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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】湿気硬化型ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20231108BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20231108BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20231108BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20231108BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J175/06
C09J175/08
C09J133/10
C09J11/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020561449
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049324
(87)【国際公開番号】W WO2020129955
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2018239665
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108111
【氏名又は名称】セメダイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151688
【弁理士】
【氏名又は名称】今 智司
(72)【発明者】
【氏名】岡村 直実
(72)【発明者】
【氏名】阿部 寛生
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-297545(JP,A)
【文献】特表2013-513678(JP,A)
【文献】特表2015-526547(JP,A)
【文献】特開平2-32186(JP,A)
【文献】特開昭58-29818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a-1)と下記成分(a-2)との反応物であるアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A)を含む湿気硬化型ホットメルト接着剤。
成分(a-1):下記成分(i)と成分(ii)との反応物である水酸基末端ウレタンプレポリマー
成分(i):ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー
成分(ii):結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)を含有するポリオール
成分(a-2):イソシアネートシラン
【請求項2】
前記成分(ii)が、室温で固体であり、水酸基を有するメタクリル酸メチル系重合体(ii-2)を更に含有する請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記成分(ii)が、ポリエーテルポリオール(ii-3)を更に含有する請求項1又は2に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項4】
(B)シラン系接着付与剤
を更に含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項5】
(C)改質樹脂
を更に含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項6】
(D)アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体
を更に含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項7】
(E)アミン系化合物、2価の錫化合物、フッ素化ポリマーからなる群から少なくとも1つ選択される触媒
を更に含有する請求項1~6のいずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項8】
下記成分(i)と成分(ii-2)との反応物であるアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(F)
を更に含有する請求項1~7のいずれか1項に記載の湿気硬化型シリル化ポリウレタン接着剤。
成分(i):ポリエーテル骨格のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー
成分(ii-2):水酸基を有するメタクリル酸メチル系重合体
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤を含む製品。
【請求項10】
下記成分(a-1)と下記成分(a-2)とを反応させてアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A)を調製し、前記成分(A)を含む湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造する工程を含む湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法。
成分(a-1):下記成分(i)と成分(ii)との反応物である水酸基末端ウレタンプレポリマー
成分(i):ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー
成分(ii):結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)を含有するポリオール
成分(a-2):イソシアネートシラン
【請求項11】
前記成分(A)に(B)シラン系接着付与剤を添加する工程を更に含む請求項10に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大気中の水分、又は互いに接着されている材料に含まれる水分の作用によって不可逆的に硬化するプレポリマーから調製されるイソシアネート官能基を含む反応性ポリウレタンホットメルト接着剤(以下、「PUホットメルト接着剤」と称する場合がある。)が知られている。例えば、特許文献1に記載されているようなプレポリマーは、ポリエステルポリオールと所望のポリエーテルポリオールにポリイソシアネートを反応させて得られる化合物との反応生成物であり、このような反応性のPUホットメルト接着剤は、例えば、プラスチック、ガラス、金属、皮革、及び木材等の様々な材料を接着させる接着剤として一般的に用いることができる。
【0003】
ここで、PUホットメルト接着剤の出発成分の相互反応を伴わない固化時間は、室温で結晶質若しくは非晶質の成分の配合割合を変化させることにより秒単位から分単位の範囲内で調整できる。この点に関し、PUホットメルト接着剤の結晶性の構造が、接着剤の溶融粘度を低下させて塗布性を向上させると共に、塗布後の短い固化時間及び低いガラス転移温度に起因する良好な低温弾性をもたらすことが知られている(例えば、特許文献2や特許文献3参照。)。
【0004】
反応性のPUホットメルト接着剤の成分相互間の架橋反応を伴う硬化は、イソシアネート基と水分との反応によって数日間で進行し、これにより熱硬化性ポリウレアが形成される。この後のPUホットメルト接着剤はもはや溶融せず、若しくは、例えば、溶剤に溶解しない性質を発揮する。このため、硬化した接着剤は良好な耐熱性を示すと共に、化学薬品、例えば、可塑剤、溶剤、オイル、及び燃料等に対して良好な耐性を示す。
【0005】
ところが、上記のような接着剤には、これら接着剤の調製法に起因して、高濃度の遊離のモノマー性ポリイソシアネート、例えば、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン(4,4’-MDI)、2,4-ジイソシアナトトルエン、又は2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)が残存する。このようなモノマー性ポリイソシアネートは接着剤の塗布温度(約100℃~約180℃)においてモノマー性の成分が気体状態で周囲環境へ放出される蒸気圧を示すことから、所定の排気装置等の設備を設置することが要求される。
【0006】
また、上記のような接着剤においては、水分との反応によりポリウレアが形成される。そして、ポリウレアが形成される場合、接着剤から二酸化炭素が放出される。そのため、接着剤が接着している接着領域において発泡が生じる。この結果、接合が構成されている部材の表面の膨張や、接着強度の低下が発生する。
【0007】
また、反応性ホットメルト接着剤は加熱時の安定性(粘度増加しないこと、更には硬化しないこと。)と室温での硬化性のバランスが必要とされる。しかしながら、反応性のPUホットメルト接着剤は加熱時の安定性が十分でないという欠点があった。すなわち、反応性のPUホットメルト接着剤は塗工前に加熱溶融させる必要があるところ、その際に分子鎖末端イソシアネート基が分子鎖中のウレタン結合や尿素結合と反応して、アロファネート結合やビウレット結合を生成し、三次元架橋構造を形成し、組成物の粘度が上昇してしまうか、あるいはゲル化することがあった。
【0008】
係る問題点を解決するため、例えば、特許文献4~6に開示されるような、ポリエステルポリオールを基材とするシラン官能性の反応性ホットメルト接着剤が知られている。
【0009】
しかし、特許文献4に記載の接着剤組成物は感圧接着剤(粘着剤)であり、硬化後もタックが残存するため用途によってはべたつきが問題となる場合がある。また、特許文献5に記載の組成物は、立ち上がり強度が十分とはいえない場合があり、特許文献6に記載の湿気硬化性ホットメルト接着剤組成物においては、十分な貼り合わせ可能時間の確保と十分な立ち上がり強度との両立が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平4-227714号公報
【文献】特開平2-088686号公報
【文献】特開2014-205764号公報
【文献】特許第6027146号公報
【文献】特許第5738849号公報
【文献】特許第5254804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
すなわち、上記各特許文献のような従来技術よりも、ホットメルト接着剤のより高い立ち上がり強度、及び十分な長さの貼り合わせ可能時間を確保することが求められている。そこで、本発明の目的は、良好な立ち上がり強度と十分な長さの貼り合わせ可能時間とを両立することができる湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、下記成分(a-1)と下記成分(a-2)との反応物であるアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A)を含む湿気硬化型ホットメルト接着剤が提供される。
成分(a-1):下記成分(i)と成分(ii)との反応物である水酸基末端ウレタンプレポリマー
成分(i):ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー
成分(ii):結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)を含有するポリオール
成分(a-2):イソシアネートシラン
【0013】
また、上記湿気硬化型ホットメルト接着剤において、成分(ii)が、室温で固体であり、水酸基を有するメタクリル酸メチル系重合体(ii-2)を更に含有してもよい。更に、上記湿気硬化型ホットメルト接着剤において、成分(ii)が、ポリエーテルポリオール(ii-3)を含有してもよい。
【0014】
また、上記湿気硬化型ホットメルト接着剤が、(B)シラン系接着付与剤を更に含有してもよく、(C)改質樹脂を更に含有してもよく、(D)アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体を更に含有してもよく、(E)アミン系化合物、2価の錫化合物、フッ素化ポリマーからなる群から少なくとも1つ選択される触媒を更に含有してもよく、下記成分(i)と成分(ii-2)との反応物であるアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(F)を更に含有してもよい。
成分(i):ポリエーテル骨格のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー
成分(ii-2):水酸基を有するメタクリル酸メチル系重合体
【0015】
また、本発明は、上記目的を達成するため、上記のいずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤を含む製品が提供される。
【0016】
更に、本発明は、上記目的を達成するため、下記成分(a-1)と下記成分(a-2)とを反応させてアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A)を調製し、成分(A)を含む湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造する工程を含む湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法が提供される。
成分(a-1):下記成分(i)と成分(ii)との反応物である水酸基末端ウレタンプレポリマー
成分(i):ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー
成分(ii):結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)を含有するポリオール
成分(a-2):イソシアネートシラン
【0017】
また、上記湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法は、成分(A)に(B)シラン系接着付与剤を添加する工程を更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤によれば、良好な立ち上がり強度と十分な長さの貼り合わせ可能時間とを両立することができる湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<数値、及び用語の定義・意義>
本明細書において用いる数値、及び用語の定義・意義は以下のとおりである。
【0020】
(室温の定義)
本明細書における「室温」若しくは「常温」とは、23℃の温度である。
【0021】
(用語の意義:室温で固体状)
本明細書において、「室温で固体状」という用語は、対象となる物質(例えば、所定の組成物)が結晶性の物質、部分的に結晶性の物質、及び/又はガラス状非晶質であって、23℃よりも高い軟化点(環球法による測定値)、若しくは融点を有することを意味する。ここで融点は、例えば、動的示差熱量測定(示差走査型熱量測定[DSC])によって、加熱操作中に測定した曲線の最大値であって、対象の材料が固体状態から液体状態に転移する温度である。
【0022】
(用語の意義:粘着剤)
粘着剤とは、例えばJIS K6800に定義されているように、常温で粘着性を有し、低い圧力で被着材に接着する物質をいい、常温で圧力を加えるだけで接着する接着剤(感圧接着剤)が含まれる。特に限定しない限り、本明細書において「接着剤」には、感圧接着剤を含まないものとする。すなわち、本明細書において「接着剤」とは、感圧接着剤を除く接着剤を意味し、本発明に係る接着剤は、感圧接着剤ではない。
【0023】
(用語の意義:粘着性)
また、本明細書において、「常温で粘着性を有する」とは、JIS Z0237に準拠して、J.DOW法ボールタック試験器を用いて、温度23℃、50%RH環境下において傾斜板の角度を30度に設定し、助走距離10cmの条件で粘着面に向けて所定の鋼球を転がし、粘着剤の端から距離10cmの間で停止したボールNo.を評価した場合に、ボールタックが10以下であり6以下であることが好ましい。なお、感圧接着剤は、上記粘着性を長期間保持して常温で圧力を加えるだけで接着性を示す。
【0024】
(用語の意義:貼り合わせ可能時間)
本明細書における「貼り合わせ可能時間」とは、接着剤を被接着物に塗布してから他の被着物に貼り合わせるまでの貼り合わせ可能な時間である。「貼り合わせ可能時間」は、日本接着剤工業規格JAI7-1991に準じて測定することができる。
【0025】
(用語の意義:セットタイム)
本明細書における「セットタイム」とは、被着材に貼り合わせたホットメルト接着剤が冷却固化して初期接着力を示すまでの時間である。
【0026】
<湿気硬化型ホットメルト接着剤の概要>
ホットメルト接着剤においては、被着体に塗布した後の立ち上がり強度が十分に高く(換言すれば、固化による十分な接着強度を発揮するまでの時間が実用上、短く)、かつ、ホットメルト接着剤を塗布した被着体に他の被着体を接着させるまでに、当該ホットメルト接着剤と他の被着体とを適切に接着させることができなくなるまでの時間、つまり、貼り合わせ可能時間が十分な長さであることが要求される。なお、立ち上がり強度は、ホットメルト接着剤が固化することによって発揮される強度であり、固化とは、ホットメルト接着剤が加熱により溶融した後に冷却されて固体状になることをいう。そして、反応性ホットメルト接着剤は、固化した後、成分中のシリル基等に起因して、湿気硬化により架橋反応が進行することで硬化が進む。
【0027】
そこで、本発明者は、ホットメルト接着剤を構成する各種の化合物、組成物等を種々検討した結果、結晶組織を含みつつ、一部に無定形分子の領域を含ませ、特定の配合成分を選択すること等により、十分な立ち上がり強度と十分な長さの貼り合わせ可能時間とを両立させ得ることを見出した。更に、接着剤を構成するプレポリマー等に反応性基を含ませることで、主として接着剤が固化した後に架橋反応を進行させ、接着剤の最終強度を十分に向上させ得ることを見出した。つまり、ホットメルト接着剤を構成する材料に結晶性の化合物を含ませることで貼り合わせ可能時間を調整でき、例えば、ポリエーテルのエーテル結合等のような無定形分子に相当する領域を一部に含ませることで柔軟性を確保し、かつ、例えば、末端に反応性基を有するプレポリマー等を含有させることで接着剤を塗布した後から主として始まる架橋反応を時間の経過と共に進行させ、最終強度を十分に向上させ得ることを見出した。
【0028】
すなわち、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A)(以下、成分(A)と称する。)を含んで構成され、成分(A)は、水酸基末端ウレタンプレポリマー(a-1)(以下、成分(a-1)と称する。)と、イソシアネートシラン(a-2)(以下、成分(a-2)と称する。)との反応物である。また、成分(a-1)は、ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(i)(以下、成分(i)と称する。)と、少なくとも結晶性脂肪族ポリエステルポリオールを含有するポリオール(ii)(以下、成分(ii)と称する。また、結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)を成分(ii-1)と称する。)との反応物である。
【0029】
また、成分(ii)は、成分(ii-1)に加え、若しくは成分(ii-1)の一部に代えて、室温で固体であり、水酸基を有するアルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体(ii-2)(以下、成分(ii-2)と称する。)及び/又はポリエーテルポリオール(ii-3)(以下、成分(ii-3)と称する。)を更に含有することもできる。更に、成分(a-1)が、成分(i)及び成分(ii)に更にアルコキシシリル基とアミノ基若しくはメルカプト基とを有する化合物(iii)(以下、成分(iii)と称する)を反応させて得られる反応物であってもよい。なお、成分(iii)は、2級アミノシラン(iii-1)(以下、成分(iii-1)と称する。)であってもよい。そして、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、上記成分に加え、シラン系接着付与剤(B)(以下、成分(B)と称する。)、改質樹脂(C)(以下、成分(C)と称する。)、アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体(D)(以下、成分(D)と称する。)、アミン系化合物、2価の錫化合物、及びフッ素化ポリマーからなる群から少なくとも1つ選択される触媒(架橋触媒)(E)(以下、成分(E)と称する。)、及び/又はメタクリル酸メチル系重合体骨格を有するアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(F)(以下、成分(F)と称する。)を更に含有してもよい。
【0030】
更に、本発明に係るホットメルト接着剤は、光硬化型の接着剤として構成してもよい。光硬化型の接着剤は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、及び/又は成分(F)に、光塩基発生剤及び/又は光アミノシラン発生剤を添加して構成できる。
【0031】
<湿気硬化型ホットメルト接着剤の詳細>
