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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】光学顕微鏡装置及び光学顕微鏡システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20231108BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20231108BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/00
G01N21/64 F
G01N21/64 E
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020536426
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2019028557
(87)【国際公開番号】W WO2020031668
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2018150261
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂脇 優
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-282112(JP,A)
【文献】国際公開第2014/112212(WO,A1)
【文献】特開2014-146542(JP,A)
【文献】特開2015-200693(JP,A)
【文献】特開2014-112122(JP,A)
【文献】特開2003-130866(JP,A)
【文献】特開2013-190760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本を照明するための照明光を出射する光源と、前記照明光の偏光状態を画素ごとに制御するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)空間光変調素子と、前記LCOS空間光変調素子を均一照明する第1の照明用光学部材と、前記照明光の偏光状態に応じて前記LCOS空間光変調素子側から前記標本側へと向かう前記照明光の透過状態を制御する偏光光学素子と、を有する第1の照明光学系と、
前記第1の照明光学系からの光束を標本面に結像させる第2の照明用光学部材を有する第2の照明光学系と、
撮像光学部材と撮像素子とを有し、前記標本面を撮像するための撮像光学系と、
を備え、
前記第1の照明光学系では、前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが、前記標本の発光状態に応じて、時間変化に伴って前記画素ごとに制御される、
光学顕微鏡装置。
【請求項2】
前記標本は、所定波長の照明光が照射されると発光する発光性のタンパク質を含む前記生体材料、又は、所定の発光色素で標識された前記生体材料を含む、請求項1に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項3】
前記第1の照明光学系は、複数の前記光源を有しており、
前記第1の照明光学系が有する複数の前記光源の少なくとも何れかから照射された前記照明光により、前記発光性のタンパク質が発光するか、又は、前記発光色素が励起されることで発光する、請求項2に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項4】
前記第1の照明光学系は、偏光補償素子を更に備える、請求項1に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項5】
前記第1の照明光学系は、スペックル除去素子を更に備える、請求項1に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項6】
前記第1の照明光学系及び前記第2の照明光学系は、前記標本面に対し、前記照明光を場所特異的に照射する、請求項1に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項7】
前記第1の照明光学系及び前記第2の照明光学系は、前記標本面に対し、前記照明光を時間特異的に照射する、請求項6に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項8】
前記標本面に対して第2の照明光を照射する第2の光源と、前記標本面を均一に照射する第3の照明光学部材と、を有する第3の照明光学系を更に備える、請求項1に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項9】
前記第1の照明光学系では、前記第3の照明光学系による標本像に応じて前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが制御される、請求項8に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項10】
前記第1の照明光学系、及び、前記第2の照明光学系は、前記撮像光学系に対して透過照明として配置される、請求項1に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項11】
前記第1の照明光学系では、前記第1の照明光学系及び前記第2の照明光学系による標本像に応じて前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが制御される、請求項10に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項12】
前記第1の照明光学系では、場所特異的な前記照明光を前記生体材料に追随させるように、前記LCOS空間光変調素子が制御される、請求項1に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項13】
前記第1の照明光学系では、場所特異的な前記照明光を前記生体材料に追随させるように、前記LCOS空間光変調素子が制御される、請求項9に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項14】
前記第1の照明光学系では、場所特異的な前記照明光を前記生体材料に追随させるように、前記LCOS空間光変調素子が制御される、請求項11に記載の光学顕微鏡装置。
【請求項15】
標本を照明するための照明光を出射する光源と、前記照明光の偏光状態を画素ごとに制御するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)空間光変調素子と、前記LCOS空間光変調素子を均一照明する第1の照明用光学部材と、前記照明光の偏光状態に応じて前記LCOS空間光変調素子側から前記標本側へと向かう前記照明光の透過状態を制御する偏光光学素子と、を有する第1の照明光学系と、
前記第1の照明光学系からの光束を標本面に結像させる第2の照明用光学部材を有する第2の照明光学系と、
撮像光学部材と撮像素子とを有し、前記標本面を撮像するための撮像光学系と、
を備え、
前記第1の照明光学系では、前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが、前記標本の発光状態に応じて、時間変化に伴って前記画素ごとに制御される、
光学顕微鏡装置。
【請求項16】
光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本を照明するための照明光を出射する光源と、前記照明光の偏光状態を画素ごとに制御するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)空間光変調素子と、前記LCOS空間光変調素子を均一照明する第1の照明用光学部材と、前記照明光の偏光状態に応じて前記LCOS空間光変調素子側から前記標本側へと向かう前記照明光の透過状態を制御する偏光光学素子と、を有する第1の照明光学系と、
前記第1の照明光学系からの光束を標本面に結像させる第2の照明用光学部材を有する第2の照明光学系と、
撮像光学部材と撮像素子とを有し、前記標本面を撮像するための撮像光学系と、
を備える、光学顕微鏡装置と、
前記光学顕微鏡装置の動作状態を制御する制御部と、
前記撮像素子により生成された前記標本の撮像画像を画像処理する画像処理部と、
を有し、
前記第1の照明光学系では、前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが、前記標本の発光状態に応じて、時間変化に伴って前記画素ごとに制御される、
光学顕微鏡システム。
【請求項17】
前記画像処理部は、前記撮像画像を画像処理することで光照射による前記生体材料の変化を特定する、請求項16に記載の光学顕微鏡システム。
【請求項18】
前記制御部は、前記画像処理部により特定された前記生体材料の変化に応じて、前記光学顕微鏡装置の動作状態を制御して、前記照明光の前記標本への照射状態を前記生体材料に追随させる、請求項17に記載の光学顕微鏡システム。
【請求項19】
前記画像処理部は、前記標本の撮像画像に対して、前記標本に関する情報、又は、前記光学顕微鏡装置の状態に関する情報の少なくとも何れかを重畳して表示するよう制御する、請求項16に記載の光学顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学顕微鏡装置及び光学顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞の位置や形状が経時的に変化する様子を観察するために、各種の観察装置が提案されている。例えば以下の特許文献1には、細胞の位置や形状に合わせて光刺激の位置を変化させるとともに、光刺激直後の細胞を観察することが可能な観察装置が開示されており、光刺激のための照明光の照射領域を変化させる機構として、ガルバノミラー及びDMD(Digital Mirror Device)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-257599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のようにガルバノミラーを用いて照明光を走査する場合、観察対象物の複数個所に同時に照明光を照射することは困難である。また、DMDは、その機構上、オフ時の光が散乱して迷光になりやすく、照明光を照射したい位置にのみ照明光を照射しつつ、照射したくない位置には照明光を照射しない、という精度において改良の余地がある。
【0005】
このように、光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本に対してであっても、より均一かつより精度の高い照明方法を実現することが希求されている。
【0006】
