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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両用乗員拘束システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/015 20060101AFI20231108BHJP
   B60R 21/0134 20060101ALI20231108BHJP
   B60R 21/16 20060101ALI20231108BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20231108BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20231108BHJP
   B60N 2/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60R21/015 320
B60R21/0134 310
B60R21/015 312
B60R21/16
B60N2/90
B60N2/42
B60N2/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020146331
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041242
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 英之
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-296944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0129442(US,A1)
【文献】特開2019-130944(JP,A)
【文献】特開2017-030636(JP,A)
【文献】国際公開第2018/167919(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/015
B60R 21/0134
B60R 21/16
B60N 2/90
B60N 2/42
B60N 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの供給を受けて車室の後席シートに着座する乗員と前記後席シートより車両前方側に位置する前席シートとの間のルーフから車室下側へ向けて展開し、前記後席シートに着座する乗員を保護するエアバッグと、
該エアバッグの位置に応じて所定の領域を設定する領域設定部と、
車両の衝突が不可避であることを予知する衝突予知センサと、
乗員が着座する前記前席シートの位置及び姿勢を検出するシート位置検出センサと、
前記衝突予知センサによって前記車両の衝突が不可避であることが予知され、かつ前記シート位置検出センサによって前記所定の領域内に前記前席シートが位置することが検出されると、前記前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行うシート制御部と、
を有する車両用乗員拘束システム。
【請求項2】
前記領域設定部は、前記エアバッグの展開領域周辺に第1領域を設定し、
前記シート制御部は、前記衝突予知センサによって前記車両の衝突が不可避であることが予知され、かつ前記シート位置検出センサによって前記第1領域内に前記前席シートが位置することが検出されると、前記前席シートが前記エアバッグの展開領域から離れる方向に、前記前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う請求項1に記載の車両用乗員拘束システム。
【請求項3】
前記シート制御部は、前記エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に前記前席シートが位置するように前記制御を行う請求項2に記載の車両用乗員拘束システム。
【請求項4】
前記領域設定部は、前記エアバッグの展開領域周辺に第1領域を設定し、
前記シート制御部は、前記衝突予知センサによって前記車両の衝突が不可避であることが予知され、かつ前記シート位置検出センサによって前記第1領域内に前記前席シートが位置することが検出されると、前記エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に前記前席シートが位置するように、前記前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う請求項1に記載の車両用乗員拘束システム。
【請求項5】
前記領域設定部は、前記エアバッグの展開領域周辺に第1領域を設定し、車両前方側において当該第1領域に隣接する第2領域を設定し
前記シート制御部は、前記衝突予知センサによって前記車両の衝突が不可避であることが予知され、かつ前記シート位置検出センサによって前記第2領域内に前記前席シートが位置することが検出されると、前記エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に前記前席シートが位置するように、前記前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う請求項1又は4に記載の車両用乗員拘束システム。
【請求項6】
前記前席シートは、伸縮機構を有するヘッドレストを備え、
前記シート制御部が、該ヘッドレストの前記伸縮機構を制御することにより前記エアバッグを前記ヘッドレスト背面で支持する支持位置に前記前席シートを位置させる制御を行う請求項3~5の何れか1項に記載の車両用乗員拘束システム。
【請求項7】
前記シート制御部は、車両が自動運転されている状態で前記制御を行う請求項1~6の何れか1項に記載の車両用乗員拘束システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用乗員拘束システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内のルーフから膨張可能な後席エアバッグが開示されている。この後席エアバッグは、ルーフから下方かつ後席の前方に向けて展開する第1バッグ部と、第1バッグ部の膨張展開時に展開状態の第1バッグ部を支持するとともに、ヘッドレストに当接する第2バッグ部とを備えている。特許文献1に記載の後席エアバッグによれば、衝撃吸収時に第2バッグ部が、第1バッグ部の車両前方側へ揺動を抑制するので、後席乗員を確実に保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-30546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、乗員の体型に合わせたり、自動運転時に乗員を楽な姿勢にするため等に、シートの位置や姿勢が自由に変更可能となる場合には、前席シートと後席エアバッグとが干渉してしまう虞がある。また、上記特許文献1において、シートの位置や姿勢が自由に変更可能となる場合には、シートの位置によってシートとエアバッグとの位置関係が変わってしまうため、エアバッグの拘束開始のタイミングが変わってしまう。そのため、エアバッグの拘束開始のタイミングによっては、第2バッグ部によって第1バッグ部を支持しきれない虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シートとエアバッグとの位置関係を適切に制御できる車両用乗員拘束システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムは、ガスの供給を受けて車室の後席シートに着座する乗員と前記後席シートより車両前方側に位置する前席シートとの間のルーフから車室下側へ向けて展開し、前記後席シートに着座する乗員を保護するエアバッグと、該エアバッグの位置に応じて所定の領域を設定する領域設定部と、車両の衝突が不可避であることを予知する衝突予知センサと、乗員が着座する前記前席シートの位置及び姿勢を検出するシート位置検出センサと、前記衝突予知センサによって前記車両の衝突が不可避であることが予知され、かつ前記シート位置検出センサによって前記所定の領域内に前記前席シートが位置することが検出されると、前記前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行うシート制御部と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムによれば、領域設定部はエアバッグの位置に応じて所定の領域を設定し、シート制御部は、衝突予知センサによって車両の衝突が不可避であることを予知され、かつシート位置検出センサによって、設定された所定の領域内に前席シートが位置することが検出されると、前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う。