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特許7380545皮膜組成物及び該皮膜組成物を用いたカプセル剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】皮膜組成物及び該皮膜組成物を用いたカプセル剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20231108BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20231108BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20231108BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20231108BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20231108BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20231108BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/48
A23L5/00 C
A23L29/238
A23L29/269
A23L29/212
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020503518
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2019007278
(87)【国際公開番号】W WO2019167934
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2018034621
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315001213
【氏名又は名称】三生医薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501360821
【氏名又は名称】MP五協フード&ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 慎弥
(72)【発明者】
【氏名】三輪 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡山 智一
(72)【発明者】
【氏名】窪田 敬一
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇典
(72)【発明者】
【氏名】岩田 怜
(72)【発明者】
【氏名】山西 健太
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-176886(JP,A)
【文献】特開平11-253112(JP,A)
【文献】特開2006-299052(JP,A)
【文献】特開平07-196478(JP,A)
【文献】特開2000-202003(JP,A)
【文献】特開2009-102293(JP,A)
【文献】国際公開第2003/043609(WO,A1)
【文献】特表2013-537902(JP,A)
【文献】特開2009-173607(JP,A)
【文献】TOBACMAN J.K.,Review of harmful gastrointestinal effects of carrageenan in animal experiments,Environ Health Perspect,2001年,109(10), 983-994,表3
【文献】BHATTACHARYYA S., et al.,Exposure to Common Food Additive Carrageenan Alone Leads to Fasting Hyperglycemia and in Combination,J Diabetes Res.,2015年,2015:513429,図1-6、表1,doi: 10.1155/2015/513429
【文献】ZHAN D.F., et al.,Xanthan-locust bean gum interactions and gelation,Carbohydrate Polymers,1993年,21(1), 53-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/36
A61K 9/48
A23L 5/00
A23L 29/238
A23L 29/269
A23L 29/212
