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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】インバータ制御装置及び車載用流体機械
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231108BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020194981
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083581
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川島 隆
(72)【発明者】
【氏名】大神 崇
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/180763(WO,A1)
【文献】特開2009-165298(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131093(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用蓄電装置を用いて車載用電動モータを駆動させるインバータ回路の制御に用いられるインバータ制御装置であって、
前記車載用電動モータは、3相コイルを有し、
前記インバータ回路は、3相スイッチング素子を有し、
前記インバータ制御装置は、
前記3相コイルに印加する3相電圧指令値を導出する3相電圧指令値導出部と、
前記3相電圧指令値とキャリア信号とに基づいて、予め定められた制御周期内に複数のPWM信号を各相毎に生成する生成部と、
を備え、前記各相のPWM信号を用いて前記3相スイッチング素子をPWM制御するものであり、
前記生成部は、前記3相電圧指令値に対応した基準パルス幅を有し、1つの相における前記制御周期内の前記複数のPWM信号について、前記制御周期内の前記複数のPWM信号の平均パルス幅が前記基準パルス幅となるように前記複数のPWM信号のうち、少なくとも2つのパルス幅を互いに異ならせるパルス変更制御を行うパルス変更部を備えていることを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項2】
前記車載用蓄電装置の電圧である電源電圧を把握する電圧把握部と、
前記車載用電動モータの回転速度を把握する速度把握部と、
外部から送信される外部指令値と前記速度把握部の把握結果とに基づいて、前記車載用電動モータのd軸及びq軸に印加する電圧の目標値である2相電圧指令値を導出する2相電圧指令値導出部と、
を備え、
前記3相電圧指令値導出部は、前記2相電圧指令値に基づいて、前記3相電圧指令値を導出し、
前記生成部は、前記2相電圧指令値と前記電圧把握部の把握結果とに基づいて算出される電圧利用率が予め定められた閾値利用率以下である場合に、前記パルス変更部による前記パルス変更制御が行われるようにする請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
前記パルス変更部は、3相のうち2つの可変相における前記制御周期内の前記複数のPWM信号について前記パルス変更制御を行う一方、3相のうち前記可変相以外の1つの固定相における前記制御周期内の前記複数のPWM信号については前記パルス変更制御を行わない請求項1又は請求項2に記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記2つの可変相のうち第1可変相における前記制御周期内の前記複数のPWM信号である複数の第1可変相PWM信号は、
前記基準パルス幅よりも広いパルス幅を有する第1幅広信号と、
前記基準パルス幅よりも狭いパルス幅を有する第1幅狭信号と、
を含み、
前記2つの可変相のうち第2可変相における前記制御周期内の前記複数のPWM信号である複数の第2可変相PWM信号は、
前記第1幅広信号が出力される場合に出力されるものであって、前記基準パルス幅よりも狭いパルス幅を有する第2幅狭信号と、
前記第1幅狭信号が出力される場合に出力されるものであって、前記基準パルス幅よりも広いパルス幅を有する第2幅広信号と、
を含む請求項3に記載のインバータ制御装置。
【請求項5】
前記車載用蓄電装置の電圧である電源電圧を把握する電圧把握部と、
前記車載用電動モータの回転速度を把握する速度把握部と、
外部から送信される外部指令値と前記速度把握部の把握結果とに基づいて、前記車載用電動モータのd軸及びq軸に印加する電圧の目標値である2相電圧指令値を導出する2相電圧指令値導出部と、
を備え、
前記3相電圧指令値導出部は、前記2相電圧指令値に基づいて、前記3相電圧指令値を導出するものであって、
前記2相電圧指令値と前記電圧把握部の把握結果とに基づいて算出される電圧利用率が第1電圧利用率である場合には、前記3相電圧指令値として、前記3相電圧指令値の中性点電位が第1中性点振幅で変化することによって得られる第1のシフト指令値を導出し、
前記電圧利用率が前記第1電圧利用率よりも小さい第2電圧利用率である場合には、前記3相電圧指令値として、前記中性点電位が前記第1中性点振幅よりも大きい第2中性点振幅で変化することによって得られる第2のシフト指令値を導出する請求項1~4のうちいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
【請求項6】
前記車載用蓄電装置の電圧である電源電圧を把握する電圧把握部と、
前記車載用電動モータの回転速度を把握する速度把握部と、
外部から送信される外部指令値と前記速度把握部の把握結果とに基づいて、前記車載用電動モータのd軸及びq軸に印加する電圧の目標値である2相電圧指令値を導出する2相電圧指令値導出部と、
を備え、
前記3相電圧指令値導出部は、前記2相電圧指令値に基づいて、前記3相電圧指令値を導出するものであって、
前記2相電圧指令値と前記電圧把握部の把握結果とに基づいて算出される電圧利用率が予め定められた閾値利用率以下である場合、同一の前記2相電圧指令値に対して、前記3相コイルの相間電圧が同一であって変化範囲が互いに異なる3相電圧指令値を、切替周期で切り替えて導出する請求項1~5のうちいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
【請求項7】
前記車載用電動モータと、
前記インバータ回路と、
請求項1~6のうちいずれか一項に記載のインバータ制御装置と、
を備えていることを特徴とする車載用流体機械。
【請求項8】
前記車載用流体機械は、前記車載用電動モータによって駆動する圧縮部を備えた車載用電動圧縮機である請求項7に記載の車載用流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ制御装置及び車載用流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、車載用蓄電装置を用いて車載用電動モータを駆動させるインバータ回路の制御に用いられるインバータ制御装置が知られている。特許文献1には、車載用電動モータは自動車のエアコン用モータとして使用されるものであって3相コイルを有している点、及び、インバータ回路が3相スイッチング素子を有する点が記載されている。また、特許文献1には、励磁成分電圧及びトルク成分電圧からなる2相電圧指令値に基づいて3相電圧指令値としての駆動電圧を算出する点について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-208187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、3相電圧指令値に基づいてPWM信号を生成し、当該PWM信号を用いて3相スイッチング素子を制御する場合、スイッチング素子のスイッチングに起因して特定周波数のノイズが発生する場合がある。本願発明者らは、当該特定周波数のノイズが中性点電位の波形に起因しているものと見出した。例えば、中性点電位の波形が方形波である場合、当該中性点電位には特定周波数のノイズとしての高調波ノイズが含まれることとなる。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的はスイッチング素子のスイッチングに起因する特定周波数のノイズを低減できるインバータ制御装置及びそのインバータ制御装置を備えた車載用流体機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するインバータ制御装置は、車載用蓄電装置を用いて車載用電動モータを駆動させるインバータ回路の制御に用いられるものであって、前記車載用電動モータは、3相コイルを有し、前記インバータ回路は、3相スイッチング素子を有し、前記インバータ制御装置は、前記3相コイルに印加する3相電圧指令値を導出する3相電圧指令値導出部と、前記3相電圧指令値とキャリア信号とに基づいて、予め定められた制御周期内に複数のPWM信号を各相毎に生成する生成部と、を備え、前記各相のPWM信号を用いて前記3相スイッチング素子をPWM制御するものであり、前記生成部は、前記3相電圧指令値に対応した基準パルス幅を有し、1つの相における前記制御周期内の前記複数のPWM信号について、前記制御周期内の前記複数のPWM信号の平均パルス幅が前記基準パルス幅となるように前記複数のPWM信号のうち、少なくとも2つのパルス幅を互いに異ならせるパルス変更制御を行うパルス変更部を備えていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、1つの相における制御周期内の複数のPWM信号のうち、少なくとも2つのパルス幅を互いに異ならせることにより、中性点電位を台形波に近づけることができる。台形波は、方形波よりも、高調波ノイズがない正弦波に近い波形である。これにより、中性点電位の波形を、方形波よりも、高調波ノイズが小さい波形に近づけることができるため、3相スイッチング素子のスイッチングに起因する特定周波数のノイズを低減できる。
【0008】
一方、制御周期内の複数のPWM信号の平均パルス幅は、3相電圧指令値に対応した基準パルス幅となっている。これにより、3相コイルに印加される相間電圧は3相電圧指令値に対応した値となる。したがって、車載用電動モータには、3相電圧指令値に対応したトルクが付与される。よって、中性点電位を台形波に近づけることに起因して異なるトルクが付与されるといった不都合を抑制できる。
【0009】
