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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両用パーキングロック機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20231108BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020123255
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019428
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】森瀬 勝
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-141520(JP,A)
【文献】実開昭60-113259(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキングギヤと、
前記パーキングギヤに対して接近離間可能に設けられて、該パーキングギヤと噛み合わされることにより該パーキングギヤの回転を機械的に阻止するパーキングポールと、
ロック位置とロック解除位置との間を往復移動可能に配設され、該ロック位置へ移動させられる際にカム機構を介して前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させ、前記ロック位置まで移動させられることにより前記パーキングポールによって前記パーキングギヤの回転が阻止されるパーキングロック状態とするロック部材と、
前記ロック部材を挟んで前記パーキングポールと反対側に配設されており、前記ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制しつつ前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部が設けられているサポート部材と、
を有する車両用パーキングロック機構において、
前記ロック部材および前記サポート部材の一方の部材に回動可能に取り付けられており、前記ロック部材と前記サポート部材との相対移動に伴って姿勢変化させられ、前記パーキングロック状態において前記ロック部材および前記サポート部材の他方の部材側へ突き出して該他方の部材と係合させられる突出姿勢とされるストッパを有し、
前記パーキングロック状態において、前記突出姿勢とされている前記ストッパと前記他方の部材との間の隙間は、前記ロック部材と前記ガイド部との間の隙間以下である
ことを特徴とする車両用パーキングロック機構。
【請求項2】
パーキングギヤと、
前記パーキングギヤに対して接近離間可能に設けられて、該パーキングギヤと噛み合わされることにより該パーキングギヤの回転を機械的に阻止するパーキングポールと、
ロック位置とロック解除位置との間を往復移動可能に配設され、該ロック位置へ移動させられる際にカム機構を介して前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させ、前記ロック位置まで移動させられることにより前記パーキングポールによって前記パーキングギヤの回転が阻止されるパーキングロック状態とするロック部材と、
前記ロック部材を挟んで前記パーキングポールと反対側に配設されており、前記ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制しつつ前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部が設けられているサポート部材と、
を有する車両用パーキングロック機構において、
前記ロック部材および前記サポート部材の一方の部材に回動可能に取り付けられており、前記ロック部材と前記サポート部材との相対移動に伴って姿勢変化させられ、前記パーキングロック状態において前記ロック部材および前記サポート部材の他方の部材側へ突き出して該他方の部材と係合させられる突出姿勢とされるストッパを有し、
前記ストッパは、前記ロック部材の移動方向に対して直角な回動軸心まわりに回動可能に該ロック部材に取り付けられており、
前記突出姿勢とされている前記ストッパは、前記他方の部材である前記サポート部材との係合部が前記ロック部材の移動方向において前記回動軸心よりも前記ロック解除位置側の部位を含んでいる
ことを特徴とする車両用パーキングロック機構。
【請求項3】
前記係合部において前記ストッパと係合させられる前記サポート部材側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック位置側へ向かうに従って前記回動軸心から離間する方向へ傾斜している
ことを特徴とする請求項に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項4】
前記係合部において前記サポート部材と係合させられる前記ストッパ側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック位置側へ向かうに従って前記回動軸心に接近する方向へ傾斜している
ことを特徴とする請求項に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項5】
パーキングギヤと、
前記パーキングギヤに対して接近離間可能に設けられて、該パーキングギヤと噛み合わされることにより該パーキングギヤの回転を機械的に阻止するパーキングポールと、
ロック位置とロック解除位置との間を往復移動可能に配設され、該ロック位置へ移動させられる際にカム機構を介して前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させ、前記ロック位置まで移動させられることにより前記パーキングポールによって前記パーキングギヤの回転が阻止されるパーキングロック状態とするロック部材と、
前記ロック部材を挟んで前記パーキングポールと反対側に配設されており、前記ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制しつつ前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部が設けられているサポート部材と、
を有する車両用パーキングロック機構において、
前記ロック部材および前記サポート部材の一方の部材に回動可能に取り付けられており、前記ロック部材と前記サポート部材との相対移動に伴って姿勢変化させられ、前記パーキングロック状態において前記ロック部材および前記サポート部材の他方の部材側へ突き出して該他方の部材と係合させられる突出姿勢とされるストッパを有し、
前記ストッパは、前記ロック部材の移動方向に対して直角な回動軸心まわりに回動可能に前記サポート部材に取り付けられており、
前記突出姿勢とされている前記ストッパは、前記他方の部材である前記ロック部材との係合部が該ロック部材の移動方向において前記回動軸心よりも前記ロック位置側の部位を含んでいる
ことを特徴とする車両用パーキングロック機構。
【請求項6】
前記係合部において前記ストッパと係合させられる前記ロック部材側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック解除位置側へ向かうに従って前記回動軸心から離間する方向へ傾斜している
ことを特徴とする請求項に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項7】
前記係合部において前記ロック部材と係合させられる前記ストッパ側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック解除位置側へ向かうに従って前記回動軸心に接近する方向へ傾斜している
ことを特徴とする請求項に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項8】
前記パーキングロック状態において、前記突出姿勢とされている前記ストッパと前記他方の部材との間の隙間は、前記ロック部材と前記ガイド部との間の隙間以下である
ことを特徴とする請求項2~7の何れか1項に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項9】
前記ストッパは付勢装置によって前記突出姿勢となるように付勢されている一方、
前記他方の部材には、前記ロック部材が前記ロック位置から前記ロック解除位置へ移動させられる際に前記ストッパと係合させられることにより、前記ガイド部による前記ロック部材の案内が可能となるように前記付勢装置の付勢力に抗して前記ストッパを退避姿勢へ姿勢変化させる姿勢変換部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項10】
前記カム機構は、
それぞれ前記ロック部材の移動方向に対して直角で互いに平行な軸心まわりに回転可能で、且つ外周面が互いに接するように、該ロック部材に配設された一対の第1ローラおよび第2ローラと、
前記パーキングポールに設けられ、前記ロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させられる際に前記第1ローラと係合させられることにより、該パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させて噛み合わせるカム面と、を備えており、
