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特許7380469ポンプ洗浄管理装置、真空ポンプ、ポンプ洗浄管理方法およびポンプ洗浄管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ポンプ洗浄管理装置、真空ポンプ、ポンプ洗浄管理方法およびポンプ洗浄管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20231108BHJP
   F04B 37/16 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F04D19/04 H
F04B37/16 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020125850
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021939
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】田邊 史夏
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-008590(JP,U)
【文献】特開2019-188273(JP,A)
【文献】特開2004-060486(JP,A)
【文献】特開2018-193933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
F04B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプの内部の特定箇所を撮影した撮影画像データを機械学習モデルに与え、前記真空ポンプにおける反応生成物の堆積量を示す評価値を前記機械学習モデルから取得する評価値取得部と、
前記評価値取得部が取得した前記評価値に基づいて、前記真空ポンプの洗浄に関する情報を提示する情報提示部と、
を備え、
前記機械学習モデルは、前記真空ポンプの前記特定箇所を撮影して得られた教師画像データ、および、前記教師画像データが取得されたときの前記真空ポンプ内の反応生成物の量を示す堆積量データの対応関係を教師データとして学習することにより生成される、ポンプ洗浄管理装置。
【請求項2】
前記特定箇所は、前記真空ポンプの排気口である、請求項1に記載のポンプ洗浄管理装置。
【請求項3】
前記洗浄に関する情報は、前記真空ポンプの洗浄の必要性を示すカテゴリーである、請求項1または請求項2に記載のポンプ洗浄管理装置。
【請求項4】
前記堆積量データは、前記教師画像データが取得された前記真空ポンプの洗浄前後の質量差から得られる、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のポンプ洗浄管理装置。
【請求項5】
前記真空ポンプに設けられた前記真空ポンプの内部を視認可能な透明窓と、
前記透明窓の外部に取り付けられた撮像部と、を備え、
前記撮像部により前記撮影画像データが取得される、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のポンプ洗浄管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の前記透明窓および前記撮像部を備える、真空ポンプ。
【請求項7】
真空ポンプの特定箇所を撮影して得られた教師画像データ、および、前記教師画像データが取得されたときの前記真空ポンプ内の反応生成物の量を示す堆積量データの対応関係を教師データとして学習を行い、機械学習モデルを生成するステップと、
前記真空ポンプの内部の特定箇所を撮影した撮影画像データを前記機械学習モデルに与え、前記真空ポンプにおける反応生成物の堆積量を示す評価値を前記機械学習モデルから取得するステップと、
取得された前記評価値に基づいて、前記真空ポンプの洗浄に関する情報を提示するステップと、を含む、ポンプ洗浄管理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
真空ポンプの特定箇所を撮影して得られた教師画像データ、および、前記教師画像データが取得されたときの前記真空ポンプ内の反応生成物の量を示す堆積量データの対応関係を教師データとして学習を行い、機械学習モデルを生成する処理、
前記真空ポンプの内部の特定箇所を撮影した撮影画像データを前記機械学習モデルに与え、前記真空ポンプにおける反応生成物の堆積量を示す評価値を前記機械学習モデルから取得する処理、
取得された前記評価値に基づいて、前記真空ポンプの洗浄に関する情報を提示する処理、を実行させる、ポンプ洗浄管理プログラム。
