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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ワイパ制御方法、およびワイパ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/08 20060101AFI20231108BHJP
   B60S 1/34 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60S1/08 N
B60S1/34 270
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020143626
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038909
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-03-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)販売日:令和1年11月8日から現在まで (2)販売した場所:日本
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】山内 一平
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-084437(JP,A)
【文献】特開2009-248650(JP,A)
【文献】特開2014-015152(JP,A)
【文献】特開2015-140041(JP,A)
【文献】特開2019-001295(JP,A)
【文献】特開2015-196464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00-1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウインドシールドを拭くワイパブレード、および前記ワイパブレードが取り付けられ、所定のピボット軸を揺動中心として前記ウインドシールドの表面に沿って前記ワイパブレードとともに揺動可能なワイパアームを備えたワイパと、前記ワイパを前記ウインドシールドの表面に沿って所定の上反転位置と下反転位置との間で往復揺動させる駆動部とを備え、前記ワイパアームが前記ワイパブレードを前記ウインドシールドに接触させる基本位置から前記ワイパブレードを前記ウインドシールドから立ち上げて離間させる退避位置へ移動するロックバックが可能で、且つ、前記下反転位置より下方であってエンジンフードの後端と前記ウインドシールドとの間に位置する所定の格納位置に前記ワイパを格納することが可能な構成を有するワイパ装置におけるワイパ制御方法であって、
前記ワイパを前記格納位置に格納する格納動作中において、前記ワイパアームを前記下反転位置へ向けて下方へ揺動させているときに、前記ワイパアームが前記格納位置よりも上方位置で、かつ、前記ワイパアームが前記退避位置に位置している場合に、前記ウインドシールドに倒れ込んで前記基本位置に復帰することが可能な所定の一時停止位置に、前記ワイパアームを所定時間停止させ、
前記所定時間経過後に前記ワイパアームを前記格納位置まで揺動させ
前記一時停止位置は、前記退避位置にある前記ワイパアームが前記格納位置へ向けて揺動する際に前記ワイパアームが前記エンジンフードの後端と接触状態となる位置から下方の所定範囲にある、
ことを特徴とするワイパ制御方法。
【請求項2】
前記所定範囲は、前記ワイパアームが前記エンジンフードの後端と接触したときに、前記エンジンフードの後端から前記ウインドシールド側に所定の大きさ以上の反力を受ける範囲に設定される、
請求項記載のワイパ制御方法。
【請求項3】
前記ワイパアームが前記退避位置にある場合に前記エンジンフードの後端から反力を受けたときに、前記ワイパアームに設けられた付勢手段によって、前記ワイパアームを退避位置から前記基本位置へ付勢する、
請求項記載のワイパ制御方法。
【請求項4】
前記所定範囲は、前記ワイパアームが前記ウインドシールド側に倒れ込んで前記基本位置へ復帰する際に前記ワイパブレードが前記エンジンフードの後端に接触しない範囲に設定されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のワイパ制御方法。
【請求項5】
車両のウインドシールドを拭くワイパブレード、および前記ワイパブレードが取り付けられ、所定のピボット軸を揺動中心として前記ウインドシールドの表面に沿って前記ワイパブレードとともに揺動可能なワイパアームを備え、前記ワイパアームが前記ワイパブレードを前記ウインドシールドに接触させる基本位置から前記ワイパブレードを前記ウインドシールドから立ち上げて離間させる退避位置へ移動するロックバックが可能な構成を有するワイパと、
前記ワイパを前記ウインドシールドの表面に沿って所定の上反転位置と下反転位置との間で往復揺動させる駆動部と、
前記駆動部の駆動を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記駆動部に対して、前記下反転位置より下方であってエンジンフードの後端と前記ウインドシールドとの間に位置する所定の格納位置に前記ワイパを格納する格納動作を行うように制御し、さらに、前記格納動作中において、前記ワイパアームを前記下反転位置へ向けて下方へ揺動させているときに、前記ワイパアームが前記格納位置よりも上方位置で、かつ、前記ワイパアームが前記退避位置に位置している場合に、前記ウインドシールドに倒れ込んで前記基本位置に復帰することが可能な所定の一時停止位置に、前記ワイパアームを所定時間停止させるように制御し、さらに、前記所定時間経過後に前記ワイパアームを前記格納位置まで揺動させるように制御し、
前記一時停止位置は、前記退避位置にある前記ワイパアームが前記格納位置へ向けて揺動する際に前記ワイパアームが前記エンジンフードの後端と接触状態となる位置から下方の所定範囲にある、
ことを特徴とするワイパ制御装置。
【請求項6】
前記所定範囲は、前記ワイパアームが前記エンジンフードの後端と接触したときに、前記エンジンフードの後端から前記ウインドシールド側に所定の大きさ以上の反力を受ける範囲に設定される、
請求項記載のワイパ制御装置。
【請求項7】
