(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】捩り振動低減装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/14 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
F16F15/14 Z
(21)【出願番号】P 2020210360
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】白石 有
(72)【発明者】
【氏名】天野 浩之
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-071341(JP,A)
【文献】特開2020-045913(JP,A)
【文献】特開2014-206238(JP,A)
【文献】特開2018-091407(JP,A)
【文献】米国特許第10428876(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
F16F 1/00- 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクを受けて回転する回転体に半径方向に向けたガイド部が設けられるとともに、軸部を有するとともに前記軸部を前記ガイド部に挿入して前記ガイド部によって前記半径方向に案内される転動体が設けられ、前記転動体は前記軸部の両端部に前記軸部と共に回転するように設けられたマス部を更に有し、前記マス部が遠心力によって押し付けられる転動面を有する慣性質量体が、前記回転体と同軸上に前記回転体に対して相対回転可能に設けられた捩り振動低減装
置であって、
前記ガイド部は、前記回転体の円周方向で、前記軸部を挟んで互いに対向する一対の内側壁部を有し、
一対の前記内側壁部のうちのいずれか一方の内側壁部のみに、前記軸部を一対の前記内側壁部のうちの他方の内側壁部に向けて押圧する弾性部材が設けられている
ことを特徴とする捩り振動低減装置。
【請求項2】
請求項1に記載の捩り振動低減装
置であって、
前記軸部は、前記マス部と一体化されている回転軸と、前記回転軸の外周側に嵌め込まれている回転軸受とを有し、
前記弾性部材は、前記回転軸受の外周面を押圧している
ことを特徴とする捩り振動低減装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の捩り振動低減装
置であって、
前記ガイド部は、前記回転体の円周方向で等間隔に、複数設けられ、
複数の前記ガイド部において前記弾性部材が前記軸部を押す方向が同じ方向である
ことを特徴とする捩り振動低減装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の捩り振動低減装
置であって、
前記ガイド部は、前記回転体の円周方向で等間隔に、複数設けられ、
複数の前記ガイド部のうちのいずれかのガイド部において前記弾性部材が前記軸部を押す方向が、複数の前記ガイド部のうちのいずれかの他のガイド部において前記弾性部材が前記軸部を押す方向とは反対になっている
ことを特徴とする捩り振動低減装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の捩り振動低減装
置であって、
前記ガイド部は、前記回転体の円周方向で等間
隔の二つを一対として少なくとも二対設けられ、
偶数の前記ガイド部のうち前記回転体の直径方向で互いに対向する位置に設けられた所定の一対のガイド部のそれぞれにおいて前記弾性部材が前記軸部を押す方向が同じであり
、
少なくとも二対の前記ガイド部のうち前記回転体の直径方向で互いに対向する位置に設けられた前記所定の一対のガイド部とは異なる他の一対のガイド部のそれぞれにおいて前記弾性部材が前記軸部を押す方向が同じでかつ前記所定の一対のガイド部において前記弾性部材が前記軸部を押す方向とは反対になっている
ことを特徴とする捩り振動低減装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の捩り振動低減装
置であって、
前記ガイド部は、前記回転体の円周方向で等間隔に、偶数設けられ、
偶数の前記ガイド部のうち前記回転体の直径方向で互いに対向する位置に設けられた一対のガイド部のそれぞれにおいて前記弾性部材が前記軸部を押す方向が互いに反対になっている
ことを特徴とする捩り振動低減装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の捩り振動低減装
置であって、
前記転動面は、各前記ガイド部毎に、前記ガイド部の外周側に、前記ガイド部側を向いた、半径方向で外側に膨らんだ曲面であり、
前記曲面は、前
記慣性質量体の中心から前記転動面が設けられている箇所までの半径より小さい曲率半径の円弧状の曲面である
