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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】脳機能計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20231108BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20231108BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61B5/16 110
A61B5/026 120
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020571032
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2019050293
(87)【国際公開番号】W WO2020162062
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2019021922
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山口 俊平
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮宏
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-116213(JP,A)
【文献】特開2007-097615(JP,A)
【文献】国際公開第2006/009178(WO,A1)
【文献】特開2011-087784(JP,A)
【文献】特開2013-017734(JP,A)
【文献】特開2018-036996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 9/00-10/06
A61B 5/06- 5/22
A61B 5/02- 5/03
A61B 5/00- 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の脳血流情報を取得する脳血流情報取得部と、
被験者が安静であるか否かを判別するための安静情報を取得する安静情報取得部と、
前記安静情報取得部により取得された前記安静情報が所定の条件を満たした状態を脳の安静状態と判別するとともに、前記安静情報が前記所定の条件を満たした状態における前記脳血流情報を、安静時計測データとして取得する制御部とを備え、
前記制御部は、前記安静情報が前記所定の条件を満たしていない状態における前記脳血流情報である非安静時の計測データを累積せずに、前記安静時計測データを累積した安静時累積計測データを生成するように構成されている、脳機能計測装置。
【請求項2】
前記制御部は、1つまたは複数の前記安静時計測データを取得するとともに、前記安静時計測データを取得順に結合し、1つの前記安静時累積計測データを生成するように構成されている、請求項1に記載の脳機能計測装置。
【請求項3】
前記脳血流情報取得部は、前記安静情報の取得中に前記脳血流情報を継続的に取得するように構成されており、
前記制御部は、継続的に取得された前記脳血流情報のうち、前記安静状態の情報を前記安静時計測データとして抽出するとともに、
抽出した前記安静時計測データに基づいて、前記安静時累積計測データを生成するように構成されている、請求項1に記載の脳機能計測装置。
【請求項4】
前記制御部は、継続的に取得された前記脳血流情報に対して、前記安静情報に基づいて前記安静状態および非安静状態を識別可能にする処理を施すように構成されている、請求項3に記載の脳機能計測装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記安静情報が前記所定の条件を満たした状態が所定時間以上の場合に、前記脳血流情報を前記安静時計測データとして取得するように構成されている、請求項3に記載の脳機能計測装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記安静時計測データの累積計測時間が所定の計測時間に達した場合、計測処理を終了するように構成されている、請求項3に記載の脳機能計測装置。
【請求項7】
前記安静情報取得部は、前記安静情報として、被験者の心拍情報を取得するように構成されており、
前記制御部は、前記心拍情報に基づいて取得した被験者の心拍の時間間隔の変動に基づいて副交感神経の活動を取得し、取得した前記副交感神経の活動に基づいて、被験者の脳の前記安静状態を判別するように構成されている、請求項1に記載の脳機能計測装置。
【請求項8】
前記制御部は、被験者の前記心拍の時間間隔の変動をパワースペクトル解析することにより、前記副交感神経の活動の指標であるHF成分を取得するとともに、
前記HF成分の強度が所定の強度を超えた状態を脳の前記安静状態と判別するように構成されている、請求項7に記載の脳機能計測装置。
【請求項9】
被験者の脳血流情報を取得する脳血流情報取得部と、
被験者が安静であるか否かを判別するための安静情報を取得する安静情報取得部と、
前記安静情報取得部により取得された前記安静情報が所定の条件を満たした状態を脳の安静状態と判別するとともに、被験者の脳前記安静状態となった際に、安静時計測データとして前記脳血流情報の取得を開始し、被験者の脳前記安静状態でなくなった際に、前記脳血流情報の取得を停止することにより、非安静時の計測データを取得せずに前記安静時計測データを取得するとともに、取得した前記安静時計測データを累積した安静時累積計測データを生成する制御部とを備える、脳機能計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳機能計測装置に関し、特に、安静時の脳機能を計測する脳機能計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、安静時の脳機能を計測する脳機能計測装置が知られている。このような脳機能計測装置は、たとえば、特開2015-116213号公報に開示されている。
