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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20231108BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F02B37/18 A
F02B37/18 D
F02B37/18 E
F02B39/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020191699
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080562
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純也
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 武士
(72)【発明者】
【氏名】松田 真明
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194010(JP,A)
【文献】実開平1-174530(JP,U)
【文献】特開2020-84923(JP,A)
【文献】実開平6-43227(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気の流れにより回転するタービンホイールと、
前記タービンホイールを収容するとともに前記タービンホイールよりも排気上流側及び排気下流側をバイパスする複数のバイパス通路を区画するタービンハウジングと、
複数の前記バイパス通路を開閉するウェイストゲートバルブと、を備え、
前記タービンハウジングは、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に前記ウェイストゲートバルブに接触する平面の弁座面と、前記タービンハウジングの壁を貫通する貫通孔と、を有し、
前記ウェイストゲートバルブは、前記貫通孔を貫通しているとともに前記タービンハウジングに回転可能に支持されたシャフトと、前記シャフトにおける前記タービンハウジングの内部側の端から前記シャフトの径方向に延びる弁体と、を有し、
前記弁体は、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、前記弁座面に向かい合う平面のバルブ面を有し、
前記シャフト及び前記弁体が一体成形物であるターボチャージャであって、
前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、前記弁座面に直交する方向から視て、複数の前記バイパス通路の開口全域が前記弁体に覆われており、
前記バルブ面の外縁形状の幾何中心をバルブ中心、前記弁座面における複数の前記バイパス通路のうち第1バイパス通路の開口形状の幾何中心を第1開口中心、前記弁座面における複数の前記バイパス通路のうち前記第1バイパス通路とは異なる第2バイパス通路の開口形状の幾何中心を第2開口中心としたとき、
前記バルブ中心から前記シャフトの中心軸までの最短距離は、前記第1開口中心から前記シャフトの中心軸までの最短距離よりも大きく、且つ、前記第2開口中心から前記シャフトの中心軸までの最短距離よりも大きい
ターボチャージャ。
【請求項2】
前記弁座面の外縁形状の幾何中心を弁座中心としたとき、
前記弁座中心から前記シャフトの中心軸までの最短距離は、前記第1開口中心から前記シャフトの中心軸までの最短距離よりも大きく、且つ、前記第2開口中心から前記シャフトの中心軸までの最短距離よりも大きい
請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記バイパス通路の開口の前記シャフトの中心軸に直交する最大寸法は、前記バイパス通路の開口の前記シャフトの中心軸に沿う最大寸法よりも小さい
請求項1又は請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記弁座面の外縁形状の幾何中心を弁座中心としたとき、
前記弁座面に直交する方向から視たときに、前記弁座面における前記第1バイパス通路及び前記第2バイパス通路の開口の全域は、前記シャフトの中心軸と前記弁座中心との間に位置している
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のターボチャージャは、タービンホイール、タービンハウジング、及びウェイストゲートバルブを備えている。タービンハウジングは、タービンホイールを収容している。タービンハウジングは、バイパス通路を区画している。バイパス通路は、タービンホイールよりも排気上流側及び排気下流側をバイパスしている。タービンハウジングは、ウェイストゲートバルブが閉状態のときに当該ウェイストゲートバルブに接触する弁座面を備えている。また、タービンハウジングは、当該タービンハウジングの壁を貫通する貫通孔を備えている。