【請求項9】
前記特定箇所は、前記真空ポンプの排気口である、請求項7に記載のポンプ洗浄管理方法
【請求項10】
前記堆積量データは、前記教師画像データが取得された前記真空ポンプの洗浄前後の質量差から得られる、請求項7に記載のポンプ洗浄管理方法。
【請求項11】
前記特定箇所は、前記真空ポンプの排気口である、請求項8に記載のポンプ洗浄管理プログラム。
【請求項12】
前記堆積量データは、前記教師画像データが取得された前記真空ポンプの洗浄前後の質量差から得られる、請求項8に記載のポンプ洗浄管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ洗浄管理装置、真空ポンプ、ポンプ洗浄管理方法およびポンプ洗浄管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶パネル等の製造におけるドライエッチング、CVD(Chemical vapor deposition)等の工程は、真空処理されたプロセスチャンバ内で行われる。真空ポンプにより内部のガスが排気されたプロセスチャンバには、プロセスガスが導入される。これにより、プロセスチャンバ内が所定の圧力に維持された状態で、これらの工程が行われる。ドライエッチング、CVD等の工程において、プロセスチャンバ内のガスを排気するとき、ガスの排気に伴って真空ポンプ内に反応生成物が堆積することがある。
【0003】
下記特許文献1は、排気ポンプの堆積物検知方法を開示している。この方法では、真空ポンプのモータ電流値の変化量が監視され、この変化量を指標として、反応生成物の堆積量が判断されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5767632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真空ポンプ内に反応生成物が堆積すると、真空ポンプの排気性能が低下する。したがって、真空ポンプの性能を維持するためには、真空ポンプ内の定期的な洗浄が必要となる。真空ポンプ内の反応生成物の堆積量を検知する仕組みがない場合には、堆積量を判断する客観的な情報が得られないため、洗浄タイミングはユーザの運用管理に委ねられる。
【0006】
特許文献1で開示された方法は、モータ電流値の変化量を監視している。プロセスチャンバ内で行われる処理は単一のプロセスではなく、様々なプロセスである。プロセスによってガス排気量は異なるためモータ電流値は異なる。また、同一プロセスであっても排気されるガス排気量は変動するためモータ電流値も変動する。このため、特許文献1の方法によっても、反応生成物の堆積量を高い精度で検知することはできないため、真空ポンプの洗浄タイミングを把握することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、真空ポンプの洗浄に関する情報をユーザに提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従うポンプ洗浄管理装置は、真空ポンプの内部の特定箇所を撮影した撮影画像データを機械学習モデルに与え、真空ポンプにおける反応生成物の堆積量を示す評価値を機械学習モデルから取得する評価値取得部と、評価値取得部が取得した評価値に基づいて、真空ポンプの洗浄に関する情報を提示する情報提示部とを備え、機械学習モデルは、真空ポンプの特定箇所を撮影して得られた教師画像データ、および、教師画像データが取得されたときの真空ポンプ内の反応生成物の量を示す堆積量データの対応関係を教師データとして学習される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、真空ポンプの洗浄に関する情報をユーザに提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る真空処理装置の概略図である。
図2】本実施の形態に係る真空ポンプの断面図である。
図3】排気ホースが取り外された真空処理装置およびポンプ洗浄管理装置を示す図である。
図4】デジタルカメラで撮影された真空ポンプの排気口を示す図である。
図5】本実施の形態に係るポンプ洗浄管理装置の構成図である。
図6】本実施の形態に係るポンプ洗浄管理装置の機能ブロック図である。
図7】本実施の形態に係る学習方法を示すフローチャートである。
図8】本実施の形態に係る評価方法を示すフローチャートである。
図9】他の実施の形態に係る真空処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態に係るポンプ洗浄管理装置および真空ポンプの構成について説明する。