【0003】
特開2015-116213号公報に開示されている脳機能計測装置は、安静時の被験者の脳血流量を計測し、計測した脳血流量に基づいて、複数の所定領域間の脳領域の機能的な結合(相関関係)を算出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-116213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、被験者の脳血流量を計測する際に、一見して被験者が安静にしている場合であっても、脳が安静状態でない場合がある。つまり、一般に安静とは、座位または臥位など、運動状態でなく、積極的な課題や外部刺激を与えない状態を指すが、外見的な安静状態と脳活動の安静状態とは異なるものである。たとえば、被験者の身体が安静状態であっても、何か考え事をしている場合など、脳が安静状態でない場合がある。なお、脳が安静状態であるとは、被験者がストレスなど、不快となる外部刺激などを感じていない状態であるとともに、被験者が意図的に思考していない状態のことを意味する。
【0006】
しかしながら、特開2015-116213号公報に開示されている脳機能計測装置では、安静時における被験者の脳血流量を計測する際に、被験者の脳が安静状態であるか否かを判別していないと考えられる。したがって、計測結果から取得した複数の所定領域間の脳領域の機能的な結合を解析する際に、脳が安静状態でない場合の計測結果が含まれる可能性があり、計測結果の信頼性が低下するとともに、安静時脳機能の解析の精度が低下する可能性があるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、計測結果の信頼性を向上させることが可能であるとともに、安静時脳機能の解析の精度を向上させることが可能な脳機能計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における脳機能計測装置は、被験者の脳血流情報を取得する脳血流情報取得部と、被験者が安静であるか否かを判別するための安静情報を取得する安静情報取得部と、安静情報取得部により取得された安静情報が所定の条件を満たした状態を脳の安静状態と判別するとともに、安静情報が所定の条件を満たした状態における脳血流情報を、安静時計測データとして取得する制御部とを備え、制御部は、安静情報が所定の条件を満たしていない状態における脳血流情報である非安静時の計測データを累積せずに、安静時計測データを累積した安静時累積計測データを生成するように構成されている。
【0009】
この発明の第1の局面における脳機能計測装置は、上記のように、被験者が安静であるか否かを判別するための安静情報が所定の条件を満たした状態における脳血流情報を、安静時計測データとして取得する制御部を備える。これにより、被験者の脳が安静でない場合の脳血流情報が安静時計測データとして取得されることを抑制することが可能となる。したがって、計測結果の信頼性を向上させることができるので、信頼性を向上させた計測結果を用いて解析することが可能となる。その結果、安静時脳機能の解析の精度を向上させることができる。また、安静時計測データから生成された安静時累積計測データによって脳機能の解析を行うことができる。その結果、安静状態と非安静状態とが混在したデータを用いて脳機能の解析を行う場合と比較して、効率的に脳機能の解析を行うことができる。
【0011】
この場合、好ましくは、制御部は、1つまたは複数の安静時計測データを取得するとともに、安静時計測データを取得順に結合し、1つの安静時累積計測データを生成するように構成されている。このように構成すれば、安静時計測データを時系列に結合した安静時累積計測データを用いて脳機能の解析を行うことができる。その結果、1つまたは複数の安静時計測データが時系列に結合しているので、安静時計測データだけを経時的に解析することが可能となり、より正確にかつ容易に脳機能の解析を行うことができる。
【0012】
上記安静時累積計測データを生成する構成において、好ましくは、脳血流情報取得部は、安静情報の取得中に脳血流情報を継続的に取得するように構成されており、制御部は、継続的に取得された脳血流情報のうち、安静状態の情報を安静時計測データとして抽出するとともに、抽出した安静時計測データに基づいて、安静時累積計測データを生成するように構成されている。このように構成すれば、安静情報の取得と、脳血流情報の取得とを並行して行いながら、脳血流情報から安静時計測データを抽出することにより安静時累積計測データを生成することができる。その結果、脳の安静状態、非安静状態に応じて脳血流情報を取得するか否かを切り替えて、安静状態における脳血流情報のみを安静時計測データとして取得する場合と比較して、脳血流情報を取得するか否かを切り替えずに、継続的に取得された脳血流情報から安静時計測データを抽出することが可能となるので、計測処理の制御が複雑になることを抑制することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、制御部は、継続的に取得された脳血流情報に対して、安静情報に基づいて安静状態および非安静状態を識別可能にする処理を施すように構成されている。このように構成すれば、被験者の脳機能検査の開始から終了までのデータを取得することができる。その結果、脳機能検査全体の計測結果を用いて脳機能の解析を行うことが可能となるので、脳機能の解析を容易に行うことができる。また、継続的に取得された脳血流情報において、脳の安静状態と非安静状態とを識別することが可能となるので、脳血流情報における脳の安静状態と非安静状態との分布などの知見を得ることができる。
【0014】
