IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニー株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】微小粒子分析装置及び微小粒子分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G01N15/14 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020547201
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 US2019024803
(87)【国際公開番号】W WO2019191566
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】62/650,081
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/242,491
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】大塚 史高
(72)【発明者】
【氏名】木元 雅士
(72)【発明者】
【氏名】今西 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】酒井 啓嗣
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-210264(JP,A)
【文献】特表2013-522597(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145905(WO,A1)
【文献】特開2016-057286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小粒子を含むサンプル流と、該サンプル流を内包するように流れるシース流と、からなる流体が通流する流路と、
振動素子を用いて前記流体に振動を与えて前記流体に液滴を形成する液滴形成部と、
前記微小粒子を内包する液滴に電荷をチャージする電荷チャージ部と、
異なる複数の時間的位相における写真を得る撮像部と、
前記異なる複数の時間的位相における写真に基づいて、前記液滴がブレイクオフするタイミングを制御する制御部と、
を少なくとも備え、
前記制御部は、複数の前記写真によって特定された前記液滴がブレイクオフするタイミングに基づいて、前記振動素子の電圧を調整する、微小粒子分析装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記異なる複数の時間的位相における写真に基づいて、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相を特定する、請求項1に記載の微小粒子分析装置。
【請求項3】
前記異なる複数の時間的位相における写真は、一定周期内に撮像された画像である、請求項1に記載の微小粒子分析装置。
【請求項4】
前記一定周期は、液滴を1つ形成する時間である、請求項に記載の微小粒子分析装置。
【請求項5】
前記異なる複数の時間的位相における写真は、前記一定周期を16等分した連続写真である、請求項に記載の微小粒子分析装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相の前後の位相を更に分割した連続写真を取得し、該分割した連続写真において前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相を特定する、請求項に記載の微小粒子分析装置。
【請求項7】
前記撮像部は、ストロボを備え、
前記ストロボのストロボ発光開始時間を変化させて得られた連続写真を用いて、前記特定を行う、請求項に記載の微小粒子分析装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相が、前記液滴に電荷をチャージする位相の逆方位に対応する位相となるように制御する、請求項1に記載の微小粒子分析装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記液滴に電荷をチャージする位相が、前記液滴の前の液滴が液柱からちぎれる位相から前記液滴のサテライトが液柱からちぎれる位相までの間に来るように制御する、請求項1に記載の微小粒子分析装置。
【請求項10】
微小粒子を含むサンプル流と、該サンプル流を内包するように流れるシース流と、からなる流体に振動素子を用いて振動を与えて前記流体に液滴を形成する液滴形成ステップと、
前記微小粒子を内包する液滴に電荷をチャージする電荷チャージステップと、
異なる複数の時間的位相における写真を得る撮像ステップと、
前記異なる複数の時間的位相における写真に基づいて、前記液滴がブレイクオフするタイミングを制御する制御ステップと、
を少なくとも行い、
前記制御ステップでは、複数の前記写真によって特定された前記液滴がブレイクオフするタイミングに基づいて、前記振動素子の電圧を調整する、微小粒子分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、微小粒子分析装置及び微小粒子分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、細胞や微生物などの生体関連に関連する微小粒子の分析には、フローサイトメトリーという技術が利用されている。このフローサイトメトリーは、フローセルやマイクロチップ等に形成された流路内に送液するシース流に内包されるように流れる微小粒子に光を照射し、個々の微小粒子から発せられた蛍光や散乱光を検出することで、微小粒子の解析や分取を行う分析手法である。このフローサイトメトリーに用いられる装置は、フローサイトメーター(「セルソーター」と称される場合もある)と呼ばれている。
【0003】