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、成分(i)と成分(ii)とを反応させて成分(a-1)を調製し、得られた成分(a-1)と成分(a-2)とを反応させて調製される成分(A)を含有して調製できる。また、成分(A)に、成分(a-1)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、成分(F)、及び/又はその他の添加剤を添加して本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤を調製することもできる。そして、本発明に係るホットメルト接着剤は室温で固体状であり、加熱溶融させた状態で被着体に塗布される。以下、各構成要素を含めて詳細に説明する。なお、以下の説明において、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤を、「反応性ホットメルト接着剤」若しくは「一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤」と称する場合がある。
【0032】
<(A)アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー>
本発明に係るアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A)は、アルコキシシリル基を有し、ポリエーテル(以下、「セグメントB」と称する場合がある。)及び結晶性脂肪族ポリエステルを必須とする重合体(以下、「セグメントA」と称する場合がある。)をウレタン結合で連結したポリブロックポリマー(以下、「シリル化ブロックポリエーテル[SBPE]」と称する場合がある。)である。このウレタン結合の連結は、上記セグメント(セグメントA及びセグメントB)の末端水酸基と連結剤(ジイソシアネート化合物)との反応で生じる下記一般式(I)の結合基による連結である。
【0033】
-OC(=O)NH-R-NHC(=O)O- (I)
【0034】
式(I)中、Rは、炭素原子数が1~30の2価のジイソシアネートから二個のイソシアネート基を除去した後の残基を表す。
【0035】
セグメントBは常温で液体のポリエーテル(ソフトセグメント)が好ましく、セグメントAは(ii-1)常温で固体の結晶性脂肪族ポリエステル(ハードセグメント)の主鎖であることが好ましい。ソフトセグメントBにハードセグメントAが結合する構造により強靭性と柔軟性とを有する重合体を構成できる。
【0036】
また、接着性、強靭性、及び粘度等の物性調整の観点から、(ii-2)水酸基を有するメタクリル酸メチル系重合体の主鎖、及び/又は(ii-3)ポリエーテルポリオールの主鎖をセグメントBに結合させた化合物を更に含有していてもよい。
【0037】
結晶性脂肪族ポリエステルを必須のセグメントにすることにより、ハードセグメント(常温で固体の結晶部分)とソフトセグメント(常温で液体のポリエーテル)とを含んで構成されるブロックポリマーが形成され、結晶部分と非結晶部分との両セグメント骨格に基づき、塗布後に十分な貼り合せ可能時間を確保でき、かつ、貼り合せ後は瞬間的な接着力を発現させることができる。また、ハードセグメントの間にソフトセグメントを配置することにより、強靭性と柔軟性とを併せて有し、優れた初期接着力を発現させることができる。なお、結晶性脂肪族ポリエステルとポリエーテルとは相溶性が低いものの、ブロック構造にすることにより上記の各特性を発現させることができる。ここで、アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A)は、セグメントAの末端に下記一般式(II)の「ウレタン結合で連結したアルコキシシリル基」を有する。
【0038】
-OC(=O)NH-R-Si(R(OR3-x (II)
【0039】
一般式(II)中、Rは、炭素原子数が3~10の二価のアルキレン基であり、R及びRは、各々独立して炭素原子数が1~6のアルキル基若しくは炭素原子数が6~8のアリール基であり、xは、0、1、又は2の値である。なお、反応性が良好である観点からxは0が好ましく、Rは、炭素原子数が1~2のアルキル基が好ましく、炭素原子数が1のアルキル基が更に好ましい。Rは、炭素原子数が3の二価のアルキレン基が好ましい。
【0040】
<(a-1)水酸基末端ウレタンプレポリマー>
本発明に係る(a-1)水酸基末端ウレタンプレポリマーは、従来公知の方法によって調製できる。例えば、所定のポリエーテル骨格のポリウレタンプレポリマー(成分(i))を、所定のポリオール成分(成分(ii))に反応させることによって調製できる。
【0041】
[(i)ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー]
本発明に係る(i)ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、ジイソシアネートとポリエーテルポリオールとを、ジイソシアネートのイソシアネート基とポリエーテルポリオールの水酸基とのモル比(以下、イソシアネート基/水酸基モル比という)が1を超えるモル比にした状態、すなわち、イソシアネート基を水酸基に対して過剰の量にして反応させて得られる。ここで、イソシアネート基/水酸基モル比は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、1.9以上が更に好ましく、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.1以下が更に好ましい。イソシアネート基/水酸基モル比が係る範囲であれば、良好な塗工性が得られる。
【0042】
また、(i)ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基に対して不十分なモル比のイソシアネート基を有するジイソシアネート(例えば、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2,4-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI))を用い、ポリエーテルポリオール若しくはこれらの一部を変性させ、反応終了後、ウレタン基を有するポリオールに過剰のジイソシアネートを反応させて得ることもできる。
【0043】
また、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートとは、5重量%までの量の、例えば、脂肪族ジイソシアネートのトリマー(例えば、ヘキサメチレン-ジイソシアネート等)の存在下で反応させてもよく、又はプレポリマー化反応が終了した後でこの種のトリマーを添加してもよい。
【0044】
(ジイソシアネート)
本発明で用いるジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンイソシアネート等の脂肪族若しくは脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、溶融させて用いるホットメルト接着剤に用いる観点から、加熱時の蒸気圧が低いジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0045】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等が挙げられる。これらポリオールは、限定されないが、数平均分子量は500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上が更に好ましく、30,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましく、15,000以下が更に好ましい。また、ポリエーテルポリオールはジオールであることが好ましい。
【0046】
また、ポリエーテルポリオールとして、2種以上のポリエーテルポリオールを共重合した化合物を用いてもよく、例えば、ポリオキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合ジオールが挙げられる。係るジオールは、末端基が1級水酸基で、イソシアネート基との反応性が良いことから好ましい。ポリオキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合ジオールは、エチレンオキサイドのコンテントが5重量%以上であることが好ましく、90重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、20重量%以下が更に好ましい。
【0047】
[(ii)ポリオール成分]
本発明に係る(a-1)水酸基末端ウレタンプレポリマーは、(ii)ポリオール成分と(i)ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとを反応させて得られる。本発明において用いることができるポリオールとしては、例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール等、又はこれらの混合物若しくは共重合物が挙げられる。そして、(ii)ポリオール成分は、本発明の必須成分として(ii-1)結晶性脂肪族ポリエステルポリオールを含有する。なお、成分(ii)は、成分(ii-2)や成分(ii-3)を含んでいてもよい。
【0048】
成分(a-1)は、成分(ii)と成分(i)とを、成分(ii)の水酸基と成分(i)のイソシアネート基とのモル比(以下、水酸基/イソシアネート基モル比という)が1を超えるモル比にした状態、すなわち、水酸基をイソシアネート基に対して過剰の量にして反応させて得られる。良好な塗工性が得られる観点から、水酸基/イソシアネート基モル比は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、1.9以上が更に好ましく、接着剤に強靭性を付与して接着強度を向上させる観点から、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.1以下が更に好ましい。
【0049】
(ポリエステルポリオール)
(ii)ポリオール成分として用いるポリエステル系ポリオール(以下、単に「ポリエステルポリオール」と称する場合がある。)は、1個よりも多くのOH基(好ましくは、2個の末端OH基)を有するポリエステルを意味する。
【0050】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(ii)ポリオール成分の中に、少なくとも2の官能価を有すると共に室温で固体状(好ましくは、少なくとも部分的に結晶性の固体状)である少なくとも1種のポリエステルポリオールを含有する。
【0051】
更に、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(ii)ポリオール成分の中に、少なくとも2の官能価を有すると共に少なくとも部分的に結晶性である1種若しくは複数種のポリエステルポリオール、少なくとも2の官能価を有する1種若しくは複数種の芳香族ポリエステルポリオール、脂環式ポリエステルポリオール、少なくとも2の官能価を有すると共に常温で液状である1種若しくは複数種のポリエステルポリオール、及び/又は少なくとも2の官能価を有する1種若しくは複数種のポリエーテルポリオールを含有していてもよい。
【0052】
ここで、「少なくとも部分的に結晶性」の意義について説明する。「少なくとも部分的に結晶性」であるポリエステルポリオールとは、当該ポリエステルポリオールが完全には結晶性ではなく、部分的若しくは付加的に一定の非晶質部を含有することを意味する。このようなポリエステルポリオールは結晶性の融点(Tm)とガラス転移温度(以下、「Tg」と称する場合がある。)とを有する。当該融点は、結晶性の部分が溶融する温度を示す。融点は、例えば、DSC測定による示差熱分析によって、主要な吸熱ピーク(結晶溶融ピーク)として決定できる。DSC測定(第2の加熱過程における加熱と冷却の速度は10K/分とする)によれば、少なくとも部分的に結晶性のポリエステルポリオールの融点は、約35℃~約120℃である。そして、少なくとも部分的に結晶性のポリエステルポリオールのガラス転移温度は一般に、例えば、室温よりもかなり低い。部分的に結晶性の適当なポリエステルポリオール(以下、「結晶性脂肪族ポリエステルポリオール」と称する。)は当業者には公知である。なお、ポリエステルポリオールは、ジイソシアネートで連結されたポリエステルポリオールであってもよい。
【0053】
((ii-1)結晶性脂肪族ポリエステルポリオール)
(ii-1)結晶性脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有する化合物と多塩基酸とを反応させた化合物を用いることができる。また、2官能性のスターター(starter)分子、例えば、1,6-ヘキサンジオール等に基づくポリカプロラクトン誘導体を用いることもできる。
【0054】
具体的に、水酸基を2個以上(好ましくは2~3個、より好ましくは2個)有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の炭素原子数が2~16個の直鎖脂肪族ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の脂肪族トリオールが挙げられる。これらの中でも結晶性を高めることができる観点から、直鎖脂肪族ジオールの炭素原子数は4~14個が好ましく、6~12個がより好ましい。これらの化合物は単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0055】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸等の炭素原子数が2~16個の直鎖脂肪族ジカルボン酸を用いることができる。これらの中でも結晶性を高めることができる観点から、直鎖脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は6~14個が好ましく、8~12個がより好ましい。これらの多塩基酸は単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0056】
なお、結晶性脂肪族ポリエステルポリオールとしては、具体的には、下記一般式(III)で示される長鎖脂肪族ポリエステルポリオールが好ましい。
【0057】
【化1】
【0058】
一般式(III)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、かつ、R及びRが有する炭素原子数の合計は12以上である。また、nは3~40を示す。
【0059】
ここで、一般式(III)中のRとしては、炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基が挙げられ、RとRとが有する炭素原子数の合計が12以上になる範囲で適宜選択することができる。そして、Rとしては、炭素数が4以上の偶数である直鎖のアルキレン基であることが好ましい。
【0060】
また、一般式(III)中のRは、Rとは独立して炭素数が偶数である直鎖のアルキレン基が挙げられ、RとRとが有する炭素原子数の合計が12以上になる範囲で適宜選択できる。そして、Rとしては、炭素原子数が10以上の偶数である直鎖のアルキレン基であることが好ましい。
【0061】
及びRが、それぞれ上記範囲内の炭素原子数を有する直鎖のアルキレン基である長鎖脂肪族ポリエステルポリオールを用いることにより、得られるウレタンプレポリマーの結晶性を高めることができ、優れた初期接着強度と常態接着強度とを有する湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる。
【0062】
また、一般式(III)中のnは3~40であり、9~25の範囲内であることが好ましく、9~15の範囲内がより好ましい。係る範囲内のnを有する長鎖脂肪族ポリエステルポリオールを用いることにより、適度な溶融粘度を有すると共に塗装作業性に優れた湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる。
【0063】
具体的に、結晶性脂肪族ポリエステルポリオールとしては、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリヘキサメチレンドデカネート、ポリドデカメチレンデカネート等が挙げられ、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリヘキサメチレンドデカネート、ポリドデカメチレンデカネートが好ましい。
【0064】
ここで、結晶性脂肪族ポリエステルポリオールを用いた溶融メルト成分を含む組成物を用いた後、このメルト成分の結晶化によって十分な初期強度が得られるまでの時間を短くする観点から、結晶性脂肪族ポリエステルポリオールの結晶化温度は、結晶性脂肪族ポリエステルポリオールの融点より30℃以下、低い温度であることが好ましい。これにより、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いて被着体を互いに接着した場合、接着剤の初期強度が十分な強度を発揮し、被着体同士が互いにずれることがなくなるまで一方の被着体を他方の被着体に固定することを要さないか、若しくは短時間の固定のみで十分になる。これは、特に垂直接着の場合、例えば、自動車又は交通機関のフロントガラスや窓の接着をする場合に非常に好都合である。また、基材の反発(剥がれようとする力)に対する高い耐性を有し、短時間で固定できるので、合板、MDF(ミディアムデンシティファイバーボード)、パーチクルボード等の基材と、表面に装飾的な色や模様が施された化粧シート若しくはフィルム、化粧紙、突板、金属箔等とを貼り合わせて得られる化粧造作部材に用いることができる。
【0065】
結晶性脂肪族ポリエステルポリオールは、数平均分子量が1,500以上であることが好ましく、2,500以上がより好ましく、3,500以上が更に好ましく、10,000以下が好ましく、7,000以下がより好ましく、6,000以下が更に好ましい。結晶性脂肪族ポリエステルポリオールとして、ポリカプロラクトンポリオールを用いる場合には、数平均分子量が20,000以上200,000以下の範囲であることが好ましい。また、結晶性脂肪族ポリエステルポリオールの融点は、35℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましく、55℃以上が更に好ましく、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
【0066】
(芳香族ポリエステルポリオール)
芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば、芳香族ポリカルボン酸と低分子量の脂肪族ポリオールとの反応物を用いることができる。
【0067】
芳香族ポリカルボン酸としては、フタル酸(例えば、オルトフタル酸、無水フタル酸)、イソフタル酸、テレフタル酸を用いることができる。これらの芳香族ポリカルボン酸は単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0068】
芳香族ポリカルボン酸には、必要に応じ、その他の多塩基酸を併用することができる。その場合における芳香族ポリカルボン酸の含有量としては、全ての多塩基酸中60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0069】
その他の多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。これらの多塩基酸は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、これらの多塩基酸の中では、アジピン酸、セバシン酸が好ましい。
【0070】
低分子量の脂肪族ポリオールとしては、例えば、炭素原子数が2~16個の直鎖脂肪族ジオールが挙げられ、直鎖脂肪族ジオールの中では、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましく、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
【0071】
また、低分子量の脂肪族ポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチルプロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等の分岐鎖脂肪族ジオールも挙げられ、分岐鎖脂肪族ジオールの中では、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールが好ましく、ネオペンチルグリコールがより好ましい。
【0072】
更に、低分子量の脂肪族ポリオールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のエーテル結合を有する低分子量の脂肪族ポリオールも挙げられ、これらの中では、ジエチレングリコールが好ましい。そして、脂肪族ポリオールとしては、ビスフェノールAやビスフェノールF等に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、γ-ブチロラクトンやε-カプロラクトン等を開環付加反応させて得られる芳香族ポリオールを用いることもでき、これらの中では、ビスフェノールA、エチレンオキシドを開環付加反応させて得られる芳香族ポリオールが好ましい。
【0073】
これらの低分子量の脂肪族ポリオールは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、アモルファス性を高めることができる観点から、ネオペンチルグリコール、及びジエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0074】
ここで、芳香族ポリエステルポリオールの数平均分子量としては、900以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、5,000以下が好ましく、3,000以下がより好ましい。
【0075】