そのため、車両の衝突時に、エアバッグの位置に応じて前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方が変更されるので、前席シートとエアバッグとの位置関係を適切に制御することができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムでは、請求項1に記載の発明に係る車両用乗員拘束システムにおいて、前記領域設定部は、前記エアバッグの展開領域周辺に第1領域を設定し、前記シート制御部は、前記衝突予知センサによって前記車両の衝突が不可避であることが予知され、かつ前記シート位置検出センサによって前記第1領域内に前記前席シートが位置することが検出されると、前記前席シートが前記エアバッグの展開領域から離れる方向に、前記前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムによれば、車両の衝突時に、前席シートが第1領域すなわちエアバッグの展開領域周辺に位置していると、エアバッグの展開領域から離れる方向に前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方が変更されるので、前席シートとエアバッグとの干渉を抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムでは、請求項2に記載の発明に係る車両用乗員拘束システムにおいて、前記シート制御部は、前記エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に前記前席シートが位置するように前記制御を行う。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムによれば、車両の衝突時に、シートが第1領域すなわちエアバッグの展開領域周辺に位置していると、エアバッグの展開領域から離れる方向であって、エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に前席シートが位置するように前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方が変更される。そのため、前席シートとエアバッグとの干渉を抑制することができるとともに、シートレイアウトによらず前席シートによってエアバッグを安定して支持することができる。
【0012】
請求項4に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムでは、請求項1に記載の発明に係る車両用乗員拘束システムにおいて、前記領域設定部は、前記エアバッグの展開領域周辺に第1領域を設定し、前記シート制御部は、前記衝突予知センサによって前記車両の衝突が不可避であることが予知され、かつ前記シート位置検出センサによって前記第1領域内に前記前席シートが位置することが検出されると、前記エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に前記前席シートが位置するように、前記前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う。
【0013】
請求項4に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムによれば、車両の衝突時に、前席シートが第1領域すなわちエアバッグの展開領域周辺に位置していると、エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に前席シートが位置するように前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方が変更される。そのため、シートレイアウトによらず前席シートによってエアバッグを安定して支持することができる。
【0014】
請求項5に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムでは、請求項1又は4に記載の発明に係る車両用乗員拘束システムにおいて、前記領域設定部は、前記エアバッグの展開領域周辺に第1領域を設定し、車両前方側において当該第1領域に隣接する第2領域を設定し、前記シート制御部は、前記衝突予知センサによって前記車両の衝突が不可避であることが予知され、かつ前記シート位置検出センサによって前記第2領域内に前記前席シートが位置することが検出されると、前記エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に前記前席シートが位置するように、前記前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う。
【0015】
請求項5に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムによれば、車両の衝突時に、前席シートが車両前方側において第1領域に隣接する第2領域すなわち第1領域よりもエアバッグの展開領域から離間した領域に位置していると、エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に前席シートが位置するように前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方が変更される。そのため、シートレイアウトによらず前席シートによってエアバッグを安定して支持することができる。
【0016】
請求項6に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムでは、請求項3~5の何れか1項に記載の発明に係る車両用乗員拘束システムにおいて、前記前席シートは、伸縮機構を有するヘッドレストを備え、前記シート制御部が、該ヘッドレストの前記伸縮機構を制御することにより前記エアバッグを前記ヘッドレスト背面で支持する支持位置に前記前席シートを位置させる制御を行う。
【0017】
請求項6に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムによれば、前席シートが、伸縮機構を有するヘッドレストを備え、シート制御部が、ヘッドレストの伸縮機構を制御することによりエアバッグを前記ヘッドレスト背面で支持する支持位置に前席シートを位置させる制御を行う。そのため、例えば前席シートとエアバッグとの位置が離れている場合であっても、ヘッドレストを伸ばすことにより、ヘッドレストを、エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に位置させることができる。そのため、シートレイアウトによらず前席シートによってエアバッグを安定して支持することができる。
【0018】
請求項7に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムでは、請求項1~6の何れか1項に記載の発明に係る車両用乗員拘束システムにおいて、前記シート制御部は、車両が自動運転されている状態で前記制御を行う。
【0019】
請求項7に記載の本発明に係る車両用乗員拘束システムによれば、シート制御部は、車両が自動運転されている状態で前席シートの位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う。そのため、自動運転時にシートレイアウトの自由度が増した場合であっても、エアバッグによって乗員を適切に保護することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、請求項1の車両用乗員拘束システムによれば、前席シートとエアバッグとの位置関係を適切に制御できる、という優れた効果を有する。
【0021】
請求項2の車両用乗員拘束システムによれば、前席シートとエアバッグとの干渉を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0022】
請求項3の車両用乗員拘束システムによれば、前席シートとエアバッグとの干渉を抑制することができるとともに、シートレイアウトによらず前席シートによってエアバッグを安定して支持することができる、という優れた効果を有する。
【0023】
請求項4の車両用乗員拘束システムによれば、シートレイアウトによらず前席シートによってエアバッグを安定して支持することができる、という優れた効果を有する。
【0024】
請求項5の車両用乗員拘束システムによれば、シートレイアウトによらず前席シートによってエアバッグを安定して支持することができる、という優れた効果を有する。
【0025】
請求項6の車両用乗員拘束システムによれば、例えば前席シートとエアバッグとの位置が離れている場合であっても、ヘッドレストを伸ばすことにより、ヘッドレストを、エアバッグをヘッドレスト背面で支持する支持位置に位置させることができる。そのため、シートレイアウトによらず前席シートによってエアバッグを安定して支持することができる、という優れた効果を有する。
【0026】
請求項7の車両用乗員拘束システムによれば、自動運転時にシートレイアウトの自由度が増した場合であっても、エアバッグによって乗員を適切に保護することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る車両用乗員拘束システムが適用された車両を示す側面図である。
図2】第1実施形態の車両用乗員拘束システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る車両用乗員拘束制御を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る車両用乗員拘束制御を示すフローチャートである。
図5】第3実施形態に係る車両用乗員拘束システムが適用された車両を示す側面図である。
図6】第3実施形態の車両用乗員拘束システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図7】第3実施形態に係る車両用乗員拘束制御を示すフローチャートである。
図8】第4実施形態に係る車両用乗員拘束制御を示すフローチャートである。
