(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】研磨具及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24D 13/14 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
B24D13/14 Z
(21)【出願番号】P 2020170925
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩二
(72)【発明者】
【氏名】枡田 健太
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-336974(JP,A)
【文献】登録実用新案第3082411(JP,U)
【文献】特開昭50-074879(JP,A)
【文献】特開2013-223907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の芯材と、
前記芯材の外周面に、砥
粒が固着した帯状の研磨シートが前記芯材と直交する方向に積層されてなる積層体と、
前記芯材に取り付けられ、前記積層体の側面を保持する保持部材と
を有
し、
前記芯材は、摩耗する材料で構成されている、研磨具。
【請求項2】
前記砥粒は、前記
研磨シートの少なくとも一方の面に固着されている、請求項1に記載の研磨具。
【請求項3】
前記研磨シートは、前記芯材に渦巻状に巻き付けられる、請求項1または2に記載の研磨具。
【請求項4】
前記研磨シートは、前記芯材を一周してその両端が突き合わされる状態に巻き付けられている、請求項1または2に記載の研磨具。
【請求項5】
前記芯材および前記積層体は、前記芯材と直交する方向の断面が
楕円形または波状である、請求項1~4のいずれかに記載の研磨具。
【請求項6】
前記芯材と前記積層体、前記保持部材と前記積層体、および前記研磨シート同士の少なくとも1組は、接着剤によって固定されている、請求項1~5のいずれかに記載の研磨具。
【請求項7】
前記保持部材と前記積層体、および前記芯材と前記積層体の少なくとも1組を固定する固定部材をさらに有する、請求項1~6のいずれかに記載の研磨具。
【請求項8】
前記固定部材は、前記積層体の外周側から内周側に向かう方向に差し込まれることにより前記芯材と前記積層体とを固定するピンを含む、請求項7に記載の研磨具。
【請求項9】
前記固定部材は、前記積層体を外周側から押さえる押さえ部材と、該押さえ部材を締め付けることにより前記芯材と前記積層体とを固定するバンドとを含む、請求項7に記載の研磨具。
【請求項10】
前記固定部材は、前記積層体の外周側に嵌めこまれることにより前記芯材と前記積層体とを固定するリングまたはストッパを含む、請求項7に記載の研磨具。
【請求項11】
前記芯材の外周面には、前記研磨シートの端部を係止する係止部が形成されている、請求項1~
10のいずれかに記載の研磨具。
【請求項12】
前記芯材の軸方向の高さは、同方向における前記積層体の高さより低い、請求項1~
11のいずれかに記載の研磨具。
【請求項13】
前記芯材の軸方向の高さは、同方向における前記積層体の高さの3分の1以上2分の1以下である、請求項
12に記載の研磨具。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれかに記載の研磨具を、前記芯材を中心として回転させながら、前記積層体の前記保持部材とは反対側の側面を研磨対象物の表面に接触させることにより、前記研磨対象物の表面を研削する、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥粒が固着された研磨シートを積層した積層体を有する研磨具及びこれを用いた研磨方法に関し、特に、鋼材表面の酸化スケールや表面疵を研削して除去する表面手入れ等に用いられる研磨具及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の表面の付着物や凹凸を研削して除去するために、ディスクグラインダ等の研削機に取りつけられて回転駆動される、砥石ホイールや研磨ディスクなどの研磨具が用いられている。
【0003】
