IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エンジン装置 図1
  • 特許-エンジン装置 図2
  • 特許-エンジン装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】エンジン装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/30 20060101AFI20231108BHJP
   F02D 41/14 20060101ALI20231108BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F02D41/30
F02D41/14
F02D41/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020156226
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049923
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】元古 武志
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115600(JP,A)
【文献】特開2016-031039(JP,A)
【文献】特開2009-162174(JP,A)
【文献】特開2014-066154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00-28/00
41/00-41/40
F01N 3/00
3/02
3/04- 3/38
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの排気管に取り付けられた触媒と、
前記排気管の前記触媒よりも上流側に取り付けられた第1空燃比センサと、
前記排気管の前記触媒よりも下流側に取り付けられた第2空燃比センサと、
前記エンジンを制御する制御装置と、
を備えるエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記第1空燃比センサの出力値に基づく前記触媒の酸素吸蔵量に関連する吸蔵量パラメータが第1閾値未満であることを確認したときに、前記エンジンの燃料カットの要求を開始し、その後に、前記吸蔵量パラメータが前記第1閾値以上の第2閾値以上であることを確認したときに、前記エンジンの燃料カットの要求を解除する、
エンジン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエンジン装置としては、エンジンと、エンジンの排気を浄化する浄化装置と、排気管の浄化装置よりも上流側に取り付けられた第1空燃比センサと、排気管の浄化装置よりも下流側に取り付けられた第2空燃比センサとを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このエンジン装置では、第2空燃比センサからの空燃比に基づいて、エンジンの燃料カットの要求の有無を切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-115600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のエンジン装置において、排気管の浄化装置よりも下流側に取り付けられた第2空燃比センサは、排気管の浄化装置よりも上流側に取り付けられた第1空燃比センサに比して、流通する排気の温度が低くセンサの温度が高くなりにくいなどの理由により、センサが活性化しにくい(活性化するまでの時間が長くなりやすい)。このため、上述のエンジン装置では、エンジンの燃料カットの要求の有無を適切に切り替えることができない可能性がある。
【0005】
本発明のエンジン装置は、エンジンの燃料カットの要求の有無を適切に切り替えることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンジン装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のエンジン装置は、
エンジンと、
前記エンジンの排気管に取り付けられた触媒と、
前記排気管の前記触媒よりも上流側に取り付けられた第1空燃比センサと、
前記排気管の前記触媒よりも下流側に取り付けられた第2空燃比センサと、
前記エンジンを制御する制御装置と、
を備えるエンジン装置であって、
前記制御装置は、前記第1空燃比センサの出力値に基づく前記触媒の酸素吸蔵量に関連する吸蔵量パラメータが第1閾値未満であることを確認したときに、前記エンジンの燃料カットの要求を開始し、その後に、前記吸蔵量パラメータが前記第1閾値以上の第2閾値以上であることを確認したときに、前記エンジンの燃料カットの要求を解除する、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のエンジン装置では、第1空燃比センサの出力値に基づく触媒の酸素吸蔵量に関連する吸蔵量パラメータが第1閾値未満であることを確認したときに、エンジンの燃料カットの要求を開始し、その後に、吸蔵量パラメータが第1閾値以上の第2閾値以上であることを確認したときに、エンジンの燃料カットの要求を解除する。このようにして、第1空燃比センサの出力値に基づく吸蔵量パラメータを用いてエンジンの燃料カットの要求の開始および解除を行なうから、第2空燃比センサからの出力値に基づく吸蔵量パラメータを用いてエンジンの燃料カットの要求の開始および解除を行なうものに比して、エンジンの燃料カットの要求の有無を適切に切り替えることができる。
【0009】
本発明のエンジン装置において、前記制御装置は、前記エンジンの燃料カットを要求しているときにおいて、前記吸蔵量パラメータが前記第2閾値以上の状態が所定時間以上に亘って継続したときに、前記エンジンの燃料カットの要求を解除するものとしてもよい。こうすれば、エンジンの燃料カットの要求の有無のハンチングや誤差を抑制することができる。