図9】第5実施形態に係る車両用乗員拘束制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る車両用乗員拘束システム10について説明する。先ずは、第1実施形態に係る車両用乗員拘束システム10が適用された車両12について、図1を参照して説明する。図1は第1実施形態に係る車両用乗員拘束システム10が適用された車両12を示す側面図である。第1実施形態に係る車両用乗員拘束システム10が適用された車両12は自動運転車であって、自動運転中においては運転者による運転操作を必要としない。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP及び矢印RHは、車両の前方向、上方向及び右方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両前方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0029】
図1に示されるように、第1実施形態に係る車両用乗員拘束システム10が適用された車両12は、2列シートの車両であり、前席シート14及び後席シート16が設けられている。前席シート14及び後席シート16は、各々前席の乗員P1と後席の乗員P2の臀部及び大腿部をシート下方側から支持可能なシートクッション18と、シートクッション18の後端部に連結されて乗員P1,P2の背部を支持可能なシートバック20とを含んで構成されている。また、シートバック20の上端部には、乗員P1,P2の頭部を支持可能なヘッドレスト22が設けられている。
【0030】
シートクッション18は、シートクッション18の骨格を形成するフレームと、発泡ウレタンにより形成されたクッション材と、当該クッション材の表面を覆う布製又は革製の表皮材と、を含んで構成されている。前席シート14には、シートクッション18を車両前後方向にスライド可能にするシートスライド部24が設けられている。
【0031】
シートスライド部24は、車両12の床部12Aと締結されるシートレール26と、前席シート14が取り付けられシートレール26に対してスライド可能なアッパレール28とを備えている。シートレール26及びアッパレール28は、車両前後方向に延びる左右一対のレールで構成されている。また、シートスライド部24は、アッパレール28の左右一対のレール間に掛け渡された図示しない伝達シャフトと、この伝達シャフトを回転駆動するスライド用モータ30と、スライド用モータ30の回転駆動を制御する後述のシート制御部104とを備えている。アッパレール28は、伝達シャフトを介して伝達されるスライド用モータ30の駆動力に基づいて車両前後方向にスライドする。
【0032】
なお、第1実施形態においては、前席シート14の車両前後方向の位置を検出する位置センサ32が設けられている。位置センサ32は、スライド用モータ30の出力軸の回転位置を検出するロータリエンコーダとされている。上記のように、アッパレール28すなわち前席シート14は、スライド用モータ30の駆動力によって車両前後方向へスライドされる。したがって、スライド用モータ30の出力軸の回転位置を検出することによって前席シート14の車両前後方向への移動量を間接的に検出できる。なお、位置センサ32からは、スライド用モータ30の出力軸の回転位置、すなわち、前席シート14の移動量に対応する電気信号が出力される。
【0033】
また、図示は省略するが、前席シート14には、シートクッション18を車両上下方向に昇降させるリフト装置が設けられていてもよい。
【0034】
シートバック20は、シートバック20の骨格を形成するフレームと、発泡ウレタンにより形成されたクッション材と、当該クッション材の表面を覆う布製又は革製の表皮材と、を含んで構成されている。シートバック20は、シートバック20の車両下側端部を中心にシートバック20を車両前後方向へ回動させるリクライニング部34を備えている。
【0035】
リクライニング部34は、軸部36を備えている。軸部36の中心軸線方向は、車幅方向とされており、シートクッション18のフレームの車両後側の部分とシートバック20のフレームの車両下側の部分とが軸部36によって機械的に連結されている。また、シートバック20は、軸部36を中心に車両前後方向(図1の矢印A1方向及びその反対の矢印A2方向)へ回動できる。
【0036】
また、リクライニング部34は、リクライニングモータ38と、リクライニングモータ38の回転駆動を制御する後述のシート制御部104とを備えている。リクライニングモータ38は、例えば、シートクッション18に設けられている。リクライニングモータ38の出力軸は、例えば、軸部36に設けられた減速装置又は駆動力伝達装置としてのギヤ列(図示せず)に連結されている。シートバック20は、リクライニングモータ38の駆動力によって軸部36周りに回動される。なお、第1実施形態においては、前席シート14のシートバック20のリクライニング角度、すなわちシートバック20の姿勢を検出する姿勢センサ40が設けられている。
【0037】
姿勢センサ40は、例えば、リクライニングモータ38の出力軸の回転位置を検出するロータリエンコーダとされている。上記のように、シートバック20は、リクライニングモータ38の駆動力によって車両前後方向へ回動される。したがって、リクライニングモータ38の出力軸の回転位置を検出することによってシートバック20の車両前後方向への回動角度つまり姿勢を間接的に検出できる。なお、姿勢センサ40からは、リクライニングモータ38の出力軸の回転位置、すなわち、シートバック20の回動角度(姿勢)に対応する電気信号が出力される。
【0038】
ヘッドレスト22は、シートバック20のシート上方側の端部に設けられている。このヘッドレスト22は、発泡ウレタンにより形成されたクッション材と、当該クッション材の表面を覆う布製又は革製の表皮材と、を含んで構成されている。
【0039】
また、第1実施形態の車両12は、後席シート16に着座する乗員P2を保護するための後席用エアバッグ装置50を備えている。後席用エアバッグ装置50は、エアバッグとしての後席エアバッグ52と、後席エアバッグ52にガスを供給する第1インフレータ54と、第1インフレータ54の作動を制御する後述のインフレータ制御部106とを含んで構成されている。後席エアバッグ52は、車両12が衝突した際に、第1インフレータ54からガスの供給を受けて、前席シート14と後席シート16との間において、車室12Bのルーフ12Cから車室12B下側へ向かって膨張展開する。なお、図1においては、後席エアバッグ52の膨張展開時の状態を示している。
【0040】
なお、膨張展開前の後席エアバッグ52は、折り畳まれた状態でルーフ12Cとルーフ12Cの車室側を覆うルーフライニング12Dとの間に収容されている。また、インフレータ54も同様にルーフ12Cとルーフライニング12Dの間に収容されている。
【0041】
また、第1実施形態の車両12は、後席シート16に着座する乗員P2を保護するための後席用ニーエアバッグ装置56を備えている。後席用ニーエアバッグ装置56は、ニーエアバッグ58と、ニーエアバッグ58にガスを供給する第2インフレータ60と、第2インフレータ60の作動を制御する後述のインフレータ制御部106とを含んで構成されている。ニーエアバッグ58は、車両12が衝突した際に、第2インフレータ60からガスの供給を受けて、前席シート14と後席シート16との間において、前席シート14のシートバック20から後席シート16へ向かって膨張展開する。なお、図1においては、ニーエアバッグ58の膨張展開時の状態を示している。
【0042】
なお、膨張展開前のニーエアバッグ58は、折り畳まれた状態で前席シート14のシートバック20内部に収容されている。また、インフレータ60も同様に前席シート14のシートバック20内部に収容されている。
【0043】
また、後席シート16のシートクッション18には、このシートクッション18への乗員P2の着座を検知する着座検知センサ62が設けられている。着座検知センサ62は、具体的には、シートクッション18の座圧を検知するセンサであり、一つ又は複数の感圧センサによって構成されている。
【0044】
また、車両12には、車両12の衝突を検出する衝突センサ64が設けられている。衝突センサ64は、例えばウインドシールドガラス及びリアガラスの上部における車幅方向中央付近に各々設けられた図示しないステレオカメラを含んで構成される。そして、このステレオカメラによって車両の前方側及び後方側を撮影し、車両への衝突体を検出するようになっている。
【0045】
なお、第1実施形態においてウインドシールドガラスに設けられる衝突センサ64は、一例としてプリクラッシュセンサなどの衝突予知センサが用いられており、この衝突センサ64からの信号に基づいて、車両12に対する各種形態の衝突の発生不可避であることを予測可能とされている。ステレオカメラによって検出された衝突体までの距離や車両と衝突体との相対速度などを測定し、測定データを後述するECU100へ出力するようになっている。そして、ECU100は、ステレオカメラからの測定データに基づいて車両の衝突が不可避であるかどうかについて判断する。なお、衝突センサ64をミリ波レーダなどによって構成してもよい。衝突予知センサにより検知される衝突形態は、前面衝突であり、正面衝突、微小ラップ衝突、オブリーク衝突等がある。ここで、微小ラップ衝突とは、例えば車両のフロントサイドメンバ(図示せず)より車幅方向外側での衝突をいう。また、オブリーク衝突とは、車両前部に対する斜め前方側からの衝突をいう。
【0046】
また、第1実施形態の車両12は、図示は省略するが、前席シート14及び後席シート16にシートベルト装置が設けられている。シートベルト装置は、公知の装置を使用することができる。シートベルト装置は、上記衝突センサ64からの信号に基づいて、車両12の衝突が不可避であると判断された際には、シートベルト装置のプリテンショナによってシートベルトが巻き取られ、乗員P1、P2が拘束される。
【0047】
また、図1に示されるように、第1実施形態の前席シート14は、右ハンドル車の運転席に設けられたシートであり、この前席シート14の前方にはステアリングホイール66が設けられている。そして、運転者である乗員P1がステアリングホイール66を把持して左右に操舵することで、車両12が左右に旋回される。ただし、自動運転モードが選択されている場合には、乗員P1がステアリングホイール66を操作しなくても、道路に合わせて自動的に車両12が左右に旋回される。