熱間圧延後の鋼材の表面に付着する酸化スケール(酸化物被膜)を研削する研磨具としては、研磨シートを積層することによって構成されたものが種々提案されている。例えば、特許文献1には、円板状の研磨布を回転軸方向に積層して、円筒状となるように圧接重合した、積層ロールタイプの研削工具が開示されている。この研削工具の円筒状の研削面で鋼材を研削すると、研削面に対して垂直な研磨布の端面が鋼材表面を擦って研削が行われ、砥粒とともに基材である布が摩耗して、新しい砥粒が表れるようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、研磨布片を支持円板に起立状態で回転方向に、すなわち回転軸に対して放射状に積層した、ディスクタイプ(リングタイプ)の研削ホイールが開示されている。この研削ホイールの円板状の研削面で鋼材を研削すると、研削面に対して垂直な研磨布片の端面が鋼材表面を擦って研削が行われ、砥粒とともに基材である布が摩耗して、新しい砥粒が表れるようになっている。
【0005】
さらに、特許文献3には、やや厚めの不織布よりなる平帯状研磨布を、中心部に円形開口部を有するように渦巻状に巻回しながら積層し、その積層面を接着して形成した環状研磨ディスクの側面に、回転軸挿着孔を備えた円形基板を接着してなる不織布研磨布ディスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-155314号公報
【文献】特開2004-82299号公報
【文献】実公昭51-54307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の積層ロールタイプの研削工具では、研磨布を積層して圧接重合した円筒状の研削工具の外周面(円筒面)が研削面となるため、研磨対象物の平面(鋼材の表面)に対して線接触となる。このため、広い研削面積を得るために、線接触と直交する方向に研削工具を送ることや、研削幅を得るために長い円筒状にすることが必要となる。長い円筒状にする場合は、研削工具の両端に軸を設けて軸受を設けるなど、構造上も大きくなる傾向がある。
【0008】
また、特許文献2の研削ホイールでは、研磨布片を回転軸に対して放射状に積層した円板状の研削面が、研磨対象物の平面(鋼材の表面)に面接触するため、広い研削面積を得ることができる。しかし、研磨布片を支持円板に起立状態で、回転軸に対して放射状に固定するため、研磨布を1枚ずつ積層していく必要があり、研削ホイールの製作に手間がかかる。
【0009】
さらに、特許文献3の不織布研磨布ディスクでは、特許文献2と同様に、平帯状研磨布を渦巻状に巻回しながら積層した環状研磨ディスクの研削面が、研磨対象物の平面(鋼材の表面)に面接触するため、広い研削面積を得ることができる。しかし、研磨シート(平帯状研磨布)を、中心部に円形開口部を有するように渦巻状に巻回しながら積層するのが難しかった。
【0010】
上記課題に鑑み、本発明は、砥粒が固着された研磨シートを積層した積層体を有する研磨具であって、研磨シートを容易に積層することができるとともに、研削効率を高めることができる研磨具及び研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 棒状の芯材と、前記芯材の外周面に、砥石が固着した帯状の研磨シートが前記芯材と直交する方向に積層されてなる積層体と、前記芯材に取り付けられ、前記積層体の側面を保持する保持部材とを有する、研磨具。
[2] 前記砥粒は、前記基材の少なくとも一方の面に固着されている、[1]に記載の研磨具。
[3] 前記研磨シートは、前記芯材に渦巻状に巻き付けられる、[1]または[2]に記載の研磨具。
[4] 前記研磨シートは、前記芯材を一周してその両端が突き合わされる状態に巻き付けられている、[1]または[2]に記載の研磨具。
[5] 前記芯材および前記積層体は、前記芯材と直交する方向の断面が非円形である、[1]~[4]のいずれかに記載の研磨具。
[6] 前記芯材と前記積層体、前記保持部材と前記積層体、および前記研磨シート同士の少なくとも1組は、接着剤によって固定されている、[1]~[5]のいずれかに記載の研磨具。
[7] 前記保持部材と前記積層体、および前記芯材と前記積層体の少なくとも1組を固定する固定部材をさらに有する、[1]~[6]のいずれかに記載の研磨具。
[8] 前記芯材の外周面には、前記研磨シートの端部を係止する係止部が形成されている、[1]~[7]のいずれかに記載の研磨具。
[9] 前記芯材の軸方向の高さは、同方向における前記積層体の高さより低い、請求項[1]~[8]のいずれかに記載の研磨具。
[10] 前記芯材の軸方向の高さは、同方向における前記積層体の高さの3分の1以上2分の1以下である、[9]に記載の研磨具。
[11] 前記芯材は、摩耗する材料で構成されている、[1]~[10]のいずれかに記載の研磨具。
