(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20231108BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/639 Z
(21)【出願番号】P 2020153560
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】中村 英人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大亮
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-005490(JP,A)
【文献】特開2001-291557(JP,A)
【文献】特開2006-244975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/64
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに対し後方から挿入される端子金具と、
前記第1ハウジングに対して、初期位置と、前記初期位置よりも前方の検知位置との間で移動可能に取り付けた可動部材と、
前記第1ハウジングが嵌合する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに設けられた被係止部と、
前記可動部材に設けられ、前記被係止部に係止する引掛部と、
前記第2ハウジングに設けられ、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合開始時に、前記引掛部を前記被係止部への突き当て状態に保持して、前記初期位置の前記可動部材を前止まりにし、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合完了時に、前記引掛部が前記被係止部から解離することを許容して、前記可動部材を前記初期位置から前記検知位置に移動可能にする押え部と、
前記第1ハウジングに設けられ、前記第2ハウジングに係止して、前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングを嵌合状態にロックするロック位置と、前記ロックを解除するロック解除位置と、に変位可能なロックアームと、
前記可動部材に設けられ、前記嵌合状態において、前記ロックアームが前記ロック位置から前記ロック解除位置に変位することを抑制する保持部と、
を備えているコネクタ。
【請求項2】
前記保持部の先端には、前記ロックアームが前記ロック位置よりも前記ロック解除位置に向けて変位している場合、前記ロックアームの後端に後方から接触して前記可動部材が前記検知位置に移動することを規制する当て付け面が形成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第2ハウジングは、前記可動部材の前記初期位置及び前記検知位置に対応して前記可動部材が異なる見え方になる開口部が形成されている請求項1から請求項2までのいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のコネクタが開示されている。このコネクタは、慣性ロックを採用している。このコネクタは、雌側コネクタにロック用凸部を有するロック用片部が設けられている。雌側コネクタのロック用突部は、雄側コネクタのロック用凹部に形成された垂直面に係止する。これによって、雌側コネクタと雄側コネクタとの嵌合状態が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このコネクタは、ハウジング同士の嵌合が進むと、ロック用凸部が雄側コネクタの外部から見えない状態になるため、ハウジング同士が嵌合したかどうかを見極め難い。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ハウジング同士が嵌合状態に至ったかどうかを検知し易くすると共に、ハウジング同士を嵌合状態に保持する保持力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに対し後方から挿入される端子金具と、
前記第1ハウジングに対して、初期位置と、前記初期位置よりも前方の検知位置との間で移動可能に取り付けた可動部材と、
前記第1ハウジングが嵌合する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに設けられた被係止部と、
