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特許7380527ダメージ推定装置、及びダメージ推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ダメージ推定装置、及びダメージ推定方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
F02D45/00 360A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020188005
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077241
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 宏
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-208649(JP,A)
【文献】特開2013-108416(JP,A)
【文献】特開2013-245600(JP,A)
【文献】特開2016-194278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 43/00 ー 45/00
G01M 15/00 ー 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給器を備えた内燃機関の吸気通路に流れる空気を冷却する水冷式のインタークーラに蓄積された疲労の度合いを推定するダメージ推定装置であって、
前記インタークーラに流入する空気の温度である流入空気温度が上昇している期間内における流入空気温度の変化量である温度変化量及び当該期間の時間的な長さである期間長を取得する取得部と、
前記期間内における前記インタークーラの歪みの度合いである歪み量を、前記温度変化量が大きいほど値が大きくなるように導出する歪み量導出部と、
前記歪み量に応じた値を積算することにより、前記インタークーラに蓄積された疲労の度合いである蓄積ダメージ値を導出するダメージ値導出部と、を備え、
前記歪み量導出部は、前記温度変化量に加え、吸入空気量、前記インタークーラに供給される冷却水の温度、及び、当該インタークーラへの冷却水の供給量を基に、前記歪み量を導出し、且つ、前記期間長が、前記流入空気温度の変化速度がゆっくりであるか否かの判断基準として設定されている期間長判定値未満である場合、前記期間長が前記期間長判定値以上である場合と比較して大きい値を前記歪み量として導出する
ダメージ推定装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記流入空気温度が降下している期間内における流入空気温度の変化量である温度変化量及び当該期間の時間的な長さである期間長を取得し、
前記歪み量導出部は、前記流入空気温度が降下している期間内における前記インタークーラの前記歪み量を、当該期間内における前記温度変化量が大きいほど値が大きくなるように導出する
請求項1に記載のダメージ推定装置。
【請求項3】
前記歪み量導出部は、
前記期間長が前記期間長判定値未満である場合、当該期間長が短いほど大きい値を前記歪み量として導出し、
前記期間長が前記期間長判定値以上である場合、所定値を前記歪み量として導出する
請求項1又は請求項2に記載のダメージ推定装置。
【請求項4】
前記ダメージ値導出部は、前記歪み量を、歪みの発生に起因する前記インタークーラの疲労の度合いである歪みダメージ値に変換する変換処理を実行し、前記歪みダメージ値を積算することにより、前記蓄積ダメージ値を導出するようになっており、
前記ダメージ値導出部は、前記変換処理において、
前記歪み量が、疲労が溜まるような大きさの歪みが前記インタークーラで発生したか否かの判断基準として設定されている歪み量判定値よりも大きい場合には、当該歪み量が大きいほど大きい値を前記歪みダメージ値として導出し、
前記歪み量が前記歪み量判定値以下である場合には、「0」を前記歪みダメージ値として導出する
請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載のダメージ推定装置。
【請求項5】
前記蓄積ダメージ値が閾値よりも大きい場合、通知を行う通知処理部を備える
請求項1~請求項4のうち何れか一項に記載のダメージ推定装置。
【請求項6】
過給器を備えた内燃機関の吸気通路を流れる空気を冷却するインタークーラに蓄積された疲労の度合いを推定するダメージ推定方法であって、
コンピュータが、
前記インタークーラに流入する空気の温度である流入空気温度が上昇している期間内における流入空気温度の変化量である温度変化量及び当該期間の時間的な長さである期間長を取得する期間情報取得処理と、
前記期間内における前記インタークーラの歪みの度合いである歪み量を、前記期間情報取得処理で取得した前記温度変化量が大きいほど値が大きくなるように導出する歪み量導出処理と、
前記歪み量導出処理で導出した前記歪み量に応じた値を積算することにより、前記インタークーラに蓄積された疲労の度合いである蓄積ダメージ値を導出するダメージ値導出処理と、を実行し
前記歪み量導出処理では、前記コンピュータは、前記温度変化量に加え、吸入空気量、前記インタークーラに供給される冷却水の温度、及び、当該インタークーラへの冷却水の供給量を基に、前記歪み量を導出し、且つ、前記期間長が、前記流入空気温度の変化速度がゆっくりであるか否かの判断基準として設定されている期間長判定値未満である場合、前記期間長が前記期間長判定値以上である場合と比較して大きい値を前記歪み量として導出する
