材50のうち上支持部62と下支持部64との間の部分は、操舵回転中心軸Xに沿って支持される部分となる。さらに、配線部材50は、下支持部64と下側ナックル部26の先端部との間を経由して車輪側機器28に向けて延出し、コネクタ51を介して車輪側機器28に接続される。
【0058】
下支持部64が配線部材50を回転可能に支持していれば、操舵回転中心軸Xを中心とする車輪20の回転による配線部材50の捻れが、配線部材50のうち下支持部64と上支持部62との間に伝わることができる。また、上支持部62が配線部材50を回転不能に支持していれば、配線部材50の捻れが、配線部材50のうち上支持部62よりも車体10側に伝わり難くなる。
【0059】
本実施形態では、支持部材60は、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xに沿う部分において、電源線52が信号線53よりも操舵回転中心軸Xの近くに位置するように、配線部材50を支持している。なお、操舵回転中心軸Xに対する各線状伝送部材の遠近は、操舵回転中心軸Xと線状伝送部材の中心軸との距離の大小によって決められてもよい。
【0060】
より具体的には、3つの電源線52が接触状態で並列状態にまとめられ、その一側に2つの信号線53が設けられている。支持部材60は、操舵回転中心軸Xが、並列された3つの電源線52の中央における電源線52の中央軸と一致するように、配線部材50を支持する。2つの信号線53は、並列配置された3つの電源線52の一側に配置されているから、2つの信号線53と操舵回転中心軸Xとの距離は、3つの電源線52と操舵回転中心軸Xとの各距離よりも大きい。従って、各電源線52が各信号線53よりも操舵回転中心軸Xの近くに位置する。
【0061】
複数の電源線52は、他の構成、例えば、正多角形(例えば、正三角形)の各頂点に配置するように集合した形態であってもよい。複数の電源線52は撚り合わされていてもよい。複数の信号線53は、電源線52の周囲の一部に偏っている必要はなく、周囲に分散していてもよい。複数の信号線53は、互いに平行な状態で集合していてもよいし、撚り合わされていてもよい。
【0062】
このように構成された足回り用配線モジュール40及び足回り用配線モジュールの配索構造30によると、配線部材50の少なくとも一部において、電源線52が信号線53よりも近くに設けられる。このため、操舵回転中心軸Xを中心として車輪20が回転した場合、太い電源線52は曲げ変形し難い。太い電源線52は、曲り難い物性を有しているところ、曲げ変形自体し難いため、曲げ変形による劣化が生じ難い。また、操舵回転中心軸Xを中心として車輪20が回転した場合、細い信号線53は電源線52よりも曲げ変形し易い。細い信号線53は曲げ変形容易な物性を有しているところ、曲げ変形したとしても、曲げ変形による劣化が生じ難い。このため、足回り用配線モジュール40全体として、繰り返し曲げ変形に対する足回り用配線モジュールの耐性をさらに改善することができる。
【0063】
配線部材50の全ての領域において、電源線52が信号線53よりも操舵回転中心軸Xの近くに位置している必要は無い。しかしながら、また、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xに対して平行な部分において、電源線52が信号線53よりも操舵回転中心軸Xの近くに位置しているとよい。これにより、操舵回転中心軸Xを中心として車輪20が回転した場合において、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xに対して平行な部分において、操舵回転中心軸Xに近い電源線52が曲げ変形し難い

【0064】
また、支持部材60は、配線部材50のうち少なくとも一部が操舵回転中心軸Xに沿うように配線部材50を支持し、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xに沿う部分において、電源線52が信号線53よりも操舵回転中心軸Xに位置するとよい。
【0065】
