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特許7380535バッテリー監視装置、方法、プログラム、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】バッテリー監視装置、方法、プログラム、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231108BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231108BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20231108BHJP
   B60L 58/15 20190101ALI20231108BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20231108BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
B60L3/00 S
B60L58/12
B60L58/15
B60R16/04 W
H01M10/48 P
H02J7/00 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020192447
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081111
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洸平
(72)【発明者】
【氏名】堀竹 直
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207901(JP,A)
【文献】特開2014-131431(JP,A)
【文献】特開2014-052296(JP,A)
【文献】特開2019-118204(JP,A)
【文献】特開2018-191385(JP,A)
【文献】特開平11-355904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60R16/00-17/02
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを監視するバッテリー監視装置であって、
前記バッテリーの状態を示す物理量を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記物理量に基づいて、前記バッテリーが第1状態に該当するか否かを判定する判定部と、
前記取得部によって取得された前記物理量に基づいて、前記バッテリーの異常を診断する診断部と、
前記バッテリーと前記バッテリーに接続される所定の機器との間に設けられるリレーの切り替え、及び前記バッテリーの制御モードとして、前記診断部による診断を行う第1モードと前記診断部による診断を行わない第2モードとの間の移行を、制御する制御部と、を備え、
前記制御部は
記第1モードにおいて、前記バッテリーの前記第1状態として前記判定部によって前記バッテリーへ流入する電流が第1閾値以上、前記バッテリーの電圧が第2閾値以上、又は前記バッテリーの蓄電量が第3閾値以上に該当すると判定された場合、前記リレーを非導通状態に制御し、かつ、前記第1モードから前記第2モードへの移行を禁止し、
前記第1モードにおいて、前記診断部による診断が完了し、かつ、前記判定部によって前記バッテリーが前記第1状態に該当しないと判定された場合、前記第1モードから前記第2モードに切り替える、
バッテリー監視装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記取得部によって取得された前記物理量に基づいて、前記バッテリーが第2状態に該当するか否かをさらに判定し、
前記制御部は、前記第1モードから前記第2モードに切り替えてから所定の時間が経過した場合、又は前記第2モードにおいて前記判定部によって前記バッテリーが前記第2状態に該当すると判定された場合に、前記第2モードから前記第1モードに切り替える、
請求項に記載のバッテリー監視装置。
【請求項3】
前記第2状態は、前記バッテリーへ流入する電流が第4閾値以上の状態である、
請求項に記載のバッテリー監視装置。
【請求項4】
前記第2モードは、前記第1モードよりも前記バッテリー監視装置の消費電力が少ないモードである、
請求項1乃至のいずれか1項に記載のバッテリー監視装置。
【請求項5】
バッテリーを監視するバッテリー監視装置のコンピューターが実行するバッテリー監視方法であって、