このフローサイトメーターでは、一般に、シース流に包まれた微小粒子が流れる流路の一部に振動素子が設けられている。この振動素子によって、前記流路の一部に振動を与え、前記流路の吐出口から吐出される流体を連続的に液滴化する。そして、フローサイトメーターでは、この微小粒子を内包する液滴に所定の電荷をチャージし、この電荷に基づいて、偏向板等により液滴の進行方向を変更し、所定の容器やプレートの所定箇所等に目的とする微小粒子のみを回収する構成が採用されている。
【0004】
フローサイトメーターにおいて、安定的に液滴を形成する制御技術は、分析の精度を向上させるための重要な要素の一つである。ここで、前記流路の吐出口から吐出された流体が液滴化する、ブレイクオフ(Break-off)のタイミングが不安定であるなど、液滴の形成が不安定であると、当該液滴に電荷がチャージされる時間も不安定になり、その結果、微小粒子の分取も不安定になってしまうことが知られている。しかし、液滴の形成に関しては、流速、温度・湿度などの環境条件、微小粒子のサイズ等の複数の要因が関与しているため、その制御は難しい。
【0005】
これに対して、例えば、特許文献1では、ブレイクオフのタイミングを安定化する技術が開示されている。この技術においては、ブレイクオフポイントから第1サテライトまでの距離に応じて振動の大きさを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-152439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、安定的に液滴を形成する技術の更なる開発が望まれているという実情があった。
【0008】
そこで、本技術では、ブレイクオフのタイミングを安定化する技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術では、まず、微小粒子を含むサンプル流と、該サンプル流を内包するように流れるシース流と、からなる流体が通流する流路と、振動素子を用いて前記流体に振動を与えて前記流体に液滴を形成する液滴形成部と、前記微小粒子を内包する液滴に電荷をチャージする電荷チャージ部と、ある時間における位相の写真を得る撮像部と、前記写真に基づいて、前記液滴がブレイクオフするタイミングを制御する制御部と、を少なくとも備える、微小粒子分析装置を提供する。
本技術に係る微小粒子分析装置では、前記制御部は、複数の前記写真によって特定された前記液滴がブレイクオフするタイミングに基づいて、前記振動素子の電圧を調整してもよい。
また、本技術に係る微小粒子分析装置では、前記制御部は、一周期内における位相の連続写真を取得し、該連続写真において、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相を特定してもよい。この場合、前記制御部は、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相の前後の位相を更に分割した連続写真を取得し、該分割した連続写真において前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相を特定してもよい。また、この場合、前記撮像部は、ストロボを備え、前記ストロボのストロボ発光開始時間を変化させて得られた連続位相写真を用いて、前記特定を行ってもよい。
更に、本技術に係る微小粒子分析装置では、前記制御部は、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相が、前記液滴に電荷をチャージする位相の逆方位に対応する位相となるように制御してもよく、また、前記制御部は、前記微小粒子に電荷チャージする位相が、前記液滴の前の液滴が液柱からちぎれる位相から前記液滴のサテライトが液柱からちぎれる位相までの間に来るように制御してもよい。
【0010】
また、本技術では、微小粒子を含むサンプル流と、該サンプル流を内包するように流れるシース流と、からなる流体に振動素子を用いて振動を与えて前記流体に液滴を形成する液滴形成ステップと、前記微小粒子を内包する液滴に電荷をチャージする電荷チャージステップと、ある時間における位相の写真を得る撮像ステップと、前記写真に基づいて、前記液滴がブレイクオフするタイミングを制御する制御ステップと、を少なくとも行う、微小粒子分析方法も提供する。
本技術に係る微小粒子分析方法では、前記制御ステップにおいて、複数の前記写真によって特定された前記液滴がブレイクオフするタイミングに基づいて、前記振動素子の電圧を調整してもよい。
【0011】
本技術において、「微小粒子」には、細胞や微生物、リポソーム等の生体関連微小粒子、或いはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子等の合成粒子などが広く含まれ得る。
【0012】
生体関連微小粒子には、各種細胞を構成する染色体、リポソーム、ミトコンドリア、オルガネラ(細胞小器官)などが含まれる。細胞には、動物細胞(例えば、血球系細胞など)及び植物細胞が含まれる。微生物には、大腸菌等の細菌類、タバコモザイクウイルス等のウイルス類、イースト菌等の菌類などが含まれる。更に、生体関連微小粒子には、核酸やタンパク質、これらの複合体等の生体関連高分子をも包含される。また、工業用粒子は、例えば、有機又は無機高分子材料、金属等であってもよい。有機高分子材料には、ポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレート等が含まれる。無機高分子材料には、ガラス、シリカ、磁性体材料等が含まれる。金属には、金コロイド、アルミ等が含まれる。これらの微小粒子の形状は、一般には球形であるのが普通であるが、本技術では、非球形であってもよく、また、その大きさ、質量等も特に限定されない。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、ブレイクオフのタイミングを安定化する技術を提供できる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本技術に係る微小粒子分析装置1の実施形態の一例を示す模式図である。