上記インバータ制御装置について、前記車載用蓄電装置の電圧である電源電圧を把握する電圧把握部と、前記車載用電動モータの回転速度を把握する速度把握部と、外部から送信される外部指令値と前記速度把握部の把握結果とに基づいて、前記車載用電動モータのd軸及びq軸に印加する電圧の目標値である2相電圧指令値を導出する2相電圧指令値導出部と、を備え、前記3相電圧指令値導出部は、前記2相電圧指令値に基づいて、前記3相電圧指令値を導出し、前記生成部は、前記2相電圧指令値と前記電圧把握部の把握結果とに基づいて算出される電圧利用率が予め定められた閾値利用率以下である場合に、前記パルス変更部による前記パルス変更制御が行われるようにするとよい。
【0010】
かかる構成によれば、電圧利用率が閾値利用率以下である場合にパルス変更制御を行うことにより、電圧利用率が小さい場合に大きくなり易い特定周波数のノイズを低減できる。
【0011】
詳述すると、電圧利用率が小さくなると、3相電圧指令値の変化量が小さくなり易い。この場合、3相電圧指令値が特定の値又はそれに近い値に偏り易いため、各相のPWM信号のパルス幅が特定の値又はそれに近い値に偏り易い。かかる状況下において中性点電位の波形が方形波である場合、特定周波数のノイズとして、上記特定のパルス幅に対応する高調波ノイズが大きくなり易くなる。
【0012】
この点、本構成によれば、電圧利用率が閾値利用率以下である場合には、中性点電位の波形が台形波に近づくため、上記高調波ノイズを低減できる。これにより、電圧利用率が小さい場合に大きくなり易い上記高調波ノイズを好適に低減できる。
【0013】
上記インバータ制御装置について、前記パルス変更部は、3相のうち2つの可変相における前記制御周期内の前記複数のPWM信号について前記パルス変更制御を行う一方、3相のうち前記可変相以外の1つの固定相における前記制御周期内の前記複数のPWM信号については前記パルス変更制御を行わないとよい。
【0014】
かかる構成によれば、1つの相が固定相となっているため、全ての相を可変相とする場合と比較して、処理負荷の軽減を図ることができる。
上記インバータ制御装置について、前記2つの可変相のうち第1可変相における前記制御周期内の前記複数のPWM信号である複数の第1可変相PWM信号は、前記基準パルス幅よりも広いパルス幅を有する第1幅広信号と、前記基準パルス幅よりも狭いパルス幅を有する第1幅狭信号と、を含み、前記2つの可変相のうち第2可変相における前記制御周期内の前記複数のPWM信号である複数の第2可変相PWM信号は、前記第1幅広信号が出力される場合に出力されるものであって、前記基準パルス幅よりも狭いパルス幅を有する第2幅狭信号と、前記第1幅狭信号が出力される場合に出力されるものであって、前記基準パルス幅よりも広いパルス幅を有する第2幅広信号と、を含むとよい。
【0015】
かかる構成によれば、2つの可変相のうち一方の可変相におけるパルス幅が基準パルス幅よりも広くなる一方、他方の可変相におけるパルス幅は基準パルス幅よりも狭くなる。これにより、対応する2つの可変相のパルス幅の差を大きくすることができ、中性点電位の波形を、より正弦波に近い台形波にすることができる。
【0016】
上記インバータ制御装置について、前記車載用蓄電装置の電圧である電源電圧を把握する電圧把握部と、前記車載用電動モータの回転速度を把握する速度把握部と、外部から送信される外部指令値と前記速度把握部の把握結果とに基づいて、前記車載用電動モータのd軸及びq軸に印加する電圧の目標値である2相電圧指令値を導出する2相電圧指令値導出部と、を備え、前記3相電圧指令値導出部は、前記2相電圧指令値に基づいて、前記3相電圧指令値を導出するものであって、前記2相電圧指令値と前記電圧把握部の把握結果とに基づいて算出される電圧利用率が第1電圧利用率である場合には、前記3相電圧指令値として、前記3相電圧指令値の中性点電位が第1中性点振幅で変化することによって得られる第1のシフト指令値を導出し、前記電圧利用率が前記第1電圧利用率よりも小さい第2電圧利用率である場合には、前記3相電圧指令値として、前記中性点電位が前記第1中性点振幅よりも大きい第2中性点振幅で変化することによって得られる第2のシフト指令値を導出するとよい。
【0017】
かかる構成によれば、電圧利用率が第1電圧利用率よりも小さい第2電圧利用率である場合には、第1電圧利用率に対応する第1中性点振幅よりも大きい第2中性点振幅で中性点電位が変化することにより、少なくとも第2中性点振幅以上の変化範囲を有する第2のシフト指令値が得られる。これにより、第2のシフト指令値の変化範囲が狭くなることを抑制できる。したがって、3相電圧指令値の変化範囲が狭くなることに起因して局所的に特定周波数のノイズが大きくなることを抑制できる。
【0018】
特に、通常、電圧利用率が小さくなると、3相電圧指令値の変化範囲は小さくなり易い。このため、電圧利用率が第2電圧利用率である場合には、3相電圧指令値の変化範囲は狭くなり易い。
【0019】
この点、本構成によれば、電圧利用率が第2電圧利用率である場合には、相対的に大きい第2中性点振幅で中性点電位を変化させることにより、電圧利用率が第2電圧利用率である場合であっても3相電圧指令値の変化範囲が狭くなることを抑制できる。これにより、局所的に特定周波数のノイズが大きくなることを抑制できる。
【0020】
上記インバータ制御装置について、前記車載用蓄電装置の電圧である電源電圧を把握する電圧把握部と、前記車載用電動モータの回転速度を把握する速度把握部と、外部から送信される外部指令値と前記速度把握部の把握結果とに基づいて、前記車載用電動モータのd軸及びq軸に印加する電圧の目標値である2相電圧指令値を導出する2相電圧指令値導出部と、を備え、前記3相電圧指令値導出部は、前記2相電圧指令値に基づいて、前記3相電圧指令値を導出するものであって、前記2相電圧指令値と前記電圧把握部の把握結果とに基づいて算出される電圧利用率が予め定められた閾値利用率以下である場合、同一の前記2相電圧指令値に対して、前記3相コイルの相間電圧が同一であって変化範囲が互いに異なる3相電圧指令値を、切替周期で切り替えて導出するとよい。
【0021】
かかる構成によれば、電圧利用率が閾値利用率以下である場合、3相電圧指令値は、3相コイルの相間電圧が同一のまま、変化範囲が異なる値に切替周期で切り替わる。これにより、仮に2相電圧指令値が同一であっても、3相電圧指令値は切替周期で変化する。したがって、電圧利用率が小さい状況下において3相電圧指令値が周期的に同じ値となることに起因する特定周波数のノイズを低減できる。
【0022】
特に、本構成によれば、3相電圧指令値が切り替わった場合であっても3相コイルに印加される相間電圧は同一となっている。これにより、車載用電動モータには同一のトルクが付与される。したがって、3相電圧指令値を切り替えることに起因して異なるトルクが付与されるといった不都合を抑制できる。
【0023】
以上のことから、車載用電動モータに対して適切なトルクを付与した状態を維持しつつ、電圧利用率が小さい状況下において3相電圧指令値が周期的に同じ値となることによって生じる特定周波数のノイズを低減できる。
【0024】
上記目的を達成する車載用流体機械は、前記車載用電動モータと、前記インバータ回路と、上述したインバータ制御装置と、を備えていることを特徴とする。
前記車載用流体機械は、前記車載用電動モータによって駆動する圧縮部を備えた車載用電動圧縮機であるとよい。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、スイッチング素子のスイッチングに起因する特定周波数のノイズを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】車載用電動圧縮機の概要を示すブロック図。
図2】インバータ回路及びインバータ制御装置の電気的構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態の回転制御処理を示すフローチャート。
図4】(a)u相のPWM信号の一例を示す波形図、(b)パルス変更制御が行われたv相のPWM信号の一例を示す波形図、(c)パルス変更制御が行われたw相のPWM信号の一例を示す波形図、(d)中性点電位の一例を示す波形図。
図5】第2実施形態の回転制御処理を示すフローチャート。
図6】(a)u相のPWM信号の一例を示す波形図、(b)パルス変更制御が行われたv相のPWM信号の一例を示す波形図、(c)パルス変更制御が行われたw相のPWM信号の一例を示す波形図、(d)中性点電位の一例を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、インバータ制御装置、当該インバータ制御装置が搭載された車載用流体機械の第1実施形態について説明する。なお、以下の記載は、一例を示すものであり、インバータ制御装置及び車載用流体機械が本実施形態の内容に限定されるものではない。
【0028】
本実施形態では、車載用流体機械は車載用電動圧縮機であり、当該車載用電動圧縮機は車載用空調装置に用いられる。車載用空調装置及び車載用電動圧縮機の概要について説明する。
【0029】
図1に示すように、車両100に搭載されている車載用空調装置101は、車載用電動圧縮機10と、車載用電動圧縮機10に対して流体としての冷媒を供給する外部冷媒回路102とを備えている。
【0030】
外部冷媒回路102は、例えば熱交換器及び膨張弁等を有している。車載用空調装置101は、車載用電動圧縮機10によって冷媒が圧縮され、且つ、外部冷媒回路102によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。
【0031】
車載用空調装置101は、当該車載用空調装置101の全体を制御する空調ECU103を備えている。空調ECU103は、車内温度やカーエアコンの設定温度等を把握可能に構成されており、これらのパラメータに基づいて、車載用電動圧縮機10に対して指令回転速度Ncなどの各種指令を送信する。
【0032】
車両100は、車載用蓄電装置104を備えている。車載用蓄電装置104は、直流電力の充放電が可能なものであれば任意であり、例えば二次電池や電気二重層キャパシタ等である。車載用蓄電装置104は、車載用電動圧縮機10の直流電源として用いられる。
【0033】
車載用電動圧縮機10は、車載用電動モータ11と、車載用電動モータ11によって駆動する圧縮部12と、車載用蓄電装置104を用いて車載用電動モータ11を駆動させるインバータ回路13と、インバータ回路13の制御に用いられるインバータ制御装置14と、を備えている。
【0034】