ことを特徴とする捩り振動低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転体に入力されたトルクの変動(振動)を慣性質量体の振り子運動によって低減する装置に関し、特に回転体と慣性質量体とを遠心マスによって連結し、回転体と慣性質量体との相対位置を遠心力によって保持するように構成された捩り振動低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置の一例は、回転方向には拘束された状態で回転体に保持されている遠心マスが、回転体と共に回転(公転)することによる遠心力によって、慣性質量体に形成されている転動面に押し付けられるように構成されている。この種の装置では、回転体に入力されるトルクの変動によって、回転体と慣性質量体との間に相対的な位相のずれが生じた場合に、回転体と慣性質量体を回転方向で連結している遠心マスが、回転体の半径方向で中心側(内側)に押し戻され、あるいは押し下げられる。遠心マスは回転体と共に回転していて遠心力を生じているから、遠心マスは可動範囲内で最も外周側に移動しようとする。当該最も外周側の位置は、前記位相のずれが生じる前の位置であり、したがって半径方向で中心側に押し戻された遠心マスによる遠心力は、上記の位相のずれを解消もしくは是正する方向のトルクを、回転体と慣性質量体との間で生じさせる。このように慣性質量体が回転体に対して揺動することに伴う上記のトルクが、回転体に入力されたトルクの変動あるいはそれに伴う回転体などの振動を抑制するように作用する。
【0003】
したがって、上述したいわゆる振り子型の捩り振動低減装置では、いわゆる制振トルクを設計どおりに生じさせて所期の制振性能を得るためには、遠心マスの挙動が重要である。そこで例えば特許文献1に記載された装置では、トルクの変動に起因して半径方向に往復動する部材の傾きを防止もしくは抑制するための機構を設けている。その構成を簡単に説明すると、特許文献1に記載されているトルク変動抑制装置は、トルクを受けて回転する回転体に相当するハブフランジに、その外周面から半径方向で内側に向けて凹部が形成されており、遠心力を受けてハブフランジの半径方向に移動する遠心子が、その凹部の内部に配置されている。一方、ハブフランジの外周側には、ハブフランジと同心円上にイナーシャリングが配置され、そのイナーシャリングの内周面である転動面と遠心子との間にカム機構が設けられている。このカム機構は、遠心子と転動面との間に挟み込まれたコロと、転動面に対向する遠心子の外面に設けた凹曲面とから構成されている。
【0004】
したがって、特許文献1に記載されたトルク変動抑制装置では、ハブフランジが回転することにより、遠心子は遠心力によって転動面側に押圧され、コロが転動面と遠心子との間に挟み込まれる。イナーシャリングは、コロが転動面に押し付けられることにより、そのコロおよび遠心子を介してハブフランジに連結されているから、トルクが一定していてハブフランジとイナーシャリングとに回転方向のずれ(位相のずれ)が生じていない状態では、転動面のうちハブフランジもしくはイナーシャリングの回転中心から測った半径が最も大きい位置(仮に中立点とする)にコロが押し付けられる。すなわち、コロが接触している箇所の法線方向と遠心力の作用方向とが一致している。そのため、ハブフランジとイナーシャリングとの間には、遠心力に起因するトルクは生じていない。これに対して、トルクの変動などによってハブフランジとイナーシャリングとの間に位相のずれが生じると、コロや遠心子がハブフランジの半径方向で内側に押し戻されるとともにコロが中立点から外れるので、遠心子やコロなどによる遠心力の作用方向と、コロが接触している箇所における法線方向とが一致しなくなり、その結果、コロが遠心力によって上記の中立点に戻ろうとする。すなわち、ハブフランジとイナーシャリングとの間に、遠心力に起因するトルクが生じる。そのトルクは、ハブフランジに入力されるトルクの変動を抑制する方向に作用するので、これが制振力となる。
【0005】
上記のように遠心力を利用する捩り振動低減装置では、遠心力を受けて回転体と慣性質量体とを連結する遠心子などの部材は、回転体の半径方向に案内されて前後動(上下動)する。したがって遠心子などの部材と回転体におけるガイド部との間に両者の相対的な移動を許容し、あるいは円滑化するための隙間を設けることになる。これに対して、遠心子などの部材がイナーシャリングなどの慣性質量体に接触する箇所にずれが生じると、そのずれによってトルクが生じて制振特性もしくは制振性能が低下する可能性がある。そのため、特許文献1に記載されたトルク変動抑制装置では、遠心子の左右両側に弾性体を配置して、遠心子とハブフランジの凹部との間の隙間をなくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたトルク変動抑制装置では、遠心子の左右両側の隙間が、ここに設けた弾性体によって解消され、左右の弾性力がバランスすることにより、遠心子の傾きが回避もしくは抑制される。