[12] [1]~[11]のいずれかに記載の研磨具を、前記芯材を中心として回転させながら、前記積層体の前記保持部材とは反対側の側面を研磨対象物の表面に接触させることにより、前記研磨対象物の表面を研削する、研磨方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の研磨具及び研磨方法によれば、研磨シートが芯材の外周面上に積層されてなる積層体の研削面で鋼材を研削すると、積層体の表面に対して垂直な研磨シートの端面が鋼材表面を擦って研削が行われ、砥粒とともに基材である布が摩耗していくことで、新しい砥粒が表れることで、砥粒の目つぶれや目詰まりが生じにくくなる。
【0013】
また、研磨シートが芯材の外周面上に積層されてなる積層体は、その研削面が円板状の形状を有するため、広い研削面積が得られ、研削効率を高めることができる。
【0014】
また、研磨シートの側面が保持部材に当接する状態に積層されて積層体が構成されているので、研削時に積層体を構成する研磨シートの側面が保持部材に保持されて変形しにくく、研削効率を高めることができる。
【0015】
また、研磨シートを、その側面が保持部材に当接する状態に、芯材の外周面上に積層して、積層体が構成されているので、研磨シートを容易に積層することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)はそれぞれ、本発明の研磨具の例を示す断面図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)はそれぞれ、本発明の研磨具における研磨シートの例を示す図である。
【
図3】
図3(a)および
図3(b)はそれぞれ、本発明の研磨具における固定部材の例を示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)はそれぞれ、本発明の研磨具における固定部材の例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の研磨具において、芯材に巻き付けられる研磨シートの端部が係止される係止部の例を示す図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(d)はそれぞれ、本発明の研磨具の研削面の形状の例を示す図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)はそれぞれ、本発明の研磨具及び研磨方法による研削状況の例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の研磨具及び研磨方法による研削状況の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の研磨具及び研磨方法の実施形態について、詳細に説明する。
【0018】
図1(a)に、本発明の研磨具の一実施形態の断面図を示す。
【0019】
本実施形態の研磨具1は、ディスクグラインダ等の研削機2に取りつけて回転駆動させて用いられるものであって、棒状の芯材11と、芯材11と交差するように取り付けられる平板状の保持部材12と、帯状の研磨シート13が芯材11の外周面上に巻き付けられて芯材11と直交する方向に積層されることで形成される積層体14とを有している。芯材11と保持部材12は、互いに別部材として形成したものを組み合わせても良く、芯材11と保持部材12とを単一の部材として形成しても良い。
【0020】
研磨シート13は、帯状の基材(布紙)の少なくとも一方の面に砥粒(図示せず)が塗布されて固着されたものであり、芯材11の外周面に巻き付けられて積層されることで形成される積層体14の側面が、保持部材12により保持されている。基材の両面に砥粒が固着されていれば、研磨シート13が複数枚積層された状態で、隣接する研磨シート13の砥粒が互いに干渉し合い、研磨シート13がずれるのを抑えられるので、より好適である。砥粒は、基材の表面に塗布する代わりに、基材に埋め込まれていてもよい。砥粒としては、例えば、アルミナやSiC等の硬質材を使用できる。
【0021】
図1(a)に示すように、積層体14が巻き付けられた芯材11と、積層体14を構成する研磨シート13の側面を保持する保持部材12の中心にはそれぞれ、貫通孔11a、12aが形成されており、この貫通孔11a、12aに止めボルト22を挿入して、研削機2の回転部21に締め込むことで、研磨具1を研削機2に取り付けることができる。なお、芯材11と保持部材12には、必ずしも貫通孔11a、12aを形成する必要はなく、例えば
図1(b)に変形例として示すように、研磨具1Aにおいて芯材11Aと保持部材12Aとを一体に形成するとともに、保持部材12A部分から突設するように雄ねじ部11sを設け、この雄ねじ部11sを研削機2の回転部21に備えられた雌ねじ部に螺入させることで、研磨具1Aを研削機2に取り付けるようにしても良い。
【0022】