【0010】
本発明のエンジン装置において、前記制御装置は、前記触媒の温度および/または劣化程度に基づいて前記吸蔵量パラメータを設定するものとしてもよい。また、前記制御装置は、前記触媒の温度および/または劣化程度に基づいて前記第1閾値および/または前記第2閾値を設定するものとしてもよい。こうすれば、エンジンの燃料カットの要求の有無をより適切に切り替えることができる。
【0011】
本発明のエンジン装置において、前記排気管の前記第2空燃比センサよりも下流側に取り付けられた第2触媒を備え、前記制御装置は、前記吸蔵量パラメータが前記閾値未満で且つ前記第2空燃比センサの出力値に基づく前記第2触媒の酸素吸蔵量に関連する第2吸蔵量パラメータが第3閾値未満であることを確認したときに、前記エンジンの燃料カットの要求を開始し、その後に、前記吸蔵量パラメータが前記第2閾値以上で且つ前記第2吸蔵量パラメータが前記第3閾値以上の第4閾値以上であることを確認したときに、前記エンジンの燃料カットの要求を解除するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例としてのエンジン装置10の構成の概略を示す構成図である。
図2】電子制御ユニット70により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図3】電子制御ユニット70により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0014】
図1は、本発明の一実施例としてのエンジン装置10の構成の概略を示す構成図である。実施例のエンジン装置10は、エンジン12からの動力を用いて走行する一般的な車両に搭載されたり、エンジン12に加えてモータを備える各種のハイブリッド車両に搭載されたり、建設設備などの移動しない設備などに搭載されたりする。このエンジン装置10は、図示するように、エンジン12と、制御装置としての電子制御ユニット70とを備える。
【0015】
エンジン12は、例えばガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する内燃機関として構成されている。このエンジン12は、エアクリーナ22により清浄された空気を吸気管23に吸入してスロットルバルブ24、サージタンク25の順に流通させると共に吸気管23のサージタンク25よりも下流側で燃料噴射弁26から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。そして、この混合気を吸気バルブ28を介して燃焼室29に吸入し、点火プラグ30による電気火花により爆発燃焼させて、爆発燃焼によるエネルギにより押し下げられるピストン32の往復運動をクランクシャフト14の回転運動に変換する。燃焼室29から排気バルブ31を介して排気管33に排出される排気は、浄化装置34,36を介して外気に排出される。浄化装置34,36は、排気中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する触媒(三元触媒)34a,36aを有する。
【0016】
電子制御ユニット70は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポートを備える。電子制御ユニット70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。
【0017】
電子制御ユニット70に入力される信号としては、例えば、エンジン12のクランクシャフト14の回転位置を検出するクランクポジションセンサ14aからのクランク角θcrや、エンジン12の冷却水の温度を検出する水温センサ42からの冷却水温Twを挙げることができる。吸気バルブ28を開閉するインテークカムシャフトの回転位置や排気バルブ31を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ44からのカム角θci,θcoも挙げることができる。スロットルバルブ24のポジションを検出するスロットルポジションセンサ24aからのスロットル開度THや、吸気管23に取り付けられたエアフローメータ23aからの吸入空気量Qa、吸気管23に取り付けられた温度センサ23tからの吸気温Taも挙げることができる。排気管33の浄化装置34よりも上流側に取り付けられた空燃比センサ37aからの空燃比AF1や、排気管33の浄化装置34よりも下流側で且つ浄化装置36よりも上流側に取り付けられた空燃比センサ37bからの空燃比AF2も挙げることができる。イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号IGや、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPも挙げることができる。アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速Vも挙げることができる。
【0018】
電子制御ユニット70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力される。電子制御ユニット70から出力される信号としては、例えば、スロットルバルブ24のポジションを調節するスロットルモータ24bへの制御信号や、燃料噴射弁26への制御信号、点火プラグ30への制御信号を挙げることができる。
【0019】
電子制御ユニット70は、クランクポジションセンサ14aからのクランク角θcrに基づいてエンジン12の回転数Neを演算する。また、電子制御ユニット70は、エアフローメータ23aからの吸入空気量Qaとエンジン12の回転数Neとに基づいて、負荷率(エンジン12の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算する。
【0020】
こうして構成された実施例のエンジン装置10では、電子制御ユニット70は、エンジン12の要求負荷率KL*に基づいて、スロットルバルブ24の開度を制御する吸入空気量制御や、燃料噴射弁26からの燃料噴射量を制御する燃料噴射制御、点火プラグ30の点火時期を制御する点火制御などを行なう。
