(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】乗降用手すり
(51)【国際特許分類】
B60N 3/02 20060101AFI20231108BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60N3/02 A
B60J5/06 A
(21)【出願番号】P 2020149218
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 英之
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-042704(JP,A)
【文献】特開平08-118958(JP,A)
【文献】実開平03-037028(JP,U)
【文献】特開平08-188369(JP,A)
【文献】特開2020-022715(JP,A)
【文献】特開2020-039514(JP,A)
【文献】特開2019-089630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/02
B60J 5/06
A61L 2/10
B62D 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗降口の周辺に設けられた支持部材に支持された基部と、
前記基部に設けられ、前記乗降口から乗降する乗降客が把持可能な手すり本体と、
前記手すり本体に移動可能に嵌められた移動部材と、
を備え、
前記移動部材は、
前記手すり本体の外周面を転動することで該移動部材を自転させながら軸方向へ移動させる自走装置と、
前記手すり本体の外周面に
除菌液体を供給する供給装置と、
前記除菌液体が供給される前の前記手すり本体の外周面を払拭する払拭装置と、
前記手すり本体の外周面の汚れを検知する検知装置と、
を有
し、
前記移動部材は、前記検知装置が前記汚れを検知しなくなったら、初期位置へ復帰移動するように構成されている乗降用手すり。
【請求項2】
前記移動部材は、前記手すり本体の所定位置に到達すると、移動方向を反転させるように構成されている請求項1に記載の乗降用手すり。
【請求項3】
少なくとも前記自走装置には、前記基部及び前記手すり本体に通された送電部材によりワイヤレスで給電される構成とされている請求項1又は請求項2に記載の乗降用手すり。
【請求項4】
前記支持部材は、車体上下方向を軸方向として前記基部を回動可能に支持しており、
前記手すり本体は、ドアが前記乗降口を開放させる動作に伴って、前記支持部材の回転軸を中心に回動することで、車外へ向けて突出され、ドアが前記乗降口を閉鎖する動作に伴って、前記支持部材の回転軸を中心に回動することで、車内へ収容されるように構成されている請求項1~請求項3
の何れか1項に記載の乗降用手すり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降用手すりに関する。
【背景技術】
【0002】
つり革の持ち手の上部に遮光性のカバーを設けるとともに、そのカバーの内部に紫外線を照射可能な発光素子を設け、カバーで覆われている持ち手の上部に紫外線を照射することで、周方向に回転可能な持ち手を除菌するようにしたつり革の除菌装置は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
つり革の場合、乗客は下から手を伸ばして、そのつり革を把持するので、上記のようなカバーを常時備えた除菌装置でも成立する。しかしながら、バス等の乗降口の周辺に設けられている乗降用手すりの場合、乗降客は色々な方向から、その乗降用手すりを把持するので、上記のようなカバーを常時乗降用手すりに備えた除菌装置であると、乗降用手すりを把持するのが困難になり、乗降用手すりとしての本来の機能が損なわれてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、乗降用手すりとしての機能を損なうことなく除菌できる乗降用手すりを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様の乗降用手すりは、車両の乗降口の周辺に設けられた支持部材に支持された基部と、前記基部に設けられ、前記乗降口から乗降する乗降客が把持可能な手すり本体と、前記手すり本体に移動可能に嵌められた移動部材と、を備え、前記移動部材は、前記手すり本体の外周面を転動することで該移動部材を自転させながら軸方向へ移動させる自走装置と、前記手すり本体の外周面に紫外線を照射する照射装置と、を有している。
【0007】
第1の態様の発明によれば、移動部材が、自走装置により手すり本体の軸方向へ自転しながら移動しつつ、照射装置により手すり本体の外周面に紫外線を照射して、その外周面を殺菌する。これにより、乗降用手すりが除菌される。また、手すり本体に移動部材を移動可能に設ける構成であるため、乗降用手すりを除菌しないときには、移動部材を手すり本体における例えば初期位置に停止させた状態で配置しておくことができる。よって、乗降用手すりとしての機能が損なわれない。
【0008】
また、本発明に係る第2の態様の乗降用手すりは、車両の乗降口の周辺に設けられた支持部材に支持された基部と、前記基部に設けられ、前記乗降口から乗降する乗降客が把持可能な手すり本体と、前記手すり本体に移動可能に嵌められた移動部材と、を備え、前記移動部材は、前記手すり本体の外周面を転動することで該移動部材を自転させながら軸方向へ移動させる自走装置と、前記手すり本体の外周面に除菌液体を供給する供給装置と、を有している。
【0009】
第2の態様の発明によれば、移動部材が、自走装置により手すり本体の軸方向へ自転しながら移動しつつ、供給装置により手すり本体の外周面に除菌液体を供給して、その外周面を殺菌する。これにより、乗降用手すりが除菌される。また、手すり本体に移動部材を移動可能に設ける構成であるため、乗降用手すりを除菌しないときには、移動部材を手すり本体における例えば初期位置に停止させた状態で配置しておくことができる。よって、乗降用手すりとしての機能が損なわれない。