【0012】
(1)真空処理装置の構成
図1は、実施の形態における真空ポンプ12が組み込まれた真空処理装置1の全体図である。真空処理装置1は、例えば、エッチング処理装置や成膜処理装置である。真空処理装置1は、図1に示すように、プロセスチャンバ11、真空ポンプ12、排気ホース13およびバックポンプ14を備える。プロセスチャンバ11内のガスは、真空ポンプ12により排気される。そして、プロセスチャンバ11内にプロセスガスが供給された状態で、エッチング処理等の各種プロセスが行われる。
【0013】
真空ポンプ12の上部は、図示しないバルブを介してプロセスチャンバ11に取り付けられている。真空ポンプ12の排気口28には、排気ホース13が接続される。排気ホース13の端部には、バックポンプ14が取り付けられる。プロセスチャンバ11から排気されたガスは、真空ポンプ12内を通過し、真空ポンプ12の排気口28から排気される。排気口28から排気されたガスは、排気ホース13を介してバックポンプ14に流れる。バックポンプ14は、真空ポンプ12から排気されたガスを大気圧まで圧縮して排出する。
【0014】
(2)真空ポンプの構成
図2は、真空ポンプ12の構成を示す断面図である。本実施の形態における真空ポンプ12は磁気軸受式のターボ分子ポンプである。真空ポンプ12は、ロータシャフト30、ポンプロータ31、ロータ翼33およびロータ円筒部35を有する回転体3と、ベース21、ポンプケーシング22、ステータ翼23およびステータ25を有する回転支持部2とを備える。
【0015】
ロータシャフト30は、ベース21に設けられたラジアル磁気軸受42a,42bとアキシャル磁気軸受42cとによって磁気浮上支持され、モータ43により回転駆動される。磁気軸受42a~42cが作動していない場合には、ロータシャフト30は非常用のメカニカルベアリング41a,41bによって支持される。ロータシャフト30がモータ43により回転駆動されることにより、回転体3が一体となって回転支持部2に対して回転する。ロータシャフト30は、軸心30aを中心に回転駆動する。
【0016】
ポンプロータ31には、上流側にロータ翼33が複数段形成され、下流側にロータ円筒部35が形成されている。これらに対応して、固定側には複数段のステータ翼23と、円筒状のステータ25とが設けられている。複数のロータ翼33とステータ翼23が上下方向の隙間を空けて交互に配列されることにより、ターボポンプTPが構成されている。複数のロータ翼33および複数のステータ翼23を上下方向に通過する領域によって流路R1が形成されている。ロータ円筒部35またはステータ25のいずれかには図示しないねじ溝が設けられている。ロータ円筒部35およびステータ25により、HolweckポンプHPが構成されている。ロータ円筒部35およびステータ25の間に形成された微小な隙間によって流路R2が形成されている。
【0017】
ベース21の上部には、真空ポンプ12の外形を形成する筒状のポンプケーシング22が固定されている。ポンプケーシング22の上端には、吸気口26が形成されている。吸気口26は、バルブを介してプロセスチャンバ11に接続される。ベース21の排気路27は排気口28に接続される。排気口28には、排気ホース13を介してバックポンプ14が接続される。ポンプロータ31が締結されたロータシャフト30をモータ43により高速回転すると、吸気口26側の気体分子は、流路R1および流路R2を流れて、排気口28から排気される。
【0018】
(3)真空ポンプの排気口
図3は、真空ポンプ12から排気ホース13およびバックポンプ14を取り外した状態の真空処理装置1およびポンプ洗浄管理装置15を示す図である。真空ポンプ12から排気ホース13が取り外されることによって、真空ポンプ12の排気口28が露出している。真空処理装置1におけるプロセスが終了した後、真空ポンプ12の洗浄管理のために排気ホース13が取り外される。洗浄管理として、ユーザは、図3に示すように、デジタルカメラCAを用いて、排気口28の画像を撮影する。
【0019】
排気口28の画像を撮影するためには、真空処理装置1内の圧力を調整した後、真空ポンプ12から排気ホース13を取り外す作業を行うだけでよい。撮影する箇所は、排気口28であるので、真空ポンプ12をプロセスチャンバ11に接続したままの状態で撮影することができる。また、真空ポンプ12の他の部品を分解するなどの作業も必要とされない。
【0020】
デジタルカメラCAで撮影された画像データは、ポンプ洗浄管理装置15に入力される。例えば、メモリカードを介して画像データがポンプ洗浄管理装置15に入力される。あるいは、通信を利用してデジタルカメラCAからポンプ洗浄管理装置15に画像データが転送される。