前記バッテリーの状態を示す物理量を取得するステップと、
前記取得するステップで取得した前記物理量に基づいて、前記バッテリーが第1状態に該当するか否かを判定するステップと、
前記取得するステップで取得した前記物理量に基づいて、前記バッテリーの異常を診断するステップと、
前記バッテリーの制御モードとして、前記診断するステップによる診断を行う第1モードと、前記診断するステップによる診断を行わない第2モードとの間の移行を制御するステップと、
前記第1モードにおいて、前記バッテリーの前記第1状態として前記判定するステップで前記バッテリーへ流入する電流が第1閾値以上、前記バッテリーの電圧が第2閾値以上、又は前記バッテリーの蓄電量が第3閾値以上に該当すると判定された場合、前記バッテリーと前記バッテリーに接続される所定の機器との間に設けられるリレーを非導通状態に制御し、かつ、前記第1モードから前記第2モードへの移行を禁止するステップと
前記第1モードにおいて、前記診断するステップで診断が完了し、かつ、前記判定するステップで前記バッテリーが前記第1状態に該当しないと判定された場合、前記第1モードから前記第2モードに切り替えるステップと、を含む、
バッテリー監視方法。
【請求項6】
バッテリーを監視するバッテリー監視装置のコンピューターに実行させるバッテリー監視プログラムであって、
前記バッテリーの状態を示す物理量を取得するステップと、
前記取得するステップで取得した前記物理量に基づいて、前記バッテリーが第1状態に該当するか否かを判定するステップと、
前記取得するステップで取得した前記物理量に基づいて、前記バッテリーの異常を診断するステップと、
前記バッテリーの制御モードとして、前記診断するステップによる診断を行う第1モードと、前記診断するステップによる診断を行わない第2モードとの間の移行を制御するステップと、
前記第1モードにおいて、前記バッテリーの前記第1状態として前記判定するステップで前記バッテリーへ流入する電流が第1閾値以上、前記バッテリーの電圧が第2閾値以上、又は前記バッテリーの蓄電量が第3閾値以上に該当すると判定された場合、前記バッテリーと前記バッテリーに接続される所定の機器との間に設けられるリレーを非導通状態に制御し、かつ、前記第1モードから前記第2モードへの移行を禁止するステップと
前記第1モードにおいて、前記診断するステップで診断が完了し、かつ、前記判定するステップで前記バッテリーが前記第1状態に該当しないと判定された場合、前記第1モードから前記第2モードに切り替えるステップと、を含む、
バッテリー監視プログラム。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のバッテリー監視装置を搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されたバッテリーを監視するバッテリー監視装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両に搭載されたバッテリーを、消費電力を抑制しつつ適切に管理するバッテリー管理装置が開示されている。この特許文献1に記載の管理装置では、精度よくバッテリーを管理できる通常モードと、精度は低下するが消費電力を少なくできるスリープモードとの切り替えに加え、バッテリーと車載機器とを接続するリレーを非導通状態(OFF)にしてバッテリーを車載機器から完全に切り離すディープスリープモードを用いて、バッテリーを適切に管理することを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-118204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の管理装置における通常モード及びスリープモードでは、バッテリーから車載機器に電力を供給するためにリレーを導通状態(ON)にさせている。このため、例えばバッテリーに外部充電器が接続されたような場合、外部充電器から充電電流がバッテリーに過剰に流れ続けるとバッテリーが過充電状態になってしまう虞がある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、バッテリーが過充電状態になってしまうことを防止できるバッテリー監視装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、バッテリーを監視するバッテリー監視装置であって、バッテリーの状態を示す物理量を取得する取得部と、取得部によって取得された物理量に基づいて、バッテリーが第1状態に該当するか否かを判定する判定