前記ロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させられる際に前記第2ローラが前記ガイド部と係合させられることにより、該ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することが規制される
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の車両用パーキングロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用パーキングロック機構に係り、特に、Pレンジが選択された駐車中にパーキングポールがパーキングギヤから抜け出すP抜けを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) パーキングギヤと、(b) 前記パーキングギヤに対して接近離間可能に設けられて、そのパーキングギヤと噛み合わされることによりそのパーキングギヤの回転を機械的に阻止するパーキングポールと、(c) ロック位置とロック解除位置との間を往復移動可能に配設され、そのロック位置へ移動させられる際にカム機構を介して前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させ、前記ロック位置まで移動させられることにより前記パーキングポールによって前記パーキングギヤの回転が阻止されるパーキングロック状態とするロック部材と、(d) 前記ロック部材を挟んで前記パーキングポールと反対側に配設されており、前記ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制しつつ前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部が設けられているサポート部材と、を有する車両用パーキングロック機構が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、ウェッジがロック部材に相当する。
【0003】
このような車両用パーキングロック機構は、シフトレバー等により駐車用のPレンジが選択された場合に、ロック部材をロック位置へ移動させてパーキングポールをパーキングギヤに噛み合わせることにより、パーキングギヤが設けられた回転軸を介して車輪を回転不能にロックする。その場合に、駐車した場所の路面勾配が大きいと、車両の重量でパーキングギヤに加えられる回転トルクに応じてパーキングポールをパーキングギヤから押し出す押出し荷重が発生し、その押出し荷重によりロック部材がロック解除位置側へ後退させられて、パーキングポールがパーキングギヤから抜け出すP抜けが生じる可能性がある。これに対し、特許文献1では、ロック部材(ウェッジ)の移動経路に進退可能にストッパ(ウェッジ規制手段)を設け、ロック部材の後退をストッパにより阻止してP抜けを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-141520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の車両用パーキングロック機構においては、ロック部材の移動経路に突き出すストッパに対して横方向からロック部材が当接させられるため、ストッパには曲げ荷重が加えられ、ストッパを含む各部の必要強度が高くなり、装置が大型化して車両への搭載スペースが大きくなるなどの問題があった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、装置の大型化を抑制しつつ坂路での駐車の際のP抜けが防止されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) パーキングギヤと、(b) 前記パーキングギヤに対して接近離間可能に設けられて、そのパーキングギヤと噛み合わされることによりそのパーキングギヤの回転を機械的に阻止するパーキングポールと、(c) ロック位置とロック解除位置との間を往復移動可能に配設され、そのロック位置へ移動させられる際にカム機構を介して前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させ、前記ロック位置まで移動させられることにより前記パーキングポールによって前記パーキングギヤの回転が阻止されるパーキングロック状態とするロック部材と、(d) 前記ロック部材を挟んで前記パーキングポールと反対側に配設されており、前記ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制しつつ前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部が設けられているサポート部材と、を有する車両用パーキングロック機構において、(e) 前記ロック部材および前記サポート部材の一方の部材に回動可能に取り付けられており、前記ロック部材と前記サポート部材との相対移動に伴って姿勢変化させられ、前記パーキングロック状態において前記ロック部材および前記サポート部材の他方の部材側へ突き出してその他方の部材と係合させられる突出姿勢とされるストッパを有し、(f) 前記パーキングロック状態において、前記突出姿勢とされている前記ストッパと前記他方の部材との間の隙間は、前記ロック部材と前記ガイド部との間の隙間以下であることを特徴とする。
【0008】
発明は、第発明~第7発明の何れか1の車両用パーキングロック機構において、前記パーキングロック状態において、前記突出姿勢とされている前記ストッパと前記他方の部材との間の隙間は、前記ロック部材と前記ガイド部との間の隙間以下であることを特徴とする。
【0009】
発明は、第1発明~第8発明の何れか1の車両用パーキングロック機構において、(a) 前記ストッパは付勢装置によって前記突出姿勢となるように付勢されている一方、(b) 前記他方の部材には、前記ロック部材が前記ロック位置から前記ロック解除位置へ移動させられる際に前記ストッパと係合させられることにより、前記ガイド部による前記ロック部材の案内が可能となるように前記付勢装置の付勢力に抗して前記ストッパを退避姿勢へ姿勢変化させる姿勢変換部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
10発明は、第1発明~第発明の何れかの車両用パーキングロック機構において、(a) 前記カム機構は、(a-1) それぞれ前記ロック部材の移動方向に対して直角で互いに平行な軸心まわりに回転可能で、且つ外周面が互いに接するように、そのロック部材に配設された一対の第1ローラおよび第2ローラと、(a-2) 前記パーキングポールに設けられ、前記ロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させられる際に前記第1ローラと係合させられることにより、そのパーキングポールを前記パーキングギヤに接近させて噛み合わせるカム面と、を備えており、(b) 前記ロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させられる際に前記第2ローラが前記ガイド部と係合させられることにより、そのロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することが規制されることを特徴とする。
【0011】
第2発明は、(a) パーキングギヤと、(b) 前記パーキングギヤに対して接近離間可能に設けられて、そのパーキングギヤと噛み合わされることによりそのパーキングギヤの回転を機械的に阻止するパーキングポールと、(c) ロック位置とロック解除位置との間を往復移動可能に配設され、そのロック位置へ移動させられる際にカム機構を介して前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させ、前記ロック位置まで移動させられることにより前記パーキングポールによって前記パーキングギヤの回転が阻止されるパーキングロック状態とするロック部材と、(d) 前記ロック部材を挟んで前記パーキングポールと反対側に配設されており、前記ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制しつつ前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部が設けられているサポート部材と、を有する車両用パーキングロック機構において、(e) 前記ロック部材および前記サポート部材の一方の部材に回動可能に取り付けられており、前記ロック部材と前記サポート部材との相対移動に伴って姿勢変化させられ、前記パーキングロック状態において前記ロック部材および前記サポート部材の他方の部材側へ突き出してその他方の部材と係合させられる突出姿勢とされるストッパを有し、(f)前記ストッパは、前記ロック部材の移動方向に対して直角な回動軸心まわりに回動可能にそのロック部材に取り付けられており、(g) 前記突出姿勢とされている前記ストッパは、前記他方の部材である前記サポート部材との係合部が前記ロック部材の移動方向において前記回動軸心よりも前記ロック解除位置側の部位を含んでいることを特徴とする。
【0012】
発明は、第発明の車両用パーキングロック機構において、前記係合部において前記ストッパと係合させられる前記サポート部材側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック位置側へ向かうに従って前記回動軸心から離間する方向へ傾斜していることを特徴とする。
【0013】