ダメージ推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に蓄積された疲労の度合いを推定するダメージ推定装置及びダメージ推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スタータモータ及びバッテリの劣化状態を診断する診断装置の一例が記載されている。この診断装置は、スタータモータの駆動による内燃機関の始動時におけるバッテリ電圧に関する情報、スタータモータへの通電時間に関する情報及び機関回転速度に関する情報を基に、スタータモータ及びバッテリの劣化状態を診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-12996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸入通路を流れる空気を冷却するインタークーラなどの冷却装置の疲労の蓄積量が多くなると、冷却装置の交換又はメンテナンスが必要となる。冷却装置の交換又はメンテナンスを適切な時期に行うためには、冷却装置に蓄積された疲労の度合いを推定する必要がある。しかしながら、特許文献1には、冷却装置に蓄積された疲労の度合いを推定することについて何ら開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのダメージ推定装置は、過給器を備えた内燃機関の吸気通路に流れる空気を冷却する水冷式のインタークーラに蓄積された疲労の度合いを推定する装置である。このダメージ推定装置は、前記インタークーラに流入する空気の温度である流入空気温度が上昇している期間内における流入空気温度の変化量である温度変化量及び当該期間の時間的な長さである期間長を取得する取得部と、前記期間内における前記インタークーラの歪みの度合いである歪み量を、前記温度変化量が大きいほど値が大きくなるように導出する歪み量導出部と、前記歪み量に応じた値を積算することにより、前記インタークーラに蓄積された疲労の度合いである蓄積ダメージ値を導出するダメージ値導出部と、を備えている。そして、前記歪み量導出部は、前記温度変化量に加え、吸入空気量、前記インタークーラに供給される冷却水の温度、及び、当該インタークーラへの冷却水の供給量を基に、前記歪み量を導出し、且つ、前記期間長が、前記流入空気温度の変化速度がゆっくりであるか否かの判断基準として設定されている期間長判定値未満である場合、前記期間長が前記期間長判定値以上である場合と比較して大きい値を前記歪み量として導出する。
【0006】
流入空気温度が上昇している期間では、インタークーラ内で温度分布が生じるため、インタークーラで歪みが発生する。こうした歪みの積み重ねによって、インタークーラの疲労が蓄積されていく。また、インタークーラの歪みの度合いは、上記の期間内における温度変化量が大きいほど大きくなる。さらに、上記の期間内での温度変化量が同じであっても流入空気温度の変化速度が高いほど、歪みの度合いが大きくなる。
【0007】
上記構成によれば、流入空気温度が上昇する期間では、当該期間での流入空気温度の上昇量が温度変化量として導出される。そして、当該温度変化量だけではなく、期間長も考慮して歪み量が導出される。これにより、歪みの発生に起因するインタークーラの疲労の蓄積速度が大きいほど、大きい値を歪み量として導出できる。そして、当該歪み量に応じた値を積算することにより、蓄積ダメージ値が導出される。これにより、インタークーラに蓄積された疲労の度合いを推定できるようになる。
【0008】
上記ダメージ推定装置の一態様において、前記取得部は、前記流入空気温度が降下している期間内における流入空気温度の変化量である温度変化量及び当該期間の時間的な長さである期間長を取得し、前記歪み量導出部は、前記流入空気温度が降下している期間内における前記インタークーラの前記歪み量を、当該期間内における前記温度変化量が大きいほど値が大きくなるように導出する。
【0009】
流入空気温度が降下している期間でも、インタークーラ内で温度分布が生じるため、インタークーラで歪みが発生する。また、インタークーラの歪みの度合いは、流入空気温度が降下している期間内における温度変化量が大きいほど大きくなる。さらに、流入空気温度が降下している期間内での温度変化量が同じであっても流入空気温度の変化速度が高いほど、歪みの度合いが大きくなる。
【0010】
上記構成によれば、流入空気温度が降下する期間では、当該期間での流入空気温度の降下量が温度変化量として導出される。そして、流入空気温度が降下している期間内におけるインタークーラの歪み量が、当該期間内における温度変化量及び期間長を考慮して導出される。その結果、流入空気温度が上昇する期間内での歪み量に加え、流入空気温度が降下する期間における歪み量も用いて蓄積ダメージ値を導出できる。したがって、インタークーラに蓄積された疲労の度合いの推定精度を高くできる。
【0011】
上記ダメージ推定装置の一態様において、前記歪み量導出部は、前記期間長が前記期間長判定値未満である場合、当該期間長が短いほど大きい値を前記歪み量として導出し、前記期間長が前記期間長判定値以上である場合、所定値を前記歪み量として導出する。
【0012】
上記構成によれば、期間長が期間長判定値未満である場合、上記の期間中における流入空気量の変化速度が大きいため、インタークーラの歪みの度合いが大きいと推測される。そのため、期間長が短いほど大きい値が歪み量として導出される。一方、期間長が期間長判定値以上である場合、上記の期間中における流入空気量の変化速度が大きくないため、当該変化速度の相違によるインタークーラの歪みの度合いの変化はほとんどない。よって、期間長が期間長判定値以上である場合、所定値が歪み量として導出される。このように導出された歪み量を基に蓄積ダメージ値を導出することにより、インタークーラに蓄積された疲労の度合いの推定精度を高くできる。
【0013】
上記ダメージ推定装置の一態様において、前記ダメージ値導出部は、前記歪み量を、歪みの発生に起因する前記インタークーラの疲労の度合いである歪みダメージ値に変換する変換処理を実行し、前記歪みダメージ値を積算することにより、前記蓄積ダメージ値を導出するようになっている。例えば、前記ダメージ値導出部は、前記変換処理において、前記歪み量が、疲労が溜まるような大きさの歪みが前記インタークーラで発生したか否かの判断基準として設定されている歪み量判定値よりも大きい場合には、当該歪み量が大きいほど大きい値を前記歪みダメージ値として導出し、前記歪み量が前記歪み量判定値以下である場合には、「0」を前記歪みダメージ値として導出する。
【0014】
歪み量が小さい場合、歪みの発生に起因するインタークーラの疲労の蓄積はほぼ「0」と見なせる。一方、歪み量が大きい場合、歪みの発生に起因するインタークーラの疲労の蓄積は、歪み量が大きいほど大きいと推測できる。この点、上記構成によれば、変換処理によって歪み量を歪みダメージ値に変換するに際し、歪み量が歪み量判定値よりも大きい場合には、歪み量が大きいと判断できるため、歪み量が大きいほど大きい値が歪みダメージ値として導出される。一方、歪み量が歪み量判定値以下である場合には、歪み量が小さいと判断できるため、「0」が歪みダメージ値として導出される。そして、こうした歪みダメージ値を基に蓄積ダメージ値が導出される。これにより、インタークーラに蓄積された疲労の度合いの推定精度を高くできる。