部と、取得部によって取得された物理量に基づいて、バッテリーの異常を診断する診断部と、バッテリーとバッテリーに接続される所定機器との間に設けられるリレーの切り替え、及びバッテリーの制御モードとして、診断部による診断を行う第1モードと診断部による診断を行わない第2モードとの間の移行を、制御する制御部と、を備え、制御部は、第1モードにおいてバッテリーの第1状態として判定部によってバッテリーへ流入する電流が第1閾値以上、バッテリーの電圧が第2閾値以上、又はバッテリーの蓄電量が第3閾値以上に該当すると判定された場合、リレーを非導通状態に制御し、かつ、第1モードから第2モードへの移行を禁止し、第1モードにおいて、診断部による診断が完了し、かつ、判定部によってバッテリーが第1状態に該当しないと判定された場合、第1モードから第2モードに切り替える、バッテリー監視装置である。
【0007】
また、本開示技術の他の一態様は、バッテリーの状態を示す物理量を取得するステップと、取得するステップで取得した物理量に基づいて、バッテリーが第1状態に該当するか否かを判定するステップと、取得するステップで取得した物理量に基づいて、バッテリーの異常を診断するステップと、バッテリーの制御モードとして、診断するステップによる診断を行う第1モードと、診断するステップによる診断を行わない第2モードとの間の移行を制御するステップと、第1モードにおいて、バッテリーの第1状態として判定するステップでバッテリーへ流入する電流が第1閾値以上、バッテリーの電圧が第2閾値以上、又はバッテリーの蓄電量が第3閾値以に該当すると判定された場合、バッテリーとバッテリーに接続される所定の機器との間に設けられるリレーを非導通状態に制御し、かつ、第1モードから第2モードへの移行を禁止するステップと、第1モードにおいて、診断するステップで診断が完了し、かつ、判定するステップでバッテリーが第1状態に該当しないと判定された場合、第1モードから第2モードに切り替えるステップと、を含む、バッテリーを監視するバッテリー監視装置のコンピューターが実行するバッテリー監視方法や、バッテリー監視装置のコンピューターに実行させるバッテリー監視プログラムである。
【発明の効果】
【0008】
上記本開示のバッテリー監視装置によれば、バッテリーが過充電状態になってしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るバッテリー監視装置とその周辺部の機能ブロック図
図2A】バッテリー制御部が実行するモード制御の処理手順を示すフローチャート
図2B】バッテリー制御部が実行するモード制御の処理手順を示すフローチャート
図3】制御パターン1を説明するタイミングチャート
図4】制御パターン2を説明するタイミングチャート
図5】制御パターン3を説明するタイミングチャート
図6】従来の制御パターンを説明するタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のバッテリー監視装置は、バッテリーに外部充電器などが接続されてバッテリーへ電流が流入して、バッテリーが将来的に過充電状態になる虞がある場合には、バッテリーを外部充電器から遮断してバッテリーの蓄電量がそれ以上増加することを阻止する。これにより、バッテリーが過充電状態になることを回避できるフェールセーフ機構を実現する。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係るバッテリー監視装置100とその周辺部の機能ブロック図である。図1に例示した機能ブロックは、バッテリー監視装置100、リレー200、及びバッテリー300を含むバッテリーパックと、機器400と、外部充電器500と、を備えている。このバッテリーパックは、一例として、動力源として内燃機関を使用する自動車や動力源として電動モーターを使用するハイブリッド自動車(HV)などの車両に用いられる。
【0012】
バッテリー300は、リレー200を介して機器400に電力を供給するためのバッテリーである。このバッテリー300は、例えば、充放電可能に構成されたリチウムイオン電池などの二次電池のセルCを複数直列に接続して構成することができる。バッテリー300は、車両の駆動に関わらない機器への電力供給に用いられる、いわゆる補機バッテリーとして利用できる。また、バッテリー300は、自動運転機能を搭載した車両においては、自動運転バックアップ電源システム用いられる、いわゆるバックアップ用のサブバッテリーとして利用できる。
【0013】