そこで、本開示では、光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本に対してであっても、より均一かつより精度の高い照明を実現することが可能な、光学顕微鏡装置及び光学顕微鏡システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本を照明するための照明光を出射する光源と、前記照明光の偏光状態を画素ごとに制御するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)空間光変調素子と、前記LCOS空間光変調素子を均一照明する第1の照明用光学部材と、前記照明光の偏光状態に応じて前記LCOS空間光変調素子側から前記標本側へと向かう前記照明光の透過状態を制御する偏光光学素子と、を有する第1の照明光学系と、前記第1の照明光学系からの光束を標本面に結像させる第2の照明用光学部材を有する第2の照明光学系と、撮像光学部材と撮像素子とを有し、前記標本面を撮像するための撮像光学系と、を備え、前記第1の照明光学系では、前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが、前記標本の発光状態に応じて、時間変化に伴って前記画素ごとに制御される、光学顕微鏡装置が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、標本を照明するための照明光を出射する光源と、前記照明光の偏光状態を画素ごとに制御するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)空間光変調素子と、前記LCOS空間光変調素子を均一照明する第1の照明用光学部材と、前記照明光の偏光状態に応じて前記LCOS空間光変調素子側から前記標本側へと向かう前記照明光の透過状態を制御する偏光光学素子と、を有する第1の照明光学系と、前記第1の照明光学系からの光束を標本面に結像させる第2の照明用光学部材を有する第2の照明光学系と、撮像光学部材と撮像素子とを有し、前記標本面を撮像するための撮像光学系と、を備え、前記第1の照明光学系では、前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが、前記標本の発光状態に応じて、時間変化に伴って前記画素ごとに制御される、光学顕微鏡装置が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本を照明するための照明光を出射する光源と、前記照明光の偏光状態を画素ごとに制御するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)空間光変調素子と、前記LCOS空間光変調素子を均一照明する第1の照明用光学部材と、前記照明光の偏光状態に応じて前記LCOS空間光変調素子側から前記標本側へと向かう前記照明光の透過状態を制御する偏光光学素子と、を有する第1の照明光学系と、前記第1の照明光学系からの光束を標本面に結像させる第2の照明用光学部材を有する第2の照明光学系と、撮像光学部材と撮像素子とを有し、前記標本面を撮像するための撮像光学系と、を備える、光学顕微鏡装置と、前記光学顕微鏡装置の動作状態を制御する制御部と、前記撮像素子により生成された前記標本の撮像画像を画像処理する画像処理部と、を有し、前記第1の照明光学系では、前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが、前記標本の発光状態に応じて、時間変化に伴って前記画素ごとに制御される、光学顕微鏡システムが提供される。
【0010】
本開示によれば、第1の照明光学系は、標本に対して出射された照明光の偏光状態をLCOS空間光変調素子により制御し、偏光状態の制御された照明光を第2の照明光学系へと導光する。第2の照明光学系は、第1の照明光学系からの光束を標本面に結像させ、撮像光学系は、照明光の照射されている標本面を撮像する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本開示によれば、光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本に対してであっても、より均一かつより精度の高い照明を実現することが可能となる。
【0012】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、又は、本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施形態に係る光学顕微鏡システムの全体構成を示した説明図である。
図2】同実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成の一例を模式的に示した説明図である。
図3】同実施形態に係る光学顕微鏡装置におけるLCOS空間光変調素子について説明するための説明図である。
図4】同実施形態に係る光学顕微鏡装置について説明するための説明図である。
図5】同実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成の他の一例を模式的に示した説明図である。
図6】同実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成の他の一例を模式的に示した説明図である。
図7】同実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成の他の一例を模式的に示した説明図である。
図8】同実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成の他の一例を模式的に示した説明図である。
図9】同実施形態に係る光学顕微鏡装置について説明するための説明図である。
図10】同実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成の他の一例を模式的に示した説明図である。
図11】同実施形態に係る演算処理装置の構成の一例を模式的に示したブロック図である。
図12】同実施形態に係る演算処理装置について説明するための説明図である。
図13】同実施形態に係る演算処理装置のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.光学顕微鏡システムの全体構成について
2.光学顕微鏡装置について
2.1.第1の照明光学系について
2.2.第2の照明光学系について
2.3.撮像光学系について
2.4.変形例について
3.演算処理装置について
3.1.演算処理装置の構成について
3.2.顕微鏡制御部201、画像処理部205が実施する処理の具体例について
3.3.演算処理装置のハードウェア構成について
4.標本の観察方法について
【0016】
(光学顕微鏡システムの全体構成について)
まず、図1を参照しながら、本開示の実施形態に係る光学顕微鏡システムの全体構成について、簡単に説明する。図1は、本実施形態に係る光学顕微鏡システムの全体構成の一例を示した説明図である。
【0017】
本実施形態に係る光学顕微鏡システムは、光に反応して機能を変化させる生体材料を観察するために用いられる。この光学顕微鏡システム1は、図1に示したように、光学顕微鏡装置10と、演算処理装置20と、を有している。
【0018】
光学顕微鏡装置10は、演算処理装置20による制御のもとで動作する。光学顕微鏡装置10は、光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本を撮像して、生成した撮像画像のデータを、演算処理装置20に出力する。かかる光学顕微鏡装置10の詳細な構成については、以下で改めて説明する。
【0019】
演算処理装置20は、光学顕微鏡装置10に対して所定の制御信号を送信して、光学顕微鏡装置10の少なくとも一部の構成の動作状態を統括的に制御する。また、演算処理装置20は、光学顕微鏡装置10から出力された標本の撮像画像のデータに対して画像処理を実施し、得られた画像処理結果を、光学顕微鏡システム1のユーザに提供する。更に、演算処理装置20は、得られた画像処理結果を用いて、光学顕微鏡装置10の動作状態を制御することも可能である。かかる演算処理装置20の詳細な構成については、以下で改めて説明する。なお、演算処理装置20は、光学顕微鏡装置10の一部の構成の動作状態のみを制御することも可能である。例えば、演算処理装置20は、光学顕微鏡装置10の各種光学系の少なくとも一部の構成(例えば、以下で詳述する第1の照明光学系又は撮像光学系の少なくとも何れか)のみを制御して、光学顕微鏡装置10のその他の構成(例えば、ステージや対物レンズなど)は制御しないという態様を実現することも可能である。
【0020】
以上、図1を参照しながら、本実施形態に係る光学顕微鏡システムの全体構成について、簡単に説明した。
【0021】
(光学顕微鏡装置の構成について)
次に、図2図10を参照しながら、本実施形態に係る光学顕微鏡装置の構成について、詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成の一例を模式的に示した説明図である。図3は、本実施形態に係る光学顕微鏡装置におけるLCOS空間光変調素子について説明するための説明図であり、図4図9は、本実施形態に係る光学顕微鏡装置について説明するための説明図である。図5図8図10は、本実施形態に係る光学顕微鏡装置の全体構成の他の一例を模式的に示した説明図である。
【0022】
本実施形態に係る光学顕微鏡装置10には、観察対象物を含む標本が配設されるステージ11が設けられている。本実施形態に係る光学顕微鏡装置10は、光に反応して機能を変化させる生体材料であっても光を照射しながら観察を行うことが可能であり、光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本Sが、ステージ11上に設けられる。
【0023】
ここで、光に反応して機能を変化させる生体材料(以下、単に「光応答性の生体材料」ともいう。)は、特に限定されるものではなく、光に反応して機能を変化させるものであれば、公知の様々な生体材料を観察対象物とすることができる。このような光応答性の生体材料として、例えば、チャネルロドプシン2(Channelrhodopsin-2、ChR2)等に代表される各種の光活性化タンパク質、及び、植物由来の光受容ドメイン(AsLOV2、CRY2/CIB1)等に代表される各種の光受容ドメインなどのような、各種のタンパク質、脂質、遺伝子等を挙げることができる。
【0024】
上記のような光応答性の生体材料を含む標本Sを観察するために、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10は、図2に模式的に示したように、第1の照明光学系13Aと、第2の照明光学系13Bと、撮像光学系13Cと、を少なくとも有している。以下、これら3種類の光学系について、詳細に説明する。なお、以下で詳述する本実施形態に係る光学顕微鏡装置10を用いることで、上記のような光応答性の生体材料を含まない標本Sであっても、良好に観察を行うことが可能である。
【0025】
<第1の照明光学系13A>
第1の照明光学系13Aは、標本Sに対して照射される照明光の偏光状態を制御することにより、標本Sへの照明光の照射パターンを制御する光学系である。この第1の照明光学系13Aは、図2に模式的に示したように、光源101(101A、101B、101C)と、第1の照明用光学部材の一例としてのインテグレータ107及びコンデンサレンズ109と、偏光光学素子の一例としての偏光ビームスプリッタ111と、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)空間光変調素子113と、を有している。また、第1の照明光学系13Aは、上記のような各種の光学素子に加えて、カップリングレンズ(指向角変換素子)103(103A、103B、103C)と、光路合成素子の一例としてのダイクロイックプリズム105(105A、105B)を有していることが好ましい。
