(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ヒートシールシート、および滅菌包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20231108BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20231108BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20231108BHJP
D21H 19/22 20060101ALI20231108BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20231108BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20231108BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231108BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B7/02
B32B7/06
D21H19/22
D21H19/10 A
B32B27/28 101
B32B27/30 A
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020177020
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】萬道 律雄
(72)【発明者】
【氏名】久保 直樹
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/107025(WO,A1)
【文献】特開2006-212835(JP,A)
【文献】特開2003-136752(JP,A)
【文献】特開平07-205556(JP,A)
【文献】特開2001-122348(JP,A)
【文献】特開2019-166716(JP,A)
【文献】特開2020-142399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D21B 1/00- 1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00- 9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00- 7/00
B65D 65/00-65/46
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性基材と、前記通気性基材の一方の面に位置する熱接着層とを備え、前記熱接着層は、オレフィン系ヒートシール剤と、脂肪酸カルシウムとを含み、前記脂肪酸カルシウムの含有量が、前記オレフィン系ヒートシール剤100質量部に対して、1~200質量部であり、JIS P 8121:2012に準じて測定される王研式透気度が700秒以下であるヒートシールシート。
【請求項2】
前記脂肪酸カルシウムが、ステアリン酸カルシウムを含む請求項1に記載のヒートシールシート。
【請求項3】
前記熱接着層が、さらにエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を前記オレフィン系ヒートシール剤100質量部に対して、5~25質量部含有する請求項1または2のいずれか一項に記載のヒートシールシート。
【請求項4】
前記通気性基材がポリアクリルアミド樹脂を含む請求項1~3のいずれか一項に記載のヒートシールシート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヒートシールシートを少なくともその一部として有する滅菌包装体。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヒートシールシートの前記熱接着層の少なくとも一部と、他の基材の少なくとも一部とを重ね合わせて熱圧着させた熱接着部を有する滅菌包装体。
【請求項7】
前記熱接着部をJIS P 8113:2006に準じて剥離速度300mm/分で剥離する際の180°剥離強度が1.0~15N/15mmである請求項6に記載の滅菌包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシールシート、および滅菌包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
手術や治療などに使用する器具類は、滅菌包装体に収納された状態で使用前に滅菌される。病院などで実施される滅菌方法は、例えば、メスや鉗子などの被滅菌物を滅菌包装体内に密封した後に、ガス滅菌法、高圧蒸気滅菌法、放射線滅菌法などを用いる。ガス滅菌法は、滅菌包装体を収容した耐圧容器内を減圧した後に、エチレンオキサイドガス(EOG)などを容器内に満たし、それによって、滅菌包装体内にガスを浸透させて滅菌する。高圧蒸気滅菌法は、オートクレーブなどを用いて滅菌包装体を高温の蒸気に曝し、減圧と加圧とを繰り返して滅菌する。放射線滅菌法は、滅菌包装体に放射線を照射して滅菌する。これらの滅菌方法のうち、滅菌に要するコストが低いこと、および、滅菌に要する作業が簡便であることから、高圧蒸気滅菌法、および、ガス滅菌法が広く用いられている。
【0003】
一方、被滅菌物を収納した滅菌包装体は、手術などに使用されるまで保管され、手術などに使用される際に開封される。そのため、手袋を装着した医師や施術者でも開封しやすいように、滅菌包装体は、裏表で二枚の矩形のシートまたはフィルムなどの薄葉体を剥離可能に相互に接着したり、引き裂き開封し易い性質である易裂開性を有した薄葉体を用いたりする。開封に際しては、一般に、一方の薄葉体を他方の薄葉体から剥離するピールオープン方式や、二枚の薄様体を引き裂く引き裂き方式が採用される。
【0004】