【0021】
図4は、デジタルカメラCAを用いて撮影された排気口28の画像を示す図である。図4で示すような画像が、後で説明する機械学習モデルの教師画像データとして利用される。また、図4で示すような画像が、真空ポンプ12内の反応生成物の堆積量の評価値を取得するための撮影画像データとして用いられる。
【0022】
(4)ポンプ洗浄管理装置の構成
次に、ポンプ洗浄管理装置15の構成について説明する。本実施の形態においては、ポンプ洗浄管理装置15が、機械学習モデルを生成する学習工程と、機械学習モデルを利用して反応生成物の堆積量の評価値を取得する評価工程とを行う装置として説明する。しかし、学習工程および評価工程を行う装置は別の装置であってもよい。予め別の装置において学習工程が行われ、学習済みの機械学習モデルを他の装置に実装させて評価工程を行ってもよい。
【0023】
図5は、ポンプ洗浄管理装置15の構成図である。ポンプ洗浄管理装置15は、例えば、パーソナルコンピュータが利用される。ポンプ洗浄管理装置15は、図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、ROM(Read Only Memory)53、記憶装置54、デバイスインタフェース55、ネットワークインタフェース56およびモニタ57を備える。
【0024】
CPU51は、RAM52をワークメモリとして利用しながら、ポンプ洗浄管理プログラムP1を実行する。記憶装置54は、例えばハードディスクである。記憶装置54には、ポンプ洗浄管理プログラムP1、教師データ61、撮影画像データ64および機械学習モデル65が記憶されている。教師データ61は、教師画像データ62および堆積量データ63を含む。ポンプ洗浄管理プログラムP1は、ROM53に記憶されていてもよい。
【0025】
教師データ61は、機械学習モデル65を生成するために用いられる。教師画像データ62は、真空ポンプ12の排気口28を撮影した画像データである。堆積量データ63は、教師画像データ62が撮影されたときに真空ポンプ12内に堆積されていた反応生成物の堆積量を示すデータである。記憶装置54には、機械学習モデル65を学習させるための複数の教師画像データ62および複数の堆積量データ63が記憶されている。教師画像データ62および堆積量データ63は、一対一に対応付けられている。複数の教師データ61は、同一の真空ポンプ12から取得されたデータであってもよいし、同じタイプの複数の真空ポンプ12から取得されたデータであってもよい。
【0026】
堆積量データ63は、例えば、洗浄前後の真空ポンプ12の質量差から求められる。まず、洗浄前の真空ポンプ12の質量を測定する。次に、真空ポンプ12の排気口28をデジタルカメラCAで撮影し、教師画像データ62を取得する。次に、真空ポンプ12の洗浄を行い、真空ポンプ12内の反応生成物を排出する。真空ポンプ12の洗浄後に再び、真空ポンプ12の質量を測定する。そして、洗浄前後の真空ポンプ12の質量差から堆積量データ63が算出される。
【0027】
撮影画像データ64は、真空ポンプ12の排気口28を撮影した画像データである。撮影画像データ64は、真空ポンプ12内の反応生成物の堆積量の評価値を取得するために用いられる。つまり、撮影画像データ64は学習済みの機械学習モデル65の入力データとなる。
【0028】
ポンプ洗浄管理プログラムP1は、教師データ61を利用して、機械学習モデル65に対する学習処理を行う。ポンプ洗浄管理プログラムP1は、また、撮影画像データ64を機械学習モデル65に与えることにより、真空ポンプ12の反応生成物の堆積量に関する評価値を取得する評価処理を行う。
【0029】
デバイスインタフェース55は、外部記憶装置等とのインタフェースである。CPU51は、デバイスインタフェース55を介して、CD-ROM、メモリカード等の記憶媒体MAにアクセス可能である。例えば、CPU51は、デジタルカメラCAで撮影された画像データが保存されたメモリカードにアクセスすることが可能である。ネットワークインタフェース56は、有線/無線通信を介して外部のデバイスと通信を行うインタフェースである。ネットワークインタフェース56は、例えば、TCP/IP等の有線/無線通信、Bluetooth、赤外線等の近距離無線通信等のインタフェースを備える。例えば、CPU51は、ネットワークインタフェース56を介してデジタルカメラCAと通信可能である。モニタ57には、真空ポンプ12の洗浄に関する情報が表示される。
【0030】