リレー200は、ノーマリーオン型の1極単投型のスイッチである。このリレー200は、バッテリー300と機器400(及び外部充電器500)との間に設けられ、バッテリー監視装置100の制御(指示)に基づいて、リレー200の接続状態を、接点を電気的に接続させた導通状態(ON)又は接点を電気的に遮断させた非導通状態(OFF)のいずれかに切り替える。
【0014】
機器400は、バッテリー300に接続される所定の機器であり、リレー200を介してバッテリー300から供給される電力で動作する装置である。バッテリー300を車両の補機バッテリーとして利用する場合には、機器400の一例として、モーターやソレノイドなどのアクチュエータ類、ヘッドランプや室内灯などの灯火類、ヒーターやクーラーなどの空調類、ステアリング、ブレーキ、及び自動運転や先進運転支援などのECU(Electronic Control Unit)類、などの補機を提示できる。
【0015】
外部充電器500は、バッテリー300に接続される所定の機器であり、バッテリー300の充電を目的とした充電器である。この外部充電器500は、バッテリーパックのユーザーなどによって着脱可能に構成されている。外部充電器500には、バッテリー上がりなどの緊急時に用いられる充電器だけでなく、機器400の使用などを目的とした平時に用いられる充電器も含まれる。外部充電器500は、リレー200と機器400とを接続する電力線に接続することが可能であり、リレー200を介してバッテリー300に充電用の電流を流すことができる。充電用の電流の一部は、電源用としてバッテリー監視装置100に供給され、また機器400の消費用としても提供される。
【0016】
バッテリー監視装置100は、バッテリー300の状態を監視及び制御すると共に、リレー200の接続状態を制御する。このバッテリー監視装置100は、取得部111と、判定部112と、制御部113と、診断部114と、計時部115と、を含むバッテリー制御部110、電圧計測部120、電流検出部130、及び電流計測部140を、備えている。
【0017】
取得部111は、電圧計測部120及び電流計測部140からバッテリー300の状態を示す物理量として電圧及び電流を取得する。取得部111は、電圧計測部120及び電流計測部140や他の構成からバッテリー300の状態を示す物理量として温度を取得してもよい。また、取得部111は、これらのバッテリー300の状態を示す物理量に基づいてバッテリー300の蓄電量(SOC:State Of Charge)を導出し、取得する。蓄電量(SOC)を導出は、周知のSOC-OCV(開回路電圧)特性曲線などに基づいて導出可能である。なお、バッテリー300の蓄電量(SOC)は、電圧計測部120及び電流計測部140や他の構成から直接取得してもよい。
【0018】
判定部112は、バッテリー300が将来的に過充電状態になる虞がある状態(第1状態)に該当するか否かを判定する。また、判定部112は、バッテリー300に外部充電器500などの充電可能な機器が接続されたと推測できる状態(第2状態)に該当するか否かを判定する。具体的には、判定部112は、取得部111で取得されたバッテリー300へ流入する充電電流、バッテリー300の電圧、及びバッテリー300の蓄電量(SOC)が、それぞれに設定された所定の閾値以上であるか否かを判断することで、バッテリー300が第1状態又は第2状態に該当するか否かを判定する。閾値や判定については、後述する。
【0019】
制御部113は、バッテリー300の制御モードとして、診断部114による診断処理を行う「監視モード(第1モード)」と、診断部114による診断処理も行わず、バッテリー監視装置100の一部機能の動作を停止させて監視モードよりも消費電力を少なくさせる「非監視モード(第2モード)」との間で、移行を行う。非監視モードでは、電流検出部130による電流検出や外部ECUなどからの監視モード移行要求に対応できることに限られ、一例として診断部114、電圧計測部120、及び電流計測部140などの機能が停止する。また、制御部113は、リレー200の接続状態として、ON(導通)とOFF(遮断)とを切り替えることを行う。この制御部113は、監視モードと非監視モードとによる移行及びリレー200のONとOFFとの切り替えを、取得部111が取得したバッテリー300の状態、診断部114による診断処理の状況、及び計時部115による各モードの継続時間などに基づいて制御する。このモード制御及びリレー切り替え制御については、後述する。
【0020】
診断部114は、取得部111が取得したバッテリー300の状態を示す物理量に基づいて、バッテリー300に異常があるか否かを診断することを行う。本実施形態では、車両のイグニッションスイッチがオフ状態(IG-OFF)であるときに、バッテリー300の診断を実施する。なお、バッテリー300の診断手法については、本願の主眼ではないため説明を省略するが、周知の手法を用いることができる。