【0016】
上記ダメージ推定装置の一態様は、前記蓄積ダメージ値が閾値よりも大きい場合、通知を行う通知処理部を備える。この構成によれば、蓄積ダメージ値が閾値よりも大きくなると、冷却装置の交換又はメンテナンスが必要なほどに冷却装置に疲労が蓄積されたと判断できるため、その旨を車両の所有者又は乗員に報知できる。
【0017】
上記課題を解決するためのダメージ推定方法は、過給器を備えた内燃機関の吸気通路を流れる空気を冷却するインタークーラに蓄積された疲労の度合いを推定する方法である。このダメージ推定方法は、コンピュータが、前記インタークーラに流入する空気の温度である流入空気温度が上昇している期間内における流入空気温度の変化量である温度変化量及び当該期間の時間的な長さである期間長を取得する期間情報取得処理と、前記期間内における前記インタークーラの歪みの度合いである歪み量を、前記期間情報取得処理で取得した前記温度変化量が大きいほど値が大きくなるように導出する歪み量導出処理と、前記歪み量導出処理で導出した前記歪み量に応じた値を積算することにより、前記インタークーラに蓄積された疲労の度合いである蓄積ダメージ値を導出するダメージ値導出処理と、を実行する。そして、前記歪み量導出処理では、前記コンピュータは、前記温度変化量に加え、吸入空気量、前記インタークーラに供給される冷却水の温度、及び、当該インタークーラへの冷却水の供給量を基に、前記歪み量を導出し、且つ、前記期間長が、前記流入空気温度の変化速度がゆっくりであるか否かの判断基準として設定されている期間長判定値未満である場合、前記期間長が前記期間長判定値以上である場合と比較して大きい値を前記歪み量として導出する。
【0018】
上記構成によれば、上記の各処理を実行することにより、上記ダメージ推定装置と同等の作用及び効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態において、内燃機関の概略構成と、同内燃機関を制御対象とする制御装置の機能構成とを示す図。
図2】第1実施形態において、制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。
図3】期間長と応答係数との関係を示すマップ。
図4】歪み量と疲労限界回数との関係を示すマップ。
図5】蓄積ダメージ値を導出する際のタイミングチャート。
図6】第2実施形態において、車両とサーバとを示すブロック図。
図7】第2実施形態において、車両の制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。
図8】第2実施形態において、サーバのサーバ制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、ダメージ推定装置、及びダメージ推定方法の一実施形態を図1図5に従って説明する。
【0021】
図1には、ダメージ推定装置60を有する制御装置50と、制御装置50によって制御される内燃機関10とが図示されている。本実施形態では、内燃機関10が、「駆動源」に対応する。
【0022】
<内燃機関10について>
図1に示すように、内燃機関10は、複数の気筒11と、各気筒11に導入する空気が流れる吸気通路12とを備えている。吸気通路12には、各気筒11への空気の導入量である吸入空気量を調整するスロットルバルブ13が設けられている。吸気通路12におけるスロットルバルブ13の上流には、吸気通路12を流れる空気を冷却する冷却装置14が配置されている。冷却装置14としては、例えば、水冷式のインタークーラを挙げることができる。
【0023】
内燃機関10は、複数の気筒11に対して個別に対応する複数の燃料噴射弁15を備えている。燃料噴射弁15としては、例えば、気筒11内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁、及び、吸気通路12に燃料を噴射するポート噴射弁を挙げることができる。そして、各気筒11内では、燃料と空気とを含む混合気が燃焼される。こうした混合気の燃焼によって得た動力によって、内燃機関10のクランク軸が回転する。各気筒11内での混合気の燃焼によって生成された排気は排気通路16に排出される。
【0024】
本実施形態において、内燃機関10は、排気駆動式の過給器20を備えている。過給器20は、排気通路16に設けられているタービンハウジング21と、吸気通路12における冷却装置14よりも上流に配置されているコンプレッサハウジング22とを有している。タービンハウジング21内にはタービンホイール21aが設けられている。コンプレッサハウジング22内には、タービンホイール21aと同期回転するコンプレッサホイール22aが設けられている。過給器20が作動している場合、コンプレッサホイール22aによって圧縮された空気が、冷却装置14内に流入する。そして、冷却装置14によって冷却された空気が、スロットルバルブ13を通過して各気筒11内に導入される。
【0025】
<制御装置50について>
制御装置50には、各種のセンサから検出信号が入力される。センサとしては、例えば、クランク角センサ41、エアフローメータ42、吸気温センサ43、水温センサ44及び流量センサ45を挙げることができる。クランク角センサ41は、クランク軸の回転速度である機関回転速度Neに応じた検出信号を出力する。エアフローメータ42は、吸気通路12を流れる空気の流量である吸入空気量Gaを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ43は、吸気通路12を流れる空気のうち、冷却装置14内に流入する空気の温度である流入空気温度Tairを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。水温センサ44は、冷却装置14に供給される冷却水の温度である冷却水温Twtを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。流量センサ45は、冷却装置14に供給される冷却水の量である冷却水量Qwtを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。