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基剤成分として植物由来の水不溶性粉末植物由来の水溶性ポリマーとを質量比で1/99~99/1の割合で含有すると共に、ゲル化剤としてローカストビーンガムキサンタンガムとを質量比で70/30~20/80の割合で含有してなることを特徴とする皮膜組成物。
【請求項2】
上記水不溶性粉末が、デンプンである請求項1記載の皮膜組成物。
【請求項3】
上記デンプンが、リン酸架橋デンプン及び/又は湿熱処理デンプンである請求項2記載の皮膜組成物。
【請求項4】
上記リン酸架橋デンプンが、リン酸架橋エーテル化デンプン及び/又はリン酸架橋エステル化デンプンである請求項3記載の皮膜組成物。
【請求項5】
上記リン酸架橋エーテル化デンプンとして、リン酸架橋ヒドロキシプロピル化デンプンを含有する請求項4記載の皮膜組成物
【請求項6】
上記水溶性ポリマーが、デンプン分解物及び/又はポリデキストロースである請求項1~5のいずれか1項に記載の皮膜組成物。
【請求項7】
上記デンプン分解物が、難消化性デキストリンである請求項6記載の皮膜組成物。
【請求項8】
上記基剤成分として、上記水不溶性粉末と水溶性ポリマーとを質量比で1/99~70/30の割合で含有する請求項1~7のいずれか1項に記載の皮膜組成物。
【請求項9】
カラギーナンを含有しない請求項1~8のいずれか1項に記載の皮膜組成物。
【請求項10】
上記基剤成分100質量部に対して上記ゲル化剤を0.1~80質量部含有する請求項1~9のいずれか1項に記載の皮膜組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の皮膜組成物からなる硬カプセル又は軟カプセルに、薬剤又は食品を封入してなることを特徴とするカプセル剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼラチン及びカラギーナンを用いることなく調製される皮膜組成物、及び該皮膜組成物からなるカプセルに薬剤又は食品を封入したカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医薬や健康食品等に用いられるカプセルとしては、ゼラチンを基剤としたものが広く使用されているが、宗教上の制限やアレルギーの問題、また安全指向の高まりなどから、ゼラチン等の動物由来の原料を避ける需要の動向もあり、近年、デンプン等の植物由来成分を基剤とするカプセル皮膜が提案されている。
【0003】
このような、植物由来成分を基剤としたカプセルの皮膜としては、例えばデンプンやデキストリンなどのデンプン分解物、またはこれらの混合物を基剤とし、カラギーナンをゲル化剤として用いたカプセル皮膜が提案されている(特許第4242266号公報、特許第5539621号公報)。また、分子量やアンヒドロガラクトース含量の異なる2種類のガラクタンを混合し、これにグアガムやデンプン分解物を配合したカプセル皮膜も提案されており、そのガラクタンとしてカラギーナンが例示されている(特許第4500000号公報)。
【0004】
しかしながら、これらのカプセル皮膜組成物に配合されるカラギーナンについては、近年、世界中で需要量が増加しており、原料の枯渇、ゲル化剤の供給不足、価格高騰が懸念される。このため、カラギーナンに変わる植物性ゲル化剤を利用したカプセル皮膜の開発が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4242266号公報
【文献】特許第5539621号公報
【文献】特許第4500000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、植物由来の基剤からなり、かつカラギーナンを用いることなく良好に成膜することができ、ゼラチン皮膜やカラギーナンを用いた従来の皮膜と代替し得る、良好なカプセル皮膜としての性能を有する新規な皮膜組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究をおこなった結果、デンプンなどの植物由来の水不溶性粉末やデンプン分解物等の植物由来の水溶性ポリマーを基剤とし、これにローカストビーンガムやキサンタンガムを用いてゲル化させることにより、カプセル皮膜として十分に利用可能なカプセル成形性、割れ性能、強度、透明性、付着性、ガスバリア性を有する皮膜が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0008】
従って、本発明は、下記皮膜組成物及びカプセル剤を提供する。
1. 基剤成分として植物由来の水不溶性粉末植物由来の水溶性ポリマーとを質量比で1/99~99/1の割合で含有すると共に、ゲル化剤としてローカストビーンガムキサンタンガムとを質量比で70/30~20/80の割合で含有してなることを特徴とする皮膜組成物。