車載用電動モータ11は、回転軸21と、回転軸21に固定されたロータ22と、ロータ22に対して対向配置されているステータ23と、ステータ23に捲回された3相コイル24u,24v,24wと、を有している。ロータ22は永久磁石22aを含んでいる。詳細には、永久磁石22aはロータ22内に埋め込まれている。図2に示すように、3相コイル24u,24v,24wは例えばY結線されている。ロータ22及び回転軸21は、3相コイル24u,24v,24wが所定のパターンで通電されることにより回転する。すなわち、本実施形態の車載用電動モータ11は、3相モータである。
【0035】
なお、3相コイル24u,24v,24wの結線態様は、Y結線に限られず任意であり、例えばデルタ結線でもよい。また、車載用電動モータ11の回転速度及び加速度とは、ロータ22の回転速度及び加速度を意味する。
【0036】
圧縮部12は、車載用電動モータ11が駆動することによって流体(本実施形態では冷媒)を圧縮するものである。詳細には、圧縮部12は、回転軸21が回転することによって、外部冷媒回路102から供給された吸入冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を吐出する。圧縮部12の具体的な構成は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等任意である。
【0037】
インバータ回路13は、車載用蓄電装置104から入力される直流電力を交流電力に変換することにより、車載用蓄電装置104を用いて車載用電動モータ11を駆動させるものである。
【0038】
図2に示すように、インバータ回路13は、3相スイッチング素子Qu1~Qw2を有している。詳細には、インバータ回路13は、u相コイル24uに対応するu相スイッチング素子Qu1,Qu2と、v相コイル24vに対応するv相スイッチング素子Qv1,Qv2と、w相コイル24wに対応するw相スイッチング素子Qw1,Qw2と、を備えている。
【0039】
3相スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2(以下、「3相スイッチング素子Qu1~Qw2」という。)は、例えばIGBT等のパワースイッチング素子である。但し、3相スイッチング素子Qu1~Qw2は、IGBTに限られず、任意であり、例えばMOSFETでもよい。なお、3相スイッチング素子Qu1~Qw2は、還流ダイオード(ボディダイオード)Du1~Dw2を有している。
【0040】
各u相スイッチング素子Qu1,Qu2は接続線を介して互いに直列に接続されており、その接続線はu相コイル24uに接続されている。u相スイッチング素子Qu1のコレクタは、車載用蓄電装置104の高圧側である正極端子(+端子)に接続されている。u相スイッチング素子Qu2のエミッタは、車載用蓄電装置104の低圧側である負極端子(-端子)に接続されている。
【0041】
なお、他のスイッチング素子Qv1,Qv2,Qw1,Qw2の接続態様は、対応するコイルが異なる点を除いて、u相スイッチング素子Qu1,Qu2と同様である。
インバータ制御装置14は、CPU及びメモリ等といった電子部品を有するコントローラである。インバータ制御装置14は、インバータ回路13、詳細には3相スイッチング素子Qu1~Qw2を制御することにより、車載用電動モータ11を駆動させる。
【0042】
インバータ制御装置14は、車載用蓄電装置104の電圧である電源電圧Vinを把握する電圧把握部として電圧センサ31を備えている。電圧センサ31は、インバータ回路13の入力電圧を検出することにより、電源電圧Vinを把握する。
【0043】
インバータ制御装置14は、車載用電動モータ11に流れるモータ電流を検出する電流センサ32を備えている。本実施形態におけるモータ電流とは、例えば3相コイル24u,24v,24wに流れる3相電流Iu,Iv,Iwである。
【0044】
図2に示すように、インバータ制御装置14は、電流センサ32によって検出された3相電流Iu,Iv,Iwを互いに直交したd軸電流Id及びq軸電流Iq(以下、「2相電流Id,Iq」という。)に変換する3相/2相変換回路33を有している。
【0045】
ちなみに、d軸電流Idとは、ロータ22の磁束軸方向成分の電流、すなわち励磁成分電流ともいえ、q軸電流Iqとは、車載用電動モータ11のトルクに寄与するトルク成分電流ともいえる。
【0046】
インバータ制御装置14は、ロータ22の回転位置及び回転速度を推定する位置/速度推定部(位置推定部)34を備えている。位置/速度推定部34は、例えば2相電流Id,Iqと2相電圧指令値Vdr,Vqrの少なくとも一方とに基づいて、ロータ22の回転位置及び実際の回転速度である実回転速度Nrを推定する。指令回転速度Nc及び実回転速度Nrの単位は任意であるが、例えばrpmが考えられる。
【0047】
位置/速度推定部34の具体的な構成は任意である。例えば位置/速度推定部34は、2相電流Id,Iqと、d軸電圧指令値Vdrとモータ定数等とに基づいて3相コイル24u,24v,24wにて誘起される誘起電圧を算出する誘起電圧算出部を有してもよい。この場合、位置/速度推定部34は、誘起電圧と、2相電流Id,Iqのうちのd軸電流Id等とに基づいて、ロータ22の回転位置及び実回転速度Nrを推定してもよい。
【0048】
位置/速度推定部34は、電流センサ32の検出結果を定期的に把握しており、定期的にロータ22の回転位置及び実回転速度Nrを推定している。これにより、位置/速度推定部34は、ロータ22の回転位置及び実回転速度Nrの変化に追従している。本実施形態では、位置/速度推定部34が車載用電動モータ11の回転速度を把握する「速度把握部」に対応する。
【0049】
インバータ制御装置14は、外部としての空調ECU103から送信される外部指令値を取得する取得部35と、取得部35によって取得される外部指令値と実回転速度Nrとに基づいて車載用電動モータ11の回転制御を行う回転制御部(回転制御回路)36と、を備えている。
【0050】
取得部35は、例えば空調ECU103とインバータ制御装置14とを電気的に接続するためのコネクタなどである。取得部35によって空調ECU103とインバータ制御装置14とが電気的に接続され、情報のやり取りが可能となる。なお、取得部35は、指令回転速度Ncなどの各種指令が入力される入力部ともいえる。
【0051】
外部指令値とは、例えば指令回転速度Ncである。詳細には、空調ECU103は、車載用空調装置101の運転状況などから、必要な冷媒の流量を算出し、その流量を実現できる指令回転速度Ncを算出し、指令回転速度Ncをインバータ制御装置14に向けて送信する。
【0052】
なお、外部指令値は、指令回転速度Ncに限られず、車載用電動モータ11の駆動態様を規定することができれば、その具体的な指令内容は任意である。また、外部指令値の出力主体は、空調ECU103に限られず任意である。
【0053】
回転制御部36は、取得部35と電気的に接続されている。回転制御部36は、取得部35を介して空調ECU103と電気的に接続されており、取得部35によって取得された指令回転速度Ncは回転制御部36に入力される。つまり、回転制御部36は、取得部35を介して空調ECU103からの外部指令値を受信する。
【0054】
回転制御部36は、電圧センサ31と電気的に接続されており、電源電圧Vinを把握可能となっている。
回転制御部36は、位置/速度推定部34と電気的に接続されている。これにより、回転制御部36は、位置/速度推定部34によって推定されたロータ22の回転位置及び実回転速度Nrを把握可能となっているとともに、位置/速度推定部34に対して推定に必要なパラメータを送信可能となっている。
【0055】
また、3相/2相変換回路33は、2相電流Id,Iqを、位置/速度推定部34と回転制御部36との双方に出力する。このため、回転制御部36は、2相電流Id,Iqを把握することができる。
【0056】
回転制御部36は、インバータ回路13の3相スイッチング素子Qu1~Qw2をPWM制御することにより、車載用電動モータ11(詳細にはロータ22)の回転を制御する回転制御処理を行う。ここで、回転制御部36は、予め定められた制御周期Tで回転制御処理を繰り返し実行する。
【0057】
回転制御部36の具体的なハード構成は任意である。例えば、回転制御部36は、回転制御処理を行うプログラムや必要な情報が記憶されたメモリと、上記プログラムに基づいて回転制御処理を実行するCPUとを有する構成でもよい。
【0058】
また、回転制御部36は、回転制御処理の一部又は全部を実行する1又は複数の専用ハードウェア回路を有する構成でもよいし、1又は複数の専用ハードウェア回路とソフトウェア処理を実行するCPUとの組み合わせでもよい。換言すれば、回転制御部36は、例えば1つ以上の専用のハードウェア回路、及び、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)の少なくとも一方によって実現されていればよい。
【0059】
ここで、説明の便宜上、回転制御部36によって実現される回転制御処理を図3に示すフローチャート形式で説明する。
図3に示すように、回転制御部36は、まずステップS101にて、取得部35によって取得される外部指令値(本実施形態では指令回転速度Nc)と、位置/速度推定部34によって把握(本実施形態では推定)された実回転速度Nrとに基づいて、2相電流指令値Idr,Iqrを導出する。2相電流指令値Idr,Iqrとは、d軸電流Idの目標値であるd軸電流指令値Idrと、q軸電流Iqの目標値であるq軸電流指令値Iqrとである。
【0060】
その後、回転制御部36は、ステップS102にて、2相電流指令値Idr,Iqrと3相/2相変換回路33によって得られた2相電流Id,Iqとに基づいて、2相電圧指令値Vdr,Vqrを導出する。2相電圧指令値Vdr,Vqrは、d軸電圧指令値Vdrとq軸電圧指令値Vqrとから構成されている。d軸電圧指令値Vdrは、車載用電動モータ11のd軸に印加する電圧の目標値であり、q軸電圧指令値Vqrは、車載用電動モータ11のq軸に印加する電圧の目標値である。
【0061】
ちなみに、回転制御部36は、2相電圧指令値Vdr,Vqrを位置/速度推定部34に出力する。位置/速度推定部34は、2相電圧指令値Vdr,Vqrの少なくとも一方をロータ22の位置及び実回転速度Nrの推定に用いる。
【0062】
回転制御部36は、ステップS103にて、2相電圧指令値Vdr,Vqrに基づいて3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを導出する処理を実行する。