【0010】
また、本発明に係る第3の態様の乗降用手すりは、第2の態様の乗降用手すりであって、前記移動部材は、前記除菌液体が供給される前の前記手すり本体の外周面を払拭する払拭装置を有している。
【0011】
第3の態様の発明によれば、移動部材に設けられた払拭装置が、除菌液体が供給される前の手すり本体の外周面を払拭する。したがって、除菌液体は、汚れが除去された手すり本体の外周面に効果的に供給される。
【0012】
また、本発明に係る第4の態様の乗降用手すりは、第3の態様の乗降用手すりであって、前記移動部材は、前記手すり本体の外周面の汚れを検知する検知装置を有し、該検知装置が前記汚れを検知しなくなったら、初期位置へ復帰移動するように構成されている。
【0013】
第4の態様の発明によれば、移動部材に設けられた検知装置が、手すり本体の外周面の汚れを検知しなくなったら、その移動部材は、初期位置へ復帰移動する。したがって、移動部材が不必要に移動するのが防止され、バッテリの消耗が抑制される。
【0014】
また、本発明に係る第5の態様の乗降用手すりは、第1~第4の何れか1つの態様の乗降用手すりであって、前記移動部材は、前記手すり本体の所定位置に到達すると、移動方向を反転させるように構成されている。
【0015】
第5の態様の発明によれば、移動部材が、手すり本体の所定位置に到達すると、移動方向を反転させる。つまり、移動部材は、手すり本体に沿って往復移動する。したがって、乗降用手すりに対する除菌漏れが生じるのが抑制される。
【0016】
また、本発明に係る第6の態様の乗降用手すりは、第1~第5の何れか1つの態様の乗降用手すりであって、少なくとも前記自走装置には、前記基部及び前記手すり本体に通された送電部材によりワイヤレスで給電される構成とされている。
【0017】
第6の態様の発明によれば、少なくとも自走装置には、基部及び手すり本体に通された送電部材によりワイヤレスで給電される。したがって、自走装置に対して電池によって給電される場合に比べて、バッテリ切れの心配がない。
【0018】
また、本発明に係る第7の態様の乗降用手すりは、第1~第6の何れか1つの態様の乗降用手すりであって、前記支持部材は、車体上下方向を軸方向として前記基部を回動可能に支持しており、前記手すり本体は、ドアが前記乗降口を開放させる動作に伴って、前記支持部材の回転軸を中心に回動することで、車外へ向けて突出され、ドアが前記乗降口を閉鎖する動作に伴って、前記支持部材の回転軸を中心に回動することで、車内へ収容されるように構成されている。
【0019】
第7の態様の発明によれば、手すり本体は、ドアが乗降口を開放させる動作に伴って車外へ向けて突出され、ドアが乗降口を閉鎖する動作に伴って車内へ収容される。つまり、この乗降用手すりは、格納姿勢を取ったときに、車内(車室側)へ向けて突出することがない。したがって、乗降用手すりにより乗車スペースが制限されるのが抑制される。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、乗降用手すりとしての機能を損なうことなく、その乗降用手すりを除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る乗降用手すりを備えたバスを示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る乗降用手すりを示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る乗降用手すりのレール部がスライド可能に保持するスライド部材を示す斜視図である。
【
図4】(A)
図2のA-A線矢視断面図である。(B)スライド部材がレール部に保持されたときの状態を示す
図2のB-B線矢視断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る乗降用手すりに嵌められた清浄器へ給電するための送電線の一部を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る乗降用手すりに嵌められた清浄器を示す側断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る乗降用手すりに嵌められた清浄器の受電コイル部材を示す展開図である。
【
図10】(A)第1実施形態に係る乗降用手すりに嵌められた清浄器への別の給電方法を示す側面図である。(B)
図10(A)のE-E線矢視断面図である。
【
図11】第1実施形態に係る乗降用手すりの格納姿勢を示す背面図である。
【
図12】第1実施形態に係る乗降用手すりの格納姿勢を示す平面図である。
【
図13】第1実施形態に係る乗降用手すりの展開姿勢を示す背面図である。
【
図14】第1実施形態に係る乗降用手すりの展開姿勢を示す平面図である。
【
図15】第2実施形態に係る乗降用手すりに嵌められた清浄器を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、本実施形態に係る乗降用手すり30は、車両としての乗合自動車の一例である小型のバス(自動運転バスに代表されるMaaS(Mobility as a Service)車も含む)10に対して好適に設けられる(
図1参照)。
【0023】
したがって、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPをバス10の車体上方向、矢印FRをバス10の車体前方向、矢印LHをバス10の車体左方向、矢印RHをバス10の車体右方向とする。そして、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車体上下方向の上下、車体前後方向の前後、車体左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。