発明は、第発明の車両用パーキングロック機構において、前記係合部において前記サポート部材と係合させられる前記ストッパ側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック位置側へ向かうに従って前記回動軸心に接近する方向へ傾斜していることを特徴とする。
【0014】
発明は、(a) パーキングギヤと、(b) 前記パーキングギヤに対して接近離間可能に設けられて、そのパーキングギヤと噛み合わされることによりそのパーキングギヤの回転を機械的に阻止するパーキングポールと、(c) ロック位置とロック解除位置との間を往復移動可能に配設され、そのロック位置へ移動させられる際にカム機構を介して前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させ、前記ロック位置まで移動させられることにより前記パーキングポールによって前記パーキングギヤの回転が阻止されるパーキングロック状態とするロック部材と、(d) 前記ロック部材を挟んで前記パーキングポールと反対側に配設されており、前記ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制しつつ前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部が設けられているサポート部材と、を有する車両用パーキングロック機構において、(e) 前記ロック部材および前記サポート部材の一方の部材に回動可能に取り付けられており、前記ロック部材と前記サポート部材との相対移動に伴って姿勢変化させられ、前記パーキングロック状態において前記ロック部材および前記サポート部材の他方の部材側へ突き出してその他方の部材と係合させられる突出姿勢とされるストッパを有し、(f) 前記ストッパは、前記ロック部材の移動方向に対して直角な回動軸心まわりに回動可能に前記サポート部材に取り付けられており、(g) 前記突出姿勢とされている前記ストッパは、前記他方の部材である前記ロック部材との係合部がそのロック部材の移動方向において前記回動軸心よりも前記ロック位置側の部位を含んでいることを特徴とする。
【0015】
発明は、第発明の車両用パーキングロック機構において、前記係合部において前記ストッパと係合させられる前記ロック部材側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック解除位置側へ向かうに従って前記回動軸心から離間する方向へ傾斜していることを特徴とする。
【0016】
発明は、第発明の車両用パーキングロック機構において、前記係合部において前記ロック部材と係合させられる前記ストッパ側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック解除位置側へ向かうに従って前記回動軸心に接近する方向へ傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1発明の車両用パーキングロック機構においては、ロック部材およびサポート部材の一方にストッパが回動可能に配設されており、そのストッパは、パーキングロック状態においてロック部材およびサポート部材の他方側へ突き出す突出姿勢とされるため、坂路での駐車の際にパーキングポールをパーキングギヤから押し出す押出し荷重が発生し、その押出し荷重がパーキングポールからカム機構を介してロック部材に加えられると、突出姿勢とされているストッパがロック部材とサポート部材との間で挟圧される。これにより、ストッパがロック部材に作用する押出し荷重の一部を担うため、押出し荷重に基づいてロック部材に加えられるロック解除位置側へ後退する方向の力が低減されて、その後退によりパーキングポールがパーキングギヤから抜け出すP抜けが抑制される。その場合に、ストッパはロック部材とサポート部材との間で挟圧されて圧縮荷重を受けるため、従来のように曲げ荷重が加えられる場合に比較してストッパ等の必要強度が低減され、小型化が可能である。
また、パーキングロック状態において突出姿勢とされているストッパと他方の部材との間の隙間が、ロック部材とガイド部との間の隙間以下であるため、ロック部材に押出し荷重が加えられた場合に、そのロック部材とサポート部材との間でストッパが確実に挟圧され、坂路での駐車時のP抜けを抑制する効果が適切に得られる。
【0018】
発明では、パーキングロック状態において突出姿勢とされているストッパと他方の部材との間の隙間が、ロック部材とガイド部との間の隙間以下であるため、ロック部材に押出し荷重が加えられた場合に、そのロック部材とサポート部材との間でストッパが確実に挟圧され、坂路での駐車時のP抜けを抑制する効果が適切に得られる。
【0019】
発明では、ストッパが付勢装置によって突出姿勢となるように付勢されている一方、他方の部材には姿勢変換部が設けられ、ロック部材がロック解除位置へ移動させられる際にストッパを退避姿勢へ姿勢変化させるため、ロック部材の位置に応じてストッパが確実に突出姿勢と退避姿勢とへ姿勢変化させられるようになる。これにより、ロック部材がロック解除位置からロック位置へ移動させられる過程ではストッパが退避姿勢に保持され、ガイド部によってロック部材が案内されることにより、カム機構を介してパーキングポールがパーキングギヤと噛み合わされてパーキングロック状態とされるとともに、そのパーキングロック状態ではストッパが突出姿勢に保持されて、坂路での駐車時のP抜けを適切に抑制することができる。
【0020】
10発明は、ロック部材に配設された一対の第1ローラおよび第2ローラと、パーキングポールに設けられたカム面とを備えてカム機構が構成されている場合で、第1ローラがカム面と係合させられるとともに第2ローラがガイド部と係合させられるため、第1ローラおよび第2ローラの回転でロック部材がロック位置とロック解除位置との間を円滑に移動させられる。この場合、坂路での駐車時にパーキングポールをパーキングギヤから押し出す押出し荷重が発生すると、その押出し荷重によってロック部材が容易にロック解除位置側へ移動してP抜けが生じる可能性があるため、ストッパを設けて坂路での駐車時のP抜けを抑制するという本発明の効果が顕著に得られる。
【0021】
発明は、ストッパがロック部材に取り付けられている場合で、突出姿勢とされているストッパとサポート部材との係合部が回動軸心よりもロック解除位置側の部位を含んでいるため、ロック部材に押出し荷重が作用してロック解除位置側へ移動する方向の力が加えられると、サポート部材側の係合部を支点としてストッパが姿勢変化する際にロック部材がパーキングポール側へ押し返されるようになり、ロック部材のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが適切に抑制される。
【0022】
発明では、ストッパと係合させられるサポート部材側の係合面が、ロック位置側へ向かうに従って回動軸心から離間する方向へ傾斜しているため、ロック部材に押出し荷重が作用してストッパがサポート部材に押圧されると、サポート部材の係合面の傾斜に基づいてストッパの回動軸心にロック位置側へ向かう方向のトルクが発生するとともに、そのストッパからロック部材にロック位置側へ向かう方向の力が加えられるため、ロック部材のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0023】
発明では、サポート部材と係合させられるストッパ側の係合面が、ロック位置側へ向かうに従って回動軸心に接近する方向へ傾斜しているため、ロック部材に押出し荷重が作用してストッパがサポート部材に押圧されると、ストッパの係合面の傾斜に基づいてストッパの回動軸心にロック位置側へ向かう方向のトルクが発生するとともに、そのストッパからロック部材にロック位置側へ向かう方向の力が加えられるため、ロック部材のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0024】
発明は、ストッパがサポート部材に取り付けられている場合で、突出姿勢とされているストッパとロック部材との係合部が回動軸心よりもロック位置側の部位を含んでいるため、ロック部材に押出し荷重が作用してロック解除位置側へ移動する方向の力が加えられると、サポート部材側の回動軸心を中心としてストッパが姿勢変化する際にロック部材がパーキングポール側へ押し返されるようになり、ロック部材のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが適切に抑制される。
【0025】
発明では、ストッパと係合させられるロック部材側の係合面が、ロック解除位置側へ向かうに従って回動軸心から離間する方向へ傾斜しているため、ロック部材に押出し荷重が作用してロック部材がストッパに押圧されると、ロック部材の係合面の傾斜に基づいてストッパにロック位置側へ回動する方向のトルクが発生するとともに、そのストッパからロック部材にロック位置側へ向かう方向の力が加えられるため、ロック部材のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0026】
発明では、ロック部材と係合させられるストッパ側の係合面が、ロック解除位置側へ向かうに従って回動軸心に接近する方向へ傾斜しているため、ロック部材に押出し荷重が作用してロック部材がストッパに押圧されると、ストッパの係合面の傾斜に基づいてストッパにロック位置側へ回動する方向のトルクが発生するとともに、そのストッパからロック部材にロック位置側へ向かう方向の力が加えられるため、ロック部材のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施例である車両用パーキングロック機構を説明する図で、パーキングロック状態における概略構成図である。