【0026】
制御装置50は、以下(a)~(c)の何れかの構成であればよい。
(a)制御装置50は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
(b)制御装置50は、各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。なお、ASICは、「Application Specific Integrated Circuit」の略記であり、FPGAは、「Field Programmable Gate Array」の略記である。
(c)制御装置50は、各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうちの残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
【0027】
制御装置50は、内燃機関10の運転を制御する機能部として、機関制御部51を有している。機関制御部51は、内燃機関10が備えている各種のアクチュエータを制御することにより、内燃機関10の運転を制御する。当該アクチュエータとしては、例えば、スロットルバルブ13を動作させるアクチュエータ、及び、燃料噴射弁15を挙げることができる。
【0028】
制御装置50は、冷却装置14に蓄積された疲労の度合いを推定する機能部として、ダメージ推定装置60を有している。
ダメージ推定装置60は、取得部61、歪み量導出部62及びダメージ値導出部63を含んでいる。
【0029】
取得部61は、流入空気温度Tairが上昇していた場合、流入空気温度Tairが上昇している期間内における流入空気温度Tairの上昇量を温度変化量ΔTairとして取得し、且つ、当該期間の時間的な長さを期間長ΔTMとして取得する。また、取得部61は、流入空気温度Tairが降下していた場合、流入空気温度Tairが降下している期間内における流入空気温度Tairの降下量を温度変化量ΔTairとして取得し、且つ、当該期間の時間的な長さを期間長ΔTMとして取得する。温度変化量ΔTair及び期間長ΔTMの取得処理については後述する。
【0030】
歪み量導出部62は、取得部61が取得した温度変化量ΔTairを基に、冷却装置14の歪みの度合いである歪み量S0を導出する。すなわち、歪み量導出部62は、流入空気温度Tairが上昇している期間内における冷却装置14の歪みの度合いである歪み量S0を、当該期間における温度変化量ΔTairに基づいて導出する。また、歪み量導出部62は、流入空気温度Tairが降下している期間内における冷却装置14の歪みの度合いである歪み量S0を、当該期間における温度変化量ΔTairに基づいて導出する。歪み量S0の導出処理については後述する。
【0031】
ダメージ値導出部63は、歪み量導出部62が導出した歪み量S0に応じた値を積算することにより、冷却装置14に蓄積された疲労の度合いである蓄積ダメージ値DMを導出する。蓄積ダメージ値DMの導出処理については後述する。
【0032】
ダメージ推定装置60は、通知処理部64をさらに有している。通知処理部64は、蓄積ダメージ値DMが閾値DMthよりも大きい場合、通知を行う通知処理を実行する。すなわち、通知処理部64は、通知処理において、冷却装置14の交換又はメンテナンスが必要である旨を、通知装置70を介して車両の乗員に通知する。
【0033】
<蓄積ダメージ値DMを導出するための処理について>
図2図4を参照し、蓄積ダメージ値DMを導出するために制御装置50が実行する処理ルーチンについて説明する。図2に示す処理ルーチンは、内燃機関10の運転が行われている場合には繰り返し実行される。
【0034】
図2に示すように、本処理ルーチンにおいて、はじめのステップS11では、制御装置50の取得部61は、流入空気温度Tairの最新値をベース空気温Tbとして取得する。また、取得部61は、現在の時刻TMをベース時刻TMbとして取得する。続いて、ステップS12において、取得部61は、流入空気温度Tairを時間微分した値を空気温微分値dTairとして導出する。流入空気温度Tairが上昇している場合は、正の値が空気温微分値dTairとして導出される。流入空気温度Tairが降下している場合は、負の値が空気温微分値dTairとして導出される。
【0035】
そして、ステップS13において、取得部61は、空気温微分値dTairの正負が反転したか否かを判定する。流入空気温度Tairが上昇している状態から流入空気温度Tairが降下している状態に移行した場合に、空気温微分値dTairの正負が反転する。また、流入空気温度Tairが降下している状態から流入空気温度Tairが上昇している状態に移行した場合に、空気温微分値dTairの正負が反転する。すなわち、本処理ルーチンの前回の実行時に導出された空気温微分値dTairである空気温微分値dTairの前回値の正負の符号と、今回導出した空気温微分値dTairの正負の符号が異なる場合は、空気温微分値dTairの正負が反転したと見なせる。一方、空気温微分値dTairの前回値の正負の符号と、今回導出した空気温微分値dTairの正負の符号が同じである場合は、空気温微分値dTairの正負が反転していないと見なせる。
【0036】
ステップS13において、空気温微分値dTairの正負が反転したとの判定がなされていない場合(NO)、取得部61は、処理を前述したステップS12に移行する。一方、空気温微分値dTairの正負が反転したとの判定がなされている場合(S13:YES)、取得部61は、処理をステップS14に移行する。すなわち、流入空気温度Tairが上昇している期間が終了すると、処理がステップS14に移行される。また、流入空気温度Tairが降下している期間が終了すると、処理がステップS14に移行される。
【0037】
ステップS14において、取得部61は、流入空気温度Tairの最新値とベース空気温Tbとの差分を、温度変化量ΔTairとして導出する。また、取得部61は、現在時刻TMからベース時刻TMbを引いた値を期間長ΔTMとして導出する。すなわち、流入空気温度Tairが上昇している期間が終了したためにステップS14が実行された場合、当該期間内における流入空気温度Tairの上昇量が温度変化量ΔTairとして導出され、当該期間の時間的な長さが期間長ΔTMとして導出される。一方、流入空気温度Tairが降下している期間が終了したためにステップS14が実行された場合、当該期間内における流入空気温度Tairの降下量が温度変化量ΔTairとして導出され、当該期間の時間的な長さが期間長ΔTMとして導出される。本実施形態では、ステップS14が、「期間情報取得処理」に対応する。