前記ワイパアームに設けられ、前記ワイパアームが前記退避位置にある場合に前記エンジンフードの後端から反力を受けたときに前記ワイパアームを退避位置から前記基本位置へ付勢する付勢手段をさらに備える、
請求項記載のワイパ制御装置。
【請求項8】
前記所定範囲は、前記ワイパアームが前記ウインドシールド側に倒れ込んで前記基本位置へ復帰する際に前記ワイパブレードが前記エンジンフードの後端に接触しない範囲に設定されている、
請求項5~7のいずれか1項に記載のワイパ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパ制御方法、およびワイパ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられるワイパ装置には、車両停止状態において、ワイパブレードとウインドシールド(フロントガラス)との間に雪や埃などの異物が堆積することを防止するため、またはワイパブレードの交換などの目的のために、ワイパブレードをウインドシールドから離間させる動作、すなわち、ロックバックが可能な構成を有するワイパ装置がある。ロックバックは、ワイパアームをウインドシールドの法線方向(ウインドシールドから立ち上がる方向)に折り曲げることにより、ワイパブレードをウインドシールドから離間させる動作によって行われる。
【0003】
しかし、ワイパ非使用時においてワイパがエンジンフードの後端で隠蔽可能な位置に格納されるワイパフルコンシールドタイプのワイパ装置の場合には、ワイパが格納位置にあるときには、ワイパがエンジンフードの後端に干渉してワイパアームをロックバックさせることができない。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されているように、フルコンシールドタイプのワイパ装置において、ワイパアームのロックバックが可能な上反転位置でワイパアームを所定時間停止できるようにしたワイパ制御装置が提案されている。このワイパ制御装置では、ワイパが上反転位置と下反転位置との間で往復移動中において、上反転位置でワイパアームを所定時間停止するので、ワイパアームが上反転位置にあるときに容易にイグニッションオフし、ワイパアームを上反転位置でロックバックすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-196464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1記載のワイパ制御装置では、上反転位置でワイパアームをウインドシールドに対して立ち上げてロックバックさせた状態で、イグニッションオンなどの所定の操作をしてワイパの格納動作を行った場合、ワイパブレードの端部によってウインドシールドを損傷するおそれがある。
【0007】
すなわち、フルコンシールド式のワイパ装置の場合には、ロックバックしたままのワイパアームが上反転位置からエンジンフードの後端に隠蔽される格納位置に向かってピボット軸を回転中心として揺動した場合、ワイパアームは格納位置近くまで戻ってくるとエンジンフードの後端に干渉することにより、ワイパアームがウインドシールド側に倒れる。このとき、ワイパアームがウインドシールド側に倒れながら格納位置へ向けてさらに揺動を続けると、ワイパアームの先端に設けられたワイパブレードがエンジンフードの後端と接触し(図10参照)、当該ワイパブレードが捻じれるようにウインドシールド側に倒れ込むおそれがある。その場合、ワイパブレードの端部、例えば、ワイパブレードの先端に取り付けられたキャップなどの固い部分がウインドシールドに接触し、その接触の衝撃でウインドシールドが損傷することが懸念される。
【0008】
本発明はかかる問題を解消するためになされたものであり、ワイパアームがロックバック状態であってもワイパ格納動作の際にワイパブレードの倒れ込みによるウインドシールドの損傷を防止することが可能なワイパ制御方法およびワイパ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のワイパ制御方法は、車両のウインドシールドを拭くワイパブレード、および前記ワイパブレードが取り付けられ、所定のピボット軸を揺動中心として前記ウインドシールドの表面に沿って前記ワイパブレードとともに揺動可能なワイパアームを備えたワイパと、前記ワイパを前記ウインドシールドの表面に沿って所定の上反転位置と下反転位置との間で往復揺動させる駆動部とを備え、前記ワイパアームが前記ワイパブレードを前記ウインドシールドに接触させる基本位置から前記ワイパブレードを前記ウインドシールドから立ち上げて離間させる退避位置へ移動するロックバックが可能で、且つ、前記下反転位置より下方であってエンジンフードの後端と前記ウインドシールドとの間に位置する所定の格納位置に前記ワイパを格納することが可能な構成を有するワイパ装置におけるワイパ制御方法であって、前記ワイパを前記格納位置に格納する格納動作中において、前記ワイパアームを前記下反転位置へ向けて下方へ揺動させているときに、前記ワイパアームが前記格納位置よりも上方位置で、かつ、前記ワイパアームが前記退避位置に位置している場合に、前記ウインドシールドに倒れ込んで前記基本位置に復帰することが可能な所定の一時停止位置に、前記ワイパアームを所定時間停止させ、前記所定時間経過後に前記ワイパアームを前記格納位置まで揺動させ、前記一時停止位置は、前記退避位置にある前記ワイパアームが前記格納位置へ向けて揺動する際に前記ワイパアームが前記エンジンフードの後端と接触状態となる位置から下方の所定範囲にあることを特徴とする。
【0010】
かかる特徴によれば、ワイパアームがロックバックされた状態、すなわちワイパブレードがウインドシールドから立ち上がって離間した退避位置にある状態にあっても、エンジンフードの後端とウインドシールドとの間の格納位置にワイパを格納する格納動作中において、ワイパアームを下反転位置へ向けて下方へ揺動させているときに、格納位置よりも上方に位置する所定の一時停止位置で所定時間停止させることが可能である。これにより、所定時間の間にワイパアームが退避位置からウインドシールドに倒れ込んでワイパブレードがウインドシールドに接触する基本位置に復帰し、その後、ワイパアームを格納位置まで揺動させてワイパブレードを格納位置へ移動させることが可能である。
【0011】