上述した滅菌包装体の一例として、例えば、特許文献1~7に記載の構成が知られている。特許文献1に記載の滅菌包装体は、基紙の片面に熱可塑性樹脂層を備える。特許文献2に記載の滅菌包装体は、アルミン酸塩を含む基紙にアクリル酸系共重合体を塗工して得られる。特許文献3に記載の滅菌包装体は、基紙の表面に中空重合体顔料を含む熱可塑性樹脂層を備える。特許文献4に記載の滅菌包装体は、10秒以下の低透気度基紙に、ポリビニルアルコールを主成分とした含浸剤を含浸させて得られる。特許文献5に記載の滅菌包装体は、基紙の少なくとも片面に塗工層を備え、塗工層は主として架橋されたポリビニルアルコールであり、かつ、塗工後の乾燥重量で0.1g/m2以上6g/m2以下である。特許文献6に記載の滅菌包装体は、20秒以下の低透気度基紙に、アクリル系共重合体を主成分とした含浸剤を含浸させて得られる。特許文献7に記載の滅菌包装体は、基紙の片面にポリオレフィン系樹脂、無機系材料および界面活性剤を含んだ熱可塑性樹層を設けるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-122348号公報
【文献】特開平9-290808号公報
【文献】特開2010-196188号公報
【文献】特開2001-200493号公報
【文献】特開2004-84131号公報
【文献】特開2002-173900号公報
【文献】特開2008-105374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したピールオープン方式の滅菌包装体においてヒートシールシートから被着体が剥離されるとき、ヒートシールシートの基材破壊に起因した紙粉などが飛散する場合がある。基材破壊に起因した紙粉や塵(リント)などは、滅菌後の医療器具などの被滅菌物を再汚染させる要因となる。そのため、上述したピールオープン方式の滅菌包装体は、滅菌包装体からヒートシールシートを剥離しやすい性質であるイージーピール性を向上させて、ヒートシールシートの剥離時におけるリントの飛散を抑えることが求められる。イージーピール性を向上させる要求は、手術室内、および、手術室前室などの高いクリーン度を求められる医療現場において特に顕著となっている。本発明の目的は、ヒートシールシートのイージーピール性の向上を可能としたヒートシールシ-ト、および、滅菌包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は以下のような構成を有するものである。
(1)通気性基材と、前記通気性基材の一方の面に位置する熱接着層とを備え、前記熱接着層は、オレフィン系ヒートシール剤と、脂肪酸カルシウムとを含み、前記脂肪酸カルシウムの含有量が、前記オレフィン系ヒートシール剤100質量部に対して、1~200質量部であり、JIS P 8121:2012に準じて測定される王研式透気度が700秒以下であるヒートシールシート。
(2)前記脂肪酸カルシウムが、ステアリン酸カルシウムを含む(1)のヒートシールシート。
(3)前記熱接着層が、さらにエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を前記オレフィン系ヒートシール剤100質量部に対して、5~25質量部含有する(1)または(2)のヒートシールシート。
(4)前記通気性基材がポリアクリルミド樹脂を含む(1)~(3)のいずれかのヒートシールシート。
(5)(1)~(4)のいずれか一項に記載のヒートシールシートを少なくともその一部として有する滅菌包装体。
(6)(1)~(4)のいずれかのヒートシールシートの前記熱接着層の少なくとも一部と、他の基材の少なくとも一部とを重ね合わせて熱圧着させた熱接着部を有する滅菌包装体。
(7)前記熱接着部をJIS P 8113:2006に準じて剥離速度300mm/分で剥離する際の180°剥離強度が1.0~15N/15mmである(6)の滅菌包装体。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】滅菌包装体の一実施形態における断面構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0009】
S…空間、11…滅菌包装体、21…ヒートシールシート、22…通気性基材、23…熱接着層、31…被着体、31E…一端部。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ヒートシールシート、および、滅菌包装体の一実施形態について
図1を参照して説明する。
[滅菌包装体]
滅菌包装体11は、ヒートシールシート21と被着体31とを備える。ヒートシールシート21は、通気性基材22と、通気性基材22の一方の面に位置する熱接着層23とを備える。
【0011】
被着体31は、例えば、包装紙、ラミネート紙、フィルム、滅菌用成形容器などである。
被着体31を構成する材料は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・アクリル共重合樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類の樹脂である。また、これら樹脂とその他材料が積層した複合材料で被着体31構成してもよい。
被着体31を構成する材料は、相互に異なる2種類以上の樹脂が混合されていてもよい。
被着体31は、相互に異なる2種類以上の樹脂が別々の層を構成する積層体としても具体化できる。
【0012】
滅菌包装体11は、熱接着部11Eを備える。
熱接着部11Eは、ヒートシールシート21と被着体31とが相互に熱接着された環状を有する。
【0013】
滅菌包装体11は、ヒートシールシート21と被着体31との間に、熱接着部11Eで囲まれた空間Sを備える。滅菌包装体11が備える空間Sは、医療器具などの被滅菌物を収容するための空間である。滅菌包装体11は、例えば、空間Sのなかに被滅菌物を収容し、その状態で、オートクレーブ、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌、電子線滅菌、γ線滅菌などの滅菌処理を施される。滅菌された被滅菌物が使用される際には、ヒートシールシート21から離間した被着体31の一端部31Eが、通気性基材22に対して引き上げられ、被着体31がヒートシールシート21から剥離される。そして、空間Sが解放されて、滅菌包装体11の位置する空間に、被滅菌物が曝される。なお、熱接着層23は、被着体31の位置する通気性基材22の一方の面、および、その面とは反対側の面に形成できる。