上記継続的に取得された脳血流情報から安静時計測データを抽出し、安静時累積計測データを生成する構成において、好ましくは、制御部は、安静情報が所定の条件を満たした状態が所定時間以上の場合に、脳血流情報を安静時計測データとして取得するように構成されている。このように構成すれば、脳が安静状態であった場合でも、脳の安静状態が所定時間未満の場合には、安静時計測データとして取得することを抑制することができる。その結果、たとえば、安静状態と非安静状態とが交互に繰り返すなど、脳の安静状態が短くなることにより、安静時計測データを有意なデータとして取り扱うことができない場合に、安静時累積計測データを生成するために安静時計測データを抽出することを抑制することが可能となる。したがって、安静時累積計測データの信頼性をより一層向上させるとことが可能となるので、脳機能の解析の精度をより一層向上させることができる。
【0015】
上記継続的に取得された脳血流情報から安静時計測データを抽出し、安静時累積計測データを生成する構成において、好ましくは、制御部は、安静時計測データの累積計測時間が所定の計測時間に達した場合、計測処理を終了するように構成されている。このように構成すれば、安静時計測データの累積計測時間に基づいて計測処理を終了させることができる。その結果、たとえば、安静時計測データの累積計測時間が所定時間に達した場合に操作者が計測処理を終了させる場合と比較して、ユーザビリティ(操作者の利便性)を向上させることができる。
【0016】
上記第1の局面における脳機能計測装置において、好ましくは、安静情報取得部は、安静情報として、被験者の心拍情報を取得するように構成されており、制御部は、心拍情報に基づいて取得した被験者の心拍の時間間隔の変動に基づいて副交感神経の活動を取得し、取得した副交感神経の活動に基づいて、被験者の脳の安静状態を判別するように構成されている。このように構成すれば、心拍の時間間隔の変動に基づいて副交感神経の活動を取得することにより、脳の安静状態を判別することができる。その結果、心拍情報を取得することにより脳の安静状態を判別することが可能となるので、脳が安静状態か否かを容易に判別することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、制御部は、被験者の心拍の時間間隔の変動をパワースペクトル解析することにより、副交感神経の活動の指標であるHF成分を取得するとともに、HF成分の強度が所定の強度を超えた状態を脳の安静状態と判別するように構成されている。このように構成すれば、副交感神経の活動の指標であるHF成分に基づいて、脳の安静状態を判別することができる。その結果、HF成分の強度が所定の強度を超えているか否かを確認することにより脳の安静状態を判別することが可能となるので、脳が安静状態か否かをさらに容易に判別することができる。
【0018】
この発明の第2の局面における脳機能計測装置は、被験者の脳血流情報を取得する脳血流情報取得部と、被験者が安静であるか否かを判別するための安静情報を取得する安静情報取得部と、安静情報取得部により取得された安静情報が所定の条件を満たした状態を脳の安静状態と判別するとともに、被験者の脳が安静状態となった際に、安静時計測データとして脳血流情報の取得を開始し、被験者の脳が安静状態でなくなった際に、脳血流情報の取得を停止することにより、非安静時の計測データを取得せずに安静時計測データを取得するとともに、取得した安静時計測データを累積した安静時累積計測データを生成する制御部とを備える。
【0019】
この発明の第2の局面における脳機能計測装置は、上記のように、安静情報取得部により取得された安静情報に基づいて、被験者が安静となった際に、安静時計測データとして脳血流情報の取得を開始するとともに、被験者が安静でなくなった際に、脳血流情報の取得を停止する制御部を備える。これにより、上記第1の局面における脳機能計測装置と同様に、安静時脳機能の解析の精度を向上させることができる。また、被験者が安静時にのみ脳血流情報を取得するため、安静時と非安静時とが混在している状態において取得した脳血流情報から安静時の脳血流情報を安静時計測データとして取得する構成と異なり、脳血流情報を取得した後において、被験者が安静であるか否かを判別することなく、脳血流情報を安静時計測データとして取得することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記のように、計測結果の信頼性を向上させることが可能であるとともに、安静時脳機能の解析の精度を向上させることが可能な脳機能計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態による脳機能計測装置の全体構成を示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態による脳血流情報取得部の構成を示す模式図である。
図3】脳血流量データおよび安静時計測データを説明するための模式図(A)および安静時累積計測データを説明するための模式図(B)である。
図4】本発明の第1実施形態による制御部が被験者の脳の安静状態を判別する処理を説明するための模式図(A)~(C)である。
図5】本発明の第1実施形態による脳機能計測装置が安静時累積計測データを生成する処理を説明するためのフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態による制御部が脳血流情報を識別可能にする処理を説明するための模式図である。
図7】本発明の第2実施形態による脳機能計測装置が安静時累積計測データを生成する処理を説明するためのフローチャートである。
図8】本発明の第3変形例による制御部が脳血流情報を識別可能にする処理を説明するための模式図である。
図9】本発明の第3変形例態による脳機能計測装置が安静時累積計測データを生成する処理を説明するためのフローチャートである。