研磨シート13を芯材11、11Aの外周面上に積層する方法としては、
図2(a)に示すように、長い帯状の研磨シート13を芯材11、11Aの外周面上に渦巻状に巻き付けても良く、あるいは、
図2(b)に示すように、各研磨シート13を芯材11、11Aを一周してその両端が突き合わされる状態に巻き付けても良い。後者の場合には、
図2(b)に示すように、短い帯状の研磨シート13をあらかじめ複数枚積層して積層体13Aにしてから、環状に曲げて芯材11、11Aに巻き付けて、積層体14を形成することができる。あるいは、短い研磨シート13を1枚ずつ順に芯材11、11Aに巻き付けて、積層体14を形成してもよい。
【0023】
芯材11、11Aの外周面上に巻き付けて積層される帯状の研磨シート13の幅、すなわち芯材11、11Aの軸方向の積層体14の高さを一定にすれば、芯材11、11Aに巻き付けられた研磨シート13によって構成される積層体14の研削面が平面となり、円板形の研削面の全面が鋼材Wに摺接するようになる。あるいは、
図1(a)または
図1(b)に示すように、芯材11、11Aの外周面上に巻き付けて積層される帯状の研磨シート13の幅を、芯材11、11Aから遠ざかるにつれてわずかに減少させていけば、芯材11に巻き付けられた研磨シート13の端面によって構成される積層体14の研削面に傾斜(テーパー)が形成され、円板形の研削面のうちの片側が鋼材Wに摺接することになる。
【0024】
上記のように、研磨シート13を芯材11、11Aの外周面上に巻き付けて積層する際に、研磨シート13同士の合わせ面(積層面)を接着剤(図示せず)により固定しても良いが、研磨中に研磨シート13の端面が摩耗して新しい砥粒が表れるようにするため、研磨シート13の摩耗を抑制するほどの強固な接着にならないようにする。
【0025】
また、研磨シート13が芯材11、11Aに巻き付けられ積層されて構成される積層体14には、保持部材12、12Aに当接する側の側面に接着剤(図示せず)を塗布して、保持部材12、12Aに固定することが好ましい。同様に、積層体14を芯材11、11Aに固定するために、研磨シート13が巻き付けられる芯材11に接着剤(図示せず)を塗布することが好ましい。
【0026】
あるいは、積層体14を保持部材12、12Aまたは芯材11、11Aに固定する他の方法として、上記の接着剤に代えて、もしくはこれに加えて、芯材11、11Aの外周面上に巻き付けて積層される研磨シート13に、積層体14の外周側から内周側に向かう方向にピン(固定部材)(図示せず)を差し込んでも良い。ピンは、積層される研磨シート13を貫通させた上で、積層体14の内周側の芯材11、11Aや保持部材12、12Aに差し込むことにより固定できる。
【0027】
また、例えば
図1(a)、
図3(a)または
図3(b)に示すように、積層体14、14Bを保持部材12、12Bまたは芯材11、11Bに固定するさらに他の方法として、芯材11、11Bの外周面上に巻き付けて積層される研磨シート13を、積層体14、14Bの外周側から押さえ部材(固定部材)15、15Bで押さえた上で、バンド(固定部材)16で締め付けても良い。あるいは、
図1(b)、
図4(a)または
図4(b)に示すように、芯材11、11Fの外周面上に巻き付けて積層される研磨シート13を、積層体14、14Fの外周側からリング(固定部材)17やストッパ(固定部材)18の爪18aで固定しても良い。なお、
図3(b)、
図4(a)および
図4(b)では、芯材11B、11Fと直交する方向における、芯材11B、11Fおよび積層体14B、14Fの断面形状が非円形である場合について図示しているが、これについては後述する。
【0028】
また、積層体14を保持部材12または芯材11に固定するさらに他の方法として、
図5に示すように、芯材11の外周面に研磨シート13の端部(始端)が差し込まれて係止される溝である係止部11gを形成しても良い。具体的には、研磨シート13の端部(始端)を芯材11の係止部11gに差し込んで係止した上で、芯材11の外周面上に、研削時の研磨具1の回転方向とは逆方向に巻き付けて、研削時の研磨具1の回転により研磨シート13が締め付けられるようにする。上記のとおり、研磨シート13を巻き付けながら、研磨シート13同士の合わせ面(積層面)に接着剤を塗布することが好ましい。研磨シート13の巻き終わりの最外周部においても、巻き付きが解れないように、研磨シート13同士の合わせ面(積層面)を接着する。さらに、研磨シート13を巻き付けた後の積層体14の外周形状に合ったリング17で、研磨シート13を外周側から挟み込んでも良い。図示を省略するが、
図3(a)、
図3(b)に示す研磨具1、1Bの芯材11、11Bの外周面にも、上記と同様に、係止部が形成されている。