図2図2のA及びBは、図1の微小粒子分析装置1に使用可能なマイクロチップ2の構成の一例を示す模式図である。
図3図3のA~Cは、図1の微小粒子分析装置1に使用可能なマイクロチップ2のオリフィス21の構成の一例を示す模式図である。
図4図4のAは、しぶきが発生していない状態のストリームの様子を示した図面代用写真であり、図4のB及びCは、しぶきが発生している状態のストリームの様子を示した図面代用写真である。
図5図5のA~Dは、制御例1の方法を示す図である。
図6図6の一周期内を16等分した連続写真を示す図面代用写真である。
図7図7のA~Cは、制御例2の方法を示す図である。
図8図8のA~Cは、制御例3の方法を示す図である。
図9図9のA~Dは、制御例4の方法を示す図である。
図10図10は、本技術に係る微小粒子分析方法を用いた微小粒子分析の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。
以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.微小粒子分析装置1
(1)流路
(1-1)マイクロチップ2
(2)液滴形成部
(3)電荷チャージ部11
(4)撮像部3
(5)制御部4
[制御例1]
[制御例2]
[制御例3]
[制御例4]
(6)検出部5
(7)偏向板61、62
(8)回収容器71~73
(9)解析部8
(10)記憶部9
(11)表示部10
(12)入力部
(13)その他
2.微小粒子分析方法
(1)液滴形成ステップ
(2)電荷チャージステップ
(3)撮像ステップ
(4)制御ステップ
[微小粒子分析の流れの一例]
【0016】
1.微小粒子分析装置1
図1は、本技術に係る微小粒子分析装置1の実施形態の一例を示す模式図である。本技術に係る微小粒子分析装置1(フローサイトメータ)は、流路と、液滴形成部と、電荷チャージ部11と、撮像部3と、制御部4と、を少なくとも備える。また、必要に応じて、検出部5、偏向板61、62、回収容器71~73、解析部8、記憶部9、表示部10、入力部等を備えていてもよい。以下、各部について、詳細に説明する。
【0017】
(1)流路
流路は、微小粒子を含むサンプル流と、該サンプル流を内包するように流れるシース流と、からなる流体が通流する。この流路は、本技術に係る微小粒子分析装置1に予め備えられていてもよいが、流路が設けられた使い捨てのチップ等を、微小粒子分析装置1に設置し、解析や分取を行うことも可能である。
【0018】
本技術に係る微小粒子分析装置1に用いることができる流路の形態は特に限定されず、自由に設計することができる。本技術では、特に、2次元又は3次元のプラスチックやガラス等の基板内に形成した流路を用いることが好ましい。
【0019】
また、流路の流路幅や流路深さ、流路断面形状等も、層流を形成し得る形態であれば特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、流路幅1mm以下のマイクロ流路も、本技術に係る微小分析測定装置1に用いることが可能である。特に、流路幅10μm以上1mm以下程度のマイクロ流路は、本技術に係る微小粒子分析装置10に好適に用いられる。
【0020】
(1-1)マイクロチップ2
図2は、図1の微小粒子分析装置1に使用可能なマイクロチップ2の構成の一例を示す模式図であり、図3は、図1の微小粒子分析装置1に使用可能なマイクロチップ2のオリフィス21の構成の一例を示す模式図である。図2のAは上面模式図、図2のBはA中のP-P断面に対応する断面模式図を示す。また、図3のAは上面図、図3のBは断面図、図3のCは正面図を示す。なお、図3のBは、図2のA中のP-P断面の一部に対応する。
【0021】
マイクロチップ2は、サンプル流路22が形成された基板層2a、2bが貼り合わされてなる。基板層2a、2bへのサンプル流路22の形成は、金型を用いた熱可塑性樹脂の射出成形により行うことができる。熱可塑性樹脂には、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリジメチルシロキサン(PDMS)等の従来のマイクロチップの材料として公知のプラスチックを採用できる。
【0022】
また、マイクロチップ2には、送液コネクタ部から微小粒子を含むサンプルを導入するサンプルインレット23と、シース液を導入するシースインレット24と、サンプル流が導入されシース液と合流するサンプル流路22とが形成されている。シースインレット24から導入されたシース液は、2方向に分かれて送液された後、サンプルインレット23から導入されたサンプル液との合流部において、サンプル液を2方向から挟み込むようにしてサンプル液に合流する。これにより、合流部において、シース液層流の中央にサンプル液層流が位置された3次元層流が形成される。
【0023】
図2のAで示した25は、サンプル流路22に詰まりや気泡が生じた際に、サンプル流路22内に負圧を加えて流れを一時的に逆流させ、詰まりや気泡を解消するための吸引流路を示す。吸引流路25の一端には、真空ポンプ等の負圧源に接続される吸引アウトレット251が形成されている。また、吸引流路25の他端は、連通口252においてサンプル流路22に接続している。
【0024】
3次元層流は、送液方向に対する垂直断面の面積が送液方向上流から下流へ次第にあるいは段階的に小さくなるように形成された絞込部261(図2参照)、262(図3のA及びB参照)において層流幅を絞り込まれる。その後、3次元層流は、流路の一端に設けられたオリフィス21から流体ストリームとなって排出される。図1中、オリフィス21からの流体ストリームの排出方向をY軸正方向によって示す。
【0025】
サンプル流路22のオリフィス21への接続部は、直線状に形成されたストレート部27とされている。ストレート部27は、オリフィス21から流体ストリームをY軸正方向に真っ直ぐ射出するために機能する。