図2図1の車両用パーキングロック機構におけるロック部材の近傍部分を説明する図で、一部を切り欠いて示した図である。
図3図1の車両用パーキングロック機構のロック解除状態を説明する図で、図2に対応する図である。
図4図1の車両用パーキングロック機構が備えているロック部材の連結ヘッドを単独で示した正面図である。
図5図4の連結ヘッドの平面図である。
図6図5におけるVI-VI矢視部分の断面図である。
図7図1の車両用パーキングロック機構のロック部材に設けられたストッパが突出姿勢とされ、サポート部材と係合させられた状態を説明する図である。
図8】ストッパとサポート部材との係合態様の別の例を説明する図で、図7に対応する図であり、係合部分の拡大図を併せて示した図である。
図9】ストッパとサポート部材との係合態様の更に別の例を説明する図で、図7に対応する図であり、係合部分の拡大図を併せて示した図である。
図10】ストッパとサポート部材との係合態様の更に別の例を説明する図で、図7に対応する図である。
図11】本発明の他の実施例を説明する図で、図2に対応する図である。
図12】本発明の更に別の実施例を説明する図で、パーキングロック状態におけるロック部材およびサポート部材の断面図である。
図13】ストッパがサポート部材に配設された実施例を説明する図で、図2に相当する断面図である。
図14図13の実施例のロック解除状態を説明する断面図である。
図15図13の実施例においてサポート部材に設けられたストッパが突出姿勢とされ、ロック部材と係合させられた状態を説明する図である。
図16図13の実施例においてストッパとロック部材との係合態様の別の例を説明する図で、図15に対応する図であり、係合部分の拡大図を併せて示した図である。
図17図13の実施例においてストッパとロック部材との係合態様の更に別の例を説明する図で、図15に対応する図であり、係合部分の拡大図を併せて示した図である。
図18図13の実施例においてストッパとロック部材との係合態様の更に別の例を説明する図で、図15に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の車両用パーキングロック機構は、例えばシフトレバーによってリンクやケーブル等の連動装置を介してシフトレンジが機械的に切り替えられる手動操作式のパーキングロック機構に適用されるが、シフトレバー等のシフトレンジ選択装置によって選択されたシフトレンジを、電動式や油圧式等のシフトアクチュエータにより電気的に成立させるシフトバイワイヤ(SBW)方式のパーキングロック機構にも適用され得る。シフトレンジとしては、少なくとも動力伝達を遮断するとともに出力軸の回転を機械的に阻止する駐車用のP(パーキング)レンジを有し、そのPレンジが選択された場合にパーキングロック機構がパーキングロック状態とされる。Pレンジの他には、例えば前進走行が可能なD(ドライブ)レンジや、後進走行が可能なR(リバース)レンジなどがある。車両としては、燃料の燃焼によって動力を発生するエンジン駆動車両や、電動モータによって駆動する電気自動車、或いは複数の動力源を備えているハイブリッド車両など、種々の車両に適用され得る。
【0029】
パーキングギヤは、車輪の回転に伴って機械的に回転させられる回転軸(出力軸など)に設けられ、そのパーキングギヤにパーキングポールが噛み合わされることにより、その回転軸の回転、更には車輪の回転が機械的に阻止される。ロック部材は、例えばパーキングロッドの先端部に配設されて、パーキングロッドと共にロック位置およびロック解除位置へ往復移動させられるが、ばね部材等の付勢装置によってロック解除位置側への後退可能とされる。
【0030】
パーキングロック状態におけるストッパの突出姿勢は、坂路等において車両の重量でパーキングギヤに回転トルクが加えられ、パーキングポールをパーキングギヤから押し出す押出し荷重が発生し、その押出し荷重がパーキングポールからカム機構を介してロック部材に加えられた場合に、その押出し荷重の少なくとも一部がストッパを介してサポート部材に伝達されれば良い。すなわち、押出し荷重が加えられるまでは、ストッパと他方の部材との間に隙間がある場合でも、押出し荷重が加えられた場合にロック部材が後退させられる前に各部の弾性変形等によりストッパが他方の部材に当接させられれば良い。パーキングロック状態におけるストッパと他方の部材との間の隙間が、ロック部材とガイド部との間の隙間以下であれば、押出し荷重が加えられた場合にストッパが確実に他方の部材に当接させられるが、ロック部材とガイド部との間の隙間よりも大きな隙間がある場合でも、ロック部材が後退させられる前に各部の弾性変形等によりストッパが他方の部材に当接させられれば良い。
【0031】
ストッパは、例えば付勢装置によって突出姿勢となるように付勢され、ロック部材がロック位置からロック解除位置へ移動させられる際に姿勢変換部によって退避姿勢に姿勢変化させられるが、付勢装置によって退避姿勢となるように付勢し、姿勢変換部によって突出姿勢に姿勢変化させても良い。ストッパが他方の部材に設けられた長穴等に係合させられ、ロック部材とサポート部材との相対移動に伴って機械的に突出姿勢と退避姿勢とに姿勢変化させられる場合には、付勢装置を省略することができる。付勢装置としてはばね部材が適当であるが、その他の弾性体等を用いることもできる。
【0032】
カム機構は、例えば外周面が互いに接するようにロック部材に配設された一対の第1ローラおよび第2ローラを有し、第1ローラはパーキングポールに設けられたカム面と係合させられ、第2ローラはガイド部と係合させられるように構成されるが、第2ローラを省略することもできるし、前記特許文献1に記載のウェッジ(くさび部材)をカム機構兼ロック部材として用いることもできるなど、種々の態様が可能である。上記一対の第1ローラおよび第2ローラは、例えばロック部材の移動方向と直角な方向に変位可能にロック部材に配設されるが、支持ピン等を介してロック部材に変位不能に取り付けることもできる。第1ローラおよび第2ローラは、例えば互いの外周面が転がり接触するようにロック部材に配設されるが、互いに非接触となるように離間させてロック部材に配設しても良い。
【0033】
ストッパがロック部材に取り付けられる場合、突出姿勢におけるストッパとサポート部材との係合部は、例えばロック部材の移動方向において回動軸心と同じ位置を含んで定められるが、回動軸心よりもロック解除位置側の部位を含むことが望ましい。また、ストッパとサポート部材との係合部における両者の係合面は、例えばロック部材の移動方向と平行に定められるが、その係合部におけるサポート部材側の係合面をロック位置側へ向かうに従って回動軸心から離間する方向へ傾斜させたり、逆にストッパ側の係合面をロック位置側へ向かうに従って回動軸心に接近する方向へ傾斜させたりしても良いし、両方の係合面を傾斜させても良いなど、種々の態様が可能である。
【0034】
ストッパがサポート部材に取り付けられる場合、突出姿勢におけるストッパとロック部材との係合部は、例えばロック部材の移動方向において回動軸心と同じ位置を含んで定められるが、回動軸心よりもロック位置側の部位を含むことが望ましい。また、ストッパとロック部材との係合部における両者の係合面は、例えばロック部材の移動方向と平行に定められるが、その係合部におけるロック部材側の係合面をロック解除位置側へ向かうに従って回動軸心から離間する方向へ傾斜させたり、逆にストッパ側の係合面をロック解除位置側へ向かうに従って回動軸心に接近する方向へ傾斜させたりしても良いし、両方の係合面を傾斜させても良いなど、種々の態様が可能である。
【実施例
【0035】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0036】
図1は、本発明の一実施例である車両用パーキングロック機構10を説明する概略構成図である。この車両用パーキングロック機構10は、シフトレバー12によってリンクやプッシュプルケーブル等の連動装置14を介してシフトレンジが機械的に切り替えられる手動操作式のパーキングロック機構である。シフトレバー12は運転席の近傍に配設されており、運転者のシフト操作に従ってP(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)の4位置へ回動させられるようになっている。P位置は、動力伝達を遮断するとともに自動変速機の出力軸16の回転を機械的に阻止する駐車用のPレンジを選択するシフト操作位置で、R位置は、後進走行を可能とするRレンジを選択するシフト操作位置である。また、N位置は、動力伝達を遮断するNレンジを選択するシフト操作位置で、D位置は、前進走行を可能とするDレンジを選択するシフト操作位置である。
【0037】
シフトレバー12は、連動装置14を介してアウタレバー18に連結されている。アウタレバー18はマニュアルシャフト20に固定されているとともに、マニュアルシャフト20にはディテントプレート22が固設されている。したがって、シフトレバー12のシフト操作位置に応じて、ディテントプレート22がマニュアルシャフト20の軸心まわりに回動させられ、P位置、R位置、N位置、D位置の4つの回動位置に位置決めされる。ディテントプレート22の先端部には4箇所の位置決め凹所24を有する凹凸が設けられており、その位置決め凹所24に係止部26が係合させられるようになっている。係止部26はばね板28の先端部を丸めたもので、そのばね板28の弾性変形により凹凸形状に倣って変位させられるとともに、P、R、N、Dの各回動位置でディテントプレート22に所定の節度(位置決め力)が付与される。ばね板28は、変速機ケース等に固設されたサポート部材30に取り付けられている。図1は、シフトレバー12がP位置へシフト操作され、ディテントプレート22がマニュアルシャフト20の時計まわりに機械的に回動させられてP位置に保持された状態である。