図10】本発明の第1変形例による脳機能計測装置の全体構成を示す模式図である。
図11】本発明の第2変形例による脳機能計測装置の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1図5を参照して、本発明の第1実施形態による脳機能計測装置100の構成について説明する。
【0024】
(脳機能計測装置の構成)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による脳機能計測装置100の構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、脳機能計測装置100は、脳血流情報取得部1と、安静情報取得部2と、制御部3とを備えている。
【0026】
脳機能計測装置100は、たとえば、近赤外分光法(NIRS)を用いて被験者Pの脳活動を光学的に計測し、時系列の計測結果データを生成する装置(光計測装置)である。
【0027】
第1実施形態では、脳機能計測装置100は、被験者Pが表示部4に表示されたタスクを実行している際の脳の活動を計測するように構成されている。被験者Pには、たとえば、表示部4に表示された+や◎などのマークを見続けるタスクが課される。表示部4は、たとえば、液晶モニタなどを含む。
【0028】
脳血流情報取得部1は、制御部3からの入力信号に基づいて、被験者Pの脳血流情報d1を取得するように構成されている。脳血流情報取得部1の詳細な構成については後述する。
【0029】
安静情報取得部2は、被験者Pが安静であるか否かを判定するための安静情報d5を取得するように構成されている。具体的には、安静情報取得部2は、安静情報d5として、被験者Pの心拍情報d5a(図4(A)参照)を取得するように構成されている。安静情報取得部2は、いわゆる入出力インターフェースとして構成されている。
【0030】
安静情報取得装置6は、制御部3からの入力信号に基づいて、被験者Pの安静情報d5を取得するように構成されている。具体的には、安静情報取得装置6は、被験者Pの心拍情報d5aを取得するように構成されている。安静情報取得装置6は、たとえば、心電図装置を含む。安静情報取得装置6は、被験者Pに取り付ける複数の電極と、複数の電極が取得した被験者Pの心臓の電位に基づいて心電図を生成する制御部と、制御部が生成した心電図を表示する表示部などを含む。
【0031】
制御部3は、脳血流情報d1のうち、被験者Pの脳が安静状態の脳血流情報d1を、安静時計測データd2として取得するように構成されている。また、制御部3は、安静時計測データd2に基づいて、安静時計測データd2を累積した安静時累積計測データd3を生成するように構成されている。また、制御部3は、脳血流情報取得部1および安静情報取得装置6における計測を同期させる信号を、脳血流情報取得部1および安静情報取得装置6のそれぞれに出力するように構成されている。制御部3は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などを含む。制御部3が安静時計測データd2を取得する詳細な構成および安静時累積計測データd3を生成する詳細な構成については後述する。
【0032】
また、制御部3は、記憶部7を含んでいる。記憶部7は、脳血流情報d1、安静情報d5、安静時計測データd2および安静時累積計測データd3などを記憶するように構成されている。記憶部7は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)や不揮発性のメモリなどを含む。
【0033】
(脳血流情報取得部の構成)
次に、図2を参照して、脳血流情報取得部1の構成について説明する。
【0034】
脳血流情報取得部1は、光ファイバを介して接続された計測プローブ(送光プローブ10aおよび受光プローブ10b)を用いて、被験者Pの脳血流情報d1、を取得するように構成されている。
【0035】
図2に示すように、脳血流情報取得部1は、送光プローブ10aと、受光プローブ10bと、光出力部11と、光検出部12と、計測制御部13と、本体制御部14と、記憶部15と、入出力部16とを備えている。
【0036】
脳血流情報取得部1の送光プローブ10aおよび受光プローブ10bは、それぞれ、被験者Pの頭部に装着されたプローブ固定用のホルダ5に取り付けられることにより、被験者Pの頭部表面上の所定位置に配置される。
【0037】
光出力部11は、近赤外光の波長領域で複数の計測光を送光プローブ10aに出力可能に構成されている。光出力部11は、たとえば、半導体レーザーを含む。光検出部12は、受光プローブ10bに入射した計測光を、光ファイバを介して取得し検出するように構成されている。光検出部12は、たとえば、光電子倍増管を含む。
【0038】
計測制御部13は、被験者Pの頭部に配置された計測プローブ(送光プローブ10aおよび受光プローブ10b)により脳機能計測を行う。本体制御部14は、CPUやメモリなどから構成されるコンピュータであり、記憶部15に格納された各種プログラムを実行することにより、脳血流情報取得部1の本体制御部14として機能するように構成されている。記憶部15は、たとえばHDDからなり、本体制御部14が実行する制御プログラムや設定情報を格納するとともに、計測の結果得られた脳血流情報d1を記憶することが可能である。また、入出力部16は、脳機能計測装置100などの外部機器との接続用インターフェースである。
【0039】
第1実施形態では、光出力部11は、近赤外光の波長領域の計測光を被験者Pの頭部表面上に配置した送光プローブ10aから照射する。そして、光検出部12は、頭部内で反射した計測光を頭部表面上に配置した受光プローブ10bに入射させて検出することにより、計測光の強度(受光量)を取得する。送光プローブ10aおよび受光プローブ10bは、それぞれ複数設けられ、頭部表面上の所定位置に各プローブを固定するためのホルダ5に取り付けられる。計測制御部13は、複数波長(たとえば、780nm、805nmおよび830nmの3波長)の計測光の強度(受光量)とヘモグロビンの吸光特性とに基づいて、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビンおよび総ヘモグロビンの変化量を計測する。計測制御部13は、ヘモグロビンの変化量を取得することにより、被験者Pの脳血流情報d1を取得するように構成されている。脳血流情報取得部1は、取得した脳血流情報d1を、入出力部16を介して脳機能計測装置100の制御部3へ出力する。