【0026】
光源101は、標本S中に含まれる光応答性の生体材料に対して、光刺激を与えるための照明光を出射するものである。本実施形態に係る光学顕微鏡装置10において、かかる照明光は、所定の偏光方向を有していることが好ましい。
【0027】
また、所定波長の照明光が照射されると発光する発光性のタンパク質を更に含む、光に反応して機能を変化させる生体材料、又は、所定の発光色素で標識された生体材料等を観察対象とする場合、光源101として、上記のような発光を生じさせるための照明光を照射可能な光源を、更に有していてもよい。このような観点から、図2では、第1の照明光学系13Aが3種類の光源101A、101B、101Cを有している場合について図示しているが、本開示において、光源101は、少なくとも1つ以上存在すればよい。
【0028】
光源101は、標本S中に含まれる光応答性の生体材料に対して、光刺激を与えたり、上記のような各種の発光を生じさせたりする波長の光を出射することが可能なものであれば、任意の公知の光源を用いることができる。このような光源として、例えば、各種のレーザ光源を挙げることができるが、レーザダイオード(Laser Diode:LD)を用いることが簡便である。レーザダイオードを用いることで、高出力の直線偏光を容易に利用可能だからである。また、所定の偏光状態を有していない、無偏光の照明光を出射する光源を用いる場合には、第1の照明光学系13Aは、光源101からLCOS空間光変調素子113までの間の光路上に、無偏光の照明光に対して所定の偏光方向を付与する偏光子を設ければよく、光源101そのものに対して偏光子を設けてもよい。以下では、光源101から、所定の偏向状態を有する照明光が出射される場合を例に挙げて説明を行うものとする。
【0029】
図2に示した例において、光源101Aから出射した所定の偏光を有する照明光は、カップリングレンズ103Aに入射する。同様に、光源101B、101Cから出射した所定の偏光を有する照明光のそれぞれは、各光源に対応するカップリングレンズ103B、103Cにそれぞれ入射する。
【0030】
カップリングレンズ103は、図2に示したように、各光源101から出射した照明光を略平行光とするものであり、各光源101から出射した照明光の指向角を、平行光の指向角と等しくなるように、又は、平行光の指向角に近づくように変換する。それぞれのカップリングレンズ103は、各光源101から出射した照明光のうち指向角内の光が入射する位置に配置されている。ここで、図2では、カップリングレンズ103が単一のレンズによって構成される場合を図示しているが、カップリングレンズ103は、複数のレンズによって構成されていてもよい。
【0031】
ここで、図2に示したように、光学顕微鏡装置10が複数の光源101を有している場合、各光源101から出射したそれぞれの照明光は、光路合成素子の一例としてのダイクロイックプリズム105により、1つの光束となるように合波される。図2に示した構成例では、光源101Aから出射し、カップリングレンズ103Aを透過した照明光、及び、光源101Bから出射し、カップリングレンズ103Bを透過した照明光のそれぞれは、ダイクロイックプリズム105Aに入射する。ダイクロイックプリズム105Aの内部には、波長選択性を有するミラーが設けられている。かかるミラーは、光源101A側から入射した光はミラーを透過し、かつ、光源101A側から入射した光はミラーで反射するような波長選択性を有している。これにより、光源101Aから出射した照明光と光源101Bから出射した照明光とが合波されて、1つの光束となる。合波された照明光と、光源101Cから出射し、カップリングレンズ103Cを透過した照明光のそれぞれは、ダイクロイックプリズム105Bに入射する。ダイクロイックプリズム105Bの内部においても、波長選択性を有するミラーが設けられている。かかるミラーは、光源101A側から入射した光はミラーを透過し、かつ、光源101C側から入射した光はミラーで反射するような波長選択性を有している。これにより、光源101Cから出射した照明光はダイクロイックプリズム105Aから入射した照明光と合波されて、1つの光束となる。
【0032】
1つの光束となった照明光は、第1の照明用光学部材の一例としてのインテグレータ107及びコンデンサレンズ109に、順に入射する。インテグレータ107は、後段に位置するLCOS空間光変調素子113を均一な強度分布で照明する。かかるインテグレータ107は、例えば、所定の配列状態(例えば、マトリクス状など)に配置された複数のレンズを有している。一般に、光源101から出射された光束は、その進行方向に垂直な面において不均一な強度分布(輝度分布)を有している。そのため、これら光束をそのままLCOS空間光変調素子113に導光すると、LCOS空間光変調素子113での強度分布が不均一になってしまう。これに対して、光源101から出射された光束をインテグレータ107によって複数の光束に分割して、分割されたそれぞれの光束をLCOS空間光変調素子113に重畳的に導くようにすれば、LCOS空間光変調素子113上の強度分布を均一にする(換言すれば、照度分布の不均一性を低減する)ことが可能となる。その結果、標本S中の複数の位置に存在する光応答性の生体材料を照明する際に、着目する複数の光応答性の生体材料を同一光量で照明することが可能となる。
【0033】
また、コンデンサレンズ109は、インテグレータ107によって複数の光束に分割された光束のそれぞれを、重畳的にLCOS空間光変調素子113へと導光する。かかるコンデンサレンズ109については、特に限定されるものではなく、任意の構成のものを用いることができる。
【0034】
なお、図2では、インテグレータ107が1つのフライアイレンズで構成される場合を図示しているが、インテグレータ107は、一対のフライアイレンズで構成されていてもよい。また、図2では、コンデンサレンズ109が単一のレンズによって構成される場合を図示しているが、コンデンサレンズ109は、複数のレンズによって構成されていてもよい。
【0035】
偏光光学素子の一例としての偏光ビームスプリッタ111は、照明光の偏光状態に応じて、LCOS空間光変調素子113側から標本S側へと向かう照明光の透過状態を制御する。具体的には、偏光ビームスプリッタ111は、光源101側から入射した光束(すなわち、照明光と同じ偏光方向を有している光束)は、LCOS空間光変調素子113側へと反射させる。また、LCOS空間光変調素子113側から入射した光束について、照明光と同じ偏光方向を有している光束については光源101側へと反射させ、照明光と異なる(例えば、照明光と直交する偏光状態となっている)光束については標本S側へと透過させる。以下で詳述するように、偏光ビームスプリッタ111とLCOS空間光変調素子113とを組み合わせて用いることで、不要な照明光が標本S側に照射されないようにすることができる。
【0036】
LCOS空間光変調素子113は、ステージ11上の標本面において所望の照明光の照射状態(すなわち、照射パターン)が実現されるように、コンデンサレンズ109を透過した光束を、2次元的に変調する。本実施形態において、LCOS空間光変調素子113は、標本Sの標本面と光学的に共役な位置となるように、第1の照明光学系13Aの光路上に配置される。
【0037】
LCOS空間光変調素子113は、シリコン基板上に液晶が配置された構造を有する空間光変調素子であり、シリコン基板上には、公知の半導体技術によって電気アドレス回路が構築されており、最上層にはアルミ等の公知の電極金属が設けられることで、画素が構築されている。このようなLCOS空間光変調素子113では、液晶の配向を画素毎に制御することで、入射した光の位相を画素単位で独立して制御することが可能となる。上記のような構造を有するLCOS空間光変調素子113は、開口率が高いために、ステージ11上に載置された標本Sを隙間なく照明することができる。
【0038】
このようなLCOS空間光変調素子113は、例えば、TN(TwistedNematic)型の液晶(正の屈折率異方性を有する液晶分子)を用いた液晶パネルによって構成されている。具体的には、マトリクス状に配置された複数の画素ごとに、照明光の照射パターンに基づく駆動電圧が印加される一対の基板間に、TNモードの液晶を用いた液晶層が挟まれた構造となっている。
【0039】
かかるLCOS空間光変調素子113では、上記のようなTN型の液晶を用いた場合、駆動電圧の無印加時及び印加時で、それぞれ以下のようにして光変調が行われる。
【0040】
LCOS空間光変調素子113の画素に駆動電圧が印加されないとき(照射パターンに基づく照射が行われる時)を考える。この場合、LCOS空間光変調素子113は、TN型の液晶がツイストして配向することで、画素に入射した光に対して入射面内における位相差を付与し、偏光軸を約90度回転させたうえで出射する特性を有している。つまり、駆動電圧の無印加時には、入射時における偏光の状態と出射時における偏光の状態が直交するように(例えば、S偏光で入射した光がP偏光で出射するように)、画素に入射した光を反射しつつ、光変調を行うようになっている。
【0041】
次に、LCOS空間光変調素子113に駆動電圧が印加されたとき(照射パターンに基づく照射が行われない時)を考える。この場合、LCOS空間光変調素子113は、素子の厚み方向に液晶分子が揃って配向することで、画素に入射した光に対して入射面内における位相差を付与せず、偏光軸を保持したうえで画素に入射した光を出射する特性を有している。つまり、駆動電圧の印加時には、入射時における偏光の状態と出射時における偏光の状態が平行となるように(例えば、S偏光で入射した光がS偏光で出射するように)、画素に入射した光を反射しつつ、光変調を行うようになっている。
【0042】
このように、LCOS空間光変調素子113から出射した照射光の偏光は、駆動電圧の無印加時と印加時とで互いに異なるものとなる。このようなLCOS空間光変調素子113の偏光特性を、図3に模式的に示したようにLCOS空間光変調素子113の各画素で所望の状態に制御した上で、偏光ビームスプリッタ111における光学特性と組み合わせることで、標本Sの所望の位置に照明光が照射され、かつ、照射したくない位置には照明光が確実に到達しないようにできる。すなわち、かかるLCOS空間光変調素子113と偏光ビームスプリッタ111とを組み合わせることで、優れた精度を有する場所特異的な照明が実現される。
【0043】
なお、LCOS空間光変調素子113が備える液晶パネルは、上述したTN型の液晶パネルに限定されるものではなく、他の方式の液晶を用いた液晶パネルが設けられていてもよい。具体的には、LCOS空間光変調素子113には、例えば、VA(VerticalAlignment)型、STN(Super Twisted Nematic)型、IPS(In Plane Switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、MVA(Multidomain Vertical Alignment)型、ASM(Axially Symmetric aligned Micro-cell)型などの方式の液晶を用いた液晶パネルが設けられていてもよい。また、LCOS空間光変調素子113には、ネマティック液晶以外のスメクティック液晶(例えば、強誘電性液晶など)を用いた液晶パネルが設けられていてもよい。