なお、芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば、2,000以上5,000以下の数平均分子量を有し、かつ、30℃以上のガラス転移温度を有する芳香族ポリエステルポリオール(以下、「常温固体の芳香族ポリエステルポリオール」と称する。)と、例えば、400以上3,500以下の数平均分子量を有し、かつ、20℃以下のガラス転移温度を有する芳香族ポリエステルポリオール(以下、「常温液体の芳香族ポリエステルポリオール」と称する。)とが挙げられる。
【0076】
(常温固体の芳香族ポリエステルポリオール)
常温固体の芳香族ポリエステルポリオールは、例えば、芳香族ポリカルボン酸と低分子量の脂肪族ポリオールとを縮合反応させる方法によって製造できる。
【0077】
常温固体の芳香族ポリエステルポリオールとしては、低分子量の脂肪族ポリオールとしてのエチレングリコールやネオペンチルグリコールを、芳香族ポリカルボン酸としてのイソフタル酸やテレフタル酸を、ガラス転移温度が30℃以上になるように適宜組み合わせ、公知の方法により縮合反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
【0078】
常温固体の芳香族ポリエステルポリオールは、30℃以上のガラス転移温度を有する化合物であり、なかでも30℃以上70℃以下の範囲内のガラス転移温度を有することがより好ましい。係る範囲内のガラス転移温度を有する常温固体の芳香族ポリエステルポリオールを用いることによって、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族系樹脂に対する接着性をより一層向上でき、また、強靭性を付与して立ち上がり強度及び最終強度を向上させ、優れた接着強さを発現する湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる。
【0079】
(常温液体の芳香族ポリエステルポリオール)
常温液体の芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば、エーテル結合を有する低分子量の脂肪族ポリオール、分岐鎖脂肪族ジオール等と、芳香族ポリカルボン酸とを反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオールを用いることができる。
【0080】
常温液体の芳香族ポリエステルポリオールは20℃以下のガラス転移温度を有する。また、常温液体の芳香族ポリエステルポリオールは、-30℃以上20℃以下の範囲内のガラス転移温度を有することが好ましい。この範囲内であれば、更に優れた常態接着強さを発現可能な湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる。
【0081】
(脂環式ポリエステルポリオール)
脂環式ポリエステルポリオールは、例えば、脂環式ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸(又はその酸誘導体)とを用いて、若しくは、脂肪族ポリオールと脂環式ポリカルボン酸(又はその酸誘導体)とを用いて公知の反応方法により製造することができる。なお、係る製造方法は特に限定されない。
【0082】
脂環式ポリオールとしては、例えば、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等や、それらポリオールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加させた付加物も用いることができる。これらは単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0083】
脂肪族ポリオールとしては、例えば、炭素原子数が2~16個の直鎖脂肪族ジオール、ポリアルキレンオキシドオリゴマー、分岐鎖脂肪族ジオール、脂肪族トリオール等が挙げられ、これらの中でも、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましく、ネオペンチルグリコールがより好ましい。
【0084】
脂環式ポリカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキサンジアジペート(CHDA)が好ましい。
【0085】
脂肪族ポリカルボン酸としては、例えば、炭素原子数が2~16の直鎖脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸が好ましく、セバシン酸、ドデカン二酸がより好ましい。これらは単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0086】
なお、脂環式ポリカルボン酸及び脂肪族ポリカルボン酸は、例えば、メチルエステル等の低級アルキルエステル誘導体、酸無水物、酸ハロゲン化物等の対応する酸誘導体等を用いてもよい。
【0087】
脂環式ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は、500以上が好ましく、700以上がより好ましく、5,000以下が好ましく、3,000以下がより好ましく、2,000以下が更に好ましい。脂環式ポリエステルポリオールのMnが係る範囲内であれば、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が適度な溶融粘度になり、塗装作業性(粘度適性)、接着強度に優れ、基材と表面部材(シート、フィルム、金属箔、紙等)とを貼り合わせた後の、基材の複雑な形状部位における表面部材の剥離を防止することができる。
【0088】
(常温で液状の脂肪族ポリエステルポリオール)
常温で液状の脂肪族ポリエステルポリオールとしては、数平均分子量が4,000以上7,000以下であり、かつ、分岐鎖脂肪族基を有する常温で液状の脂肪族ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0089】
常温で液状の脂肪族ポリエステルポリオールは、得られる接着剤の低温雰囲気下における良好な濡れ性と高い初期接着強度との両立を維持する観点から、4,000以上7,000以下の範囲内の数平均分子量を有することが必須である。常温で液状の脂肪族ポリエステルポリオールの数平均分子量が4,000未満の場合、得られる接着剤の低温雰囲気下における基材に対する濡れ性が低下し、かつ、常態接着強度が著しく低下する場合がある。一方、数平均分子量が7,000を超える場合、得られる接着剤からなる硬化物の架橋密度が大きくなることから、耐熱水接着強度が低下する場合がある。
【0090】
また、常温で液状の脂肪族ポリエステルポリオールは、難付着性基材に対する常態接着強度を向上させる観点から、分岐鎖脂肪族基を有することが必須である。
【0091】
分岐鎖脂肪族基としては、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、2-メチル-1,3-プロピレン基、1,2-ジエチル-1,3-プロピレン基、3,2-ジエチル-1,3-プロピレン基、3-メチル-1,5-ペンタン基、2-エチル-2-ブチル-プロピレン基、2-メチル-1,8-オクタン基、2,4-ジエチル-1,5-ペンタン基等の分岐鎖脂肪族ジオール基等が挙げられる。これらの中では、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、3-メチル-1,5-ペンタン基が好ましく、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基がより好ましい。
【0092】
常温で液状の脂肪族ポリエステルポリオールは、分岐鎖脂肪族ジオールとポリカルボン酸とを縮合反応させる方法や、分岐鎖脂肪族ジオールを開始剤としてカプロラクトンやγ-ブチルラクトン等を開環重合する方法等によって製造できる。なかでも、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(なお、両者のうち、ネオペンチルグリコールがより好ましい。)と炭素原子を2~12個有する直鎖脂肪族ジオールと炭素原子を4~10個有する直鎖脂肪族ジカルボン酸とを反応させて得られる脂肪族ポリエステルポリオールを用いることが、低温環境下で良好な濡れ性を有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が得られる観点からより好ましい。
【0093】
常温で液状の脂肪族ポリエステルポリオールを製造する場合には、必要に応じて、上記説明に挙げた化合物を除く低分子量の脂肪族ポリオールや脂肪族ポリカルボン酸を併用することができる。
【0094】
その他の低分子量の脂肪族ポリオールとしては、その他の脂肪族ポリオール等を用いることができる。これらの中では、炭素原子数が2~12個の直鎖脂肪族ジオールを用いることが好ましい。
【0095】
脂肪族ポリカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカメチレンジカルボン酸等を併用することができる。これらのなかでは、炭素原子数が4~10個の直鎖脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。
【0096】
(ポリカーボネートポリオール)
本発明においては、(ii)ポリオール成分に、ポリカーボネートポリオールを含有させてもよい。ポリカーボネートポリオールを用いることで本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤の耐加水分解性、及び耐湿接着性を向上させることができる。
【0097】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、ジオールとを反応させて得られる化合物を用いることができる。
【0098】
炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0099】
ジオールとしては、例えば、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖脂肪族ジオール;ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐鎖脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0100】
ここで、1種類の直鎖脂肪族ジオールのみを有するポリカーボネートポリオールは、常温で固体であり、結晶性を有する。本発明においては、1,6-ヘキサンジオールのみを有するポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0101】
また、少なくとも2種類のジオールを共重合して得られるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、グリコール成分が、3-メチル-1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオール、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールと1,9-ノナンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオール等が挙げられる。これら常温で液体のポリカーボネートポリオールを用いることで、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化被膜の可撓性を向上させることができる。
【0102】
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量としては、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤の接着性をより一層向上できる点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、5,000以下が好ましく、4,000以下がより好ましい。
【0103】
ポリカーボネートポリオールのガラス転移温度(Tg)としては、耐落下衝撃性及び接着性をより一層向上できる観点から、-30~20℃の範囲であることが好ましい。
【0104】
(ガラス転移温度:Tg)
上記各種のポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールは室温において液状(ガラス転移温度Tg<20℃)又は固体状である。そして、室温で固体状のポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールは非晶質(Tg>20℃)であるか、又は少なくとも部分的に結晶性である。
【0105】
[(ii-2)水酸基を有するメタクリル酸メチル系重合体]
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(ii)ポリオール成分として、(ii-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を更に含有することができる。なお、成分(ii-2)は、シリル基を含んでいなくてもよい。成分(ii-2)としての重合体は室温で固体である。成分(ii-2)はアルコキシシリル基を有することが好ましく、例えば、水酸基を有するアルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体であってよい。水酸基を有するアルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体は、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体(例えば、後述の成分(D))に水酸基を導入して合成できる。
【0106】
なお、本発明に係る(A)アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマーは、結晶性ポリエステルによる常温で固体の結晶部分(以下、「PEsセグメント」とも称する。)とポリエーテル(以下、「PEセグメント」とも称する。)とによる常温で液体の非結晶部分により構成された「(結晶セグメント)―(非結晶セグメント)―(結晶セグメント)型」のウレタン結合で連結されたブロックポリマーに、常温で固体の非結晶性のメタクリル酸メチル系共重合体セグメント(以下、「PAcセグメント」とも称する。)を導入することにより得られ、湿気硬化型ホットメルト接着剤に強靭性を付与し、立ち上がり強度を向上させることができる。
【0107】
また、PAcセグメントが更にアルコキシシリル基を含有する場合、アルコキシシリル基の架橋反応により接着性や耐熱性を更に向上させることができる。
【0108】
なお、PAcセグメントを導入することにより、(PEsセグメント)―(PEセグメント)―(PEsセグメント)型、(PAcセグメント)―(PEセグメント)―(PAcセグメント)型、(PEsセグメント)―(PEセグメント)―(PAcセグメント)型のブロックポリマーが得られる。(PEsセグメント)―(PEセグメント)―(PAcセグメント)ブロックを有することで、結晶性ポリエステル、メタクリル酸メチル系共重合体の相溶化剤になり、非相溶の結晶性ポリエステル、メタクリル酸メチル系共重合体を相溶し、接着強度を向上させることができる。
【0109】
アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体には水酸基を1つ導入することが好ましい。アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体が水酸基を1つのみ有することで、ゲル化を抑制できる。ここで、アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体への水酸基の導入は公知の種々の方法を用いることができる。水酸基の導入方法の例として次の方法を挙げることができる。
【0110】
(1)水酸基を有する不飽和化合物を共重合する。
(2)水酸基を有する開始剤や連鎖移動剤を用いて重合する。
(3)水酸基を有するチオール化合物を用いた反応や、水酸基を有するチオール化合物、及びメタロセン化合物を用いて重合する。
なお、(3)の方法は、特許第5222467号に記載の方法が利用できる。
【0111】
水酸基の導入方法としては水酸基を一個導入できる観点からは、水酸基を有するチオール化合物、及びメタロセン化合物を用いて重合する方法が好ましい。水酸基を有するチオール化合物としては、例えば、2-メルカプトエタノール等が挙げられる。
【0112】
成分(ii-2)の水酸基の数(平均値)は、成分(ii-2)の重合体一分子あたり0.3個以上が好ましく、0.5個以上がより好ましく、0.8個以上が更に好ましく、3個以下が好ましく、2個以下がより好ましく、1.5個以下が更に好ましい。また、成分(ii-2)の数平均分子量は、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、3,000以上が更に好ましく、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、15,000以下が更に好ましい。
【0113】
(各セグメントの重量比)
成分(ii)において、PEセグメントとPEsセグメントとPAcセグメントとの重量比は、PEセグメント、PEsセグメント、及びPAcセグメントの合計を100重量部とした場合に、PEセグメントが15重量部以上55重量部以下であることが好ましく、PEsセグメントが15重量部以上50重量部以下であることが好ましく、PAcセグメントが10重量部以上45重量部以下であることが好ましい。
【0114】
(水酸基を有する不飽和化合物の共重合)
なお、水酸基を有する不飽和化合物としては、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。そのような化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等のモノヒドロキシアクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のポリヒドロキシアクリレート等が挙げられる。これらの中では、モノヒドロキシアクリレートが好ましい。また、水酸基を有する不飽和化合物の配合比は、成分(ii-2)の重合体一分子あたりの水酸基に対し、水酸基を有する不飽和化合物の水酸基が平均して0.5個以上3個以下になる比が好ましく、1.1個以上2個以下になる比がより好ましい。
【0115】
((ii-3)ポリエーテルポリオール)
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(ii)ポリオール成分として、(ii-3)ポリエーテルポリオールを更に含有することができる。(ii-3)ポリエーテルポリオールとしては、「(i)ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー」において説明したポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0116】
[(iii)アルコキシシリル基とアミノ基若しくはメルカプト基とを有する化合物]
本発明に係る(a-1)水酸基末端ウレタンプレポリマーは、成分(i)ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを、成分(ii)ポリオール成分に反応させることによって調製される。ここで、成分(i)及び成分(ii)に、活性水素を含む化合物、すなわち、下記一般式(IV)で表される成分(iii)アルコキシシリル基とアミノ基若しくはメルカプト基とを有する化合物を更に追加して反応させて成分(a-1)を調製することもできる。
【0117】
【化2】
【0118】
式(IV)において、X、Y、及びZは同一若しくは異なる直鎖状若しくは分枝鎖状の(C1~C8)アルキル基、環状の(C3~C8)アルキル基又は(C1~C8)アルコキシ基を示し(但し、これらの基の少なくとも1つは(C1~C8)アルコキシ基を示す)、Rは炭素原子数が1~8の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキレン基又は炭素原子数が3~8の環状のアルキレン基を示し、Wは-SH、又は-NH-R’を示す(この場合、R’は水素原子、炭素原子数が1~8の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、炭素原子数が3~8の環状アルキル基、アリール基又は次の一般式(V)で表される基を示す。)。
【0119】
【化3】
【0120】
一般式(V)中、R’’及びR’’’は同一若しくは異なる炭素原子数が1~8の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又は炭素原子数が3~8の環状アルキル基を示す。
【0121】
一般式(IV)で表される化合物(成分(iii))としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-プロピル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチル-ブチル-トリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチル-ブチル-メチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0122】
成分(a-1)の調製において、アルコキシシラン基とアミノ基とを有する一般式(IV)で表される化合物(すなわち、一般式(IV)の残基Wが-NHR’基に相当する化合物)を用いることが好ましい。また、アルコキシシラン基と2級アミノ基とを有する一般式(IV)で表される化合物(iii-1)(すなわち、一般式(IV)の残基Wが-NR’2基(R’はそれぞれ異なってもよい)に相当し、残基R’が好ましくは一般式(V)に相当する化合物)を用いることがより好ましい。これらの化合物は、例えば、特許第3342552号に記載の方法によって調製することができる。
【0123】