【0026】
オリフィス21から射出される流体ストリームは、液滴周波数(DropletCLK)に従い、後述する振動素子13によりオリフィス21に印加される振動によって液滴化される。オリフィス21は基板層2a、2bの端面方向に開口しており、その開口位置と基板層端面との間には切欠部211が設けられている。切欠部211は、オリフィス21の開口位置と基板端面との間の基板層2a、2bを、切欠部211の径Lがオリフィス21の開口径lよりも大きくなるように切り欠くことによって形成されている(図3のC参照)。切欠部211の径Lは、オリフィス21から吐出される液滴の移動を阻害しないように、オリフィス21の開口径lよりも2倍以上大きく形成されていることが好ましい。
【0027】
(2)液滴形成部
液滴形成部は、振動素子13を用いて前記流体に振動を与えて前記流体に液滴を形成する。振動素子13は、前記流路に接するように設けられていることが好ましく、図1に示すように前記流路の流体吐出口の付近に設けられることがより好ましい。特に、マイクロチップ2を用いた場合は、前述したマイクロチップ2のオリフィス21の付近に設けられることが好ましい。
【0028】
振動素子13としては特に限定されず、公知のものを自由に選択して用いることができる。具体的には、例えば、ピエゾ素子等である。前記流路への送液量、吐出口の径、振動素子13の振動数等を調整し、液滴の大きさを調整して、微小粒子を一定量ずつ含む液滴を発生させることができる。
【0029】
(3)電荷チャージ部11
電荷チャージ部11は、前記微小粒子を内包する液滴にプラス又はマイナスの電荷をチャージする。マイクロチップ2を用いた場合は、マイクロチップ2に形成されたオリフィス21から吐出される液滴に対して電荷を付与する。電荷チャージ部11は、例えば、図1に示すように、後述する撮像部3の上流に配置される。液滴のチャージは、電荷チャージ部11と電気的に接続され、マイクロチップ2に設けられたサンプルインレット23に挿入される電極12によって行われる。なお、電極12は、マイクロチップ2のいずれかの箇所に、流路を送液されるサンプル液又はシース液に電気的に接触するように挿入されていればよい。
【0030】
本技術に係る微小粒子分析装置1では、サンプル液に含まれる微小粒子が後述する検出部5により検出されてから、ドロップディレイタイム経過した後に電荷チャージ部11が前記微小粒子を内包する液滴にチャージすることができる。
【0031】
(4)撮像部3
撮像部3は、ある時間における位相(液滴の画像)の写真を得る。図1中の符号31は、マイクロチップ2のオリフィス21から吐出される液滴を撮像するための、CCDカメラ、CMOSセンサ等のドロップレットカメラ32である。ドロップレットカメラ32は、後述する検出部5の下流に配置され、前記流体の少なくとも一部を撮像する。また、ドロップレットカメラ32は、撮像した液滴の画像の焦点調節を行うことが可能である。ドロップレットカメラ32において撮像するための光源としては、例えば、後述するストロボ31が用いられる。なお、撮像部3では、複数の前記写真を得ることもでき、一定周期内の写真を連続して取得することもできる。ここでいう「一定周期」とは特に限定されず、後述する一周期でもよいし、複数周期でもよい。複数周期の場合は、それぞれの周期が時間的に連続していてもよく、不連続であってもよい。
【0032】
ドロップレットカメラ32により撮像された画像は、ディスプレイ等の表示部に表示されて、ユーザがオリフィス21における液滴の形成状況(例えば、液滴の大きさ、形状、間隔等)を確認するためにも利用できる。
【0033】
ストロボ31は、後述する制御部4によって制御されていてもよい。ストロボ31は、液滴を撮像するためのLED及び微小粒子を撮像するためのレーザL2(例えば、赤色レーザ光源)から構成され、制御部4により撮像する目的に応じて使用する光源の切り替えが行われる。ストロボ31の具体的な構造は特に限定されず、公知の回路又は素子を1種又は2種以上選択して、自由に組み合わせることができる。
【0034】
ストロボ31にLEDを使用する場合、LEDはDroplet CLK一周期のうちのごく微小時間のみ発光する。この発光はDroplet CLKごとに行われ、これにより、液滴形成のある瞬間を画像として切り出して取得することが可能となる。ドロップレットカメラ32による撮像は、例えば、秒間30回程度であるのに対して、DropletCLKは10kHz~50kHz程度であるが、本技術ではこれに限定されない。
【0035】
ストロボ31にレーザL2を使用する場合、レーザL2はDropletCLKの半周期程度又はそれより短い周期で発光する。この際、検出部5で微小粒子が検出された場合のみ制御部4で設定される光源点灯遅延時間経過後にレーザL2を発光させることで、液滴中に含まれる微小粒子の蛍光を画像から取得することが可能になる。ドロップレットカメラ32による撮像は秒間60回程度であり、微小粒子の検出及びレーザL2光源発光が秒間数千回となるよう測定を行うことで、数十個程度の微小粒子の蛍光が累積した安定した微小粒子が画像を取得することができる。なお、レーザL2の発光時間は、安定した微小粒子画像を取得できる時間であればよい。
【0036】
(5)制御部4
制御部4は、撮像部3で得た前記写真に基づいて、前記液滴がブレイクオフするタイミングを制御する。
【0037】
ここで、従来、液滴吐出後に後部に引き伸ばされた細い棒状の液柱が表面張力によって主液滴とノズルから分離する際に形成される小液滴のことを「サテライト(satellite)」と呼び、このサテライトは、液滴のチャージ変動の要因となるため、液滴の偏向位置精度を要求する微小粒子分析装置にとっては、その制御が不可欠なパラメータの1つとなっていた。
【0038】