【0048】
図2は第1実施形態の車両用乗員拘束システム10のハードウェア構成を示すブロック図である。車両用乗員拘束システム10は、図2に示されるように、制御部としてのECU(Electronic Control Unit)100を備えている。ECU100は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。第1実施形態のECU100は、図示しないCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージ等を含んで構成されており、各構成は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。CPUは、ROM又はストレージからプログラムを読み出し、RAMを作業領域としてプログラムを実行する。
【0049】
ECU100には、上述した、位置センサ32、姿勢センサ40、着座検知センサ62、衝突センサ64、スライド用モータ30、リクライニングモータ38、第1インフレータ54、第2インフレータ60、及びプリテンショナ(図示せず)等が電気的に接続されている。ECU100には、位置センサ32、姿勢センサ40、着座検知センサ62、及び衝突センサ64から出力された出力値が入力される。なお、第1実施形態においては、位置センサ32及び姿勢センサ40が、本発明のシート位置検出センサ33に対応する。
【0050】
また、ECU100は、図3に示されるように、領域設定部102、シート制御部104、インフレータ制御部106、及び自動運転部108として機能する。各機能構成は、ECU100のCPUがROM又はストレージに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0051】
領域設定部102は、後席エアバッグ52の位置に応じて所定の領域を設定する。第1実施形態においては、後席エアバッグ52が膨張展開した際の展開領域52A周辺に第1領域を設定する。具体的には、位置センサ32及び姿勢センサ40から各々出力される出力値に対して、第1領域に対応する値の範囲を設定する。なお、前席シート14の少なくとも一部が第1領域に存在し得る位置センサ32及び姿勢センサ40の値の組み合わせは、全て第1領域に対応する値とする。
【0052】
シート制御部104は、衝突センサ64によって車両12の衝突が検出され、かつシート位置検出センサ33によって第1領域内に前席シート14が位置することが検出されると、前席シート14の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う。
【0053】
例えば、図1に示される前席シート14の車両前後方向の位置、すなわちアッパレール28の位置において、実線で示されるシートバック20のリクライニング角度、すなわちシートバック20の姿勢を運転姿勢R1とする。また、一点鎖線で示されるシートバック20のリクライニング角度、すなわちシートバック20の姿勢を上記運転姿勢R1よりもシートバック20が後ろに倒れた姿勢である、やや安楽姿勢R2とする。また、二点鎖線で示されるシートバック20のリクライニング角度、すなわちシートバック20の姿勢を上記やや安楽姿勢R2よりもさらにシートバック20が後ろに倒れた姿勢である、より安楽姿勢R3とする。
【0054】
第1実施形態においては、車両12は自動運転車であって、車両12が自動運転されている状態においては、運転者による運転操作を必要としない。そのため、運転者である乗員P1は、自動運転中にステアリングホイール66を操作する必要がないので、乗員P1はシートバック20をやや安楽姿勢R2又はより安楽姿勢R3とする場合がある。図1に示される状態においては、前席シート14のシートバック20がより安楽姿勢R3である場合に、位置センサ32及び姿勢センサ40から出力される値が上記第1領域に対応する値となる。
【0055】
シート制御部104は、衝突センサ64によって車両12の衝突が検出され、かつシート位置検出センサ33によって第1領域内に前席シート14が位置することが検出されると、すなわち位置センサ32及び姿勢センサ40から出力される値が第1領域に対応する値であると、前席シート14が後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れるように、シートバック20の姿勢を変更する制御を行う。
【0056】
具体的には、シート制御部104は、例えば、シートバック20がより安楽姿勢R3である場合には、運転姿勢R1になるようにリクライニングモータ38の回転量を導出し、導出した回転量だけリクライニングモータ38を回転させる。
【0057】
インフレータ制御部106は、衝突センサ64により車両12の衝突が検出された際に、第1インフレータ54及び第2インフレータ60から後席エアバッグ52及びニーエアバッグ58に供給するガスの量を導出し、導出した量のガスを第1インフレータ54及び第2インフレータ60から後席エアバッグ52及びニーエアバッグ58にそれぞれ供給させる。
【0058】
自動運転部108は、自動運転モードが選択された場合に車両12を自動運転させる。なお、自動運転部108は、公知の技術を使用することができる。第1実施形態においては、シート制御部104は自動運転部108により車両12が自動運転されている状態で上記のようなシート制御を行う。
【0059】
次に、車両用乗員拘束システム10による乗員拘束制御処理の流れについて、図3のフローチャートを参照して説明する。第1実施形態に係る車両用乗員拘束システム10では、図3に示されるように、ECU100が衝突センサ64の検出信号により車両12の衝突が検出されたと判断した場合(ステップS10;YES)に、ECU100が着座検知センサ62の検出信号により後席シート16に乗員P2が着座している否かを判断する。後席シート16に乗員P2が着座していると判断された場合(ステップS11;YES)ECU100は乗員拘束制御を行う。
【0060】
具体的には、インフレータ制御部106が、導出したガスの量に基づいて第1インフレータ54及び第2インフレータ60から後席エアバッグ52及びニーエアバッグ58にガスを供給させて、後席エアバッグ52及びニーエアバッグ58を膨張展開させる(ステップS12)。
【0061】
また、ECU100は、ステップS12の処理と平行して、位置センサ32及び姿勢センサ40、すなわちシート位置検出センサ33からの出力信号に基づいて前席シート14の少なくとも一部が第1領域内に位置するか否かを判断する。ECU100が、前席シート14の少なくとも一部が第1領域内に位置すると判断した場合(ステップS13;YES)は、シート制御部104は前席シート14のシートバック20の姿勢を後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れる方向に変更させる(ステップS14)。
【0062】
具体的には、シート制御部104は、衝突センサ64により車両12の衝突が検出され、かつ、位置センサ32及び姿勢センサ40により第1領域内に前席シート14が位置していることが検出されると、前席シート14が後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れるように、シートバック20の姿勢を変更する制御を行う。
【0063】
第1実施形態においては、シート制御部104は、例えば、シートバック20がより安楽姿勢R3である場合には、運転姿勢R1になるようにリクライニングモータ38の回転量を導出し、導出した回転量だけリクライニングモータ38を回転させる。
【0064】
ECU100は、ステップS12及びステップS14の処理が行われると、乗員拘束制御の処理を終了する。また、ECU100は、ステップS13において、前席シート14が第1領域内に位置しないと判断した場合(ステップS13;NO)においても、乗員拘束制御の処理を終了する。
【0065】
一方、ステップS10において、車両12の衝突が検出されていないと判断された場合(ステップS10;NO)には、ECU100は車両12の衝突が検出されるまで乗員拘束制御を行わず、ステップS10の処理を繰り返し行う。また、ステップS11において、後席シート16に乗員P2が着座していないと判断された場合(ステップS11;NO)、ECU100はステップS10に処理を移行し、次に車両12の衝突が検出されるまで乗員拘束制御を行わず、ステップS10の処理を繰り返し行う。
【0066】
(作用)
次に、第1実施形態の作用効果を説明する。
【0067】
第1実施形態に係る車両用乗員拘束システム10では、領域設定部102は後席エアバッグ52の位置に応じて所定の領域を設定し、シート制御部104は、衝突センサ64によって車両12の衝突が検出され、かつシート位置検出センサ33によって、設定された所定の領域内に前席シート14が位置することが検出されると、前席シート14の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う。そのため、車両12の衝突時に、後席エアバッグ52の位置に応じて前席シート14のシートバック20の姿勢が変更されるので、前席シート14と後席エアバッグ52との位置関係を適切に制御することができる。
【0068】
また、第1実施形態に係る車両用乗員拘束システム10によれば、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52A周辺に位置していると、前席シート14のシートバック20の姿勢がより安楽姿勢R3から運転姿勢R1、すなわち後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れる方向に変更されるので、前席シート14と後席エアバッグ52との干渉を抑制することができる。