【0040】
(安静時計測データd2の取得および安静時累積計測データの生成)
次に、図3を参照して、制御部3が安静時計測データd2を取得する構成および制御部3が安静時累積計測データd3を生成する構成について説明する。
【0041】
図3(A)は、被験者Pの脳血流情報d1の模式図である。図3(A)に示す脳血流情報d1は、被験者Pの脳が安静となっている場合の安静時計測データd2と、被験者Pの脳が安静でない(非安静状態である)場合の非安静時計測データd4とを含んでいる。なお、図3(A)では、便宜上、非安静状態の脳血流情報d1(非安静時計測データd4)に対して斜線のハッチングを付している。
【0042】
身体的な安静状態と異なり、脳の安静状態は必ずしも被験者Pが自由にコントロールできるわけはない。そのため、脳の安静状態は所望の計測時間の間継続するとは限らず、図3(A)に示すように断続的に生じ得る。そこで、制御部3は、安静情報取得部2により取得された安静情報d5に基づいて、安静情報d5が所定の条件を満たした状態における脳血流情報d1を、安静時計測データd2として取得するように構成されている。具体的には、制御部3は、脳血流情報d1のうち、被験者Pの脳が安静状態であると判断された脳血流情報d1を安静時計測データd2として取得するように構成されている。なお、制御部3が脳の安静状態を判別する方法については後述する。
【0043】
図3に示す例では、制御部3は、脳血流情報d1から、安静時計測データd2a、安静時計測データd2b、安静時計測データd2c、安静時計測データd2d、および安静時計測データd2eをそれぞれ取得するように構成されている。
【0044】
また、第1実施形態では、制御部3は、複数の安静時計測データd2を取得するとともに、安静時計測データd2を取得順に結合し、1つの安静時累積計測データd3を生成するように構成されている。具体的には、脳血流情報取得部1は、安静情報d5の取得中に脳血流情報d1を継続的に取得するように構成されており、制御部3は、継続的に取得された脳血流情報d1のうち、安静状態の情報を安静時計測データd2として抽出するとともに、抽出した安静時計測データd2に基づいて、安静時累積計測データd3を生成するように構成されている。
【0045】
図3に示す例では、制御部3は、取得した複数の安静時計測データd2(安静時計測データd2a~d2e)を取得した順に結合し、1つの安静時累積計測データd3を生成するように構成されている。したがって、安静時累積計測データd3には、脳血流情報d1から非安静時計測データd4(d4a~d4d)が除かれた各安静時計測データd2のみが含まれる。
【0046】
また、第1実施形態では、制御部3は、安静情報d5が所定の条件を満たした状態が所定時間以上の場合に、脳血流情報d1を安静時計測データd2として取得するように構成されている。また、制御部3は、安静時計測データd2の累積計測時間が所定の計測時間に達した場合、計測処理を終了するように構成されている。なお、第1実施形態では、累積計測時間は、たとえば、8分に設定されている。また、各安静時計測データd2は、計測時間(タイムスタンプ)が連続でないため、制御部3は、安静時累積計測データd3を生成した際に、結合した順にタイムスタンプを振り直すように構成されている。
【0047】
第1実施形態では、制御部3は、取得した脳血流情報d1、安静情報d5、安静時計測データd2および生成した安静時累積計測データd3を、記憶部7に記憶するように構成されている。また、脳血流情報d1には、安静時計測データd2と、非安静時計測データd4とが含まれているため、脳血流情報d1は、所定の計測時間よりも長い時間のデータとなりうる。
【0048】
(安静状態の判別)
次に、図4を参照して、第1実施形態による制御部3が、被験者Pの脳が安静状態か否かを判別する構成について説明する。
【0049】
図4(A)は、安静情報取得装置6によって取得された被験者Pの安静情報d5を示すグラフg1の模式図である。グラフg1の横軸は時間(秒)であり、縦軸は電位(mV)である。図4(B)は、安静情報d5のRR間隔の変動(心拍の時間間隔の変動d6)を示すグラフg2の模式図である。グラフg2の横軸は拍動回数(時間軸に相当)であり、縦軸はRR間隔である。なお、RR間隔とは、グラフg1において、隣り合うR波20同士の間隔のことである。図4(C)は、安静情報d5のRR間隔の変動を示すグラフg2のパワースペクトル解析の結果を示すグラフg3の模式図である。グラフg3の横軸は周波数であり、縦軸は、スペクトル密度(PSD:Power Spectral Density)(msec/Hz)である。
【0050】
第1実施形態では、制御部3は、安静情報d5として取得された被験者Pの心拍情報d5aに基づいて、被験者Pの心拍の時間間隔の変動d6を取得するように構成されている。具体的には、制御部3は、被験者Pの心拍の所定数を1つのグループとして、1グループ内における心拍情報d5aのRR間隔に基づいて、心拍の時間間隔の変動d6を取得するように構成されている。1グループに含める心拍の所定数は、たとえば、128点である。
【0051】