[熱接着層23]
【0014】
熱接着層23は、オレフィン系ヒートシール剤と、脂肪酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種類とを含む。オレフィン系ヒートシール剤としては、各種のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等、または、これらの変性体である。具体的にはDICグラフィックス社製のディックシールEシリーズ、三井化学社製のケミパールシリーズ等を挙げることができる。
【0015】
上記脂肪酸カルシウムとしては、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、オクチル酸カルシウム等、またはこれら2種以上の混合物が挙げられる。また、本願の効果を損なわない範囲において、これら脂肪酸のマグネシウム塩、亜鉛塩等を併用することも可能である。
なかでもステアリン酸カルシウムは、供給量も安定しており、離型性も優れているため好ましく用いられる。
【0016】
熱接着層中のオレフィン系ヒートシール剤と脂肪酸カルシウムの使用比率は、オレフィン系ヒートシール剤100質量部に対して、1~200質量部、より好ましくは5~120質量部である。さらに好ましくは5~50質量部、更に好ましくは7~30質量部である。
【0017】
熱接着層中にはオレフィン系ヒートシール剤以外の熱接着性樹脂を併用することも可能である。オレフィン系ヒートシール剤以外の熱接着性樹脂の具体例としては、例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル単独重合体からなる群から選択される少なくとも1種類である。これらの熱接着性樹脂の中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体が、ヒートシール性向上効果とイージーピール性が得られやすいため好ましい。熱接着層にエチレン-酢酸ビニル共重合体を併用する場合、その使用量は上記オレフィン系ヒートシール剤100質量部に対して、5~25質量部であることがより好ましい。
熱接着層中には、本発明の効果を損なわない範囲でその他材料を含むことができる。具体的には、ロジン化合物、脂環系石油樹脂等のタッキファイヤー、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス等のワックス類、分散剤、保水剤、消泡剤等の助剤、各種無機顔料、有機顔料等が挙げられる。
【0018】
熱接着層23は、例えば、熱接着層塗料を通気性基材22の一方の面(図中の上面)に塗布し、塗布された熱接着層塗料の乾燥によって得られる。熱接着層塗料ヒートシール剤は、ヒートシール剤、脂肪酸カルシウム、その他材料と液体媒体を含む。なお、熱接着層は、通気性基材22の一方の面の他に、その面とは反対側の面に、他の熱接着層23を備えることも可能である。熱接着層塗料は、水系塗料でもよいし、溶剤系塗料でもよい。
【0019】
熱接着層の塗布方法は、各種公知の湿式塗布法を利用できる。例えば、抄紙機のオンマシンサイズプレス装置、トランスファーロールコーター(シムサイザー、ゲートロールコーターなど)、スプレー装置などを利用できる。また、オフマシン式装置では、一般的な塗工装置、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、シムサイザー、ゲートロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーターなどを利用できる。熱接着層塗料の乾燥設備は、設備の汚染を確実に抑制できる観点から、塗布面と接触しないエアードラーヤーや、赤外線ヒーターなどを利用することが好ましい。なお、熱接着層塗料の乾燥設備は、シリンダードライヤーによる塗布面直接接触方式を利用することも可能である。
【0020】
熱接着層塗料の塗布量は、例えば、0.1g/m2以上20g/m2以下、好ましくは、0.5g/m2以上10g/m2以下、さらに好ましくは、0.7g/m2以上5.0g/m2以下の範囲で調整される。熱接着層塗料の塗布量が0.1g/m2以上である場合、熱接着層23に求められる接着強度を確保することが可能となる。また、熱接着層塗料の塗布量が20g/m2以下である場合、滅菌包装体の滅菌処理において必要とされる通気性が確保される。
【0021】
熱接着層中にオレフィン系ヒートシール剤と脂肪酸カルシウムとを含有することで、被着体との十分な接着力と、通気性基材22と熱接着層23との間で、一方から他方を容易に剥離させて、滅菌包装体11の開封時にイージーピール性を向上させる。熱接着層23は、剥離後には被着体31に移り、それによって、熱接着層23が被着体31に位置すること、ひいては、ヒートシールシート21から被着体31が剥離されていることを容易に視認させる。
【0022】
[通気性基材22]通気性基材22は、たとえば紙基材と、必要に応じて設けられる下塗り層とを備える。紙基材は、パルプスラリーを含む抄紙原料の抄紙によって得られる。パルプスラリーに使用されるパルプは、例えば、木材パルプや非木材パルプである。木材パルプは、例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプからなる群から選択される少なくとも1種類である。木材パルプの蒸解方法や漂白方法は、特に限定されない。非木材パルプは、例えば、麻パルプ、ケナフパルプ、竹パルプからなる群から選択される少なくとも1種類である。パルプスラリーは、レーヨン繊維やナイロン繊維、その他の熱融着繊維など、パルプ繊維以外の材料を副資材として含むことが可能である。
【0023】