【0024】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態について説明する。
図1に示されるように、バス10における車体12の左側壁(一方の側壁)で、かつ前後方向略中央部には、側面視で矩形状を成す乗降口16が形成されている。そして、このバス10には、その乗降口16を開閉するドアとしてのスライドドア20が設けられている。
【0025】
スライドドア20は、側面視で上下方向の長さが前後方向の長さよりも長い矩形状の前側の半扉20Fと後側の半扉20Rとで構成されている。そして、前側の半扉20Fと後側の半扉20Rとが互いに離間する方向及び接近する方向へ、バス10の外壁面12Aに沿って同期してスライド(移動)することにより、乗降口16を開放及び閉鎖可能に構成されている。
【0026】
なお、乗降口16の閉鎖時に互いに接触する半扉20F、20Rの前後方向内側端面(換言すれば、半扉20Fの後端面と半扉20Rの前端面)には、それぞれ上下方向全体に亘ってゴム等の弾性体22(
図12参照)が取り付けられている。つまり、半扉20F、20Rは、互いの弾性体22を弾性変形させつつ接触させることにより、乗降口16を閉鎖するようになっている。
【0027】
また、
図1に示されるように、乗降口16の下方側における車体12(例えばフロアパネルの下方側)には、車外へ突出可能なスロープ18が収納されている。スロープ18は、平板状に形成されており、電動によって引き出され、かつ収納されるように構成されている。そして、
図13に示されるように、引き出されたスロープ18は、その引出方向先端部が路面Gに支持されることにより、所定の傾斜角度θ1で配置されるようになっている。
【0028】
また、
図1に示されるように、スライドドア20(半扉20F及び半扉20R)がスライド(移動)して乗降口16が開放されたときには、乗降口16の上下方向(高さ方向)における所定位置から、例えば繊維強化樹脂製の乗降用手すり30が車幅方向外側へ向けて突出されるようになっている。
【0029】
具体的に説明すると、
図2、
図5に示されるように、乗降用手すり30は、略角柱状の基部32と、基部32の外周面における上部に一端部が一体に設けられた手すり本体34と、基部32の外周面における下部に一端部が一体に設けられたレール部36と、を備えている。そして、手すり本体34の他端部(以下「先端部34A」という)とレール部36の他端部(以下「先端部36A」という)とが一体に結合されている。
【0030】
図5に示されるように、乗降用手すり30の基部32は、バス10における乗降口16の周辺(例えばピラー14の内壁面)に設けられた支持部材としての上下一対の金属製の蝶番24に上下方向を軸方向として回動可能に支持されている。
【0031】
すなわち、各蝶番24の一端部24Aが、基部32の外壁面に接着剤等によって強固に取り付けられており、各蝶番24の他端部24Bが、ピラー14の内壁面に複数のボルト等によって強固に取り付けられている。これにより、乗降用手すり30は、各蝶番24の回転軸24Cを中心に平面視で90度以上回動可能になっている。
【0032】
また、基部32の上下方向中央部(上側の蝶番24と下側の蝶番24との間)には、送電部材としての送電線26の挿入口(図示省略)が形成されている。送電線26は、バス10に搭載されているバッテリ(図示省略)から、ピラー14の内部を通るようにして配線されている。
【0033】
そして、送電線26は、ピラー14の内壁面に形成された供給口(図示省略)から基部32の挿入口へ挿入され、基部32の内部、手すり本体34の内部、レール部36の内部を通って基部32の挿入口から排出されている。つまり、送電線26は、乗降用手すり30の内部を通って環状に配線されている。
【0034】
なお、基部32の挿入口は、2本の送電線26に嵌められたゴム製で蛇腹状のブーツ28で覆われるようになっている。また、蝶番24、供給口と挿入口との間で露出する送電線26の一部及びブーツ28は、ピラー14に取り付けられる矩形箱状のカバー体48(
図2参照)によってカバーされる構成になっている。
【0035】
図4(A)に示されるように、手すり本体34は、円筒状(断面円形状)に形成されている。そして、
図2、
図13に示されるように、手すり本体34は、基部32の上部から斜め下方側へ延在している。つまり、手すり本体34は、水平方向に対して傾斜して配置されるようになっており、基部32とレール部36とで直角三角形状を成すようになっている。なお、水平方向に対する手すり本体34の傾斜角度θ2は、スロープ18の傾斜角度θ1とほぼ同じ傾斜角度とされている(
図13参照)。
【0036】
図2、
図13に示されるように、レール部36は、水平方向に延在し、基部32の下部と手すり本体34の先端部34Aとを一体に連結している。そして、レール部36は、スライドドア20の例えば半扉20Fの前後方向内側端部に取り付けられたスライド部材40(
図3参照)をスライド可能に保持するようになっている。
【0037】
図4(B)に示されるように、レール部36は、上下方向が長辺となる四角筒状(断面長方形状)に形成されており、
図2に示されるように、その一方の側壁(後述する展開姿勢のときに前方側を向き、後述する格納姿勢のときに車幅方向外側を向く側壁)の上下方向略中央部には、その内部と連通するスリット部38が延在方向(長手方向)に沿って所定の長さで形成されている。なお、レール部36は、乗降客が把持するものではないので、断面円形状でなくてもよい。
【0038】
一方、
図3に示されるように、スライド部材40は、側面視で略「T」字状に形成されている。すなわち、スライド部材40は、平面視で湾曲板状とされた本体部42と、本体部42の先端から上下方向に突出した(上下方向を軸方向とした)略円柱状の嵌入部44と、本体部42の嵌入部44とは反対側の基端に形成された平板状の固定部46と、を有している。
【0039】