言い換えれば、遠心子は凹部の中央に常時保持される。このように保持されている遠心子が遠心力によって押し付けられる転動面が正確に加工されて形成されていれば、遠心子は、トルクが安定している状態では転動面の中央部(前述した中立点)に接触する。しかしながら、転動面は、慣性質量体の中心から外れた箇所を中心もしくは焦点とした円弧面あるいは楕円面であり、かつ慣性質量体に複数形成されるので、不可避的に加工誤差が生じることがある。特に、転動面が、慣性質量体の厚さ方向での中央部に設けられているリブ状の部分によって、慣性質量体の表面側と裏面側とに分割されるなどの場合には、加工の際にワークである慣性質量体の表裏を反転して固定(クランプ)し直すなどのことにより、表面側の転動面を加工する際の加工の基準点(原点)と裏面側の転動面を加工する際の加工の基準点(原点)とに対する相対位置に僅かなずれが生じ、これが原因で転動面に加工誤差が生じることがある。このような場合、特許文献1に記載されている装置においては、遠心子はその左右の弾性体によって凹部の中央部に保持されているから、その遠心子と加工誤差のある転動面とによるカムプロフィールに、転動面の加工誤差に応じた狂いが生じ、そのために制振特性もしくは制振性能が低下する可能性がある。
【0008】
この発明は上述した技術的課題に着目してなされたものであって、加工誤差あるいは加工精度に起因する制振性能あるいは制振特性の悪化を防止もしくは抑制でき、併せて耐久性を向上させることのできる捩り振動低減装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記の目的を達成するために、トルクを受けて回転する回転体に半径方向に向けたガイド部が設けられるとともに、軸部を有するとともに前記軸部を前記ガイド部に挿入して前記ガイド部によって前記半径方向に案内される転動体が設けられ、前記転動体は前記軸部の両端部に前記軸部と共に回転するように設けられたマス部を更に有し、前記マス部が遠心力によって押し付けられる転動面を有する慣性質量体が、前記回転体と同軸上に前記回転体に対して相対回転可能に設けられた捩り振動低減装置において、前記ガイド部は、前記回転体の円周方向で、前記軸部を挟んで互いに対向する一対の内側壁部を有し、一対の前記内側壁部のうちのいずれか一方の内側壁部のみに、前記軸部を一対の前記内側壁部のうちの他方の内側壁部に向けて押圧する弾性部材が設けられていることを特徴としている。
【0010】
この発明においては、前記軸部は、前記マス部と一体化されている回転軸と、前記回転軸の外周側に嵌め込まれている回転軸受とを有し、前記弾性部材は、前記回転軸受の外周面を押圧していてよい。
【0011】
この発明においては、前記ガイド部は、前記回転体の円周方向で等間隔に、複数設けられ、複数の前記ガイド部において前記弾性部材が前記軸部を押す方向が同じ方向であってよい。
【0012】
この発明においては、前記ガイド部は、前記回転体の円周方向で等間隔に、複数設けられ、複数の前記ガイド部のうちのいずれかのガイド部において前記弾性部材が前記軸部を押す方向が、複数の前記ガイド部のうちのいずれかの他のガイド部において前記弾性部材が前記軸部を押す方向とは反対になっていてよい。
【0013】
この発明においては、前記ガイド部は、前記回転体の円周方向で等間隔の二つを一対として少なくとも二対設けられ、少なくとも二対の前記ガイド部のうち前記回転体の直径方向で互いに対向する位置に設けられた所定の一対のガイド部のそれぞれにおいて前記弾性部材が前記軸部を押す方向が同じであり、偶数の前記ガイド部のうち前記回転体の直径方向で互いに対向する位置に設けられた前記所定の一対のガイド部とは異なる他の一対のガイド部のそれぞれにおいて前記弾性部材が前記軸部を押す方向が同じでかつ前記所定の一対のガイド部において前記弾性部材が前記軸部を押す方向とは反対になっていてよい。
【0014】
この発明においては、前記ガイド部は、前記回転体の円周方向で等間隔に、偶数設けられ、偶数の前記ガイド部のうち前記回転体の直径方向で互いに対向する位置に設けられた一対のガイド部のそれぞれにおいて前記弾性部材が前記軸部を押す方向が互いに反対になっていてよい。
【0015】