【0038】
続いて、ステップS15において、制御装置50の歪み量導出部62は、歪み量ベース値Sbを導出する。歪み量導出部62は、温度変化量ΔTairが大きいほど値が大きくなるように歪み量ベース値Sbを導出する。
【0039】
なお、歪み量導出部62は、温度変化量ΔTairに加え、吸入空気量Gaに基づいて歪み量ベース値Sbを導出してもよい。吸入空気量Gaが多いということは、冷却装置14に流入する空気量が多いことを意味する。冷却装置14に流入する空気量が多いほど、空気の冷却装置14への流入に起因して冷却装置14の温度が変化しやすい。空気の冷却装置14への流入に起因した冷却装置14の温度変化量が多いほど、冷却装置14で発生する歪み度合いが大きくなりやすい。そのため、歪み量導出部62は、吸入空気量Gaが多いほど値が大きくなるように歪み量ベース値Sbを導出するとよい。
【0040】
また、歪み量導出部62は、温度変化量ΔTairに加え、冷却水温Twtに基づいて歪み量ベース値Sbを導出してもよい。冷却水温Twtが高いということは、冷却装置14の温度が上昇しやすいことを意味する。冷却装置14の温度上昇量が多いほど、冷却装置14で発生する歪み度合いが大きくなりやすい。そのため、歪み量導出部62は、冷却水温Twtが高いほど値が大きくなるように歪み量ベース値Sbを導出するとよい。
【0041】
また、歪み量導出部62は、温度変化量ΔTairに加え、冷却水量Qwtに基づいて歪み量ベース値Sbを導出してもよい。冷却水量Qwtが少ないということは、冷却装置14の温度が上昇しやすいことを意味する。冷却装置14の温度上昇量が多いほど、冷却装置14で発生する歪み度合いが大きくなりやすい。そのため、歪み量導出部62は、冷却水量Qwtが少ないほど値が大きくなるように歪み量ベース値Sbを導出するとよい。
【0042】
ステップS15において歪み量ベース値Sbを導出すると、歪み量導出部62は、処理をステップS16に移行する。ステップS16において、歪み量導出部62は、期間長ΔTMに応じた値を応答係数FCとして設定する。すなわち、歪み量導出部62は、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth以上である場合よりも大きい値を応答係数FCとして設定する。また、歪み量導出部62は、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合、期間長ΔTMが短いほど大きい値を応答係数FCとして設定する。なお、流入空気温度Tairが上昇又は降下するに際し、その変化速度がゆっくりであるか否かの判断基準として期間長判定値ΔTMthが設定されている。
【0043】
歪み量導出部62は、例えば図3に示すマップを用いて応答係数FCを設定することができる。図3には、期間長ΔTMと応答係数FCとの関係を表すマップの一例が図示されている。図3に示すマップによれば、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth以上である場合、応答係数FCが応答係数下限値FCaになる。例えば、応答係数下限値FCaとして「1」が設定されている。一方、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合、応答係数FCが応答係数下限値FCaよりも大きい値になる。詳しくは、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合、期間長ΔTMが短いほど応答係数FCが大きくなる。
【0044】
図2に戻り、ステップS16において応答係数FCを設定すると、歪み量導出部62は、処理をステップS17に移行する。ステップS17において、歪み量導出部62は、歪み量ベース値Sbと応答係数FCとの積を歪み量S0として導出する。本実施形態では、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth以上である場合よりも大きい値が応答係数FCとして設定されている。そのため、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合は、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth以上である場合よりも歪み量S0を大きくできる。さらに、本実施形態では、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合、期間長ΔTMが短いほど大きい値が応答係数FCとして設定されている。そのため、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合は、期間長ΔTMが短いほど歪み量S0を大きくできる。本実施形態では、ステップS15、S16、S17が、「歪み量導出処理」に対応する。
【0045】
続いて、ステップS18において、制御装置50のダメージ値導出部63は、歪み量S0を基に、疲労限界回数N0を導出する。歪み量S0の冷却装置14への入力を続けた際に、冷却装置14が限界に達するのに要する歪み量S0の入力回数、又は当該入力回数に応じた値が、疲労限界回数N0として設定される。すなわち、歪み量導出部62は、歪み量S0が大きいほど小さい値が疲労限界回数N0として導出される。ここでいう「限界」とは、冷却装置14の交換又はメンテナンスが必要になるほど、冷却装置14に疲労が蓄積された状態である。
【0046】
ダメージ値導出部63は、例えば図4に示すマップを用いて疲労限界回数N0を導出することができる。図4には、歪み量S0と疲労限界回数N0との関係を表すマップの一例が図示されている。図4に示すマップによれば、歪み量S0が大きいほど、疲労限界回数N0が小さくなる。
【0047】
図2に戻り、ステップS18において疲労限界回数N0を導出すると、ダメージ値導出部63は、処理をステップS19に移行する。ステップS19において、ダメージ値導出部63は、疲労限界回数N0及び歪み量S0を基に、歪みダメージ値P0を導出する。歪みダメージ値P0は、歪みの発生に起因する冷却装置14の疲労の度合いを数値化したものである。つまり、本実施形態では、ステップS18,S19が、歪み量S0を歪みダメージ値P0に変換する「変換処理」に対応する。