(iii)アルコキシシリル基とアミノ基若しくはメルカプト基とを有する化合物としては、例えば、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)アスパラギン酸ジエチルエステル、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)アスパラギン酸ジメチルエステル、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)アスパラギン酸ジ-n-ブチルエステル、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)アスパラギン酸ジメチルエステル、及びN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アスパラギン酸ジエチルエステル等が挙げられる。
【0124】
(環化縮合)
ここで、アルコキシシリル基とアミノ基を有する一般式(IV)で表される化合物としてアスパラギン酸エステルを用いる場合、特許第3342552号に記載の方法に則って比較的高い反応温度を採用すると、環化縮合(cyclocondensation)反応が起こる可能性がある。しかしながら、係る反応の発生は本発明においては全く問題にはならず、反応条件を調製することにより、得られる化合物の粘度を所定の粘度まで低下させることができる場合もある。
【0125】
(成分(i)と成分(iii)との配合比)
本発明においては、一般式(IV)で表される成分(iii)アルコキシシリル基とアミノ基若しくはメルカプト基とを有する化合物と、イソシアネート基含有プレポリマー(すなわち、成分(i))とを、例えば、60℃以上、好ましくは80℃以上、150℃以下、好ましくは130℃以下の温度範囲で反応させる。ここで、成分(i)は、結晶性ポリエステル(以下、「結晶性PEs」と称する場合がある。)及び/又は水酸基含有ポリメタクリル酸メチル系重合体(以下、「水酸基含有PAc」と称する場合がある。)を含有してよく、イソシアネート基を含有する。この場合、成分(iii)と成分(i)との量比(配合比)、すなわち、結晶性PEs及び水酸基含有PAcを含有してなる成分(i)1モルあたり(換言すれば、イソシアネート基1モルあたり)、(iii)アルコキシシリル基とアミノ基若しくはメルカプト基とを有する化合物が0モル以上であることが好ましく、0.3モル以下であることが好ましく、0.2モル以下がより好ましく、0.1モル以下が更に好ましい。
【0126】
(成分(i)、成分(ii)、及び成分(iii)の配合比)
なお、成分(i)と成分(ii)と成分(iii)との量比(配合比)は、成分(i)のイソシアネート基1モルに対し、成分(ii)の水酸基(-OH)と成分(iii)のアミノ基(-NH)若しくはメルカプト基(-SH)との合計のモル比が1.2モル以上4.0モル以下の範囲で調整することが好ましい。
【0127】
((a-1)の合成方法)
(a-1)水酸基末端ウレタンプレポリマーは、例えば、反応温度において液状のポリオールを用いる場合には、ポリイソシアネートに対して過剰のポリオール成分とポリイソシアネートとを混合し、一定のNCO値が得られるまで(通常は30分間~2時間)均一混合物を撹拌することによって得られる。反応温度としては、80℃~150℃(好ましくは100℃~130℃)が選択される。(a-1)水酸基末端ウレタンプレポリマーは、撹拌タンクのカスケード(cascade)、又は所定の混合ユニット、例えば、回転子-固定子原理による高速ミキサー等を利用して連続的に調製することもできる。
【0128】
続いて、本発明においては、(A)アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマーを調製するために、(a-1)水酸基末端ウレタンプレポリマーと(a-2)イソシアネートシランとを反応させる。なお、成分(a-1)と成分(a-2)との量比は、成分(a-1)に含まれる水酸基1モルに対し、成分(a-2)に含まれるイソシアネート基が0.5モル以上1.1モル以下の範囲で調整することが好ましい。
【0129】
<(a-2)イソシアネートシラン>
本発明に係る(a-2)イソシアネートシランとしては、下記一般式(VI)で表されるシラン化合物が挙げられる。成分(a-1)と成分(a-2)とを反応させることで、(a-1)水酸基末端ウレタンプレポリマーの末端にアルコキシシリル基が導入され、アルコキシシリル基の架橋反応により耐熱性が向上する。
【0130】
【化4】
【0131】
一般式(VI)中、Rは、炭素数が3~10の二価のアルキレン基であり、R及びRは、各々独立して炭素数が1~6のアルキル基若しくは炭素数が6~8のアリール基であり、xは、0、1、又は2の値である。なお、反応性が良好である観点からxは0が好ましく、Rは、炭素数が1~2のアルキル基が好ましく、炭素数が1のアルキル基が更に好ましい。Rは、炭素数が3の二価のアルキレン基が好ましい。
【0132】
(a-2)イソシアネートシランとしては、例えば、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトメチルプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトメチルプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルジメチルメトキシシラン、及び3-イソシアナトメチルプロピルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。なお、反応性が良好である観点から、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0133】
(a-1)水酸基末端ウレタンプレポリマーと(a-2)イソシアネートシランとを反応させて得られる本発明に係る(A)アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマーは、結晶性ポリエステルによる常温で固体の結晶部分とポリエーテルによる常温で液体の非結晶部分とを含んで構成される「(結晶セグメント)―(非結晶セグメント)―(結晶セグメント)型」のブロックポリマーである。結晶部分と非結晶部分との両セグメント骨格に基づき、塗布後に十分な貼り合せ可能時間を確保でき、かつ、貼り合せ後は瞬間的な接着力を発現する。ブロックポリマーの中央部分に非結晶セグメントが配置することにより、強靭性と柔軟性とを併せて有し、優れた初期接着力が発現する。なお、結晶性ポリエステルとポリエーテルとは相溶性が低いものの、ブロック構造にすることにより上記の各特性が発現する。
【0134】
(a-1)水酸基末端ウレタンプレポリマーと(a-2)イソシアネートシランとの配合比は、水酸基1モルに対し、イソシアネート基が0.3モル以上であることが好ましく、0.5モル以上であることがより好ましく、0.7モル以上であることが更に好ましい。なお、成分(a-2)を成分(a-1)に対して過剰に添加してもよい。この場合、過剰の成分(a-2)は、接着付与剤として機能する。
【0135】
ここで、イソシアネート基が1モル以下の場合は未反応の水酸基にモノイソシアネートを反応させて不活化することが好ましい。モノイソシアネートとしては、C6~C18のアルキル基、C6~C18のアリール基に結合したイソシアネート基を有するモノイソシアネートが挙げられ、例えば、ステアリルイソシアネート、フェニルイソシアネート、及びナフチルイソシアネート等が好ましい。
【0136】
<(B)シラン系接着付与剤>
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(B)シラン系接着付与剤を更に含有できる。(B)シラン系接着付与剤は、湿気硬化により、接着付与剤効果を発現し、立ち上がり接着強度以外の最終強度、耐水接着性、及び耐熱接着性を向上させることができる。
【0137】
ここで、(B)シラン系接着付与剤のアルコキシシリル基は、メトキシ基、エトキシ基等であることが加水分解速度の観点から好ましい。そして、シリル基のアルコキシ基の個数は、2個以上が好ましく、3個がより好ましい。また、(B)シラン系接着付与剤の官能基は、アミノ基、エポキシ基等が接着性の観点から好ましく、アミノ基がより好ましい。(B)シラン系接着付与剤としては、アミノシラン、ケチミン系シラン、エポキシシラン、アクリルシラン系シラン、ビニルシラン系カップリング剤、メルカプトシラン、尿素シラン系カップリング剤、イソシアヌレートシラン、イソシアネートシラン等を用いることができる。
【0138】
アミノシランとしては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のモノ-シリルアミノシラン、ビス-(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-[2-(ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びアミノエチル-アミノプロピルトリメトキシシラン等のビス-シリルアミノシランが挙げられる。ケチミン系シランとしては、例えば、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン等が挙げられる。エポキシシランとしては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。アクリルシラン系シランとしては、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。ビニルシラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリ(β-メトキシシラン)等が挙げられる。メルカプトシランとしては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。尿素シラン系カップリング剤としては、例えば、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。イソシアヌレートシランとしては、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。イソシアネートシランとしては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0139】
更に、(B)シラン系接着付与剤としては、上記のアミノシランとエポキシシランとの反応物、アミノシランとイソシアネートシランとの反応物、アミノシランと(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランとの反応物、アミノシランとエポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等)との反応物、アミノシランとポリイソシアネートとの反応物、アミノシランとポリアクリレートとの反応物等のアミノシラン反応物;上記シラン類を部分的に縮合した縮合体(好ましくは上記のアミノシラン、イソシアネートシラン、アミノシラン反応物、及び反応物の混合物を部分的に縮合したアミノシラン縮合体);これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等も挙げられる。
【0140】
(B)シラン系接着付与剤の分子量としては、分子量が320以上である化合物がホットメルトの溶融時に揮散しにくいため好ましく、400以上がより好ましく、450以上が更に好ましい。接着性及びホットメルト接着剤の溶融時に揮散しにくいことより、ビス-シリルアミノシラン、イソシアヌレートシラン、アミノシラン反応物、アミノシラン縮合体等のシリル基を2個以上有するシラン系接着付与剤がより好ましく、アミノシラン反応物、アミノシラン縮合体が更に好ましく、アミノシラン反応物が最も好ましい。なお、アミノシラン反応物は混合工程時に反応材料を別途添加して反応させてもよい。
【0141】
(B)シラン系接着付与剤は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。(B)シラン系接着付与剤の使用量は、成分(A)100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、1質量部以上が特に好ましく、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が特に好ましい。0.01質量部未満であると、接着性付与効果や硬化触媒としての効果が不十分であり、一方、20質量部を超えると、添加量に応じた触媒としての作用が顕著でなく経済的に好ましくない。
【0142】
<(C)改質樹脂>
(C)改質樹脂は、その配合系の貼り合わせ可能時間の制御や溶融粘度の低減のために混合され、物性を変性・調整する機能を有する。(C)改質樹脂は、貼り合せ可能時間、及び立ち上がり接着強度を向上させることができる。
【0143】
なお、本発明に係る成分(C)は、成分(C)が添加される対象の樹脂を構成するセグメントの種類によって異なる機能を発揮する。すなわち、成分(C)は、主としてハードセグメントで構成される樹脂に添加されると改質樹脂として物性調整の機能を発揮し、主としてソフトセグメントで構成される樹脂に添加されると粘着付与樹脂としての機能を発揮する。本発明に係る成分(A)の骨格は主として結晶性ポリエステル等のハードセグメントで構成されているので、下記に例示する樹脂は改質樹脂として作用する。
【0144】
(C)改質樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂及びこれに水素添加した水素添加テルペン樹脂、テルペン類とフェノール類とを共重合させたテルペン-フェノール樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、キシレン-フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、スチレン系ブロック共重合体、スチレン系ブロック共重合体の水素添加物、石油樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂等)、水添石油樹脂、DCPD樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0145】
スチレン系ブロック共重合体及びその水素添加物の例としては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレ-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)等が挙げられる。
【0146】
(C)改質樹脂としては、架橋性ケイ素基を有する有機重合体との相溶性がよく、接着剤の加熱安定性がよい観点からテルペンフェノール樹脂や芳香族系石油樹脂が好ましい。芳香族系石油樹脂としては、芳香族系スチレン樹脂、脂肪族-芳香族共重合体系スチレン樹脂が好ましく、テルペンフェノール樹脂、脂肪族-芳香族共重合体系スチレン樹脂がより好ましい。また、VOC及びフォギングの観点からは、脂肪族-芳香族共重合体系スチレン樹脂を用いることが好ましい。
【0147】
(C)改質樹脂の成分(A)100質量部に対する添加量は、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上であることが特に好ましく、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下が特に好ましい。
【0148】
<(D)アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体>
(D)アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体は、メタクリル酸メチルを必須モノマーとした(メタ)アクリルエステル重合体である。(D)アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体は、湿気硬化型ホットメルト接着剤に強靭性を付与し、立ち上がり強度、及び最終強度を向上させることができる。また、アルコキシシリル基の架橋反応により湿気硬化型ホットメルト接着剤の耐熱性を向上させることができる。
【0149】
成分(D)であるアルコキシシリル基を有しガラス転移温度がマイナス20℃~120℃である(メタ)アクリルエステル系重合体のアルコキシシリル基は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を有し、シラノール縮合反応により架橋することができる基である。アルコキシシリル基としては、下記一般式(VII)で表される基が挙げられる。
【0150】
【化5】
【0151】
一般式(VII)中、R10は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20の置換アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基を示し、R10が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xはアルコキシ基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2、又は3を示す。一般式(VII)のアルコキシシリル基においてaが2又は3である場合が好ましい。aが3の場合、aが2の場合よりも硬化速度が大きくなる。
【0152】
10の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシメチル基等の置換アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。これらの中ではメチル基が好ましく、硬化速度が大きくなる観点ではα炭素が極性基で置換された置換アルキル基が好ましい。
【0153】
Xで示されるアルコキシ基としては、特に限定されず、従来公知のアルコキシ基であればよい。アルコキシ基の中では炭素数の少ない基の方が反応性は高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなる程に反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが、通常、メトキシ基やエトキシ基が用いられる。一般式(VII)で示されるアルコキシシリル基の場合、硬化性を考慮するとaは2以上が好ましい。
【0154】
具体的に、アルコキシシリル基としては、反応性が高い点からトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基が更に好ましい。柔軟性を有する硬化物を得る観点からメチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基が好ましい。
【0155】
また、アルコキシシリル基は単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。アルコキシシリル基は、主鎖若しくは側鎖、又はいずれにも存在していてよい。
【0156】
成分(D)のアルコキシシリル基の数(平均値)は、重合体一分子あたり0.3個以上が好ましく、0.5個以上がより好ましく、1個以上が更に好ましく、5個以下が好ましく、3個以下がより好ましく、2.5個以下が更に好ましい。分子中に含まれるアルコキシシリル基の数が0.3個未満になると硬化性が不充分になり、また多すぎると網目構造があまりに密になることから良好な機械特性を示さなくなる。
【0157】
成分(D)の調製において、(メタ)アクリル酸エステル重合体へのアルコキシシリル基の導入は公知の種々の方法を用いることができる。例えば、アルコキシシリル基の導入方法の例として次の方法を挙げることができる。
【0158】
(1)アルコキシシリル基を有する不飽和化合物を共重合する。
(2)アルコキシシリル基を有する開始剤や連鎖移動剤を用いて重合する。
(3)水酸基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体にエポキシシラン等の当該官能基と反応し得る他の官能基とアルコキシシリル基とを有する化合物を反応させる。
【0159】
これらのアルコキシシリル基の導入方法のうち、アルコキシシリル基を容易に導入できる観点から、(1)アルコキシシリル基を有する不飽和化合物を共重合する方法が好ましい。また、(1)の方法と(2)の方法とを併用する方法も好ましい。例えば、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、金属触媒としてのチタノセンジクライド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(チタノセンジクライドの作用により開始剤として作用し、連鎖移動剤としても作用する。)、及び重合停止剤としてのベンゾキノン溶液を用い、WO2015-088021の合成例4に準じた合成方法を用いることで、アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体としてのトリメトキシシリル基含有(メタ)アクリル系重合体が得られる。
【0160】
(アルコキシシリル基を有する不飽和化合物)
共重合に用いるアルコキシシリル基を有する不飽和化合物としてはアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルやビニルシランが好ましい。係る化合物としては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の3-(メタ)アクリロキシプロピルアルコキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルアルコキシシラン等が挙げられる。これらの中ではアルコキシシリル基を有するアルキル基の炭素数が3以下の置換アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルコキシシリル基を有する不飽和化合物の配合比は、成分(D)の重合体一分子あたりのアルコキシシリル基に対し、アルコキシシリル基を有する不飽和結合のアルコキシシリル基が平均して1.1個以上5個以下、好ましくは1.1個以上3個以下になるようにすることが好ましい。