ワイパアームがウインドシールドに倒れ込んで退避位置から基本位置に復帰するときには、ワイパアームは格納位置へ向けて揺動していないので、ワイパブレードがエンジンフード後端に接触することを回避することが可能である。そのため、ワイパブレードがエンジンフード後端との接触によって捩れるようにウインドシールド側に倒れ込むことを回避でき、ワイパブレードの端部(例えば、ワイパブレード先端のキャップなど)がウインドシールドと接触し、その衝撃でウインドシールドが損傷することを防止することが可能である。
【0012】
また、上記のワイパ制御方法では、前記一時停止位置は、前記退避位置にある前記ワイパアームが前記格納位置へ向けて揺動する際に前記ワイパアームが前記エンジンフードの後端と接触状態となる位置から下方の所定範囲にある。
【0013】
かかる特徴によれば、格納動作中において、ワイパアームがロックバックされた状態、すなわち、退避位置にある状態でワイパアームを下反転位置へ向けて下方へ向けて揺動させ、その後に一時停止位置に到達したときに、ワイパアームがエンジンフードの後端に接触し、ワイパアームを退避位置から基本位置へ向かって倒すことが可能である。そのため、ワイパアームをウインドシールド側に倒す特別な機構が不要になる。
【0014】
上記のワイパ制御方法において、前記所定範囲は、前記ワイパアームが前記エンジンフードの後端と接触したときに、前記エンジンフードの後端から前記ウインドシールド側に所定の大きさ以上の反力を受ける範囲に設定されるのが好ましい。
【0015】
かかる特徴によれば、一時停止位置では、ワイパアームがエンジンフードの後端から反力を受けることにより、ワイパアームをウインドシールド側に確実に倒すことが可能である。
【0016】
上記のワイパ制御方法において、前記ワイパアームが前記退避位置にある場合に前記エンジンフードの後端から反力を受けたときに、前記ワイパアームに設けられた付勢手段によって、前記ワイパアームを退避位置から前記基本位置へ付勢するのが好ましい。
【0017】
かかる特徴によれば、ワイパアームはエンジンフードの後端からの反力だけでなく付勢手段による付勢力も受けることにより、ワイパアームを前記ウインドシールド側により確実に倒すことが可能である。
【0018】
上記のワイパ制御方法において、前記所定範囲は、前記ワイパアームが前記ウインドシールド側に倒れ込んで前記基本位置へ復帰する際に前記ワイパブレードが前記エンジンフードの後端に接触しない範囲に設定されているのが好ましい。
【0019】
かかる特徴によれば、ワイパブレードの捩れおよびそれに伴うウインドシールドの損傷を確実に防止することが可能である。
【0020】
本発明のワイパ制御装置は、車両のウインドシールドを拭くワイパブレード、および前記ワイパブレードが取り付けられ、所定のピボット軸を揺動中心として前記ウインドシールドの表面に沿って前記ワイパブレードとともに揺動可能なワイパアームを備え、前記ワイパアームが前記ワイパブレードを前記ウインドシールドに接触させる基本位置から前記ワイパブレードを前記ウインドシールドから立ち上げて離間させる退避位置へ移動するロックバックが可能な構成を有するワイパと、前記ワイパを前記ウインドシールドの表面に沿って所定の上反転位置と下反転位置との間で往復揺動させる駆動部と、前記駆動部の駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記駆動部に対して、前記下反転位置より下方であってエンジンフードの後端と前記ウインドシールドとの間に位置する所定の格納位置に前記ワイパを格納する格納動作を行うように制御し、さらに、前記格納動作中において、前記ワイパアームを前記下反転位置へ向けて下方へ揺動させているときに、前記ワイパアームが前記格納位置よりも上方位置で、かつ、前記ワイパアームが前記退避位置に位置している場合に、前記ウインドシールドに倒れ込んで前記基本位置に復帰することが可能な所定の一時停止位置に、前記ワイパアームを所定時間停止させるように制御し、さらに、前記所定時間経過後に前記ワイパアームを前記格納位置まで揺動させるように制御し、前記一時停止位置は、前記退避位置にある前記ワイパアームが前記格納位置へ向けて揺動する際に前記ワイパアームが前記エンジンフードの後端と接触状態となる位置から下方の所定範囲にあることを特徴とする。
【0021】
かかる特徴によれば、ワイパアームがロックバックされた状態、すなわちワイパブレードがウインドシールドから立ち上がって離間した退避位置にある状態にあっても、エンジンフードの後端とウインドシールドとの間の格納位置にワイパを格納する格納動作中において、ワイパアームを下反転位置へ向けて下方へ揺動させているときに、格納位置よりも上方に位置する所定の一時停止位置で所定時間停止させるように駆動部を制御部によって制御することが可能である。これにより、所定時間の間にワイパアームが退避位置からウインドシールドに倒れ込んでワイパブレードがウインドシールドに接触する基本位置に復帰し、その後、ワイパアームを格納位置まで揺動させてワイパブレードを格納位置へ移動させることが可能である。
【0022】
ワイパアームがウインドシールドに倒れ込んで退避位置から基本位置に復帰するときには、ワイパアームは格納位置へ向けて揺動していないので、ワイパブレードがエンジンフード後端に接触することを回避することが可能である。そのため、ワイパブレードがエンジンフード後端との接触によって捩れるようにウインドシールド側に倒れ込むことを回避でき、ワイパブレードの端部(例えば、ワイパブレード先端のキャップなど)がウインドシールドと接触し、その衝撃でウインドシールドが損傷することを防止することが可能である。
【0023】
また、上記のワイパ制御装置では、前記一時停止位置は、前記退避位置にある前記ワイパアームが前記格納位置へ向けて揺動する際に前記ワイパアームが前記エンジンフードの後端と接触状態となる位置から下方の所定範囲にある。
【0024】
かかる特徴によれば、格納動作中において、ワイパアームがロックバックされた状態、すなわち、退避位置にある状態でワイパアームを下反転位置へ向けて下方へ向けて揺動させ、その後に一時停止位置に到達したときに、ワイパアームがエンジンフードの後端に接触し、ワイパアームを退避位置から基本位置へ向かって倒すことが可能である。そのため、ワイパアームをウインドシールド側に倒す特別な機構が不要になる。
【0025】