【0038】
ディテントプレート22には連結穴32が設けられ、パーキングロッド34の基端部が相対回動可能に連結されており、ディテントプレート22の回動に伴ってパーキングロッド34が長手方向、すなわち図1における左右方向へ略直線的に往復移動させられ、図1の右方向であるロック位置と、左方向のロック解除位置とへ移動させられる。ロック位置は、図1に示されるようにシフトレバー12がP位置へシフト操作され、ディテントプレート22がマニュアルシャフト20の時計まわりにP位置まで回動させられた場合の位置である。ロック解除位置は、シフトレバー12がR位置等の非P位置へシフト操作され、ディテントプレート22がマニュアルシャフト20の反時計まわりにR位置等の非P位置へ回動させられた場合の位置である。R位置~D位置の非P位置ではパーキングロッド34が一定のロック解除位置に保持されるように、シフトレバー12とパーキングロッド34との間に遊び機構が設けられても良い。
【0039】
パーキングロッド34の先端部には、パーキングポール40と係合させられるロック部材42が配設されており、そのロック部材42がパーキングロッド34と共にロック位置へ移動させられることにより、パーキングポール40が図1の下方側へ回動させられ、噛合い歯40pがパーキングギヤ44と噛み合わされる。パーキングギヤ44は、自動変速機の出力軸16に相対回転不能に取り付けられている。パーキングポール40は、出力軸16と平行なポール軸46の軸心まわりに回動可能に変速機ケース等に配設されているとともに、付勢装置であるリターンスプリング48によって噛合い解除方向(図1における時計まわり方向)へ付勢されており、ロック部材42はリターンスプリング48の付勢力に抗してパーキングポール40を噛合い方向(図1における反時計まわり方向)へ回動させる。すなわち、パーキングポール40は、噛合い歯40pがパーキングギヤ44に対して接近離間可能に配設されており、パーキングポール40がロック部材42によって図1の下方側である噛合い方向へ回動させられると、噛合い歯40pがパーキングギヤ44に接近させられて噛み合わされ、そのパーキングギヤ44の回転、更には出力軸16および車輪の回転が機械的に阻止されるパーキングロック状態となる。図1は、このパーキングロック状態を示した図である。
【0040】
上記ロック部材42は、付勢装置であるばね部材(実施例では圧縮コイルスプリング)50によってパーキングロッド34の先端側へ付勢され、ロック位置側の先端位置に保持されてパーキングポール40を噛合い方向へ回動させるが、パーキングポール40とパーキングギヤ44とが干渉した場合にはばね部材50の付勢力に抗してロック部材42がパーキングロッド34に対して相対的にロック解除位置方向へ後退することが許容される。ロック部材42は、移動方向と直角な方向(図1における上下方向)に所定の遊びを有する状態で、サポート部材30によってロック位置とロック解除位置との間を直線往復移動可能に支持されている。また、前記マニュアルシャフト20は出力軸16と平行な姿勢で、出力軸16を挟んでポール軸46と反対側に配設されており、ロック部材42は、パーキングポール40の先端側(図1における左側)からパーキングポール40に接近させられるようになっている。
【0041】
図2および図3は、上記ロック部材42およびその近傍部分を詳しく説明する図で、一部を切り欠いて示した図であり、図2図1と同じパーキングロック状態である。図3は、ロック部材42がロック解除位置へ移動させられて、パーキングポール40とパーキングギヤ44との噛合いが解除されたロック解除状態で、具体的にはシフトレバー12がR位置へシフト操作された状態である。これ等の図において、ロック部材42は、連結ヘッド60と、一対の第1ローラ62および第2ローラ64と、ストッパ66とを備えて構成されている。
【0042】
図4は、上記連結ヘッド60を単独で示した正面図で、図5は連結ヘッド60の平面図、図6図5におけるVI-VI矢視部分の断面図である。この連結ヘッド60は、略U字状の二股形状を成しており、前記パーキングロッド34が挿通させられる挿通穴70が設けられた連結部72と、その連結部72の両端から挿通穴70の軸方向へ延び出す互いに平行な一対の側壁部74とを備えている。パーキングロッド34は、図2図3に示されているように挿通穴70内を軸方向に相対移動可能に挿通させられているとともに、その挿通穴70から連結ヘッド60内に突き出す先端部にはナット76が固設されており、前記ばね部材50は挿通穴70の周縁部に係止されている。したがって、連結ヘッド60は、通常はばね部材50の付勢力に従って連結部72がナット76に当接させられるパーキングロッド34の先端位置に保持されているとともに、ばね部材50の付勢力に抗してナット76から離間させられ、パーキングロッド34に対して相対的にロック解除位置方向へ後退することが許容される。
【0043】
連結ヘッド60は、一対の側壁部74が出力軸16の軸心に対して垂直になる姿勢、すなわち図1図3において一対の側壁部74が紙面と平行で且つ紙面の表裏方向に離間して位置する姿勢で、サポート部材30によって保持されている。一対の側壁部74には、それぞれ同じ位置に長円形の長穴80、ストッパ取付穴82、および一対のねじ穴84が設けられているとともに、ストッパ取付穴82の近傍には一対の側壁部74を連結するように補強連結部86が設けられている。
【0044】
長穴80は、側壁部74の長手方向と直角方向すなわちロック部材42の移動方向と直角な方向に長い長穴で、図2図3に示されているように、前記一対の第1ローラ62および第2ローラ64を、出力軸16と略平行になる姿勢で所定の遊びを有する状態で保持している。一対の第1ローラ62および第2ローラ64は、それぞれロック部材42の移動方向に対して直角で互いに平行な軸心まわりに回転可能で、且つ外周面が互いに接するように、両端部において一対の側壁部74の長穴80によって支持されている。これ等の第1ローラ62、第2ローラ64は、ねじ穴84に螺合されるねじ88により一対の側壁部74の外側面に密着するようにそれぞれ装着される一対の押え板90(図1参照)により、連結ヘッド60からの脱落が阻止されている。
【0045】
一対の第1ローラ62および第2ローラ64は、ロック部材42の上下方向の両側に配置されているパーキングポール40とサポート部材30との間に、上下に並んで設けられている。そして、パーキングポール40側の第1ローラ62は、ロック部材42がロック解除位置からロック位置へ移動させられる際にパーキングポール40と係合させられ、そのパーキングポール40をパーキングギヤ44に接近させて噛み合わせるもので、パーキングポール40には、第1ローラ62と係合させられることによりパーキングポール40を噛合い方向へ回動させるカム面92が設けられている。カム面92は、パーキングポール40を噛合い方向へ回動させる傾斜面と、その傾斜面に連続してロック位置側に設けられたロック側係合面と、傾斜面に連続してロック解除位置側に設けられたロック解除側係合面と、を備えている。ロック側係合面は、図2のパーキングロック状態時に第1ローラ62と係合させられる部分で、そのパーキングロック状態時にロック部材42の移動方向と略平行になるように設けられている。また、ロック解除側係合面は、図3のロック解除状態時に第1ローラ62と係合させられる部分で、そのロック解除状態時にロック部材42の移動方向と略平行になるように設けられている。
【0046】
また、サポート部材30側の第2ローラ64は、ロック部材42がロック位置とロック解除位置との間を移動させられる際に、サポート部材30に設けられたガイド部94と係合させられることにより、ロック部材42がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制するためのものである。ガイド部94は、ロック部材42を挟んでパーキングポール40と反対側に、ロック部材42の移動方向と平行な直線に沿って設けられており、ロック部材42がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制しつつロック位置とロック解除位置との間を移動するように、第2ローラ64を介してロック部材42を案内する。したがって、ロック部材42がロック解除位置からロック位置へ移動させられる際には、第1ローラ62および第2ローラ64がパーキングポール40とガイド部94との間で挟圧され、外周面が接する状態で相対回転させられることにより、ロック部材42がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制しつつ、第1ローラ62とカム面92との係合によりパーキングポール40を噛合い方向へ回動させてパーキングギヤ44と噛み合わせることができる。本実施例では、上記第1ローラ62、第2ローラ64、およびカム面92を含んで、パーキングポール40をパーキングギヤ44に接近させて噛み合わせるカム機構96が構成されている。
【0047】
前記ストッパ取付穴82には、図2図3に示されているように、ストッパ66が取付ピン100を介してロック部材42の移動方向に対して直角な回動軸心S1まわりに回動可能、具体的には出力軸16と平行な回動軸心S1まわりに回動可能に、取り付けられる。取付ピン100は、ストッパ66の両側部に突き出しており、その両端部が一対の側壁部74のストッパ取付穴82内に挿入されて支持されることにより、ストッパ66が一対の側壁部74の間で回動可能に保持される。この取付ピン100も、一対の側壁部74の外側面に密着するように装着される前記一対の押え板90(図1参照)により、連結ヘッド60からの脱落が阻止されている。取付ピン100の軸心が回動軸心S1で、ストッパ66が取付ピン100に対して回動可能に取り付けられても良いし、取付ピン100が側壁部74に対して回動可能に取り付けられても良い。