【0021】
燃料噴射制御は、電子制御ユニット70により、例えば、以下のように行なわれる。サブフィードバック制御として、空燃比センサ37bにより検出される空燃比AF2に基づいて、制御用空燃比AF1*にリッチ側の値を設定するリッチ補正と、制御用空燃比AF1*にリーン側の値を設定するリーン補正とを交互に行なう。具体的には、リッチ補正中に空燃比AF2がリッチ側の閾値AFref1以下に至ると、リッチ補正からリーン補正に切り替え、リーン補正中に空燃比AF2がリーン側の閾値AFref2以上に至ると、リーン補正からリッチに補正に切り替える。リッチ補正やリーン補正は、触媒34a,36aの酸素吸蔵量を調節するために行なわれる。また、メインフィードバック制御として、式(1)に示すように、空燃比センサ37aにより検出される空燃比AF1と制御用空燃比AF1*との差分が打ち消されるように補正値αを設定する。式(1)において、「Kp」は比例項のゲインであり、「Ki」は積分項のゲインである。そして、式(2)に示すように、エンジン12の負荷率KLに基づく基本噴射量Qfbsに値1と補正値αとの和を乗じて目標噴射量Qf*設定し、この目標噴射量Qf*を用いて燃料噴射弁26を制御する。
【0022】
α=Kp・(AF1-AF1*)+Ki・∫(AF1-AF1*)dt (1)
Qf*=Qfbs・(1+α) (2)
【0023】
次に、こうして構成された実施例のエンジン装置10の動作、特に、エンジン12の燃料カットの要求を切り替える際の動作について説明する。図2は、電子制御ユニット70により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、繰り返し実行される。
【0024】
図2の処理ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、最初に、空燃比AF1,AF2などのデータを入力する(ステップS100)。ここで、空燃比AF1,AF2は、空燃比センサ37a,37bにより検出された値が入力される。
【0025】
こうしてデータが入力されると、入力された空燃比AF1,AF2に基づいて触媒34a,36aの酸素吸蔵量OS1,OS2を推定する(ステップS110)。ここで、酸素吸蔵量OS1は、空燃比AF1が大きいほど大きくなるように推定される。酸素吸蔵量OS2は、空燃比AF2が大きいほど大きくなるように推定される。
【0026】
続いて、エンジン12の燃料カットの要求の有無を調べる(ステップS120)。エンジン12の燃料カットの要求がないときには、触媒34a,36aの酸素吸蔵量OS1,OS2を閾値OS1ref1,OS2ref1と比較する(ステップS130)。ここで、閾値OS1ref1,OS2ref1は、エンジン12の燃料カットの要求を開始すべきか否かを判定するための閾値であり、実験や解析により予め定められる。酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref1以上のときや酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref1以上のときには、エンジン12の燃料カットの要求を開始する必要がないと判断し、エンジン12の燃料カットの要求がない状態を保持し(ステップS160)、本ルーチンを終了する。
【0027】
ステップS130で酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref1未満で且つ酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref1未満のときには、エンジン12の燃料カットの要求を開始し(ステップS170)、本ルーチンを終了する。エンジン12の燃料カットの要求があるときには、燃料カットの実行条件(例えば、エンジン装置10が搭載される車両の走行中にアクセルオフされている条件など)が成立すると、燃料噴射弁26からの燃料の噴射を停止する。
【0028】
ステップS120でエンジン12の燃料カットの要求があるときには、触媒34a,36aの酸素吸蔵量OS1,OS2を閾値OS1ref2,OS2ref2と比較する(ステップS140)。ここで、閾値OS1ref2,OS2ref2は、エンジン12の燃料カットの要求を解除すべきか否かを判定するための閾値であり、実験や解析により予め定められる。閾値OS1ref2は、閾値OS1ref1以上に設定され、閾値OS2ref2は、閾値OS2ref1以上に設定される。酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref2以上で且つ酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref2以上のときには、酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref2以上で且つ酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref2以上の状態が所定時間T1以上に亘って継続しているか否かを判定する(ステップS150)。ここで、所定時間T1は、エンジン12の燃料カットの要求の有無の判定のハンチングや誤差を抑制するための値として予め定められる。
【0029】
ステップS140で酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref2未満のときや酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref2未満のときや、ステップS150で酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref2以上で且つ酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref2以上の状態が所定時間T1以上に亘って継続していないときには、エンジン12の燃料カットの要求を解除する必要がないと判断し、エンジン12の燃料カットの要求がある状態を保持して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。0026と対にしました。