上記のワイパ制御装置において、前記所定範囲は、前記ワイパアームが前記エンジンフードの後端と接触したときに、前記エンジンフードの後端から前記ウインドシールド側に所定の大きさ以上の反力を受ける範囲に設定されるのが好ましい。
【0026】
かかる特徴によれば、一時停止位置では、ワイパアームがエンジンフードの後端から反力を受けることにより、ワイパアームをウインドシールド側に確実に倒すことが可能である。
【0027】
上記のワイパ制御装置において、前記ワイパアームに設けられ、前記ワイパアームが前記退避位置にある場合に前記エンジンフードの後端から反力を受けたときに前記ワイパアームを退避位置から前記基本位置へ付勢する付勢手段をさらに備えるのが好ましい。
【0028】
かかる特徴によれば、ワイパアームはエンジンフードの後端からの反力だけでなく付勢手段による付勢力も受けることにより、ワイパアームを前記ウインドシールド側により確実に倒すことが可能である。
【0029】
上記のワイパ制御装置において、前記所定範囲は、前記ワイパアームが前記ウインドシールド側に倒れ込んで前記基本位置へ復帰する際に前記ワイパブレードが前記エンジンフードの後端に接触しない範囲に設定されているのが好ましい。
【0030】
かかる特徴によれば、ワイパブレードの捩れおよびそれに伴うウインドシールドの損傷を確実に防止することが可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明のワイパ制御方法およびワイパ制御装置によれば、ワイパアームがロックバック状態であってもワイパ格納動作の際にワイパブレードの倒れ込みによるウインドシールドの損傷を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態であるワイパ制御装置を備えた車両の前方部分の拡大斜視図である。
図2図1の車両のエンジンフードを取り除いた状態におけるワイパ制御装置の可動部分およびウインドシールドの拡大斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るワイパ制御方法において、ロックバック状態の図2の第1ワイパが格納位置の上方の一時停止位置で所定時間停止する過程を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態に係るワイパ制御方法において、ロックバック状態の図2の第1ワイパが一時停止位置においてウインドシールドに倒れ込む過程を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態に係るワイパ制御方法において、図2の第1ワイパがサービスポジション、一時停止位置、および格納位置にある状態を説明するための図である。
図6】ロックバック状態になった図2の第1ワイパを示す拡大斜視図である。
図7図6の第1ワイパのワイパアームに設けられた引張コイルばねおよびその周辺部分を示す拡大斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るワイパ制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
図9】本発明の一実施形態に係るワイパ制御方法の手順を示すフローチャートである。
図10】従来のワイパ制御装置において、ワイパアームがロックバック状態のままでワイパの格納動作を行ったときに、ワイパブレードがエンジンフードの後端に接触する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1~2には、本実施形態のワイパ制御装置5が適用された車両1が示されている。ワイパ制御装置5は、車両1の前方側におけるウインドシールド3(フロントガラス)を拭き動作する2本のワイパ、すなわち、第1ワイパ7および第2ワイパ8の駆動を制御することが可能な構成を有する。ウインドシールド3は、車幅方向に離間した一対のフロントピラー2間に取り付けられている。第1ワイパ7および第2ワイパ8は、いずれもロックバック可能、すなわち、ユーザの手作業によってウインドシールド3から立ち上がって離間することが可能な構成を有する。また、このワイパ制御装置5は、フルコンシールドタイプ、すなわち、ワイパ非使用時には、第1ワイパ7および第2ワイパ8をエンジンフード4の後端4aより下方の位置に格納可能な構成を有する。
【0034】
本実施形態のワイパ制御装置5は、図2~4に示されるように、ワイパおよび駆動部を有するワイパ装置の基本構成を含むものであり、具体的には、可動部分として、第1ワイパ7および第2ワイパ8と、第1ワイパ7および第2ワイパ8をウインドシールド3の表面に沿って往復揺動させる駆動源である電動モータからなる駆動部9と、駆動部9から発生した回転駆動力を往復揺動のための駆動力に変換して第1ワイパ7および第2ワイパ8にそれぞれ伝達するリンク機構10とを備える。また、ワイパ制御装置5は、制御部分として、図8に示される制御部21、イグニッションスイッチ22、およびワイパスイッチ23を備えている。
【0035】
上記の第1ワイパ7、第2ワイパ8、駆動部9、およびリンク機構10は、エンジンフード4の後端4aの後下方に位置する車体構成部材6(例えばカウルグリルなど)における運転席に近い部分(例えば、日本車の場合には図2~4における左側の部分)に取り付けられている。車体構成部材6は、車幅方向に延びて一対のフロントピラー2間を連結している。
【0036】
(第1ワイパ7の説明)
第1ワイパ7は、図2~5に示されるように、ウインドシールド3を拭くワイパブレード7aと、ワイパブレード7aが先端部に取り付けられたワイパアーム7bとを備える。ワイパアーム7bは、所定の第1ピボット軸11を揺動中心としてウインドシールド3の表面に沿ってワイパブレード7aとともに揺動可能である。第1ピボット軸11は、ワイパアーム7bが固定されるとともに、図2~4の車体構成部材6における運転席に近い左側端部付近に回転自在に取り付けられている。
【0037】
第1ワイパ7は、ワイパアーム7bがワイパブレード7aをウインドシールド3に接触させる基本位置PA(図2および図4参照)からワイパブレード7aをウインドシールド3から立ち上げて離間させる退避位置PB(図2~3参照)へ移動するロックバックが可能な構成を有する。具体的には、ワイパアーム7bがウインドシールド3の法線方向(外側に向かう方向)に折れ曲がるように構成され、さらに具体的には、先端側部分7b1と、根元側部分7b2と、これら先端側部分7b1と根元側部分7b2とをヒンジ結合するヒンジ部分7b3とを有する。先端側部分7b1は、ヒンジ部分7b3を回転中心として、ウインドシールド3から立ち上がる方向に揺動することが可能である。