【0161】
(成分(D)に用いるアルコキシシリル基を有する単量体を除く他の単量体)
本発明に係る(D)成分に用いるアルコキシシリル基を有する単量体を除く他の単量体としては、メタクリル酸メチルを必須のモノマー成分とする、一般式(VIII)で示される繰り返し単位を有するメタクリル酸メチル系ランダム共重合体が挙げられる。
【0162】
-CHC(R11)(COOR12)- (VIII)
【0163】
一般式(VIII)中、R11は水素原子若しくはメチル基、R12は置換基を有してもよい炭化水素基を示す。なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、及び/又は、メタクリル酸アルキルエステルを示す。
【0164】
メタクリル酸メチル(MMA)の他の繰り返し単位となる単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の例としては、公知の化合物が挙げられる。例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等を挙げることができる。
【0165】
(i)ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのポリエーテル骨格(つまり、成分(A)の骨格の一部)との相溶性が良い観点から、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の炭素数が8以上のエステル結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。メタクリル酸メチル系重合体を柔軟にする観点からは、アクリル酸n-ブチル(Tg;-55℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg;-70℃)、アクリル酸ラウリル(Tg;-3℃)等のガラス転移温度(Tg)が0℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。なお、この段落におけるガラス転移温度はホモポリマーのガラス転移温度である。
【0166】
(メタ)アクリル酸エステルのアルキル基等の炭化水素基は水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、エポキシ基等の置換基を有していてもよい。このような化合物の例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。なお、ポリスチレン鎖を有するアクリル酸エステル等の高分子鎖を有する不飽和化合物(マクロモノマー若しくはマクロマー)を用いることもできる。
【0167】
更に、成分(D)のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体中には、(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位に加えて、これらと共重合性を有する化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合性を有する化合物の例としては、(メタ)アクリル酸等のアクリル酸;(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物、アルキルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;その他アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0168】
(単量体の使用比率)
成分(D)の重合体に用いる単量体の量は、成分(D)の重合体中に50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が最も好ましい。特に、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのようなアルキル基の炭素数2~30の置換基を有しないアクリル酸アルキルエステルを上記の量で用いることが好ましい。また、成分(D)の重合体に用いる単量体としてマクロモノマーを用いてもよい。ただし、マクロモノマーを用いる場合、マクロモノマーの量が成分(D)の重合体中に10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
【0169】
(ガラス転移温度)
成分(D)のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体は-20℃~120℃のガラス転移温度(Tg)を有する。ガラス転移温度は、-20℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましく、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。ガラス転移温度が-20℃未満であると接着直後の接着強度が劣る傾向にある。また、ガラス転移温度が120℃を超えると溶融粘度が高くなり、ホットメルト接着剤の被着体への塗布が困難になる傾向にある。ガラス転移温度は単量体成分の種類や量から下記Fox式を用いて容易に推定することができる。
【0170】
1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・+W/Tg (Fox式)
【0171】
上記Fox式中、Tgは、アクリル系樹脂のガラス転移温度(K)であり、W、W、・・・、Wは、各モノマーの重量分率であり、Tg、Tg、・・・、Tgは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度である。なお、上記Fox式に用いるホモポリマーのガラス転移温度は、文献に記載されている値を用いることができ、例えば、三菱レイヨン株式会社のアクリルエステルカタログ(1997年度版)や北岡協三著、「新高分子文庫7 塗料用合成樹脂入門」、高分子刊行会、p168~p169等に記載されている。
【0172】
成分(D)のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体の分子量は、数平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算分子量)で、3,000以上が好ましく、4,000以上がより好ましく、5,000以上が更に好ましく、200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下が更に好ましい。数平均分子量が3,000未満では、塗布後の初期接着力が低く、200,000を超えると、塗布作業時の粘度が高くなり過ぎ、作業性が低下する。また、成分(D)の重合体は室温では固体であることが好ましい。
【0173】
(成分(D)の重合法)
成分(D)の重合法としては、ラジカル重合方法を用いることができる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等の熱重合開始剤を用いる通常の溶液重合方法や塊状重合方法を用いることができる。また、光重合開始剤を用い、光又は放射線を照射して重合する方法も用いることができる。ラジカル共重合においては、分子量を調節するために、例えば、ラウリルメルカプタンや3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の連鎖移動剤を用いてもよい。また、熱重合開始剤を用いるラジカル重合方法を用いることができ、係る方法で本発明に係る成分(D)の重合体を容易に得ることができる。なお、特開2000-086998公報に記載されているようなリビングラジカル重合法等、他の重合方法を用いてもよい。
【0174】
<(E)架橋触媒>
(E)架橋触媒としては、アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマーの架橋触媒(シラノール触媒)が挙げられ、例えば、チタン酸エステル、4価の有機錫化合物、オクチル酸錫等の2価の有機錫化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、ビスマス化合物、一級・二級アミン系化合物、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジモルホリノジエチルエーテル、N,N-ジメチルドデシルアミン、ビス-(N,N’-ジメチルアミノエチル)エーテル等の三級アミン系化合物、1,3-ジアザビシクロ(5,4,6)ウンデセン-7等のアミジン化合物若しくはそれらのカルボン酸塩、フッ素化ポリマー等が挙げられる。これらの(E)架橋触媒は、単独で、若しくは2種以上を併用して用いることができる。
【0175】
フッ素化ポリマーとしては、例えば、Si-F結合を有する有機重合体が挙げられ、WO2015-088021号公報に記載のフルオロシリル基を有する有機重合体(以下、「フッ素化ポリマー」とも称する)等が挙げられる。フッ素化ポリマーとしては、主鎖又は側鎖の末端にジフルオロメチルシリル基、ジフルオロメトキシシリル基、ジフルオロエトキシシリル基、トリフルオロシリル基等のフルオロシリル基を有する重合体が好ましい。
【0176】
フッ素化ポリマーの主鎖骨格としては、後述する液状高分子化合物において説明する重合体を用いることができ、これらの重合体の中では、ポリオキシアルキレン系重合体、及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系重合体が取り扱い易く、貼り合わせ可能時間を長くする効果が大きいため好ましい。フッ素化ポリマーの数平均分子量は、GPCにおけるポリスチレン換算において3,000以上が好ましく、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、30,000以下が特に好ましい。
【0177】
フッ素化ポリマーを用いる場合は、(A)アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、80質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。
【0178】
また、(E)架橋触媒としては、触媒効果が高く、十分な耐熱強度が得られる観点から、チタン酸エステル、4価の有機錫化合物、2価の有機錫化合物、三級アミン系化合物、アミジン化合物若しくはそれらのカルボン酸塩、フッ素化ポリマーが好ましい。
【0179】
そして、成分(A)や成分(a-1)等のプレポリマー中に存在するポリエステル単位及びアルコキシ末端基の分解に起因する低分子量アルコール(例えば、メタノール又はエタノール)のエステル交換反応が起きにくい観点から(なお、ホットメルト接着剤は、塗布前に加熱オーブン中で溶融されて比較的長時間にわたって(一般的には、少なくとも1日の作業日)、液体状態に維持されるので、工業的な用途にとっては、高温での十分な安定性が必ず要求される。)、2価の有機錫化合物、三級アミン系化合物、フッ素化ポリマーが好ましい。また、フッ素化ポリマーを用いる場合は、アミノシラン、ビス-(N,N’-ジメチルアミノエチル)エーテル等のアミン系化合物と併用すると架橋反応がより促進される。
【0180】
フッ素化ポリマーを除く他の架橋触媒を用いる場合、当該他の架橋触媒の添加量は、(A)アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.2質量部以上が更に好ましく、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下が更に好ましい。
【0181】
<(F)メタクリル酸メチル系重合体骨格を有するアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー>
(F)メタクリル酸メチル系重合体骨格を有するアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマーは、成分(D)と同様にして得られるプレポリマーである。例えば、ポリエーテル骨格の両端にPAcセグメントが結合した構造を有する。成分(F)は、例えば、成分(i)と成分(ii-2)とを反応させて得られる。成分(F)を用いて得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(PAcセグメント)―(PEセグメント)―(PAcセグメント)ブロックを有し、係るブロックは湿気硬化型ホットメルト接着剤に強靭性を付与し、立ち上がり強度、及び最終強度を向上させる。また、アルコキシシリル基により、湿気硬化型ホットメルト接着剤の接着性能が向上し、架橋反応により耐熱性が向上する。なお、PAcセグメントとはポリアクリレート骨格のセグメントを指し、PEセグメントとはポリエーテル骨格のセグメントを指す。
【0182】
成分(F)に用いる成分(i)ポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの調製に用いるポリエーテルポリオールは、その数平均分子量が2,000以上であることが好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上が更に好ましく、30,000以下が好ましく、25,000以下がより好ましく、15,000以下が更に好ましい。
【0183】
<光塩基発生剤>
本発明に係る光塩基発生剤は、光を照射すると成分(A)等の架橋性ケイ素元含有有機重合体の硬化触媒として作用する。光塩基発生剤とは、紫外線、電子線、X線、赤外線、及び可視光線等の活性エネルギー線の作用により塩基を発生する物質であれば特に限定されず、(1)紫外線・可視光・赤外線等の活性エネルギー線の照射により脱炭酸して分解する有機酸と塩基の塩、(2)分子内求核置換反応や転位反応等により分解してアミン類を放出する化合物、若しくは(3)紫外線・可視光・赤外線等のエネルギー線の照射により所定の化学反応を起こして塩基を放出する化合物等の公知の光塩基発生剤を用いることができる。
【0184】
光塩基発生剤としては、公知の様々な光塩基発生剤を用いることができる。例えば、光塩基発生剤としては、活性エネルギー線の作用によりアミン化合物を発生する光潜在性アミン化合物が好ましい。光潜在性アミン化合物としては、活性エネルギー線の作用により第1級アミノ基を有するアミン化合物を発生する光潜在性第1級アミン、活性エネルギー線の作用により第2級アミノ基を有するアミン化合物を発生する光潜在性第2級アミン、及び活性エネルギー線の作用により第3級アミノ基を有するアミン化合物を発生する光潜在性第3級アミンのいずれも使用可能である。これらの中でも、光塩基発生剤としては、発生塩基が高い触媒活性を示す観点から光潜在性第3級アミンがより好ましく、塩基の発生効率が良いこと及び組成物としての貯蔵安定性が良いこと等から、ベンジルアンモニウム塩誘導体、ベンジル置換アミン誘導体、α-アミノケトン誘導体、α-アンモニウムケトン誘導体が好ましく、特に、光が当たっていない時は塩基が発生せず、光が当たると塩基が効率よく発生することから、ベンジルアンモニウム塩誘導体、ベンジル置換アミン誘導体がより好ましい。具体的には、国際公開番号WO2015/008709号に記載の各種の光塩基発生剤を用いることができる。なお、これら光塩基発生剤は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0185】
<光アミノシラン発生剤>
本発明に係る光アミノシラン発生剤としては、光によりアミノ基を生成する架橋性ケイ素基含有化合物を用いることができる。光によりアミノ基を生成する架橋性ケイ素基含有化合物としては、光により、第一級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群から選択される1種以上のアミノ基を生成する架橋性ケイ素元含有化合物であり、光照射により、第一級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群から選択される1種以上のアミノ基と、架橋性ケイ素基とを有するアミノシラン化合物を発生する化合物であればいかなる化合物でも使用可能である。本明細書において、光により、第一級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群から選択される1種以上のアミノ基を生成する架橋性ケイ素基含有化合物を光アミノシラン発生化合物と称する。
【0186】
光照射により発生する、アミノシラン化合物としては、架橋性ケイ素基、及び置換若しくは非置換のアミノ基を有する化合物が用いられる。置換アミノ基の置換基としては、特に限定されず、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。また、架橋性ケイ素基としては、特に限定されず、前記架橋性ケイ素元を挙げることでき、加水分解性基が結合したケイ素含有基が好ましい。この中でも、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことから好ましい。アミノシラン化合物中、加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1~3個の範囲で結合することができ、2個以上が好ましく、特に3個が好ましい。
【0187】
光アミノシラン発生化合物としては特に限定されず、例えば、国際公開番号WO2015/088021号に記載の各種の光アミノシラン発生剤を用いることができる。なお、これら光アミノシラン発生剤は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0188】
<他の添加剤>
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤には必要に応じて他の添加剤を併用することができる。このような添加剤としては、例えば、シリル化ポリマー、液状高分子化合物、充填剤、希釈剤、安定剤、難燃剤、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、防かび剤等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0189】
(シリル化ポリマー)
シリル化ポリマーは、反応性ホットメルト接着剤の貼り合わせ可能時間の制御や溶融粘度を低減させることを目的として反応性ホットメルト接着剤に混合され、反応性ホットメルト接着剤の物性を変性及び/又は調整する機能を有する。シリル化ポリマーは、塗布作業性、及び立ち上がり接着強度を向上させることができる。
【0190】
シリル化ポリマーとしては、シリル化ポリウレタン(SPU)、シリル末端ポリマー(STP)が挙げられ、シリル化ポリウレタンとしては、以下に詳細を述べるシリル化ポリウレタン1(SPU1)、及びシリル化ポリウレタン2(SPU2)が挙げられる。硬化物が強靭になり、反応性が良好である観点からは、シリル化ポリウレタンが好ましく、中でもシリル化ポリウレタン2がより好ましい。また、接着剤の溶融粘度を低下させて塗布作業性を向上させる観点からは、シリル末端ポリマー及びシリル化ポリウレタン1が好ましく、シリル末端ポリマーがより好ましい。
【0191】
また、接着剤の塗布作業性、貼り合わせ可能時間、立ち上がり強度、及び最終強度を向上させる観点からは、結晶性脂肪族ポリエステル骨格及び/又は結晶性ポリカーボネート骨格を有する常温で固体のシリル化ポリウレタンが好ましく、結晶性脂肪族ポリエステル骨格を有するシリル化ポリウレタンがより好ましく、長鎖脂肪族ポリエステル骨格を有するシリル化ポリウレタンが更に好ましい。
【0192】
そして、接着剤の溶融粘度を低減し、硬化被膜の可撓性を向上させる観点からは、ポリオキシアルキレン骨格を有する常温で液状のシリル化ポリマーが好ましく、ポリオキシプロピレン骨格を有するシリル化ポリマーがより好ましく、ポリオキシプロピレン骨格を有するシリル末端ポリエーテルが更に好ましい。ここで、接着剤の溶融粘度の低減効果を大きくする観点から、数平均分子量が1,000以上2,000以下の長鎖アルキルポリエステルが特に好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族系樹脂に対する接着剤の接着性をより一層向上させ、また、強靭性を付与して最終強度を向上させる観点からは、芳香族ポリエステル骨格を有するシリル化ポリウレタンが好ましく、常温で固体の芳香族ポリエステル骨格を有するシリル化ポリウレタンがより好ましい。中でも溶融粘度を低くできる観点から、数平均分子量が1,000以上2,000以下の芳香族ポリエステルが好ましい。
【0193】
具体的に、シリル化ポリマーは、架橋性ケイ素基を有する有機重合体である。架橋性ケイ素基としては、「(D)アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体」の項で説明した一般式(VII)で示される基が挙げられる。また、シリル化ポリマーが架橋性ケイ素基を複数有する場合、架橋性ケイ素基は1種であっても、2種以上を併用してもよい。架橋性ケイ素基は、ポリマーの主鎖若しくは側鎖、又は双方に結合していてもよい。硬化物の引張特性等の硬化物の物性が優れる観点からは、架橋性ケイ素基が分子鎖末端に存在することが好ましい。
【0194】
架橋性ケイ素基は、シリル化ポリマー1分子中に平均して1.0個以上5個以下存在することが好ましく、1.1個以上3個以下存在することがより好ましい。分子中に含まれる架橋性ケイ素基の数が1個未満になると硬化性が不十分になり、一方、多すぎると網目構造があまりに密になるため良好な機械特性を示さなくなる。
【0195】