前記可動部材に設けられ、前記被係止部に係止する引掛部と、
前記第2ハウジングに設けられ、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合開始時に、前記引掛部を前記被係止部への突き当て状態に保持して、前記初期位置の前記可動部材を前止まりにし、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合完了時に、前記引掛部が前記被係止部から解離することを許容して、前記可動部材を前記初期位置から前記検知位置に移動可能にする押え部と、
前記第1ハウジングに設けられ、前記第2ハウジングに係止して、前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングを嵌合状態にロックするロック位置と、前記ロックを解除するロック解除位置と、に変位可能なロックアームと、
前記可動部材に設けられ、前記嵌合状態において、前記ロックアームが前記ロック位置から前記ロック解除位置に変位することを抑制する保持部と、
を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ハウジング同士が嵌合状態に至ったかどうかを検知し易くすると共に、ハウジング同士を嵌合状態に保持する保持力を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1の第1ハウジングに雌端子金具が取り付けられ、リテーナが初期位置に配置された状態を前方斜め上から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の第1ハウジングに雌端子金具が取り付けられ、リテーナが初期位置に配置された状態を後方斜め上から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の第1ハウジングに雌端子金具が取り付けられ、リテーナが初期位置に配置された状態を上方から見た平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1において、雌端子金具が取り付けられ、リテーナが検知位置に配置された状態の第1ハウジングと、第2ハウジングとの嵌合完了時の状態を示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図6におけるC-C断面図であって、第1ハウジングと第2ハウジングとの嵌合開始時の状態を示す。
【
図10】
図10は、
図6におけるD-D断面図であって、第1ハウジングと第2ハウジングとの嵌合開始時の状態を示す。
【
図11】
図11は、
図6におけるC-C断面図であって、第1ハウジングと第2ハウジングとが嵌合位置に至り、リテーナが検知位置に移動中の状態を示す。
【
図12】
図12は、
図6におけるD-D断面図であって、第1ハウジングと第2ハウジングとが嵌合位置に至り、リテーナが検知位置に移動中の状態を示す。
【
図13】
図13は、
図5におけるB-B断面図であって、ロック位置よりもロック解除位置に向けて変位したロックアームの後端に保持部の当て付け面が接触した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)第1ハウジングと、第1ハウジングに対し後方から挿入される端子金具と、第1ハウジングに対して初期位置と、前記初期位置よりも前方の検知位置との間で移動可能に取り付けた可動部材と、第1ハウジングが嵌合する第2ハウジングと、第1ハウジングに設けられた被係止部と、可動部材に設けられ、被係止部に係止する引掛部と、第2ハウジングに設けられ、第1ハウジングと第2ハウジングとの嵌合開始時に、引掛部を前記被係止部への突き当て状態に保持して、初期位置の可動部材を前止まりにし、第1ハウジングと第2ハウジングとの嵌合完了時に、引掛部が被係止部から解離することを許容して、可動部材を初期位置から検知位置に移動可能にする押え部と、第1ハウジングに設けられ、第2ハウジングに係止して、第1ハウジング及び第2ハウジングを嵌合状態にロックするロック位置と、ロックを解除するロック解除位置と、に変位可能なロックアームと、可動部材に設けられ、嵌合状態において、ロックアームがロック位置からロック解除位置に変位することを抑制する保持部とを備えている。この構成によれば、押え部は、第1ハウジングと第2ハウジングとの嵌合完了時に引掛部が被係止部に係止することを許容するので、引掛部が設けられた可動部材を検知位置に移動させることができる。これにより、ハウジング同士が嵌合完了したかどうかを容易に把握することができる。また、保持部によってロックアームがロック位置からロック解除位置に変位することを抑制されるので、ハウジング同士の嵌合状態を保持する保持力が低下することを抑えることができる。