【0038】
第1ワイパ7は、駆動部9で発生した回転駆動力をリンク機構10を介して受けることにより、第1ピボット軸11を回転中心としてウインドシールド3の表面に沿って所定範囲で揺動することが可能である。具体的には、第1ワイパ7は、図2~5に示されるように、ウインドシールド3の左側の側端に最も近いサービスポジションPSからエンジンフード4の後端4aよりも下方に位置する格納位置PCまでの範囲で90度以上の角度で揺動することが可能である。また、第1ワイパ7は、上反転位置P1と下反転位置P2との間で連続的または間欠的に往復揺動することが可能である。
【0039】
ここで、サービスポジションPSは、上反転位置P1よりもウインドシールド3の左側の側端に近い位置であり、第1ワイパ7がフロントピラー2と略平行に並ぶ位置であり、ユーザが車両側方から第1ワイパ7を手で保持しながらロックバックしやすい位置である。また、格納位置PCは、下反転位置P2よりも下方にあり、第1ワイパ7を略水平に寝かした状態でエンジンフード4の後端4aに隠すことが可能な位置である。
【0040】
後述の一時停止位置P3は、図3~4に示されるように、ワイパアーム7bがウインドシールド3から立ち上がった退避位置PBから基本位置PAへ倒れ込むことが可能な位置あればよい。本実施形態の一時停止位置P3は、下反転位置P2よりも上方に位置している。
【0041】
下反転位置P2は、例えば、格納位置PCに対して、第1ピボット軸11周りのワイパアーム7bの角度で約3度上方の位置にあればよい。
【0042】
一時停止位置P3は、例えば、格納位置PCに対して、第1ピボット軸11周りのワイパアーム7bの角度で約5.5度上方の位置にあればよい。
【0043】
本実施形態の一時停止位置P3では、第1ワイパ7がロックバック状態にあるときにおいて、図5に示されるように、エンジンフード4の後端4aがワイパアーム7bのヒンジ部分7b3よりも先端側の先端側部分7b1に接触する。このとき、エンジンフード4の後端4aにおける先端側部分7b1に接触する部分は、ヒンジ部分7b3の延びる方向(すなわちワイパアーム7bを横断する方向)に対して傾斜する方向に延びているので、後端4aと先端側部分7b1との接触を確実に行うことが可能である。
【0044】
また、本実施形態では、図6~7に示されるように、第1ワイパ7のワイパアーム7bには、ワイパアーム7bを退避位置PBから基本位置PAへ付勢する付勢手段である引張コイルばね13が設けられている。引張コイルばね13の一方の端部13aは、ワイパアーム7bの先端側部分7b1に設けられた被係合部7b4に係合し、他方の端部13bはヒンジ部分7b3の被係合部7b5に係合している。この構成では、ワイパアーム7bが立ち上がった退避位置PBにある場合、具体的には、図6~7に示されるように、ワイパアーム7bがヒンジ部分7b3で折れ曲がって先端側部分7b1立ち上がっている状態では、引張コイルばね13は2つの被係合部7b4、7b5の間で引っ張られた状態(具体的には、引張コイルばね13が中立点を退避位置PB側に超えて収縮しないで安定している状態)を維持している。一方、ワイパアーム7bの先端側部分7b1がエンジンフード4の後端4aから反力を受けたときには、引張コイルばね13が中立点を基本位置PA側に超えて収縮可能な状態になることによって、ワイパアーム7bを退避位置PBから基本位置PAへ付勢(すなわち、先端側部分7b1を倒すように付勢)して基本位置PAにより確実に復帰することが可能である。
【0045】
(第2ワイパ8の説明)
第2ワイパ8も、基本的には第1ワイパ7と同じ構成を有する。すなわち、第2ワイパ8は、図2~4に示されるように、ウインドシールド3を拭くワイパブレード8aと、ワイパブレード8aが先端部に取り付けられ、所定の第2ピボット軸12を揺動中心としてウインドシールド3の表面に沿ってワイパブレード8aとともに揺動可能なワイパアーム8bとを備える。第2ピボット軸12は、ワイパアーム8bが固定されるとともに図2~4の車体構成部材6における第1ピボット軸11よりも車幅方向中央に近い部分に回転自在に取り付けられている。
【0046】
また、第2ワイパ8は、第1ワイパ7と同様にロックバック可能な構成、すなわち、ワイパアーム8bがワイパブレード8aをウインドシールド3に接触させる基本位置からワイパブレード8aをウインドシールド3から立ち上げて離間させる退避位置へ移動するロックバックが可能な構成を有する。具体的には、ワイパアーム8bがウインドシールド3の法線方向(外側に向かう方向)に折れ曲がるように構成され、さらに具体的には、先端側部分8b1と、根元側部分8b2と、これら先端側部分8b1と根元側部分8b2とをヒンジ結合するヒンジ部分8b3とを有する。
【0047】
第2ワイパ8は、図1~2に示されるように、第1ワイパ7の揺動と連動して、第2ピボット軸12を回転中心としてウインドシールド3の表面に沿って所定範囲で揺動することが可能である。
【0048】
なお、第2ワイパ8においても、第1ワイパ7と同様に退避位置から基本位置へ付勢する引張コイルばねなどの付勢手段(図示せず)を備えている。
【0049】
(リンク機構10の説明)
リンク機構10は、駆動部9から発生した回転駆動力を往復揺動のための駆動力に変換して第1ワイパ7および第2ワイパ8にそれぞれ伝達することが可能な構成であればよく、本発明では具体的な構成についてはとくに限定しない。
【0050】
例えば、図3~4に示される本実施形態のリンク機構10は、電動モータからなる駆動部9から発生した回転駆動力を減速して出力する出力軸10aと、一端が出力軸10aに固定された第1リンクバー10bと、一端が第1リンクバー10bの他端にリンク結合された第2リンクバー10cと、先端部が第2リンクバー10cの他端にリンク結合されるとともに基端部が第1ピボット軸11に固定された第3リンクバー10dと、一端が第2リンクバー10cの他端に(前記第3リンクバー10dの先端部とともに)リンク結合された第4リンクバー10eと、先端部が第4リンクバー10eの他端にリンク結合されるとともに基端部が第2ピボット軸12に固定された第5リンクバー10fとを備える。
【0051】