また、架橋性ケイ素基が分子鎖末端に存在する場合は、分子鎖末端基含有成分と架橋性ケイ素基含有成分との配合比は、分子鎖末端基1モルに対し、架橋性ケイ素基が0.3モル以上であることが好ましく、0.5モル以上であることがより好ましく、0.7モル以上であることが更に好ましい。なお、架橋性ケイ素基含有成分を分子鎖末端基に対して過剰に添加してもよい。この場合、過剰の架橋性ケイ素基含有成分は、接着付与剤として機能する。なお、未反応の水酸基が残る場合は、例えば、「(a-2)イソシアネートシラン」の項で説明したモノイソシアネートを未反応の水酸基に反応させて不活化することが好ましい。
【0196】
〔シリル化ポリウレタン1〕
シリル化ポリウレタン1(SPU1)は、イソシアナートシランとヒドロキシル基を有するポリマーとを反応させることによって調製できる。シリル化ポリウレタン1としては、イソシアナートシランとヒドロキシル基を有するポリマーとしてポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオール若しくはポリオキシアルキレンポリオールとを反応させることによって調製され、ポリエステル骨格を有するシリル化ポリエステルウレタン1(SPEsU1)と、ポリカーボネート骨格を有するシリル化ポリカルボネートウレタン1(SPCU1)と、ポリオキシアルキレン骨格を有するシリル化ポリエーテルウレタン1(SPEU1)とが挙げられる。なお、ヒドロキシル基を有するポリマーは、ジイソシアネートで連結されたヒドロキシル基を有するポリマーであってもよい。
【0197】
〔シリル化ポリウレタン2〕
シリル化ポリウレタン2(SPU2)は、イソシアナート基に対して反応性を有する1個の基を有するシランと、ヒドロキシル基を有するポリマーをポリイソシアナートに反応させて得られる化合物と、イソシアナート基を含むポリウレタンポリマーとを反応させることによって調製できる。シリル化ポリウレタン2としては、イソシアナート基に対して反応性を有する1個の基を有するシランと、イソシアナート基を含むポリウレタンポリマーと、ヒドロキシル基を有するポリマーとしてポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオール若しくはポリオキシアルキレンポリオールとを反応させることによって調製され、ポリエステル骨格を有するシリル化ポリエステルウレタン2(SPEsU2)と、ポリカーボネート骨格を有するシリル化ポリカーボネートウレタン2(SPCU2)と、ポリオキシアルキレン骨格を有するシリル化ポリエーテルウレタン2(SPEU2)とが挙げられる。
【0198】
ここで、ヒドロキシル基を有するポリマーは、「ポリエステルポリオール」の項で説明したポリエステルポリオール、「ポリカーボネートポリオール」の項で説明したポリカーボネートポリオール、及びポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。
【0199】
〔シリル末端ポリマー〕
シリル末端ポリマー(STP)は、末端に二重結合を有するポリマーのヒドロシリル化反応等によって調製できる。末端に二重結合を有するポリマーは、ポリ(メタ)アクリレートポリマー若しくはポリエーテルポリマーであり、ポリオキシアルキレン骨格を有するシリル末端ポリエーテル(STPE)と、ポリアクリレート骨格を有するシリル末端ポリアクリレート(STPA)とが挙げられる。
【0200】
[シリル末端ポリエーテル]
シリル末端ポリエーテルは、例えば、不飽和基含有ポリオキシアルキレン系重合体に架橋性ケイ素基を有するヒドロシランや架橋性ケイ素基を有するメルカプト化合物を反応させてヒドロシリル化やメルカプト化することで得られる。この合成法は、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(シリル末端ポリエーテル)を得る方法であり、例えば、特開2006-077036号公報記載のアリル末端ポリオキシアルキレンポリマーのヒドロシリル化反応による調製を合成例として挙げることができる。不飽和基含有ポリオキシアルキレン系重合体は、水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を有する活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させて調製できる。
【0201】
[シリル末端ポリアクリレート]
シリル末端ポリアクリレートは、少なくとも1種のアクリレート成分及び少なくとも1種のシリル成分を含んで構成される。シリル末端ポリアクリレートは、例えば、ヒドロシリル化によるアルケニル末端アクリレートの反応により得られる。また、アルケニル末端アクリレートは、原子移動ラジカル重合(ATRP)を用いた製造方法、又はアルキル末端アクリレートとシリル基を含むモノマーとの反応を利用した製造方法により得られる。そして、アルケニル末端アクリレートは、原子移動ラジカル重合(ATRP)による製造方法により得られる。シリル末端ポリアクリレートとしては、常温で液状であり、柔軟性を有するブチルアクリレートを主成分とするシリル末端ポリアクリレートが好ましい。
【0202】
〔ポリオキシアルキレン系重合体〕
ポリオキシアルキレンポリオール及び不飽和基含有ポリオキシアルキレン系重合体の主骨格としては、下記一般式(IX)で示される繰り返し単位を有するポリオキシアルキレン系重合体が好ましい。
【0203】
-R13-O- (IX)
【0204】
ここで、一般式(IX)において、R13は炭素数が1~14の直鎖状又は分岐状アルキレン基を示し、炭素数は2~4であることが好ましい。
【0205】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖は、1種類だけの繰り返し単位から構成されていても、2種類以上の繰り返し単位から構成されていてもよい。特に、本発明においては、非晶質かつ比較的低粘度であるポリオキシプロピレン系重合体であることが好ましい。
【0206】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、例えば、KOH等のアルカリ触媒による重合法、複合金属シアン化物錯体触媒(例えば、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒)による重合法等を挙げることがきる。これらの中では、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキシドを反応させる重合法が、分子量分布が狭い重合体を合成できることから好ましい。
【0207】
複合金属シアン化物錯体触媒としては、Zn[Co(CN)(亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体)等を挙げることができる。また、これらにアルコール及び/又はエーテルが有機配位子として配位した触媒を用いてもよい。
【0208】
開始剤としては、少なくとも2個の活性水素基を有する化合物が好ましい。活性水素含有化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、数平均分子量が500以上20,000以下の直鎖及び/又は分岐ポリエーテル化合物等が挙げられる。
【0209】
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド等が挙げられる。
【0210】
ポリオキシアルキレンポリオールとして特に好ましくは、ポリオキシエチレンポリオール及びポリオキシプロピレンポリオールが挙げられ、中でも、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、及びポリオキシプロピレントリオールが挙げられる。
【0211】
更にこれらの中でも、0.02mEq/g未満の不飽和度、及び1,000g/mol以上30,000g/mol以下の範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジオール又はポリオキシアルキレントリオール、並びに400g/mol以上8,000g/mol以下の範囲の分子量のポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレンジオール、及びポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
【0212】
ここで、いわゆる、エチレンオキシドで末端化されたポリオキシプロピレンポリオール(つまり、「EO末端キャップされた」化合物;「ethylene oxide end-capped」された化合物)が特に好ましい。EO末端キャップポリオキシプロピレンポリオールは、特殊なポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールであり、例えば、ポリオキシプロピル化反応の完了後の純粋なポリオキシプロピレンポリオール、特に、ポリオキシプロピレンジオール及びトリオールをエチレンオキシドを用いて追加的にアルコキシル化することによって調製され、その結果、1級ヒドロキシル基を有する。なお、ポリプロピレングリコール(PPG)は2級ヒドロキシ基を有し、柔軟性を有するものの、反応性が1級ヒドロキシル基を有する化合物より劣る。そこで、本発明においては、1級ヒドロキシル基を有するEO末端キャップされた化合物を用いることで、反応性を向上させることが好ましい。この場合、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオール、及び/又はポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールを用いることが好ましい。
【0213】
このようなポリオールは、250g/mol以上30,000g/mol以下、特に1,000g/mol以上30,000g/mol以下の平均分子量、及び1.6以上3以下の範囲の平均OH官能価を有することが好ましい。
【0214】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールが好ましく、特にポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールがより好ましく、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオール、及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールが更に好ましい。
【0215】
(液状高分子化合物)
液状高分子化合物はホットメルト接着剤の溶融時の粘度を低下させる効果がある。更に、液状高分子化合物は貼り合わせ可能時間(ホットメルト塗布後、貼り合わせることができる時間)を長くさせる効果を有する。液状高分子化合物は室温における粘度(B型粘度計)が100Pa・s以下が好ましく、75Pa・s以下が更に好ましく、50Pa・s以下が特に好ましい。
【0216】
液状高分子化合物の主鎖骨格としては、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン-プロピレン系重合体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、又は、ラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体;(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーをラジカル重合して得られるビニル系重合体;有機重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ポリアミド系重合体;ポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体等が挙げられる。これらの骨格は、2種類以上がブロック若しくはランダムに含まれていてもよい。これらの重合体の中では、ポリオキシアルキレン系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系重合体が取り扱い易く、貼り合わせ可能時間を長くする効果が大きいため好ましい。
【0217】
液状高分子化合物をあまり多く用いると耐熱性等のホットメルト接着剤としての特性を損なう場合がある。このため、液状高分子化合物の含量は成分(A)100質量部に対し、0質量部以上が好ましく、100質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。
【0218】
(充填剤)
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、カーボンブラック、溶融シリカ、沈降性シリカ、けいそう土、白土、カオリン、クレー、タルク、木粉、クルミ殻粉、もみ殻粉、無水ケイ酸、石英粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、アルミナ、ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の無機充填剤や、パルプ、木綿チップ等の木質充填剤、粉末ゴム、再生ゴム、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂の微粉末、ポリエチレン等の中空体等の有機充填剤が挙げられる。充填剤は、1種類のみを添加してもよく、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0219】
(希釈剤)
希釈剤を本発明に係る反応性ホットメルト接着剤に添加することにより、粘度等の物性を調製できる。希釈剤は、接着剤の使用温度(塗布、溶融)が高温であることから、安全性(火災、健康)の観点を考慮し、沸点が150℃以上の溶剤(希釈剤)を用いることが好ましい。希釈剤の沸点は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、300℃以上が更に好ましい。
【0220】
希釈剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系オイル等のオイル;フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アタクチックポリプロピレン等の合成ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス等が挙げられる。これらの希釈剤は単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。
【0221】
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤には沸点が120℃以下、若しくは150℃以下、又は200℃以下の溶剤を添加することは避けることが好ましい。
【0222】
(安定剤)
安定剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。酸化防止剤を用いると硬化物の耐候性、耐熱性を高めることができる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系の化合物が挙げられ、特にヒンダードフェノール系の化合物が好ましい。光安定剤を用いると硬化物の光酸化劣化を防止することができる。光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等の化合物が挙げられ、特にヒンダードアミン系の化合物が好ましい。紫外線吸収剤を用いると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が挙げられ、特にベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、フェノール系やヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを併用することが好ましい。
【0223】
(難燃剤)
難燃剤としては、例えば、特表2002-519463号公報記載の直鎖ホスファゼン及び環状ホスファゼンが挙げられ、フェノキシホスファゼンが好ましい。
【0224】
また、難燃剤としては、例えば、デカブロモビスフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール等の有機ハロゲン化合物;臭化アンモニウム等の無機ハロゲン化合物;トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、ビス(ジアリールホスフィノ)ベンゼン、トリス(ジアリールホスフィノ)ベンゼン等の三級ホスフィン類;トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム等の有機リン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン等の無機リン-窒素化合物;メラミン、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂等の窒素化合物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物;酸化アンチモン、メタ硼酸バリウム、ヒドロキソアンチモネート、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、硼酸亜鉛、硼酸アンモニウム、メタ硼酸バリウム、タルク、ケイ酸塩、酸化ケイ素、酸化錫、シロキサン化合物等の無機化合物が挙げられる。
【0225】
<成分(A)の含有量>
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤は成分(A)がホットメルト接着剤中に50質量%以上含まれていることが好ましく、60質量%以上含まれていることがより好ましく、70質量%以上含まれていることがホットメルト接着剤の特性の観点から特に好ましい。
【0226】
<湿気硬化型ホットメルト接着剤の調製法>
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤は、すべての配合成分(例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、成分(F)、及び/又はその他の添加物)を予め配合密封保存し、施工後に空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することができる。また、例えば、成分(A)、成分(C)、成分(D)、成分(F)、及び/又はその他の添加物との混合物と、成分(B)及び成分(E)の混合物とを使用前に混合する2成分型として調製することもできる。
【0227】
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤の調製法には特に限定はなく、例えば、上記した成分を所定の配合比で配合し、ミキサー、ロール、ニーダー等を用いて常温又は加熱下で混練することや、所定の溶剤を少量用いて各成分を溶解させ、混合する等の通常の方法を用いることができる。
【0228】
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤の120℃における粘度は、400Pa・s以下が好ましく、200Pa・s以下がより好ましく、100Pa・s以下が更に好ましく、50Pa・s以下が特に好ましい。120℃における粘度が400Pa・sを超えると塗出性や作業性が低下し、若しくは塗出性や作業性を確保するためにより高い温度で塗布する必要が生じる。その場合、耐熱性の低い基材等への使用が困難になる等、使用範囲が限定される。
【0229】
<用途>
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、耐落下衝撃性、防水性、柔軟性、塗布後の保型性等にも優れるため、金属、樹脂、紙類、木材、石材、コンクリートを始めとする各種基材への接着に好適に用いることができる。具体的には、建築、建材、自動車、電気・電子部材用途(例えば、光学部材の貼り合わせ)、繊維・皮革・衣料用途・製本等の生産ラインで好適に用いることができる。また、建築現場等での現場施工、DIY等、生産ライン以外の用途においても好適に用いることができる。
【0230】
光学部材の貼り合せに用いられる態様としては、一例として、携帯電話やスマートフォン等の携帯情報端末、パソコンやタブレット端末等の情報処理端末、ゲーム機、テレビ、カーナビ、カメラ、スピーカー、ヘッドマウントディスプレイ等のシール剤への応用が挙げられる。なお、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、シーリング剤やコーティング剤、ポッティング剤として用いても良い。
【0231】
<湿気硬化型ホットメルト接着剤の施工方法>
本発明に係る湿気硬化型シリル化ポリウレタン接着剤の施工方法としては、公知の各種の反応性ホットメルト接着剤と同様の施工方法を採用できる。例えば、施工方法は、本発明に係る湿気硬化型シリル化ポリウレタン接着剤を所定の温度に加熱する工程(加熱工程)と、加熱した当該接着剤を第1の被着体の接着領域に塗布する工程(塗布工程)と、当該接着剤を挟むように第2の被着体を第1の被着体に貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)とを備える。なお、塗布工程においては、第1の被着体だけでなく、第2の被着体の接着領域に本発明に係る接着剤を塗布してもよい。
【0232】
具体的に、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いて一方の基材と他方の基材とを貼り合せる場合には、例えば、湿気硬化型ホットメルト接着剤を50℃~130℃の範囲で加熱溶融し、溶融した接着剤を一方の基材の上に塗布し、続いて、溶融した接着剤の上に他方の基材を貼り合せて湿気硬化させる。これにより、一方の基材と他方の基材とが湿気硬化型ホットメルト接着剤により接着された積層体を得ることができる。
【0233】
なお、金属の基材としては、例えば、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、マグネシウム、銅、鉛等の金属単体類;ステンレススチール、真鍮等の前記金属単体類から得られる合金類;亜鉛、ニッケル、クロム等の金属でメッキした鉄等のメッキ処理を施した金属類;前記金属単体類、合金類、若しくはメッキ処理を施した金属等にクロム酸塩処理や燐酸塩処理等の化成処理を施した金属類が挙げられる。