3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrは、u相電圧指令値Vur、v相電圧指令値Vvr及びw相電圧指令値Vwrで構成されている。u相電圧指令値Vurは、u相コイル24uの印加電圧の目標値であり、v相電圧指令値Vvrは、v相コイル24vの印加電圧の目標値であり、w相電圧指令値Vwrは、w相コイル24wの印加電圧の目標値である。ステップS103では、回転制御部36は、例えば2相電圧指令値Vdr,Vqrを2相/3相変換することによって、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとして3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0を導出する。
【0063】
3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0は、電気角に応じて変化するものであり、例えば電気角の0°~360°を1周期とした基準振幅f0を有する波形となっている。3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0の位相は互いに異なっており、例えば互いに120°ずれている。3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0の波形は、正弦波、三角波、矩形波、又は、それらの波形の変形したものなど、任意である。
【0064】
続くステップS104では、回転制御部36は、2相電圧指令値Vdr,Vqrと電源電圧Vinとに基づいて、電圧利用率Rを算出する。
電圧利用率Rは、2相電圧指令値Vdr,Vqrを車載用電動モータ11に印加するために必要な電源電圧Vinの利用率である。例えば、電圧利用率Rは、電源電圧Vinに対する2相電圧指令値Vdr,Vqrの実効値の比率、又は当該比率に所定の補正パラメータを加算又は乗算したパラメータである。
【0065】
なお、2相電圧指令値Vdr,Vqrに応じて3相コイル24u,24v,24wの相間電圧が変化することに着目すれば、電圧利用率Rは、電源電圧Vinに対する3相コイル24u,24v,24wの相間電圧の実効値の比率ともいえる。換言すれば、電圧利用率Rは、3相コイル24u,24v,24wの相間電圧が2相電圧指令値Vdr,Vqrに対応した値となるために電源電圧Vinの利用率を示すパラメータともいえる。
【0066】
ちなみに、3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0の振幅である基準振幅f0は、電圧利用率Rが小さくなるに従って小さくなる。例えば、電圧利用率Rが第1電圧利用率R1である場合の基準振幅f0と、電圧利用率Rが第1電圧利用率R1よりも小さい第2電圧利用率R2である場合の基準振幅f0とを比較すると、第2電圧利用率R2である場合の基準振幅f0は、第1電圧利用率R1である場合の基準振幅f0よりも小さい。そして、基準振幅f0が小さくなると、3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0の変化範囲(詳細には最小値から最大値までの範囲)が狭くなり易い。
【0067】
回転制御部36は、電圧利用率Rを算出した後は、ステップS105に進み、ステップS104にて算出された電圧利用率Rが予め定められた閾値利用率Rth以下であるか否かを判定する。閾値利用率Rthは任意であり、例えば50%よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。また、値利用率Rthは、例えば40~70%の範囲内に設定されていてもよい。
【0068】
電圧利用率Rが閾値利用率Rthよりも大きい場合、回転制御部36は、ステップS106に進み、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとキャリア信号とに基づいて、基準PWM信号Pu0,Pv0,Pw0を生成する。
【0069】
基準PWM信号Pu0,Pv0,Pw0は、ステップS103にて導出された3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwr(詳細には3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0)に対応するPWM信号である。詳細には、u相基準PWM信号Pu0は、u相基準指令値Vu0に対応するu相基準パルス幅Wu0を有するパルス信号である。v相基準PWM信号Pv0は、v相基準指令値Vv0に対応するv相基準パルス幅Wv0を有するパルス信号である。w相基準PWM信号Pw0は、w相基準指令値Vw0に対応するw相基準パルス幅Ww0を有するパルス信号である。
【0070】
その後、回転制御部36は、ステップS107にて、基準PWM信号Pu0,Pv0,Pw0を3相スイッチング素子Qu1~Qw2に向けて出力することにより、3相スイッチング素子Qu1~Qw2のスイッチング制御を行う。つまり、インバータ制御装置14は、PWM信号を用いて3相スイッチング素子Qu1~Qw2をPWM制御する。
【0071】
ここで、本実施形態では、回転制御部36は、ステップS106において、複数の基準PWM信号Pu0,Pv0,Pw0を生成する。すなわち、回転制御部36は、1回の回転制御処理について複数の基準PWM信号Pu0,Pv0,Pw0を生成する。回転制御処理が制御周期Tで繰り返し実行されることに着目すれば、回転制御部36は、制御周期T内において複数のPWM信号を各相毎に生成するものといえる。本実施形態では、制御周期T内において生成されるPWM信号の数は2つである。
【0072】
そして、回転制御部36は、ステップS107では、基準PWM信号Pu0,Pv0,Pw0を3相スイッチング素子Qu1~Qw2に対して複数回出力することにより、3相スイッチング素子Qu1~Qw2をスイッチング制御して、本回転制御処理を終了する。
【0073】
すなわち、本実施形態の回転制御部36は、電圧利用率Rが閾値利用率Rthよりも大きい場合には、制御周期T内において同一パルス幅(詳細には基準パルス幅Wu0,Wv0,Ww0)のパルス信号を用いて、3相スイッチング素子Qu1~Qw2を複数回スイッチング制御する。
【0074】
一方、図3に示すように、回転制御部36は、電圧利用率Rが閾値利用率Rth以下である場合には、ステップS108~S111にて、中性点電位Enの波形が台形波に近づくようにパルス幅を異ならせるパルス変更制御を行う。中性点電位Enとは、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの中性点の電位である。
【0075】
図3及び図4を用いて、ステップS108~S111のパルス変更制御について詳細に説明する。
パルス変更制御は、前記3相電圧指令値に対応した基準パルス幅を有し、少なくとも1つの相における制御周期T内の複数のPWM信号について、平均パルス幅Wua,Wva,Wwaが基準パルス幅Wu0,Wv0,Ww0となるように複数のPWM信号のうち少なくとも2つのパルス幅を互いに異ならせる制御である。本実施形態では、回転制御部36は、3相のうちv相及びw相のPWM信号についてはパルス変更制御を行う一方、u相についてはパルス変更制御を行わない。すなわち、本実施形態では、v相及びw相が「可変相」に対応し、u相が「固定相」に対応する。
【0076】
まず、図3に示すように、回転制御部36は、ステップS108にて、制御周期T内の複数のPWM信号のうち第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1を生成する。第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1は、第1パルス幅Wu1,Wv1,Ww1を有するパルス信号である。
【0077】
ステップS108について詳細に説明すると、回転制御部36は、まずステップS106と同様に、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとキャリア信号とに基づいて、基準パルス幅Wu0,Wv0,Ww0を導出する。
【0078】
その後、図4(a)に示すように、回転制御部36は、u相基準パルス幅Wu0と同一に設定された第1u相パルス幅Wu1を有する第1u相PWM信号Pu1を生成する。一方、図4(b)及び図4(c)に示すように、回転制御部36は、第1v相パルス幅Wv1及び第1w相パルス幅Ww1について、v相基準パルス幅Wv0及びw相基準パルス幅Ww0から変更する。
【0079】
例えば、回転制御部36は、v相基準パルス幅Wv0よりも広く設定された第1v相パルス幅Wv1を有する第1v相PWM信号Pv1を生成する。この場合、第1v相パルス幅Wv1とv相基準パルス幅Wv0との差を第1v相パルス差分δWv1とする。
【0080】
同様に、回転制御部36は、w相基準パルス幅Ww0よりも狭く設定された第1w相パルス幅Ww1を有する第1w相PWM信号Pw1を生成する。この場合、第1w相パルス幅Ww1とw相基準パルス幅Ww0との差を第1w相パルス差分δWw1とする。
【0081】
ここで、本実施形態では、第1v相パルス差分δWv1と第1w相パルス差分δWw1とは同一である(δWv1=δWw1)。ただし、第1v相パルス差分δWv1と第1w相パルス差分δWw1との大小関係は任意であり、例えば第1v相パルス差分δWv1が第1w相パルス差分δWw1よりも大きくてもよいし、その逆でもよい。
【0082】
図3に示すように、回転制御部36は、第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1を生成した後、ステップS109にて、第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1を用いて3相スイッチング素子Qu1~Qw2を1回スイッチング制御する。
【0083】
この場合、図4に示すように、第1u相PWM信号Pu1と、第1v相PWM信号Pv1と、第1w相PWM信号Pw1とが互いに同期している。例えば、回転制御部36は、各第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1の中心が同じとなるように出力タイミングを調整している。すなわち、第1w相PWM信号Pw1は、第1v相PWM信号Pv1が出力(換言すれば生成)される場合に出力(換言すれば生成)される信号といえる。
【0084】