図6は、ポンプ洗浄管理装置15の機能ブロック図である。ポンプ洗浄管理装置15は、制御部70を備える。制御部70は、CPU51が、RAM52をワークメモリとして使用し、記憶装置54に格納されているポンプ洗浄管理プログラムP1を実行することにより実現される。制御部70は、学習部71、評価値取得部72および情報提示部73を備える。つまり、学習部71、評価値取得部72および情報提示部73は、記憶装置54に格納されたポンプ洗浄管理プログラムP1が実行されることにより実現される。
【0031】
上記実施の形態においては、ポンプ洗浄管理プログラムP1は、記憶装置54に保存されている場合を例に説明した。他の実施の形態として、ポンプ洗浄管理プログラムP1は、記憶媒体MAに保存されて提供されてもよい。ポンプ洗浄管理装置15のCPU51は、デバイスインタフェース55を介して記憶媒体MAにアクセスし、記憶媒体MAに保存されたポンプ洗浄管理プログラムP1を、記憶装置54またはROM53に保存するようにしてもよい。あるいは、CPU51は、デバイスインタフェース55を介して記憶媒体MAにアクセスし、記憶媒体MAに保存されたポンプ洗浄管理プログラムP1を実行するようにしてもよい。
【0032】
学習部71は、教師データ61を利用して、機械学習モデル65を生成する学習処理を実行する。評価値取得部72は、撮影画像データ64を機械学習モデル65に与えることにより、真空ポンプ12内の反応生成物の堆積量の評価値を取得する。情報提示部73は、評価値取得部72が取得した評価値に基づいて、真空ポンプ12の洗浄に関する情報をモニタ57に表示する。
【0033】
(5)学習処理
次に、ポンプ洗浄管理装置15において実行される学習処理について、図7を参照しながら説明する。図7で示すフローチャートは、図6に示す学習部71により実行される学習処理のフローチャートである。
【0034】
学習部71は、まず、ステップS11において、記憶装置54から教師画像データ62を取得する。記憶装置54には、多数の教師画像データ62が保存されており、学習部71は、その中の1つの教師画像データ62を取得する。
【0035】
学習部71は、次に、ステップS12において、ステップS11において取得した教師画像データ62に対応する堆積量データ63を取得する。つまり、ステップS11で取得した教師画像データ62が撮影されたときの真空ポンプ12内の反応生成物の量を示す堆積量データ63を取得する。上述したように、記憶装置54に記憶されている複数の教師画像データ62および複数の堆積量データ63は、一対一に対応付けられている。
【0036】
学習部71は、次に、ステップS13において、教師画像データ62および堆積量データ63の対応関係を教師データ61として学習処理を実行する。学習部71は、例えば、ニューラルネットワークを用いる。学習部71は、教師画像データ62から特徴量データを抽出し、抽出した特徴量データをニューラルネットワークの入力層とする。学習部71は、堆積量データ63に関する評価値をニューラルネットワークの出力層とする。例えば、堆積量データ63の値から、真空ポンプ12内の状態を複数のカテゴリーに分類し、そのカテゴリーを評価値とすることができる。カテゴリーとしては、例えば、「0:すぐに洗浄必要」、「1:洗浄時期が近づいている」、「2:洗浄不要」等が考えられる。あるいは、更に細かく評価値を分類可能な場合には、「1日後に洗浄が必要」、「3日後に洗浄が必要」、「1週間後に洗浄が必要」等、時間をカテゴリーとして出力してもよい。あるいは、「3回プロセス後に洗浄が必要」、「10回プロセス後に洗浄が必要」等、回数をカテゴリーとして出力してもよい。また、堆積量データ63の測定精度が高い場合には、堆積量データ63をそのまま評価値としてもよい。この場合、ニューラルネットワークの出力層として、堆積量(質量)が出力される。
【0037】
学習部71は、ステップS14において、記憶装置54に格納されている全ての教師データ61についてステップS11~S13の学習処理が実行されたか否かを判定する。全ての教師データ61について学習処理が実行されていない場合には、ステップS11に戻り、他の教師データ61について学習処理を実行する。全ての教師データ61について学習処理が実行された場合には、図7に示す学習処理を終了する。これにより、機械学習モデル65が生成される。もちろん、新たな教師データ61が得られた場合には、学習部71は追加的に学習処理を実行し、機械学習モデル65を更新することができる。
【0038】
(6)評価処理
次に、ポンプ洗浄管理装置15において実行される評価処理について、図8を参照しながら説明する。図8で示すフローチャートは、図6に示す評価値取得部72および情報提示部73により実行される評価処理のフローチャートである。
【0039】