【0069】
なお、第1実施形態においては、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢をより安楽姿勢R3から運転姿勢R1に変更する制御を行ったが、本発明はこれに限られない。前席シート14が後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れることができれば、例えば、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢を変更せずに、前席シート14のシートクッション18を車両前方向に移動させる制御を行ってもよい。また、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢も図1の矢印A2方向に移動させつつ、前席シート14のシートクッション18を車両前方向に移動させる制御を行ってもよい。
【0070】
また、第1実施形態においては、シート制御部104により、前席シート14の位置及び姿勢の少なくとも一方が、後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れるように変更される。この際に、前席シート14が、後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れ過ぎてしまう場合には、インフレータ制御部106が、後席エアバッグ52に供給するガスの量を増やし、増やしたガスの量に基づいて第1インフレータ54から後席エアバッグ52にガスを供給させて、後席エアバッグ52を膨張展開させてもよい。なお、ガスの量は、前席シート14が後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れるほど多くする。
【0071】
これにより、後席エアバッグ52と、シートバック20及びヘッドレスト22との距離を適切に補うことができるので、後席エアバッグ52によって後席シート16に着座している乗員P2を安定して拘束することができる。
【0072】
また、前席シート14のシートバック20が、後席シート16に着座している乗員P2の脚から離れ過ぎてしまう場合には、インフレータ制御部106が、ニーエアバッグ58に供給するガスの量を増やし、増やしたガスの量に基づいて第2インフレータ60からニーエアバッグ58にガスを供給させて、ニーエアバッグ58を膨張展開させてもよい。なお、ガスの量は、前席シート14が後席シート16に着座している乗員P2から離れるほど多くする。
【0073】
これにより、ニーエアバッグ58と後席シート16に着座している乗員P2の脚との距離を適切に補うことができるので、後席シート16に着座している乗員P2の脚への衝撃をニーエアバッグ58によって緩和することができる。
【0074】
また、例えば図1において、前席シート14のシートバック20の姿勢がやや安楽姿勢R2の際に、姿勢センサ40から出力される値が前席シート14の少なくとも一部が第1領域に位置する値となる場合には、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢をやや安楽姿勢R2から運転姿勢R1に変更する制御を行う。
【0075】
(第1実施形態の変形例)
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。なお、車両用乗員拘束システム10及び車両12の構成は、図1と同じであるため、異なる箇所についてのみ以下に説明する。上記第1の実施形態においては、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢をより安楽姿勢R3から運転姿勢R1に変更する制御を行ったが、本変形例においては、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢をより安楽姿勢R3からやや安楽姿勢R2に変更する制御を行う。なお、本変形例において、前席シート14のシートバック20の姿勢がやや安楽姿勢R2の際に、姿勢センサ40から出力される値は前席シート14の少なくとも一部が第1領域に位置する値とはならない。
【0076】
本変形例において、図1に示すように前席シート14のシートバック20の姿勢がやや安楽姿勢R2の場合を、前席シート14が後席エアバッグ52を支持する支持位置とする。つまり、シート制御部104は、前席シート14が後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように前席シート14のシートバック20の姿勢を変更する制御を行う。
【0077】
(作用)
次に、第1実施形態の変形例の作用効果を説明する。
【0078】
第1実施形態に係る車両用乗員拘束システム10の変形例では、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52A周辺に位置していると、前席シート14のシートバック20の姿勢がより安楽姿勢R3からやや安楽姿勢R2に変更される。すなわち後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れる方向であって、後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように前席シート14のシートバック20の姿勢が変更される。そのため、前席シート14と後席エアバッグ52との干渉を抑制することができるともに、シートレイアウトによらず前席シート14によって後席エアバッグ52を安定して支持することができる。
【0079】
なお、上記変形例においては、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢をより安楽姿勢R3からやや安楽姿勢R2に変更する制御を行ったが、本発明はこれに限られない。前席シート14が後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れることができ、かつ、前席シート14が後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置することができれば、例えば、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢を変更せずに、前席シート14のシートクッション18を車両前方向に移動させる制御を行ってもよい。また、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢も図1の矢印A2方向に移動させつつ、前席シート14のシートクッション18を車両前方向に移動させる制御を行ってもよい。
【0080】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Aについて説明する。先ずは、第2実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Aが適用された車両12について説明する。なお、車両用乗員拘束システム10A及び車両12の構成は、図1で示される車両用乗員拘束システム10及び車両12と同じであるため、異なる箇所についてのみ以下に説明する。上記第1の実施形態においては、シート制御部104は、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52A周辺に位置していると、前席シート14の位置及び姿勢の少なくとも一方を、後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れるように変更する。
【0081】
第2実施形態では、シート制御部104Aは、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52A周辺に位置していると、前席シート14のシートバック20の姿勢を、前席シート14が後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように変更する。なお、第2実施形態においては、図1に示すように前席シート14のシートバック20の姿勢がやや安楽姿勢R2の場合に、ヘッドレスト22が後席エアバッグ52の展開領域52Aに当接するため、やや安楽姿勢R2を前席シート14が後席エアバッグ52を支持する支持位置とする。
【0082】
シート制御部104Aは、例えば、前席シート14のシートバック20の姿勢が運転姿勢R1である場合には、やや安楽姿勢R2となるようにシートバック20の姿勢を矢印A1方向に変更する制御を行う。また、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢がより安楽姿勢R3である場合には、やや安楽姿勢R2となるようにシートバック20の姿勢を矢印A2方向に変更する制御を行う。
【0083】
次に、車両用乗員拘束システム10Aによる乗員拘束制御処理の流れについて、図4のフローチャートを参照して説明する。なお、図4に示されるフローチャートのステップS20~ステップS23の処理は、図3に示される第1実施形態のフローチャートのステップS10~ステップS13の処理と同じ処理であるため、ここでの説明は省略し、異なる処理であるステップS24の処理についてのみ説明する。
【0084】
第2実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Aでは、図4に示されるように、ステップS24において、ECU100が、前席シート14の少なくとも一部が第1領域内に位置すると判断した場合(ステップS23;YES)は、シート制御部104Aは前席シート14のシートバック20の姿勢を前席シート14が後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように変更させる(ステップS24)。