ちなみに、図4(b)に示すように、第1v相PWM信号Pv1の立ち上がりタイミングと、v相基準PWM信号Pv0の立ち上がりタイミングとは、δWv1/2だけズレている。そして、第1v相PWM信号Pv1の立ち下がりタイミングと、v相基準PWM信号Pv0の立ち下がりタイミングとは、δWv1/2だけズレている。w相についても同様である。
【0085】
その後、回転制御部36は、ステップS110にて、制御周期T内の複数のPWM信号のうち第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2を生成する。第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1及び第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2は同一制御周期T内にて生成/出力されるPWM信号である。第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2は、制御周期T内において第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1の後に出力されるPWM信号である。第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2は、第2パルス幅Wu2,Wv2,Ww2を有する。
【0086】
ステップS110について詳細に説明すると、図4(a)に示すように、回転制御部36は、u相基準パルス幅Wu0と同一に設定された第2u相パルス幅Wu2を有する第2u相PWM信号Pu2を生成する。一方、図4(b)及び図4(c)に示すように、回転制御部36は、第2v相パルス幅Wv2及び第2w相パルス幅Ww2について、v相基準パルス幅Wv0及びw相基準パルス幅Ww0から変更する。
【0087】
例えば、回転制御部36は、v相基準パルス幅Wv0よりも狭く設定された第2v相パルス幅Wv2を有する第2v相PWM信号Pv2を生成する。この場合、第2v相パルス幅Wv2とv相基準パルス幅Wv0との差を第2v相パルス差分δWv2とする。
【0088】
同様に、回転制御部36は、w相基準パルス幅Ww0よりも広く設定された第2w相パルス幅Ww2を有する第2w相PWM信号Pw2を生成する。この場合、第2w相パルス幅Ww2とw相基準パルス幅Ww0との差を第2w相パルス差分δWw2とする。
【0089】
すなわち、本実施形態の回転制御部36は、2つの可変相のうち一方の可変相におけるパルス幅を基準パルス幅よりも広げる一方、他方の可変相におけるパルス幅を基準パルス幅よりも狭くする。
【0090】
ここで、回転制御部36は、制御周期T内の各相の平均パルス幅Wua,Wva,Wwaが基準パルス幅Wu0,Wv0,Ww0となるように制御している。
詳細には、固定相であるu相については、第1u相パルス幅Wu1及び第2u相パルス幅Wu2はu相基準パルス幅Wu0であるため、u相平均パルス幅Wuaはu相基準パルス幅Wu0である。
【0091】
可変相であるv相については、v相平均パルス幅Wvaがv相基準パルス幅Wv0となるように、第1v相パルス幅Wv1及び第2v相パルス幅Wv2が設定されている。具体的には、第1v相パルス差分δWv1と第2v相パルス差分δWv2とが同一に設定されている。
【0092】
同様に、w相については、w相平均パルス幅Wwaがw相基準パルス幅Ww0となるように、第1w相パルス幅Ww1及び第2w相パルス幅Ww2が設定されている。具体的には、第1w相パルス差分δWw1と第2w相パルス差分δWw2とが同一に設定されている。すなわち、回転制御部36は、基準パルス振幅からの変更量の積算値が「0」となるようにパルス変更対象の各パルス信号のパルス幅を変更している。
【0093】
なお、本実施形態では、第2v相パルス差分δWv2と第2w相パルス差分δWw2とは同一である。ただし、第2v相パルス差分δWv2と第2w相パルス差分δWw2との大小関係は任意であり、例えば第2v相パルス差分δWv2が第2w相パルス差分δWw2よりも大きくてもよいし、その逆でもよい。
【0094】
図3に示すように、回転制御部36は、第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2を生成後、ステップS111にて、第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2を用いて3相スイッチング素子Qu1~Qw2を1回スイッチング制御して、本回転制御処理を終了する。この場合、回転制御部36は、例えば各第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2の中心が同じとなるように出力タイミングを調整している。これにより、第2u相PWM信号Pu2と、第2v相PWM信号Pv2と、第2w相PWM信号Pw2とが互いに同期している。すなわち、第2w相PWM信号Pw2は、第2v相PWM信号Pv2が出力(換言すれば生成)される場合に出力(換言すれば生成)される信号といえる。
【0095】
本実施形態では、ステップS101,S102の処理を実行する回転制御部36が「2相電圧指令値導出部」に対応し、ステップS103の処理を実行する回転制御部36が「3相電圧指令値導出部」に対応する。ステップS106,S108,S110の処理を実行する回転制御部36が「生成部」に対応し、特にステップS108,S110の処理を実行する回転制御部36が「パルス変更部」に対応する。
【0096】
また、本実施形態では、両v相PWM信号Pv1,Pv2が「複数の第1可変相PWM信号」に対応し、特に第1v相PWM信号Pv1が「第1幅広信号」に対応し、第2v相PWM信号Pv2が「第1幅狭信号」に対応する。そして、両w相PWM信号Pw1,Pw2が「複数の第2可変相PWM信号」に対応し、特に第1w相PWM信号Pw1が「第2幅狭信号」に対応し、第2w相PWM信号Pw2が「第2幅広信号」に対応する。
【0097】
次に本実施形態の作用について図4を用いて説明する。図4(a)はu相のPWM信号の一例を示す波形図である。図4(b)はパルス変更制御が行われたv相のPWM信号の一例を示す波形図である。図4(c)はパルス変更制御が行われたw相のPWM信号の一例を示す波形図である。図4(d)は中性点電位Enの一例を示す波形図である。なお、説明の便宜上、各制御周期Tにおいて、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrは同一であるとする。
【0098】
図4に示すように、既に説明したとおり、本実施形態では、制御周期T内において複数(例えば2つ)のPWM信号が生成され、当該2つのPWM信号が制御周期Tで繰り返し生成される。
【0099】
この場合、u相についてはパルス変更制御が行われない固定相であるため、図4(a)に示すように、u相においては制御周期T内において同一のパルス幅(詳細にはu相基準パルス幅Wu0)のu相PWM信号Pu1,Pu2が生成される。
【0100】
図4(b)及び図4(c)に示すように、第1u相PWM信号Pu1が生成される場合には、パルス変更制御が行われた第1v相PWM信号Pv1及び第1w相PWM信号Pw1が生成される。この場合、第1v相PWM信号Pv1のパルス幅である第1v相パルス幅Wv1は、v相基準パルス幅Wv0よりも広くなっている一方、第1w相PWM信号Pw1のパルス幅である第1w相パルス幅Ww1は、w相基準パルス幅Ww0よりも狭くなっている。これにより、図4(d)に示すように、第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1から得られる中性点電位Enの波形は台形波に近づく。
【0101】
詳細には、第1v相パルス幅Wv1がv相基準パルス幅Wv0であり且つ第1w相パルス幅Ww1がw相基準パルス幅Ww0である場合、図4(d)の破線に示すように、中性点電位Enの波形は方形波となる。一方、パルス変更制御が行われた場合、図4(d)の実線に示すように、中性点電位Enの波形は、立ち上がり/立ち下がりが緩やかに傾斜した台形波に近づく。
【0102】
同様に、第2v相PWM信号Pv2のパルス幅である第2v相パルス幅Wv2は、v相基準パルス幅Wv0よりも狭くなっている一方、第2w相PWM信号Pw2のパルス幅である第2w相パルス幅Ww2は、w相基準パルス幅Ww0よりも広くなっている。これにより、図4(d)の実線に示すように、第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2から得られる中性点電位Enの波形は台形波に近づく。
【0103】
また、制御周期T内の各相の平均パルス幅Wua,Wva,Wwaは、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrに対応するパルス幅である基準パルス幅Wu0,Wv0,Ww0となっているため、車載用電動モータ11には、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrに対応するトルク(換言すれば目標トルク)が付与される。
【0104】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1-1)インバータ制御装置14は、車載用蓄電装置104を用いて車載用電動モータ11を駆動させるインバータ回路13の制御に用いられるものである。車載用電動モータ11は3相コイル24u,24v,24wを有し、インバータ回路13は3相スイッチング素子Qu1~Qw2を有している。
【0105】
インバータ制御装置14は、車載用電動モータ11の回転速度である実回転速度Nrを把握する位置/速度推定部34と、回転制御部36と、を備えている。回転制御部36は、外部から送信される外部指令値と実回転速度Nrとに基づいて、車載用電動モータ11のd軸及びq軸に印加する電圧の目標値である2相電圧指令値Vdr,Vqrを導出する処理を行う。そして、回転制御部36は、2相電圧指令値Vdr,Vqrに基づいて、3相コイル24u,24v,24wに印加する3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを導出する処理を行う。回転制御部36は、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとキャリア信号とに基づいて、予め定められた制御周期T内において複数のPWM信号を各相毎に生成し、その生成されたPWM信号を用いて3相スイッチング素子Qu1~Qw2をPWM制御する。
【0106】