第1実施形態では、制御部3は、被験者Pの心拍の時間間隔の変動d6に基づいて副交感神経の活動を取得し、被験者Pの脳の安静状態を判別するように構成されている。具体的には、図4(B)に示すように、制御部3は、被験者Pの心拍情報d5a(安静情報d5)から、心拍の時間間隔の変動d6の指標として、RR間隔の変動を示すグラフg2を取得する。そして、制御部3は、グラフg2をパワースペクトル解析することにより、グラフg3を取得する。なお、パワースペクトル解析とは、心拍の時間間隔の変動d6をフーリエ変換することより、心拍の時間間隔の変動d6に含まれる周波数成分の強度を示す周波数スペクトルを取得することを意味する。
【0052】
RR間隔のパワースペクトル密度(グラフg3)では、2つのピークが形成される。これらの2つのピークが形成される周波数成分のうち、高周波数のピークをHF成分21、低周波数のピークをLF成分22とする。HF成分21は、副交感神経の活動を反映し、LF成分22は、交感神経の活動を反映する。副交感神経が優位の場合、脳はリラックスした安静状態にあるとされる。したがって、本明細書では、脳の安静状態とは、パワースペクトル密度(グラフg3)において、HF成分21の強度が所定の閾値を超える状態であるとする。
【0053】
具体的には、制御部3は、被験者Pの心拍の時間間隔の変動d6(グラフg2)をパワースペクトル解析することにより、副交感神経の活動の指標であるHF成分21を取得するとともに、HF成分21の強度が所定の強度Thを超えた状態を脳の安静状態と判別するように構成されている。すなわち、安静情報d5が所定の条件を満たした場合とは、HF成分21の強度が所定の強度Thを超えている状態のことである。なお、HF成分21は、グラフg3のうち、周波数が約0.20から約0.40Hzの帯域に含まれる周波数成分のことである。
【0054】
また、制御部3は、心拍情報d5aから心拍数を取得する範囲を1点ずつ後に計測されたデータにずらしてグラフg3を生成するように構成されている。したがって、制御部3は、経時的に被験者Pの脳の安静状態の判別を行うことができる。
【0055】
(安静時累積計測データの生成処理)
次に、図5を参照して、第1実施形態による制御部3が安静時累積計測データd3を生成する一連の処理について説明する。
【0056】
ステップS1において、制御部3は、操作者の入力操作に基づいて、脳血流情報取得部1および安静情報取得装置6に対して、データ取得開始の信号を出力する。その後、ステップS2において、制御部3は、脳血流情報d1および安静情報d5を取得する。その後、処理はステップS3へ進む。
【0057】
ステップS3において、制御部3は、安静情報d5に基づいて、HF成分21を取得する。その後、ステップS4において、被験者Pの脳が安静状態か否かを判別する。すなわち、制御部3は、HF成分21の強度が所定の強度Thを超えているか否かによって、被験者Pの脳が安静状態か否かを判別する。被験者Pの脳が安静状態の場合は、処理はステップS5へ進む。被験者Pの脳が非安静状態の場合は、処理はステップS8へ進む。
【0058】
ステップS5において、制御部3は、被験者Pの脳の安静状態が所定時間以上であるか否かを判断する。被験者Pの脳の安静状態が所定時間以上の場合、処理はステップS6へ進む。被験者Pの脳の安静状態が所定時間未満の場合、処理はステップS7へ進む。
【0059】
ステップS6において、制御部3は、被験者Pの脳が安静状態であることを示す安静状態フラグをON状態にする。具体的には、制御部3は、被験者Pの脳が安静状態であると判別した場合には、安静状態を示す値(たとえば、1)を記憶部7に記憶する。その後、処理はステップS2へ戻る。
【0060】
ステップS7において、制御部3は、安静状態フラグをOFF状態にする。具体的には、制御部3は、被験者Pの脳が非安静状態であると判別した場合には、記憶部7に記憶されている安静状態を示す値(たとえば、1)を、非安静状態を示す値(たとえば、0)に上書きする。なお、安静状態フラグがON状態にされていない場合は、処理はステップS2へ戻る。
【0061】
ステップS8において、制御部3は、脳血流情報d1に安静時計測データd2の始点が設定されているか否かを判別する。脳血流情報d1に安静時計測データd2の始点が設定されている場合、処理はステップS9へ進む。脳血流情報d1に安静時計測データd2の始点が設定されていない場合、処理はステップS2へ戻る。
【0062】
ステップS9において、制御部3は、安静時計測データd2を取得する。具体的には、制御部3は、被験者Pの脳が安静状態を継続している期間の脳血流情報d1を、安静時計測データd2として取得する。その後、ステップS10において、制御部3は、安静状態フラグをOFF状態にする。その後、処理はステップS11へ進む。
【0063】
その後、ステップS11において、制御部3は、安静時計測データd2の累積計測時間が所定時間を超えているかを判別する。安静時計測データd2の累積計測時間が所定時間を超えている場合、処理はステップS12へ進む。安静時計測データd2の累積計測時間が所定時間を超えていない場合、処理はステップS9へ戻る。
【0064】
ステップS12において、制御部3は、複数の安静時計測データd2から1つの安静時累積計測データd3を生成し、処理を終了する。
【0065】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
第1実施形態では、上記のように、脳機能計測装置100は、被験者Pの脳血流情報d1を取得する脳血流情報取得部1と、被験者Pが安静であるか否かを判別するための安静情報d5を取得する安静情報取得部2と、安静情報取得部2により取得された安静情報d5に基づいて、安静情報d5が所定の条件を満たした状態における脳血流情報d1を、安静時計測データd2として取得する制御部3とを備える。これにより、被験者Pの脳が安静でない場合の脳血流情報d1が安静時計測データd2として取得されることを抑制することが可能となる。したがって、計測結果の信頼性を向上させることができので、信頼性を向上させた計測結果を用いて解析することが可能となる。その結果、安静時脳機能の解析の精度を向上させることができる。