2. 上記水不溶性粉末が、デンプンである上記1記載の皮膜組成物。
3. 上記デンプンが、リン酸架橋デンプン及び/又は湿熱処理デンプンである上記2記載の皮膜組成物。
4. 上記リン酸架橋デンプンが、リン酸架橋エーテル化デンプン及び/又はリン酸架橋エステル化デンプンである上記3記載の皮膜組成物。
5. 上記リン酸架橋エーテル化デンプンとして、リン酸架橋ヒドロキシプロピル化デンプンを含有する上記4記載の皮膜組成物
6. 上記水溶性ポリマーが、デンプン分解物及び/又はポリデキストロースである上記1~5のいずれかに記載の皮膜組成物。
7. 上記デンプン分解物が、難消化性デキストリンである上記6記載の皮膜組成物。
8. 上記基剤成分として、上記水不溶性粉末と水溶性ポリマーとを質量比で1/99~70/30の割合で含有する上記1~7のいずれかに記載の皮膜組成物。
9. カラギーナンを含有しない上記1~8のいずれかに記載の皮膜組成物。
10. 上記基剤成分100質量部に対して上記ゲル化剤を0.1~80質量部含有する上記1~9のいずれかに記載の皮膜組成物。
11. 上記1~10のいずれかに記載の皮膜組成物からなる硬カプセル又は軟カプセルに、薬剤又は食品を封入してなることを特徴とするカプセル剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゼラチン、カラギーナンを配合することなく、これらを使用した従来のカプセル皮膜に代替することができる皮膜組成物、及び該皮膜組成物を用いたカプセル剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の皮膜組成物は、上記のとおり、基剤として植物由来の水不溶性粉末及び/又は植物由来の水溶性ポリマーと、ゲル化剤としてローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムとを含有するものである。ここで、上記植物由来の水不溶性粉末及び植物由来の水溶性ポリマーは、特に制限されるものではないが、可食性のものを好適に用いることができる。この場合の「可食性」とは、医薬に適用する場合には「薬学的に許容可能な」ことを意味し、食品に適用する場合には「食品衛生上許容可能な」ことを意味する。
【0011】
上記水不溶性粉末としては、特に限定されるものではないが、デンプンが好適に用いられ、特に湿熱処理デンプンや高アミロースデンプン、湿熱処理高アミロースデンプン、更には湿熱処理高アミロースとうもろこしデンプンが好ましく用いられ、これらを混合して用いることもできる。
【0012】
また、デンプンとしては、架橋デンプンを用いることもでき、リン酸架橋デンプンや、リン酸架橋エーテル化デンプン、リン酸架橋エステル化デンプンなどを好適に使用することができる。この場合、エーテル化としてはヒドロキシプロピル化が、エステル化としてはアセチル化を例示することができる。
【0013】
なお、デンプン以外の水不溶性粉末としては、セルロースや寒天などを例示することができる。
【0014】
この水不溶性粉末の粒径は、特に制限されるものではないが、JIS規格篩(JIS Z 8801-1)30メッシュ以下、特に60メッシュ以下であることが好ましい。粒径が30メッシュを超えると、液中への分散性が低下し、十分な皮膜強度を得ることができない場合がある。なお、この水不溶性粉末は若干量の可溶性固形分の含有は許容することができ、具体的には可溶性固形分の含有量が10質量%以下であれば問題なく使用することができ、好ましくは5質量%以下である。
【0015】
上記水溶性ポリマーとしては、デンプン分解物やポリデキストロース、セルロース等の多糖類を用いることができ、中でもデンプン分解物が好ましく用いられ、特に難消化性デキストリンが好ましく用いられる。この場合、水添(還元)されたデンプン分解物、特に水添(還元)された難消化性デキストリンも好ましく用いられる。
【0016】
この水溶性ポリマーの分子量は、特に制限されるものではないが、数平均分子量で1000~100000、特に1000~50000であることが好ましく、1000未満であると、べとつきの強い皮膜となってカプセルが付着しやすくなるなどの不都合を生じる可能性があり、一方100000を超えると皮膜組成物がゲル化し難くなる場合がある。
【0017】
本発明皮膜組成物の基剤としては、上記水不溶性粉末又は水溶性ポリマーを単独で用いることもできるが、特に湿潤皮膜の強度、ヒートシール性の観点から、また乾燥後のカプセルについては弾力性、付着性の観点から、水不溶性粉末と水溶性ポリマーとを併用することが好ましい。この場合、水不溶性粉末と水溶性ポリマーとの割合は、特に制限されるものではないが、質量比で水不溶性粉末/水溶性ポリマー=1/99~99/1、特に20/80~70/30とすることが好ましく、水不溶性粉末が多すぎると、成形が阻害され、湿潤皮膜の強度、ヒートシール性の低下につながる場合があり、一方水溶性ポリマーが多すぎると、湿潤皮膜のべたつきの発生、乾燥後のカプセルについては割れ性能や付着によるブロッキング性が低下する場合がある。