回転制御部36は、3相電圧指令値に対応する基準パルス幅を有し、1つの相における制御周期T内の複数のPWM信号についてパルス変更制御を行う。パルス変更制御は、平均パルス幅が基準パルス幅となるように当該複数のPWM信号のうち、少なくとも2つのパルス幅を互いに異ならせる制御である。本実施形態では、回転制御部36は、第1v相PWM信号Pv1及び第2v相PWM信号Pv2についてパルス変更制御を行うとともに、第1w相PWM信号Pw1及び第2w相PWM信号Pw2についてパルス変更制御を行う。
【0107】
かかる構成によれば、パルス変更制御を行うことにより、中性点電位Enを台形波に近づけることができる。台形波は、方形波よりも、高調波ノイズがない正弦波に近い波形である。これにより、中性点電位の波形を、方形波よりも、高調波ノイズが小さい波形に近づけることができるため、3相スイッチング素子のスイッチングに起因する特定周波数のノイズを低減できる。
【0108】
一方、パルス変更制御の対象となった相の平均パルス幅は、3相電圧指令値に対応した基準パルス幅となっている。例えば、第1v相PWM信号Pv1及び第2v相PWM信号Pv2の平均パルス幅であるv相平均パルス幅Wvaは、v相基準パルス幅Wv0となっている。これにより、3相コイル24u,24v,24wに印加される相間電圧は3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrに対応した値となる。したがって、車載用電動モータ11には、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrに対応したトルクが付与される。中性点電位Enを台形波に近づけることに起因して異なるトルクが付与されるといった不都合を抑制できる。
【0109】
(1-2)インバータ制御装置14は、車載用蓄電装置104の電圧である電源電圧Vinを把握する電圧センサ31を備えている。回転制御部36は、2相電圧指令値Vdr,Vqrと電源電圧Vinとに基づいて算出される電圧利用率Rが閾値利用率Rth以下である場合にパルス変更制御を行う。
【0110】
かかる構成によれば、電圧利用率Rが閾値利用率Rth以下である場合にパルス変更制御を行うことにより、電圧利用率Rが小さい場合に大きくなり易い特定周波数のノイズを低減できる。
【0111】
詳述すると、電圧利用率Rが小さくなると、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの変化量が小さくなり易い。この場合、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrが特定の値又はそれに近い値に偏り易いため、各相のPWM信号のパルス幅が特定の値又はそれに近い値に偏り易い。かかる状況下において中性点電位Enの波形が方形波である場合、特定周波数のノイズとして、上記特定のパルス幅に対応する高調波ノイズが大きくなり易くなる。
【0112】
この点、本構成によれば、電圧利用率Rが閾値利用率Rth以下である場合には、中性点電位Enの波形が台形波に近づくため、上記高調波ノイズを低減できる。これにより、電圧利用率Rが小さい場合に大きくなり易い上記高調波ノイズを好適に低減できる。
【0113】
(1-3)回転制御部36は、電圧利用率Rが閾値利用率Rthよりも大きい場合にはパルス変更制御を行わない。
電圧利用率Rが閾値利用率Rthよりも大きい状況下では、比較的特定周波数のノイズが小さくなり易い。この点、本構成によれば、電圧利用率Rが閾値利用率Rthよりも大きい状況下では、パルス変更制御を行わないことにより、パルス幅変更制御に係る処理負荷の軽減を図ることができる。
【0114】
(1-4)回転制御部36は、3相のうち2つの可変相における制御周期T内の複数のPWM信号、例えば第1v相PWM信号Pv1及び第2v相PWM信号Pv2並びに第1w相PWM信号Pw1及び第2w相PWM信号Pw2についてパルス変更制御を行う。一方、回転制御部36は、3相のうち可変相以外の固定相、本実施形態ではu相における制御周期T内の複数のPWM信号(詳細には第1u相PWM信号Pu1及び第2u相PWM信号Pu2)についてはパルス変更制御を行わない。
【0115】
かかる構成によれば、1つの相が固定相となっているため、全ての相を可変相とする場合と比較して、処理負荷の軽減を図ることができる。
(1-5)2つの可変相のうち第1可変相(例えばv相)における制御周期T内のPWM信号は、第1v相PWM信号Pv1及び第2v相PWM信号Pv2を含む。第1v相PWM信号Pv1は、v相基準パルス幅Wv0よりも広い第1v相パルス幅Wv1を有する。第2v相PWM信号Pv2は、v相基準パルス幅Wv0よりも狭い第2v相パルス幅Wv2を有する。
【0116】
2つの可変相のうち第2可変相(例えばw相)における制御周期T内のPWM信号は、第1w相PWM信号Pw1及び第2w相PWM信号Pw2を含む。第1w相PWM信号Pw1は、第1v相PWM信号Pv1が出力(換言すれば生成)される場合に出力されるPWM信号であって、w相基準パルス幅Ww0よりも狭い第1w相パルス幅Ww1を有する。第2w相PWM信号Pw2は、第2v相PWM信号Pv2が出力される場合に出力されるPWM信号であって、w相基準パルス幅Ww0よりも広い第2w相パルス幅Ww2を有する。
【0117】
例えば第1v相パルス幅Wv1と第1w相パルス幅Ww1との差が大きい方が、中性点電位Enの波形は、正弦波に近い台形波となり易い。ここで、仮に第1v相パルス幅Wv1をv相基準パルス幅Wv0よりも狭く、かつ、第1w相パルス幅Ww1をw相基準パルス幅Ww0よりも狭くする場合、基準パルス幅内で変動させることになるため、第1v相パルス幅Wv1と第1w相パルス幅Ww1との差が小さくなり易い。第1v相パルス幅Wv1をv相基準パルス幅Wv0よりも広く、かつ、第1w相パルス幅Ww1をw相基準パルス幅Ww0よりも広くする場合についても同様である。
【0118】
この点、本構成によれば、2つの可変相のうち一方の可変相におけるパルス幅が基準パルス幅よりも広くなる一方、他方の可変相におけるパルス幅は基準パルス幅よりも狭くなる。これにより、対応する2つの可変相のパルス幅の差を大きくすることができ、中性点電位Enの波形を、より正弦波に近い台形波にすることができる。
【0119】
(第2実施形態)
本実施形態では、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの導出処理などが第1実施形態と異なっている。本実施形態の回転制御処理について図5を用いて説明する。
【0120】
図5に示すように、回転制御部36は、ステップS102にて2相電圧指令値Vdr,Vqrを導出後、ステップS201にて、電圧利用率Rを算出する。その後、回転制御部36は、ステップS202にて、2相電圧指令値Vdr,Vqrに対応した3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0を導出する。
【0121】
そして、回転制御部36は、ステップS203にて、電圧利用率Rに基づいて、変化させる中性点電位Enの振幅である中性点振幅fnを導出する。回転制御部36は、電圧利用率Rに応じて中性点振幅fnを可変させる。詳細には、回転制御部36は、電圧利用率Rが第1電圧利用率R1である場合には、中性点振幅fnとして第1中性点振幅fn1を導出し、電圧利用率Rが第1電圧利用率R1よりも小さい第2電圧利用率R2である場合には、中性点振幅fnとして第1中性点振幅fn1よりも大きい第2中性点振幅fn2を導出する。本実施形態では、回転制御部36は、電圧利用率Rが小さくなるに従って中性点振幅fnを大きくする。
【0122】
回転制御部36は、3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0と中性点振幅fnとを導出した後は、ステップS204にて、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとして、中性点電位Enが中性点振幅fnで変化することによって得られるシフト指令値Vux,Vvx,Vwxを導出して、本導出処理を終了する。
【0123】
詳細には、回転制御部36は、3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0に対して中性点振幅fnの中性点電位Enを重畳させることによりシフト指令値Vux,Vvx,Vwxを導出する。すなわち、回転制御部36は、電気角に応じて変化する3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0に対して、電気角に応じて中性点振幅fnで中性点電位Enを変化させながら加算(又は減算)することによってシフト指令値Vux,Vvx,Vwxを導出する。換言すれば、回転制御部36は、3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0の波形に対して中性点振幅fnの中性点電位Enの波形を重ね合わせることによりシフト指令値Vux,Vvx,Vwxを導出するともいえる。なお、重畳させる中性点電位Enの周期は、例えば120°である。
【0124】
例えば、回転制御部36は、電圧利用率Rが第1電圧利用率R1である場合には、第1電圧利用率R1に対応する3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0に対して第1中性点振幅fn1の中性点電位Enを重畳させることによって第1のシフト指令値Vux1,Vvx1,Vwx1を導出する。第1のシフト指令値Vux1,Vvx1,Vwx1の変化範囲は、少なくとも第1中性点振幅fn1よりも大きくなる。
【0125】
また、回転制御部36は、電圧利用率Rが第2電圧利用率R2である場合には、第2電圧利用率R2に対応する3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0に対して第2中性点振幅fn2の中性点電位Enを重畳させることによって第2のシフト指令値Vux2,Vvx2,Vwx2を導出する。第2のシフト指令値Vux2,Vvx2,Vwx2の変化範囲は、少なくとも第2中性点振幅fn2よりも大きくなる。また、第2のシフト指令値Vux2,Vvx2,Vwx2の変化範囲は、3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0よりも大きくなる。
【0126】
既に説明したとおり、第2中性点振幅fn2は第1中性点振幅fn1よりも大きい。このため、電圧利用率Rが第2電圧利用率R2になることによって基準振幅f0が小さくなった場合であっても、第2のシフト指令値Vux2,Vvx2,Vwx2の変化範囲が狭くなりにくい。
【0127】