【0044】
ここで、LCOS空間光変調素子以外の空間光変調素子として、デジタル・マイクロミラー・デバイス(Digital Micromirror Device:DMD)を用いることが可能なようにも思われる。しかしながら、DMDは、その機構上、マイクロミラーが向いている方向を連続的に変化させることで光変調を行う素子であるため、オフ時の光が散乱して迷光になりやすい。一方で、本実施形態で着目する観察対象物は、光応答性の生体材料であるため、かかる生体材料へ照明光が照射されたか否かは、観察精度上、厳密に区別されるべきものである。この際、空間光変調素子としてDMDを用いると、ユーザの意図しない迷光が知らぬ間に光応答性の生体材料に照射されて、意図しない観察精度の低下が生じる可能性がある。そのため、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10では、空間光変調素子として、上記のようなLCOS空間光変調素子を用いている。
【0045】
LCOS空間光変調素子113で偏光状態が制御され、かつ、偏光ビームスプリッタ111を透過した照明光の光束は、第1の照明光学系13Aから第2の照明光学系13Bへと導光される。
【0046】
<第2の照明光学系13B>
第2の照明光学系13Bは、第1の照明光学系13Aからの照明光の光束を、標本S(より詳細には、標本面)に結像させる光学系である。この第2の照明光学系13Bは、第2の照明用光学部材の一例としてのコンデンサレンズ115及び対物レンズ121を有している。また、第2の照明光学系13Bは、上記のような光学素子に加えて、バンドパスフィルタ117と、ダイクロイックミラー119と、を有していることが好ましい。
【0047】
第1の照明光学系13Aからの照明光の光束は、コンデンサレンズ115に入射する。コンデンサレンズ115は、LCOS空間光変調素子113からの照明光の均一な光束を、後述する対物レンズ121にカップリングさせる。ここで、本実施形態に係るコンデンサレンズ115は、特に限定されるものではなく、公知の各種のコンデンサレンズを用いることが可能である。また、図2では、単一のコンデンサレンズ115を用いた場合について図示しているが、コンデンサレンズ115は複数のレンズで構成されていてもよい。
【0048】
コンデンサレンズ115を透過した照明光の光束は、バンドパスフィルタ117を経てダイクロイックミラー119へと入射する。バンドパスフィルタ117は、特定の波長帯域の光を反射し、それ以外の波長帯域の光を透過させるものである。照明光の光束がバンドパスフィルタ117を透過することで、所望の波長帯域の照明光が標本面に照射され、かつ、意図しない波長帯域の光が標本面に照射されないようにすることができる。かかるバンドパスフィルタ117は、特に限定されるものではなく、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10に設けられる光源101から出射される照明光の波長帯域に応じて、適切なものを適宜設置すればよい。
【0049】
ダイクロイックミラー119は、入射した光の半分は透過させ、半分は反射させるミラーである。照明光の光束がダイクロイックミラー119へと入射することで、照明光の光束は対物レンズ121へとカップリングされる。なお、かかるダイクロイックミラー119は特に限定されるものではなく、公知の各種のダイクロイックミラーを用いることが可能である。
【0050】
対物レンズ121は、コンデンサレンズ115によりカップリングされた照明光の光束を、標本Sの標本面に結像させる。ここで、本実施形態に係る対物レンズ121は、特に限定されるものではなく、公知の各種の対物レンズを用いることが可能である。また、図2では、単一の対物レンズ121が図示されているが、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10は、複数の対物レンズ121を有していてもよい。
【0051】
以上説明したような第2の照明光学系13Bにより、照明光の光束は、標本Sの標本面に結像する。ここで、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10において、先だって言及したように、LCOS空間光変調素子113と標本面とが光学的に共役の関係となっているため、LCOS空間光変調素子113で実現された照明光の照射パターン(図3等に示した照射パターン)が保持されたままで、標本面に照明光が照射されることとなる。
【0052】
これにより、標本S中に存在する、光に反応して機能を変化させる生体材料(光応答性の生体材料)は、照明光中に、機能を変化させるために適切な波長帯域の光が存在した場合、かかる波長帯域の光に反応して、機能を変化させる。このような光応答性の生体材料における機能の変化の様子が、以下で詳述する撮像光学系13Cにより撮像素子まで導光され、画像として記録される。
【0053】
また、標本S中の光応答性の生体材料が、所定波長の照明光が照射されると発光する発光性のタンパク質を含む場合、又は、所定の発光色素で標識されている場合に、照明光中に機能を変化させるために適切な波長帯域の光と、発光性のタンパク質や発光色素を反応させるために適切な波長帯域の光と、が存在する場合を考える。この場合には、照明光が照射した位置の発光性のタンパク質が発光して蛍光やリン光が放射されたり、標識に用いられた発光色素が励起されて蛍光やリン光が放射されたりするようになる他、光応答性の生体材料は、その機能を変化させる。これにより、観測者は、照明光を照射している光応答性の生体材料を、放射される蛍光やリン光により明確に特定することが可能となる。このような光応答性の生体材料における機能の変化の様子が、以下で詳述する撮像光学系13Cにより撮像素子まで導光され、画像として記録される。
【0054】
例えば図2に模式的に示したように、光学顕微鏡装置10に3種類の光源101A~101Cが存在し、着目する光応答性の生体材料が、例えば図4に模式的に示したように、光源101Aから出射される波長帯域の照明光に反応して、機能を変化させるものとする。光応答性の生体材料自体は、機能の変化に際して発光しないものが多いため、着目している光応答性の生体材料に確実に照明光が照射されているか否かを、ユーザは把握することはできない。また、例えば、光応答性を有する単一の細胞が複数存在するような標本において、各細胞に個別に照明光を照射したい場合等も生じうる。
【0055】
そこで、例えば図4に示したような、光源101B又は光源101Cから出射される波長帯域の照明光に反応して発光する発光色素(例えば、蛍光色素)を用いて、光応答性の生体材料を予め標識しておく。これにより、光源101B又は光源101Cからの照明光により発光色素が発光することで、観測者は、着目している光応答性の生体材料の位置を把握することができ、着目している光応答性の生体材料に確実に照明光を照射することが可能となる。
【0056】
<撮像光学系13C>
撮像光学系13Cは、撮像光学部材と撮像素子とを有する、ステージ11上に載置された標本Sの標本面を撮像するための光学系である。かかる撮像光学系13Cは、撮像光学部材の一例としての対物レンズ121及び結像レンズ125と、撮像素子127と、を有している。また、かかる撮像光学系13Cは、更に、ダイクロイックミラー119と、バンドパスフィルタ123とを有していることが好ましい。
【0057】
標本面からの光束は、第2の照明光学系13Bとしても機能する対物レンズ121により集光されて、第2の照明光学系13Bとしても機能するダイクロイックミラー119を透過する。その後、標本面からの光束は、バンドパスフィルタ123に入射する。
【0058】
バンドパスフィルタ123は、特定の波長帯域の光を反射し、それ以外の波長帯域の光を透過させるものである。標本面からの光束がバンドパスフィルタ123を透過することで、所望の波長帯域の光束のみが撮像素子127に結像するようにすることができる。かかるバンドパスフィルタ123は、特に限定されるものではなく、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10に設けられる光源101から出射される照明光の波長帯域、及び、標本Sから生じうる発光の波長帯域に応じて、適切なものを適宜設置すればよい。
【0059】
バンドパスフィルタ123を透過した標本面からの光束は、結像レンズ125へと入射する。結像レンズ125は、対物レンズ121により集光された標本面からの光束を、撮像素子127に結像させるものである。本実施形態に係る光学顕微鏡装置10において、かかる結像レンズ125は、任意の構成のものを用いることが可能である。
【0060】
前述の通り、第2の照明光学系13Bと撮像光学系13Cとは、対物レンズ121を共有していることから、その倍率比は、コンデンサレンズ115の焦点距離と結像レンズ125の焦点距離との比等で決めることができる。そのためには、例えば、LCOS空間光変調素子113と撮像素子127の画素サイズ、又は、画素サイズ×画素数で決まるLCOS空間光変調素子113と撮像素子127のデバイスサイズを基準とする。
【0061】
例えば、LCOS空間光変調素子113と撮像素子127の画素サイズがそれぞれ、6μm、3μmであり、標本面上に投影される画素サイズを統一したい場合(=1:1)には、コンデンサレンズ115の焦点距離と結像レンズ125の焦点距離との比を、2:1とすればよい。また、標本面上に投影される画素サイズを4:1にしたい場合には、コンデンサレンズ115の焦点距離と結像レンズ125の焦点距離との比を1:2にすればよい。更に、LCOS空間光変調素子113と撮像素子127の画素サイズがそれぞれ、6μm、3μmであり、画素数がそれぞれ、2000×1000、4000×2000であり、かつ、標本面上に投影されるデバイスサイズを統一したい場合には、コンデンサレンズ115の焦点距離と結像レンズ125の焦点距離との比を、1:1にすればよい。
【0062】
撮像素子127は、標本面からの光束による像を撮像して、撮像画像を生成する。かかる撮像素子127としては、特に限定されるものではなく、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等といった、公知の撮像素子を適宜用いることが可能である。
【0063】
撮像素子127として、モノクロ撮像用の撮像素子を用いることも可能であるが、3チャンネル以上のチャンネル構成を有するカラー撮像用の撮像素子(例えば、Red、Green、Blueの3チャンネル構成の撮像素子や、Red、Green、Blue、Infraredの4チャンネル構成の撮像素子等)を用いることが好ましい。カラー撮像用の撮像素子を用いて、発光性のタンパク質や発光色素を含む光応答性の生体材料の像を撮像することで、例えば図4に模式的に示したように、光応答性の生体材料の像をある1つのチャンネル(例えば、B画素)で画像化し、発光色素からの発光の像をある1つのチャンネル(例えば、R画素)で画像化する等といったことが可能となる。すなわち、複数の波長帯域の像を、1つのカラー撮像用の撮像素子で画像化することが可能となる。
【0064】