【0234】
また、樹脂の基材としては、例えば、ガラス、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ノルボルネン樹脂、ポリオレフィン樹脂、脂環式ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、POB(ポリオキシベンゾイル)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PEI(ポリエーテルイミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリエステル)、乳酸ポリマー、ABS樹脂、AS樹脂等を用いて構成される基材が挙げられる。また、基材に対し、必要に応じ、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の前処理を施してもよい。
【0235】
(塗布方法)
湿気硬化型ホットメルト接着剤を基材に塗布する方法としては、例えば、ロールコーター、スプレーコーター、T-タイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等を用いる方法;ディスペンサー、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等の方式により塗布する方法等が挙げられる。
【0236】
ディスペンサー等の後者の塗布方式を採用する場合、基材上の塗布を所望する箇所に湿気硬化型ホットメルト接着剤を精密に少量塗布することができるので、打ち抜き加工等のロスを生じることがなく好ましい。特に、室温での硬化性が高い組成物を取り扱うディスペンサー等の塗布方法においても、密閉加熱槽(液送タンク)内での加熱安定性に優れるため好適に用いることができる。また、この塗布方式によれば、湿気硬化型ホットメルト接着剤を、点状、線状、破線状、一点鎖線状、三角状や四角状等の多角形状、丸状、楕円状、曲線等の様々な形状で、連続的又は断続的に基材上に形成することができる。
【0237】
湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いた接着剤層の厚さは、用いられる用途に応じて適宜設定できる。一例として、当該接着層の厚さは、10μm~5mm程度の範囲の厚さである。
【0238】
また、貼り合せ後の湿気硬化の熟成条件としては、例えば、温度20℃~80℃、湿度50%~90%、0.5~5日間程度の範囲である。
【0239】
以上の方法により、複数の基材と湿気硬化型ホットメルト接着剤を湿気硬化させて得られる接着剤からなる接着剤層とを有する積層体が得られる。この積層体から接着剤層を剥離して基材を回収する方法としては、手で容易に剥離することができることから、積層体を40℃~150℃の範囲で加温する方法を用いることが好ましい。
【0240】
<実施の形態の効果>
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、結晶性脂肪族ポリエステルポリオールとポリエーテル骨格を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとを用いて調製される水酸基末端ウレタンプレポリマーと、イソシアネートシランとの反応物を含んで構成されるので、得られる反応性ホットメルト接着剤中に結晶性の部分と非晶質の部分とを含有させると共に、反応性基を含ませることができる。これにより、本発明に係る反応性ホットメルト接着剤によれば、良好な立ち上がり強度と十分な長さの貼り合わせ可能時間とを両立させることができる。また、本発明に係る反応性ホットメルト接着剤は、良好な立ち上がり強度を有していることから、曲面等を有する被着体に対しても公的に用いることができる。
【0241】
また、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、塗布温度において適切な粘度を示すことから塗布作業性も良好である。そして、本発明に係る湿気硬化型シリル化ポリウレタン接着剤は、イソシアネート基を実質的に含まないように調製されているので、加熱時等に遊離のモノマー性ポリイソシアネートの放出がなく、水分との反応によってポリウレアが形成されることも実質的にないことから二酸化炭素の放出による接着剤表面の膨れも防止でき、接着強度の低下を防止できる。
【0242】
被着体の一方若しくは双方が木材、合板、若しくは木質系繊維板等の木質系の材料や紙等の透湿性材料である場合、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤を用いると接着強度が経時的に低下する。特に、湿度の高い雰囲気下ではこの傾向が大きい。一方、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、木質系の材料や透湿性材料等からなる被着体に対し、湿度の高い雰囲気下で用いても接着強度が経時的に低下しない。したがって、本発明に係る反応性ホットメルト接着剤は、木質系の材料や透湿性材料を被着体に用いる場合、特に有用である。
【0243】
<常温湿気硬化型ホットメルト接着剤>
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、以下のように各成分を把握することで、「常温湿気硬化型ホットメルト接着剤」として捉えることもできる。
【0244】
まず、成分(a-1)を高分子の主鎖とし、各成分を高分子のセグメントとしてとらえる。すなわち、成分(i)をセグメント(i)、成分(ii)をセグメント(ii)、成分(ii-1)をセグメント(ii-1)とする。この場合に、主鎖(a-1)の末端に一般式(II)のアルコキシシリル基を連結した構造のアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A)を含む組成物を、常温湿気硬化型ホットメルト接着剤とする。主鎖(a-1)は、セグメント(i)の末端にセグメント(ii)を一般式(I)の結合基で連結したブロックポリマーである。ここで、セグメント(i)はポリエーテル骨格を有するセグメントであり、セグメント(ii)は結晶性脂肪族ポリエステル骨格を有するセグメント(ii-1)を含有するセグメントである。
【0245】
また、セグメント(ii)は、成分(ii-2)に対応するセグメントであり、室温で固体のメタクリル酸メチル系重合体骨格のセグメント(ii-2)、及び/又は成分(ii-3)に対応するセグメントであり、ポリエーテル骨格のセグメント(ii-3)を更に含有することもできる。
【0246】
また、常温湿気硬化型ホットメルト接着剤は、セグメント(i)の末端にセグメント(ii-2)を一般式(I)の結合基で連結したアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(F)を更に含有することもできる。ここで、セグメント(i)及びセグメント(ii-2)は上記と同じである。更に、常温湿気硬化型ホットメルト接着剤は、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、及び/又はその他の添加剤を含有することもできる。なお、常温湿気硬化型ホットメルト接着剤を含む製品も本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤と同様に製造できる。
【実施例
【0247】
以下に実施例を挙げて更に具体的に説明する。なお、これらの実施例は例示であり、限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0248】
(合成例1:水酸基を有するアルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体(ii-2)の合成)
メチルメタクリレート70g、2-エチルヘキシルメタクリレート30g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン8g、金属触媒としてチタノセンジクロライド0.1g、及び有機溶剤として酢酸エチル40gを反応容器に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に加熱した。次いで、メルカプトエタノール0.85gを添加し、反応容器内の温度を80℃に維持できるように加熱及び/又は冷却により温度調整しつつ16時間反応させた。16時間反応後、反応物の温度を室温に戻し、重合を終了させ、水酸基を有するアルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体(ii-2)を得た。成分(ii-2)についてゲルパーミッションクロマトグラフィーにより測定した数平均分子量は4,755であり、不揮発分は66%であった。
【0249】
(数平均分子量の測定)
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定した。具体的には、測定対象物を下記測定条件でGPCにより測定し、標準ポリエチレングリコールで換算した最大頻度の分子量を数平均分子量とした。
【0250】
数平均分子量は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、ポリスチレンを標準物質として、下記の条件で測定することができる。なお、後述の合成例における数平均分子量の測定も同様である。
【0251】
使用カラム:G7000HXL×1本、GMHXL×2本、G2000HXL×1本
溶媒:THF
流速:1.0ml/min
測定温度:40℃
【0252】
(合成例2:アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A-1:SBPE-cPEs)の合成)
数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール(商品名:アクトコールD3,000、三井化学社製)100g、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(商品名:ミリオネートMT、東ソー社製)17.1g、及びオクチル酸錫(商品名:ネオスタンU-28,日東化成社製)0.05gを反応容器に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら85℃で3時間反応させてウレタンプレポリマー(i-1)を得た。その後、数平均分子量5,000の結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)(商品名:HS2H-500S:セバシン酸、1,6-ヘキサンジオールからなる結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(数平均分子量5,000、融点(Tg)70℃)、豊国製油社製))369.3gを加え、更に、3時間85℃で攪拌した。続いて、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE9007、信越化学工業社製)6.7gを加え、1時間攪拌し、成分(A-1)(「SBPE-cPEs」とも称する)を得た。成分(A-1)のIRスペクトル測定の結果、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失していることを確認した。なお、「SBPE」はシリル化ブロックポリエーテルを表し、「cPEs」は結晶性ポリエステルを表す。
【0253】
(IRスペクトルの測定)
IRスペクトルの測定には、下記測定装置を用いた。
FT-IR測定装置:日本分光(株)製FT-IR460Plus
なお、後述の合成例におけるIRスペクトル測定の条件も同様である。
【0254】
(合成例3:アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A-2:SBPE-cPEs、PAc)の合成)
数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール(商品名:アクトコールD-3,000、三井化学社製)20g、数平均分子量10,000のポリプロピレングリコール(商品名:DL-10,000、三井化学社製)30g、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(商品名:ミリオネートMT、東ソー社製)5.1g、及びオクチル酸錫(商品名:ネオスタンU-28,日東化成社製)0.15gを反応容器に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら85℃で3時間反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(i)を得た。その後、得られた成分(i)に数平均分子量5,000の結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)(商品名:HS2H-500S:セバシン酸、1,6-ヘキサンジオールからなる結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(数平均分子量5,000、融点(Tg)70℃)、豊国製油社製))51.8gと合成例1で得た水酸基を有するアルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体(ii-2)71.7gとを加え、3時間85℃で攪拌した。反応物のIRスペクトル測定の結果、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失していることを確認した。更に、得られた反応物に3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE9007、信越化学工業社製)1.9gを加え、95℃で2時間攪拌した。反応はIRスペクトル測定により、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失した時点で反応終了とした。反応終了後、溶剤を留去し、成分(A-2)(「SBPE-cPEs、PAc」とも称する)を得た。なお、「PAc」はポリアクリレートを表す。
【0255】
(合成例4:アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A-3:SBPE-cPEs、PAc、PTMG)の合成)
数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール(商品名:アクトコールD-3,000、三井化学社製)20g、数平均分子量10,000のポリプロピレングリコール(商品名:DL-10,000、三井化学社製)30g、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(商品名:ミリオネートMT、東ソー社製)5.1g、及びオクチル酸錫(ネオスタンU-28,日東化成社製)0.15gを反応容器に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら85℃で3時間反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(i-1)を得た。
【0256】
その後、得られた成分(i-1)に数平均分子量5,000の結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)(商品名:HS2H-500S:セバシン酸、1,6-ヘキサンジオールからなる結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(数平均分子量5,000、融点(Tg)70℃)、豊国製油社製))44.6g、合成例1で得た水酸基を有するアルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体(ii-2)97.9g、及びポリテトラメチレングリコール(ii-3)(商品名:PTMG-1000、三菱化学社製)2.0gを加え、85℃で3時間攪拌した。反応物のIRスペクトル測定の結果、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失していることを確認した。更に、得られた反応物に3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE9007、信越化学工業社製)1.9gを加え、95℃で2時間攪拌した。反応はIRスペクトル測定により、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失した時点で終了とした。反応終了後、溶剤を留去し、成分(A-3)(「SBPE-cPEs、PAc、PTMG」とも称する)を得た。なお、「PTMG」はポリテトラメチレングリコールを表す。
【0257】
(合成例5:アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A-4:SBPE-cPEs、ASi)の合成)
数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール(商品名:アクトコールD-3,000、三井化学社製)20g、数平均分子量10,000のポリプロピレングリコール(商品名:DL-10,000、三井化学社製)30g、ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネートMT、東ソー社製)5.1g、及びオクチル酸錫(商品名:ネオスタンU-28,日東化成社製)0.15gを反応容器に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら85℃で3時間反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(i)を得た。その後、数平均分子量5,000の結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)(商品名:HS2H-500S:セバシン酸、1,6-ヘキサンジオールからなる結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(数平均分子量5,000、融点(Tg)70℃)、豊国製油社製))79.0gとN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(iii-1)1.0gとを加え、85℃で3時間攪拌した。反応物のIRスペクトル測定の結果、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失していることを確認した。更に、得られた反応物に3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE9007、信越化学工業社製)2.9gを加え、95℃で2時間攪拌した。反応はIRスペクトル測定により、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失していた時点で終了とした。反応終了後、溶剤を留去し、成分(A-4)(「SBPE-cPEs、ASi」とも称する)を得た。なお、「ASi」はアミノシランを表す。
【0258】
(合成例6:アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A’-1:SPU-PE、cPEs)の合成)
数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール(商品名:アクトコールD3,000、三井化学社製)100g、数平均分子量5,000の結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)(商品名:HS2H-500S:セバシン酸、1,6-ヘキサンジオールからなる結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(数平均分子量5,000、融点(Tg)70℃)、豊国製油社製))369.3g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE9007、信越化学工業社製)6.7g、及びオクチル酸錫(商品名:ネオスタンU-28,日東化成社製)0.05gを反応容器に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら85℃で3時間反応させてアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A’-1)(「SPU-PE、cPEs」とも称する)を得た。成分(A’-1)のIRスペクトル測定の結果、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失していることを確認した。なお、成分(A’-1)の合成は合成例2と異なり、ウレタンプレポリマーを事前に調製せず、ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネートMT、東ソー社製)を用いていない点を除き、合成例2と同様の成分を用いて調製する合成例である。なお、「SPU」はシリル化ポリウレタンを表し、「PE」はポリエーテルを表す。
【0259】
(合成例7:アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A’-2:SBPE-aPEs)の合成)