この場合、配線部材50の少なくとも一部が操舵回転中心軸Xで支持される。このため、ステアリング操舵によって車輪20が回転する際、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xに位置する部分と車輪側機器28との距離変動が抑制される。これにより、ステアリング操舵によって車輪20が回転した場合において、配線部材50の曲げ変形が抑制される。また、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xに沿う部分が捩れることができる。これにより、操舵回転中心軸Xを中心とする車輪20の回転による変形箇所が広範囲に分散され、配線部材50がさらに高寿命化される。
【0066】
図3を参照してより具体的に説明する。図3において、車体が直線状態を保つ場合における、車輪側機器28と、当該車輪側機器28に向う配線部材50とが実線で示され、車体が曲る場合における、車輪側機器28と、当該車輪側機器28に向う配線部材50とが2点鎖線で示される。同図に示すように、車輪20が操舵回転中心軸Xを中心として回転する場合、配線部材50の接続先となる車輪側機器28は、操舵回転中心軸Xを中心として回転する。このため、操舵回転中心軸Xと車輪側機器28との距離は可及的に一定に保たれる。配線部材50は、操舵回転中心軸Xを経由して車輪側機器28に接続されるため、車輪20が操舵回転中心軸Xを中心として回転しても、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xを経由する部分から車輪側機器28に至る部分は、可及的に一定長Lに保たれる。よって、ステアリング操舵によって車輪20が回転した場合において、配線部材50を伸したり、縮めたりする力が作用し難く、配線部材50の曲げ変形が抑制される。
【0067】
そして、配線部材50のうち操舵回転中心軸Xに沿う部分が捩れることで、車輪20の回転に追随できる。この場合において、特に、太い電源線52が捻れることによって、車輪20の回転に追随できるため、劣化し難い。このため、足回り用配線モジュール40全体として、繰り返し変形に対する耐性がさらに改善される。
【0068】
上支持部62と下支持部64との間で配線部材50が捻れ変形するためには、操舵回転中心軸Xを中心とする車輪20の回転による捻れが、配線部材50のうち下支持部64による支持箇所よりも上方に伝わるようにするとよい。例えば、上記したように、下支持部64が、操舵回転中心軸Xを中心とする回転を許容する状態で配線部材50を支持する構成であってもよい。これにより、ステアリング操舵による車輪20の回転に追随して、配線部材50のうち上支持部62と下支持部64との間の部分が容易に捩れ変形することができる。
【0069】
また、支持部材60は、配線部材50の捻れが支持部材60による支持箇所から車体10側に伝わらないように、配線部材50を支持していてもよい。例えば、上記実施形態のように、上支持部62がダンパ36の先端部等の車体10側に支持されており、上支持部62が配線部材50を回転不能に支持していてもよい。
【0070】
上記したように、第1線状伝送部材52は電源線52であり、前記第2線状伝送部材53は信号線53であってもよい。これにより、太くて曲り難い電源線52が車輪の回転に追随して曲げ変形し難くし、細くて容易に曲り得る信号線53が車輪20の回転に追随して曲げ変形するレイアウトとすることができ、足回り用配線モジュール40全体として、繰り返し変形に対する足回り用配線モジュール40の耐性をさらに改善することができる。
【0071】
また、電源線52が車輪の回転に追随して曲げ変形し難い位置に配置されることから、センサ等による信号よりも走行等に必要な電源線に対する耐久性をより向上させることができる。これにより、車両の走行継続性がさらに改善される。
【0072】
[変形例]
第1線状伝送部材52としての電源線52を、第2線状伝送部材53としての信号線53よりも操舵回転中心軸Xの近くに配置する例としては各種変形例が考えられる。
【0073】