【0085】
具体的には、シート制御部104Aは、衝突センサ64によって車両12の衝突が検出され、かつ、位置センサ32及び姿勢センサ40によって第1領域内に前席シート14が位置することが検出されると、前席シート14が後席エアバッグ52を支持する支持位置するように、つまりやや安楽姿勢R2となるように、シートバック20の姿勢を変更する制御を行う。
【0086】
(作用)
次に、第2実施形態の作用効果を説明する。
【0087】
第2実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Aでは、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52A周辺に位置していると、後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように前席シート14のシートバック20の姿勢が変更される。そのため、シートレイアウトによらず前席シート14によって後席エアバッグ52を安定して支持することができる。
【0088】
なお、上記第2実施形態においては、シート制御部104Aは、前席シート14のシートバック20の姿勢をより安楽姿勢R3及び運転姿勢R1からやや安楽姿勢R2に変更する制御を行ったが、本発明はこれに限られない。ヘッドレスト22が後席エアバッグ52の展開領域52Aに当接する位置であれば、例えば、シート制御部104は、前席シート14のシートバック20の姿勢を変更せずに、前席シート14のシートクッション18を車両前後方向に移動させる制御を行ってもよい。また、シート制御部104Aは、前席シート14のシートバック20の姿勢も図1の矢印A1方向又は矢印A2方向に移動させつつ、前席シート14のシートクッション18を車両前後方向に移動させる制御を行ってもよい。
【0089】
また、第2実施形態においては、シート制御部104Aにより、前席シート14の位置及び姿勢の少なくとも一方が、ヘッドレスト22が後席エアバッグ52の展開領域52Aに当接する位置に変更される。この際に、シートバック20が、後席シート16に着座している乗員P2の脚から離れ過ぎてしまう場合には、インフレータ制御部106が、ニーエアバッグ58に供給するガスの量を増やし、増やしたガスの量に基づいて第2インフレータ60からニーエアバッグ58にガスを供給させて、ニーエアバッグ58を膨張展開させてもよい。なお、ガスの量は、シートバック20がニーエアバッグ58の展開領域58Aから離れるほど多くする。
【0090】
これにより、ニーエアバッグ58と後席シート16に着座している乗員P2の脚との距離を適切に補うことができるので、後席シート16に着座している乗員P2の脚への衝撃をニーエアバッグ58によって緩和することができる。
【0091】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Bについて説明する。第3実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Bが適用された車両12について、図5を参照して説明する。図5は第3実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Bが適用された車両12を示す側面図である。なお、図5に示される車両12において、図1に示される第1実施形態の車両12と同じ構成については同符号で示して説明は省略し、異なる箇所についてのみ以下に説明する。
【0092】
第3実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Bが適用された車両12のヘッドレスト22Bは、伸縮機構42を有している。ヘッドレスト22Bは、シートバック20側の端部において、図示しない左右一対の筒状のホルダが設けられている。また、ヘッドレスト22Bには、図5に示されるように、シート下方側に延びる左右一対のヘッドレストステー23が設けられている。そして、各ヘッドレストステー23の下端部がシートバック20のシート上方側の端部に固定され、各ヘッドレストステー23の上端部がヘッドレスト22Bに設けられた上記左右一対の筒状のホルダにそれぞれ挿入されることにより、ヘッドレスト22Bは、シートバック20のシート上下方向に摺動可能になっている。
【0093】
伸縮機構42は、上記左右一対の筒状のホルダと、ヘッドレストステー23とを含んで構成されており、ヘッドレストステー23とヘッドレスト22Bとを連結している。また、伸縮機構42は、伸縮用モータ44と、図示しないギヤと、伸縮用モータ44の回転駆動を制御するシート制御部104とを含んでおり、伸縮用モータ44を駆動させることによってヘッドレスト22Bがヘッドレストステー23に対してシート上下方向に摺動するように構成されている。なお、第3実施形態においては、ヘッドレスト22Bの伸縮方向の位置を検出するヘッドレスト位置センサ46が設けられている。
【0094】
ヘッドレスト位置センサ46は、例えば、伸縮用モータ44の出力軸の回転位置を検出するロータリエンコーダとされている。上記のように、ヘッドレスト22Bは、伸縮用モータ44の駆動力によってシートバック20のシート上下方向に摺動される。したがって、伸縮用モータ44の出力軸の回転位置を検出することによってヘッドレスト22Bのシート上下方向の移動量を間接的に検出できる。なお、ヘッドレスト位置センサ46からは、伸縮用モータ44の出力軸の回転位置、すなわち、ヘッドレスト22Bのシート上下方向の移動量に対応する電気信号が出力される。
【0095】
図6は第3実施形態の車両用乗員拘束システム10Bのハードウェア構成を示すブロック図である。車両用乗員拘束システム10Bは、図2に示される第1実施形態の車両用乗員拘束システム10に加えて、図6に示されるように、ECU100に、上述した、ヘッドレスト位置センサ46及び伸縮用モータ44が電気的に接続されている。なお、第3実施形態においては、位置センサ32、姿勢センサ40、及びヘッドレスト位置センサ46が、本発明のシート位置検出センサ33に対応する。
【0096】
第3実施形態の領域設定部102Bは、後席エアバッグ52の位置に応じて所定の領域を設定するものであり、具体的には、後席エアバッグ52が膨張展開した際の展開領域52Aから離間した領域に第2領域を設定する。具体的には、位置センサ32、姿勢センサ40、及びヘッドレスト位置センサ46から各々出力される出力値に対して、第2領域に対応する値の範囲を設定する。なお、前席シート14の少なくとも一部が第2領域に存在し得る位置センサ32、姿勢センサ40、及びヘッドレスト位置センサ46の値の組み合わせは、全て第2領域に対応する値とする。
【0097】
第3実施形態のシート制御部104Bは、衝突センサ64によって車両12の衝突が検出され、かつシート位置検出センサ33によって第2領域内に前席シート14が位置することが検出されると、前席シート14の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行う。
【0098】
例えば、図5に示される前席シート14の車両前後方向の位置において、実線で示されるシートバック20のリクライニング角度、すなわちシートバック20の姿勢を運転姿勢R4とする。また、点線で示されるシートバック20のリクライニング角度、すなわちシートバック20の姿勢を上記運転姿勢R4よりもシートバック20が後ろに倒れた姿勢である、安楽姿勢R5とする。ここで、図5で示される前席シート14の車両前後方向の位置は、図1で示される前席シート14の車両前後方向の位置よりも車両前方向に位置している。例えば図1に示される前席シート14の位置が標準体型の運転者に適した位置であるとすると、図5に示される前席シート14の位置は小柄な運転者に適した位置となる。
【0099】
第3実施形態においては、図5に示される状態において、前席シート14のシートバック20が運転姿勢R4である場合に、位置センサ32、姿勢センサ40、及びヘッドレスト位置センサ46から出力される値が、第2領域に対応する値となる。
【0100】
また、図5に示される状態においては、シート制御部104が、リクライニングモータ38を回転させてシートバック20を矢印A1方向に倒したとしても、ヘッドレスト22Bは、後席エアバッグ52の展開領域52Aに当接できない。そのため、第3実施形態においては、シート制御部104Bが、伸縮用モータ44を回転させることにより、ヘッドレスト22Bを展開領域52Aに向けて伸ばす制御を行う。
【0101】
次に、車両用乗員拘束システム10Bによる乗員拘束制御処理の流れについて、図7のフローチャートを参照して説明する。なお、図7に示されるフローチャートのステップS30~ステップS32の処理は、図3に示される第1実施形態のフローチャートのステップS10~ステップS12の処理と同じ処理であるため、ここでの説明は省略し、異なる処理であるステップS33及びステップS34の処理についてのみ説明する。
【0102】
第3実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Aでは、図7に示されるように、ECU100が、ステップS32の処理と平行して、位置センサ32、姿勢センサ40、及びヘッドレスト位置センサ46、すなわちシート位置検出センサ33からの出力信号に基づいて前席シート14の少なくとも一部が第2領域内に位置するか否かを判断する。ECU100が、前席シート14の少なくとも一部が第2領域内に位置すると判断した場合(ステップS33;YES)は、シート制御部104Bは、前席シート14が後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように変更させる(ステップS34)。