【0067】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部3は、安静時計測データd2に基づいて、安静時計測データd2を累積した安静時累積計測データd3を生成するように構成されている。これにより、安静時計測データd2から生成された安静時累積計測データd3によって脳機能の解析を行うことができる。その結果、安静状態と非安静状態とが混在したデータを用いて脳機能の解析を行う場合と比較して、効率的に脳機能の解析を行うことができる。
【0068】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の安静時計測データd2を取得するとともに、安静時計測データd2を取得順に結合し、1つの安静時累積計測データd3を生成するように構成されている。これにより、安静時計測データd2を時系列に結合した安静時累積計測データd3を用いて脳機能の解析を行うことができる。その結果、複数の安静時計測データd2が時系列に結合しているので、安静時計測データd2だけを経時的に解析することが可能となり、より正確にかつ容易に脳機能の解析を行うことができる。
【0069】
また、第1実施形態では、上記のように、脳血流情報取得部1は、安静情報d5の取得中に脳血流情報d1を継続的に取得するように構成されており、制御部3は、継続的に取得された脳血流情報d1のうち、安静状態の情報を安静時計測データd2として抽出するとともに、抽出した安静時計測データd2に基づいて、安静時累積計測データd3を生成するように構成されている。これにより、安静情報d5の取得と、脳血流情報d1の取得とを並行して行いながら、脳血流情報d1から安静時計測データd2を抽出することにより安静時累積計測データd3を生成することができる。その結果、脳の安静状態、非安静状態に応じて脳血流情報d1を取得するか否かを切り替えて、安静状態における脳血流情報d1のみを安静時計測データd2として取得する場合と比較して、脳血流情報d1を取得するか否かを切り替えずに、継続的に取得された脳血流情報d1から安静時計測データd2を抽出することが可能となるので、計測処理の制御が複雑になることを抑制することができる。
【0070】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部3は、安静情報d5が所定の条件を満たした状態が所定時間以上の場合に、脳血流情報d1を安静時計測データd2として取得するように構成されている。これにより、脳が安静状態であった場合でも、脳の安静状態が所定時間未満の場合には、安静時計測データd2として取得することを抑制することができる。その結果、たとえば、安静状態と非安静状態とが交互に繰り返すなど、脳の安静状態が短くなることにより、安静時計測データd2を有意なデータとして取り扱うことができない場合に、安静時累積計測データd3を生成するために安静時計測データd2を抽出することを抑制することが可能となる。したがって、安静時累積計測データd3の信頼性をより一層向上させるとことが可能となるので、脳機能の解析の精度をより一層向上させることができる。
【0071】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部3は、安静時計測データd2の累積計測時間が所定の計測時間に達した場合、計測処理を終了するように構成されている。これにより、安静時計測データd2の累積計測時間に基づいて計測処理を終了させることができる。その結果、たとえば、安静時計測データd2の累積計測時間が所定時間に達した場合に操作者が計測処理を終了させる場合と比較して、ユーザビリティ(操作者の利便性)を向上させることができる。
【0072】
また、第1実施形態では、上記のように、安静情報取得部2は、安静情報d5として、被験者Pの心拍情報d5aを取得するように構成されており、制御部3は、被験者Pの心拍の時間間隔の変動d6に基づいて副交感神経の活動を取得し、被験者Pの脳の安静状態を判別するように構成されている。これにより、心拍の時間間隔の変動d6に基づいて副交感神経の活動を取得することにより、脳の安静状態を判別することができる。その結果、心拍情報d5aを取得することにより脳の安静状態を判別することが可能となるので、脳が安静状態か否かを容易に判別することができる。
【0073】
また、第1実施形態では、上記のように、被験者Pの心拍の時間間隔の変動d6をパワースペクトル解析することにより、副交感神経の活動の指標であるHF成分21を取得するとともに、HF成分21の強度が所定の強度Thを超えた状態を脳の安静状態と判別するように構成されている。これにより、副交感神経の活動の指標であるHF成分21に基づいて、脳の安静状態を判別することができる。その結果、HF成分21の強度が所定の強度Thを超えているか否かを確認することにより脳の安静状態を判別することが可能となるので、脳が安静状態か否かをさらに容易に判別することができる。
【0074】
[第2実施形態]
次に、図1図6および図7を参照して、本発明の第2実施形態による脳機能計測装置200について説明する。脳血流情報d1から安静時計測データd2を抽出し、安静時累積計測データd3を生成する第1実施形態とは異なり、第2実施形態では、制御部30は、継続的に取得された脳血流情報d1に対して、安静情報d5に基づいて安静状態および非安静状態を識別可能にする処理を施すように構成されている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0075】
脳血流情報d1の取得と安静情報d5の取得とを並行して行う第2実施形態では、制御部30は、継続的に取得された脳血流情報d1に対して、安静情報d5に基づいて安静状態および非安静状態を識別可能にする処理を施すように構成されている。
【0076】
図6(A)は、継続的に取得された脳血流情報d1に対して、安静状態と非安静状態とを識別可能にする処理を施した例を示す模式図である。
【0077】