例えば、図4に示す配線部材150のように、複数の電源線52が束ねられた状態で保護部56によって覆われていてもよい。保護部56は、コルゲートチューブであってもよいし、螺旋巻された粘着テープであってもよいし、電源線52と信号線53とを覆うように押出被覆されたシースであってもよいし、樹脂又は金属チューブであってもよい。また、複数の信号線53が保護部56の外周に沿うように、複数の電源線52と複数の信号線53とがまとめられている。このまとめ形態は、上記上支持部62及び下支持部64によって保たれてもよい。この場合に、操舵回転中心軸Xが複数の電源線52を保護部56でまとめたケーブルの中心に設定される。この場合、操舵回転中心軸Xを中心とする車輪20の回転により、複数の電源線52が保護部56内で捻れ変形し、複数の信号線53が保護部56の外周側で変形する。上記実施形態で説明したように、複数の電源線52は操舵回転中心軸Xに近いので曲げ変形は少ない。複数の信号線53は操舵回転中心軸Xから遠いので電源線52よりも大きく曲げ変形する。上記実施形態で説明したように、足回り用配線モジュール全体として、繰り返し変形に対する耐性がさらに改善される。
【0074】
また、例えば、図5に示す配線部材250のように、複数(ここでは3つ)の電源線52と複数(ここでは2つ)の信号線53とが束ねられた状態で保護部256によって覆われていてもよい。保護部256は、保護部56と同様に、コルゲートチューブであってもよいし、螺旋巻された粘着テープであってもよいし、電源線52と信号線53とを覆うように押出被覆されたシースであってもよいし、樹脂又は金属チューブであってもよい。
【0075】
複数の電源線52は1つに集合されている。複数の信号線53は、集合された複数の電源線52の周囲に沿っている。複数の信号線53は1つにまとまられていてもよいし、集合された複数の電源線52の周囲に分散していてもよい。この場合に、操舵回転中心軸Xが複数の信号線53よりも複数の電源線52に近い位置に設定されている。換言すれば、操舵回転中心軸Xが複数の信号線53よりも複数の電源線52側に偏っている。ここでは、操舵回転中心軸Xは、配線部材250の中心軸に設定されている。複数の電源線52は信号線53よりも細く、配線部材50の中央寄りの位置を占有しているため、複数の電源線52は複数の信号線53よりも操舵回転中心軸Xに近い。このため、上記実施形態と同様に、足回り用配線モジュール全体として、繰り返し変形に対する耐性がさらに改善される。
【0076】
なお、電源線52の本数、信号線53の本数は任意である。例えば、図6に示す配線部材350のように、2本の電源線52と2本の信号線53とが束ねられた状態で保護部356によって覆われていてもよい。この場合、例えば、操舵回転中心軸Xは、2つの電源線52の間に設定され、信号線53は2つの電源線52及び操舵回転中心軸Xから離れた位置に設けられる。この場合でも、上記と同様に、足回り用配線モジュール全体として、繰り返し変形に対する耐性がさらに改善される。
【0077】
また、例えば、図7に示す配線部材450のように、複数の電源線52が並列状にまとめられており、その厚み方向一方側に信号線53が設けられていてもよい。複数の電源線52と複数の信号線53とは、保護部56と同様に保護部456によって覆われていてもよい。この場合に、操舵回転中心軸Xが複数の信号線53よりも複数の電源線52に近い位置に設定されている。ここでは、操舵回転中心軸Xは、並列された複数の電源線52に対して信号線53とは反対側の位置に設定されている。信号線53と操舵回転中心軸Xとの間に複数の電源線52が配置されるため、複数の電源線52は複数の信号線53よりも操舵回転中心軸Xに近い。このため、上記実施形態と同様に、足回り用配線モジュール全体として、繰り返し変形に対する耐性がさらに改善される。
【0078】
また、図8に示すように、少なくとも1つの第1線状伝送部材52が少なくとも1つの第2線状伝送部材53よりも操舵回転中心軸Xの近くに設けられていれば、足回り用配線モジュール全体として、繰り返し変形に対する耐性がさらに改善される。このため、第1線状伝送部材52及び第2線状伝送部材53は操舵回転中心軸Xから離れた位置に設けられてもよい。この場合においても、操舵回転中心軸Xを中心として車輪20が回転した場合において、操舵回転中心軸Xから遠い第2線状伝送部材53の曲げ変形量に対して、操舵回転中心軸Xに近い第1線状伝送部材52の曲げ変形が抑制されるからである。
【0079】