【0021】
計時部115は、制御部113によってバッテリー300の制御モードが監視モードから非監視モードに移行した後の経過時間を計時する。計時部115は、例えばタイマーなどである。
【0022】
電圧計測部120は、監視モードにおいて、バッテリー300の電圧、より詳しくはバッテリー300を構成する各電池セルCの電圧を計測する。電圧の計測には、図示しない電圧センサーなどが用いられる。この電圧計測部120では、図示しない温度センサーを用いてバッテリー300の温度を計測してもよい。測定された電流(又は温度)は、バッテリー制御部110に出力される。
【0023】
電流検出部130は、非監視モードにおいて、バッテリー300の電流、より具体的にはバッテリー300へ流入した所定の閾値以上の充電電流を検出する。電流の検出には、バッテリー300と直列に挿入された負荷Rに流れる電流を検出できる電流センサー(図示せず)などが用いられる。所定の閾値以上の充電電流が検出されると、バッテリー制御部110にその旨が伝えられる。
【0024】
電流計測部140は、監視モードにおいて、バッテリー300の電流、具体的にはバッテリー300から流出する放電電流及びバッテリー300へ流入する充電電流を計測する。電流の計測には、バッテリー300と直列に挿入された負荷Rに流れる電流を検出できる電流センサー(図示せず)などが用いられる。測定された電流は、バッテリー制御部110に出力される。
【0025】
上述したバッテリー監視装置100は、典型的にはプロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスなどを含んだECU(監視ECUなど)として構成され得る。本実施形態のバッテリー監視装置100は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって、上述した取得部111、判定部112、制御部113、及び診断部114などの各機能の全部又は一部を実現する。
【0026】
[制御]
図2A及び図2Bをさらに参照して、本実施形態に係るバッテリー監視装置100のバッテリー制御部110が行う制御を説明する。図2A及び図2Bは、バッテリー制御部110の各構成によって実行されるモード制御の処理手順を示すフローチャートである。図2Aの処理と図2Bの処理とは、結合子X及びYでそれぞれ結ばれる。
【0027】
図2に示すモード制御は、車両のイグニッションスイッチがオフ状態(IG-OFF)になると開始される。そして、このモード制御は、車両のイグニッションスイッチがON状態(IG-ON)になるまで繰り返し実行され、IG-ONになった時点で直ちに終了する。
【0028】
(ステップS201)
バッテリー制御部110の制御部113は、バッテリー監視装置100によるバッテリー300の制御モードを監視モードに移行させる。すなわち、現在の制御モードがすでに監視モードであった場合には監視モードを維持し、現在の制御モードが非監視モードであった場合には非監視モードから監視モードに移行させる。バッテリー300の制御モードが監視モードに移行すると、ステップS202に処理が進む。
【0029】
(ステップS202)
バッテリー制御部110の診断部114は、監視モード時に行うべきバッテリー300に関する所定の診断処理を実施する。バッテリー300の診断が実施されると、ステップS203に処理が進む。
【0030】
(ステップS203)
バッテリー制御部110は、リレー200の接続状態がOFF(遮断)か否かを判断する。リレー200の接続状態は、制御部113の制御状態で判断することができる。
【0031】
リレー200の接続状態がOFFである場合は(ステップS203、はい)、ステップS208に処理が進み、リレー200の接続状態がONである場合は(ステップS203、いいえ)、ステップS204に処理が進む。
【0032】
(ステップS204)
バッテリー制御部110の判定部112は、取得部111で取得されたバッテリー300へ流入する充電電流が第1閾値以上であるか否か(バッテリー300が第1状態に該当するか否か)を判断する。この判断は、今後、バッテリー300が過充電になる虞があるか否かを電流に基づいて判定するために行われる。この第1閾値は、バッテリー300に接続された外部充電器500から所定の時間継続してバッテリー300に流れ込むと仮定した場合に、所定の蓄電量(SOC)にあるバッテリー300が過充電状態になってしまうと推測される電流値に基づいて定められる。所定の時間や所定の蓄電量(SOC)は、監視モードと非監視モードとの移行サイクルやバッテリー300の容量及び性能などに基づいて、適切に設定することができる。