説明の便宜上、シフト指令値Vux,Vvx,Vwxにおける中性点振幅fnをシフト振幅fxという。シフト振幅fxは、上述したとおり、電圧利用率Rに応じて決定されるパラメータであり、第1中性点振幅fn1及び第2中性点振幅fn2を含む。
【0128】
続くステップS205では、回転制御部36は、電圧利用率Rが閾値利用率Rthよりも大きいか否かを判定する。当該処理は、ステップS105と同様である。
回転制御部36は、ステップS205を肯定判定した場合には、ステップS206において、ステップS204にて導出された3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとしてのシフト指令値Vux,Vvx,Vwxに基づいてPWM信号を生成する。そして、回転制御部36は、ステップS207において、ステップS206にて生成されたPWM信号を用いてスイッチング制御を行う。本実施形態では、回転制御部36は、制御周期T内においてPWM信号を2回出力する。
【0129】
一方、電圧利用率Rが閾値利用率Rth以下である場合、回転制御部36は、ステップS208に進み、シフト指令値Vux,Vvx,Vwxに基づいて第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1を生成する。この場合、第1実施形態と同様に、回転制御部36は、可変相についてパルス変更制御を行う。そして、回転制御部36は、ステップS209にて、第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1を用いてスイッチング制御を行う。
【0130】
その後、本実施形態の回転制御部36は、ステップS210にて、シフト指令値Vux,Vvx,Vwxとは変化範囲が異なる変化指令値Vuy,Vvy,Vwyを導出する。
変化指令値Vuy,Vvy,Vwyは、3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0に対して変化振幅fyの中性点電位Enを重畳させた値である。変化振幅fyは、シフト振幅fxとは異なる振幅である。これにより、変化指令値Vuy,Vvy,Vwyの変化範囲がシフト指令値Vux,Vvx,Vwxの変化範囲と異なることとなり、変化指令値Vuy,Vvy,Vwyとシフト指令値Vux,Vvx,Vwxとが異なる値となり易い。変化範囲とは最小値から最大値までの範囲である。
【0131】
なお、変化振幅fyは、シフト振幅fxよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。また、変化振幅fyは、制御周期Tごとに変更される可変値でもよいし、制御周期Tごとに変更されない固定値であってもよい。
【0132】
続くステップS211では、回転制御部36は、変化指令値Vuy,Vvy,Vwyに基づいて第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2を生成する。この場合、第1実施形態と同様に、回転制御部36は、可変相についてパルス変更制御を行う。そして、回転制御部36は、ステップS212にて、第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2を用いてスイッチング制御を行う。
【0133】
以上のとおり、本実施形態では、回転制御部36は、中性点電位Enを変化させることによって3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを変化させている。特に、回転制御部36は、電圧利用率Rに応じて3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを変化させているとともに、制御周期T内において、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを、シフト指令値Vux,Vvx,Vwxと変化指令値Vuy,Vvy,Vwyとに切り替えている。
【0134】
ちなみに、シフト指令値Vux,Vvx,Vwx及び変化指令値Vuy,Vvy,Vwyの双方とも、3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0に対して中性点電位Enを変化させることによって得られる値である。このため、中性点電位Enが異なっていることに起因して、シフト指令値Vux,Vvx,Vwxと変化指令値Vuy,Vvy,Vwyとが異なっている場合であっても、相間電圧は変化しない。
【0135】
すなわち、回転制御部36は、電圧利用率Rが閾値利用率Rth以下である場合、同一の2相電圧指令値Vdr,Vqrに対して、車載用電動モータ11の相間電圧が同一であって変化範囲が異なる3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを切替周期で切り替えて導出する。変化範囲が異なる3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとは、本実施形態ではシフト指令値Vux,Vvx,Vwx及び変化指令値Vuy,Vvy,Vwyである。そして、回転制御部36は、導出された3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrに基づいてスイッチング制御を行う。本実施形態では、切替周期は、キャリア信号の周期であるキャリア周期と同一である。ただし、これに限られず、切替周期は任意である。
【0136】
換言すれば、回転制御部36は、同一制御周期T内に中性点電位Enが異なる複数の3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを導出し、それらに対応した複数のPWM信号を生成してもよい。この場合、制御周期T内に生成される各PWM信号の基準パルス幅は同一相であっても異なり得る。かかる構成において、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrに対応する基準パルス幅Wu0,Wv0,Ww0とは、制御周期T内における各PWM信号のうち同一相同士の基準パルス幅の平均である。
【0137】
そして、第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1と第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2との平均パルス幅Wua,Wva,Wwaは、パルス変更制御が行われた場合であっても、基準パルス幅Wu0,Wv0,Ww0となる。本実施形態では、ステップS201~S204,S210の処理を実行する回転制御部36が「3相電圧指令値導出部」に対応する。
【0138】
次に図6を用いて本実施形態の作用について説明する。図6(a)~(c)は第2実施形態における各相のPWM信号の一例を示す波形であり、図6(d)は第2実施形態における中性点電位Enの一例を示す波形である。
【0139】
本実施形態では、第1実施形態と比較して、中性点電位Enが変化することによって3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrが変化している。このため、図6に示すように、各相のPWM信号のパルス幅がそれぞれ変動しやすくなっている。
【0140】
詳細には、本実施形態では、電圧利用率Rが比較的小さい第2電圧利用率R2である場合には比較的大きい第2中性点振幅fn2にて変化した第2のシフト指令値Vux2,Vvx2,Vwx2が導出される。これにより、電気角の変化に対する変化量が、第2のシフト指令値Vux2,Vvx2,Vwx2の方が3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0よりも大きくなる。したがって、中性点電位Enのパルス幅が変化しやすい。
【0141】
更に、制御周期T内において、シフト指令値Vux,Vvx,Vwxに対応する第1PWM信号Pu1,Pv1,Pw1と、シフト指令値Vux,Vvx,Vwxとは中性点振幅fnが異なる変化指令値Vuy,Vvy,Vwyに対応する第2PWM信号Pu2,Pv2,Pw2とが交互に出力される。このため、同一の制御周期T内においても中性点電位Enのパルス幅が変動している。以上のことから、中性点電位Enのパルス幅が特定の値に偏りにくくなっている。
【0142】
また、中性点電位Enが変化しても、3相コイル24u,24v,24wに印加される相間電圧は変化しない。したがって、車載用電動モータ11には、3相基準指令値Vu0,Vv0,Vw0と同等のトルクが付与される。
【0143】
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(2-1)回転制御部36は、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを導出する処理にて、2相電圧指令値Vdr,Vqrと電源電圧Vinとに基づいて算出される電圧利用率Rに応じて、異なる3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを導出する。
【0144】
詳細には、回転制御部36は、電圧利用率Rが第1電圧利用率R1である場合には、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとして、中性点電位Enが第1中性点振幅fn1で変化することによって得られる第1のシフト指令値Vux1,Vvx1,Vwx1を導出する。また、回転制御部36は、電圧利用率Rが第1電圧利用率R1よりも小さい第2電圧利用率R2である場合には、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrとして、中性点電位Enが第2中性点振幅fn2で変化することによって得られる第2のシフト指令値Vux2,Vvx2,Vwx2を導出する。第2中性点振幅fn2は第1中性点振幅fn1よりも大きい。
【0145】
かかる構成によれば、電圧利用率Rが第1電圧利用率R1よりも小さい第2電圧利用率R2である場合には、第1電圧利用率R1に対応する第1中性点振幅fn1よりも大きい第2中性点振幅fn2で中性点電位Enが変化する。これにより、少なくとも第2中性点振幅fn2以上の変化範囲を有する第2のシフト指令値Vux2,Vvx2,Vwx2が得られる。したがって、第2のシフト指令値Vux2,Vvx2,Vwx2の変化範囲が狭くなることを抑制できる。よって、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの変化範囲が狭くなることに起因して特定周波数のノイズが大きくなることを抑制できる。