パルプスラリーは、パルプを水の存在下で叩解することによって得られる。パルプの叩解方法や、それに用いられる叩解装置は、例えば、叩解効率が高いダブルディスクリファイナー(DDR)が好適に使用される。パルプの叩解は、JIS P 8121-2:2012に準じて測定されるパルプのフリーネス(以下、「標準フリーネス」ともいう。)が250mL以上700mL以下となるように実施され、250mL以上600mL以下となるように行うことがより好ましく、300mL以上500mL以下となるように叩解を行うことがさらに好ましい。パルプの標準フリーネスが250mL以上である場合、紙の透気性を確保することが可能となる。また、パルプの標準フリーネスが250mL以下である場合、紙の強度を向上させて、イージーピール性を向上させることが可能となる。
【0024】
一般に、パルプの叩解と紙力の関係は、叩解をあまり進めない状態では、紙力は得られ難く、その理由としては、パルプ繊維同士のからみが弱く、繊維間結合(水素結合)のポイントも少ないためと考えられており、ある程度叩解を進めることで紙力は向上する。一方、叩解を進めると、パルプ繊維同士のからみが増え、繊維間結合のポイントが増えるため、紙力は得られるが繊維の空隙が減少し、紙基材の透気性が低下する。この点、パルプの標準フリーネスが250mL以上700mL以下の範囲であれば、紙基材ひいては通気性基材22の透気性を保ちつつも、紙力を充分に高くすることが可能であって、結果として、ヒートシールシート21のイージーピール適性をさらに向上させることが可能となる。
【0025】
叩解により得られたパルプスラリーは、例えば、各種の製紙用の内添薬品を添加されて調成された抄紙原料を使用することも可能である。内添薬品は、例えば、サイズ剤、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、硫酸バンド、カチオン化デンプンなどの各種の定着剤である。また、これらの他にも、内添薬品として、歩留向上剤、消泡剤、填料、着色剤などを、抄紙原料に対して任意に配合することも可能である。
【0026】
紙力増強剤は、例えば、ポリアクリルアミド樹脂、カチオン化デンプン、および、ポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種類を含む。これらの紙力増強剤のうち、ポリアクリルアミド樹脂系紙力増強剤を内添することによって、通気性基材の強度をより効果的に向上させて、イージーピール性をさらに高めることが可能となる。また、紙力増強剤の添加後に紙力増強効果を発現させるためには、質量平均分子量が200万(Mw)以上であることが好ましい。また、紙力増強剤を添加する操業上、適切な粘度が得られ、かつ、添加が容易であることから、質量平均分子量が1000万(Mw)以下であることが好ましい。なお、ポリアクリルアミド樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリエチレンオキシド換算値である。また、紙力増強剤としてのポリアクリルアミド樹脂は、例えば、アニオン性、カチオン性、両性、または、ノニオン性のポリアクリル樹脂を利用できるが、これらのなかで、両性のポリアクリルアミド樹脂を用いることが特に好ましい。サイズ剤は、例えば、アルケニルコハク酸、アルキルケテンダイマー、および、ロジンからなる群から選択される少なくとも1種類を含む。また、湿潤紙力増強剤は、例えば、エピクロル樹脂、および、メラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類を含む。
【0027】
通気性基材の少なくとも一方の面には、ポリアクリルアミド樹脂を含む塗布液である下塗り剤を塗布することも可能である。下塗り剤が塗布されることによって、さらにイージーピール性を高めることが可能となる。下塗り剤が通気性基材の一方の面のみに塗布される場合、下塗り剤が塗布されるのは、通気性基材の熱接着層23が設けられる側の面である。なお、下塗り剤は、通気性基材の一方の面、および、その面とは反対の面の両方に塗布されていてもよい。
【0028】
通気性基材22の紙基材は、例えば、調成された抄紙原料を定法で抄紙することによって得られる。なお、通気性基材22の坪量は、紙基材の坪量、および、下塗り剤の塗布量に応じて、適宜設定することが可能である。
【0029】
下塗り剤は、ポリアクリルアミド樹脂を含む。ポリアクリルアミド樹脂は、(メタ)アクリルアミド単位を繰り返す重合体である。(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド、および、メタクリルアミドの総称である。ポリアクリルアミド樹脂は、アクリルアミド単位、および、メタクリルアミド単位のいずれか一方を有してもよく、両方を有してもよい。ポリアクリルアミド樹脂は、(メタ)アクリルアミド単位以外の他の単位を有していてもよい。
【0030】
下塗り剤に含まれるポリアクリルアミド樹脂は、例えば、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂、カチオン性ポリアクリルアミド樹脂、両性ポリアクリルアミド樹脂、ノニオン性ポリアクリルアミド樹脂である。これらの下塗り剤は、製紙分野における紙力剤などとして使用される。ポリアクリルアミド樹脂は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。入手容易性の点では、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂が好ましい。
【0031】
アニオン性ポリアクリルアミド樹脂は、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、または、これらの塩などのアニオン性官能基を含む。アニオン性ポリアクリルアミド樹脂は、例えば、(メタ)アクリルアミドと、アクリル酸などのアニオン性官能基含有モノマーとの共重合体や、ポリ(メタ)アクリルアミドの部分加水分解物である。
【0032】