なお、サテライトの種類は、Slow Satellite(Back satellite)、Infinity、Fastsatellite(Forward Satellite)、Nonsatelliteの4種類である。Slow Satelliteは、サテライトの下端が切れて、サテライトの上端が切れた場合であり、Infinityは、サテライトの下端と上端が同時に切れた場合であり、Fastsatelliteは、サテライトの上端が切れて、サテライトの下端が切れた場合であり、Nonsatelliteは、サテライトの上端が切れて、サテライトの下端が切れる前に吸収された場合である。
【0039】
サテライトがちぎれるタイミングと電荷チャージのかかるタイミングがずれた場合、しぶきの発生の原因の一つとなる。図4のAに示すように、しぶきが発生していない状態では、目的の液滴にはプラス又はマイナスに電荷チャージが一定量されているため左右にそれぞれ分かれ、目的外の液滴にはチャージがされていないためこれらはそのまま中央を通る。
【0040】
しかし、チャージのタイミングにずれが発生すると、目的の液滴にきちんと電荷チャージがかかっているものと、電荷チャージが足りていない(サテライトに電荷チャージがかからなかった)ものと、が混在するため、図4のBに示すように、左右のストリームが複数検出される。また、目的外の液滴にも電荷チャージされている(サテライトに電荷チャージがかかってしまった)ものがあるため、図4のCに示すように、中央のストリームも複数検出される。
【0041】
そのため、しぶきが発生した状態でソーティングを行うと、狙った位置に細胞を落とせず、収量・回収率の低下を引き起こす。また、目的外の微小粒子がソートされ、純度の低下を引き起こす可能性もある。
【0042】
そこで、本技術を用いて、制御部4により前記液滴がブレイクオフするタイミングを制御し、サテライトがちぎれるタイミングと電荷チャージのかかるタイミングのずれを生じさせないようにして、ブレイクオフのタイミングの安定化を図る。
【0043】
また、従来、ブレイクオフのタイミングを安定化する目的で、Gap長(ブレイクオフポイントからサテライトまでの距離)やサテライト長、液滴長といった指標を用いていた。すなわち、液滴化される直前の流体におけるくびれ部分ではない箇所を観察し、該くびれ部分の変化を間接的に捉えることで、制御しようとしていた。しかし、このような間接的な指標では、サンプル液中の微小粒子のサイズのずれ、環境温度の変化などの影響を受けやすく、外乱によって前記指標とくびれの関係に破綻が生じた場合に、性能が維持できない可能性があった。これは、具体的には、サイズの大きい微小粒子が入ることによって振動強度に応じて表面をかく乱する力が働き、ブレイクオフのズレが生じやすくなったり、ブレイクオフするまでの時間はGrowthrate(液滴のくびれやすさに関わるパラメータ)に主に依存し、これは、流体表面張力の変化や流体密度の変化と線形になり、温度などの物理量がばらつくと、この流体の状態に影響を与えてブレイクオフまでの時間が変わってしまったりすることに基づく。
【0044】
しかし、本技術では、撮像部3で得た前記写真に基づいて、直接的にブレイクオフポイントを監視することができるため、大きな温度変化やサイズの大きい微小粒子に対しても性能を向上させることができる。
【0045】
前記液滴がブレイクオフするタイミングを制御する方法は特に限定されないが、複数の前記写真によって特定された前記液滴がブレイクオフするタイミングに基づいて、振動素子13の電圧を調整することが好ましい。
【0046】
以下の制御例1~4に基づいて、より具体的に、制御部3による制御方法について説明する。
【0047】
[制御例1]
本制御例1では、まず、微小粒子を内包する液滴を自動調整して、しぶかない液滴を作る(図5のA参照)。その後、ストロボを振って、ある一周期内の位相の連続写真を取得し、該連続写真において、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相(前記液滴がちぎれる位相)を特定する(図5のB参照)。具体的には、例えば、ストロボの発光周期を一定等分(例えば、16等分)して、一周期の連続写真の画像の中から前記液滴がちぎれる位相を検出する。その後、この位相の前後の位相を更に分割した連続写真を取得し、該分割した連続写真において前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相をより正確に特定する(図5のC参照)。具体的には、例えば、ストロボの発光周期を再分割し、一定等分(例えば、40等分)して、一周期の連続写真の画像の中から前記液滴がちぎれる位相をより正確に検出する。
【0048】
なお、本制御例1では、前記液滴がちぎれる位相の前後の位相を更に分割した連続写真を取得する前に、前記液滴がちぎれる位相の次の位相においても液滴がちぎれた状態であることを確認してもよい。
【0049】
図6は、一周期内を16等分した連続写真を示す図面代用写真である。この図面代用写真は、撮像部3に備えられたストロボのストロボ発光開始時間を変化させて得られた連続位相写真である。ここでいう「一周期」とは、微小粒子を内包する液滴を1つ形成する時間を意味しており、振動素子13(例えば、ピエゾ素子)の周波数で決定する。振動素子13周波数は、約10kHz~50kHzであり、1周期の時間は最大で1/10000秒程度、最小で1/50000秒程度となる。
【0050】
そして、ブレイクオフする位置を監視して、一定時間(例えば、10sec)の中で何回液滴がちぎれて、何回液滴がちぎれなかったのかを調べる。その後、このちぎれた回数が、閾値(例えば、40~60%、好ましくは50%)を超えていれば、液滴がちぎれている方に偏っているので、振動素子13の電圧を下げてちぎれにくくする。一方で、閾値を下回っていれば、液滴がくっつく方に偏っているので、振動素子13の電圧を上げてちぎれやすくする。すなわち、一周期をある一定位相に分けて画像を取得した後、ちぎれる位相を特定した、その位相にちぎれる回数が、例えば、40~60%、好ましくは50%になるよう、振動素子13の電圧を調整する。