【0103】
具体的には、シート制御部104Bは、衝突センサ64によって車両12の衝突が検出され、かつ、シート位置検出センサ33によって第2領域内に前席シート14が位置することが検出されると、シートバック20の姿勢を後席エアバッグ52の展開領域52Aに近づける方向(矢印A1方向)に変更させ、かつヘッドレスト22Bを後席エアバッグ52の展開領域52Aに向けて伸ばす制御を行う。
【0104】
第3実施形態においては、シート制御部104Bは、例えば、シートバック20が運転姿勢R4である場合には、安楽姿勢R5になるようにリクライニングモータ38の回転量を導出し、導出した回転量だけリクライニングモータ38を回転させる。さらに、シート制御部104Bは、ヘッドレスト22Bが後席エアバッグ52の展開領域52Aに当接する伸縮用モータ44の回転量を導出し、導出した回転量だけ伸縮用モータ44を回転させる。
【0105】
(作用)
次に、第3実施形態の作用効果を説明する。
【0106】
第3実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Bでは、車両12の衝突時に、前席シート14が第2領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52Aから離間した位置に位置していると、後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように前席シート14のシートバック20の姿勢が変更される。また、第3実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Bでは、前席シート14が、伸縮機構42を有するヘッドレスト22Bを備え、シート制御部104Bが、ヘッドレスト22Bの伸縮機構42を制御することにより前席シート14の位置を変更する制御を行う。そのため、例えば前席シート14と後席エアバッグ52との位置が離れている場合であっても、ヘッドレスト22Bを伸ばすことにより、ヘッドレスト22Bを、展開膨張した後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置させることができる。そのため、シートレイアウトによらず前席シート14によって後席エアバッグ52を安定して支持することができる。
【0107】
なお、上記第3実施形態においては、シート制御部104Bは、シートバック20の姿勢を運転姿勢R4から安楽姿勢R5に変更するとともに、ヘッドレスト22Bを後席エアバッグ52の展開領域52Aに向けて伸ばす制御を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、シートクッション18の車両前後方向の位置が、図5に示される位置よりも後方に位置しており、シートバック20を矢印A1方向に倒した際に、ヘッドレスト22Bを伸ばさなくてもヘッドレスト22Bが後席エアバッグ52の展開領域52Aに当接する場合には、シート制御部104Bは、伸縮機構42を制御しなくてもよい。
【0108】
また、シート制御部104Bは、ヘッドレスト22Bが後席エアバッグ52の展開領域52Aに当接可能であれば、例えば、シートバック20の姿勢を変更せずに、ヘッドレスト22Bを後席エアバッグ52の展開領域52Aに向けて伸ばす制御のみ行ってもよい。
【0109】
また、シート制御部104Bは、ヘッドレスト22Bが後席エアバッグ52の展開領域52Aに当接可能であれば、例えばシートバック20の姿勢を変更せずに、ヘッドレスト22Bを後席エアバッグ52の展開領域52Aに向けて伸ばす制御と、前席シート14のシートクッション18を車両後方向に移動させる制御を行ってもよい。
【0110】
また、シート制御部104Bは、ヘッドレスト22Bが後席エアバッグ52の展開領域52Aに当接可能であれば、例えばシートバック20の姿勢を変更せず、かつヘッドレスト22Bを後席エアバッグ52の展開領域52Aに向けて伸ばす制御も行わずに、前席シート14のシートクッション18を車両後方向に移動させる制御のみを行ってもよい。
【0111】
また、シート制御部104Bは、シートバック20の姿勢も図5の矢印A1方向又は矢印A2方向に移動させつつ、前席シート14のシートクッション18を車両前後方向に移動させる制御とヘッドレスト22Bを後席エアバッグ52の展開領域52Aに向けて伸ばす制御とを行ってもよい。
【0112】
また、第3実施形態においては、シート制御部104Bにより、前席シート14の位置及び姿勢の少なくとも一方が、ヘッドレスト22Bが後席エアバッグ52の展開領域52Aに当接する位置に変更される。この際に、シートバック20が後席シート16に着座している乗員P2の脚から離れ過ぎてしまう場合には、インフレータ制御部106が、ニーエアバッグ58に供給するガスの量を増やし、増やしたガスの量に基づいて第2インフレータ60からニーエアバッグ58にガスを供給させて、ニーエアバッグ58を膨張展開させてもよい。なお、ガスの量は、シートバック20がニーエアバッグ58の展開領域58Aから離れるほど多くする。
【0113】
これにより、ニーエアバッグ58と後席シート16に着座している乗員P2の脚との距離を適切に補うことができるので、後席シート16に着座している乗員P2の脚への衝撃をニーエアバッグ58によって緩和することができる。
【0114】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cについて説明する。先ずは、第4実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cが適用された車両12について説明する。なお、車両用乗員拘束システム10C及び車両12の構成は、図5及び図6で示される車両用乗員拘束システム10B及び車両12と同じであるため、異なる箇所についてのみ以下に説明する。
【0115】
上記第3の実施形態においては、領域設定部102Bは、後席エアバッグ52が膨張展開した際の展開領域52Aから離間した領域に第2領域を設定したが、第4実施形態の領域設定部102Cは、上記第2領域に加えて上述した第1領域も設定する。なお、第1領域及び第2領域の設定方法は、上述した実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0116】
また、第4実施形態のシート制御部104Cは、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52A周辺に位置していると、上述した第1実施形態及び第1実施形態の変形例と同様の制御を行う。また、シート制御部104Cは、車両12の衝突時に、前席シート14が第2領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52Aから離間した位置に位置していると、上述した第3実施形態と同様の制御を行う。
【0117】
次に、車両用乗員拘束システム10Cによる乗員拘束制御処理の流れについて、図8のフローチャートを参照して説明する。なお、図8に示されるフローチャートのステップS40~ステップS44の処理は、図3に示される第1実施形態のフローチャートのステップS10~ステップS14の処理と同じ処理であるため、ここでの説明は省略し、異なる処理であるステップS43が否定された場合以降の処理についてのみ説明する。
【0118】
第4実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cでは、図8に示されるように、ECU100が、ステップS43において、前席シート14が第1領域内に位置しないと判断した場合(ステップS43;NO)に、ECU100が、シート位置検出センサ33からの出力信号に基づいて前席シート14の少なくとも一部が第2領域内に位置するか否かを判断する(ステップS45)。そして、ステップS45以降の処理は、図7に示される第3実施形態のフローチャートのステップS34以降の処理と同様に行う。
【0119】
(作用)
次に、第4実施形態の作用効果を説明する。
【0120】
第4実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cでは、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52A周辺に位置していると、前席シート14のシートバック20の姿勢がより安楽姿勢R3から運転姿勢R1、すなわち後席エアバッグ52の展開領域52Aから離れる方向に変更されるので、前席シート14と後席エアバッグ52との干渉を抑制することができる。
【0121】
第4実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cでは、さらに、車両12の衝突時に、前席シート14が第2領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52Aから離間した位置に位置していると、後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように前席シート14のシートバック20の姿勢が変更される。また、第4実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cでは、前席シート14が、伸縮機構42を有するヘッドレスト22Bを備え、シート制御部104Bが、ヘッドレスト22Bの伸縮機構42を制御することにより前席シート14の位置を変更する制御を行う。そのため、例えば前席シート14と後席エアバッグ52との位置が離れている場合であっても、ヘッドレスト22Bを伸ばすことにより、ヘッドレスト22Bを、展開膨張した後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置させることができる。そのため、シートレイアウトによらず前席シート14によって後席エアバッグ52を安定して支持することができる。