【0003】
ウェイストゲートバルブは、バイパス通路を開閉する。ウェイストゲートバルブは、シャフト、及び弁体を備えている。シャフトは、貫通孔を貫通しているとともにタービンハウジングに回転可能に支持されている。弁体は、シャフトにおけるタービンハウジングの内部側の端からシャフトの径方向に延びている。弁体は、ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、弁座面に向かい合う平面のバルブ面を備えている。シャフト及び弁体は、一体成形物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-084923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなターボチャージャでは、タービンハウジング及びウェイストゲートバルブに製造誤差が発生することがある。過度な製造誤差が生じた場合、ウェイストゲートバルブが閉状態のときに、弁座面とバルブ面とが設計どおりに接触せず、排気の漏れが多くなる。特に、ウェイストゲートバルブが閉じきる前に、バルブ面が弁座面に干渉した場合には、弁座面とバブル面との隙間が大きくなるため、排気の漏れは無視できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのターボチャージャは、排気の流れにより回転するタービンホイールと、前記タービンホイールを収容するとともに前記タービンホイールよりも排気上流側及び排気下流側をバイパスするバイパス通路を区画するタービンハウジングと、前記バイパス通路を開閉するウェイストゲートバルブと、を備え、前記タービンハウジングは、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に前記ウェイストゲートバルブに接触する平面の弁座面と、前記タービンハウジングの壁を貫通する貫通孔と、を有し、前記ウェイストゲートバルブは、前記貫通孔を貫通しているとともに前記タービンハウジングに回転可能に支持されたシャフトと、前記シャフトにおける前記タービンハウジングの内部側の端から前記シャフトの径方向に延びる弁体と、を有し、前記弁体は、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、前記弁座面に向かい合う平面のバルブ面を有し、前記シャフト及び前記弁体が一体成形物であるターボチャージャであって、前記ウェイストゲートバルブが閉状態の場合に、前記弁座面に直交する方向から視て、前記バイパス通路の開口全域が前記弁体に覆われており、前記バルブ面の外縁形状の幾何中心をバルブ中心、前記弁座面における前記バイパス通路の開口形状の幾何中心を開口中心としたとき、前記バルブ中心から前記シャフトの中心軸までの最短距離は、前記開口中心から前記シャフトの中心軸までの最短距離よりも大きい。
【0007】
上記のターボチャージャでは、ウェイストゲートバルブが閉じきる前に、バルブ面が弁座面に干渉した場合、シャフトの中心軸から視てバイパス通路の開口よりも遠い箇所において、バルブ面と弁座面との隙間が生じる。したがって、バイパス通路から漏れ出る排気の一部は、シャフトから遠ざかる方向に流れる。上記のバルブ中心と開口中心との関係によれば、シャフトの中心軸から視てバイパス通路の開口よりも遠い箇所に位置するバルブ面の面積が大きい。その結果、このバルブ面の存在が、シャフトから遠ざかる方向に流れる排気の妨げとなるので、バイパス通路から漏れ出る排気の量を抑制できる。
【0008】
上記構成において、前記弁座面の外縁形状の幾何中心を弁座中心としたとき、前記弁座中心から前記シャフトの中心軸までの最短距離は、前記開口中心から前記シャフトの中心軸までの最短距離よりも大きくてもよい。
【0009】
上記構成によれば、シャフトの中心軸から視てバイパス通路の開口よりも遠い箇所に、弁座面が存在する。したがって、ウェイストゲートバルブが閉じきる前に、バルブ面が弁座面に干渉した場合、シャフトの中心軸から視てバイパス通路の開口よりも遠い箇所には、弁座面とバルブ面とによって狭い通路が区画される。この通路においては、排気の流通抵抗が大きいので、バイパス通路から漏れ出る排気の量を抑制できる。
【0010】
上記構成において、前記バイパス通路の開口の前記シャフトの中心軸に直交する最大寸法は、前記バイパス通路の開口の前記シャフトの中心軸に沿う最大寸法よりも小さくてもよい。
【0011】
上記構成によれば、シャフトの中心軸に直交する方向においてバルブ面の寸法を過度に大きくしなくても、上述したバルブ中心と開口中心との位置関係を実現しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】内燃機関の概略図。