評価値取得部72は、まず、ステップS21において、記憶装置54から撮影画像データ64を取得する。ユーザは、図4を用いて説明したように、撮影画像データ64を取得するために、真空ポンプ12から排気ホース13を取り外す。そして、ユーザは、デジタルカメラCAを用いて排気口28を撮影し、撮影画像データ64を取得する。撮影画像データ64は、図3を用いて説明したように、記憶媒体MAまたは通信を利用してポンプ洗浄管理装置15の記憶装置54に保存される。
【0040】
評価値取得部72は、次に、ステップS22において、ステップS21において取得した撮影画像データ64を機械学習モデル65に与え、反応生成物の堆積量を示す評価値を取得する。具体的には、評価値取得部72は、撮影画像データ64から特徴量データを抽出し、抽出した特徴量データを機械学習モデル65の入力層に与える。これにより、機械学習モデル65は、真空ポンプ12内の状態を示す評価値を出力する。上述したように、例えば、評価値として、「0:すぐに洗浄必要」、「1:洗浄時期が近づいている」、「2:洗浄不要」等のカテゴリーが出力される。あるいは、評価値として、堆積量(質量)が学習されている場合には、堆積量が出力される。
【0041】
情報提示部73は、次に、ステップS23において、真空ポンプ12の洗浄に関する情報をモニタ57に出力する。情報提示部73は、ステップS22において取得された評価値に基づいて洗浄に関する情報をユーザに提示する。例えば、評価値として、「0:すぐに洗浄必要」、「1:洗浄時期が近づいている」、「2:洗浄不要」等のカテゴリーが得られた場合には、情報提示部73は、それらカテゴリーをモニタ57に出力する。あるいは、更に細かく評価値が分類されている場合には、「何日後に洗浄が必要」であるとか「何回プロセス後に洗浄が必要」であるなど具体的な日数や回数をカテゴリーとして表示してもよい。評価値として、堆積量(質量)が得られた場合には、情報提示部73は、堆積量をモニタ57に出力する。ユーザは、堆積量から経験的に真空ポンプ12の洗浄の必要性を判断することができる。あるいは、情報提示部73は、堆積量と合わせて、堆積量から判断される真空ポンプ12の洗浄の必要性の有無を提示してもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態に係るポンプ洗浄管理装置15は、真空ポンプ12の内部の排気口28を撮影した撮影画像データ64を機械学習モデル65に与え、真空ポンプ12における反応生成物の堆積量を示す評価値を機械学習モデル65から取得する。そして、取得した評価値に基づいて、真空ポンプの洗浄に関する情報がモニタ57に出力される。ユーザは、真空ポンプ12の排気口28の画像を撮影するだけで、真空ポンプ12の洗浄の必要性の有無を判断することができる。排気口28の画像を撮影するためには、排気ホース13を取り外すだけでよいので、真空ポンプ12の他の部品を取り外したり、分解したりする必要はない。
【0043】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。上記の実施の形態では、排気口28が特定箇所の例である。また、下記の他の実施の形態において、撮像素子CBが撮像部の例である。
【0044】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する種々の要素を用いることもできる。
【0045】
(8)他の実施の形態
上記実施の形態においては、図3で示したように、真空ポンプ12から排気ホース13が取り外されることによって、排気口28の画像が撮影された。他の実施の形態として、撮像素子を排気口28の近傍に備え付ける構成としてもよい。図9で示す真空ポンプ12には、撮像素子CBが排気口28の外側面に取り付けられている。また、撮像素子CBが取り付けられた部分は、排気口28に透明窓TWが設けられている。これにより、排気口28の外側面に取り付けられた撮像素子CBは、常時排気口28の内部の画像を撮影可能である。この実施の形態によれば、排気ホース13を取り外すことなく、排気口28の画像を取得することができる。さらに、透明窓TWおよび撮像素子CBを別の場所に設けることにより、排気口28以外の場所(真空ポンプ12の内部の別の場所)の画像を撮影することが可能である。この場合であれば、排気口28以外の場所で撮影された教師画像データ62により機械学習モデル65を生成し、排気口28以外の場所で撮影された撮影画像データ64に基づいて洗浄に関する評価値が得られる。
【0046】