【0051】
[制御例2]
本制御例2では、制御例1と同様に、まず、微小粒子を内包する液滴を自動調整して、しぶかない液滴を作る(図7のA参照)。その後、ストロボを振って、ある一周期内の位相の連続写真を取得し、該連続写真において、液滴がちぎれる位相(前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相)を特定する(図7のB参照)。この特定では、前述した制御例1ほど厳密にちぎれた位相を特定しているわけではないが、ちぎれて生じた隙間の距離が十分に小さければ、制御例1と同様に制御可能である。
【0052】
そして、ちぎれて生じた隙間の距離を監視して、特定した液滴がちぎれる位相のブレイクオフポイントとサテライトの間の距離(=Gap)を測定して、同じ位相でちぎれ、かつ、このGap長が一定である状態を維持できるように、振動素子13の電圧を調整する。Gapが大きくなれば、液滴がちぎれている方に偏っているので、振動素子13の電圧を下げてGapを小さくする。一方で、Gapが小さくなれば、液滴がくっつく方に偏っているので、振動素子13の電圧を上げてちぎれやすくする。
【0053】
[制御例3]
制御例3は、Fast satelliteが発生している場合の制御例である。本制御例3では、まず、微小粒子を内包する液滴を作る(この時点では、液滴がしぶいていてもよい)(図8のA参照)。その後、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相が、ある一周期内において前記微小粒子に電荷をチャージする位相の逆方位に対応する位相となるように振動素子13の電圧を調整する(図8のB参照)。
【0054】
Fast satelliteが発生している場合は、前の液滴がちぎれ、電荷チャージが始まり、目的の液滴が切れ、電荷チャージが終わる、という順番を守らないと、しぶきが発生してしまう。このため、前の液滴がちぎれるタイミングを、電荷をチャージする前の位相に固定すればよい。すなわち、液滴が液柱からちぎれた後にサテライトとして分離するため、液滴のちぎれのみに注目すればよく、この方法により制御可能である。具体的な液滴の制御方法には、前述した制御例1や制御例2に記載の方法を採用することができる。
【0055】
なお、本制御例3では、振動素子13による電圧制御の前に、ストロボを振って、ある時間における位相の写真を複数取得してもよい。
【0056】
[制御例4]
制御例4は、Slow Satelliteが発生している場合の制御例である。本制御例4では、まず、微小粒子を内包する液滴を作る(この時点では、液滴がしぶいていてもよい)(図9のA参照)。その後、ストロボを振って、ある時間における位相の写真を複数取得し、前記液滴のサテライトの切れ方を調べ、前記液滴(目的の微小粒子を内包する液滴)の前の液滴が液柱からちぎれる位相と、前記液滴のサテライトが液柱からちぎれる位相と、を特定する(図9のB及びC参照)。そして、これらのサテライトのちぎれの位相差を調べて、例えば、その真ん中に電荷をチャージする位相がくるように、振動素子13の電圧を調整する。
【0057】
Slow Satelliteが発生している場合は、目的の微小粒子を内包する液滴の前の液滴が液柱からちぎれ、電荷チャージが始まり、前記液滴のサテライトが液柱からちぎれ、前記液滴が液柱からちぎれ、電荷チャージが終わる、という順番を守らないと、しぶきが発生してしまう。制御例3(Fastsatellite)の場合は、液柱からのちぎれが1回しか起こらないため、液滴がブレイクオフしている位相が、一周期内において前記微小粒子に電荷チャージする位相の逆方位に対応する位相となるように振動素子13の電圧を調整すればよいが、SlowSatelliteの場合では、逆方位に対応する位相に合わせてしまうと、目的の微小粒子を内包する液滴の前の液滴が液柱からちぎれ、前記液滴のサテライトが液柱からちぎれ、電荷チャージが始まる、という間違った順番になってしまい、しぶきが発生してしまう。そのため、これを回避するには、前記液滴(目的の微小粒子を内包する液滴)の前の液滴が液柱からちぎれる位相と、前記液滴のサテライトが液柱からちぎれる位相と、を特定し、これらのサテライトのちぎれの位相差を、ストロボを振るなどして計測し、その真ん中に電荷チャージの位相がくるように調整する必要がある。具体的な液滴の制御方法には、前述した制御例1や制御例2に記載の方法を採用することができる。
【0058】
なお、本技術において、制御部4は、本技術に係る微小粒子分析装置1の各部をそれぞれ制御可能に構成されていてもよい。また、制御部4は各部とネットワークを介して接続されていてもよい。
【0059】
(6)検出部5
図1中の符号5は、光源51から発せられるレーザL1の照射によって細胞等の微小粒子から発生する測定対象光を検出する検出部5を示す。検出部5は、流路内を流通する流体中の微小粒子を検出する。検出部5は、サンプル流路22の絞込部261と絞込部262との間で、細胞の特性検出を行う。当該特性検出は特に限定されるものではないが、例えば光学的検出の場合、サンプル流路22中を3次元層流の中心に一列に配列して送流される細胞に対するレーザL1(図1参照)の照射により、細胞から発生する散乱光や蛍光が検出部5によって検出される。
【0060】
この光照射及び検出では、レーザ光源の他に、細胞に対してレーザを集光・照射する集光レンズやダイクロイックミラー、バンドパスフィルター等の照射系も構成されていてもよい。検出系は、例えば、PMT(photomultiplier tube)や、CCDやCMOS素子等のエリア撮像素子等によって構成される。
【0061】
検出部5の検出系により検出される測定対象光は、測定光の照射によって細胞から発生する光である。具体的には、例えば、前方散乱光や側方散乱光、レイリー散乱やミー散乱等の散乱光やなどである。これらの測定対象光は電気信号に変換され、前述した制御部4に出力され、細胞の光学特性判定に供される。
【0062】