【0018】
次に、上記ゲル化剤のローカストビーンガムは、β-D-マンノースの主鎖がβ-1,4結合、α-D-ガラクトースの側鎖がα-1,6結合した多糖類であり、特に制限されるものでないが、例えばマンノースとガラクトースの比率が約4:1であるものを用いることができる。
【0019】
また、上記ゲル化剤のキサンタンガムは、微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)がブドウ糖等を発酵して、その菌体外に蓄積した多糖類を精製し粉砕した天然のガム質である。このようなキサンタンガムとしては、市販品を使用することができ、例えば、エコーガム(登録商標)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)、モナートガム(登録商標)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)、ラボールガム(登録商標)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0020】
本発明皮膜組成物のゲル化剤としては、用途や目的に応じて、上記ローカストビーンガム又はキサンタンガムを単独で用いても、両者を併用してもよい。例えば、軟カプセルとする場合には両者を併用することが好ましく、その場合、ローカストビーンガムとキサンタンガムとの割合は、特に制限されるものではないが、質量比でローカストビーンガム/キサンタンガム=90/10~10/90、特に70/30~20/80とすることが好ましい。ローカストビーンガムが多すぎると増粘作用が強く、べたつきが強くなる場合があり、キサンタンガムが多すぎると流動性に乏しい皮膜溶液となり、皮膜形成後も皮膜が脆くなる場合がある。一方、シームレスカプセルとする場合には、両者を併用することもできるが、ローカストビーンガムとキサンタンガムのいずれか一方の使用により十分な性能の皮膜を成形することができる。
【0021】
上記ゲル化剤の配合量は、皮膜に求められる強度、硬さ、柔軟性、形状、厚さなどに応じて適宜設定され、特に制限されるものではないが、特に上記基剤成分100質量部に対して、80質量部以下、特に50質量部以下、更には30質量部以下とすることが好ましい。この場合、ゲル化剤の配合量が0.1質量部に満たないと、湿潤皮膜においては強度低下、ヒートシール性の低下、べたつきの発生、乾燥後のカプセルにおいてはブロッキングや割れが起こりやすくなる場合があり、ゲル化剤配合量の下限値は特に制限されるものではないが、0.1質量部以上とすることが好ましい。一方、ゲル化剤の配合量が80質量部を超えると、皮膜溶液の流動性が低下して皮膜が成形できないなどの不都合を生じる場合がある。
【0022】
本発明の皮膜組成物には、必要に応じて可塑剤を添加して組成物の弾力性などを調整することができる。可塑剤としては、グリセリン、ソルビトール、マルチトール、エチレングリコールなどを例示することができ、これらの1種又は2種以上を併用することができるが、これらの中ではグリセリンが好ましく用いられる。可塑剤の添加量は、その目的に応じて適宜設定することができ、特に制限されるものではないが、上記基剤成分100質量部に対して0.1~80質量部、特に20~60質量部とすることが好ましい。
【0023】
本発明の皮膜組成物には、上記基剤成分、ゲル化剤、可塑剤以外にも、例えばカプセルの硬さを調節する目的で、プルランや寒天などを配合することもできる。
【0024】
更に、本発明の皮膜組成物には、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、必要に応じて公知の添加剤を配合することができ、例えば着色剤、矯味剤、甘味剤、保存剤、香料などを適量配合することができる。
【0025】
本発明の皮膜組成物は、例えば硬カプセルや軟カプセルに成形し、これらに薬剤や食品を封入してカプセル剤とすることができ、また場合によっては錠剤や粒状に成形された医薬や食品の表面を被覆するコーティングフィルムとすることも可能であるが、特に軟カプセルを形成する皮膜組成物として好適に用いられる。
【0026】
この場合、本発明皮膜組成物をカプセルやコーティングフィルムとして製するための方法は、公知の方法や製造装置をそのまま利用することができる。例えば、公知のロータリーダイ法により軟カプセルとする場合には、以下のとおりにすればよい。