【0010】
(2)本開示のコネクタの保持部の先端には、ロックアームがロック位置よりもロック解除位置に向けて変位している場合、ロックアームの後端に後方から接触して可動部材が検知位置に移動することを規制する当て付け面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、保持部の当て付け面がロックアームの後端に接触することによって、ハウジング同士が嵌合したときに、ロックアームがロック位置よりもロック解除位置に変位していることを把握することができる。このため、ハウジング同士の嵌合状態がロックされているか否かを検知することができる。
【0011】
(3)本開示のコネクタの第2ハウジングは、可動部材の初期位置及び検知位置に対応して可動部材が異なる見え方になる開口部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、開口部からの可動部材の見え方によって可動部材の位置が初期位置、又は検知位置であるかを判別することができるため、ハウジング同士が嵌合状態になったことに加え、可動部材の位置も検知位置にあるかどうかを確認することができる。
【0012】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施形態1]
以下、本開示を具体化した実施形態1を
図1~
図13を参照して説明する。なお、以下の説明において、前後の方向については、
図3における左方を前方、右方を後方と定義する。上下の方向については、
図3における手前側を上方、奥側を下方と定義する。左右の方向については、
図3における、上方を左方、下方を右方と定義する。
【0013】
本実施形態1のコネクタ1は、合成樹脂製の第1ハウジング10と、第1ハウジング10に設けられたロックアーム22と、端子金具である複数の雌端子金具27と、合成樹脂製の可動部材であるリテーナ70と、合成樹脂製の第2ハウジング50と、を備えている。
【0014】
第1ハウジング10は、
図1に示すように、全体としてブロック状をなす端子収容部11と、後述するロックアーム22とを一体に形成した単一部材である。端子収容部11内には、複数の端子収容室12が左右方向に並んで形成されている。端子収容室12の下面には、上下方向へ弾性変形可能なランス13が形成されている(
図4参照。)。端子収容室12の後端は、第1ハウジング10の後端面において開口している。
【0015】
第1ハウジング10の左右両外側面には、第1ハウジング10の左右方向中央に向けて窪んだ一対の凹部17が形成されている。各凹部17には、リテーナ70が有する引掛部72が係止する被係止部である前側被係止部18A、及び後側被係止部18Bが左右方向中央から左方及び右方に向かう方向(以下、左右方向外向きともいう)に突出して前後方向に並んで設けられている。前側被係止部18A、及び後側被係止部18Bの後側には、後方左右方向中央に向けて傾斜する傾斜面18C,18Dが形成されている。第1ハウジング10の端子収容部11の上面には、一対の上側被係止部14が上向きに突出して設けられている。各上側被係止部14は、ロックアーム22の後端部の左方及び右方に配置されている。各上側被係止部14の左右方向中央側の面の前端部及び後端部には、前側凸部14A及び後側凸部14Bが左右方向中央に向けて突出して設けられている。前側凸部14A及び後側凸部14Bの後側には、後方左右方向外側に向けて傾斜する傾斜面14C,14Dが形成されている(
図3参照。)。
【0016】
ロックアーム22は、第1ハウジング10と一体に形成されている。ロックアーム22は、アーム本体部23、前側連結部24、一対の後側連結部25、及び凸部26を備えている。アーム本体部23は、端子収容部11の外面16(上面)に沿って前後方向に伸びている。前側連結部24は、アーム本体部23の前端部から下方へ延出し、端子収容部11の外面16(上面)に連結している。一対の後側連結部25は、アーム本体部23の後端の左右両端部に一つずつ配置され、アーム本体部23の後端部から下方へ延出し、端子収容部11の外面16(上面)に連結している。凸部26は、アーム本体部23の上面の前後方向中央部において、アーム本体部23の上面から上向きに突出して形成されている。ロックアーム22は、前側連結部24、及び後側連結部25を支点としてアーム本体部23の前後方向中央部が上下方向へ弾性変形し得るようになっている。ロックアーム22が弾性変形していない状態であるとき、アーム本体部23は、端子収容部11の外面16(上面)に対して上下方向に所定の間隔を空けて対向したロック位置に配置されている(