この発明においては、前記転動面は、各前記ガイド部毎に、前記ガイド部の外周側に、前記ガイド部側を向いた、半径方向で外側に膨らんだ曲面であり、前記曲面は、前記慣性質量体の中心から前記転動面が設けられている箇所までの半径より小さい曲率半径の円弧状の曲面であってよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明の捩り振動低減装置では、転動体は回転体のガイド部に保持されているから、回転体が回転すると、転動体が回転体と共に回転(公転)し、遠心力を受ける。ガイド部は、回転体をその半径方向にガイドするように構成されているから、遠心力を受けた転動体はガイド部に沿って回転体の半径方向で外側に移動し、慣性質量体に設けられている転動面に接触する。転動体には、転動面との接点において遠心力に対する反力が作用する。したがって、当該接点と回転体や慣性質量体の回転中心軸線とを結んだ線(法線)と、前記接点での転動体による遠心力との作用方向とが一致していれば、転動体(もしくは回転体)と慣性質量体との間にトルクは生じない。これに対して、回転体に入力されるトルクの変動などに起因する慣性質量体の慣性力などによって回転体と慣性質量体との間で相対回転が生じ、両者の位相がずれると、転動体が転動面に沿って回転する。その結果、転動体による遠心力の作用方向と、転動体が転動面に接触している接点での法線の方向とにずれが生じ、そのために遠心力に起因するトルクが転動体(もしくは回転体)と慣性質量体との間で生じる。このトルクは、回転体と慣性質量体との位相のずれを解消する方向に作用するから、結局、そのトルクが振動を抑制することになる。
【0017】
この発明においては、転動体の転動面に対する相対位置は、転動体の遠心力と転動面からの反力とによって決まる。したがって、転動面に加工誤差がある場合、その誤差に起因する反力が転動体に作用する。これに対して、転動体はガイド部の内部に弾性部材を介して保持されていてガイド部の内部で、弾性部材が圧縮および伸張できる範囲で移動可能である。そのため、上記の反力と遠心力とがバランスする位置に転動体が移動する。すなわち、転動面の加工誤差が転動体の移動によって吸収もしくは解消される。言い換えれば、転動体は、ガイド部の内部で回転体の回転方向に完全に拘束されている訳ではないので、転動面に加工誤差があれば、転動体は加工誤差に起因するずれのある位置に保持されることがなく、その加工誤差に起因するずれを解消する位置に移動し、転動面の加工誤差が転動体の移動によって吸収もしくは解消される。例えば、トルクが安定している場合(トルクの振動がない場合)、転動体の遠心力(転動面を押圧する力)の方向が、転動面に転動体が接触している点での法線方向に一致する。この状態で、トルクの振動によって回転体と慣性質量体との位相のずれが生じると、転動体が転動面に押されてガイド部の内部で押し戻される(押し下げられる)。こうして前述した中立点から外れた転動体は、遠心力に基づいて、中立点で転動面に接触するように、回転体と慣性質量体との間でトルクを生じさせるので、そのトルクが振動を抑制もしくは低減させる制振力となる。すなわち、制振性能あるいは制振特性の悪化を防止もしくは抑制できる。また、トルクの変動によって軸部が弾性部材に当接する場合、衝撃力は弾性部材によって緩和される。これとは反対側すなわち弾性部材が設けられていない側の内側壁部に対しては軸部は弾性部材によって押されて接触もしくは接近しているから、トルクの振動によって当接するとしてもその際の衝撃力は小さくなる。このように軸部もしくは転動体とガイド部との間の衝撃荷重を低下させることができるので、捩り振動低減装置の全体としての耐久性を向上させることができる。
【0018】
また、転動体は慣性質量体の転動面に接触することにより慣性質量体に連結され、弾性部材による弾性力が慣性質量体に作用することになる。複数のガイド部のそれぞれの内部に転動体ならびに弾性部材を設けてある場合、いずれかの弾性部材の弾性力の作用方向(すなわち弾性部材の配置位置)を他の弾性部材の弾性力の作用方向に対して反対方向にすれば、慣性質量体に作用する弾性力を、作用方向が反対の弾性部材同士の間で相殺もしくは減殺することができる。そのため、例えば、転動体の軸部をガイド部の内側壁部に押し付けるように、慣性質量体から転動体に作用する力が小さくなるので、その軸部が内側壁部に当接する際の衝撃力を低減でき、この点でも捩り振動低減装置の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明で対象もしくは前提とする捩り振動低減装置を分解して概略的に示す部分図である。
【
図2】そのハブプレートの一例を示す正面図である。
【
図3】転動面に加工誤差がない場合あるいは加工誤差が許容範囲内の場合における、ガイド部の内部での遠心ウェイト(特にその軸部)の位置を例示する図である。
【
図4】転動面の加工誤差の一例を模式的に示す線図である。
【
図5】転動面に加工誤差ある場合における、ガイド部の内部での遠心ウェイト(特にその軸部)の位置を例示する図である。
【
図7】ハブプレートの更に他の例を示す正面図である。
【
図8】ガイド部を三つ設けたハブプレートの例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施形態を次に説明する。なお、以下に説明する実施形態はこの発明の一例に過ぎず、この発明を限定するものではなく、この発明の捩り振動低減装置は、以下に説明する実施形態を必要に応じて適宜に変更もしくは置換して実施することができる。
【0021】