下塗り剤の含むポリアクリルアミド樹脂の質量平均分子量(Mw)は、5万以上200万以下であることが好ましく、5万以上50万以下であることがより好ましく、5万以上30万以下であることがさらに好ましい。下塗り層に含まれるポリアクリルアミド樹脂の質量平均分子量が5万以上200万以下であれば、被着体31の剥離による通気性基材22の表面での毛羽立ちを抑える効果がより優れる。質量平均分子量が5万以上であれば、熱接着層23が剥離する際の通気性基材22の表面での毛羽立ちを抑える効果が得られやすい。質量平均分子量が200万以下であれば、下塗り剤の塗布に必要とされる低粘度を充分に得られ、下塗り剤の調製、および、塗布が容易である。また、下塗り剤に含まれるポリアクリルアミド樹脂の濃度を所望の粘度範囲で高くすることもでき、所望の塗布量が得られやすい。なお、ポリアクリルアミド樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリエチレンオキシド換算値である。
【0033】
下塗り剤に含まれる液体媒体は、ポリアクリルアミド樹脂を溶解するものが好ましく、例えば、水である。下塗り剤は、イージーピール性を損なわない範囲で、ポリアクリルアミド樹脂以外の他の成分を含むことも可能である。他の成分は、例えば、水溶性高分子化合物、水性高分子化合物、離型剤、消泡剤、分散剤、濡れ剤、有色染料、有色顔料、白色顔料であり、これらはいずれか1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。水溶性高分子化合物は、例えば、デンプン、変性デンプン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩である。水性高分子化合物は、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体エマルション、アクリル酸エステル共重合体エマルション、ウレタン樹脂、尿素樹脂、スチレン-アクリル樹脂エマルション、エチレン-アクリル樹脂エマルションである。
【0034】
下塗り剤に含まれるポリアクリルアミド樹脂の含有量(濃度)は、下塗り剤のなかの総固形分(100質量%)に対し、50質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましい。ポリアクリルアミド樹脂の含有量が50質量%以上であれば、ヒートシールシート21のイージーピール適性をより高めることができる。総固形分は、下塗り剤から液体媒体を除いた全量であり、ポリアクリルアミド樹脂以外の他の成分が含まれる場合は、ポリアクリルアミド樹脂と他の成分との合計である。
【0035】
通気性基材に対する下塗り剤の塗布量は、下塗り剤に含まれるポリアクリルアミド樹脂の含有量に応じて適宜設定される。通気性基材のうちの熱接着層23が位置する側の面での下塗り剤の塗布量は、ポリアクリルアミド樹脂の量に換算して、0.05g/m2以上20g/m2以下であることが好ましく、0.1g/m2以上15g/m2以下であることがより好ましく、0.2g/m2以上10g/m2以下であることがさらに好ましい。ポリアクリルアミド樹脂の塗布量が0.05g/m2以上であれば、ヒートシールシート21から被着体31を剥離する際に、通気性基材22と熱接着層23とが良好に剥離し、この剥離による通気性基材22の表面での毛羽立ちや、通気性基材22の破壊が生じにくい。また、ポリアクリルアミド樹脂の塗布量が20g/m2以下であれば、ヒートシールシート21をヒートシールする際に、接着ムラを抑えることができ、例えば、通気性基材のうちの熱接着層23が位置する側の面の全体に対して略均一に塗布することができる。一方で、下塗り剤は、例えば通気性基材のうちの熱接着層23が設けられる側の面に、所定のパターンを有するように塗布されていてもよい。
【0036】
下塗り層の成分は、ポリアクリルアミド樹脂以外の他の成分を含むことも可能である。他の成分は、例えば、澱粉、ポリビニルアルコールやスチレンーブタジエン樹脂などの樹脂、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボンなどの顔料からなる群から選択される少なくとも1種類である。なお、一側面に塗布される下塗り剤に含まれるポリアクリルアミド樹脂は、例えば、他側面に塗布される下塗り剤に含まれるポリアクリルアミド樹脂と同様のものであってもよいし、相互に異なるものであってもよい。紙基材の他側面に下塗り剤を塗布する場合、下塗り剤の塗布量は、例えば、固形分量に換算して、0.01g/m2以上20g/m2以下であり、0.01g/m2以上5g/m2以下であることが好ましく、0.01g/m2以上3g/m2以下であることがより好ましく、0.1g/m2以上2g/m2以下であることがさらに好ましい。下塗り剤の塗布量が20g/m2以下であれば、ヒートシールシート21の透気性を良好に保つことができる。また、紙基材の他面における下塗り剤の塗布量をこのように調整することによって、紙基材の一面、他面、一面と他面との中間でのポリアクリルアミド樹脂の濃度を適切に調整することが容易となる。なお、紙基材の一面、および、他面のそれぞれに下塗り剤を塗布する場合、例えば、一面での塗布量と他面での塗布量との比を3:7~7:3とすることが好ましい。こうした塗布量の比によって、通気性基材のなかのポリアクリルアミド樹脂の濃度を、通気性基材の一面、および、他面においてこれらの中間よりも大きくすることがさらに容易となる。なお、ヒートシールシート21の製造コストを低減する観点からは、紙基材の他面に下塗り剤を塗布しない場合を好ましい態様の一例として採用することができる。
【0037】
下塗り剤の塗布方法は、各種公知の湿式塗布法を利用できる。下塗り剤の塗布方法は、例えば、抄紙機のオンマシンサイズプレス装置、トランスファーロールコーター(シムサイザー、ゲートロールコーターなど)、スプレー装置などを利用できる。また、オフマシン式装置では、一般的な塗工装置、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、シムサイザー、ゲートロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーターなどを利用できる。操業性や生産性を高められる観点では、下塗り剤の塗布および乾燥は、オンマシン式を利用することが好ましい。紙基材を抄紙する抄紙機の形式は、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機など、オンマシンで塗工機が装備されているものが好ましい。通気性基材22のなかのポリアクリルアミド樹脂の含有量は、例えば、1.0質量%以上30質量%以下である。