図4参照。)。
【0017】
雌端子金具27は、
図4に示すように、前端部に角筒部28を有し、後端部にはオープンバレル状の圧着部29を有している。角筒部28内には弾性接触片30が収容されている。角筒部28の下面には突起状の一次係止部31が形成されている。角筒部28を構成する下板部は圧着部29の基板部と連なっている。圧着部29には、被覆電線32の前端部が導通可能に圧着されている。
【0018】
角筒部28を構成する上板部33は、圧着部29よりも上方に位置している。上板部33と圧着部29との高低差により、後述するリテーナ70の抜止部73を圧着部29の上方に配置することができ、これによって、角筒部28の上板部33の後端は、抜止部73の先端に係止することができる。これによって、雌端子金具27は、抜止め状態に保持される。
【0019】
雌端子金具27は、第1ハウジング10の後方から端子収容室12内に挿入される。正規位置に挿入された雌端子金具27は、一次係止部31をランス13に係止させることにより、抜止め状態に保持される。雌端子金具27に固着された被覆電線32は、第1ハウジング10の後方へ導出されている。上板部33は、端子収容室12の上壁部に対して隣合い対向している。
【0020】
リテーナ70は、
図1、
図2、
図4に示すように、後壁部71、左右対称な一対の引掛部72、複数の抜止部73、保持部74、及び左右対称な一対の移動規制部75を有する単一部材である。後壁部71は、板厚方向を前後方向に向け平板状をなす。後壁部71には、後方からの背面視において、前後方向(後壁部71の厚さ方向)に貫通した形態の孔76が複数形成されている。後壁部71には、背面視において端子収容室12に対応する領域を切り欠いた形態の逃がし部77が形成されている。逃がし部77は、後壁部71の下端縁に開口され、被覆電線32とリテーナ70との干渉を回避する。
【0021】
一対の引掛部72は、後壁部71の前面の左右両端部に配置されている(
図3参照。)。引掛部72は、後壁部71の前面から前向きに片持ち状に突出している。各引掛部72の上下中央部には、基端から先端部にかけてスリット72Aが形成されている。各引掛部72は、その基端(後壁部71に連なる部位)を支点として左右方向へ弾性変位することができる。
【0022】
複数の抜止部73は、
図4に示すように、後壁部71の前面(第1ハウジング10の後端に対向する面)から前向きに片持ち状に突出した形態である。抜止部73の突出方向は、第1ハウジング10に対する雌端子金具27の挿入方向及び第1ハウジング10に対するリテーナ70の組付け方向と平行である。各抜止部73は、左右方向において、後壁部71の左右両端よりも左右方向中央寄りに配置されている(図示せず。)。
【0023】
リテーナ70は、第1ハウジング10の後方から端子収容部11の後端部に組み付けられる。リテーナ70を組み付ける際には、一対の引掛部72を端子収容部11の左右両外側面に形成された凹部17に沿わせて摺接させる。これによって、リテーナ70は、第1ハウジング10に対し、上下方向に位置決めされると共に、上下方向の姿勢の傾きを規制された状態で案内される。
【0024】
保持部74は、後壁部71の前面(第1ハウジング10の後端に対向する面)から前向きに片持ち状に突出している。保持部74の突出方向は、第1ハウジング10に対する雌端子金具27の挿入方向及び第1ハウジング10に対するリテーナ70の組付け方向と平行である。保持部74は、左右方向において、後壁部71の左右方向中央部に配置されている。保持部74の先端には、前後方向に直交して拡がる当て付け面74Aが形成されている。
【0025】
一対の移動規制部75は、
図3に示すように、後壁部71の前面における左右両端よりも左右方向中央寄りに配置されている。各移動規制部75は、後壁部71の前面から前向きに片持ち状に突出している。左側の移動規制部75の先端部は、左向きに屈曲している。右側の移動規制部75の先端部は、右向きに屈曲している。各移動規制部75は、その基端(後壁部71に連なる部位)を支点として左右方向へ弾性変位し得るようになっている。
【0026】