【0048】
上記ストッパ66は、回動軸心S1まわりに回動させられることにより、図2に示されている突出姿勢と、図3に示されている退避姿勢とに、姿勢変化させられる。サポート部材30には、付勢装置としてのばね部材(この実施例では板ばね)102の基端部が取付ボルト104によって固定されており、そのばね部材102のJ字状に回曲させられた先端部がストッパ66に係止されている。ストッパ66は、ロック部材42が図2に示すロック位置へ移動させられた状態では、ばね部材102の付勢力に従って突出姿勢に保持される。この突出姿勢は、ストッパ66がサポート部材30に向かって突き出す姿勢で、図7に拡大して示すように、ストッパ66の先端部に設けられた係合面66aが、サポート部材30に設けられた係合面30aに密着するように当接させられるとともに、係合面30a、66aの垂直線V1上に回動軸心S1が位置する垂直姿勢となる。係合面30aは、ガイド部94と平行すなわちロック部材42の移動方向(図7における左右方向)と平行に設けられているとともに、ロック部材42の移動方向において回動軸心S1を通る垂直線V1の両側を含む係合範囲L1で係合面66aと密着させられる。係合範囲L1は、目的とするP抜け抑制効果が得られるとともに、シフトレバー12のシフト操作に伴うP抜き動作が適切に行なわれるように、予め実験等により適当に定められ、例えば1mm~3mm程度の範囲内で、本実施例では約2mmである。ストッパ66は、連結ヘッド60の一対の側壁部74の内側寸法よりも僅かに小さい幅寸法(実施例では約12mm)を有し、係合面30a、66aは約2mm×12mmの長方形の平坦な接触面を有する。このストッパ66の先端部形状を、サポート部材30に対して略点接触となるように半球形状としたり、回動軸心S1と平行な線接触となるように断面が半円形の半円柱形状としたりするなど、必要強度が得られる範囲で適宜変更できる。サポート部材30側の係合面30aを半球形状や半円柱形状としても良い。本実施例では、ストッパ66が配設されているロック部材42が一方の部材で、サポート部材30が他方の部材であり、係合範囲L1が係合部に相当する。
【0049】
ここで、坂路での駐車の際に車両の重量でパーキングギヤ44に回転トルクが加えられると、その回転トルクに応じてパーキングポール40をパーキングギヤ44から押し出す押出し荷重が発生する。そして、その押出し荷重がパーキングポール40からカム機構96を介してロック部材42に加えられると、部品の寸法のばらつき等により、パーキングポール40とカム機構96との接触面、具体的にはカム面92のロック側係合面部分が、パーキング解除位置側(図2における左側)へ向かうに従ってガイド部94との距離が大きくなる方向に傾き、ロック部材42にロック解除位置側へ後退する方向の力が加えられる場合がある。その場合に、ロック部材42がロック解除位置側へ後退させられる前に係合面66aと係合面30aとが係合させられるように、上記押出し荷重が無い状態において、係合面66aと係合面30aとの間の隙間が第2ローラ64とガイド部94との間の隙間以下で、本実施例では何れの隙間も略0になるように、ストッパ66の形状や配設位置等が定められている。このように、押出し荷重に起因してロック部材42がロック解除位置側へ後退させられる前に係合面66aと係合面30aとが係合させられ、ストッパ66がサポート部材30に押圧されると、ストッパ66がつっかい棒として機能するようになり、ストッパ66がロック部材42に作用する押出し荷重の一部を担うため、押出し荷重に基づいてロック部材42に加えられるロック解除位置側へ後退する方向の力が低減されて、その後退によりパーキングポール40がパーキングギヤ44から抜け出すP抜けが抑制される。すなわち、押出し荷重により第1ローラ62および第2ローラ64に加えられる垂直応力がストッパ66によって減じられることで、その第1ローラ62および第2ローラ64に生じるロック解除位置側へ転動する方向のトルクが低減されてP抜けが抑制される。
【0050】
一方、ロック部材42がロック位置からロック解除位置へ移動させられる際に、ストッパ66は前記ガイド部94と係合させられ、ばね部材102の付勢力に抗して回動軸心S1の時計まわりに機械的に回動させられて、図3に示す退避姿勢に姿勢変化させられる。この退避姿勢は、係合面66aが係合面30aから離間させられ、ガイド部94によるロック部材42の案内が可能となるように、第2ローラ64をガイド部94に確実に接触させることができる姿勢である。ロック部材42が更に図3の左方向へ移動させられると、ストッパ66はガイド部94に乗り上げるように回動させられて退避姿勢に保持される。また、ロック部材42が図3の右方向へ移動させられてロック位置に達すると、ストッパ66は、ばね部材102の付勢力に従って回動軸心S1の反時計まわりに回動させられ、図2に示す突出姿勢とされる。ガイド部94は、ストッパ66の姿勢を変化させる姿勢変換部としても機能する。
【0051】
このように、本実施例の車両用パーキングロック機構10においては、ロック部材42にストッパ66が回動可能に配設されており、そのストッパ66は、パーキングロック状態においてサポート部材30側へ突き出す突出姿勢とされるため、坂路での駐車の際にパーキングポール40をパーキングギヤ44から押し出す押出し荷重が発生し、その押出し荷重がパーキングポール40からカム機構96を介してロック部材42に加えられると、そのロック部材42とサポート部材30との間でストッパ66が挟圧される。これにより、ストッパ66がロック部材42に作用する押出し荷重の一部を担うため、押出し荷重に基づいてロック部材42に加えられるロック解除位置側へ後退する方向の力が低減されて、その後退によりパーキングポール40がパーキングギヤ44から抜け出すP抜けが抑制される。本実施例では、押出し荷重により第1ローラ62および第2ローラ64に加えられる垂直応力がストッパ66によって減じられることで、その第1ローラ62および第2ローラ64に生じるロック解除位置側へ転動する方向のトルクが低減されてP抜けが抑制される。その場合に、ストッパ66はロック部材42とサポート部材30との間で挟圧されて圧縮荷重を受けるため、従来のように曲げ荷重が加えられる場合に比較してストッパ66やロック部材42の必要強度が低減され、それ等の小型化や軽量化が可能である。
【0052】
また、パーキングロック状態において突出姿勢とされているストッパ66とサポート部材30との間の隙間、すなわち係合面66aと係合面30aとの間の隙間が、ロック部材42の第2ローラ64とガイド部94との間の隙間以下で、本実施例では何れの隙間も略0とされるため、ロック部材42に押出し荷重が加えられた場合に、そのロック部材42とサポート部材30との間でストッパ66が確実に挟圧され、坂路での駐車時のP抜けを抑制する効果が適切に得られる。
【0053】
また、ストッパ66がばね部材102によって突出姿勢となるように付勢されている一方、サポート部材30のガイド部94は姿勢変換部としても機能し、ロック部材42がロック解除位置へ移動させられる際にストッパ66を退避姿勢へ姿勢変化させるため、ロック部材42の位置に応じてストッパ66が確実に突出姿勢と退避姿勢とへ姿勢変化させられる。これにより、ロック部材42がロック解除位置からロック位置へ移動させられる過程ではストッパ66が退避姿勢に保持され、ガイド部94によってロック部材42が案内されることにより、カム機構96を介してパーキングポール40がパーキングギヤ44と噛み合わされてパーキングロック状態とされるとともに、そのパーキングロック状態ではストッパ66が突出姿勢に保持されて、坂路での駐車時のP抜けを適切に抑制することができる。
【0054】
また、ロック部材42に配設された一対の第1ローラ62および第2ローラ64と、パーキングポール40に設けられたカム面92とを備えてカム機構96が構成されており、第1ローラ62がカム面92と係合させられるとともに第2ローラ64がガイド部94と係合させられるため、第1ローラ62および第2ローラ64の回転でロック部材42がロック位置とロック解除位置との間を円滑に移動させられる。この場合、坂路での駐車時にパーキングポール40をパーキングギヤ44から押し出す押出し荷重が発生すると、その押出し荷重によってロック部材42が容易にロック解除位置側へ移動してP抜けが生じる可能性があるため、ストッパ66を設けて坂路での駐車時のP抜けを抑制するという本発明の効果が顕著に得られる。
【0055】
また、突出姿勢とされているストッパ66とサポート部材30とは、ロック部材42の移動方向において回動軸心S1を通る垂直線V1の両側を含む係合範囲L1で係合させられており、回動軸心S1よりもロック解除位置側の部位を含んでいる。このため、ロック部材42に押出し荷重が作用してロック解除位置側へ移動する方向の力が加えられると、係合範囲L1の中のロック解除位置側の係合点P1を支点としてストッパ66が姿勢変化させられ、取付ピン100は係合点P1を中心として図7の左下方向へ回動させられるため、その取付ピン100を介してロック部材42にパーキングポール40側へ押し返される方向の力が加えられ、ロック部材42のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが適切に抑制される。言い換えれば、ストッパ66に係合点P1を中心として時計まわり方向のトルクが加えられることにより、取付ピン100を介してロック部材42がパーキングポール40側へ押し返されるため、ロック部材42のロック解除位置側への移動が阻害される。