また、図10に示すように、複数の第1線状伝送部材52が隣合うもの間で接触するように束ねられていてもよい。図10では、3本の第1線状伝送部材52の中心が正三角形の頂点の位置に配置されるように、3本の第1線状伝送部材52が束ねられている。操舵回転中心軸Xは、複数の第1線状伝送部材52の中央、ここでは、3本の第1線状伝送部材52の中心が描く多角形(ここでは3角形)の幾何中心に位置している。細い方の第2線状伝送部材53は、操舵回転中心軸Xに対して複数の第1線状伝送部材52よりも離れた位置で、複数の第1線状伝送部材52の間の隙間610間に嵌っていることが好ましい。ここでは、3つの第1線状伝送部材52の周りに3つの隙間610が形成され、3つの第2線状伝送部材53が上記各隙間610に嵌っている。図10では、隣合う第1線状伝送部材52の間に断面三角溝状の隙間610が形成されている。第2線状伝送部材53のうち操舵回転中心軸X側の部分が隙間610内に収っている。上記状態で、第1線状伝送部材52及び第2線状伝送部材53の外周にシース等の保護部656が被覆され、上記束ね形態が維持されている。
【0080】
本例によると、配線部材600を細くしつつ、複数の第1線状伝送部材52を第2線状伝送部材53よりも操舵回転中心軸Xの近くに配置できる。
【0081】
配線部材が複数種の太さの線状伝送部材を含む場合、最も太い1つ又は複数の線状伝送部材を第1線状伝送部材とし、最も細い1つ又は複数の線状伝送部材を第2線状伝送部材としてもよい。
【0082】
図10は変形例に係る支持部材560を示す概略断面図である。本変形例では、支持部材560は、延長支持部61に対応する延長支持部561が上支持部62を支持し、下支持部64を支持していない。
【0083】
下支持部64は、下側ナックル部26に支持されている。すなわち、下側ナックル部26の先端部から操舵回転中心軸Xに沿って上方に向うように延長支持部563が設けられる。延長支持部563の先端部に下支持部64が支持されている。延長支持部563は、下側ナックル部26及び下支持部64に対して溶接されてもよいし、ネジ止されてもよいし、一体形成されてもよい。
【0084】
本変形例では、下支持部64は、延長支持部563を介して下側ナックル部26に支持される。このため、操舵回転中心軸Xを中心として車輪が回転すると、下支持部64も操舵回転中心軸Xを中心として回転する。このため、下支持部64が上支持部62による支持構成と同様に配線部材50を回転不能に支持していても、配線部材50が上支持部62と下支持部64との間で捩れることができる。
【0085】
この場合において、下支持部64が車輪20側に支持されていればよい。例えば、下支持部64が他の支持用の部材を介して車輪側機器28等に支持されていてもよい。つまり、下支持部64は、操舵回転中心軸Xを中心として回転するが、走行回転軸を中心として回転しない部分に直接又は間接的に支持されていてもよい。
【0086】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 車体
12 フロア部分
14 ボディ部分
16 フェンダーエプロン
18 車体側機器
19 ステアリングホイール
19a ステアリングシャフト
19b 伝達機構
20 車輪
22 ホイール
22a ディスク部
22b タイヤ装着部
24 タイヤ
25 上側ナックル部
26 下側ナックル部
26a アーム部
28 車輪側機器
28a シャフト
30 配索構造
32 ロアアーム
33 軸受部
35 バネ
36 ダンパ
37 軸受部
38 タイロッド
40 足回り用配線モジュール
50 配線部材
50a 配線部材の一部
51 コネクタ
52 電源線(第1線状伝送部材)
52a 芯線
52b 被覆
53 信号線(第2線状伝送部材)
53a 芯線
53b 被覆
56 保護部
60 支持部材
61 延長支持部
62 上支持部
64 下支持部
64a 外側本体部
64b 内側回転支持部
150 配線部材
250 配線部材
256 保護部
350 配線部材
356 保護部
450 配線部材
456 保護部
560 支持部材
561 延長支持部
563 延長支持部
600 配線部材
610 隙間
656 保護部
C 最小包含円
X 操舵回転中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10