リテーナ70の組付け過程では、移動規制部75の先端部が上側被係止部14の後側凸部14Bの傾斜面14Dを前方向に移動するのに伴い、各移動規制部75が互いに左右方向中央に近づく方向に弾性変形する。これと共に、引掛部72の先端部が後側被係止部18Bの傾斜面18Dを前方向に移動するのに伴い、各引掛部72が互いに左右方向外向きに弾性変形する。そして、各移動規制部75の先端部は、上側被係止部14の後側凸部14Bを前方向に通過したところで左右方向外向きに弾性復帰して、上側被係止部14の後側凸部14Bに対して前方から当接するように対向する(
図1参照。)。そして、引掛部72の先端部は、後側被係止部18Bを前方向に通過したところで左右方向中央に向けて弾性復帰して、後側被係止部18Bがスリット72Aに入り込み、後側被係止部18Bに対して前方から当接するように対向する(
図1参照。)。このとき、保持部74の先端は、アーム本体部23の後方に位置している(
図4参照。)。このとき、リテーナ70は、後述する検知位置に至る前の初期位置に配置された状態である。こうして、初期位置に配置されたリテーナ70は、第1ハウジング10に対して後方へ離脱することが規制される。
【0027】
リテーナ70が初期位置に配置された第1ハウジング10は、第2ハウジング50と嵌合することができる。第2ハウジング50は、
図5、
図6に示すように、回路基板Sに取り付けられる。第2ハウジング50には、雄端子金具54が取り付けられている。第2ハウジング50は、壁状の端子貫通部51、及び端子貫通部51の外周縁から後向きに角筒状に突出したフード部52を有する。雄端子金具54は、端子貫通部51に貫通されている。雄端子金具54の先端に形成されたタブ54Aは、フード部52内に収容されている。雄端子金具54の基端部は、回路基板Sに対して半田によって固着されている。
【0028】
フード部52を構成する上面部にはロック孔52A、及び一対の開口部52Bが形成されている。ロック孔52Aは、上面部の左右方向中央部に形成されている。一対の開口部52Bは、ロック孔52Aを左右から挟むように形成されている。フード部52を構成する左面部及び右面部の各々には、
図7に示すように、押え部52Cが設けられている。各押え部52Cは、フード部52の左面部及び右面部の各々の後端部から、左右方向中央に向けて突出している。
【0029】
リテーナ70が初期位置に配置された第1ハウジング10と、第2ハウジング50と、の嵌合開始時、凸部26がフード部52の上面部と干渉することによって、ロックアーム22は、端子収容部11の上面(外面16)に接近する方向(下向き)に撓み、ロックを解除するロック解除位置に変位する。
【0030】
このとき、一対の引掛部72の先端部の左右外側の面にフード部52の押え部52Cの先端が隣合うように対向した状態になる(
図9参照。)。これによって、一対の引掛部72は、フード部52の押え部52Cによって左右方向外向きに弾性変形することが規制される。このため、一対の引掛部72は、前側被係止部18Aの傾斜面18Cに当接しても、左右方向外向きに弾性変形することができず、前側被係止部18Aを前方向に通過することができない。つまり、このとき、押え部52Cによって、引掛部72を前側被係止部18Aの傾斜面18Cへの突き当て状態に保持して、引掛部72が前側被係止部18Aに係止することを規制する。これによって、初期位置のリテーナ70は、第1ハウジング10に対して挿入することが規制され、前止まりにされる。このとき、上方からフード部52の開口部52Bを見たとき、第1ハウジング10の一部が見えた状態である(図示せず。)。このとき、一対の各移動規制部75の先端部は、上側被係止部14の後側凸部14Bと前側凸部14Aとの間に位置している(
図10参照。)。
【0031】
第1ハウジング10及び第2ハウジング50が正規の嵌合位置に至ると、ロックアーム22がロック解除位置からロック位置に弾性復帰し、凸部26が第2ハウジング50のロック孔52Aに係止して、第1ハウジング10及び第2ハウジング50が嵌合状態にロックされる。こうして、第1ハウジング10と第2ハウジング50とは、嵌合完了する。このとき、フード部52の押え部52Cの先端は、
図11に示すように、一対の引掛部72の基端部の左右外側の面に隣合うように対向した状態になる。これによって、一対の引掛部72の先端部は、押え部52Cによる規制がなくなる。このとき、押え部52Cは、引掛部72が前側被係止部18Aから解離することを許容して、引掛部72が前側被係止部18Aに係止することを許容する。これによって、押え部52Cは、リテーナ70を初期位置から初期位置よりも前方の検知位置に移動可能にする。リテーナ70が検知位置に移動することによって、第1ハウジング10及び第2ハウジング50が正規の嵌合位置に至ったことを検知することができる。
【0032】