図2】タービンハウジングの周辺構成を示す断面図。
図3】ウェイストゲートバルブの周辺構成を示す断面図。
図4】弁座面の周辺構成を示す平面図。
図5】ウェイストゲートバルブの側面図。
図6】ウェイストゲートバルブの周辺構成を示す説明図。
図7図6における7-7線でのウェイストゲートバルブ等の断面構成を示す説明図。
図8】ウェイストゲートバルブ等の断面構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<内燃機関の概略構成>
以下、本発明の一実施形態を図1図8にしたがって説明する。先ず、本発明のターボチャージャ20が適用された車両の内燃機関10の概略構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、内燃機関10は、吸気通路11、気筒12、排気通路13、触媒15、及びターボチャージャ20を備えている。吸気通路11は、内燃機関10の外部からの吸気を導入する。気筒12は、吸気通路11に接続している。気筒12は、燃料と吸気とを混合して燃焼させる。排気通路13は、気筒12に接続している。排気通路13は、気筒12からの排気を排出する。触媒15は、排気通路13の途中に位置している。触媒15は、排気通路13を流通する排気を浄化する。
【0015】
ターボチャージャ20は、コンプレッサハウジング30、ベアリングハウジング50、タービンハウジング60、コンプレッサホイール70、連結シャフト80、及びタービンホイール90を備えている。
【0016】
コンプレッサハウジング30は、吸気通路11の途中に取り付けられている。タービンハウジング60は、排気通路13における触媒15よりも上流の部分に取り付けられている。ベアリングハウジング50は、コンプレッサハウジング30及びタービンハウジング60にそれぞれ固定されており、コンプレッサハウジング30及びタービンハウジング60を接続している。このように、ターボチャージャ20は、吸気通路11及び排気通路13に跨って設けられている。
【0017】
タービンハウジング60は、タービンホイール90を収容している。ベアリングハウジング50は、連結シャフト80を収容している。ベアリングハウジング50は、図示しないベアリングを介して回転可能に連結シャフト80を支持している。連結シャフト80の第1端は、タービンホイール90に接続している。コンプレッサハウジング30は、コンプレッサホイール70を収容している。コンプレッサホイール70は、連結シャフト80の第2端に接続している。すなわち、コンプレッサホイール70は、連結シャフト80を介してタービンホイール90に連結している。
【0018】
タービンホイール90がタービンハウジング60の内部の排気の流通により回転すると、連結シャフト80を介してコンプレッサホイール70が共に回転する。そして、コンプレッサホイール70が回転することにより、コンプレッサハウジング30の内部の吸気が圧縮される。
【0019】
<ターボチャージャの構成>
次に、ターボチャージャ20の具体的な構成について説明する。
図2に示すように、タービンハウジング60は、円弧部60A、筒状部60B、及びフランジ部60Cを備えている。筒状部60Bは、略円筒形状になっている。筒状部60Bは、概ねタービンホイール90の回転中心である回転軸線90Aに沿って延びている。円弧部60Aは、筒状部60Bの外周を取り囲むように延びており、略円弧形状になっている。フランジ部60Cは、円弧部60Aの上流端に位置している。フランジ部60Cは、排気通路13におけるタービンハウジング60よりも上流側の部分に固定されている。
【0020】
図2に示すように、タービンハウジング60は、排気が流通する空間として、2つのスクロール通路61、収容空間62、排出通路63、及び2つのバイパス通路64を区画している。なお、図2では、1つのバイパス通路64を図示している。各スクロール通路61は、円弧部60A及び筒状部60Bの内部に位置している。スクロール通路61は、タービンホイール90を取り囲むように円弧状に延びている。スクロール通路61の上流端は、タービンハウジング60よりも上流側の排気通路13に接続している。スクロール通路61の下流端は、収容空間62に接続している。2つのスクロール通路61は、互いに略平行に延びている。収容空間62は、筒状部60Bの内部空間のうち、タービンホイール90が位置している空間である。収容空間62は、排出通路63に接続している。排出通路63は、筒状部60Bの内部空間のうち、ベアリングハウジング50とは反対側の端、すなわち図2における上端を含む一部の空間である。排出通路63の下流端は、タービンハウジング60よりも下流側の排気通路13に接続している。各バイパス通路64は、円弧部60A及び筒状部60Bの内部に位置している。各バイパス通路64は、スクロール通路61と排出通路63とを接続する。すなわち、バイパス通路64は、タービンホイール90よりも排気上流側及び排気下流側をバイパスする。