【0029】
このように、上記の各固定方法を複数組み合わせて、積層体14、14Bを保持部材12、12A、12Bまたは芯材11、11A、11Bに固定することが好ましい。
【0030】
また、芯材11および積層体14は、芯材11の軸方向に見たときの形状、すなわち芯材11と直交する方向の断面形状が、必ずしも円形でなくても良い。芯材11に研磨シート13を巻き付けることによって構成される積層体14の断面形状は、芯材11の形状に応じて変わるため、例えば
図3(b)、
図4(a)、
図4(d)および
図6(a)~(d)に示すように、芯材11B~11Fの断面形状を三角形、楕円形、多角形、波状等として、積層体14B~14Fの断面形状を同様に変化させることができる。
【0031】
積層体14の断面形状が円形である場合には、研磨具1の回転軸を鋼材Wに対して垂直にして回転させると、鋼材Wの表面において積層体14の研削面が接触する領域の境目(エッジ)で段差が生じてしまう。この場合、
図7(b)に示すように、研磨具1Aの回転軸を傾けると、
図7(b)を左側から見た状態を
図7(a)に示すように、研削面の断面は楕円の一部と直線で構成されるため、鋼材Wの表面に対して垂直な段差をなくすことができる。ただし、研削面の研削幅と研削深さは、楕円の長半径と短半径の比率で決まるため、目的の研削深さに合わせた研削幅で研削加工する必要がある。このとき、鋼材Wを広い幅で研削したい場合は、研磨具1の回転軸の傾斜を1度から10度程度とし、鋼材Wを部分的に狭い幅で研削したい場合は、研磨具1の回転軸の傾斜を50度程度まで傾けてもよい。
【0032】
これに対し、
図3(b)および
図6(a)~(d)に示すように、積層体14B~14Fの断面形状を非円形にすることで、研磨具1B~1Fの回転中は、鋼材Wの表面において積層体14B~14Fの研削面が接触する領域の境目が常時変化して、研削部分の周縁に段差が生じるのを防ぐことができる。特に鋼材Wを広い幅で研削したい場合などで、滑らかな研削面を得ることができる。研磨具1の回転軸を鋼材Wに対して垂直にして回転させる方法は、研磨具1全面が鋼材Wに当接して研削の火花が全周に飛び散ったり、回転の反力が一方向ではないため旋回力となって研削機2が振り回されたりするため、通常の人手作業に用いるよりも自動機械による研削手段として用いることが好ましい。積層体14B~14Fの断面形状が非円形の場合でも、研削面全面が当接することを避けるべく、切削幅と切削深さの比率を踏まえながら、研磨具1B~1Fの回転軸を傾斜させても構わない。
【0033】
また、
図1(a)および
図1(b)に示すように、芯材11の軸方向の高さ11hは、同方向における積層体14の高さ14h、すなわち芯材11に巻き付けられる研磨シート13の幅より低いことが好ましい。芯材11の軸方向の高さ11hを、積層体14の高さ14hより低くすることにより、
図8に示すように、積層体14が摩耗して高さが低くなった場合でも、芯材11が鋼材Wの表面に当たって傷が付くことを防止できる。
【0034】
特に、芯材11の軸方向の高さ11hは、同方向における積層体14の高さ14hの3分の1以上2分の1以下であることが好ましい。芯材11の軸方向の高さ11hが、積層体14の高さ14hの3分の1未満である場合は、芯材11が低すぎて研磨シート13を巻き付けることが難しくなり、2分の1より大きい場合は、研磨シート13が摩耗したときに芯材11が鋼材Wの表面に当たるおそれが高まるためである。
【0035】
また、芯材11の軸方向の高さを同方向の積層体14の高さより低くすることに代えて、もしくは低くすることに加えて、研磨シート13、積層体14とともに摩耗する材料、例えば樹脂等により、芯材11を構成することが好ましい。これにより、鋼材Wの表面との摩擦で芯材11を摩耗させることができ、芯材11が鋼材Wの表面に当たって鋼材Wの表面が傷つくことを抑制できる。
【0036】
本実施形態の研磨方法は、上述の研磨具1、1A~1Fを、芯材11、11A~11Fを中心として回転させながら、積層体14、14A~14Fの保持部材12、12Bとは反対側の側面を研磨対象物Wの表面に接触させることにより、研磨対象物Wの表面を研削するものである。
【符号の説明】
【0037】
1、1A~1F 研磨具
11、11A~11F 芯材
11a 貫通孔
11g 係止部
11h 芯材の高さ
11s 雄ねじ部
12、12B 保持部材
12a 貫通孔
13 研磨シート
13A 積層体
14、14A~14F 積層体
14h 積層体の高さ
15、15B 押さえ部材(固定部材)
16 バンド(固定部材)
17 リング(固定部材)
18 ストッパ(固定部材)
2 研削機
21 回転部
22 止めボルト
W 鋼材(研磨対象物)