以上、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の構成について、図2図4を参照しながら詳細に説明した。
【0065】
<変形例>
続いて、図5図10を参照しながら、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の変形例について説明する。以下では、図2に示した光学顕微鏡装置10との相違点を主に説明するものとし、図2に示した光学顕微鏡装置10と同様の構成を有するものについては、詳細な説明は省略する。
【0066】
[偏光補償素子131]
図5は、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の第1の変形例である。第1の変形例に係る光学顕微鏡装置10は、図2に示した本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の構成に加えて、偏光ビームスプリッタ111とLCOS空間光変調素子113との間の光路上に、偏光補償素子131を有している。
【0067】
偏光補償素子131は、入射した光に対して位相差を付与して、入射した光の偏光状態を変化させる素子である。具体的には、偏光補償素子131は、まず、光軸に沿って互いに対向する第1面(偏光ビームスプリッタ111側の光通過面)及び第2面(LCOS空間光変調素子113側の光通過面)を有している。そして、かかる偏光補償素子131は、偏光ビームスプリッタ111(第1面)側からの光入射時と、LCOS空間光変調素子113(第2面)側からの光入射時とで、互いに逆極性(逆方向)、かつ、略同等の絶対値からなる位相差を付与するようになっている。つまり、偏光補償素子131は、光の入射方向に依存しない位相差特性(位相差の対称性)を有している。これにより、偏光補償素子131において偏光ビームスプリッタ111側からの光入射時に付与される位相差と、LCOS空間光変調素子113における光変調時に生ずる位相差と、偏光補償素子131においてLCOS空間光変調素子113側からの光入射時に付与される位相差と、の総和によって、照明光を照射していないときの標本面への漏れ光を低減させることが可能となる。その結果、より精度の高い照明光の照射が可能となるとともに、撮像素子127におけるバックグラウンドの持ち上がりが抑制されて、より優れた撮像画像を得ることができる。
【0068】
なお、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10では、LCOS空間光変調素子113と標本面との間に偏光ビームスプリッタ111が設けられていることで、照明光を照射していないときの標本面への漏れ光は生じないようにも思われる。しかしながら、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10では、所定の偏光方向を有している照明光を、コンデンサレンズ109により集光しているため、偏光ビームスプリッタ111に対して斜入射する偏光成分が生じうる。このような斜入射した偏光成分が原因となって、照明光を照射していないときの標本面への漏れ光が生じうる。
【0069】
上記のような偏光補償素子131を設けることで、より精度の高い場所特異的な照明を実現することが可能となる。
【0070】
[スペックル除去素子133]
図6は、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の第2の変形例である。第2の変形例に係る光学顕微鏡装置10は、図2に示した本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の構成に加えて、インテグレータ107に対してスペックル除去素子133が設けられている。
【0071】
本実施形態に係る光学顕微鏡装置10では、光源101として可干渉性を有する光を出射することが可能な光源を用いることが好ましいことから、照明光の照射面においてスペックルが発生する可能性がある。そこで、スペックル除去素子133を設けてインテグレータ107を振動させることで、上記のようなスペックルの発生を抑制することが可能となる。
【0072】
上記のようなスペックル除去素子133は、第1の照明光学系13Aのアライメントを崩さない程度にインテグレータ107を振動させることが可能なものであれば、任意の公知の部材を用いることが可能であり、例えばピエゾ素子等の各種の圧電素子を用いることが可能である。
【0073】
上記のようなスペックル除去素子133を設けることで、特に微小領域を照明するような場合に、光量の均一性を更に向上させることが可能となる。
【0074】
[偏光補償素子131とスペックル除去素子133の併用]
図7は、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の第3の変形例である。第3の変形例に係る光学顕微鏡装置10は、図2に示した本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の構成に加えて、偏光補償素子131とスペックル除去素子133の双方が設けられている。上記のような偏光補償素子131とスペックル除去素子133の双方を設けることで、光量の均一性が更に向上した、より精度の高い場所特異的な照明を実現することができる。
【0075】
[第3の照明光学系13D]
図8は、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の第4の変形例である。第4の変形例に係る光学顕微鏡装置10は、図2に示した本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の構成に加えて、透過照明光学系として機能する第3の照明光学系13Dが設けられている。図2に示した光学顕微鏡装置10の構成では、観察対象物を観察した場合に蛍光画像等が得られるが、透過照明光学系として機能する第3の照明光学系13Dを更に設けることで、例えば図9に示したような観察対象物の明視野画像を得たり、観察対象物の位相差画像を得たりすることが可能となる。観察対象物の明視野画像等が得られることで、ユーザは、照明光を照射したい生体材料を、より容易に選別することが可能となる。
【0076】
なお、図8では、図2に示した本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の構成に対し、第3の照明光学系13Dが設けられている場合を図示しているが、図8に示した構成例に対して、更に、偏光補償素子131又はスペックル除去素子133の少なくとも何れか一方を設けてもよいことは、言うまでもない。
【0077】
かかる第3の照明光学系13Dは、標本Sの標本面を、第1及び第2の照明光学系13A,13Bとは逆側から均一に照明するものである。第3の照明光学系13Dは、図8に模式的に示したように、第2の光源141と、第3の照明光学部材の一例としての光源レンズ143、視野絞り145、リレーレンズ147、開口絞り149及びコンデンサレンズ151と、を有している。
【0078】
第2の光源141は、特に限定されるものではなく、公知の任意の光源を用いることが可能である。ただし、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10が着目する観察対象物は、光応答性の生体材料であるため、かかる生体材料が反応しない波長帯域の光(換言すれば、図4に示したような光応答性の生体材料の吸収スペクトルに重畳しない波長帯域の光)を照射可能な光源を用いることが重要である。このような光源として、ハロゲンランプや白色LED(Light Emitting Diode)等といった広波長帯域の光源を用いてもよいし、各種のレーザ光源等のような狭波長帯域の光源を用いてもよい。ただし、広波長帯域の光源を用いる場合には、上記のような理由から、光応答性の生体材料の吸収スペクトルと重畳する波長帯域の光を除くための光学フィルタ類を、第2の光源141と、標本面との間の光路上に設けることが重要である。
【0079】
第2の光源141から出射した第2の照明光は、光源レンズ143に入射する。光源レンズ143は、第2の照明光の光束を略平行光とするものであり、略平行光となった第2の照明光は、視野絞り145へと入射する。かかる光源レンズ143は、光束をコリメートすることが可能なように、各種の光学レンズを適宜単独又は組み合わせて用いることで、実現することが可能である。
【0080】
視野絞り145は、第2の照明光の光束による標本面の照明範囲を調整するためのものであり、標本面と光学的に共役な位置に設けられる。第2の照明光の光束は、かかる視野絞り145によって照射範囲が調整された後、リレーレンズ147へと入射する。かかる視野絞り145については、特に限定されるものではなく、公知の各種の絞りを適宜用いることが可能である。
【0081】
リレーレンズ147は、略平行光となった第2の照明光を収束させるためのレンズであり、開口絞り149は、標本面へと到達する第2の照明光の明るさを調整するための絞りである。リレーレンズ147によって収束した後、発散していく第2の照明光は、開口絞り149によって明るさが調整された後、コンデンサレンズ151へと入射する。なお、リレーレンズ147及び開口絞り149については、特に限定されるものではなく、公知の各種の光学部材を適宜用いることが可能である。
【0082】
コンデンサレンズ151は、リレーレンズ147によって収束した後発散する第2の照明光の光束を、再び略平行光とするレンズである。かかるコンデンサレンズ151は、特に限定されるものではなく、公知の各種のコンデンサレンズを用いることが可能である。コンデンサレンズ151により略平行光となった第2の照明光は、標本面の一部に照射されて、標本面の一部を照明する。
【0083】
以上説明したように、図8に示した第3の照明光学系13Dは、いわゆるケーラー照明光学系を構築するものであり、標本Sの一部を均一照明して、明視野画像や位相差画像等を実現する。
【0084】
[第1及び第2の照明光学系13A,13Bを透過照明側に配置]
図10は、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の第5の変形例である。第5の変形例に係る光学顕微鏡装置10は、図2に示した本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の第1の照明光学系13Aを、透過照明側に配置し、かつ、透過照明とした第1の照明光の光束を適切に標本面に導光するために、第2の照明光学系13Bを再構成したものとなっている。また、第1及び第2の照明光学系13A、13Bを透過照明側に配置した結果、図2に示した光学顕微鏡装置10と比較して、撮像光学系13Cも簡略化されたものとなっている。
【0085】
第1及び第2の照明光学系13A、13Bを透過照明側に配置することで、場所特異的に照射している照明光の位置を実際に撮像することが可能となり、照射位置の確からしさを確認することが可能となる。これにより、標本の観察画像をはじめとする各種の情報を、図10に図示しない双眼顕微光学系等を通じてユーザに提示することができる。その結果、例えば、まず特定視野を接眼レンズを覗いて探すような場合に、ユーザは、いちいち接眼レンズから眼を離して標本の情報や顕微鏡の状態等を確認しなくともよくなり、作業性を向上させることができる。なお、標本の状態の一例として、病理スライドにおける患者情報等を挙げることが可能であり、顕微鏡の状態の一例として、対物レンズの倍率や観察位置(XY位置)等を挙げることが可能である。