【0056】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0057】
図8は、前記図7に対応する図で、ストッパ66とサポート部材30との係合部分の拡大図を併せて示した図であり、サポート部材30に設けられた係合面30bが、前記実施例の係合面30aと相違している。この係合面30bは、ロック部材42の移動方向と平行な直線、すなわちガイド部94と平行な直線に対し、図8の右方向であるロック位置側へ向かうに従って回動軸心S1から離間する方向へ角度α1で傾斜している。角度α1は、例えば0.5°~2°程度の範囲内で、本実施例では約1°である。係合面30bと係合させられるストッパ66の係合面66aは、ストッパ66が突出姿勢とされた状態においてロック部材42の移動方向と平行であり、回動軸心S1よりもロック解除位置側の係合点P1のみでサポート部材30の係合面30bと係合させられる。本実施例では係合点P1が係合部である。
【0058】
本実施例によれば、押出し荷重により第1ローラ62および第2ローラ64に加えられる垂直応力がストッパ66によって減じられることで、その第1ローラ62および第2ローラ64に生じるロック解除位置側へ転動する方向のトルクが低減されてP抜けが抑制される、という前記実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、サポート部材30の係合面30bがロック位置側へ向かうに従って回動軸心S1から離間する方向へ傾斜しているため、ロック部材42に押出し荷重が作用してストッパ66がサポート部材30に押圧されると、サポート部材30の係合面30bの傾斜に基づいて、係合点P1まわりにおいてストッパ66の回動軸心S1がロック位置側へ向かう方向(図8における反時計まわり方向)のトルクが発生するとともに、そのストッパ66の取付ピン100を介してロック部材42にロック位置側へ向かう方向の力Frが加えられるため、ロック部材42のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0059】
図9は、前記図7に対応する図で、ストッパ66とサポート部材30との係合部分の拡大図を併せて示した図であり、ストッパ66に設けられた係合面66bが、前記実施例の係合面66aと相違している。この係合面66bは、ロック部材42の移動方向と平行な直線、すなわちガイド部94と平行な直線に対し、図9の右方向であるロック位置側へ向かうに従って回動軸心S1に接近する方向へ角度β1で傾斜している。角度β1は、例えば0.5°~2°程度の範囲内で、本実施例では約1°である。係合面66bと係合させられるサポート部材30の係合面30aは、ロック部材42の移動方向と平行であり、係合点P1のみでストッパ66の係合面66bと係合させられる。本実施例では係合点P1が係合部である。
【0060】
本実施例によれば、押出し荷重により第1ローラ62および第2ローラ64に加えられる垂直応力がストッパ66によって減じられることで、その第1ローラ62および第2ローラ64に生じるロック解除位置側へ転動する方向のトルクが低減されてP抜けが抑制される、という前記実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、ストッパ66の係合面66bがロック位置側へ向かうに従って回動軸心S1に接近する方向へ傾斜しているため、ロック部材42に押出し荷重が作用してストッパ66がサポート部材30に押圧されると、ストッパ66の係合面66bの傾斜に基づいて、係合点P1まわりにおいてストッパ66の回動軸心S1がロック位置側へ向かう方向(図9における反時計まわり方向)のトルクが発生するとともに、そのストッパ66の取付ピン100を介してロック部材42にロック位置側へ向かう方向の力Frが加えられるため、ロック部材42のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0061】
図10は、前記図8の実施例に比較して、突出姿勢とされたストッパ66の係合面66aがサポート部材30の係合面30bに密着させられ、所定の係合範囲L1で係合させられる点が相違する。すなわち、回動軸心S1を通る係合面30b、66aの垂直線V2が、ロック部材42の移動方向と平行なガイド部94の延長線に対して直角な方向から角度α1だけロック位置側へ傾斜する姿勢が突出姿勢である。したがって、本実施例においても、ロック部材42に押出し荷重が作用してストッパ66がサポート部材30に押圧されると、係合面30bの傾斜に基づいてロック部材42にロック位置側へ向かう方向の力Frが加えられ、ロック部材42のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが適切に抑制される。
【0062】
図11は、前記図2に対応する図で、前記実施例に比較して一対の第1ローラ62および第2ローラ64とストッパ66との相対的な配設位置が相違し、ストッパ66が相対的に図11における上方側、すなわちサポート部材30に近い位置に配設されている。この場合は、図11に示すパーキングロック状態、すなわちストッパ66が突出姿勢とされてサポート部材30に係合させられた状態において、第2ローラ64とサポート部材30のガイド部94との間に隙間Cが生じ、ロック部材42に押出し荷重が加えられた場合に、その押出し荷重の全部がストッパ66を介してサポート部材30によって受け止められる。したがって、押出し荷重により第1ローラ62および第2ローラ64に加えられる垂直応力がストッパ66によって一層減じられ、その第1ローラ62および第2ローラ64に生じるロック解除位置側へ転動する方向のトルクが一層低減されてP抜けが適切に抑制される。
【0063】
図12は、パーキングロック状態におけるロック部材120およびサポート部材30の断面図で、前記実施例に比較してストッパ122の配設位置が相違する。ロック部材120は、前記ロック部材42と同様に連結ヘッド60を備えて構成されているが、本実施例では連結ヘッド60の連結部72と第1ローラ62および第2ローラ64との間に取付ピン100が配設されて、その取付ピン100にストッパ122が取り付けられている。また、ストッパ122の付勢装置であるばね部材(この実施例ではねじりコイルスプリング)124が、ストッパ122と連結ヘッド60とに跨がって配設されて、ストッパ122を反時計まわりに付勢しており、ロック部材120がロック位置まで移動させられると、図12に示すようにサポート部材30の係合面30cに密着するように係合させられる突出姿勢とされる。サポート部材30には、前記ガイド部94とは別に姿勢変換部126が設けられており、ロック部材120がロック位置とロック解除位置との間を直線往復移動させられる際にストッパ122と係合させられて突出姿勢と退避姿勢とに機械的に姿勢変化させる。姿勢変換部126は、係合面30cのロック解除位置側(図12における左側)に隣接して、ロック部材120側へ突き出すようにロック部材120の移動方向と平行に設けられている。突出姿勢におけるストッパ122と係合面30cとの係合態様は、図7図11の各実施例と同様に種々の態様が可能である。
【0064】
本実施例においても、前記各実施例と同様の作用効果が得られる。また、ストッパ122およびばね部材124が共にロック部材120に配設されているため、組付作業等が容易になる。なお、前記各実施例においても、ばね部材124等の付勢装置をロック部材42に配設してストッパ66を付勢することができるし、逆に本実施例において、ばね部材102等の付勢装置をサポート部材30に配設してストッパ122を付勢しても良い。
【0065】
図13の車両用パーキングロック機構130は、ストッパ132がサポート部材134に配設された場合で、図13は前記図2に相当するパーキングロック状態の断面図であり、図14はロック解除状態の断面図である。また、図15は、サポート部材134に設けられたストッパ132が突出姿勢とされてロック部材136と係合させられた部分を拡大して示した図で、前記図7に対応する図である。サポート部材134は、前記サポート部材30と同様に変速機ケース等に固設されているとともにガイド部94を備えている一方、ストッパ132を配設するための凹所138が設けられている。ストッパ132は、取付ピン140を介してロック部材136の移動方向に対して直角な回動軸心S2まわりに回動可能、具体的には出力軸16と平行な回動軸心S2まわりに回動可能に、凹所138に配設されている。また、ロック部材136は、前記ロック部材42と同様に連結ヘッド60を備えて構成されているが、その連結ヘッド60の前記ストッパ66の配設部分には一対の側壁部74に跨がって係合ブロック142が設けられている。
【0066】