【0033】
バッテリー300の充電電流が第1閾値以上である場合は(ステップS204、はい)、ステップS207に処理が進み、バッテリー300の充電電流が第1閾値未満である場合は(ステップS204、いいえ)、ステップS205に処理が進む。
【0034】
(ステップS205)
バッテリー制御部110の判定部112は、取得部111で取得されたバッテリー300の電圧が第2閾値以上であるか否か(バッテリー300が第1状態に該当するか否か)を判断する。この判断は、今後、バッテリー300が過充電になる虞があるか否かを電圧に基づいて判定するために行われる。この第2閾値は、バッテリー300に接続された外部充電器500から所定の電流が所定の時間継続してバッテリー300に流れ込むと仮定した場合に、所定の蓄電量(SOC)にあるバッテリー300が過充電状態になってしまうと推測される電圧値に基づいて定められる。所定の電流、所定の時間、及び所定の蓄電量(SOC)は、監視モードと非監視モードとの移行サイクルやバッテリー300の容量及び性能などに基づいて、適切に設定することができる。バッテリー300の蓄電量(SOC)と電圧との関係については、周知のSOC-OCV特性曲線に基づいて取得することができる。
【0035】
バッテリー300の電圧が第2閾値以上である場合は(ステップS205、はい)、ステップS207に処理が進み、バッテリー300の電圧が第2閾値未満である場合は(ステップS205、いいえ)、ステップS206に処理が進む。
【0036】
(ステップS206)
バッテリー制御部110の判定部112は、取得部111で取得されたバッテリー300の蓄電量(SOC)が第3閾値以上であるか否か(バッテリー300が第1状態に該当するか否か)を判断する。この判断は、今後、バッテリー300が過充電になる虞があるか否かを蓄電量(SOC)に基づいて判定するために行われる。この第3閾値は、バッテリー300に接続された外部充電器500から所定の電流が所定の時間継続してバッテリー300に流れ込むと仮定した場合に、バッテリー300が過充電状態になってしまうと推測される蓄電量(SOC)に基づいて定められる。つまり、第3閾値は、バッテリー300が過充電に至りやすい蓄電量(SOC)に設定される。所定の電流及び所定の時間は、監視モードと非監視モードとの移行サイクルやバッテリー300の容量及び性能などに基づいて、適切に設定することができる。バッテリー300の蓄電量(SOC)は、周知のSOC-OCV(開回路電圧)特性曲線に基づいてバッテリー300の電圧から求めることができる。
【0037】
バッテリー300の蓄電量(SOC)が第3閾値以上である場合は(ステップS206、はい)、ステップS207に処理が進み、バッテリー300の電圧が第3閾値未満である場合は(ステップS206、いいえ)、ステップS208に処理が進む。
【0038】
(ステップS207)
バッテリー制御部110の制御部113は、バッテリー監視装置100によるバッテリー300の制御モードを監視モードに維持しつつ、リレー200の接続状態をOFF(遮断)に切り替える。すなわち、現在の制御モードである監視モードを維持しつつ、現在ON(導通)であるリレー200の接続状態をONからOFFに切り替える。これにより、バッテリー300が機器400と切り離される、あるいはバッテリー300が機器400及び外部充電器500と切り離される。バッテリー300の制御モードが監視モードに、かつ、リレー200の接続状態がOFFにそれぞれ制御されると、ステップS208に処理が進む。
【0039】
(ステップS208)
バッテリー制御部110の診断部114は、バッテリー300の診断が完了したか否かを判断する。バッテリー300の診断が完了した場合は(ステップS208、はい)、監視モードを終了できるためステップS209に処理が進み、バッテリー300の診断が完了していない場合は(ステップS208、いいえ)、監視モードを終了できないためステップS202に処理が進む。
【0040】
(ステップS209)
バッテリー制御部110の制御部113は、バッテリー監視装置100によるバッテリー300の制御モードを監視モードから非監視モードに移行させる。バッテリー300の制御モードが監視モードに移行すると、ステップS210に処理が進む。
【0041】
(ステップS210)