【0086】
本変形例では、図10に模式的に示したように、図2に示した第1の照明光学系13Aが、そのまま透過照明側に設けられている。ただし、第1の照明光学系13Aの配置に際して、LCOS空間光変調素子113が、標本Sの標本面と光学的に共役な位置となるように、第1の照明光学系13Aを配置することが重要である。LCOS空間光変調素子113と標本面とが光学的に共役の関係となることで、LCOS空間光変調素子113で実現された照明光の照射パターンが保持されたままで、標本面に照明光を照射することが可能となる。LCOS空間光変調素子113により偏光状態を制御され、偏光ビームスプリッタ111を透過した照明光の光束は、第2の照明光学系13Bへと導光される。
【0087】
なお、図10では、図2に示した本実施形態に係る光学顕微鏡装置10における第1の照明光学系13Aの構成を図示しているが、図10に示した構成例に対して、更に、偏光補償素子131又はスペックル除去素子133の少なくとも何れか一方を設けてもよいことは、言うまでもない。
【0088】
また、本変形例では、光応答性の生体材料の機能を変化させるための波長帯域の照明光以外の光(例えば、図4に示したような吸収スペクトルを示す光応答性の生体材料の場合、光源101B及び/又は光源101Cの光)を用いて、明視野画像や位相差画像を得ることができる。
【0089】
本変形例に係る第2の照明光学系13Bは、第2の照明用光学部材の一例としてのリレーレンズ161、開口絞り163及びコンデンサレンズ165を有している。
【0090】
リレーレンズ161は、第1の照明光学系13Aからの照明光を略平行光とするためのレンズであり、開口絞り163は、標本面へと到達する照明光の明るさを調整するための絞りである。リレーレンズ161によってコリメートされた照明光は、開口絞り163によって明るさが調整された後、コンデンサレンズ165へと入射する。なお、リレーレンズ161及び開口絞り163については、特に限定されるものではなく、公知の各種の光学部材を適宜用いることが可能である。
【0091】
コンデンサレンズ165は、リレーレンズ161によって略平行光となった照明光の光束を、標本面に収束させるためのレンズである。かかるコンデンサレンズ165は、特に限定されるものではなく、公知の各種のコンデンサレンズを用いることが可能である。コンデンサレンズ165により収束された照明光は、標本面の一部に照射されて、標本面の一部を照明する。
【0092】
以上説明したように、図10に示した第1及び第2の照明光学系13A、13Bは、いわゆるクリティカル照明光学系を構築するものであり、標本Sの一部を均一照明する。
【0093】
また、本変形例に係る撮像光学系13Cは、対物レンズ121と、結像レンズ125と、撮像素子127と、を有している。これらの構成については、図2に示したものとほぼ同様の機能を有し、ほぼ同様の効果を奏するものであることから、詳細な説明は省略する。
【0094】
以上、図5図10を参照しながら、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10の変形例について説明した。
【0095】
(演算処理装置について)
次に、図11図13を参照しながら、本実施形態に係る光学顕微鏡システムが有する演算処理装置について、詳細に説明する。
図11は、本実施形態に係る演算処理装置の構成の一例を模式的に示したブロック図であり、図12は、本実施形態に係る演算処理装置について説明するための説明図である。図13は、本実施形態に係る演算処理装置のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
【0096】
<演算処理装置20の構成について>
本実施形態に係る演算処理装置20は、以上説明したような光学顕微鏡装置10に対して、所定の接続端子により直接接続されていてもよく、有線又は無線で、イントラネットやインターネット等の各種のネットワークを介して、光学顕微鏡装置10と接続されていてもよい。
【0097】
かかる演算処理装置20は、先だって言及したように、光学顕微鏡装置10に対して所定の制御信号を送信して、光学顕微鏡装置10の動作状態を統括的に制御する。また、演算処理装置20は、光学顕微鏡装置10から出力された標本の撮像画像のデータに対して画像処理を実施し、得られた画像処理結果を、光学顕微鏡システム1のユーザに提供する。更に、演算処理装置20は、得られた画像処理結果を用いて、光学顕微鏡装置10の動作状態を制御することも可能である。
【0098】
かかる機能を有する演算処理装置20は、図11に模式的に示したように、顕微鏡制御部201と、画像データ取得部203と、画像処理部205と、表示制御部207と、記憶部209と、を主に備える。
【0099】
顕微鏡制御部201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力装置、出力装置、通信装置等により実現される。顕微鏡制御部201は、光学顕微鏡装置10の動作状態を統括的に制御する制御部である。顕微鏡制御部201は、ユーザが実施したユーザ操作や、後述する画像処理部205における画像処理結果等に基づいて所定の制御信号を光学顕微鏡装置10に出力することで、光学顕微鏡装置10の動作状態を制御する。
【0100】
具体的には、顕微鏡制御部201は、ユーザが実施したユーザ操作や、後述する画像処理部205における画像処理結果等に基づいて、光源101のオン/オフ状態や、光源101からの照明光の照射タイミング、照射光量、照射時間等を制御することが可能である。また、光学顕微鏡装置10に複数の光源101が存在する場合に、上記のような各光源101のオン/オフ状態等を制御したり、各光源101の照射タイミングの切り替えを制御したり、各光源101からの照明光の照射時間を制御したりすることができる。
【0101】
これにより、例えば、所定波長の照明光が照射されると発光する発光性のタンパク質を更に含む、光に反応して機能を変化させる生体材料、又は、所定の発光色素で標識された生体材料等を観察対象とする場合に、生体材料の光応答を生じさせるための照明光の照射時間及び照射強度と、発光性のタンパク質や発光色素を発光させるための照明光の照射時間及び照射強度と、をタイミング良く切り替えることが可能となる。その結果、生体材料の光応答を生じさせるために、特定の波長を有する照明光を、照射強度を弱くして短い時間照射したり、発光性のタンパク質や発光色素を発光させるために、特定の波長を有する照明光を、照射強度を強くして長い時間照射したりすることができ、生体材料のより精度の良い観察が可能となる。
【0102】
また、顕微鏡制御部201は、ユーザが実施したユーザ操作や、後述する画像処理部205における画像処理結果等に基づいて、LCOS空間光変調素子113における各画素のオン/オフ状態を制御して場所特異的な照明を実現することが可能であり、また、時間変化に伴って各画素のオン/オフ状態を制御することで照明光が照射される位置を変化させる、場所特異的かつ時間特異的な照明を実現することも可能である。これにより、顕微鏡制御部201は、照明光の標本への照射状態を、生体材料に追随させることが可能となる。
【0103】
更に、顕微鏡制御部201は、ユーザが実施したユーザ操作や、後述する画像処理部205における画像処理結果等に基づいて、撮像素子127における撮像位置(換言すれば、ROI(Region Of Interest)の設定)、撮像タイミング、露光時間等を制御することも可能である。また、顕微鏡制御部201は、光学顕微鏡装置10のステージ11や対物レンズ121の動作状態を制御する機能を有していてもよい。
【0104】
画像データ取得部203は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。画像データ取得部203は、光学顕微鏡装置10が生成した標本Sの標本面に関する画像データを光学顕微鏡装置10から取得して、後述する画像処理部205へと出力する。また、画像データ取得部203は、取得した画像データに、当該画像データを取得した日時等に関する時刻データを関連付けて、履歴情報として記憶部209等に格納してもよい。
【0105】
画像処理部205は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画像処理部205は、画像データ取得部203から伝送された標本面の画像データに対して、各種の画像処理を施したり、かかる画像データを解析することで、標本に関する各種の情報を取得したりすることができる。
【0106】
例えば、画像処理部205は、取得した複数の画像データを用いて積算処理を行い、より明るい画像データや、ダイナミックレンジの広い(High Dynamic Range)画像を生成することが可能である。
【0107】
また、画像処理部205は、取得した画像データを公知の画像認識処理等を用いて解析することで、照射光が照射されている位置を特定したり、生体材料中の細胞の位置を特定したり、核などの細胞内の特定部位等を特定したりすることが可能である。また、このような画像解析処理を用いることで、標本中の特定の部位の時間的な変化を特定したり評価したりすることも可能となる。
【0108】
また、先だって説明したように、LCOS空間光変調素子113における画素と、撮像素子127における画素とは、特定の関係が成立している。そこで、画像処理部205は、LCOS空間光変調素子113における各画素のオン/オフ制御の状態から、撮像素子127(ひいては、生成される撮像画像)における照明光の照射位置を推定することも可能である。
【0109】
画像処理部205は、上記のような画像処理結果や画像解析結果を、顕微鏡制御部201へと出力することができる。顕微鏡制御部201は、このような画像処理結果や画像解析結果に基づいて、光学顕微鏡装置10の動作状態を制御することができる。これにより、標本中の着目する部位の時間変化に光学顕微鏡装置10の動作を追随させて、経時的な観察を可能することができる。
【0110】
また、画像処理部205は、上記のような画像処理結果や画像解析結果を、演算処理装置20の外部に設けられた各種のサーバ等を含むコンピュータに出力することも可能であるし、紙などの媒体に印刷することも可能であるし、各種の記録媒体にデータを保存することも可能である。更に、画像処理部205は、上記のような画像処理結果や画像解析結果を、後述する表示制御部207を介して、演算処理装置20に設けられたディスプレイ等の画像表示装置や、演算処理装置20の外部に設けられたディスプレイ等の画像表示装置に表示させることも可能である。
【0111】
以上説明したような、顕微鏡制御部201及び画像処理部205における具体的な動作例については、以下で改めて説明する。
【0112】
表示制御部207は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置、通信装置等により実現される。表示制御部207は、画像処理部205により画像処理された標本の画像や、かかる画像に関連する各種の情報を、演算処理装置20が備えるディスプレイ等の出力装置や演算処理装置20の外部に設けられた出力装置等に表示する際の表示制御を行う。これにより、光学顕微鏡システム1のユーザは、観察している生体材料に関する様々な情報を、その場で把握することが可能となる。