【0048】
変換処理の一例について説明する。ダメージ値導出部63は、歪み量S0が歪み量判定値S0thよりも大きいか否かを判定する。歪み量判定値S0thは、冷却装置14に疲労が溜まるような大きさの歪みが冷却装置14で発生したか否かの判断基準として設定されている。歪み量S0が歪み量判定値S0thよりも大きい場合は、歪みの発生によって冷却装置14に疲労が溜まると見なせる。一方、歪み量S0が歪み量判定値S0th以下である場合は、歪みが発生しても冷却装置14に疲労が溜まらないと見なせる。
【0049】
そのため、ダメージ値導出部63は、歪み量S0が歪み量判定値S0thよりも大きい場合、疲労限界回数N0が小さいほど大きい値を歪みダメージ値P0として導出する。例えば、ダメージ値導出部63は、歪み量S0が歪み量判定値S0thよりも大きい場合、「1」を疲労限界回数N0で割った値を、歪みダメージ値P0とすればよい。一方、ダメージ値導出部63は、歪み量S0が歪み量判定値S0th以下である場合、「0」を歪みダメージ値P0として導出する。
【0050】
ステップS19において歪みダメージ値P0を導出すると、ダメージ値導出部63は、処理をステップS20に移行する。ステップS20において、ダメージ値導出部63は、蓄積ダメージ値DMの前回値と歪みダメージ値P0との和を蓄積ダメージ値DMの最新値として導出する。蓄積ダメージ値DMの前回値とは、図2に示す本処理ルーチンの前回の実行時に導出された蓄積ダメージ値DMである。すなわち、歪みダメージ値P0の積算値が、蓄積ダメージ値DMとして導出される。歪みダメージ値P0は、歪み量S0に応じた値である。そのため、蓄積ダメージ値DMは、歪み量S0に応じた値を積算することによって導出される値であるといえる。本実施形態では、ステップS18、S19、S20が、「ダメージ値導出処理」に対応する。
【0051】
続いて、ステップS21において、制御装置50は、蓄積ダメージ値DMが閾値DMthよりも大きいか否かを判定する。閾値DMthは、交換又はメンテナンスが必要なほどに冷却装置14に疲労が溜まったか否かの判断基準として設定されている。蓄積ダメージ値DMが閾値DMthよりも大きい場合は、冷却装置14の交換又はメンテナンスが必要であると見なせる。一方、蓄積ダメージ値DMが閾値DMth以下である場合は、冷却装置14の交換又はメンテナンスは未だ不要であると見なせる。そのため、蓄積ダメージ値DMが閾値DMth以下である場合(S21:NO)、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、蓄積ダメージ値DMが閾値DMthよりも大きい場合(S21:YES)、制御装置50は、処理をステップS22に移行する。
【0052】
ステップS22において、制御装置50の通知処理部64は、冷却装置14の交換又はメンテナンスが必要である旨を、通知装置70を介して車両の乗員に通知する通知処理を実行する。そして、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0053】
<作用及び効果>
図5を参照し、本実施形態の作用及び効果について説明する。
流入空気温度Tairが上昇している場合、空気温微分値dTairが正の値となる。例えばタイミングt1で、流入空気温度Tairの変化態様が上昇から降下に切り替わると、流入空気温度Tairが上昇していた期間における流入空気温度Tairの上昇量が温度変化量ΔTairとして導出される。また、流入空気温度Tairが上昇していた期間の時間的な長さが期間長ΔTMとして導出される。そして、温度変化量ΔTair及び期間長ΔTMを基に、歪み量S0が導出される。温度変化量ΔTairが大きいほど大きい値が歪み量S0として導出される。また、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合には、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth以上である場合よりも大きい値が歪み量S0として導出される。これは、流入空気温度Tairが上昇する期間内における温度変化量ΔTairが同じであっても流入空気温度Tairの上昇速度が高いほど、冷却装置14の歪み度合いが大きくなるためである。
【0054】
タイミングt0からタイミングt1までの期間を第1増大期間とし、タイミングt3からタイミングt4までの期間を第2増大期間とする。第1増大期間及び第2増大期間の何れにおいても、流入空気温度Tairが上昇している。しかも、第1増大期間における温度変化量ΔTairと、第2増大期間における温度変化量ΔTairとは、互いに等しい。しかし、第2増大期間の期間長ΔTMは、第1増大期間の期間長ΔTMよりも長い。図5に示す例では、第1増大期間の期間長ΔTMは期間長判定値ΔTMth未満であるのに対し、第2増大期間の期間長ΔTMは期間長判定値ΔTMth以上である。そのため、タイミングt4で導出される歪み量S0は、タイミングt1で導出される歪み量S0よりも小さい。
【0055】
一方、流入空気温度Tairが降下している場合、空気温微分値dTairが負の値となる。例えばタイミングt2で、流入空気温度Tairの変化態様が降下から上昇に切り替わると、流入空気温度Tairが降下していた期間における流入空気温度Tairの降下量が温度変化量ΔTairとして導出される。また、流入空気温度Tairが降下していた期間の時間的な長さが期間長ΔTMとして導出される。そして、温度変化量ΔTair及び期間長ΔTMを基に、歪み量S0が導出される。温度変化量ΔTairが大きいほど大きい値が歪み量S0として導出される。また、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合には、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth以上である場合よりも大きい値が歪み量S0として導出される。これは、流入空気温度Tairが降下する期間内における温度変化量ΔTairが同じであっても流入空気温度Tairの降下速度が高いほど、冷却装置14の歪み度合いが大きくなるためである。
【0056】