【0030】
ステップS150で酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref2以上で且つ酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref2以上の状態が所定時間T1以上に亘って継続しているときには、エンジン12の燃料カットの要求を解除して(ステップS180)、本ルーチンを終了する。このとき、上述のように定められた所定時間T1を用いるため、エンジン12の燃料カットの要求の有無の判定のハンチングや誤差を抑制することができる。
【0031】
浄化装置34(触媒34a)よりも上流側に取り付けられた空燃比センサ37aは、浄化装置34(触媒34a)よりも下流側に取り付けられた空燃比センサ37bに比して、エンジン12に近いために高温になりやすいことや、高い位置(凝縮水に接触しにくい位置)に配置される場合が多いことから、センサとしての活性が早い傾向がある。実施例では、エンジン12の燃料カットの要求の有無を切り替えるか否かの判定に、触媒34aに対して上流側の空燃比センサ37aの出力値に基づいて演算された酸素吸蔵量OS1を用いるから、下流側の空燃比センサ37bの出力値に基づいて演算された酸素吸蔵量OS1を用いる場合に比して、エンジン12の燃料カットの要求の有無を適切に切り替えることができる。同様に、この判定に、触媒36aに対して上流側の空燃比センサ37bの出力値に基づいて演算された酸素吸蔵量OS2を用いるから、触媒36aよりも下流側に空燃比センサを取り付けてその出力値に基づいて演算された酸素吸蔵量OS2を用いる場合に比して、エンジン12の燃料カットの要求の有無を適切に切り替えることができる。
【0032】
以上説明した実施例のエンジン装置では、空燃比センサ37aの出力値に基づく触媒34aの酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref1未満で且つ空燃比センサ37bの出力値に基づく触媒36aの酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref1未満のときには、エンジン12の燃料カットの要求を開始し、その後に、酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref2以上で且つ酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref2以上の状態が所定時間T1以上に亘って継続しているときには、エンジン12の燃料カットの要求を解除する。即ち、触媒34a,36aに対して上流側の空燃比センサ37a,37bの出力値に基づく触媒34a,36aの酸素吸蔵量OS1,OS2を用いてエンジン12の燃料カットの要求の有無を切り替えるのである。これにより、エンジン12の燃料カットの要求の有無を適切に切り替えることができる。
【0033】
実施例のエンジン装置10では、触媒34aの酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref1未満で且つ触媒36aの酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref1未満のときに、エンジン12の燃料カットの要求を開始し、その後に、触媒34aの酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref2以上で且つ触媒36aの酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref2以上の状態が所定時間T1以上に亘って継続したときに、エンジン12の燃料カットの要求を解除するものとした。しかし、触媒36aの酸素吸蔵量OS2を用いずに、触媒34aの酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref1未満のときに、エンジン12の燃料カットの要求を開始し、その後に、触媒34aの酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref2以上の状態が所定時間T1以上に亘って継続したときに、エンジン12の燃料カットの要求を解除するものとしてもよい。また、触媒34aの酸素吸蔵量OS1を用いずに、触媒36aの酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref1未満のときに、エンジン12の燃料カットの要求を開始し、その後に、触媒36aの酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref2以上の状態が所定時間T1以上に亘って継続したときに、エンジン12の燃料カットの要求を解除するものとしてもよい。これらの場合、エンジン装置10は、浄化装置34(触媒34a)または浄化装置36(触媒36a)を備えない構成としてもよい。
【0034】
実施例のエンジン装置10では、触媒34aの酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref2以上で且つ触媒36aの酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref2以上の状態が所定時間T1以上に亘って継続したときに、エンジン12の燃料カットの要求を解除するものとした。しかし、酸素吸蔵量OS1が閾値OS1ref2以上で且つ酸素吸蔵量OS2が閾値OS2ref2以上のときに、直ちに、エンジン12の燃料カットの要求を解除するものとしてもよい。
【0035】