【0113】
記憶部209は、例えば本実施形態に係る演算処理装置20が備えるRAMやストレージ装置等により実現される。記憶部209には、顕微鏡制御部201や画像処理部205が各種の処理を実施する際に利用する各種のデータベースやソフトウェアプログラム等が格納されている。また、記憶部209には、顕微鏡制御部201が実施する光学顕微鏡装置10の制御処理や画像処理部205が実施する各種の画像処理等における各種の設定情報や、本実施形態に係る演算処理装置20が何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等が、適宜記録される。この記憶部209は、顕微鏡制御部201、画像データ取得部203、画像処理部205、表示制御部207等が、自由にデータのリード/ライト処理を行うことが可能である。
【0114】
以上、図11を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置20の全体構成について、詳細に説明した。
【0115】
<顕微鏡制御部201、画像処理部205が実施する処理の具体例>
以下では、本実施形態に係る顕微鏡制御部201や画像処理部205が実施する処理の一例について、具体的に説明する。本実施形態に係る光学顕微鏡システム1では、演算処理装置20の顕微鏡制御部201と画像処理部205とが協働することで、光学顕微鏡装置10において様々な動作状態を実現することが可能となる。
【0116】
[具体例-1]
例えば、所定波長の照明光が照射されると発光する発光性のタンパク質を更に含む、光に反応して機能を変化させる生体材料、又は、所定の発光色素で標識された生体材料等を観察対象とする場合を考える。この際、顕微鏡制御部201は、第1の照明光学系13Aにおいて、上記のような標本の発光状態に応じてLCOS空間光変調素子113により照明光の照射パターンが制御されるように、第1の照明光学系13Aを制御することができる。すなわち、顕微鏡制御部201は、発光性のタンパク質又は発光色素を発光させる波長帯域の照明光を照射する光源101を制御するとともに、LCOS空間光変調素子113の状態を制御して、照明範囲の全体に上記のような照明光を照射して、発光性のタンパク質又は発光色素を発光させ、かかる発光状態を撮像した撮像画像を生成させる。得られた撮像画像を参考にすることで、光応答性の生体材料に対応した照明光を、場所特異的に照射することが可能となる。
【0117】
例えば、発光状態を撮像した撮像画像そのもの、又は、画像処理部205が画像処理することで、生体材料が存在しうる候補地を示した情報を、ユーザ自身が確認し、所定のユーザ操作を行うことで、光応答性の生体材料を反応させるための照明光の照射位置を、顕微鏡制御部201に指定することが可能となる。また、画像処理部205が発光状態を撮像した撮像画像を公知の画像解析処理により解析して、顕微鏡制御部201が、光応答性の生体材料を反応させるための照明光の照射位置を、自動で設定することも可能である。
【0118】
更に、顕微鏡制御部201と画像処理部205とが協働することで、発光性のタンパク質又は発光色素を発光させるための照明光の照射と、光応答性の生体材料を反応させるための場所特異的な照明光の照射とを、交互に繰り返しながら、特定の観察対象のみを追随して、照明光を照射し続けることも可能である。この場合、顕微鏡制御部201は、場所特異的な照明光を生体材料に追随させるように、LCOS空間光変調素子113を制御することとなる。このような追随制御は、例えば線虫やがん細胞のような動き回る標本や、ターゲットが移動したり増加したりするような細胞増殖過程を観察する際に、特に有効な制御である。
【0119】
[具体例-2]
また、光学顕微鏡装置10が、図8又は図10に示したような、明視野画像又は位相差画像を取得可能な光学系を有している場合を考える。この際、顕微鏡制御部201は、得られた明視野画像又は位相差画像(すなわち、標本像)に応じて、LCOS空間光変調素子113により照明光の照射パターンが制御されるように、第1の照明光学系13Aを制御することができる。具体的には、演算処理装置20は、図9に示したような得られた明視野画像、又は、位相差画像をユーザに提示して、例えば図9中にROI1、ROI2等と示したように、手動で実際に照明光を照射する位置を選別させ、顕微鏡制御部201は、ユーザの選別結果を用いて、光学顕微鏡装置10の制御を行うことが可能である。また、画像処理部205が明視野画像又は位相差画像を公知の画像解析処理により解析して、顕微鏡制御部201が、光応答性の生体材料を反応させるための照明光の照射位置を、自動で設定することも可能であり、自動で順に照明光を照射させていくことも可能である。
【0120】
更に、顕微鏡制御部201と画像処理部205とが協働することで、明視野画像又は位相差画像を得るための照明光の照射と、光応答性の生体材料を反応させるための場所特異的な照明光の照射とを、交互に繰り返しながら、特定の観察対象のみを追随して、照明光を照射し続けることも可能である。この場合、顕微鏡制御部201は、場所特異的な照明光を生体材料に追随させるように、LCOS空間光変調素子113を制御することとなる。このような追随制御は、例えば線虫やがん細胞のような動き回る標本や、ターゲットが移動したり増加したりするような細胞増殖過程を観察する際に、特に有効な制御である。
【0121】
また、図10に示したような光学系が実現されている場合、場所特異的に照射している照明光の位置を実際に画像化することが可能であり、その照射位置の確からしさを確認することができる。この際、画像処理部205は、表示制御部207と連携しながら、文字や図形等を用いた各種の情報を、標本の撮像画像に重畳させることも可能である。これにより、例えば図12に模式的に示したように、標本中の光刺激を与えた領域を強調して表示したり、標本に関する情報や光学顕微鏡装置の状態を重畳させたり、特異的な細胞や組織に該当する部位を、強調して表示したりすることが可能となる。このような画像を、ユーザに対して直接提示することで、まず特定視野を接眼レンズを覗いて探すような場合に、いちいち接眼レンズから眼を離して標本の情報や光学顕微鏡装置の状態を確認しなくともよくなり、ユーザの作業性を更に向上させることが可能となったり、演算処理装置20から補助的な情報を得ることが可能となったりする。例えば、病理診断を実施する場合に、病理スライドを顕微鏡で覗きながら、撮像光学系により取り込まれた画像を、AI等を用いて補助診断を行い、がん細胞と考えられる箇所(特異的な細胞や組織に該当する部位)を強調して表示させることで、演算処理装置20は、病理診断を支援することも可能となる。
【0122】
[具体例-3]
以上説明したように、光応答性の生体材料に対して、場所特異的に照明光を照射した結果、どのような変化があったかを観察することも重要である。例えば、特定の神経細胞に光を照射した場合にどの筋肉が動作するかといったインタラクションを観察したり、特定の心筋細胞に一定間隔で光を照射した場合に拍動のリズムがどう変化するかを観察したり、特定の細胞に光を照射した際にイオンの流れがどう変化するかを観察したり、といった場合がある。上記のような観察は、顕微鏡制御部201と画像処理部205とが協働し、明視野画像又は位相差画像を取得しながら、得られたこれらの画像を画像解析することによって、可能となる。また、発光性タンパク質を反応させない光源波長を用いた発光イメージングも、上記のような観察に有効である。例えば、顕微鏡制御部201及び画像処理部205は、場所特異的な光照射をした後又は光照射を実施しながら、位相差画像を取得し、筋肉細胞の動きを解析することで、細胞のインタラクションを特定したり、拍動の変化を定量的に特定したりすることが可能となる。
【0123】
以上、本実施形態に係る顕微鏡制御部201や画像処理部205が実施する処理の一例について、具体的に説明した。
【0124】
以上、本実施形態に係る演算処理装置20の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0125】
なお、上述のような本実施形態に係る演算処理装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0126】
<演算処理装置のハードウェア構成について>
次に、図13を参照しながら、本開示の実施形態に係る演算処理装置20のハードウェア構成について、詳細に説明する。図13は、本開示の実施形態に係る演算処理装置20のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0127】
演算処理装置20は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、演算処理装置20は、更に、ホストバス907と、ブリッジ909と、外部バス911と、インターフェース913と、入力装置915と、出力装置917と、ストレージ装置919と、ドライブ921と、接続ポート923と、通信装置925とを備える。
【0128】
CPU901は、演算処理装置及び制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置919、又はリムーバブル記録媒体927に記録された各種プログラムに従って、演算処理装置20内の動作全般又はその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるホストバス907により相互に接続されている。
【0129】
ホストバス907は、ブリッジ909を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス911に接続されている。
【0130】
入力装置915は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置915は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、演算処理装置20の操作に対応した携帯電話やPDA等の外部接続機器929であってもよい。さらに、入力装置915は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。ユーザは、この入力装置915を操作することにより、演算処理装置20に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0131】
出力装置917は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプなどの表示装置や、スピーカ及びヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置917は、例えば、演算処理装置20が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、演算処理装置20が行った各種処理により得られた結果を、テキスト又はイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0132】