バッテリー制御部110の判定部112は、取得部111で取得されたバッテリー300へ流入する充電電流が第4閾値以上であるか否か(バッテリー300が第2状態に該当するか否か)を判断する。この判断は、バッテリー300に外部充電器500が接続されたか否かを電流に基づいて判定するために行われる。よって、この第4閾値は、バッテリー300に外部充電器500が接続された場合に、外部充電器500からバッテリー300に向けて流入する可能性のある電流値に基づいて定められる。なお、第4閾値は、上記ステップS204で判断する第1閾値と同じであっても異なってもよい。
【0042】
バッテリー300の充電電流が第4閾値以上である場合は(ステップS210、はい)、ステップS201に処理が進み、バッテリー300の充電電流が第4閾値未満である場合は(ステップS210、いいえ)、ステップS211に処理が進む。
【0043】
(ステップS211)
バッテリー制御部110の判定部112は、制御部113によってバッテリー300の制御モードが監視モードから非監視モードに移行した後、第1時間が経過したか否かを判断する。つまり、判定部112は、計時部115で計時された経過時間が第1時間以上であるか否かを判断する。この判断は、非監視モードが長期に亘ることで、バッテリー300の診断を適切に実施できなくなることを回避するために行われる。よって、この第1時間は、バッテリー300の診断を実施する好適なサイクルに基づいて定められる。
【0044】
非監視モードに移行してから第1時間が経過した場合は(ステップS211、はい)、ステップS201に処理が進み、非監視モードに移行してから第1時間が経過していない場合は(ステップS211、いいえ)、ステップS210に処理が進む。
【0045】
なお、本実施形態では、上記ステップS204~S206の判断のうちいずれか1つ該当すればステップS207に処理が進むフローを例示したが、上記ステップS204~S206のうちのいずれか2つ又は3つ全てが該当した場合にステップS207に処理が進むフローとしてもよい。このようなフローにすれば、判断精度がより向上する。また、判断精度が低下することを許容できるのであれば、上記ステップS204~S206のうちのいずれか1つ又は2つの処理だけを判断するフローとしても構わない。
【0046】
さらに、図3乃至図6を参照して、本実施形態に係るバッテリー監視装置100のバッテリー制御部110が行う制御を説明する。図3は、外部充電器500がバッテリー300に接続されない場合の制御(制御パターン1)を説明するタイミングチャートである。図4は、監視モードにおいて外部充電器500がバッテリー300に接続された場合の本開示の制御(制御パターン2)を説明するタイミングチャートである。図5は、非監視モードにおいて外部充電器500がバッテリー300に接続された場合の本開示の制御(制御パターン3)を説明するタイミングチャートである。また、図6は、比較参考のために、外部充電器500がバッテリー300に接続された場合の従来の制御(従来制御パターン)を説明するタイミングチャートである。
【0047】
・制御パターン1
図3に示した外部充電器500がバッテリー300に接続されない制御パターン1では、車両のイグニッションスイッチがIG-OFFになった以降は、監視モードと非監視モードとが交互に繰り返され、監視モードでは診断処理などで多めの放電電流によりバッテリー300の電圧(又は蓄電量)が大きい勾配で降下し、非監視モードでは一部の機能停止により少なめの放電電流によりバッテリー300の電圧(又は蓄電量)が小さい勾配で降下する。
【0048】
従って、外部充電器500がバッテリー300に接続されない制御パターン1の場合には、バッテリー300が過充電状態になってしまうことがない。
【0049】
・制御パターン2
図4に示した監視モードにおいて外部充電器500がバッテリー300に接続された制御パターン2では、外部充電器500が接続された時点からバッテリー300の充電電流が増加する(図示したような線形的な増加だけでなく非線形的な増加もあり得る)。そしてその後、バッテリー300の充電電流が第1閾値以上となった場合、又はバッテリー300の電圧が第2閾値以上となった場合、あるいはバッテリー300の蓄電量(SOC)が第3閾値以上になった場合に、リレー200をOFFして外部充電器500からバッテリー300へ流入する充電電流を遮断すると共に、監視モードが維持される(監視モードから非監視モードへの移行が禁止される)。なお、図4は、バッテリー300の充電電流が第1閾値以上となったタイミングとバッテリー300の電圧が第2閾値以上となったタイミングとが、同じである一例を示したものである。
【0050】
この制御によって、監視モードにおいて外部充電器500がバッテリー300に接続された場合でも、バッテリー300の蓄電量がそれ以上増加することを阻止することができ、バッテリー300が過充電状態になることを回避できる。