第1ワイパ7のワイパアーム7bの根元側端部および第3リンクバー10dの基端部は、共通の第1ピボット軸11に固定されている。第1ピボット軸11が車体構成部材6に対して回転自在に取り付けられているので、ワイパアーム7bおよび第3リンクバー10dは同じタイミングで第1ピボット軸11を揺動中心として揺動することが可能である。
【0052】
また、第2ワイパ8のワイパアーム8bの根元側端部および第5リンクバー10fの基端部は、共通の第2ピボット軸12に固定されている。第2ピボット軸12が車体構成部材6に対して回転自在に取り付けられているので、ワイパアーム8bおよび第5リンクバー10fは同じタイミングで第2ピボット軸12を揺動中心として揺動することが可能である。
【0053】
上記のリンク機構10の構成により、駆動部9が所定方向に回転駆動すると、その回転駆動力がリンク機構10の出力軸10aから各々がリンク結合された第1~第5リンクバー10b~10fに伝達することにより、第1ワイパ7のワイパアーム7bが第1ピボット軸11を回転中心として上反転位置P1と下反転位置P2との間で往復揺動し、それとともに第2ワイパ8のワイパアーム8bも第2ピボット軸12を回転中心として第2ワイパ8のための所定の上反転位置と下反転位置との間で往復揺動することが可能である。
【0054】
(制御部21の説明)
本実施形態では、ワイパ制御装置5は、図8に示されるように、駆動部9の駆動を制御する制御部21を備え、さらに、制御部21(具体的には、後述のマイコン24)に入力信号を与える入力手段として、車両動力部(エンジンなどの)の始動および停止を切り換えるイグニッションスイッチ(IG-SW)22と、ワイパスイッチ(ワイパSW)23とを備える。ワイパスイッチ23は、第1ワイパ7および第2ワイパ8の動作を切り換えるためのスイッチであり、例えば、連続揺動(低速、高速)、間欠揺動、ミスト(1回だだけ揺動)、停止などのモードを切り替えることが可能である。
【0055】
本実施形態の制御部21は、図8に示されるように、中央演算ユニット(CPU)やメモリなどを備えたマイコン24と、時間を計測するためのタイマ25と、マイコン24からの指令を受けて駆動部9へ駆動電流または駆動電圧を与える駆動回路26と、駆動部9を構成するモータの出力軸の回転位置を検出して検出信号をマイコン24へ送るポジションセンサ27とを備える。
【0056】
制御部21は、イグニッションスイッチ22およびワイパスイッチ23からロックバック用の所定の信号を受けたとき(例えば、イグニッションスイッチ22のON、OFFの連続動作の後にワイパスイッチ23をミスト位置で2回押し下げることによって発生する固有の信号など)に、格納位置PCにあった第1ワイパ7をサービスポジションPSに移動して停止するように駆動部9を制御する。第1ワイパ7は、サービスポジションPSでは、エンジンフード4の後端4aに干渉されずに、ワイパアーム7bをウインドシールド3から立ち上げてロックバックすることが可能である。なお、このとき、第2ワイパ8も所定のサービスポジションPSに移動するので、第2ワイパ8もロックバック可能である。
【0057】
本実施形態の制御部21は、駐車中に第1ワイパ7がサービスポジションPSにある状態でイグニッションスイッチ22およびワイパスイッチ23から格納動作用の所定の信号を受けたとき(例えば、イグニッションスイッチ22のONの後にワイパスイッチ23をミスト位置で1回押し下げることによって発生する固有の信号など)に、第1ワイパ7を格納位置PC(図2~5参照)に格納する格納動作を行うように駆動部9に対して制御を行う。このとき、第2ワイパ8も第1ワイパ7と同じタイミングでエンジンフード4の後端4aに隠れた所定の格納位置に格納される。
【0058】
本実施形態の制御部21は、第1ワイパ7の格納動作を行う場合に以下のように駆動部9を制御する。
【0059】
制御部21は、まず、駆動部9に対して、図2~4に示されるように、第1ワイパ7のワイパアーム7bを下方へ揺動させ、下反転位置P2より下方であってエンジンフード4の後端4aとウインドシールド3との間に位置する所定の格納位置PCに第1ワイパ7を格納する格納動作を行うように制御する。
【0060】
制御部21は、格納動作中において、ワイパアーム7bを下反転位置P2へ向けて下方へ揺動させているときに、ワイパアーム7bが格納位置PCよりも上方位置で、かつ、ワイパアーム7bが退避位置PBに位置している場合に、ウインドシールド3に倒れ込んで基本位置PAに復帰することが可能な所定の一時停止位置P3に、ワイパアーム7bを所定時間(例えば、0.5~2秒程度)停止させるように駆動部9に制御する。
【0061】
さらに、制御部21は、所定時間経過後にワイパアーム7bを格納位置PCまで揺動させるように駆動部9を制御する。
【0062】
(ワイパ制御方法の説明)
つぎに、本発明の実施形態に係るワイパ制御方法について、上記の第1ワイパ7の格納動作を例に挙げて、さらに具体的に図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0063】
まず、駐車中に第1ワイパ7がサービスポジションPSにある状態でイグニッションスイッチ22およびワイパスイッチ23から上記のような格納動作用の所定の信号を受けた場合に、ワイパ格納動作が開始される。このとき、制御部21は、第1ワイパ7を格納位置PC(図2~5参照)に格納する格納動作を行うように駆動部9に対して制御を行う。
【0064】
なお、以下のワイパ格納動作は、ワイパアーム7bがロックバック状態であるか否かに関わらず、図9に示される所定の動作が行われる。
【0065】
ワイパ格納動作の最初の段階として、まず、制御部21は、図9のステップS1において、ポジションセンサ27からの検出信号に基づいて、下反転位置P2へ向けて下方へ揺動させているワイパアーム7bが下反転位置P2より上にあるか判定する。制御部21は、ワイパアーム7bが下反転位置P2より上にあると判定した場合には、ステップS2に進み、第1ワイパ7のワイパアーム7bを下反転位置P2側に移動、具体的には下方へ揺動させるように駆動部9を制御する。一方、ワイパアーム7bが下反転位置P2にあると判定しなかった場合には、格納動作を終了する。
【0066】