このとき、リテーナ70を前向きに移動させて第1ハウジング10に挿入すると、移動規制部75の先端部が上側被係止部14の前側凸部14Aの傾斜面14Cを前向きに移動するのに伴い、各移動規制部75が互いに左右方向中央に近づく方向に弾性変形する(
図12参照。)。これと共に、引掛部72の先端部が前側被係止部18Aの傾斜面18Cを前向きに移動するのに伴い、各引掛部72が互いに左右方向外向きに弾性変形する(
図11参照。)。これと共に、保持部74は、アーム本体部23と端子収容部11の外面16(上面)との間であって、一対の後側連結部25の間に挿入される。
【0033】
そして、各移動規制部75の先端部は、上側被係止部14の前側凸部14Aを前方向に通過したところで左右方向外向きに弾性復帰して、上側被係止部14の前側凸部14Aに対して前方から当接するように対向する(
図8参照。)。このとき、上方からフード部52の開口部52Bを見たとき、移動規制部75の先端部が見えた状態である(
図5参照。)。つまり、開口部52Bは、リテーナ70の初期位置、及び検知位置に対応して、リテーナ70が異なる見え方になる。
【0034】
そして、引掛部72の先端部は、前側被係止部18Aを前方向に通過したところで左右方向中央に向けて弾性復帰して、前側被係止部18Aがスリット72Aに入り込み、前側被係止部18Aに対して前方から当接するように対向する(
図7参照。)。つまり、引掛部72は、前側被係止部18Aに係止する。そして、リテーナ70の後壁部71は、端子収容部11の後端に隣合う(
図6参照。)。こうして、リテーナ70は、検知位置に至る前の初期位置から第1ハウジング10に取り付けられた検知位置への移動が完了する。つまり、リテーナ70は、第1ハウジング10及び第2ハウジング50が嵌合状態に至ったときに初めて初期位置から検知位置に移動することができる。
【0035】
このとき、ロックアーム22の下側には、保持部74が配置されている(
図6参照)。保持部74の先端は、凸部26よりも後方であって、一対の後側連結部25よりも前方に位置する(
図6参照。)。保持部74は、第1ハウジング10と第2ハウジング50とが嵌合状態において、ロックアーム22がロック位置からロック解除位置に撓んで変位することを抑制する。このため、第1ハウジング10と第2ハウジング50との嵌合状態を保持する力は、保持部74が設けられていない場合に比べて大きくなる。
【0036】
リテーナ70が検知位置に配置されると、抜止部73の先端は、角筒部28の上板部33の後端に後方から隣合うように対向する。したがって、リテーナ70が第1ハウジング10に組付けられて検知位置に配置された状態では、被覆電線32が後方へ引っ張られても、角筒部28の上板部33の後端が抜止部73の前端に当接するので、雌端子金具27が後方へ相対変位することを規制することができる。雌端子金具27は、第1ハウジング10のランス13と、リテーナ70の抜止部73とによって、確実に抜止め状態を保持される。
【0037】
嵌合状態の第1ハウジング10及び、第2ハウジング50は、ロック孔52Aに係止する凸部26を下方に押圧し、凸部26がロック孔52Aに係止しない状態にすることによって、嵌合しない状態にすることができる。さらに、リテーナ70を検知位置から初期位置に移動させるには、一対の引掛部72を左右方向外向きに弾性変形させて前側被係止部18Aをスリット72Aから外した状態にする。これと共に、一対の移動規制部75を互いに左右方向中央に向けて弾性変形させて、先端部を前側凸部14Aよりも左右方向中央に変位させる。これによって、リテーナ70は、検知位置から初期位置に移動することができる。つまり、リテーナ70は、第1ハウジング10に対して、初期位置と、初期位置よりも前方の検知位置との間で移動可能に取り付けられている。
【0038】
仮に、
図13に示すように、第1ハウジング10と、第2ハウジング50と、が正規の嵌合位置に至ったとき、ロックアーム22がロック解除位置からロック位置に弾性復帰せず、凸部26がロック孔52Aに係止しない状態である場合、ロックアーム22は、ロック位置よりもロック解除位置に向けて変位して端子収容部11の外面16(上面)に近づいた状態になっている。このときに、初期位置にあるリテーナ70を検知位置に変位させようとすると、保持部74の先端に形成された当て付け面74Aは、アーム本体部23の後端に後方から接触する。これによって、リテーナ70が初期位置から検知位置に移動することが規制されるので、ロックアーム22がロック位置よりもロック解除位置に向けて変位していることを容易に検知することができる。
【0039】