ストレージ装置919は、演算処理装置20の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置919は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置919は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、及び外部から取得した各種データなどを格納する。
【0133】
ドライブ921は、記録媒体用リーダライタであり、演算処理装置20に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体927は、例えば、DVDメディア、HD-DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体927は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、又は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体927は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。
【0134】
接続ポート923は、機器を演算処理装置20に直接接続するためのポートである。接続ポート923の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート等がある。接続ポート923の別の例として、RS-232Cポート、光オーディオ端子、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート923に外部接続機器929を接続することで、演算処理装置20は、外部接続機器929から直接各種データを取得したり、外部接続機器929に各種データを提供したりする。
【0135】
通信装置925は、例えば、通信網931に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置925は、例えば、有線又は無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置925は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置925は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置925に接続される通信網931は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。
【0136】
以上、本開示の実施形態に係る演算処理装置20の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0137】
以上、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10と演算処理装置20とを有する光学顕微鏡システム1について、図1図13を参照しながら詳細に説明した。
【0138】
なお、以上説明したような光学顕微鏡装置10と演算処理装置20とを有する光学顕微鏡システム1は、手術用のプロジェクタを含む各種のプロジェクタに対しても適用することが可能である。
【0139】
(標本の観察方法について)
以下では、以上説明したような、本実施形態に係る光学顕微鏡装置10を用いた標本の観察方法の流れの一例について、簡単に説明する。
【0140】
本実施形態に係る標本の観察方法は、(a)光応答性の生体材料を含む標本を照明する所定の偏光方向を有する照明光を出射する光源から当該照明光を出射させて、第1の照明用光学部材を介して、照明光をLCOS空間光変調素子に均一に照射させることと、(b)LCOS空間光変調素子により偏光状態が制御された照明光について、偏光光学素子により、照明光の偏光状態に応じてLCOS空間光変調素子側から標本側へと向かう照明光の透過状態を制御することと、(c)第2の照明用光学部材により、偏光光学素子からの照明光の光束を標本面に結像させることと、(d)撮像光学部材及び撮像素子を有する撮像光学系により、標本面を撮像することと、を含む。
【0141】
このような流れで標本を観察することで、光応答性の生体材料を含む標本であっても、より精度の高い照明を用いて観察することが可能となる。
【0142】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0143】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0144】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本を照明するための照明光を出射する光源と、前記照明光の偏光状態を制御するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)空間光変調素子と、前記LCOS空間光変調素子を均一照明する第1の照明用光学部材と、前記照明光の偏光状態に応じて前記LCOS空間光変調素子側から前記標本側へと向かう前記照明光の透過状態を制御する偏光光学素子と、を有する第1の照明光学系と、
前記第1の照明光学系からの光束を標本面に結像させる第2の照明用光学部材を有する第2の照明光学系と、
撮像光学部材と撮像素子とを有し、前記標本面を撮像するための撮像光学系と、
を備える、光学顕微鏡装置。
(2)
前記第1の照明光学系は、偏光補償素子を更に備える、(1)に記載の光学顕微鏡装置。
(3)
前記第1の照明光学系は、スペックル除去素子を更に備える、(1)又は(2)に記載の光学顕微鏡装置。
(4)
前記第1の照明光学系及び前記第2の照明光学系は、前記標本面に対し、前記照明光を場所特異的に照射する、(1)~(3)の何れか1つに記載の光学顕微鏡装置。
(5)
前記第1の照明光学系及び前記第2の照明光学系は、前記標本面に対し、前記照明光を時間特異的に照射する、(1)~(4)の何れか1つに記載の光学顕微鏡装置。
(6)
前記標本は、所定波長の照明光が照射されると発光する発光性のタンパク質を含む前記生体材料、又は、所定の発光色素で標識された前記生体材料を含む、(1)~(5)の何れか1つに記載の光学顕微鏡装置。
(7)
前記第1の照明光学系は、複数の前記光源を有しており、
前記複数の光源の少なくとも何れかから照射された前記照明光により、前記発光性のタンパク質が発光するか、又は、前記発光色素が励起されることで発光する、(6)に記載の光学顕微鏡装置。
(8)
前記第1の照明光学系では、前記標本の発光状態に応じて前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが制御される、(6)又は(7)に記載の光学顕微鏡装置。
(9)
前記標本面に対して第2の照明光を照射する第2の光源と、前記標本面を均一に照射する第3の照明光学部材と、を有する第2の照明光学系を更に備える、(1)~(5)の何れか1つに記載の光学顕微鏡装置。
(10)
前記第1の照明光学系では、前記第3の照明光学系による標本像に応じて前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが制御される、(9)に記載の光学顕微鏡装置。
(11)
前記第1の照明光学系、及び、前記第2の照明光学系は、前記撮像光学系に対して透過照明として配置される、(1)~(5)の何れか1つに記載の光学顕微鏡装置。
(12)
前記第1の照明光学系では、前記第1の照明光学系及び前記第2の照明光学系による標本像に応じて前記LCOS空間光変調素子により前記照明光の照射パターンが制御される、(11)に記載の光学顕微鏡装置。
(13)
前記第1の照明光学系では、場所特異的な前記照明光を前記生体材料に追随させるように、前記LCOS空間光変調素子が制御される、(8)に記載の光学顕微鏡装置。
(14)
前記第1の照明光学系では、場所特異的な前記照明光を前記生体材料に追随させるように、前記LCOS空間光変調素子が制御される、(10)に記載の光学顕微鏡装置。
(15)
前記第1の照明光学系では、場所特異的な前記照明光を前記生体材料に追随させるように、前記LCOS空間光変調素子が制御される、(12)に記載の光学顕微鏡装置。
(16)
標本を照明するための照明光を出射する光源と、前記照明光の偏光状態を制御するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)空間光変調素子と、前記LCOS空間光変調素子を均一照明する第1の照明用光学部材と、前記照明光の偏光状態に応じて前記LCOS空間光変調素子側から前記標本側へと向かう前記照明光の透過状態を制御する偏光光学素子と、を有する第1の照明光学系と、
前記第1の照明光学系からの光束を標本面に結像させる第2の照明用光学部材を有する第2の照明光学系と、
撮像光学部材と撮像素子とを有し、前記標本面を撮像するための撮像光学系と、
を備える、光学顕微鏡装置。
(17)
光に反応して機能を変化させる生体材料を含む標本を照明するための照明光を出射する光源と、前記照明光の偏光状態を制御するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)空間光変調素子と、前記LCOS空間光変調素子を均一照明する第1の照明用光学部材と、前記照明光の偏光状態に応じて前記LCOS空間光変調素子側から前記標本側へと向かう前記照明光の透過状態を制御する偏光光学素子と、を有する第1の照明光学系と、
前記第1の照明光学系からの光束を標本面に結像させる第2の照明用光学部材を有する第2の照明光学系と、
撮像光学部材と撮像素子とを有し、前記標本面を撮像するための撮像光学系と、
を備える、光学顕微鏡装置と、
前記光学顕微鏡装置の動作状態を制御する制御部と、
前記撮像素子により生成された前記標本の撮像画像を画像処理する画像処理部と、
を有する、光学顕微鏡システム。
(18)
前記画像処理部は、前記撮像画像を画像処理することで光照射による前記生体材料の変化を特定する、(17)に記載の光学顕微鏡システム。
(19)
前記制御部は、前記画像処理部により特定された前記生体材料の変化に応じて、前記光学顕微鏡装置の動作状態を制御して、前記照明光の前記標本への照射状態を前記生体材料に追随させる、(18)に記載の光学顕微鏡システム。
(20)前記画像処理部は、前記標本の撮像画像に対して、前記標本に関する情報、又は、前記光学顕微鏡装置の状態に関する情報の少なくとも何れかを重畳して表示するよう制御する、(17)~(19)の何れか1つに記載の光学顕微鏡システム。
【符号の説明】
【0145】
1 光学顕微鏡システム
10 光学顕微鏡装置
13A 第1の照明光学系
13B 第2の照明光学系
13C 撮像光学系
13D 第3の照明光学系
20 演算処理装置
101 光源
103 カップリングレンズ
105 ダイクロイックプリズム
107 インテグレータ
109,115,151,165 コンデンサレンズ
111 偏光ビームスプリッタ
113 LCOS空間光変調素子
117,123 バンドパスフィルタ
119 ダイクロイックミラー
121 対物レンズ
125 結像レンズ
127 撮像素子
131 偏光補償素子
133 スペックル除去素子
141 第2の光源
143 光源レンズ
145 視野絞り
147,161 リレーレンズ
149,163 開口絞り
201 顕微鏡制御部
203 画像データ取得部
205 画像処理部
207 表示制御部
209 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13