上記ストッパ132は、回動軸心S2まわりに回動させられることにより、図13に示されている突出姿勢と、図14に示されている退避姿勢とに、姿勢変化させられる。ストッパ132は、サポート部材134またはロック部材136に設けられた図示しない付勢装置によって、取付ピン140の反時計まわり方向に付勢されており、ロック部材136が図13に示すロック位置へ移動させられた状態では、付勢装置の付勢力に従って突出姿勢に保持される。この突出姿勢は、ストッパ132がロック部材136に向かって突き出す姿勢で、図15に拡大して示すように、ストッパ132の先端部に設けられた係合面132aが、ロック部材136の係合ブロック142に設けられた係合面142aに密着するように当接させられるとともに、係合面132a、142aの垂直線V3上に回動軸心S2が位置する垂直姿勢である。係合面142aは、ロック部材136の移動方向(図15における左右方向)と平行に設けられているとともに、ロック部材136の移動方向において回動軸心S2を通る垂直線V3の両側を含む係合範囲L2で係合面132aと密着させられる。係合範囲L2は、前記係合範囲L1と同様に適当に定められる。ストッパ132は、回動軸心S2と平行な方向(図15の紙面の表裏方向)に所定の幅寸法を有し、係合面132a、142aは所定の大きさの長方形の平坦な接触面を有するが、係合面132a、142aが点接触や線接触となるように、何れか一方を半球形状や半円柱形状にすることも可能である。本実施例では、ストッパ132が配設されているサポート部材134が一方の部材で、ロック部材136が他方の部材であり、係合範囲L2が係合部に相当する。
【0067】
上記係合ブロック142には、係合面142aのロック位置側(図15における右側)に隣接して、サポート部材134側へ突き出すようにロック部材136の移動方向と平行に姿勢変換部144が設けられており、ロック部材136がロック位置からロック解除位置へ移動させられる際に、ストッパ132は姿勢変換部144と係合させられ、付勢装置の付勢力に抗して回動軸心S2の時計まわりに機械的に回動させられて、図14に示す退避姿勢に姿勢変化させられる。前記凹所138の大きさは、ストッパ132が退避姿勢に姿勢変化することを許容するように定められている。
【0068】
本実施例においても、実質的に前記第1実施例と同様の作用効果が得られる。例えば、坂路での駐車の際にパーキングポール40をパーキングギヤ44から押し出す押出し荷重が発生し、その押出し荷重がパーキングポール40からカム機構96を介してロック部材136に加えられると、そのロック部材136とサポート部材134との間でストッパ132が挟圧される。これにより、ストッパ132がロック部材136に作用する押出し荷重の一部を担うため、押出し荷重に基づいてロック部材136に加えられるロック解除位置側へ後退する方向の力が低減されて、その後退によりパーキングポール40がパーキングギヤ44から抜け出すP抜けが抑制される。すなわち、押出し荷重により第1ローラ62および第2ローラ64に加えられる垂直応力がストッパ132によって減じられることで、その第1ローラ62および第2ローラ64に生じるロック解除位置側へ転動する方向のトルクが低減されてP抜けが抑制される。その場合に、ストッパ132はロック部材136とサポート部材134との間で挟圧されて圧縮荷重を受けるため、従来のように曲げ荷重が加えられる場合に比較してストッパ132やサポート部材134の必要強度が低減され、それ等の小型化や軽量化が可能である。
【0069】
また、突出姿勢とされているストッパ132とロック部材136とは、ロック部材136の移動方向において回動軸心S2を通る垂直線V3の両側を含む係合範囲L2で係合させられており、回動軸心S2よりもロック位置側(図15における右側)の部位を含んでいる。このため、ロック部材136に押出し荷重が作用してロック解除位置側へ移動する方向の力が加えられると、サポート部材134側の回動軸心S2を中心としてストッパ132が姿勢変化する際に、係合範囲L2の中のロック位置側の係合点P2は回動軸心S2を中心として図15の左下方向へ回動させられ、ロック部材136にパーキングポール40側へ押し返される方向の力が加えられるため、ロック部材136のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが適切に抑制される。言い換えれば、ストッパ132に回動軸心S2を中心として時計まわり方向のトルクが加えられることにより、係合点P2を介してロック部材136がパーキングポール40側へ押し返されるため、ロック部材136のロック解除位置側への移動が阻害される。
【0070】
また、このようにサポート部材134にストッパ132を配設する場合も、突出姿勢におけるストッパ132と係合ブロック142との係合態様は、前記図7図11の各実施例と同様に種々の態様が可能であり、ストッパ132および係合ブロック142の配設位置も、例えば図12のように変更することができる。
【0071】
例えば図16は前記図8に対応する実施例で、係合ブロック142に設けられた係合面142bが、ロック部材136の移動方向と平行な直線、すなわちガイド部94と平行な直線に対し、図16の左方向であるロック解除位置側へ向かうに従って回動軸心S2から離間する方向へ角度α2で傾斜している。角度α2は、前記角度α1と同様に、例えば0.5°~2°程度の範囲内で、本実施例では約1°である。係合面142bと係合させられるストッパ132の係合面132aは、ストッパ132が突出姿勢とされた状態においてロック部材136の移動方向と平行であり、回動軸心S2よりもロック位置側の係合点P2のみで係合ブロック142の係合面142bと係合させられる。本実施例では係合点P2が係合部である。
【0072】
本実施例によれば、押出し荷重により第1ローラ62および第2ローラ64に加えられる垂直応力がストッパ132によって減じられることで、その第1ローラ62および第2ローラ64に生じるロック解除位置側へ転動する方向のトルクが低減されてP抜けが抑制される、という図15の実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、係合ブロック142の係合面142bがロック解除位置側へ向かうに従って回動軸心S2から離間する方向へ傾斜しているため、ロック部材136に押出し荷重が作用して係合ブロック142がストッパ132に押圧されると、係合ブロック142の係合面142bの傾斜に基づいて、回動軸心S2まわりにおいて反時計まわり方向のトルクがストッパ132に発生する。すなわち、係合点P2がロック位置側へ向かう方向(図16における右方向)のトルクが発生し、その係合点P2を介してロック部材136にロック位置側へ向かう方向の力Frが加えられるため、ロック部材136のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0073】
図17は、前記図15に対応する図で、ストッパ132と係合ブロック142との係合部分の拡大図を併せて示した図であり、ストッパ132に設けられた係合面132bが、図15の実施例の係合面132aと相違している。この係合面132bは、ロック部材136の移動方向と平行な直線、すなわちガイド部94と平行な直線に対し、図17の左方向であるロック解除位置側へ向かうに従って回動軸心S2に接近する方向へ角度β2で傾斜している。角度β2は、例えば0.5°~2°程度の範囲内で、本実施例では約1°である。係合面132bと係合させられる係合ブロック142の係合面142aは、ロック部材136の移動方向と平行であり、回動軸心S2よりもロック位置側の係合点P2のみでストッパ132の係合面132bと係合させられる。本実施例では係合点P2が係合部である。
【0074】
本実施例によれば、図15の実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、ストッパ132の係合面132bがロック解除位置側へ向かうに従って回動軸心S2に接近する方向へ傾斜しているため、ロック部材136に押出し荷重が作用して係合ブロック142がストッパ132に押圧されると、ストッパ132の係合面132bの傾斜に基づいて、回動軸心S2まわりにおいて反時計まわり方向のトルクがストッパ132に発生する。すなわち、係合点P2がロック位置側へ向かう方向(図17における右方向)のトルクが発生し、その係合点P2を介してロック部材136にロック位置側へ向かう方向の力Frが加えられるため、ロック部材136のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0075】
図18は、前記図16の実施例に比較して、突出姿勢とされたストッパ132の係合面132aが係合ブロック142の係合面142bに密着させられ、所定の係合範囲L2で係合させられる点が相違する。すなわち、回動軸心S2を通る係合面132a、142bの垂直線V4が、ロック部材136の移動方向と平行なガイド部94の延長線に対して直角な方向から角度α2だけロック位置側へ傾斜する姿勢が突出姿勢である。したがって、本実施例においても、ロック部材136に押出し荷重が作用して係合ブロック142がストッパ132に押圧されると、係合面142bの傾斜に基づいてロック部材136にロック位置側へ向かう方向の力Frが加えられ、ロック部材136のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが適切に抑制される。
【0076】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0077】
10、130:車両用パーキングロック機構 30、134:サポート部材 30a、30b、30c、66a、66b、132a、132b、142a、142b:係合面 40:パーキングポール 42、120、136:ロック部材 44:パーキングギヤ 62:第1ローラ 64:第2ローラ 66、122、132:ストッパ 92:カム面 94:ガイド部(姿勢変換部) 96:カム機構 102、124:ばね部材(付勢装置) 126、144:姿勢変換部 S1、S2:回動軸心 L1、L2:係合範囲(係合部) P1、P2:係合点(係合部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18