そして、このスライド部材40は、固定部46が半扉20Fに取り付けられる前に、レール部36に取り付けられるようになっている。具体的には、レール部36のスリット部38に、スライド部材40の嵌入部44を横にして(軸方向を水平方向にして)通し、90度回動させる。これにより、
図4(B)に示されるように、スライド部材40の嵌入部44が、レール部36から外れることなく、そのレール部36の長手方向にスライド可能に嵌められるようになっている。
【0040】
したがって、スリット部38の幅(上下方向の間隙)は、嵌入部44の外径よりも大きくなっており、スライド部材40の本体部42の幅(側面視で嵌入部44の軸方向に沿った方向の長さ)と同じか、それよりも若干大きく形成されている。そして、スライド部材40は、その嵌入部44をレール部36に嵌めた後、その固定部46が半扉20Fの前後方向内側端部にネジ止め等によって取り付けられるようになっている。これにより、レール部36がスライド部材40でも支持される構成になっている。
【0041】
また、
図2、
図6~
図8に示されるように、手すり本体34には、移動部材としての清浄器50が移動可能に嵌められている。清浄器50は、所定の厚みを有する円筒状の本体部52を有しており、本体部52の内部は空洞となっている。なお、本体部52の内径は、手すり本体34の外径よりも若干大きく形成されている。
【0042】
また、清浄器50を構成する本体部52の内部には、手すり本体34の外周面を転動することで、本体部52を自転させながら、手すり本体34の軸方向に沿って移動させる(螺旋状に移動させる)ための自走装置54が設けられている。
【0043】
自走装置54は、本体部52の内周壁53に千鳥状に形成されている開口部53Aから突出し、手すり本体34の外周面に対して摺動抵抗(摩擦)を有して転動する3個1組の転動部材としてのゴム製のロール(以下「ゴムロール」という)56と、各ゴムロール56をそれぞれ正逆両方向に回転させる駆動モーター58と、で構成されている。
【0044】
図6に示されるように、各ゴムロール56は、回転軸方向を高さ方向とする円錐台形状に形成されており、その傾斜面56Aが手すり本体34の外周面に接触(摺接)するようになっている。そして、各ゴムロール56は、本体部52の内周壁53に千鳥状に形成された開口部53Aから突出することから、千鳥状に配置されている。
【0045】
すなわち、各ゴムロール56は、本体部52の軸方向及び周方向で互いに異なる位置で、かつ本体部52の軸方向から見たときに、本体部52の周方向で等間隔となる位置に設けられている(
図7参照)。なお、ゴムロール56は、周方向に少なくとも3個設けられていればよく、その傾斜面56Aには凹凸がない方が好ましい。
【0046】
各駆動モーター58は、本体部52の内部に設けられたブラケット(図示省略)により、軸方向に対して所定の角度(各ゴムロール56の傾斜面56Aを手すり本体34の外周面に接触させられる角度)に傾いた状態で支持されている。そして、各駆動モーター58の各回転軸58Aが各ゴムロール56の軸心部に同軸的に固定されている。これにより、各ゴムロール56が各駆動モーター58の回転駆動力によって同期して回転する構成になっている。
【0047】
また、
図6、
図7に示されるように、本体部52の内部には、手すり本体34の外周面に紫外線を照射して殺菌(除菌)するための照射装置60が設けられている。照射装置60は、例えば複数の紫外線発光素子(以下、単に「発光素子」という)62で構成されており、各発光素子62は、本体部52の内周壁53に千鳥状に形成されている矩形状の開口部53Bから露出されるようになっている。
【0048】
すなわち、各発光素子62は、本体部52の軸方向及び周方向で互いに異なる位置で、かつ本体部52の軸方向から見たときに、本体部52の周方向で等間隔となる位置(各ゴムロール56の間)に設けられている。したがって、本体部52が手すり本体34上を螺旋状に移動することにより、手すり本体34の外周面に対して軸方向及び周方向に万遍なく紫外線が照射されるようになっている。
【0049】
また、清浄器50は、手すり本体34の基部32側に配置されている状態が初期状態であり、その位置が初期位置である。そのため、清浄器50は、最初は手すり本体34の基部32側から先端部34A側へ移動するが、所定位置(例えば手すり本体34の先端部34A)に到達すると、移動方向を反転させられるように構成されている。
【0050】
すなわち、送電線26への通電の向きを切り換えることにより、各駆動モーター58を逆方向に回転させることができるようになっており、清浄器50は、初期位置へ復帰移動できるようになっている。このように、清浄器50は、手すり本体34上を往復移動することにより、その手すり本体34の外周面を紫外線で殺菌(除菌)できるようになっている。
【0051】
なお、清浄器50が、手すり本体34の先端部34Aに到達したことは、例えば
図6に示されるように、本体部52の基部32側の端面52Aに設けられている位置検出装置としての複数(例えば2個)のカメラ64によって検知されるようになっている。そして、清浄器50が、基部32側の初期位置に復帰したことも、各カメラ64によって検知されるようになっている。各カメラ64は、例えば本体部52の径方向に沿った180度反対側に2個設けられている。
【0052】
また、
図6、
図8に示されるように、本体部52の内周壁53における径方向内側の壁面(以下「内面53C」という)には、受電コイル部材70が、その内面53Cの周方向略全体に亘って貼り付けられている。
図9に示されるように、受電コイル部材70は、コイル状に形成された受電部72と受電部72を保持する矩形状のシート部74とで構成されており、そのシート部74が受電部72を内面53C側にして、その内面53Cの周方向略全体に亘って貼り付けられている。
【0053】
そして、この受電コイル部材70には、手すり本体34の内部を通っている通電状態の送電線26から発生する磁界により誘導起電力が励起されるようになっている。この誘導起電力により、自走装置54の各駆動モーター58、照射装置60の各発光素子62及び各カメラ64へワイヤレスで給電されるようになっている。