合成例4の結晶性脂肪族ポリエステルポリオールの代わりに芳香族ポリエステルを用いてアルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマーを合成した。具体的に、数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール(商品名:アクトコールD3,000、三井化学社製)100g、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(商品名:ミリオネートMT、東ソー社製)17.1g、及びオクチル酸錫(商品名:ネオスタンU-28,日東化成社製)0.05gを反応容器に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら85℃で3時間反応させてウレタンプレポリマー(i-1)を得た。得られた成分(i-1)に、数平均分子量3,000の芳香族ポリエステル(商品名:DYNACOLL(登録商標)7130、エボニック インダストリーズAG社製)201gを加え、更に、3時間85℃で攪拌した。反応物のIRスペクトル測定の結果、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失していることを確認した。更に、得られた反応物に3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE9007、信越化学工業社製)12.4gを加え、95℃で2時間攪拌し、成分(A’-2)(「SBPE-aPEs」とも称する)を得た。成分(A’-2)のIRスペクトル測定の結果、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失していることを確認した。なお、「aPEs」は非晶性ポリエステルを表す。
【0260】
(合成例8:アルコキシシリル基含有ウレタンプレポリマー(A’-3:SPU-PE、cPEs、PAc、PTMG)の合成)
数平均分子量5,000の結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)(商品名:HS2H-500S:セバシン酸、1,6-ヘキサンジオールからなる結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(数平均分子量5,000、融点(Tg)70℃)、豊国製油社製))44.6g、合成例1で得た水酸基を有するアルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体(ii-2)97.9g、数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール(商品名:アクトコールD-3,000、三井化学社製)20g、数平均分子量10,000のポリプロピレングリコール(商品名:DL-10,000、三井化学社製)30g、ポリテトラメチレングリコール(ii-3)(商品名:PTMG-1000、三菱化学社製)2.0g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE9007、信越化学工業社製)3.3g、及びオクチル酸錫(商品名:ネオスタンU-28,日東化成社製)0.05gを加え、95℃で2時間攪拌した。反応はIRスペクトル測定により、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失していた時点で終了とした。反応終了後、溶剤を留去し、成分(A’-3)(「SPU-PE、cPEs、PAc、PTMG」とも称する)を得た。なお、成分(A’-3)の合成は合成例4と異なり、ウレタンプレポリマーを事前に調製せず、ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネートMT、東ソー社製)を用いていない点を除き、合成例4と同様の成分を混合して調製する合成例である。
【0261】
(合成例9:結晶性ポリエステルのシリル化(A’-4:SPU-cPEs))
数平均分子量5,000の結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(ii-1)(商品名:HS2H-500S:セバシン酸、1,6-ヘキサンジオールからなる結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(数平均分子量5,000、融点(Tg)70℃)、豊国製油社製))100g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(商品名KBE9007、信越化学工業社製)7.4g、及びオクチル酸錫(商品名:ネオスタンU-28,日東化成社製)0.05gを加え、95℃で2時間攪拌し、成分(A’-4)(「SPU-cPEs」とも称する)を得た。成分(A’-4)のIRスペクトル測定の結果、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失していることを確認した。
【0262】
(合成例10:シラン化合物1)
2種類のシラン化合物を互いに反応させることで、シラン系接着付与剤としてシラン化合物1を合成した。具体的に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM503、信越化学工業(株)製)1モルと、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM603、信越化学工業(株)製)1モルとを秤量した。そして、1モルの3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランと、1モルのN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランとを混合し、80℃で3日間加熱することでマイケル付加反応を進行させた。これにより、シラン系接着付与剤としてのシラン化合物1を得た。シラン化合物1の分子量は470.7g/molである。
【0263】
(合成例11:シラン化合物2)
まず、2種類のシラン化合物を互いに反応させることで、シラン系接着付与剤としてシラン化合物2を合成した。具体的に、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403、信越化学工業(株)製)1モルと、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM603、信越化学工業(株)製)1モルとを秤量した。そして、1モルの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、1モルのN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランとを混合し、80℃で3日間加熱することで反応を進行させた。これにより、シラン系接着付与剤としてのシラン化合物2を得た。シラン化合物2の分子量は458.7g/molである。
【0264】
(合成例12:アルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル系重合体(D-1:SPAc)の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管、及び滴下ロートを備えた反応容器に溶媒として酢酸ブチルを仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。その後、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.7g、メチルメタクリレート50.0g、n-ブチルアクリレート35.0g、及びステアリルメタクリレート13.0gを仕込んだ。次に、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)の酢酸ブチル溶液を滴下して重合反応させた。滴下終了後、110℃で2時間熟成してから冷却し、反応物を得た。反応終了後、溶剤を留去し、成分(D-1)(「SPAc」とも称する)を得た。成分(D-1)のゲルパーミッションクロマトグラフィーにより測定した数平均分子量は10,000、重合体一分子あたりの架橋性ケイ素基は平均して1.5個、ガラス転移温度(DSC法で測定したガラス転移温度)は5℃であった。なお、「SPAc」はシリル化ポリアクリレートを表す。
【0265】
(合成例13:成分(i)と成分(ii-2)との反応物(F-1:SBPE-PAc)の合成)
数平均分子量10,000のポリプロピレングリコール(商品名:DL-10,000、三井化学社製)100g、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(商品名:ミリオネートMT、東ソー社製)5.1g、及びオクチル酸錫(商品名:ネオスタンU-28,日東化成社製)0.05gを反応容器に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら85℃で3時間反応させてウレタンプレポリマー(i-2)を得た。その後、成分(i-2)に合成例1で得た水酸基を有するアルコキシシリル基含有メタクリル酸メチル共重合体(ii-2)373.2gを加え、更に85℃で3時間攪拌した。反応はIRスペクトル測定により、イソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失している時点で終了とした。反応終了後、溶剤を留去し、成分(F-1)(「SBPE-PAc」とも称する)を得た。
【0266】
(合成例14:フッ素化ポリマーの合成)
分子量約2,000のポリプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート-グライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドを反応させてポリプロピレングリコールを得た。WO2015-088021の合成例2の方法に準じ、得られたポリプロピレングリコールの末端にアリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得た。この重合体に対し、水素化ケイ素化合物であるメチルジメトキシシランと白金ビニルシロキサン錯体イソプロパノール溶液とを添加して反応させ、末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(J)を得た。得られた末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体の分子量をGPCにより測定した結果、ピークトップ分子量は15,000、分子量分布は1.3であった。H-NMR測定(島津製作所社製のNMR400を用いて、CDCl溶媒中で測定)により、末端のメチルジメトキシシリル基は1分子あたり1.7個であった。次に、BFジエチルエーテル錯体2.4g、脱水メタノール1.6g、重合体(J)100g、トルエン5gを用い、WO2015-088021の合成例4の方法に準じ、末端にフルオロシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(以下、「フッ素化ポリマー」と称する)を得た。得られたフッ素化ポリマーのH-NMRスペクトルを測定したところ、原料である重合体のシリルメチレン(-CH-Si)に対応するピーク(m,0.63ppm)が消失し、低磁場側(0.7ppm~)にブロードピークが現れることを確認した。
【0267】
合成例2~9、及び合成例13における主な配合物質について表1に示す。
【0268】
【表1】
【0269】
(実施例、比較例)
実施例1~14、及び比較例1~4のそれぞれについて、成分(A)又は成分(A’)、成分(C)、成分(D)、及び/又は成分(F)を表2及び表3に示す配合割合にて混合し、120℃環境下で撹拌混合した。その後、成分(B)及び/又は成分(E)を表2及び表3に示す配合割合にて更に添加し、攪拌した。最後に減圧脱泡し、実施例1~14、及び比較例1~4の接着剤それぞれについて、一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を金属容器に充填した。得られた実施例1~14、及び比較例1~4の接着剤それぞれについて、下記の各評価を実施した。結果を表2及び表3に示す。なお、表2及び表3において、各配合物質の配合量の単位は「g」である。
【0270】
【表2】
【0271】
【表3】
【0272】
表2及び表3に示す「SBPE」等の略称は、上記で説明した合成例における略称を示す。また、表2中、「セットタイム」の行における「*」マークは、材料破壊なし(材破なし)であることを示す。そして「180度はく離接着強さ」の行における「*」マークは、貼り合わせ可能時間が極端に短く測定できなかったことを示す。また、表2中、「貼り合わせ可能時間」の行における「粘着※」は、Kライナーダンボールに一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を塗布後、10分間経過後も粘着性を有していることを示す。更に、表2及び表3に示す材料のうち、合成例で示していない材料の詳細は以下のとおりである。
・商品名:FTR6100(スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合系:三井化学株式会社製)
・商品名:カオーライザー No.1(N,N,N’,N’‐テトラメチルヘキサンジアミン:花王株式会社製)
・商品名:ネオスタン U-28(オクチル酸錫:日東化成株式会社製)
・商品名:ネオスタン U-830(ジオクチル錫ジバーサテート:日東化成株式会社製)
【0273】
(評価方法:粘度)
120℃での一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤の溶融状態の粘度は、コーンプレート粘度計CV-1(東亜工業株式会社製、コーン直径:14.5mm、コーン角度:2.0°回転数:20rpm)を用いて測定した(Pa・s)。
【0274】
(評価方法:180度剥離接着強さ)
実施例1に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融し、
EBオレフィンシート(大日本印刷(株)製)(25mm×150mm×0.1mm)に厚さが50μmになるように塗布した。塗布直後、アルミ板(75mm×150mm×2mm、接着面をアセトンで脱脂)を、接着剤を挟むようにEBオレフィンシートに貼り合せた。これにより、実施例1に係る試験体を作製した。そして、試験体を、23℃50%RH環境下で所定の時間養生した後(養生時間:貼り合わせから10分後、及び貼り合わせから1週間後)、JIS K6854に準じて、引張速度200mm/分で180度剥離接着強さ(N/25mm)を測定した。ここで、養生期間が貼り合わせから10分後における180度剥離接着強さを「立ち上がり強度(表2中、貼り合わせ直後)」とし、1週間後における180度剥離接着強さを「最終強度(表2中、1週間養生後)」とした。また、他の実施例、及び比較例に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤についても同様に評価した。
【0275】
(評価方法:せん断接着強さ)
実施例1に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融し、第1のアルミ板(25mm×75mm×2mm、接着面をアセトンで脱脂)に厚さが100μmになるように塗布した。塗布直後、接着剤を挟むように第1のアルミ板に第2のアルミ板(25mm×75mm×2mm、接着面をアセトンで脱脂)を重ね合わせる領域の面積が一端から25mm×25mmとなるように貼り合せ、試験体を作製した。試験体を23℃50%RH環境下で所定の時間養生した後(養生時間:貼り合わせから10分後、及び貼り合わせから1週間後)、JIS K6850に準じて、引張速度50mm/分でせん断接着強さ(N/mm)を測定した。ここで、養生期間が貼り合わせから10分後におけるせん断接着強さを「初期強度(表2中、貼り合わせ直後)」とし、1週間後におけるせん断接着強さを「最終強度(表2中、1週間養生後)」とした。また、他の実施例、及び比較例に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤についても同様に評価した。
【0276】
(評価方法:耐湿熱せん断接着強さ)
実施例1に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融し、第1のアルミ板(25mm×75mm×2mm、接着面をアセトンで脱脂)に厚さが100μmになるように塗布した。塗布直後、接着剤を挟むように第1のアルミ板に第2のアルミ板(25mm×75mm×2mm、接着面をアセトンで脱脂)を重ね合わせる領域の面積が一端から25mm×25mmとなるように貼り合せ、試験体を作製した。試験体を85℃85%RH環境下で500時間養生した後、JIS K6850に準じて、引張速度50mm/分で耐湿熱せん断接着強さ(N/mm)を測定した。また、他の実施例、及び比較例に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤についても同様に評価した。
【0277】
(評価方法:貼り合わせ可能時間)
実施例1に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融し、Kライナーダンボール(250mm×250mm×7mm)に50μmの厚さで塗布し、所定の時間毎(1分までは3秒毎、1分を超えてからは15秒毎)に試験片(Kライナーダンボール(25mm×50mm×7mm))を実質的に隙間なく貼り合わせた。その後、23℃50%RH環境下で各試験片を貼り合わせてから10分間静置した後に、手で試験片を剥離し、接着部に欠損が生じなくなるまでの時間を貼り合せ可能時間(秒)とした。また、他の実施例、及び比較例に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤についても同様に評価した。
【0278】
(評価方法:セットタイム)
実施例1に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融し、Kライナーダンボール(25mm×100mm×7mm)に50μmの厚さで塗布し、5秒後にKライナーダンボール(25mm×100mm×7mm)を重ね合わせ部の面積が一端から25mm×25mmとなるように貼り合わせ、試験体を得た。得られた試験体について、23℃50%RH環境下で5秒経過後に手で試験体を剥離した。更に、同様に作製した試験体について、所定の時間経過後(1分までは3秒毎、1分を超えてからは15秒毎)に手で試験体を剥離し、接着部に欠損が生じるまでの時間をセットタイム(秒)とした。また、他の実施例、及び比較例に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤についても同様に評価した。
【0279】
(評価方法:熱間せん断クリープ試験)
実施例1に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融し、第1のアルミ板(25mm×75mm×2mm、接着面をアセトンで脱脂)に厚さが100μmになるように塗布した。塗布直後、接着剤を挟むように第1のアルミ板に第2のアルミ板(25mm×75mm×2mm、接着面をアセトンで脱脂)を、重ね合わせる領域の面積が一端から25mm×25mmとなるように貼り合せ、試験体を作製した。その後、23℃50%RH環境下で1週間養生し、熱間せん断クリープ試験片を得た。続いて、80℃に設定した恒温器中において、試験片の片側に500gの荷重をかけ、24時間後のせん断方向のズレを確認した。ズレが0mmの場合を「◎」、1mm未満の場合を「○」、1mm以上の場合を「×」と評価した。また、他の実施例、及び比較例に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤についても同様に評価した。
【0280】
(評価方法:ボールタック)
実施例1に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融し、PETシートに厚み100μmで塗布し、23℃50%RH環境下で24時間養生後、JIS Z0237に準拠して、J.DOW法ボールタック試験器を用いて、温度23℃、50%RH環境下において傾斜板の角度を30度に設定し、助走距離10cmの条件で粘着面に向けて所定の鋼球を転がし、粘着剤の端から距離10cmの間で停止したボールNo.を評価した。結果、ボールタックは5以下だった。また、他の実施例に係る一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤についても同様に評価し、ボールタックは5以下であることが確認された。
【0281】
表2を参照すると分かるように、実施例に係る接着剤においてはいずれも、貼り合わせ可能時間が10秒以上と良好な貼り合わせ可能時間を示すと共に、セットタイムも適切な長さを示した。また、実施例に係る接着剤においてはいずれも、良好な立ち上がり強度を示すことが確認された。更に、表3を参照すると分かるように、(E)成分を更に添加することにより、耐湿熱せん断接着強さも向上させ得ることが示された。特に、実施例11において耐湿熱せん断接着強さが向上し、実施例12~13において耐湿熱せん断接着強さが更に向上することが示された。
【0282】
一方、表2を参照すると分かるように、比較例に係る接着剤においてはいずれも貼り合わせ可能時間が極端に短く、他の被着体を接着させることができないことから、立ち上がり強度等を測定できないほどであった。また、比較例3においては塗布後から粘着性を10分以上維持するという好ましくない状態が続くと共にセットタイムが45秒と長く、貼り合わせ直後のせん断接着強さも弱い結果を示した。
【0283】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せのすべてが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点、及び本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能である点に留意すべきである。