【0021】
図3に示すように、タービンハウジング60は、弁座面66、及び貫通孔69を備えている。図4に示すように、弁座面66は、排出通路63を区画するタービンハウジング60の内壁面のうち、2つのバイパス通路64の開口縁を取り囲む平面である。すなわち、各バイパス通路64は、弁座面66に開口している。また、弁座面66の外縁形状は、略円形状である。図3に示すように、タービンハウジング60の内面のうち、弁座面66を含む一部は、他の箇所に対して隆起している。
【0022】
図3に示すように、貫通孔69は、タービンハウジング60の壁を貫通している。貫通孔69は、タービンハウジング60の壁のうち排出通路63を区画する部分に位置している。貫通孔69の中心軸69Aは、弁座面66と平行になっている。また、貫通孔69の中心軸69Aは、隣り合う2つのバイパス通路64が並ぶ方向に、すなわち図3における左右方向に延びている。貫通孔69の中心軸69Aに沿う方向から視たときに、当該貫通孔69は、略円形状である。
【0023】
図1及び図3に示すように、ターボチャージャ20は、ウェイストゲートバルブ110、ブッシュ120、リンク機構130、及びアクチュエータ140を備えている。図3に示すように、ブッシュ120の形状は、略円筒形状である。ブッシュ120の外径は、貫通孔69の内径と略同じである。ブッシュ120は、貫通孔69の内部に位置している。
【0024】
図3に示すように、ウェイストゲートバルブ110は、シャフト111、及び弁体112を備えている。シャフト111の形状は、略円柱形状である。シャフト111の外径は、ブッシュ120の内径と略同じである。シャフト111は、ブッシュ120に挿通されている。すなわち、シャフト111は、タービンハウジング60の貫通孔69を貫通している。タービンハウジング60は、ブッシュ120を介してシャフト111を回転可能に支持している。なお、シャフト111の中心軸111Aは、貫通孔69の中心軸69Aと一致している。
【0025】
図5に示すように、弁体112は、接続部113、及び弁本体114を備えている。接続部113は、シャフト111から当該シャフト111の径方向に延びている。図3に示すように、接続部113は、シャフト111におけるタービンハウジング60の内部側の端、すなわち図3におけるシャフト111の右端に位置している。図5に示すように、弁本体114は、接続部113におけるシャフト111の径方向外側の端に接続している。図6に示すように、弁本体114の形状は、略円板形状である。図5に示すように、弁本体114のうち、接続部113とは反対の面、すなわち図5における下面は、バルブ面116として機能する。バルブ面116は、平面である。また、バルブ面116の外縁形状は、略円形状である。バルブ面116の外縁形状は、弁座面66に開口する2つのバイパス通路64の開口を全て覆うことができる大きさになっている。すなわち、図6に示すように、ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合に、弁体112の弁本体114は、弁座面66に直交する方向から視て、2つのバイパス通路64の開口全域を覆う。バルブ面116は、ウェイストゲートバルブ110が閉状態である場合に、弁座面66と向かい合う。ウェイストゲートバルブ110は、シャフト111及び弁体112が一体成形された一体成形物である。なお、ウェイストゲートバルブ110は、例えば鋳造により一体成形されている。
【0026】
ここで、図5に示すように、バルブ面116に直交する方向において、バルブ面116を含む仮想平面からシャフト111の中心軸111Aまでの距離を距離Aとする。また、図3に示すように、弁座面66に直交する方向において、弁座面66を含む仮想平面から貫通孔69の中心軸69Aまでの距離を距離Bとする。本実施形態では、設計上、距離Aが、距離Bと同じになっている。
【0027】
図3に示すように、リンク機構130は、シャフト111におけるタービンハウジング60の外部側の端に連結している。図1に示すように、アクチュエータ140は、リンク機構130に連結している。アクチュエータ140は、リンク機構130に駆動力を伝達する。そして、リンク機構130は、アクチュエータ140からの駆動力をウェイストゲートバルブ110に伝達することにより、バイパス通路64を開閉する。
【0028】