【0054】
具体的には、
図6に示されるように、受電コイル部材70の受電部72の一端部72A及び他端部72Bは、本体部52の内部に設けられた分配器66に接続されており、この分配器66から、それぞれ複数(
図6では一部のみ示す)のケーブル68を介して、各駆動モーター58、各発光素子62及び各カメラ64へ給電されるようになっている。
【0055】
なお、清浄器50に、各駆動モーター58、各発光素子62及び各カメラ64へ給電可能な小型のバッテリ(図示省略)が搭載されている場合には、
図10に示されるような給電方法によって給電してもよい。すなわち、清浄器50の初期位置における手すり本体34の内周面の周方向全体に亘って、コイル状に形成された送電線26を貼り付けるようにしてもよい。これによれば、清浄器50が初期位置に配置されているときには、通電状態とされた送電線26から発生する磁界による誘導起電力により、その小型のバッテリが充填される。
【0056】
また、清浄器50の移動及び停止(各駆動モーター58の回転及び停止と各発光素子62の点灯及び消灯)は、バス10に設けられた制御装置(図示省略)によって制御されるようになっている。具体的に説明すると、乗降口16がスライドドア20によって閉鎖されたことを制御装置が認識すると、その制御装置が、送電線26へ通電し、各駆動モーター58を駆動して、清浄器50を手すり本体34の軸方向へ移動させるとともに、各発光素子62を点灯させるようになっている。
【0057】
そして、次に乗降口16がスライドドア20によって開放されることを制御装置が認識すると、清浄器50が初期位置に配置されていない場合には、その制御装置が、送電線26へ通電して清浄器50を初期位置まで移動させた後、送電線26への通電を遮断するようになっている。これにより、各駆動モーター58の駆動が停止して清浄器50が初期位置にて停止し、かつ各発光素子62が消灯されるようになっている。
【0058】
以上のこと(清浄器50の移動及び停止)を乗降口16がスライドドア20によって閉鎖される度に繰り返すことにより、乗降客が乗降時に把持していた手すり本体34が常に紫外線によって殺菌(除菌)されるようになっている。なお、清浄器50の初期位置での停止は、次に乗降口16がスライドドア20によって開放されるときではなく、乗降口16がスライドドア20によって閉鎖された状態で、かつ所定の時間が経過した後であってもよい。
【0059】
以上のような構成とされた第1実施形態に係る乗降用手すり30において、次にその作用について説明する。
【0060】
図11、
図12に示されるように、乗降口16が、スライドドア20(半扉20F、20R)によって閉鎖されているときには、乗降用手すり30は、平面視で、そのスライドドア20(図示の場合は半扉20F)にほぼ沿って配置される。具体的には、スライドドア20が乗降口16を閉鎖した状態では、スライド部材40がレール部36に沿って先端部36A側へスライドしており、手すり本体34及びレール部36をスライドドア20に沿って配置させる格納姿勢を取る。
【0061】
つまり、この乗降用手すり30は、格納姿勢を取ったときには、その手すり本体34及びレール部36が車内(車室側)へ向けて突出することがない。したがって、特に小型のバス10において、乗降用手すり30が設けられていても、その乗車スペースが制限されるのを抑制することができる(乗車スペースを極力確保することができる)。
【0062】
一方、
図13、
図14に示されるように、乗降口16が、スライドドア20(半扉20F、20R)によって開放されているときには、乗降用手すり30は、平面視で、車外へ向けて突出される。具体的には、スライドドア20が乗降口16を開放した状態では、スライド部材40がレール部36に沿って基部32側へスライドしており、手すり本体34及びレール部36を車外(車幅方向外側)へ向けて突出させる展開姿勢を取る。
【0063】
したがって、乗降客は、バス10に対して乗降する際に、その手すり本体34を把持することができ、それによって、バス10に対する乗降がし易くなる(姿勢を安定させて乗降することができる)。特に、降車時は、一方の片足を下ろす瞬間に他方の片足立ちになるため、進行方向前側に手すり本体34があると、力を入れ易くなって、より姿勢を安定させ易くなる。また、その手すり本体34は、断面円形状に形成されているため、例えば断面四角形状に形成されている場合に比べて、乗降客が手すり本体34を把持し易い。
【0064】
更に、その手すり本体34は、基部32の上部から斜め下方側へ延在している。したがって、例えば乗降口16の下部にスロープ18が設けられているバス10の場合、そのスロープ18の傾斜角度θ1と手すり本体34の傾斜角度θ2とをほぼ揃えられる(背面視で略平行にすることができる)。よって、乗降客がスロープ18を利用して乗降する際に、身体の高さの変化に合わせて手指の高さも変化させることができるため、手すり本体34を把持しつつ乗降し易くなる(姿勢をより一層安定させて乗降することができる)。
【0065】
なお、乗降用手すり30が展開姿勢を取ったとき、半扉20Fの前後方向内側端面に取り付けられている弾性体22と手すり本体34との間には、手指が挿入可能な隙間が充分に確保されるようになっている。そのため、手すり本体34を把持しつつ乗降する際に、その弾性体22との間に手指が挿入されても(手指が弾性体22に接触したとしても)、その手指が傷付くおそれがない。つまり、乗降客の安全性は確保される。
【0066】
また、乗降口16がスライドドア20によって閉鎖されたことが制御装置に認識されたときには、その制御装置の制御により、送電線26へ通電される。すると、受電コイル部材70に誘導起電力が励起され、その誘導起電力により、清浄器50が手すり本体34上を基部32側の初期位置から先端部34A側へ移動する。
【0067】