そして、上記のように導出された歪み量S0に応じた値として、歪みダメージ値P0が導出される。歪みダメージ値P0を積算することにより、蓄積ダメージ値DMが導出される。これにより、冷却装置14に蓄積された疲労の度合いを推定できる。
【0057】
本実施形態では、蓄積ダメージ値DMが閾値DMthよりも大きい場合、冷却装置14の交換又はメンテナンスが必要であると判断できる。そのため、この場合には、通知処理が実行される。これにより、冷却装置14の交換又はメンテナンスを車両の乗員及び所有者に案内できる。言い換えると、通知処理が実行される前までは、冷却装置14の交換又はメンテナンスを行わなくても車両を使用できる。
【0058】
なお、本実施形態では、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(1-1)期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合、冷却装置14の歪みの度合いが大きいと推測される。そのため、期間長ΔTMが短いほど大きい値が歪み量S0として導出される。一方、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth以上である場合、流入空気温度Tairの変化速度の相違による冷却装置14の歪みの度合いの変化はほとんどない。よって、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth以上である場合、所定値が歪み量S0として導出される。ここでいう所定値とは、歪み量ベース値Sbと応答係数下限値FCaとの積である。このように導出された歪み量S0を基に蓄積ダメージ値DMを導出することにより、冷却装置14に蓄積された疲労の度合いの推定精度を高くできる。
【0059】
(1-2)歪み量S0が小さい場合、歪みの発生に起因する冷却装置14の疲労の蓄積はほぼ「0」と見なせる。一方、歪み量S0が大きい場合、歪みの発生に起因する冷却装置14の疲労の蓄積は、歪み量S0が大きいほど大きいと推測できる。そこで、本実施形態では、歪み量S0が歪み量判定値S0thよりも大きい場合には、歪み量S0が大きいと判断できるため、歪み量S0が大きいほど大きい値が歪みダメージ値P0として導出される。一方、歪み量S0が歪み量判定値S0th以下である場合には、歪み量S0が小さいと判断できるため、「0」が歪みダメージ値P0として導出される。そして、こうした歪みダメージ値P0を基に蓄積ダメージ値DMが導出される。これにより、冷却装置14に蓄積された疲労の度合いの推定精度を高くできる。
【0060】
(1-3)本実施形態では、温度変化量ΔTairに加え、吸入空気量Ga、冷却水温Twt及び冷却水量Qwtをも考慮して歪み量S0が導出される。吸入空気量Ga、冷却水温Twt及び冷却水量Qwtによって冷却装置14の歪みの度合いが変わる。そのため、温度変化量ΔTairのみを考慮して歪み量S0を導出する場合と比較し、歪み量S0の導出精度を高くできる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、ダメージ推定装置及びダメージ推定方法の第2実施形態を図6図8に従って説明する。以下の説明においては、第1実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0062】
図6には、車両80と、車両80と通信するサーバ100とが図示されている。
車両80は、制御装置50と、車両側通信装置81とを備えている。車両側通信装置81は、制御装置50が導出した各種の情報をサーバ100に送信する。また、車両側通信装置81は、サーバ100から送信された情報を受信する。
【0063】
サーバ100は、サーバ側通信装置101と、サーバ制御装置102とを備えている。サーバ側通信装置101は、車両80から送信された情報を受信する。また、サーバ側通信装置101は、サーバ制御装置102で導出した各種の情報を車両80に送信する。
【0064】
本実施形態のダメージ推定方法では、当該方法を構成する複数の処理のうち、一部の処理が制御装置50で実行され、残りの処理がサーバ制御装置102で実行される。すなわち、制御装置50及びサーバ制御装置102が、ダメージ推定方法を構成する複数の処理を実行する「実行装置」に対応する。また、図7に示す処理ルーチンを制御装置50が実行し、図8に示す処理ルーチンをサーバ制御装置102が実行することにより、蓄積ダメージ値DMが導出される。この点で、制御装置50及びサーバ制御装置102が、「ダメージ推定装置」に対応する。
【0065】
<車両80で実行される処理の流れ>
図7を参照し、制御装置50が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、繰り返し実行される。
【0066】
本処理ルーチンにおいて、はじめのステップS11では、制御装置50は、ベース空気温Tb及びベース時刻TMbを取得する。続いて、ステップS12において、制御装置50は、空気温微分値dTairを導出する。次のステップS13において、制御装置50は、空気温微分値dTairの正負が反転したか否かを判定する。空気温微分値dTairの正負が反転したとの判定がなされていない場合(S13:NO)、制御装置50は、処理を前述したステップS12に移行する。一方、空気温微分値dTairの正負が反転したとの判定がなされている場合(S13:YES)、制御装置50は、処理をステップS14に移行する。
【0067】
ステップS14において、制御装置50は、温度変化量ΔTair及び期間長ΔTMを導出する。すなわち、本実施形態では、ステップS14が、「期間情報取得処理」に対応する。
【0068】
続いて、ステップS25において、制御装置50は、冷却装置14の蓄積ダメージ値DMを導出するために必要な情報を、車両側通信装置81を介してサーバ100に送信する送信処理を実行する。すなわち、制御装置50は、送信処理において、温度変化量ΔTair、期間長ΔTM、吸入空気量Ga、冷却水温Twt及び冷却水量Qwtをサーバ100に送信する。そして、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0069】
<サーバ100で実行される処理の流れ>
図8を参照し、サーバ制御装置102が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、上記のステップS25の送信処理によって車両80が送信した情報をサーバ側通信装置101が受信したことを契機に実行される。