【0038】
通気性基材22の坪量は、例えば、30g/m2以上であることが好ましく、40g/m2以上であることがより好ましく、45g/m2以上であることがさらに好ましい。通気性基材22の坪量が30g/m2以上であれば、通気性基材22から被着体31を剥離することに耐えうる強度が通気性基材22で得られやすく、剥離時の通気性基材22での破壊が起こりにくい。また、ピンホールの発生も抑えられるため、バクテリアバリア性の観点からも好ましい。
【0039】
通気性基材22の坪量の上限は特に限定されないが、滅菌処理時の通気性を得られる観点から、300g/m2以下であることが好ましく、250g/m2以下がより好ましく、200g/m2以下がさらに好ましい。通気性基材22、および、紙基材の坪量は、例えばJIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0040】
通気性基材22の密度は、例えば、0.60g/cm3以上1.20g/cm3以下であることが好ましく、0.70g/cm3以上1.10g/cm3以下であることがより好ましい。通気性基材22の密度が0.60g/cm3以上であれば、イージーピールに耐えうる強度が得られやすく、剥離時の通気性基材22での破壊が起こりにくい。通気性基材22の密度が1.20g/cm3であれば、透気性を保つことができる。通気性基材22の密度は、例えばJIS P 8118:1998に準拠して厚さを測定して、厚さと坪量の測定値から計算で求められる。
【0041】
ヒートシールシート21は、JIS P 8117:2009に準じて測定される王研式透気度が、例えば、700秒以下であることが好ましく、500秒以下であることがより好ましく、300秒以下であることが特に好ましい。この範囲の王研式通気度を有するヒートシールシート21であれば、ヒートシールシート21の透気性を効果的に向上させることができる。一方で、王研式透気度の下限値は、例えば、5秒とすることができる。なお、ヒートシールシート21の王研式透気度は、例えば、パルプのフリーネス、通気性基材22の坪量、下塗り剤の塗布量などを適切に選択することによって調整できる。
【0042】
熱接着層23の表面であるヒートシールシート21の熱接着面は、JIS P 8155:2010に準拠して測定される王研式平滑度として、例えば、50秒以上であることが、シール強度のバラツキを小さくし、短時間の加熱にも対応できるため好ましい。熱接着面の平滑度の調整方法は、通気性基材22に各種公知の方法で平滑化処理を施してもよいし、熱接着層23を形成した後に平滑化処理を施すこともできる。
【0043】
ヒートシールシート21と被着体31を熱接着して得られる滅菌包装体11は、被着体31をJIS P 8113:2006に準じて剥離速度300mm/分で180°剥離する際の剥離強度は、例えば1.0N/15mm以上15N/15mm以下に調整されることが好ましい。この範囲での剥離強度を有したヒートシールシート21であれば、イージーピール性と熱接着力とのバランスに非常に優れた滅菌包装体11が得られる。また、イージーピール性と熱接着力のバランスをより効果的に向上させる観点からは、剥離強度が2.0N/15mm以上7.0N/15mm以下であることがより好ましい。なお、剥離強度は、例えば、熱接着層23の種類や塗布量などを選択することによって適切に調整できる。
【0044】
[作用]ヒートシールシート21は、熱接着層23のなかにオレフィン系ヒートシール剤と脂肪酸カルシウムを特定の比率で含むことによって、イージーピール性に優れる。例えば、ヒートシールシート21をフィルム状の被着体31に熱接着した後、被着体31からヒートシールシート21を剥離する際に、熱接着層23が被着体31に付着したまま、通気性基材22との界面から剥離しやすく、通気性基材22が破れにくい。また、熱接着層23が剥離したときに通気性基材22の表面の毛羽立ちや、通気性基材22の表面からの紙片の剥離が生じにくい。さらに、被着体31に熱接着層23が視認できるため、剥離前に一様に接着していたことが容易に確認できる。また、通気性基材22が破れにくいため、ヒートシールシート21を被着体31からイージーピール方式で剥離する際に、被着体31の全体を一度にヒートシールシート21から剥離できる。そして、毛羽立ちや紙片の剥離が抑制されているため、毛羽立った部分から脱落したリントや剥離した紙片が被着体31や被収容物に付着することを防止できる。結果として、剥離時の毛羽立ちを抑制し、クリーン度の高い手術室内で使用することが可能なヒートシールシート21を提供することができる。
【0045】
滅菌包装体11の滅菌方法は、オートクレーブ、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌、γ線滅菌などのいくつか滅菌方法が挙げられるが、特にEOG滅菌は滅菌後のガス置換を実施する必要がある。ヒートシールシート21は、通気性基材22の製造に使用するパルプのフリーネスや通気性基材22の坪量によって、透気性も優れたものとすることができる。そして、ヒートシールシート21の透気性を高くし、それによって、滅菌後の滅菌ガスを空気に置換する時間を短縮できる。このため、EOG滅菌に特に好適なヒートシールシート21の実現が可能となる。このように、ヒートシールシート21は、イージーピール性と透気性とのバランスに優れた、実用上極めて有用なものである。
【0046】