すなわち、自走装置54の各駆動モーター58が回転駆動され、各ゴムロール56が手すり本体34の外周面上を転動する。これにより、清浄器50は、自転しながら、手すり本体34の軸方向へ移動する(螺旋状に移動する)。また、清浄器50が移動し始めると同時に、千鳥状に配置された照射装置60の各発光素子62が点灯される。
【0068】
したがって、手すり本体34の外周面には、清浄器50の移動に伴って、紫外線が周方向及び軸方向に万遍なく照射される。これにより、手すり本体34の外周面が殺菌(除菌)される。つまり、バス10に対して次に乗降する乗降客は、常に殺菌された手すり本体34を把持することができ、安心して手すり本体34を使用することができる。
【0069】
特に、バス10に乗車している乗客は、手すり本体34が紫外線によって殺菌されていることを見知することができるため、手すり本体34を使用することに対する安心感を得ることができ、気兼ねなく(安心して)、その手すり本体34を把持することができる。よって、バス10に対する降車時の安全性をより一層高めることができる。
【0070】
また、清浄器50が手すり本体34の先端部34Aに到達することが、各カメラ64を介して制御装置に認識されると、その制御装置の制御により、送電線26への通電の向きが逆転される。これにより、各駆動モーター58が逆方向に回転駆動され、清浄器50が手すり本体34の先端部34A側から基部32側へ移動する。そして、このときにも発光素子62は点灯された状態を維持する。
【0071】
つまり、この清浄器50は、螺旋状に往復移動しながら、手すり本体34の外周面に紫外線を照射して、その外周面を殺菌(除菌)することができる。したがって、手すり本体34の外周面に対する殺菌(除菌)が斑なく行われ、かつ殺菌(除菌)漏れが生じるのを抑制又は防止することができる。
【0072】
また、自走装置54及び照射装置60等には、送電線26及び受電コイル部材70により、ワイヤレスで給電される。したがって、例えば自走装置54に対して電池によって給電される場合に比べて、バッテリ切れの心配がない。また、このような構成であると、清浄器50にバッテリを搭載しなくても給電することができるため、清浄器50にバッテリを搭載する構成に比べて、清浄器50の構成を簡略化することができるとともに、清浄器50自体を軽量化することができる。
【0073】
また、受電コイル部材70(受電部72を有するシート部74)は、本体部52の内周壁53における内面53Cの周方向略全体に亘って貼り付けられている。したがって、受電コイル部材70が、その内面53Cの周方向における一部にしか貼り付けられていない場合に比べて、給電のために、清浄器50を周方向(回転方向)に位置決めする必要がない。
【0074】
また、受電コイル部材70が、本体部52の内周壁53の内面53Cに配置されていると、本体部52の内周壁53の径方向外側の壁面(以下、後述する外周壁55のときも含め、「外面」という)に配置されている場合に比べて、受信する磁界の損失が低減される。つまり、誘電起電力が効率よく励起される。
【0075】
清浄器50での除菌後、次に乗降口16がスライドドア20によって開放されることが制御装置に認識されると、その制御装置の制御により、送電線26への通電が遮断される。したがって、乗降口16がスライドドア20によって開放されているときにも、送電線26へ通電されて清浄器50が移動する構成に比べて、バッテリの消耗を抑制することができる。
【0076】
なお、次に乗降口16がスライドドア20によって開放されることが制御装置に認識されたときに、清浄器50が初期位置に配置されていない場合には、その制御装置の制御により、清浄器50を初期位置まで移動させた後、送電線26への通電が遮断される。
【0077】
また、このように清浄器50は、スライドドア20が乗降口16を閉鎖したときにのみ(乗降用手すり30が格納姿勢を取ったときにのみ)移動する。換言すれば、スライドドア20が乗降口16を開放しているときには(乗降用手すり30が展開姿勢を取ったときには)、清浄器50は、初期位置にて停止している。
【0078】
したがって、バス10に乗降する乗降客は、乗降用手すり30の手すり本体34に対する把持動作が清浄器50によって阻害されることがなく、その手すり本体34を色々な方向から把持することができる。つまり、乗降用手すり30の手すり本体34に紫外線を照射可能な照射装置60が設けられる構成であっても、乗降用手すり30としての機能が損なわれることがない。
【0079】
また、乗降用手すり30は、スライドドア20の一方の半扉(例えば半扉20F)側のみに設けられる構成に限定されるものではない。乗降用手すり30は、スライドドア20の一方の半扉(例えば半扉20F)側と他方の半扉(例えば半扉20R)側の両方に設けられる構成とされていてもよい。
【0080】
但し、この場合には、半扉20F側に設けられる乗降用手すり30に対して、半扉20R側に設けられる乗降用手すり30は、上下方向にずれて配置される。乗降用手すり30は、その構造上、半扉20F側に設けられている手すり本体34の先端部34A及びレール部36の先端部36Aが、半扉20R側へ突出し、半扉20R側に設けられている手すり本体34の先端部34A及びレール部36の先端部36Aが、半扉20F側へ突出するからである。
【0081】
このように、半扉20R側に設けられる基部32、手すり本体34及びレール部36が、半扉20F側に設けられる基部32、手すり本体34及びレール部36に対して上下方向にずれていると、身長の異なる乗降客が、自分の身長に合った手すり本体34を選択して把持することができるメリットがある。なお、当然ながら、各乗降用手すり30の位置に合わせて、半扉20F、20Rにそれぞれ取り付けられるスライド部材40の位置も上下方向にずれて配置される。
【0082】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0083】
図15~