図1はこの発明で対象もしくは前提とする捩り振動低減装置の構成を説明するための概略的な部分図であり、主な構成部材を分解して示してある。ここに示す捩り振動低減装置1は、不可避的に振動するトルクが入力される回転体2に、振り子として機能する慣性質量体3を相対的に回転するように、言い換えれば揺動するように遠心ウェイト4によって連結し、その慣性質量体3が回転体2に対して遅れて揺動(振動)することにより、慣性質量体3による慣性力で振動を低減するように構成されている。
【0022】
図1に示す例では、回転体2はエンジンの出力軸などの回転軸(それぞれ図示せず)に連結される円板状の部材であり、以下の説明ではこの回転体2をハブプレート2と記す。ハブプレート2の外周部には、遠心ウェイト4を保持させるガイド部5が、複数、円周方向に等間隔に設けられている。ガイド部5は、遠心ウェイト4をハブプレート2の回転方向には拘束し、かつハブプレート2の半径方向には往復動可能に保持するように構成されている。具体的には、ガイド部5は、ハブプレート2の半径方向で外側に延び、かつハブプレート2の回転方向(円周方向)で互いに対向する一対のガイド片5a,5bを有しており、これらのガイド片5a,5bの間の部分は、ハブプレート2の半径方向で外側に開いたほぼU字形状の凹部になっていて、その凹部に遠心ウェイト4を嵌め込んで保持するようになっている。
【0023】
各ガイド部5における一対のガイド片5a,5bのうちの一方のガイド片(例えば5a)の内側壁部5a-1は、他方のガイド片(例えば5b)の内側壁部5b-1に対して僅かに後退しており、当該一方のガイド片5aの内側壁部5a-1には、
図1および
図2に示すように、弾性部材6が設けられている。この弾性部材6は、一方の内側壁部5a-1側から他方の内側壁部5b-1に向けた押圧力(弾性力)を生じるものであり、各ガイド部5に保持される遠心ウェイト4をハブプレート2の円周方向もしくは接線方向に押圧する。弾性部材6は、このような弾性力を生じるものであればよく、コイルばねやダイヤフラムスプリング、あるいはゴム製ブロックのような体積弾性部材などであってよい。
図2に示す例では、コイルばね6aとその先端部に設けられたプレート6bとによって弾性部材6が構成されている。
【0024】
なお、弾性部材6を設けるガイド片5a,5bは、いずれか一方のガイド片5a(もしくは5b)であればよく、また各ガイド部5において弾性部材6を設けるガイド片5a,5bが互いに異なっていてもよい。
図2に示す例では、ハブプレート2が
図2の時計方向に回転するとした場合、各ガイド部5において回転方向で後ろ側に位置するガイド片5aに弾性部材6が設けられている。したがって、各弾性部材6によって生じる弾性力(あるいは押圧力)の方向は、ハブプレート2の回転方向において同じになっている。
【0025】
遠心ウェイト4は、各ガイド部5によって保持されており、したがってガイド部5と同数の遠心ウェイト4が設けられている。各遠心ウェイト4は、上述したガイド部5に挿入される軸部4aと、その軸部4aに一体化されているマス部4bとを備えている。軸部4aはガイド部5における各ガイド片5a,5bの間に挿入できる外径の回転軸であり、
図1に示す例では、各ガイド片5a,5bの間に挿入できる外径の回転軸受4a-1と、その回転軸受4a-1を嵌合させてある回転軸4a-2とによって構成されている。したがって、
図1に示す構成では、回転軸受4a-1を前述した弾性部材6と他方のガイド片5bの内側壁部5b-1との間に配置させて、遠心ウェイト4をガイド部5によって保持するように構成されている。また、遠心ウェイト4は各ガイド片5a,5bの間を、弾性部材6が弾性変形できる範囲内で移動可能である。
【0026】
マス部4bは、回転軸4a-2の両端部、より詳しくは各ガイド片5a,5bの間の部分から突き出ている回転軸4a-2の両端部に一体化されている円盤状(もしくはローラ状)の部分である。その外径は、外周面がガイド片5a,5bの先端より外側に突き出る外径になっている。
【0027】
上記のガイド部5によってハブプレート2の回転方向には拘束されかつ半径方向に移動可能な上記の遠心ウェイト4が、ハブプレート2と共に回転(公転)することによる遠心力によって半径方向で外側に押し出されて慣性質量体3に接触する。この遠心ウェイト4によって、ハブプレート2と慣性質量体3とが、トルクの変動に起因する捩り振動を低減する状態に連結される。慣性質量体3は、トルクが振動した場合にハブプレート2に対して位相がずれて振動する質量体であり、
図1に示す例では、リング状に構成されている。より具体的には、慣性質量体3は、内径が、ハブプレート2のリング部分の外径より大きく、かつ前述したガイド片5a,5bの先端部までの半径より小さいリング状を成している。この慣性質量体3はハブプレート2の外周側に同心円上に配置され、ハブプレート2に対して相対的に回転できるように構成されている。
【0028】