【0051】
・制御パターン3
図5に示した非監視モードにおいて外部充電器500がバッテリー300に接続された制御パターン3では、外部充電器500が接続された時点からバッテリー300の充電電流が増加する(図示したような線形的な増加だけでなく非線形的な増加もあり得る)。そしてその後、バッテリー300の充電電流が第4閾値以上となった場合、まず非監視モードが監視モードへ移行する。以降は上記制御パターン2と同様、バッテリー300の充電電流が第1閾値以上となった場合、又はバッテリー300の電圧が第2閾値以上となった場合、あるいはバッテリー300の蓄電量(SOC)が第3閾値以上になった場合に、リレー200をOFFして外部充電器500からバッテリー300へ流入する充電電流を遮断すると共に、監視モードが維持される(監視モードから非監視モードへの移行が禁止される)。なお、図5は、バッテリー300の充電電流が第1閾値以上となったタイミングとバッテリー300の電圧が第2閾値以上となったタイミングとが、同じである一例を示したものである。
【0052】
この制御によって、非監視モードにおいて外部充電器500がバッテリー300に接続された場合でも、バッテリー300の蓄電量がそれ以上増加することを阻止することができ、バッテリー300が過充電状態になることを回避できる。
【0053】
・従来の制御パターン
比較参考のために図6に示した従来の制御パターンでは、外部充電器500が接続された時点からバッテリー300の充電電流が増加するが、バッテリー300の充電電流、又はバッテリー300の電圧、あるいはバッテリー300の蓄電量(SOC)が所定の閾値以上になったことを検知してリレー200をOFFし、外部充電器500からバッテリー300に流入する充電電流を阻止することを行っていない。このため、従来の制御パターンでは、バッテリー300が過充電状態になる虞がある。
【0054】
[作用・効果]
以上のように、本開示の一実施形態に係るバッテリー監視装置100では、バッテリー300に外部充電器500が接続された場合など、バッテリー300へ流入する充電電流が増加して、バッテリー300が将来的に過充電状態になる虞があるか否かを判断する。そして、バッテリー300が将来的に過充電状態になる虞があるときには、バッテリー300の前段に設けられたリレー200をOFFして、バッテリー300への充電電流の流入を遮断する。この制御により、バッテリー300の蓄電量がそれ以上増加することを阻止することができ、バッテリー300が過充電状態になることを回避できる。従って、バッテリー300の過充電保護に関するフェールセーフ機構を実現することができる。
【0055】
バッテリー300が将来的に過充電状態になる虞があるか否かを判断は、バッテリー300の充電電流、又はバッテリー300の電圧、あるいはバッテリー300の蓄電量(SOC)の全てにおいて判断し、いずれか1つでも該当すればバッテリー300への充電電流の流入を遮断する。この判断により、素早くバッテリー300の過充電保護を実行することができる。
【0056】
また、本バッテリー監視装置100では、バッテリー300が将来的に過充電状態になる虞がない場合には、監視モードにおいてバッテリー300の診断処理を実施でき、非監視モードでは機器400に電力を供給しながらバッテリー監視装置100の消費電力を低減させることができる。
【0057】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、バッテリー監視装置だけでなく、プロセッサとメモリを備えたバッテリー監視装置が実行するバッテリー監視方法、その方法の制御プログラム、その制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記録媒体、あるいはバッテリー監視装置を搭載した車両などとして捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、車両に搭載されたバッテリーを監視するバッテリー監視装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
100 バッテリー監視装置
110 バッテリー制御部
111 取得部
112 判定部
113 制御部
114 診断部
115 計時部
120 電圧計測部
130 電流検出部
140 電流計測部
200 リレー
300 バッテリー
400 機器
500 外部充電器
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6