以上、ヒートシールシート21は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成、および、それらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、および、その他の変更が可能である。例えば、ヒートシールシート21の通気性基材22と、熱接着層23との間に他の層を有してもよい。他の層としては、例えば、水蒸気バリア層、酸素バリア層、印刷層、印刷適性向上層、オーバープリント層、遮光層である。通気性基材22と熱接着層23との間に位置する他の層は、1層でもよく、2層以上でもよい。なお、透気度や剥離強度が本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、通気性基材22の両面に印刷層を有してもよい。印刷層上にさらにオーバープリント層を有してもよい。
【実施例】
【0047】
上記実施形態の一例である実施例を以下に説明する。
<実施例1>[通気性基材22の製造]JIS P 8121-2:2012に記載されるカナダ標準ろ水度(フリーネス)が400mLになるように、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)をダブルディスクリファイナー(DDR)によって叩解してパルプスラリーを得た。次いで、パルプスラリーに内添薬品を添加して抄紙原料を得た。内添薬品は、パルプ質量に対する絶乾での添加量として、0.5%の硫酸バンド、あらかじめカチオン化澱粉(ピラー3YK、ピラースターチ社製)で分散させた0.05%のアルケニルコハク酸サイズ剤(ファイブラン81K,ナショナルスターチ社製)、0.7%の両性ポリアクリルアミド系樹脂紙力増強剤(PAM)(商品名:ポリストロンOFT-3、荒川化学工業社製、質量平均分子量300万)、0.4%のポリアミン-ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂湿潤紙力増強剤(WS4024、星光PMC社製)である。次いで、抄紙原料を長網抄紙機で抄紙して原紙を得た後に、抄紙機に付設されたオンマシンカレンダーにて、JIS P 8155:2010に準拠して測定される原紙表面の王研式平滑度を100秒に調整して、坪量が60g/m2であり、密度が0.8g/cm3である実施例1の通気性基材22を得た。
【0048】
[ヒートシールシート21の製造]オレフィン系ヒートシール剤(商品名:ディックシールE-806LV、DICグラフィックス社製、固形分濃度37質量%)243.2質量部、脂肪酸カルシウムエマルション(商品名:エルビーコートLBK-222、東邦化学工業社製、固形分濃度55%)18.2質量部、水138.6質量部を混合撹拌して固形分濃度25%のヒートシール層塗料を得た。次いで、実施例1の通気性基材22の片面に、バーコーターを用いて、乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるように、ヒートシール層塗料を塗布、および、乾燥して、実施例1の熱接着層23を形成した。これによって、実施例1の通気性基材22と、実施例1の熱接着層23とを備えるヒートシールシート21を得た。
【0049】
<実施例2>実施例1のヒートシールシート21の製造において、実施例1のオレフィン系ヒートシール剤(商品名:ディックシールE-806LV、DICグラフィックス社製、固形分濃度37質量%)の使用量を189.2質量部、脂肪酸カルシウムエマルション(商品名:エルビーコートLBK-222、東邦化学工業社製、固形分濃度55%)54.5質量部、水156.3質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のヒートシールシート21を製造した。
【0050】
<実施例3>実施例1ヒートシールシート21の製造において、実施例1のオレフィン系ヒートシール剤(商品名:ディックシールE-806LV、DICグラフィックス社製、固形分濃度37質量%)の使用量を135.1質量部、脂肪酸カルシウムエマルション(商品名:エルビーコートLBK-222、東邦化学工業社製、固形分濃度55%)91.0質量部、水174.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のヒートシールシート21を製造した。
<実施例4>実施例1ヒートシールシート21の製造において、実施例1のオレフィン系ヒートシール剤(商品名:ディックシールE-806LV、DICグラフィックス社製、固形分濃度37質量%)の使用量を97.3質量部、脂肪酸カルシウムエマルション(商品名:エルビーコートLBK-222、東邦化学工業社製、固形分濃度55%)116.4質量部、水186.3質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4のヒートシールシート21を製造した。
<実施例5>実施例1の通気性基材22の製造において、抄紙原料を長網抄紙機で抄紙して原紙を得た後に、抄紙機に付設された2ロールサイズプレス塗工装置により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂(商品名:ポリマセット512、荒川化学工業社製、質量平均分子量20万)を希釈水で固形分濃度5%に調整した下塗り液を塗布・乾燥後の塗布量が両面の合計で1.5g/m2となるように塗布・乾燥後に抄紙機に付設されたオンマシンカレンダーにて、JIS P 8155:2010に準拠して測定される原紙表面の王研式平滑度を100秒に調整して、坪量が60g/m2であり、密度が0.8g/cm3である実施例4の通気性基材22を得た。
得られた通気性基材22上に、オレフィン系ヒートシール剤(商品名:ディックシールE-806LV、DICグラフィックス社製、固形分濃度37質量%)の使用量を248.6質量部、脂肪酸カルシウムエマルション(商品名:エルビーコートLBK-222、東邦化学工業社製、固形分濃度55%)14.5質量部、水136.9質量部を混合撹拌して得られたヒートシール層塗料をバーコーターを用いて、乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるように塗布・乾燥した以外は実施例1と同様にして、実施例5のヒートシールシート21を製造した。