具体的には、ウェイストゲートバルブ110が開状態から閉状態になる際には、アクチュエータ140の駆動力がリンク機構130を介してシャフト111に伝達されることにより、シャフト111は、タービンハウジング60に対してシャフト111の周方向の第1回転方向に回転する。すると、ウェイストゲートバルブ110のバルブ面116が、タービンハウジング60の弁座面66に接触する。したがって、ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合、タービンハウジング60の弁座面66にウェイストゲートバルブ110のバルブ面116が向かい合うことにより、バイパス通路64の下流端はウェイストゲートバルブ110のバルブ面116に覆われる。なお、本実施形態において、ウェイストゲートバルブ110のバルブ面116が、タービンハウジング60の弁座面66に接触してウェイストゲートバルブ110がそれ以上閉側に回転できなくなる状態が閉状態である。
【0029】
一方、ウェイストゲートバルブ110が閉状態から開状態になる際には、アクチュエータ140の駆動力がリンク機構130を介してシャフト111に伝達されることにより、シャフト111は、タービンハウジング60に対してシャフト111の周方向の第2回転方向に回転する。すると、ウェイストゲートバルブ110のバルブ面116が、タービンハウジング60の弁座面66から離間する。したがって、ウェイストゲートバルブ110が開状態の場合、バイパス通路64の下流端はウェイストゲートバルブ110のバルブ面116に覆われない。
【0030】
<バイパス通路の形状>
次に、弁座面66におけるバイパス通路64の開口形状について具体的に説明する。
図4に示すように、2つのバイパス通路64の開口は、シャフト111の中心軸111Aに沿う方向に並んでいる。弁座面66に直交する方向から視たときに、各バイパス通路64の開口形状は、概ね楕円形状である。具体的には、弁座面66に直交する方向から視たときに、バイパス通路64の開口の寸法のうちシャフト111の中心軸111Aに沿う寸法の最大値を最大寸法64Hと呼称する。また、バイパス通路64の開口の寸法のうちシャフト111の中心軸111Aに直交する寸法の最大値を最大寸法64Vと呼称する。このとき、最大寸法64Vは、最大寸法64Hよりも小さくなっている。最大寸法64Vの大きさの一例は、最大寸法64Hの60~90%程度の大きさである。2つのバイパス通路64の開口形状は、当該2つのバイパス通路64の間に引ける仮想線を挟んで互いに線対称である。
【0031】
<バイパス通路等の位置>
次に、バイパス通路64、弁座面66、及びバルブ面116の位置関係について具体的に説明する。
【0032】
図4に示すように、弁座面66に直交する方向から視たときに、弁座面66におけるバイパス通路64の開口形状の幾何中心を開口中心64Aと呼称する。また、弁座面66の外縁形状の幾何中心を弁座中心66Aと呼称する。弁座面66の外縁形状は略円形状であるので、弁座中心66Aは、当該円形の中心と略一致する。さらに、図6に示すように、バルブ面116に直交する方向から視たときに、バルブ面116の外縁形状の幾何中心をバルブ中心116Aと呼称する。バルブ面116の外縁形状は略円形状であるので、バルブ中心116Aは、当該円形の中心と略一致する。
【0033】
図7に示すように、バルブ中心116Aからシャフト111の中心軸111Aまでの最短距離Xは、開口中心64Aからシャフト111の中心軸111Aまでの最短距離Zよりも大きくなっている。また、弁座中心66Aからシャフト111の中心軸111Aまでの最短距離Yは、最短距離Zよりも大きくなっている。なお、本実施形態において、最短距離Xは、最短距離Yと同じである。
【0034】
<本実施形態の作用>
ターボチャージャ20では、設計上、距離A及び距離Bが同じになっていても、タービンハウジング60及びウェイストゲートバルブ110の製造誤差等に起因して両者に差が生じることがある。このとき、ウェイストゲートバルブ110が閉状態の場合に、弁座面66に対してバルブ面116が面接触せず、バルブ面116と弁座面66との間に隙間が生じる。特に、図8に示すように、実際の距離A1が設計値である距離Aよりも長くなると、ウェイストゲートバルブ110が閉じきる前に、バルブ面116が弁座面66に干渉する。この場合、シャフト111の中心軸111Aから視て、バイパス通路64の開口よりも遠い箇所において、バルブ面116と弁座面66との間に大きな隙間が生じる。そのため、図8において二点鎖線矢印で示すように、バイパス通路64からバルブ面116と弁座面66との隙間へと至った排気は、バルブ面116に沿って、概ねシャフト111から遠ざかる方向に、すなわち図8における右側に流れる。そして、バルブ面116の近傍を流通した排気は、排出通路63へと漏れ出る。
【0035】
<本実施形態の効果>
(1)本実施形態では、図7に示すように、バルブ中心116Aからシャフト111の中心軸111Aまでの最短距離Xは、開口中心64Aからシャフト111の中心軸111Aまでの最短距離Zよりも大きくなっている。この構成によれば、シャフト111の中心軸111Aから視て、バイパス通路64の開口よりも遠い箇所に位置するバルブ面116の面積が大きい。その結果、バルブ面116の存在が、シャフト111から遠ざかる方向に流れる排気の妨げとなるので、バイパス通路64から漏れ出る排気の量を抑制できる。