【0146】
特に、通常、電圧利用率Rが小さくなると、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの変化範囲は狭くなり易い。このため、電圧利用率Rが第2電圧利用率R2である場合には、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの変化範囲は狭くなり易い。
【0147】
この点、本構成によれば、電圧利用率Rが第2電圧利用率R2である場合には、相対的に大きい第2中性点振幅fn2で中性点電位Enを変化させることにより、電圧利用率Rが第2電圧利用率R2である場合であっても3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの変化範囲が狭くなることを抑制できる。これにより、特定周波数のノイズが大きくなることを抑制できる。
【0148】
また、電圧利用率Rが第1電圧利用率R1である場合に導出される第1のシフト指令値Vux1,Vvx1,Vwx1は、中性点電位Enが第2中性点振幅fn2よりも小さい第1中性点振幅fn1で変化することによって得られるものである。これにより、第1のシフト指令値Vux1,Vvx1,Vwx1の変化範囲が過度に広がることを抑制できる。
【0149】
(2-2)回転制御部36は、電圧利用率Rが閾値利用率Rth以下である場合、同一の2相電圧指令値Vdr,Vqrに対して、車載用電動モータ11の相間電圧が同一であって変化範囲が異なる3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを切替周期(本実施形態ではキャリア周期)で切り替えて導出する。例えば、回転制御部36は、1つの2相電圧指令値Vdr,Vqrに対して、変化範囲が異なるシフト指令値Vux,Vvx,Vwxと変化指令値Vuy,Vvy,Vwyとを導出する。
【0150】
かかる構成によれば、電圧利用率Rが閾値利用率Rth以下である場合、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrは、3相コイル24u,24v,24wの相間電圧が同一のまま、変化範囲が異なるものに切替周期で切り替わる。これにより、仮に2相電圧指令値Vdr,Vqrが同一であっても、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrは切替周期で変化する。したがって、電圧利用率Rが小さい状況下において3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrが周期的に同じ値となることに起因する特定周波数のノイズを低減できる。
【0151】
詳述すると、仮に同じ3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrが周期的に導出される場合や1つの3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrに対して複数のPWM信号が生成される場合、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrは周期的に同一の値となる。この場合、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrの導出周期又はPWM信号の出力周期に対応した特定周波数のノイズが発生することになる。当該特定周波数のノイズの影響は、電圧利用率Rが小さい場合に大きくなり易い。
【0152】
この点、本実施形態によれば、電圧利用率Rが閾値利用率Rth以下である場合には、変化範囲が異なる3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrが切替周期で導出される。これにより、切替周期ごとに3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrをバラつかせることができる。したがって、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrが周期的に同一の値となる頻度を低減でき、それを通じて上記特定周波数のノイズを低減できる。
【0153】
特に、本構成によれば、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrが切り替わった場合であっても3相コイル24u,24v,24wに印加される相間電圧は同一となっている。これにより、車載用電動モータ11には同一のトルクが付与される。したがって、3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrを切り替えることに起因して異なるトルクが付与されるといった不都合を抑制できる。
【0154】
以上のことから、車載用電動モータ11に対して適切なトルクを付与した状態を維持しつつ、電圧利用率Rが小さい状況下において3相電圧指令値Vur,Vvr,Vwrが周期的に同じ値となることによって生じる特定周波数のノイズを低減できる。
【0155】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。また、技術的に矛盾が生じない範囲内で、上記実施形態と下記別例とを適宜組み合わせてもよい。
○ 制御周期T内に生成されるPWM信号の数は2つに限られず任意であり、3つ以上であってもよい。この場合、パルス幅が変更されないPWM信号があってもよい。つまり、制御周期T内に3つ以上の複数のPWM信号が生成される条件下において複数のPWM信号を異ならせるとは、少なくとも2つについて異なっていればよく、基準パルス幅となっているPWM信号を含んでもよい。
【0156】
○ 固定相はu相に限られず任意である。また、u相、v相及びw相のうち2つが固定相で1つが可変相であってもよい。
○ 固定相がなくてもよい。すなわち、回転制御部36は、u相、v相及びw相のすべてについてパルス変更制御を行ってもよい。
【0157】
○ 回転制御部36は、電圧利用率Rに関わらず、パルス変更制御を行う構成でもよい。
○ 第1v相パルス幅Wv1がv相基準パルス幅Wv0よりも広く、且つ、第1w相パルス幅Ww1がw相基準パルス幅Ww0よりも広くてもよい。この場合、第2v相パルス幅Wv2がv相基準パルス幅Wv0よりも狭く、且つ、第2w相パルス幅Ww2がw相基準パルス幅Ww0よりも狭くするとよい。
【0158】
○ 第2実施形態において、変化指令値Vuy,Vvy,Vwyとして2相変調方式の値を採用してもよい。この場合であっても、変化指令値Vuy,Vvy,Vwyの変化範囲はシフト指令値Vux,Vvx,Vwxの変化範囲と異なる。
【0159】
○ 取得部35は、空調ECU103から送信される外部指令値を受け取ることができればその具体的な構成は任意である。例えば空調ECU103が無線信号にて指令を送信する構成においては、取得部35は、その無線信号を受信するモジュールでもよい。
【0160】
○ 車載用蓄電装置104の電圧である電源電圧Vinを把握するための構成は、電圧センサ31に限られず任意である。例えば、車載用蓄電装置104に電源電圧Vinを検出する電圧センサ31と電圧センサ31に電気的に接続された電池CPUとが設けられている場合には、回転制御部36は、電池CPUと通信を行うことにより電源電圧Vinを取得する構成でもよい。この場合、電池CPUと通信を行う回転制御部36が「電圧把握部」に対応する。
【0161】
○ 車載用電動圧縮機10は、車載用空調装置101に用いられる構成に限られず、他の装置に用いられるものであってもよい。例えば、車両100が燃料電池車両である場合には、車載用電動圧縮機10は燃料電池に空気を供給する空気供給装置に用いられてもよい。すなわち、圧縮対象の流体は、冷媒に限られず、空気など任意である。
【0162】
○ 車載用流体機械は、流体を圧縮する圧縮部12を備えた車載用電動圧縮機10に限られない。例えば、車両100が燃料電池車両である場合には、車載用流体機械は、燃料電池に水素を供給するポンプと当該ポンプを駆動する車載用電動モータとを有する電動ポンプ装置であってもよい。この場合、インバータ制御装置14は、ポンプを駆動する車載用電動モータを制御するのに用いられてもよい。
【0163】
○ 車載用電動モータ11は、車載用電動圧縮機10に用いられるものに限られず、車両に搭載されるものであれば任意である。例えば、車載用電動モータ11は、車両を走行させる走行用モータであってもよい。
【0164】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる好適な一例について以下に記載する。
(イ)前記3相電圧指令値導出部は、前記2相電圧指令値に基づいて、基準振幅を有する3相基準指令値を生成する基準生成部と、前記3相基準指令値に対して前記中性点電位を重畳させることによって前記3相電圧指令値を導出する重畳部と、を備え、前記重畳部は、前記電圧利用率が前記第1電圧利用率である場合には、前記3相基準指令値に対して前記第1中性点振幅の中性点電位を重畳させ、前記電圧利用率が前記第2電圧利用率である場合には、前記3相基準指令値に対して前記第2中性点振幅の中性点電位を重畳させるものであるとよい。
【符号の説明】
【0165】
10…車載用電動圧縮機(車載用流体機械)、11…車載用電動モータ、12…圧縮部、13…インバータ回路、14…インバータ制御装置、22…ロータ、24u,24v,24w…3相コイル、31…電圧センサ(電圧把握部)、34…位置/速度推定部(速度把握部)、35…取得部、36…回転制御部、104…車載用蓄電装置、Qu1~Qw2…3相スイッチング素子、Vdr,Vqr…2相電圧指令値、Vur,Vvr,Vwr…3相電圧指令値、Vu0,Vv0,Vw0…3相基準指令値、Vux,Vvx,Vwx…シフト指令値、Vux1,Vvx1,Vwx1…第1のシフト指令値、Vux2,Vvx2,Vwx2…第2のシフト指令値、Vuy,Vvy,Vwy…変化指令値、Pu0,Pv0,Pw0…基準PWM信号、Pu1,Pv1,Pw1…第1PWM信号、Pu2,Pv2,Pw2…第2PWM信号、Wu0,Wv0,Ww0…基準パルス幅、Wu1,Wv1,Ww1…第1パルス幅、Wu2,Wv2,Ww2…第2パルス幅、Wua,Wva,Wwa…平均パルス幅、En…中性点電位、fn…中性点振幅、fn1…第1中性点振幅、fn2…第2中性点振幅、R…電圧利用率、Rth…閾値利用率、R1…第1電圧利用率、R2…第2電圧利用率、T…制御周期。
図1
図2
図3
図4
図5
図6