【0070】
本処理ルーチンにおいて、はじめのステップS41では、サーバ制御装置102は、上記ステップS15と同様に、歪み量ベース値Sbを導出する。次のステップS42において、サーバ制御装置102は、上記ステップS16と同様に、応答係数FCを設定する。そして、ステップS43において、サーバ制御装置102は、上記ステップS17と同様に、歪み量S0を導出する。すなわち、本実施形態では、ステップS41、S42、S43が、「歪み量導出処理」に対応する。
【0071】
続いて、ステップS44において、サーバ制御装置102は、上記ステップS18と同様に、歪み量S0を基に、疲労限界回数N0を導出する。次のステップS45において、サーバ制御装置102は、上記ステップS19と同様に、歪みダメージ値P0を導出する。そして、ステップS46において、サーバ制御装置102は、上記ステップS20と同様に、蓄積ダメージ値DMを導出する。すなわち、本実施形態では、ステップS44、S45、S46が、「ダメージ値導出処理」に対応する。
【0072】
次のステップS47において、サーバ制御装置102は、上記ステップS21と同様に、蓄積ダメージ値DMが閾値DMthよりも大きいか否かを判定する。蓄積ダメージ値DMが閾値DMth以下である場合(S47:NO)、サーバ制御装置102は、本処理ルーチンを終了する。一方、蓄積ダメージ値DMが閾値DMthよりも大きい場合(S47:YES)、サーバ制御装置102は、処理をステップS48に移行する。
【0073】
ステップS48において、サーバ制御装置102は、冷却装置14の交換又はメンテナンスが必要である旨を、サーバ側通信装置101を介して車両80に送信する。そして、サーバ制御装置102は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0074】
ステップS48の処理でサーバ100から送信された情報が車両80に受信されると、制御装置50は、冷却装置14の交換又はメンテナンスが必要である旨を、通知装置70を介して車両80の乗員に通知する。したがって、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0076】
・上記第2実施形態において、期間情報取得処理もサーバ制御装置102で実行するようにしてもよい。この場合、車両80の制御装置50は、温度変化量ΔTair及び期間長ΔTMの導出に必要な情報として、流入空気温度Tairの時系列データをサーバ100に送信する。
【0077】
・上記第2実施形態において、歪み量導出処理を車両80の制御装置50で実行するようにしてもよい。この場合、制御装置50は、歪み量導出処理で導出した歪み量S0をサーバ100に送信する。
【0078】
・上記第1実施形態において、冷却装置14の交換又はメンテナンスが必要である旨を通知する通知処理は実行しなくてもよい。
・温度変化量ΔTairを考慮して歪み量ベース値Sbを導出するのであれば、歪み量ベース値Sbを導出するに際して吸入空気量Gaを考慮しなくてもよい。
【0079】
・温度変化量ΔTairを考慮して歪み量ベース値Sbを導出するのであれば、歪み量ベース値Sbを導出するに際して冷却水温Twtを考慮しなくてもよい。
・温度変化量ΔTairを考慮して歪み量ベース値Sbを導出するのであれば、歪み量ベース値Sbを導出するに際して冷却水量Qwtを考慮しなくてもよい。
【0080】
・上記各実施形態では、歪み量S0が歪み量判定値S0th以下である場合には、「0」を歪みダメージ値P0として導出しているが、これに限らない。例えば、歪み量S0が歪み量判定値S0th以下である場合には、「0」よりも僅かに大きい値を歪みダメージ値P0として導出してもよい。
【0081】
・歪み量S0が歪み量判定値S0th以下であっても、歪み量S0に応じて歪みダメージ値P0を可変させてもよい。例えば、歪み量S0が歪み量判定値S0th以下であっても、「1」を疲労限界回数N0で割った値を歪みダメージ値P0として導出してもよい。
【0082】
・応答係数下限値FCaとして「1」とは異なる値を設定してもよい。
・上記各実施形態では、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth以上である場合には応答係数下限値FCaを応答係数FCとして設定しているが、これに限らない。例えば、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth以上である場合であっても、期間長ΔTMが長いほど小さい値を応答係数FCとして設定してもよい。
【0083】
・期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合、期間長ΔTMに応じて応答係数FCを可変させなくてもよい。例えば、期間長ΔTMが期間長判定値ΔTMth未満である場合、応答係数下限値FCaよりも大きい規定値を、応答係数FCとして設定してもよい。
【0084】
・蓄積ダメージ値DMを導出するに際し、流入空気温度Tairが上昇する期間における温度変化量ΔTair及び期間長ΔTMに基づいて導出した歪みダメージ値P0を用いるのであれば、流入空気温度Tairが降下する期間における温度変化量ΔTair及び期間長ΔTMに基づいて導出した歪みダメージ値P0を用いなくてもよい。
【0085】
・冷却装置14は、空冷式のインタークーラであってもよい。
・内燃機関は、吸気通路に冷却装置が設けられているのであれば、上記の内燃機関10とは異なる構成のものであってもよい。例えば、内燃機関は、過給器20を備えていないものであってもよい。
【0086】
・蓄積された疲労の度合いがダメージ推定装置によって推定される冷却装置は、吸気通路に流れる空気を冷却するものであれば冷却装置14でなくてもよい。例えば、当該冷却装置として、燃料電池自動車に搭載される冷却装置であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…内燃機関
12…吸気通路
14…冷却装置
50…制御装置
60…ダメージ推定装置
61…取得部
62…歪み量導出部
63…ダメージ値導出部
64…通知処理部
102…サーバ制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8