第1ワイパ7を格納位置PCに格納する格納動作中において、ワイパアーム7bを下反転位置P2へ向けて下方へ揺動させているときに、制御部21は、ポジションセンサ27からの検出信号に基づいて、ワイパアーム7bが格納位置PCよりも上方位置にある所定の一時停止位置P3に到達したと判定した場合(ステップS3)には、ステップS4に進み、ワイパアーム7bを所定時間t(0.5~2秒程度)だけ停止させるように駆動部9を制御する。制御部21は、タイマ25を用いて所定時間tの計測を行う。
【0067】
ここで、一時停止位置P3は、図3~4に示されるように、ワイパアーム7bがウインドシールド3から立ち上がった退避位置PBから基本位置PAへ倒れ込むことが可能な位置あればよい。したがって、以下のように、ワイパアーム7bが一時停止位置P3に到達したときに、ワイパアーム7bをエンジンフード4の後端4aに意図的に接触させてワイパアーム7bを確実に倒れ込みやすくしてもよい。
【0068】
すなわち、本実施形態では、一時停止位置P3は、ロックバック状態のワイパアーム7b、すなわち、ウインドシールド3から立ち上がって離間している退避位置PBにあるワイパアーム7bが格納位置PCへ向けて揺動する際にワイパアーム7bがエンジンフード4の後端4aと非接触状態から接触状態となる位置から下方の所定範囲に設定されている。この場合、一時停止位置P3では、ロックバック状態のワイパアーム7bがエンジンフード4の後端4aに接触し、ワイパアーム7bを退避位置PBから基本位置PAへ向かって倒すことが可能である。
【0069】
さらに、本実施形態では、上記の所定範囲は、ワイパアーム7bがエンジンフード4の後端4aと接触したときに、エンジンフード4からウインドシールド3側に所定の大きさ以上の反力を受ける範囲に設定されているので、ロックバック状態のワイパアーム7bをウインドシールド3側に確実に倒すことが可能である。
【0070】
しかも、本実施形態では、ワイパアーム7bが退避位置PBにある場合にエンジンフード4の後端4aから反力を受けたときに、ワイパアーム7bに設けられた引張コイルばね13によって、ワイパアーム7bを退避位置PBから基本位置PAへ付勢する。これにより、ワイパアーム7bをウインドシールド3側により確実に倒すことが可能である。
【0071】
なお、上記の所定範囲は、ワイパアーム7bがウインドシールド3側に倒れ込んで基本位置PAへ復帰する際にワイパブレード7aがエンジンフード4の後端4aに接触しない範囲に最低限設定されていればよく、その場合には、ワイパブレード7aの捩れおよびそれに伴うウインドシールド3の損傷を確実に防止することが可能である。
【0072】
上記の所定時間tが経過した後に、制御部21は、ステップS5において、ワイパアーム7bを格納位置PCまで揺動させるように駆動部9を制御し、すべてのワイパ格納動作が終了する。
【0073】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のワイパ制御方法は、車両1のウインドシールド3を拭くワイパブレード7a、およびワイパブレード7aが取り付けられ、所定の第1ピボット軸11を揺動中心としてウインドシールド3の表面に沿ってワイパブレード7aとともに揺動可能なワイパアーム7bを備えた第1ワイパ7と、第1ワイパ7をウインドシールド3の表面に沿って所定の上反転位置P1と下反転位置P2との間で往復揺動させる駆動部9とを備え、ワイパアーム7bがワイパブレード7aをウインドシールド3に接触させる基本位置PAからワイパブレード7aをウインドシールド3から立ち上げて離間させる退避位置PBへ移動するロックバックが可能で、且つ、下反転位置P2より下方であってエンジンフード4の後端4aとウインドシールド3との間に位置する所定の格納位置PCに第1ワイパ7を格納することが可能な構成を有するワイパ装置におけるワイパ制御方法である。
【0074】
上記のワイパ制御方法では、第1ワイパ7を格納位置PCに格納する格納動作中において、ワイパアーム7bを下反転位置P2へ向けて下方へ揺動させているときに、ワイパアーム7bが格納位置PCよりも上方位置で、かつ、ワイパアーム7bが退避位置PBに位置している場合に、ウインドシールド3に倒れ込んで基本位置PAに復帰することが可能な所定の一時停止位置P3に、ワイパアーム7bを所定時間停止させる。所定時間経過後にワイパアーム7bを格納位置PCまで揺動させる。
【0075】
また、本実施形態のワイパ制御装置5は、上記のワイパ制御方法を実行するために、駆動部9の駆動を制御する制御部21を備える。制御部21は、駆動部9に対して、下反転位置P2より下方であってエンジンフード4の後端4aとウインドシールド3との間に位置する所定の格納位置PCに第1ワイパ7を格納する格納動作を行うように制御し、さらに、格納動作中において、ワイパアーム7bを下反転位置P2へ向けて下方へ揺動させているときに、ワイパアーム7bが格納位置PCよりも上方位置で、かつ、ワイパアーム7bが退避位置PBに位置している場合に、ウインドシールド3に倒れ込んで基本位置PAに復帰することが可能な所定の一時停止位置P3に、ワイパアーム7bを所定時間停止させるように制御し、さらに、所定時間経過後にワイパアーム7bを格納位置PCまで揺動させるように制御する。
【0076】
上記のワイパ制御方法およびワイパ制御装置5によれば、ワイパアーム7bがロックバックされた状態、すなわちワイパブレード7aがウインドシールド3から立ち上がって離間した退避位置PBにある状態にあっても、エンジンフード4の後端4aとウインドシールド3との間の格納位置PCに第1ワイパ7を格納する格納動作中において、ワイパアーム7bを下反転位置P2へ向けて下方へ揺動させているときに、格納位置PCよりも上方に位置する所定の一時停止位置P3で所定時間停止させることが可能である。これにより、所定時間の間にワイパアーム7bが退避位置PBからウインドシールド3に倒れ込んでワイパブレード7aがウインドシールド3に接触する基本位置PAに復帰し、その後、ワイパアーム7bを格納位置PCまで揺動させてワイパブレード7aを格納位置PCへ移動させることが可能である。
【0077】
ワイパアーム7bがウインドシールド3に倒れ込んで退避位置PBから基本位置PAに復帰するときには、ワイパアーム7bは格納位置PCへ向けて揺動していないので、従来のようにワイパブレード7aがエンジンフード4の後端4aに接触すること(図10参照)を回避することが可能である。そのため、ワイパブレード7aがエンジンフード4の後端4aとの接触によって捩れるようにウインドシールド3側に倒れ込むことを回避でき、ワイパブレード7aの端部(例えば、図10に示されるワイパブレード7a先端のキャップ7c(具体的には、セラミックなどの硬質のキャップ)など)がウインドシールド3と接触し、その衝撃でウインドシールド3が損傷することを防止することが可能である。