【0122】
以上のように、第4実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cでは、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域及び第2領域の何れに位置している場合であっても、後席エアバッグ52の位置に応じて前席シート14のシートバック20の姿勢が変更されるので、前席シート14と後席エアバッグ52との位置関係を適切に制御することができる。
【0123】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cについて説明する。先ずは、第5実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Dが適用された車両12について説明する。なお、車両用乗員拘束システム10D及び車両12の構成は、図5及び図6で示される第4実施形態の車両用乗員拘束システム10C及び車両12と同じであるため、異なる箇所についてのみ以下に説明する。
【0124】
上記第4実施形態においては、シート制御部104Cは、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52A周辺に位置していると、上述した第1実施形態及び第1実施形態の変形例と同様の制御を行う。この第4実施形態に対して、第5実施形態においては、シート制御部104Dが、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52A周辺に位置していると、上述した第2実施形態と同様の制御を行う。
【0125】
次に、車両用乗員拘束システム10Dによる乗員拘束制御処理の流れについて、図9のフローチャートを参照して説明する。なお、図9に示されるフローチャートのステップS50~ステップS53の処理は、図8に示される第4実施形態のフローチャートのステップS40~ステップS43の処理と同じ処理であるため、ここでの説明は省略し、異なる処理であるステップS53以降の処理についてのみ説明する。
【0126】
第5実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cでは、図9に示されるように、ECU100が、ステップS53において、前席シート14が第1領域内に位置しないと判断した場合(ステップS53;NO)に、ECU100が、シート位置検出センサ33からの出力信号に基づいて前席シート14の少なくとも一部が第2領域内に位置するか否かを判断する(ステップS54)。前席シート14の少なくとも一部が第2領域内に位置する場合(ステップS54;YES)には、シート制御部104Dは、後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように前席シート14のシートバック20の姿勢を変更する制御を行う(ステップS55)。すなわち、シート制御部104Dは、上述した第3実施形態のステップS34(図7参照)と同様の処理を行う。
【0127】
一方、ステップS53において、前席シート14が第1領域内に位置すると判断した場合(ステップS53;YES)においても、シート制御部104Dは、シート制御部104Dは、後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように前席シート14のシートバック20の姿勢を変更する制御を行う(ステップS55)。すなわち、シート制御部104Dは、上述した第2実施形態のステップS24(図4参照)と同様の処理を行う。
【0128】
(作用)
次に、第5実施形態の作用効果を説明する。
【0129】
第5実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cでは、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52A周辺に位置していると、後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように前席シート14のシートバック20の姿勢が変更される。そのため、シートレイアウトによらず前席シート14によって後席エアバッグ52を安定して支持することができる。
【0130】
第5実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cでは、さらに、車両12の衝突時に、前席シート14が第2領域すなわち後席エアバッグ52の展開領域52Aから離間した位置に位置していると、後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置するように前席シート14のシートバック20の姿勢が変更される。また、第5実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Cでは、前席シート14が、伸縮機構42を有するヘッドレスト22Bを備え、シート制御部104Bが、ヘッドレスト22Bの伸縮機構42を制御することにより前席シート14の位置を変更する制御を行う。そのため、例えば前席シート14と後席エアバッグ52との位置が離れている場合であっても、ヘッドレスト22Bを伸ばすことにより、ヘッドレスト22Bを、展開膨張した後席エアバッグ52を支持する支持位置に位置させることができる。そのため、シートレイアウトによらず前席シート14によって後席エアバッグ52を安定して支持することができる。
【0131】
以上のように、第5実施形態に係る車両用乗員拘束システム10Dでは、車両12の衝突時に、前席シート14が第1領域及び第2領域の何れに位置している場合であっても、後席エアバッグ52の位置に応じて前席シート14のシートバック20の姿勢が変更されるので、前席シート14と後席エアバッグ52との位置関係を適切に制御することができる。
【0132】
なお、上述した実施形態においては、リクライニングモータ38をシートクッション18に設けたが本発明はこれに限られない。例えばリクライニングモータ38をシートバック20に設けてもよい。
【0133】
また、上述した実施形態においては、前席シート14の車両前後方向の位置を検出する位置センサ32、シートバック20の姿勢を検出する姿勢センサ40、及びヘッドレスト22のシート上下方向の位置を検出するヘッドレスト位置センサ46は、ロータリエンコーダとしたが、本発明はこれに限られない。例えば光学式変位センサや超音波式変位センサ等を使用してもよいし、前席シート14の車両前後方向の位置、シートバック20の姿勢、ヘッドレスト22のシート上下方向の位置をそれぞれ検出することができれば何れのセンサを使用してもよい。
【0134】
また、上述した実施形態においては、着座検知センサ62は、シートクッション18の座圧を検知するセンサとしたが、本発明はこれに限られない。着座検知センサ62は、シートクッション18における特定の部位の座圧を検知するセンサの他に、シートクッション18の所定の範囲の座圧分布を取得可能なセンサを用いてもよい。また、着座検知センサ62の他に、シートレールに歪ゲージを設けて体重を検知する体重センサを採用してもよい。
【0135】
また、上述した実施形態においては、シート制御部104、104A~104Dは、後席シート16に乗員P2が着座している場合のみ、前席シート14の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する制御を行ったが、本発明はこれに限られない。シート制御部104は、後席シート16に乗員P2が着座していない場合であっても、上記制御を行うようにしてもよい。
【0136】
また、上述した実施形態においては、前席シート14が所定の領域内に位置するか否かの判断を、後席エアバッグ52及びニーエアバッグ58の膨張展開処理と平行して行っているが、本発明はこれに限られない。前席シート14が所定の領域内に位置するか否かの判断は、例えば、衝突を検出するよりも前に予め行っていてもよい。
【0137】
また、上述した実施形態においては、車両12は2列シートとしたが、本発明は2列シートに限られず、前後にシートを有するシートレイアウトを有していれば、3列シート等、複数のシート列を有する車両に適用することができる。
【0138】
また、上述した実施形態においては、シート制御部104、104A~104Dは、車両12が自動運転されている状態で上記制御を行ったが、本発明はこれに限られない。車両12が自動運転ではなく、通常運転されている状態で上記制御を行ってもよい。ただし、自動運転されている状態で上記制御を行う際には、シートレイアウトの自由度が増した場合であっても、後席シート16に着座する乗員P2を後席エアバッグ52によって適切に保護することができるという優れた効果が得られる。
【0139】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0140】
10 車両用乗員拘束システム
10A~10D 車両用乗員拘束システム
12 車両
12B 車室
12C ルーフ
14 前席シート(シート)
22 ヘッドレスト
22B ヘッドレスト
32 位置センサ(シート位置検出センサ)
33 シート位置検出センサ
40 姿勢センサ(シート位置検出センサ)
42 伸縮機構
46 ヘッドレスト位置センサ(シート位置検出センサ)
52 後席エアバッグ(エアバッグ)
52A 展開領域
64 衝突センサ
102 領域設定部
102B 領域設定部
102C 領域設定部
104 シート制御部
104A~104D シート制御部
108 自動運転部
P1 前席の乗員
P2 後席の乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9