図17に示されるように、第2実施形態に係る乗降用手すり30は、清浄器50を構成する本体部52の内部に、紫外線を照射する照射装置60の代わりに、例えばアルコール等の除菌液体を供給する供給装置80と、その除菌液体が供給される前の手すり本体34の外周面を払拭する払拭装置90と、を有している点で、第1実施形態と異なっている。なお、
図15では、受電コイル部材70、分配器66等の図示を省略している。
【0084】
図15、
図16に示されるように、供給装置80は、除菌液体Lを貯留しておくタンク82と、本体部52の軸方向を回転軸方向としてタンク82の内周壁53側の一部に回転可能に支持され、タンク82内の除菌液体Lを手すり本体34の外周面に塗布する一対の塗布ロール84と、を有している。
【0085】
タンク82は、本体部52の軸方向から見て略「C」字状に形成されており、その周方向中央部には、タンク82内へ除菌液体Lを注入するための円筒状の注入口82Aが形成されている。そして、本体部52の外周壁55には、その注入口82Aを露出させる(詳細には、その注入口82Aの端面82Bを外周壁55の外面55Bと面一になる位置まで突出させる)開口部55Aが形成されており、その開口部55Aから露出している注入口82Aがキャップ78によって閉鎖可能に構成されている。
【0086】
キャップ78は、本体部52の軸方向から見て、円柱部(図示省略)が、それよりも大径の円板部78Aの下面中央に一体に突設された略「T」字状に形成されており、その円柱部の外径は、注入口82Aの内径よりも若干大きく形成されている。したがって、キャップ78の円柱部をタンク82の注入口82Aに隙間なく嵌合することができ、その注入口82Aをキャップ78で閉鎖可能になっている。
【0087】
塗布ロール84は、その外周部84Aがスポンジ等の弾性体で構成されており、本体部52の軸方向に対して僅かに傾斜している。つまり、塗布ロール84の回転軸84Bは、軸方向と直交する方向から見て、螺旋状に移動する清浄器50の進行方向と直交する方向を軸方向としており、清浄器50の移動に伴う後述する従動回転がし易いようになっている(換言すれば、清浄器50の移動抵抗となり難いようになっている)。
【0088】
また、塗布ロール84の外周部84Aの一部は、本体部52の内周壁53の互いに対向する部位(180度反対側)に形成された開口部53Dから突出されて、手すり本体34の外周面に接触(摺接)するようになっている。そして、塗布ロール84の外周部84Aの開口部53Dから突出する側とは反対側となる部分が、タンク82内に配置されるようになっている。
【0089】
したがって、塗布ロール84の外周部84Aは、本体部52の自転に伴い、手すり本体34の外周面に接触しつつ従動回転させられることにより、その外周面に除菌液体Lを塗布するようになっている。なお、この塗布ロール84は、本体部52の自転に伴う従動回転で回転駆動される構成に限定されるものではなく、図示しない駆動モーターによって回転駆動される構成にしてもよい。
【0090】
図15、
図17に示されるように、払拭装置90は、本体部52の軸方向を回転軸方向としてタンク82の先端部34A側を向く壁部に回転可能に支持されたブラシ92と、ブラシ92を回転駆動させるための駆動モーター94と、ブラシ92の回転軸92Aに同軸的に固定されたプーリー86と駆動モーター94の回転軸94Aに同軸的に固定されたプーリー88との間に巻き掛けられた伝達ベルト96と、を有している。
【0091】
駆動モーター94は、本体部52にブラケット(図示省略)を介して支持されている。ブラシ92の一部は、本体部52の内周壁53に形成された開口部53Eから突出されて、手すり本体34の外周面に接触(摺接)するようになっている。したがって、駆動モーター94によって回転駆動されているブラシ92は、本体部52の自転に伴い、手すり本体34の外周面に接触しつつ、その外周面を払拭するようになっている。
【0092】
なお、開口部53Eは、開口部53Dよりも先端部34A側(先端部34A側へ移動するときの清浄器50の移動方向下流側)に形成されている。つまり、ブラシ92は、除菌液体Lが供給される前の手すり本体34の外周面を払拭するようになっている。また、ブラシ92の回転方向は、手すり本体34の外周面に対する払拭効果を高めるために、本体部52の自転方向と逆方向になっていることが好ましい。
【0093】
また、
図15に示されるように、本体部52の基部32側の端面52Aには、カメラ64とは別に、検知装置としての複数(例えば2個)のカメラ76が設けられている(カメラ64の図示は省略する)。各カメラ76は、手すり本体34の外周面の汚れを検知するためのものであり、例えば本体部52の径方向に沿った180度反対側に2個設けられている。
【0094】
そして、清浄器50は、各カメラ76が手すり本体34の外周面の汚れを検知しなくなったら、初期位置へ復帰移動するように構成されている。すなわち、制御装置は、各カメラ76による検知結果に基づき、送電線26に通電し、各駆動モーター58を逆方向に回転させて、清浄器50を初期位置へ戻すようになっている。なお、各カメラ76を位置検出装置としての各カメラ64と兼用させてもよく、その場合には、各カメラ64を省略することができる。
【0095】
以上のような構成とされた第2実施形態に係る乗降用手すり30において、次にその作用について説明する。なお、第1実施形態に係る乗降用手すり30と共通する作用については、その説明を適宜省略する。
【0096】
乗降口16がスライドドア20によって閉鎖されたことが制御装置に認識されたときには、その制御装置の制御により、送電線26へ通電される。すると、受電コイル部材70に誘導起電力が励起され、その誘導起電力により、清浄器50が手すり本体34上を基部32側の初期位置から先端部34A側へ移動する。
【0097】
すなわち、自走装置54の各駆動モーター58が回転駆動され、各ゴムロール56が手すり本体34の外周面上を転動する。これにより、清浄器50は、自転しながら、手すり本体34の軸方向へ移動する(螺旋状に移動する)。すると、その清浄器50の回転(自転)に従動して、塗布ロール84の外周部84Aが回転する。