慣性質量体3には、上述したガイド部5あるいは遠心ウェイト4と同数の転動面7が設けられている。転動面7は、上述した遠心ウェイト4(特に、そのマス部4b)を接触させてその表面を転動させるための曲面である。慣性質量体3の円周方向での複数箇所で前記各ガイド部5に対向する箇所は厚肉になっており、その厚さ(慣性質量体3の中心軸線と平行な方向での厚さ)は、上述した遠心ウェイト4における両端部側のマス部4b同士の間隔程度になっている。この厚肉部分の内周側の面で、各マス部4bに対向する箇所は、慣性質量体3の半径方向で外側に窪んだ(もしくは膨らんだ)アーチ状もしくは凹円弧状(または凹楕円円弧状)などの曲面に形成され、この曲面部分が転動面7となっている。マス部4bは、一つの遠心ウェイト4について二つ設けられ、それらのマス部4bは遠心ウェイト4の軸線方向に互いに離隔しているから、これと同様に、転動面7は一つの厚肉部分に、軸線方向に離隔して二つ形成されている。
【0029】
この転動面7の曲率半径は、慣性質量体3の中心から転動面7までの半径より小さくかつマス部4bの半径より大きい半径になっている。したがって、転動面7の円周方向での中央部が、慣性質量体3の中心(あるいはハブプレート2の回転中心)から最も離れたいわゆる中立点になっており、この中立点から左右いずれかにずれてマス部4bが接触した場合には、マス部4b(遠心ウェイト4)がハブプレート2の中心側に押し戻される。この状態で転動面7にマス部4bが接触している点における接線(転動面7での接線)は、転動面7の曲率中心と当該接触している点とを結んだ線(転動面7での法線)に対して垂直になるが、慣性質量体3もしくはハブプレート2の回転中心と前記接触している点とを結んだ線(慣性質量体3もしくはハブプレート2での法線)に対しては垂直にはならずに傾斜する。そのため、遠心ウェイト4が遠心力によって転動面7に押し付けられると、遠心ウェイト4(マス部4b)が上記のいわゆる中立点で転動面7に接触する方向に相対的に移動するように、慣性質量体3と遠心ウェイト4もしくはこれによって連結されているハブプレート2との間にトルク(円周方向の力)が作用する。このようなトルクは、ハブプレート2と慣性質量体3との相対回転(位相のずれもしくは捩れ)を是正あるいは解消する方向に作用する。すなわち、振動を抑制する制振作用もしくは振動低減作用が生じる。
【0030】
遠心ウェイト4による遠心力によって、上述したようにハブプレート2と慣性質量体3との相対回転(位相のずれもしくは捩れ)が是正されると、遠心ウェイト4は転動面7における上述したいわゆる中立点に移動するから、ガイド部5においては半径方向で外側に移動する。したがって、トルクの振動によってハブプレート2と慣性質量体3との相対回転が繰り返し生じると、遠心ウェイト4はガイド部5の内部を半径方向に繰り返し往復動する。また、遠心ウェイト4は、ハブプレート2と慣性質量体3との間で上述したトルクを伝達するから、遠心ウェイト4には円周方向の力が繰り返し作用し、その軸部4aはガイド部5における各ガイド片5a,5bの内側壁部5a-1,5b-1に向けて繰り返し押される。
【0031】
上述したガイド部5と転動面7とは、ハブプレート2や慣性質量体3の回転方向(円周方向)に等間隔に複数(3つ以上)、設けられる。したがって、遠心ウェイト4が遠心力によって転動面7に押し付けられ、その結果、ハブプレート2と慣性質量体3とが遠心ウェイト4によって連結されて回転している状態で、かつハブプレート2に入力されるトルクが安定している状態では、遠心ウェイト4は転動面7の中央部(前述したいわゆる中立点)に接触している。その状態を
図3に模式的に示してある。
図3に示す例は、転動面7に加工誤差がない場合、あるいは加工誤差が許容範囲内の場合(以下、これらの場合をまとめて加工誤差のない場合と記す)の例である。弾性部材6を設けていない他方のガイド片5bもしくはその内側壁部5b-1は、遠心ウェイト4(特にその軸部4a)を接触させてハブプレート2の半径方向に案内する箇所であるから、転動面7に加工誤差がない場合には、遠心ウェイト4が転動面7における中央部(いわゆる前述した中立点)に接触している状態では、遠心ウェイト4は弾性部材6に押されて他方のガイド片5bの内側壁部5b-1に押し付けられた状態になる。言い換えれば、この状態では、転動面7(慣性質量体3)と遠心ウェイト4との間に回転方向の力(トルク)は生じていない。
【0032】
トルクの振動によって、ハブプレート2と慣性質量体3との間に位相のずれ(もしくは捩れ)が生じると、前述したように、遠心ウェイト4はガイド部5の内部でハブプレート2の半径方向に往復動(
図3では上下動)する。転動面7に対する遠心ウェイト4の接触点が前述したいわゆる中立点から外れると、遠心ウェイト4が中立点に戻ろうとする力(トルク)が遠心ウェイト4の遠心力に応じて生じ、これがトルクの振動を抑制する制振力として作用する。ハブプレート2と慣性質量体3との相対的な位相のずれによって慣性質量体3と遠心ウェイト4との間に生じるトルクは、位相のずれの方向が交互に変化することにより、