【0078】
(2)
本実施形態のワイパ制御方法およびワイパ制御装置5では、一時停止位置P3は、退避位置PBにあるワイパアーム7bが格納位置PCへ向けて揺動する際にワイパアーム7bがエンジンフード4の後端4aと接触状態となる位置から下方の所定範囲にある。
【0079】
かかる特徴によれば、格納動作中において、ワイパアーム7bがロックバックされた状態、すなわち、退避位置PBにある状態でワイパアーム7bを下反転位置P2へ向けて下方へ向けて揺動させ、その後に一時停止位置P3に到達したときに、ワイパアーム7bがエンジンフード4の後端4aに接触し、ワイパアーム7bを退避位置PBから基本位置PAへ向かって倒すことが可能である。そのため、ワイパアーム7bをウインドシールド3側に倒す特別な機構が不要になる。
【0080】
(3)
本実施形態のワイパ制御方法およびワイパ制御装置5では、一時停止位置P3が設定される上記の所定範囲は、ワイパアーム7bがエンジンフード4の後端4aと接触したときに、エンジンフード4の後端4aからウインドシールド3側に所定の大きさ以上の反力を受ける範囲に設定される。
【0081】
かかる特徴によれば、一時停止位置P3では、ワイパアーム7bがエンジンフード4の後端4aから反力を受けることにより、ワイパアーム7bをウインドシールド3側に確実に倒すことが可能である。
【0082】
(4)
本実施形態のワイパ制御方法では、ワイパアーム7bが退避位置PBにある場合にエンジンフード4の後端4aから反力を受けたときに、ワイパアーム7bに設けられた付勢手段である引張コイルばね13によって、ワイパアーム7bを退避位置PBから基本位置PAへ付勢する。
【0083】
本実施形態のワイパ制御装置5は、ワイパアーム7bに設けられ、ワイパアーム7bが退避位置PBにある場合にエンジンフード4の後端4aから反力を受けたときにワイパアーム7bを退避位置PBから基本位置PAへ付勢する付勢手段である引張コイルばね13をさらに備える。
【0084】
上記のワイパ制御方法およびワイパ制御装置5によれば、ワイパアーム7bはエンジンフード4の後端4aからの反力だけでなく付勢手段である引張コイルばね13による付勢力も受けることにより、ワイパアーム7bをウインドシールド3側により確実に倒すことが可能である。
【0085】
(5)
本実施形態のワイパ制御方法およびワイパ制御装置5では、上記の所定範囲は、ワイパアーム7bがウインドシールド3側に倒れ込んで基本位置PAへ復帰する際にワイパブレード7aがエンジンフード4の後端4aに接触しない範囲に設定されている。
【0086】
かかる特徴によれば、ワイパブレード7aの捩れおよびそれに伴うウインドシールド3の損傷を確実に防止することが可能である。
【0087】
(6)
以上のように、本実施形態のワイパ制御方法およびワイパ制御装置5では、一時停止位置P3が設定される範囲となる上記の所定範囲は、以下のように設定される。すなわち、上記の所定範囲は、ロックバック状態のワイパアーム7bがエンジンフード4の後端4aに接触した後の状態の範囲において、その接触の度合いが最も弱い場合(いわゆる所定範囲の下限の場合)として、ワイパアーム7bがウインドシールド3側に倒れ込んで基本位置PAへ復帰する際にワイパブレード7aがエンジンフード4の後端4aに接触しない範囲に設定されていれば、ワイパブレード7aの捩れおよびそれに伴うウインドシールド3の損傷を確実に防止することが可能である。また、上記の接触の度合いが最も強い場合(いわゆる所定範囲の上限の場合)として、ロックバック状態のワイパアーム7bがエンジンフード4の後端4aと接触したときに、エンジンフード4からウインドシールド3側に所定の大きさ以上の反力を受ける範囲に設定すれば、ワイパアーム7bをウインドシールド3側に確実に倒すことが可能である。
【0088】
(変形例)
(A)
なお、上記の実施形態では、一時停止位置P3は下反転位置P2よりも上方に位置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、一時停止位置P3は、下反転位置P2の下方にあってもよい。ただし、一時停止位置P3が下反転位置P2の上方にあれば、ワイパアームが一時停止位置P3にあるときにはエンジンフード4の後端4aに対して下反転位置P2にある場合もよりもさらに上方に離間した位置になるので、ワイパアーム7bがウインドシールド3に倒れ込んで退避位置PBから基本位置PAに復帰するときには、ワイパブレード7aがエンジンフード4の後端4aに接触することを確実に回避することが可能である。
【0089】
(B)
上記実施形態では、一時停止位置P3は、ワイパアーム7bがウインドシールド3から立ち上がって離間している退避位置PBにある場合(ロックバック状態)に格納位置PCへ向けての揺動によりエンジンフード4の後端4aと非接触状態から接触状態となった後の所定範囲に設定されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
本発明では、一時停止位置P3は、図3~4に示されるように、ワイパアーム7bがウインドシールド3から立ち上がった退避位置PBから基本位置PAへ倒れ込むことが可能な位置あればよい。したがって、本発明の変形例として、一時停止位置P3は、ワイパアーム7bがエンジンフード4の後端4aに接触しなくても第1ワイパ7の自重によって退避位置PBから基本位置PAへ倒れ込むことが可能な位置であってもよい。この場合も、ワイパ格納動作の際にワイパブレード7aの倒れ込みによるウインドシールド3の損傷を防止することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 車両
3 ウインドシールド
4 エンジンフード
4a 後端
5 ワイパ制御装置
7 第1ワイパ
8 第2ワイパ
7a、8a ワイパブレード
7b、8b ワイパアーム
9 駆動部
11 第1ピボット軸
12 第2ピボット軸
21 制御部
P1 上反転位置
P2 下反転位置
P3 一時停止位置
PA 基本位置
PB 退避位置
PC 格納位置
PS サービスポジション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10