実施例のエンジン装置10では、触媒36a,36bの酸素吸蔵量に関連する吸蔵量パラメータとして触媒34a,36aの酸素吸蔵量OS1,OS2を用いるものとした。しかし、吸蔵量パラメータは、触媒36a,36bの温度および/または劣化程度に基づいて触媒34a,36aの酸素吸蔵量OS1,OS2を補正した値が用いられるものとしてもよい。こうすれば、エンジン12の燃料カットの要求の有無をより適切に切り替えることができる。ここで、触媒36a,36bの温度は、例えば、浄化装置34(触媒34a),浄化装置36(触媒36a)に温度センサを取り付けてその温度センサにより検出したり、エンジン12の冷却水温Twや回転数Ne、負荷率KLなどに基づいて推定したりすることができる。触媒36a,36bの劣化程度は、例えば、触媒36a,36bの温度や酸素吸蔵量OS1,OS2などに基づいて推定することができる。
【0036】
実施例のエンジン装置10では、触媒36a,36bの酸素吸蔵量に関連する吸蔵量パラメータとして触媒34a,36aの酸素吸蔵量OS1,OS2を用いるものとした。しかし、吸蔵量パラメータは、触媒36a,36bの酸素吸蔵量に関連するものであればよく、例えば、触媒36a,36bの酸素吸蔵量の最大値M1,M2に対する現在値(触媒34a,36aの酸素吸蔵量OS1,OS2)の比率R1,R2が用いられるものとしてもよい。この場合、吸蔵量パラメータは、触媒36a,36bの温度および/または劣化程度に基づいて触媒34a,36aの酸素吸蔵量の最大値M1,M2を補正した値に基づく比率R1,R2が用いられるものとしてもよい。ここで、酸素吸蔵量の最大値M1,M2は、例えば、エアフローメータ23aからの吸入空気量Qaと、空燃比センサ37a,37bからの空燃比AF1,AF2とに基づいて推定することができる。
【0037】
本発明のエンジン装置において、閾値OS1ref1,OS2ref1,OS1ref2,OS2ref2は、それぞれ一定値が用いられるものとした。しかし、閾値OS1ref1,OS2ref1,OS1ref2,OS2ref2のうち少なくとも1つは、触媒36a,36bの温度および/または劣化程度に基づいて設定されるものとしてもよい。図3は、電子制御ユニット70により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。図3の処理ルーチンは、ステップS100の処理に代えてステップS100bの処理を実行する点や、ステップS115の処理が追加された点を除いて、図2の処理ルーチンと同一である。したがって、同一の処理については同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0038】
図3の処理ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、図2の処理ルーチンのステップS100の処理と同様の触媒34a,36aの酸素吸蔵量OS1,OS2に加えて、閾値OS1ref1,OS2ref1,OS1ref2,OS2ref2のベース値A1,A2,B1,B2や、触媒使用可能率C1,C2も入力する(ステップS100b)。ここで、ベース値A1,A2,B1,B2は、触媒34a,36aが劣化していないときにおけるエンジン12の燃料カットの要求の有無を判定するための閾値(ベース値)であり、図示しないベース値設定ルーチンにより触媒34a,36aの温度に基づいて設定された値が入力される。ベース値設定ルーチンでは、ベース値A2は、ベース値A1以上に設定され、ベース値B2は、ベース値B1以上に設定される。触媒使用可能率C1,C2は、触媒34a,36aが劣化していないときに対する現在の触媒34a,36aの使用可能な比率であり、図示しない触媒使用可能率設定ルーチンにより触媒34a,36aの劣化程度に基づいて設定された値が入力される。
【0039】
ステップ110で触媒34a,36aの酸素吸蔵量OS1,OS2が推定されると、ベース値A1と触媒使用可能率C1との積、ベース値A2と触媒使用可能率C2との積、ベース値B1と触媒使用可能率C1との積、ベース値B2と触媒使用可能率C2との積として閾値OS1ref1,OS2ref1,OS1ref2,OS2ref2を設定し(ステップS115)、ステップS120以降の処理を実行して、本ルーチンを終了する。こうすれば、触媒36a,36bの温度および劣化程度に基づいて設定された閾値OS1ref1,OS2ref1,OS1ref2,OS2ref2を用いてステップS130~S150の判定が行なわれるため、エンジン12の燃料カットの要求の有無をより適切に切り替えることができる。
【0040】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン12が「エンジン」に相当し、触媒34a,36aが「触媒」に相当し、空燃比センサ37aが「第1空燃比センサ」に相当し、空燃比センサ37bが「第2空燃比センサ」に相当し、電子制御ユニット70が「制御装置」に相当する。
【0041】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0042】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、エンジン装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 エンジン装置、12 エンジン、14 クランクシャフト、14a クランクポジションセンサ、22 エアクリーナ、23 吸気管、23a エアフローメータ、23t 温度センサ、24 スロットルバルブ、24a スロットルポジションセンサ、24b スロットルモータ、25 サージタンク、26 燃料噴射弁、28 吸気バルブ、29 燃焼室、30 点火プラグ、31 排気バルブ、32 ピストン、33 排気管、34,36 浄化装置、34a,36a 触媒、37a,37b 空燃比センサ、42 水温センサ、44 カムポジションセンサ、70 電子制御ユニット、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ
図1
図2
図3