上記実施の形態においては、ポンプ洗浄に関する情報は、ポンプ洗浄管理装置15が備えるモニタ57に表示された。他の実施の形態として、ポンプ洗浄に関する情報は、真空処理装置1が備えるコントロールパネル等に表示されても良い。あるいは、ポンプ洗浄管理装置15の全体構成を真空処理装置1に組み込む構成としてもよい。
【0047】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【0048】
(9)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0049】
(第1項)
本発明の一態様に係るポンプ洗浄管理装置は、真空ポンプの内部の特定箇所を撮影した撮影画像データを機械学習モデルに与え、前記真空ポンプにおける反応生成物の堆積量を示す評価値を前記機械学習モデルから取得する評価値取得部と、
前記評価値取得部が取得した前記評価値に基づいて、前記真空ポンプの洗浄に関する情報を提示する情報提示部と、
を備え、
前記機械学習モデルは、前記真空ポンプの前記特定箇所を撮影して得られた教師画像データ、および、前記教師画像データが取得されたときの前記真空ポンプ内の反応生成物の量を示す堆積量データの対応関係を教師データとして学習される。
【0050】
ユーザは、真空ポンプの特定箇所の画像を撮影するだけで、真空ポンプの洗浄に関する情報を得ることができる。
【0051】
(第2項)第1項に記載のポンプ洗浄管理装置であって、
前記特定箇所は、前記真空ポンプの排気口であってもよい。
【0052】
ユーザは、真空ポンプの排気口の画像を撮影するだけで、真空ポンプの洗浄に関する情報を得ることができる。ユーザは、排気口の画像を撮影するためには、排気ホースを取り外すだけでよいので、真空ポンプの他の部品を取り外したり、分解したりする必要はない。
【0053】
(第3項)
第1項または第2項に記載のポンプ洗浄管理装置であって、
前記洗浄に関する情報は、前記真空ポンプの洗浄の必要性を示すカテゴリーであってもよい。
【0054】
提示されたカテゴリーにより、ユーザは、真空ポンプの洗浄の必要性を判断することができる。
【0055】
(第4項)
第1項~第3項のいずれか一項に記載のポンプ洗浄管理装置であって、
前記堆積量データは、前記教師画像データが取得された前記真空ポンプの洗浄前後の質量差から得られてもよい。
【0056】
実際の反応生成物の堆積量を測定する必要がない。真空ポンプの質量から堆積量を測定することができる。
【0057】
(第5項)
第1項~第4項のいずれか一項に記載のポンプ洗浄管理装置であって、
前記真空ポンプに設けられた前記真空ポンプの内部を視認可能な透明窓と、
前記透明窓の外部に取り付けられた撮像部と、を備え、
前記撮像部により前記撮影画像データが取得されてもよい。
【0058】
真空ポンプのいずれの部品も分解することなく、撮影画像データを取得することができる。
【0059】
(第6項)
本発明の他の態様に係る真空ポンプは、第5項に記載の前記透明窓および前記撮像部を備える。
【0060】
(第7項)
本発明の他の態様に係るポンプ洗浄管理方法は、
真空ポンプの特定箇所を撮影して得られた教師画像データ、および、前記教師画像データが取得されたときの前記真空ポンプ内の反応生成物の量を示す堆積量データの対応関係を教師データとして学習を行い、機械学習モデルを生成するステップと、
前記真空ポンプの内部の特定箇所を撮影した撮影画像データを前記機械学習モデルに与え、前記真空ポンプにおける反応生成物の堆積量を示す評価値を前記機械学習モデルから取得するステップと、
取得された前記評価値に基づいて、前記真空ポンプの洗浄に関する情報を提示するステップとを含む。
【0061】
(第8項)
本発明の他の態様に係るポンプ洗浄管理プログラムは、
コンピュータに、
真空ポンプの特定箇所を撮影して得られた教師画像データ、および、前記教師画像データが取得されたときの前記真空ポンプ内の反応生成物の量を示す堆積量データの対応関係を教師データとして学習を行い、機械学習モデルを生成する処理、
前記真空ポンプの内部の特定箇所を撮影した撮影画像データを前記機械学習モデルに与え、前記真空ポンプにおける反応生成物の堆積量を示す評価値を前記機械学習モデルから取得する処理、
取得された前記評価値に基づいて、前記真空ポンプの洗浄に関する情報を提示する処理を実行させる。
【符号の説明】
【0062】
1…真空処理装置、12…真空ポンプ、13…排気ホース、15…ポンプ洗浄管理装置、57…モニタ、61…教師データ、62…教師画像データ、63…堆積量データ、64…撮影画像データ、65…機械学習モデル、71…学習部、72…評価値取得部、73…情報提示部、80…機械学習モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9