【0027】
まず、水に上記本発明の皮膜組成物の各成分を懸濁させた後、加温溶解して皮膜溶液を得、ゲル化温度以上に保つ。次に、この皮膜溶液を平滑な金属板上に展延、冷却、ゲル化させて湿潤皮膜を得、2枚の湿潤皮膜を2つの回転する金型の接点で重なるようにセットして、ポンプで一定量ずつ押し出されて垂直に落下する内容物をこの2枚の湿潤皮膜で包み込み、圧着又はヒートシールして打ち抜くことにより、湿潤カプセルを得る。そして、これを乾燥させて軟カプセル剤とすることができる。
【0028】
なお、上記ロータリーダイ法だけでなく、公知の二重ノズル法(シームレス法)を採用することもできる。いずれも公知の方法に従って実施すればよく、その詳細は、例えば「固形製剤の製造技術」(1985年3月5日 初版第1刷発行,塩路 雄作著,株式会社シーエムシー出版)に記載されている。
【実施例
【0029】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に示すが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0030】
[実施例]
表1~5に記載の配合で各成分を水に懸濁させ、90℃以上で2時間加温溶解して、皮膜溶液を調製した。この皮膜溶液を平滑な金属板上に展延し、冷却、ゲル化させて湿潤皮膜(厚さ1.0mm)を得た。次いで、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を内容物として、ロータリーダイ式カプセル充填機を用いて楕円球状の湿潤カプセルを製し、これを40±2℃、20%RH未満に設定した乾燥機内で乾燥させて軟カプセル剤を作製した。その際、乾燥後のカプセル皮膜組成物の含水量が10±1重量%となるように設定した。
【0031】
得られた各軟カプセル及びそのカプセル皮膜について、下記方法により、湿潤皮膜の状態を評価した。また、サンプルNo.26~30、41~45及び56~65については、得られたカプセルの外観及び物性についても下記方法に従って評価した。結果を表1~4に併記する。
【0032】
[湿潤皮膜の状態1(べとつき)]
皮膜溶液をシャーレにとり、成膜したサンプル皮膜(50mm×50mm)を室温にて24時間乾燥させ、当該サンプル皮膜表面の「べとつき」について次のとおりに評価した。得られた皮膜の表面に重さ100gの金属板をのせて60秒間経過した後に持ち上げ、その際の金属板と皮膜との間の粘着性から下記基準に基づいて皮膜の「べとつき」を評価した。
◎:30秒未満で剥がれる
○:30秒以上、60秒未満で剥がれる
△:60秒以上経過後に剥がれる
×:剥がれない
【0033】
[湿潤皮膜の状態2(ヒートシール性)]
成膜したサンプルを80~90℃のヒートシーラーにて張り合わせた後、両端から手で引っ張りヒートシール性(剥離強度)を下記基準に従って評価した。
◎:良好(強い力で引っ張っても剥離しない)
○:普通(引っ張っても剥離しない)
△:弱い(引っ張っていると徐々に剥離する)
×:簡単に剥離する(つまんだだけで容易に剥離する)
【0034】
[カプセルの外観]
得られたカプセルを目視にて検査し、「色」、「形状」、「キズ」、「表面のなめらかさ」の4項目について確認して、1つの項目でも問題が見られたものを不良とし、全く問題の無い良品の数の割合(母数:約5000個)により、下記基準で評価した。
◎:99.7%以上
○:95%以上
△:68%以上
×:67%以下
【0035】
[カプセルの物性1(付着性)]
各カプセル20粒を6号ガラスサンプル瓶に入れ、開栓状態で40℃75%RHの恒温槽にて48時間保存して吸湿させたカプセルについて、カプセル同士の付着性を次の方法で評価した。カプセルが収容された上記サンプル瓶に衝撃を与えてカプセル同士がバラけるか否かを調べ、下記基準で評価した。
◎:瓶を逆さにするだけでバラける
○:瓶を逆さにして机上2cmの高さから落すと、バラける
△:瓶を逆さにして机上4cmの高さから落すと、バラける
【0036】
[カプセルの物性2(硬度)]
完成したカプセルをデシケーター内で減圧乾燥(700mmHg)し、モンサント硬度試験器(最大硬度:30kg以上)によって破壊硬度(kg)を測定し、下記基準で評価した。なお、下記基準において、○(15kg以上)であれば市場においては問題なく流通できる硬度である。
◎:30kg以上
○:30kg未満~15kg以上
△:15kg未満~5kg以上
×:5kg未満
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
以上の表1~5に記載のとおり、本発明の皮膜組成物は、カプセル皮膜等として有用であり、従来のゼラチン皮膜やカラギーナンを用いた植物由来皮膜に代替し得るものであることが確認された。