図3の右方向および左方向に交互に変化する。したがって、遠心ウェイト4は、上記の他方のガイド片5bの内側壁部5b-1に案内されて
図3の上下方向に移動し、また弾性部材6(特にそのプレート6b)に案内されて
図3の上下方向に移動する。遠心ウェイト4がこのようにして上下動する過程で、遠心ウェイト4が他方のガイド片5bを押圧する力およびその反力が、ハブプレート2と慣性質量体3との間で制振トルクとして作用し、また遠心ウェイト4が弾性部材6を介して一方のガイド片5aを押圧する力およびその反力が、ハブプレート2と慣性質量体3との間で制振トルクとして作用する。
【0033】
遠心ウェイト4が弾性部材6を圧縮する場合、遠心ウェイト4(特にその軸部4a)は上記の他方のガイド片5b(特にその内側壁部5b-1)から離隔し、その後、トルクの作用方向が反転することにより、他方のガイド片5b(特にその内側壁部5b-1)に当接する。その場合、遠心ウェイト4が弾性部材6によって押されて他方のガイド片5bに接近しているので、衝撃力は小さく、耐久性の低下要因とはならない。また、弾性部材6に対しては遠心ウェイト4は常時接触しており、万が一、離隔した後に当接するとしても、当接時の衝撃力はコイルばね6aによって緩和される。したがって、この点でも耐久性が低下することはない。
【0034】
さらに、遠心ウェイト4は上述したように他方のガイド片5bおよび弾性部材6におけるプレート6bによってガイドされてガイド部5の内部を上下動するが、遠心ウェイト4が弾性部材6を圧縮する方向にトルクが掛かっている状態では、遠心ウェイト4と他方のガイド片5とは接触しないので、あるいは接触圧力がゼロになる。したがって、遠心ウェイト4がガイド部5の内部で上下動する際の摺動抵抗が小さくなる。そのため、慣性質量体3のいわゆる振り子運動が阻害されないので、制振性能あるいは制振特性が良好になる。
【0035】
つぎに、転動面7に加工誤差があった場合の一例を説明する。ここで転動面7の加工誤差とは、
図4に示すように、転動面7の表面の形状である輪郭線(プロフィール)が正規の輪郭線7Aに対してずれた輪郭線7Bになってしまう形状もしくは位置のずれである。このような加工誤差が生じている場合、転動面7のうち回転中心から最も遠いいわゆる中立点が、加工誤差がない場合の正規の中立点から、回転方向にずれる。中立点と遠心ウェイト4の中心とを結んだ線をセンターラインとすると、加工誤差のない場合のセンターラインLAに対して、加工誤差がある場合のセンターラインLBが傾斜する。
【0036】
図4に示すような加工誤差が生じている場合、遠心ウェイト4は遠心力により、加工誤差の輪郭線7Bで示す転動面7におけるいわゆる中立点に移動しようとするから、遠心ウェイト4に対して
図4の左方向に向けた力が作用する。このような力による遠心ウェイト4の移動を生じさせれば、中立点での法線と移動後のセンターラインLBとが一致する。すなわち、各センターラインLA,LBが一致する。
図1ないし
図3に示すこの発明の実施形態では、上述したように、一方のガイド片5aと遠心ウェイト4との間に弾性部材6を介在させて、遠心ウェイト4をガイド部5の内部で移動可能にしてあるので、上述したように加工誤差によって遠心ウェイト4に上記の力が作用した場合、遠心ウェイト4は弾性部材6を圧縮して移動する。その結果として、遠心ウェイト4が転動面7に中立点で接触している状態を
図5に示してある。
【0037】
ガイド部5は、上述したセンターラインLA,LBの方向に遠心ウェイト4をガイドするように構成されている。したがって、転動面7に上述した加工誤差が生じている場合のガイド部5は、遠心ウェイト4が中立点に接触している状態を基準にすれば、正規のセンターラインLAに対して傾斜していることになる。しかし、遠心ウェイト4が上記のように弾性部材6を弾性変形させて移動することにより、各センターラインLA,LBが一致することで表されるように、ガイド部5の傾きが解消もしくは是正される。このようにして転動面7の加工誤差による影響が解消もしくは是正された
図5に示す状態では、遠心ウェイト4は弾性部材6におけるプレート6bによってガイドされてガイド部5の内部を上下動する。その上下動は、他方のガイド片5bの内側壁部5b-1に対する接触、離隔を伴うものであっても、ガイド部5の各内側壁部5a-1,5b-1やプレート6bの表面に沿う方向であり、加工誤差がない場合と同様である。すなわち、遠心ウェイト4はガイド部5によってガイドされて円滑に上下動する。なお、ガイド片5a,5bに対する衝撃力が小さいことや摺動抵抗が小さいことは、加工誤差がない場合について説明したのと同様である。
【0038】
上述したように複数のガイド部5のうちのいずれかに前述した弾性部材6を設けることにより、転動面7の加工誤差あるいはそれに起因するガイド部5の相対的なずれが、制振特性や制振性能に影響することを回避もしくは抑制することができ、あるいは制振特性や制振性能を向上させることができる。このように機能する弾性部材6やこれを設けたガイド部5の構成は、いずれか一つのガイド部5に適用してもよく、あるいはいずれか複数のガイド部5もしくは全てのガイド部5に適用してもよい。前述した