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
【0040】
本開示のコネクタ1は、第1ハウジング10と、第1ハウジング10に対し後方から挿入される雌端子金具27と、第1ハウジング10に対して、初期位置と、初期位置よりも前方の検知位置との間で移動可能に取り付けたリテーナ70と、第1ハウジング10が嵌合する第2ハウジング50と、第1ハウジング10に設けられた前側被係止部18Aと、リテーナ70に設けられ、前側被係止部18Aに係止する引掛部72と、第2ハウジング50に設けられ、第1ハウジング10と第2ハウジング50との嵌合開始時に、引掛部72を前側被係止部18Aへの突き当て状態に保持して、初期位置のリテーナ70を前止まりにし、第1ハウジング10と第2ハウジング50との嵌合完了時に、引掛部72が前側被係止部18Aから解離することを許容して、リテーナ70を初期位置から検知位置に移動可能にする押え部52Cと、第1ハウジング10に設けられ、第2ハウジング50に係止して、第1ハウジング10及び第2ハウジング50を嵌合状態にロックするロック位置と、ロックを解除するロック解除位置と、に変位可能なロックアーム22と、リテーナ70に設けられ、嵌合状態において、ロックアーム22がロック位置からロック解除位置に変位することを抑制する保持部74とを備えている。
【0041】
この構成によれば、押え部52Cは、第1ハウジング10と第2ハウジング50との嵌合完了時に引掛部72が前側被係止部18Aに係止することを許容するので、引掛部72が設けられたリテーナ70を検知位置に移動させることができる。これにより、ハウジング同士が嵌合完了したかどうかを容易に把握することができる。また、保持部74によってロックアーム22がロック位置からロック解除位置に変位することを抑制されるので、ハウジング同士の嵌合状態を保持する保持力は、低下することを抑えることができる。
【0042】
本開示のコネクタ1の保持部74の先端には、ロックアーム22がロック位置よりもロック解除位置に向けて変位している場合、ロックアーム22の後端に後方から接触してリテーナ70が検知位置に移動することを規制する当て付け面74Aが形成されている。この構成によれば、保持部74の当て付け面74Aがロックアーム22の後端に接触することによって、ハウジング同士が嵌合したときに、ロックアーム22がロック位置よりもロック解除位置側に変位していることを把握することができる。このため、ハウジング同士の嵌合状態がロックされているか否かを検知することができる。
【0043】
本開示のコネクタ1の第2ハウジング50は、リテーナ70の初期位置及び検知位置に対応してリテーナ70が異なる見え方になる開口部52Bが形成されている。この構成によれば、開口部52Bからのリテーナ70の見え方によってリテーナ70の位置が初期位置、又は検知位置であるかを判別することができるため、ハウジング同士が嵌合状態になったことに加え、リテーナ70の位置も検知位置にあるかどうかを確認することができる。
【0044】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本開示には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
(1)後側被係止部、及び後側凸部を設けない構成としてもよい。
(2)保持部を単独の部材としてもよい。具体的には、第1ハウジングと第2ハウジングとを勘合状態にした後、リテーナに形成された保持部を挿通する挿通孔を介してアーム本体部と端子収容部の外面との間に保持部を挿入する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…コネクタ
10…第1ハウジング
11…端子収容部
12…端子収容室
13…ランス
14…上側被係止部
14A…前側凸部
14B…後側凸部
14C…傾斜面
14D…傾斜面
16…外面
17…凹部
18A…前側被係止部(被係止部)
18B…後側被係止部
18C…傾斜面
18D…傾斜面
22…ロックアーム
23…アーム本体部
24…前側連結部
25…後側連結部
26…凸部
27…雌端子金具
28…角筒部
29…圧着部
30…弾性接触片
31…一次係止部
32…被覆電線
33…上板部
50…第2ハウジング
51…端子貫通部
52…フード部
52A…ロック孔
52B…開口部
52C…押え部
54…雄端子金具
54A…タブ
70…リテーナ(可動部材)
71…後壁部
72…引掛部
72A…スリット
73…抜止部
74…保持部
74A…当て付け面
75…移動規制部
76…孔
77…逃がし部
S…回路基板