なお、検出部5は、磁気的、或いは、電気的に細胞の特性を検出するものであってもよい。この場合には、マイクロチップ2のサンプル流路22に微小電極を対向させて配設し、抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値、或いは、磁化、磁界変化、磁場変化等を測定することができる。
【0063】
(7)偏向板61、62
図1中の符号61、62は、オリフィス21から射出され、撮像部3により撮像された液滴を挟んで対向して配置された一対の偏向板を示す。偏向板61、62は、オリフィス21から吐出される液滴の移動方向を、液滴に付与された電荷との電気的な作用力によって制御する電極を含んで構成される。また、偏向板61、62は、オリフィス21から発生する液滴の軌道も、液滴に付与された電荷との電気的な作用力によって制御する。図1中、偏光板61、62の対向方向をX軸方向によって示す。
【0064】
(8)回収容器71~73
本技術に係る微小粒子分析装置1において、液滴は、偏向板61、62の対向方向(X軸方向)に一列に配設された複数の回収容器71~73のいずれかに受け入れられる。回収容器71~73は、実験用として汎用のプラスチック製チューブ、或いは、ガラス製チューブであってよい。回収容器71~73の数は特に限定されないが、ここでは3本設置する場合を図示している。オリフィス21から発生する液滴は、偏向板61,62との間の電気的な作用力の有無やその大小によって、3本の回収容器71~73のいずれか一つに誘導され、回収される。
【0065】
回収容器71~73は、回収容器用コンテナ(不図示)に交換可能に設置されていてもよい。回収容器用コンテナは、例えば、オリフィス21からの液滴の排出方向(Y軸方向)及び偏光板61,62の対向方向(X軸方向)に直交する方向(Z軸方向)に移動可能に構成されたZ軸ステージ(不図示)上に配設されている。
【0066】
(9)解析部8
解析部8は、検出部5と接続され、検出部5で検出した微小粒子に対する光の検出値を解析する。
【0067】
例えば、解析部8では、検出部5より受け取った光の検出値を補正し、各微小粒子の特徴量を算出することができる。具体的には、受光した蛍光、前方散乱光及び後方散乱光の検出値より微小粒子の大きさ、形態、内部構造等を示す特徴量を算出する。また、算出した特徴量と事前に入力部より受け取った分取条件等に基づき分取判断を行い、分取制御信号を生成することもできる。
【0068】
解析部8は、本技術に係る粒子分析装置1では必須ではなく、検出部5によって検出された光の検出値に基づいて、外部の解析装置等を用いて微小粒子の状態等を解析することも可能である。また、解析部8は各部とネットワークを介して接続されていてもよい。
【0069】
(10)記憶部9
記憶部9では、検出部5で検出された値、解析部8にて算出された特徴量、分取制御信号、入力部にて入力された分取条件等の測定に関わるあらゆる事項を記憶する。
【0070】
微小粒子分析装置1において、記憶部9は必須ではなく、外部の記憶装置を接続してもよい。記憶部9としては、例えば、ハードディスク等を用いることができる。また、記録部9は各部とネットワークを介して接続されていてもよい。
【0071】
(11)表示部10
表示部10では、検出部5で検出された値等の分析に関わるあらゆる事項を表示することができる。好ましくは、表示部10は、解析部8にて算出された各微小粒子に対する特徴量がスキャッタグラムとして表示することができる。
【0072】
本技術に係る微小粒子分析装置1において、表示部10は必須ではなく、外部の表示装置を接続してもよい。表示部10としては、例えば、ディスプレイ、プリンタ等を用いることができる。
【0073】
(12)入力部
入力部(不図示)は、オペレータ等のユーザが操作するための部位である。ユーザは、入力部を通じて、制御部3にアクセスし、本技術に係る微小粒子分析装置1の各部を制御することができる。好ましくは、入力部は、表示部10に表示されたスキャッタグラムに対して注目領域を設定し、分取条件を決定することが可能である。
【0074】
本技術に係る微小粒子分析装置1において、入力部は必須ではなく、外部の操作装置を接続してもよい。入力部としては、例えば、マウス、キーボード等を用いることができる。
【0075】
(13)その他
なお、本技術では、本技術に係る微小粒子分析装置1の各部で行われる機能を、パーソナルコンピュータや、CPU等を含む制御部及び記録媒体(例えば、不揮発性メモリ(例えば、USBメモリ等)、HDD、CD等)等を備えるハードウェア資源にプログラムとして格納し、パーソナルコンピュータや制御部によって機能させることも可能である。
【0076】
2.微小粒子分析方法
本技術に係る微小粒子分析方法では、液滴形成ステップと、電荷チャージステップと、撮像ステップと、制御ステップと、を少なくとも行う。また、必要に応じて、他のステップを行ってもよい。以下、各ステップについて、詳細に説明する。
【0077】
(1)液滴形成ステップ
液滴形成ステップでは、微小粒子を含むサンプル流と、該サンプル流を内包するように流れるシース流と、からなる流体に振動素子を用いて振動を与えて前記流体に液滴を形成する。液滴形成ステップで行う具体的な方法は、前述した液滴形成部で行われる方法と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0078】
(2)電荷チャージステップ
電荷チャージステップでは、前記微小粒子を内包する液体に電荷をチャージする。電荷チャージステップで行う具体的な方法は、前述した電荷チャージ部11で行われる方法と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0079】
(3)撮像ステップ
撮像ステップでは、ある時間における位相の写真を得る。撮像ステップで行う具体的な方法は、前述した撮像部3で行う方法と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0080】