図2に示す例は、四つの全てのガイド部5に弾性部材6を設け、かつそれらの弾性部材6の各ガイド部5における配置位置をハブプレート2の円周方向で同一の位置として弾性部材6の弾性力の作用方向を同じにした例である。このような構造の場合、各弾性部材6による弾性力が、ハブプレート2と慣性質量体3とを相対的に回転させるトルクとして作用する。そのため、例えば、ハブプレート2に伝達されるトルクが安定していてハブプレート2と慣性質量体3との間に位相のずれあるいは捩れが生じておらず、かつ転動面7に加工誤差やずれが特にはない状態では、遠心ウェイト4(その軸部4a)は、上述した
図3に示すように、他方のガイド片5bの内側壁部5b-1に押し付けられた状態になる。
【0039】
これとは異なり、この発明の他の実施形態では、各弾性部材6による弾性力が、特には、ハブプレート2と慣性質量体3とを相対的に回転させるトルクとはならない構成とすることができる。
図6はその一例を模式的に示しており、ここに示す例は、四つのガイド部5A,5B,5C,5Dのうち、ハブプレート2の直径方向で対向する一対のガイド部5A,5Cでは、一方のガイド片5aの内側壁部5a-1に弾性部材6を配置し、他の一対のガイド部5B,5Dでは、一方のガイド片5bの内側壁部5b-1に弾性部材6を配置した例である。言い換えれば、一対のガイド部5A,5Cにおける弾性部材6の弾性力の作用方向と、他の一対のガイド部5B,5Dにおける弾性部材6の弾性力の作用方向とを反対方向にした例である。あるいは互いに隣り合うガイド部5における弾性部材6の配置位置が異なっていてそれぞれの弾性部材6による弾性力の作用方向が反対になっている例である。
【0040】
また、
図7に他の例を模式的に示してあり、ここに示す例は、四つのガイド部5A,5B,5C,5Dのうち、ハブプレート2の直径方向で対向する一対のガイド部5Aとガイド部5Cとにおける弾性部材6の配置位置、ならびに他の一対のガイド部5Bとガイド部5Bとにおける弾性部材6の配置位置を、互いに反対にした例である。すなわち、ガイド部5Aとこれに隣り合っているガイド部5Bとにおいては、一方のガイド片5aにおける内側壁部5a-1に弾性部材6が配置され、ガイド部5Cとこれに隣り合っているガイド部5Dとにおいては、他方のガイド片5bの内側壁部5b-1に弾性部材6が配置されている。
【0041】
これら
図6および
図7に示す構成では、各弾性部材6の弾性力が等しいことにより、それぞれの弾性部材6の弾性力が互いに相殺される。そのため、トルクが安定していて特には振動していない場合には、各ガイド部5においては遠心ウェイト4の軸部4aが、弾性部材6を設けていないガイド片5a(もしくは5b)の内側壁部5a-1(もしくは5b-1)から離隔して各ガイド部5のほぼ中央部に位置する。したがって、ガイド部5の内部におけるその半径方向への遠心ウェイト4の往復動が円滑化され、制振特性あるいは制振性能が良好になる。また、遠心ウェイト4の軸部4aといずれかの内側壁部5a-1,5b-1とが離隔しているとしても、両者の隙間は、弾性部材6が遠心ウェイト4を押圧していることにより狭くなっており、そのため両者が当接する際の衝撃力が小さく、耐久性が損なわれることはない。
【0042】
さらに、この発明の実施形態では、ガイド部5や遠心ウェイト4ならびに転動面7を奇数、設けることも可能であり、例えば
図8に示すように、円周方向に等間隔に三つのガイド部5を設け、それぞれに弾性部材6を配置してもよい。この場合、弾性部材6も奇数になるから、ハブプレート2と慣性質量体3との間に、弾性部材6の弾性力に基づいて生じるトルクを相殺させることはできない。しかしながら、上記のトルクの要因となる弾性部材6の数を最少で一つにすることができるから、こうすることによりハブプレート2と慣性質量体3との間に生じるトルクを小さくして、慣性質量体3の振り子運動への影響をほぼ皆無にすることができる。
【0043】
なお、この発明は上述した実施形態で述べた構成に限定されないのであって、ハブプレート2を例として挙げた回転体、遠心ウェイト4を例として挙げた転動体、慣性質量体、さらにはガイド部などの構成もしくは形状、さらにはガイド部や転動体ならびに転動面などの数は、この発明の目的あるいは上述した作用を行う範囲内で適宜に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…振動低減装置
2…ハブプレート(回転体)
3…慣性質量体
4…遠心ウェイト(転動体)
4a…軸部
4a-1…回転軸受
4a-2…回転軸
4b…マス部
5,5A,5B,5C,5D…ガイド部
5a,5b…ガイド片
5a-1,5b-1…内側壁部
6…弾性部材
6a…コイルばね
6b…プレート
7…転動面
7A,7B…輪郭線
LA,LB…センターライン