<実施例6>実施例5のヒートシールシート21の製造において、実施例4のオレフィン系ヒートシール剤(商品名:ディックシールE-806LV、DICグラフィックス社製、固形分濃度37質量%)の使用量を264.9質量部、脂肪酸カルシウムエマルション(商品名:エルビーコートLBK-222、東邦化学工業社製、固形分濃度55%)3.6質量部、水131.5質量部とした以外は、実施例5と同様にして、実施例6のヒートシールシート21を製造した。
<実施例7>実施例1のヒートシールシート21の製造において、ヒートシール層塗料を実施例1のオレフィン系ヒートシール剤(商品名:ディックシールE-806LV、DICグラフィックス社製、固形分濃度37質量%)の使用量を189.2質量部、脂肪酸カルシウムエマルション(商品名:エルビーコートLBK-222、東邦化学工業社製、固形分濃度55%)31.1質量部、エチレン-酢酸ビニル共重合体ディスパージョン(商品名:ケミパールV200、三井化学工業社製、固形分濃度40%)32.2質量部、水147.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例7のヒートシールシート21を製造した。
【0051】
<比較例1>実施例1のヒートシールシート21の製造において、実施例1の脂肪酸カルシウムエマルションを割愛し、オレフィン系ヒートシール剤(商品名:ディックシールE-806LV、DICグラフィックス社製、固形分濃度37質量%)の使用量を270.3質量部、水129.7質量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の滅菌紙を製造した。
【0052】
<比較例2>実施例1のヒートシールシート21の製造において、実施例1のオレフィン系ヒートシール剤(商品名:ディックシールE-806LV、DICグラフィックス社製、固形分濃度37質量%)の使用量を81.1質量部、脂肪酸カルシウムエマルション(商品名:エルビーコートLBK-222、東邦化学工業社製、固形分濃度55%)127.3質量部、水191.6質量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2のヒートシールシート21を製造した。
【0053】
<評価>実施例1~7、および、比較例1~2の各ヒートシールシートについて以下の評価を行った。各ヒートシールシートの構成を表1、ヒートシールおよび剥離特性評価の結果を表2に示す。
【0054】
【表1】
[王研式透気度の測定]各滅菌紙の王研式透気度をJIS P 8117:2009に準じて測定した。
[被着体との接着]厚さ12μmのPET基材の片面に厚さ50μmのポリエチレン層が積層された被着シートを作製し、被着体31を得た。ポリエチレン層を形成するポリエチレンとして、ジェイフィルム社製IMX-L-Aを用いた。ヒートシールについては、ヒートシールシートの熱接着層側の面がポリエチレン樹脂側と接するように重ねて、熱プレス試験機を用い、150℃、0.2MPa、1.0秒間の熱接着条件で熱圧し、それによって、各ヒートシールシートを有する滅菌包装体を得た。
【0055】
[剥離強度の測定、剥離痕の確認および、通気性基材の破壊状態の評価]幅が15mm、長さが100mmの測定クリアランスに対応できるように各滅菌包装体を断裁して、剥離強度測定用サンプルを作成した。各剥離強度測定用サンプルの剥離強度(N/15mm)をJIS P 8113:2006に準じて測定した。この際、引張試験機(型式:テンシロンRTC-1250A、オリエンテック社製)を用い、PETとPEとの複合フィルムの一端部31Eと、ヒートシールシートの一端部とをチャッキングし、180度ピール法で剥離速度300mm/分で測定した。
また、剥離強度の測定の際に、ヒートシールシート21の基材破壊の状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:ヒートシールシート21に基材破壊が認められなかった。
△:ヒートシールシート21の剥離部分に膨れがわずかに見られた。
×:ヒートシールシート21に基材破壊が認められた。
さらに剥離後に被着シートの剥離痕の状態を確認し、以下の基準で評価した。
〇:被着シートの剥離痕が容易に視認できた。
×:被着シートの剥離痕が容易に確認できなかった。
【0056】
【0057】
上記結果に示す通り、実施例1~7のヒートシールシート21は、剥離試験での剥離強度が1.02N/15mm以上6.87N/15mm以下であり、また、剥離試験時に滅菌紙21の基材破壊が認められず、被着シート上の剥離痕も容易に視認できた。これらの結果から、イージーピール適性に優れることが確認できた。一方で、比較例1のヒートシールシート21は基材破壊が認められた。また、比較例2のヒートシールシート21については基材破壊は認められなかったものの、剥離強度が0.5N/15mmまでも満たず、ヒートシールシートとして機能するものではなかった。
【0058】
以上、上記実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)熱接着層23中にオレフィン系ヒートシール剤と脂肪酸カルシウムを特定の比率で使用することにより、ヒートシールシート21と被着体31とをヒートシールした際に十分なシール強度が得られ、且つ剥離時は通気性基材22と熱接着層23との間で、一方から他方を容易に剥離させる。結果として、ヒートシールシート21に被着体31が熱接着された滅菌包装体では、滅菌包装体の開封時に、イージーピール性を向上させることが可能となる。
【0059】
(2)熱接着層23は、剥離後には通気性基材22から被着体31に移り、それによって、熱接着層23が被着体31に位置すること、ひいては、ヒートシールシート21から被着体31が剥離されていることを剥離痕として容易に視認させることが可能となる。
【0060】
(3)通気性基材22にポリアクリルアミド樹脂の下塗りを設けることで、材破防止効果が高まり、さらに高い接着強度と、イージーピール性の発現との両立が可能ともなる。
【0061】
(4)熱接着層23にエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を特定量併用することで、さらに高い接着強度と、イージーピール性の発現との両立が可能ともなる。