(4)制御ステップ
制御ステップで行う具体的な方法は、前述した制御部4で行われる方法と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0081】
なお、制御ステップにおいては、複数の前記写真によって特定された前記液滴がブレイクオフするタイミングに基づいて、振動素子13の電圧を調整することが好ましい。
【0082】
[微小粒子分析の流れの一例]
本技術に係る微小粒子分析方法を用いた微小粒子分析の流れの一例について、図10を参照しながら説明する。なお、図10に示すフローチャートの各ステップの処理は、例えば、前述した各部によって行われる。
【0083】
まず、マイクロチップ2のオリフィス21からシース液が吐出される(ステップS1)。その後、制御部4は、振動素子13であるピエゾ素子の周波数や電圧を変更する(ステップS2)。そして、制御部4は、液滴形状を判定する(ステップS3)。液滴形状が不良であれば、ステップS2に戻る。液滴形状が良好であれば、その他の調整に入る(ステップS4)。ステップS4では、具体的には、ストロボを振ってブレイクオフポイントを見つけるといった調整が行われるが、本技術に係る微小粒子分析方法においては、必須の工程ではない。ステップS1~S4は、液滴の自動調整を行う工程であり、これらの工程を行うことにより、分取に適した液滴の条件(例えば、液滴の長さ、位置、サテライトの吸収される方向(Fast又はSlow)等)を予め装置に持たせ、振動素子13の周波数や電圧を変更することで、目的とする条件に合致する液滴を探索する。
【0084】
ステップS4の後、制御部4は、液滴制御を開始する(ステップS5)。まず、制御部4は、監視点を検出する(ステップS6)。前記監視点としては、ある時間における位相で、微小粒子を内包する液滴がちぎれる瞬間である。この監視点を対象とするには、前述した制御例1~4に記載の方法などが挙げられる。この監視点について、設定された閾値について判定し(ステップS7)、該閾値よりも監視点の値が大きければ振動素子13の電圧を下げる(ステップS8)。一方で、該閾値よりも監視点の値が小さければ振動素子13の電圧を上げる(ステップS9)。ステップS4~S9は、液滴の制御を行う工程であり、これらの工程を行うことによって、液柱から液滴がちぎれる部分を監視し続け、これを直接的に維持してブレイクオフのタイミングを一定に保つことができ、安定的なソートを実現することができる。
【0085】
なお、本技術では、以下の構成を取ることもできる。
(1)
微小粒子を含むサンプル流と、該サンプル流を内包するように流れるシース流と、からなる流体が通流する流路と、
振動素子を用いて前記流体に振動を与えて前記流体に液滴を形成する液滴形成部と、
前記微小粒子を内包する液滴に電荷をチャージする電荷チャージ部と、
ある時間における位相の写真を得る撮像部と、
前記写真に基づいて、前記液滴がブレイクオフするタイミングを制御する制御部と、
を少なくとも備える、微小粒子分析装置。
(2)
前記制御部は、複数の前記写真によって特定された前記液滴がブレイクオフするタイミングに基づいて、前記振動素子の電圧を調整する、(1)に記載の微小粒子分析装置。
(3)
前記制御部は、一周期内における位相の連続写真を取得し、該連続写真において、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相を特定する、(1)又は(2)に記載の微小粒子分析装置。
(4)
前記制御部は、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相の前後の位相を更に分割した連続写真を取得し、該分割した連続写真において前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相を特定する、(3)に記載の微小粒子分析装置。
(5)
前記撮像部は、ストロボを備え、
前記ストロボのストロボ発光開始時間を変化させて得られた連続位相写真を用いて、前記特定を行う、(3)又は(4)に記載の微小粒子分析装置。
(6)
前記制御部は、前記液滴がブレイクオフするタイミングの位相が、前記液滴に電荷をチャージする位相の逆方位に対応する位相となるように制御する、(1)から(5)のいずれかに記載の微小粒子分析装置。
(7)
前記制御部は、前記液滴に電荷をチャージする位相が、前記液滴の前の液滴が液柱からちぎれる位相から前記液滴のサテライトが液柱からちぎれる位相までの間に来るように制御する、(1)から(6)のいずれかに記載の微小粒子分析装置。
(8)
微小粒子を含むサンプル流と、該サンプル流を内包するように流れるシース流と、からなる流体に振動素子を用いて振動を与えて前記流体に液滴を形成する液滴形成ステップと、
前記微小粒子を内包する液滴に電荷をチャージする電荷チャージステップと、
ある時間における位相の写真を得る撮像ステップと、
前記写真に基づいて、前記液滴がブレイクオフするタイミングを制御する制御ステップと、
を少なくとも行う、微小粒子分析方法。
(9)
前記制御ステップにおいて、複数の前記写真によって特定された前記液滴がブレイクオフするタイミングに基づいて、前記振動素子の電圧を調整する、(8)に記載の微小粒子分析方法。
【符号の説明】
【0086】
1:微小粒子分析装置
11:電荷チャージ部
12:電極
13:振動素子
2:マイクロチップ
2a、2b:基板層
21:オリフィス
22:サンプル流路
23:サンプルインレット
24:シースインレット
25:吸引流路
27:ストレート部
211:切欠部
251:吸引アウトレット
252:連通口
261、262:絞込部
3:撮像部
31:ストロボ
32:ドロップレットカメラ
4:制御部
5:検出部
51:光源
61、62:偏向板
71~73:回収容器
8:解析部
9:記憶部
10:表示部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10