【0036】
(2)本実施形態では、図7に示すように、弁座中心66Aからシャフト111の中心軸111Aまでの最短距離Yは、開口中心64Aからシャフト111の中心軸111Aまでの最短距離Zよりも大きくなっている。この構成によれば、シャフト111の中心軸111Aから視て、バイパス通路64の開口よりも遠い箇所に、弁座面66が存在する。したがって、図8に示すように、ウェイストゲートバルブ110が閉じきる前に、バルブ面116が弁座面66に干渉した場合、シャフト111の中心軸111Aから視て、バイパス通路64の開口よりも遠い箇所には、弁座面66とバルブ面116とによって狭い通路が区画される。そして、上記の構成によれば、弁座面66とバルブ面116とによって区画される狭い通路の距離が長くなる。このような通路においては、排気の流通抵抗が大きくなるので、バイパス通路64から漏れ出る排気の量を抑制できる。
【0037】
(3)本実施形態では、最大寸法64Vは、最大寸法64Hよりも小さくなっている。この構成によれば、最短距離Xが最短距離Zよりも大きくなる構成を採用するにあたって、シャフト111の中心軸111Aに直交する方向、すなわち図6における上下方向においてバルブ面116の寸法を大きくする必要性が低い。そのため、シャフト111の中心軸111Aに直交する方向においてバルブ面116の寸法を過度に大きくしなくても、上述したバルブ中心116Aと開口中心64Aとの位置関係を実現しやすい。
【0038】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0039】
「ウェイストゲートバルブ110の形状について」
・ウェイストゲートバルブ110の形状は適宜変更できる。例えば、弁本体114が平面のバルブ面116を有していれば、ウェイストゲートバルブ110がバルブ面116から突出する部分やバルブ面116から窪む部分を有していてもよい。
【0040】
「タービンハウジング60の形状について」
・タービンハウジング60の形状、特に弁座面66の周辺の形状は適宜変更できる。例えば、タービンハウジング60が平面の弁座面66を有していれば、タービンハウジング60が弁座面66から窪む部分を有していてもよい。
【0041】
「弁座面66とバルブ面116との位置関係について」
・上記実施形態では、距離Aと距離Bとが同じに設計されていたが、距離Aと距離Bとを異なる値に設計してもよい。すなわち、設計上、弁座面66とバルブ面116とが面接触しなくてもよい。なお、ウェイストゲートバルブ110が閉じきる前に、バルブ面116が弁座面66に干渉するのを防ぐ観点では、距離Aが距離B以下であることが好ましい。
【0042】
「最短距離Y及び最短距離Zについて」
・上記実施形態において、最短距離Yは、最短距離Zと同じでもよいし、小さくてもよい。この構成においても、最短距離Xが最短距離Zよりも大きくなっていれば、バイパス通路64の開口よりも遠い箇所に位置するバルブ面116の存在により、バイパス通路64から漏れ出る排気の量を抑制できる。
【0043】
「バイパス通路64について」
・上記実施形態において、弁座面66でのバイパス通路64の開口形状は適宜に変更できる。例えば、最大寸法64Vは、最大寸法64Hと同じになっていたり、最大寸法64Hよりも大きくなっていたりしてもよい。この場合にも、バイパス通路64の大きさに合わせて、バルブ面116の大きさを設定すれば、上述したバルブ中心116Aと開口中心64Aとの位置関係を実現できる。また、バイパス通路64の大きさに合わせて、弁座面66の大きさを設定すれば、上述した弁座中心66Aと開口中心64Aとの位置関係を実現できる。
【0044】
・上記実施形態において、バイパス通路64の開口形状は変更できる。例えば、バイパス通路64の開口形状は、真円形状であったり、多角形状であったりしてもよい。
・上記実施形態において、バイパス通路64の数は変更できる。例えば、バイパス通路64の数は、1つであったり、3つ以上であったりしてもよい。なお、バイパス通路64が複数存在する場合、複数のバイパス通路64のうちの少なくとも1つのバイパス通路64について、最短距離Xが最短距離Zよりも大きいという要件を満たしていればよい。
【符号の説明】
【0045】
X…最短距離
Y…最短距離
Z…最短距離
10…内燃機関
20…ターボチャージャ
60…タービンハウジング
61…スクロール通路
62…収容空間
63…排出通路
64…バイパス通路
64A…開口中心
64H…最大寸法
64V…最大寸法
66…弁座面
66A…弁座中心
69…貫通孔
90…タービンホイール
90A…回転軸線
110…ウェイストゲートバルブ
111…シャフト
111A…中心軸
112…弁体
116…バルブ面
116A…バルブ中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8