【0098】
したがって、手すり本体34の外周面には、清浄器50の螺旋状の移動に伴って、除菌液体Lが周方向及び軸方向に万遍なく塗布される。これにより、手すり本体34の外周面が殺菌(除菌)される。つまり、バス10に対して次に乗降する乗降客は、常に殺菌された手すり本体34を把持することができ、安心して手すり本体34を使用することができる。
【0099】
また、塗布ロール84による除菌液体Lの塗布前に、回転駆動されているブラシ92によって、手すり本体34の外周面が払拭される。したがって、汚れが除去された手すり本体34の外周面に対して、除菌液体Lを効果的に塗布する(供給する)ことができる。
【0100】
また、清浄器50が手すり本体34の先端部34Aに到達することが、各カメラ64を介して制御装置に認識されると、その制御装置の制御により、送電線26への通電の向きが逆転される。これにより、各駆動モーター58が逆方向に回転駆動され、清浄器50が手すり本体34の先端部34A側から基部32側へ移動する。
【0101】
そして、このときにも、塗布ロール84の外周部84Aによって除菌液体Lが手すり本体34の外周面に塗布される。つまり、第2実施形態に係る清浄器50も、第1実施形態に係る清浄器50と同様に、螺旋状に往復移動しながら、手すり本体34の外周面を殺菌(除菌)することができる。したがって、手すり本体34の外周面に対する殺菌(除菌)が斑なく行われ、かつ殺菌(除菌)漏れが生じるのを抑制又は防止することができる。
【0102】
なお、清浄器50が、手すり本体34の先端部34A側から基部32側へ移動するときには、駆動モーター94への通電を遮断し、手すり本体34の外周面に対するブラシ92での払拭を低減させるようにすることが好ましい。これによれば、手すり本体34の外周面に塗布されている除菌液体Lがブラシ92によって拭き取られるのを抑制することができる。
【0103】
また、各カメラ76が手すり本体34の外周面の汚れを検知している間は、清浄器50は、往復移動を繰り返すが、各カメラ76が、手すり本体34の外周面の汚れを検知しなくなったら、清浄器50は、制御装置の制御により、初期位置へ復帰移動して停止する。したがって、清浄器50が不必要に移動するのを防止することができ、バッテリの消耗を抑制することができる。
【0104】
また、第2実施形態に係る清浄器50も、スライドドア20が乗降口16を閉鎖したときにのみ(乗降用手すり30が格納姿勢を取ったときにのみ)移動する。換言すれば、スライドドア20が乗降口16を開放しているときには(乗降用手すり30が展開姿勢を取ったときには)、清浄器50は、初期位置にて停止している。
【0105】
したがって、バス10に乗降する乗降客は、乗降用手すり30の手すり本体34に対する把持動作が、清浄器50によって阻害されることがなく、その手すり本体34を色々な方向から把持することができる。つまり、乗降用手すり30の手すり本体34に除菌液体Lを供給可能な供給装置80等が設けられる構成であっても、乗降用手すり30としての機能が損なわれることがない。
【0106】
以上、本実施形態に係る乗降用手すり30について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る乗降用手すり30は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、清浄器50の初期位置は、手すり本体34の基部32側ではなく、先端部34A側であってもよい。
【0107】
また、位置検出装置は、カメラ64に限定されるものではなく、例えば物体との距離を検知できるセンサー等で構成されていてもよい。また、例えば手すり本体34の先端部34Aが下方へ向かって略90度屈曲されて所定の長さまで延在されているような形状の場合には、清浄器50は、その屈曲部を通過して下方側まで移動するように構成されていてもよい。
【0108】
また、乗降用手すり30を回動可能に支持する支持部材は、図示の各蝶番24による構成に限定されるものではなく、送電線26の配線を阻害しなければ、任意の構成を採用して構わない。また、照射装置60は、複数の発光素子62で構成されるものに限定されるものではなく、紫外線を照射可能に構成されていれば、どのような構成のものでもよい。
【0109】
また、清浄器50に対するワイヤレスによる給電は、少なくとも自走装置54に対して行われるようになっていればよく、照射装置60(各発光素子62)及び払拭装置90(駆動モーター94)等に対しては、例えば本体部52の内部に電池ホルダー(図示省略)を設け、その電池ホルダーに収容された複数の電池(図示省略)によって給電されるようになっていてもよい。
【0110】
また、第2実施形態において、本体部52の内部に余裕(設置スペース)がある場合には、紫外線を照射する照射装置60(発光素子62)を更に設けるようにしてもよい。また、第2実施形態において、手すり本体34の外周面に除菌液体Lを供給する方法としては、塗布ロール84による塗布に限定されるものではなく、例えば噴射装置(図示省略)による噴射等であってもよい。
【0111】
また、送電線26への通電は、制御装置がスライドドア20の閉鎖を認識したことをトリガーとする構成に限定されるものではなく、例えばバス10の運転手による、スライドドア20を閉鎖するスイッチ操作をトリガーとする構成にしてもよい。但し、制御装置がスライドドア20の閉鎖を認識したことをトリガーとする構成であると、運転手が乗車していない自動運転バスに適用することが可能となる。
【符号の説明】
【0112】
10 バス(車両)
16 乗降口
20 スライドドア(ドア)
24 蝶番(支持部材)
26 送電線(送電部材)
30 乗降用手すり
32 基部
34 手すり本体
50 清浄器(移動部材)
54 自走装置
60 照射装置
76 カメラ(検知装置)
80 供給装置
90 払拭装置