図6(A)に示すように、第2実施形態では、制御部30は、被験者Pの脳が安静状態の場合、脳血流情報d1にタイムスタンプt(タイムスタンプt0~t9)を付与することにより、脳血流情報d1における安静状態および非安静状態を識別可能にする処理を施すように構成されている。なお、図6(A)に示す例では、タイムスタンプt0、t2、t4、t6およびt8が、安静時計測データd2の始点を示している。また、図6(A)に示す例では、タイムスタンプt1、t3、t5、t7およびt9が、安静時計測データd2の終点を示している。
【0078】
すなわち、図6(A)に示す例では、タイムスタンプt0とタイムスタンプt1との間の脳血流情報d1、タイムスタンプt2とタイムスタンプt3との間の脳血流情報d1、タイムスタンプt4とタイムスタンプt5との間の脳血流情報d1、タイムスタンプt6とタイムスタンプt7との間の脳血流情報d1、タイムスタンプt8とタイムスタンプt9との間の脳血流情報d1が、それぞれ安静時計測データd2(安静時計測データd2a~d2e)である。
【0079】
また、第2実施形態では、制御部30は、安静状態と非安静上とを識別可能にする処理を施された脳血流情報d1を、図示しない表示部に表示するように構成されている。したがって、医師や技師等の操作者は、表示部に表示された脳血流情報d1を確認することにより、脳血流情報d1における安静状態の分布などの知見を得ることができる。表示部は、たとえば、液晶モニタなどを含む。
【0080】
(安静時累積計測データの生成処理)
次に、図7を参照して、第2実施形態による制御部30が安静時累積計測データd3を生成する一連の処理について説明する。なお、ステップS1~ステップS12の処理は、第1実施形態と同様の処理であるため、詳細な説明は省略する。
【0081】
ステップS1~ステップS9において、制御部30は、安静時計測データd2を取得する。その後、処理はステップS12へ進む。
【0082】
ステップS12において、制御部30は、継続的に取得された脳血流情報d1に対して、安静時計測データd2に対応する箇所に、タイムスタンプt(タイムスタンプt0~t9)を付与する。その後、処理はステップS10~ステップS12と進み、制御部30は、安静時累積計測データd3を生成し、処理を終了する。
【0083】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0085】
第2実施形態では、上記のように、制御部30は、継続的に取得された脳血流情報d1に対して、安静情報d5に基づいて安静状態および非安静状態を識別可能にする処理を施すように構成されている。これにより、被験者Pの脳機能検査の開始から終了までのデータを取得することができる。その結果、脳機能検査全体の計測結果を用いて脳機能の解析を行うことが可能となるので、脳機能の解析を容易に行うことができる。また、継続的に取得された脳血流情報d1において、脳の安静状態と非安静状態とを識別することが可能となるので、脳血流情報d1における脳の安静状態と非安静状態との分布などの知見を得ることができる。
【0086】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0087】
[第3実施形態]
次に、図1図8および図9を参照して、本発明の第3実施形態による脳機能計測装置500(図1参照)について説明する。脳血流情報d1から安静時計測データd2を抽出し、安静時累積計測データd3を生成する第1実施形態とは異なり、第3実施形態では、制御部31(図1参照)は、安静情報取得部2により取得された安静情報d5に基づいて、被験者Pが安静となった際に、安静時計測データd2として脳血流情報d1の取得を開始するとともに、被験者Pが安静でなくなった際に、脳血流情報d1の取得を停止するように構成されている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0088】
図1に示すように、脳機能計測装置500は、被験者Pの脳血流情報d1を取得する脳血流情報取得部1と、被験者Pが安静であるか否かを判別するための安静情報d5を取得する安静情報取得部2と、安静情報取得部2により取得された安静情報d5に基づいて、被験者Pが安静となった際に、安静時計測データd2として脳血流情報d1の取得を開始するとともに、被験者Pが安静でなくなった際に、脳血流情報d1の取得を停止する制御部31とを備える。
【0089】
図8(A)に示すように、第3実施形態では、制御部31は、被験者Pの安静情報d5を取得する。制御部31は、安静情報d5に基づいて、被験者Pの脳が安静状態であるか否かを判定する。なお、制御部31が、被験者Pの脳が安静状態であるか否かを判定する構成は、上記第1実施形態における制御部3と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0090】
第3実施形態では、制御部31は、被験者Pの脳の安静状態に基づいて、脳血流情報取得部1に対して、脳血流情報取得制御信号d9を出力するように構成されている。具体的には、制御部31は、被験者Pの脳が安静状態である場合に、脳血流情報取得部1に対して、脳血流情報取得開始信号d9aを出力するように構成されている。また、制御部31は、被験者Pの脳が安静状態でない場合に、脳血流情報取得部1に対して、脳血流情報取得停止信号d9bを出力するように構成されている。
【0091】
すなわち、図8(A)に示す例では、脳血流情報取得開始信号d9aが出力された後、脳血流情報取得停止信号d9bが出力されるまでの期間が、安静期間d7(d7a~d7e)である。また、脳血流情報取得停止信号d9bが出力された後、脳血流情報取得開始信号d9aが出力されるまでの期間が、非安静期間d8(d8a~d8e)である。制御部31は、安静期間d7(d7a~d7e)における脳血流情報d1を、安静時計測データd2(d2a~d2e)として取得し、安静時累積計測データd3を生成するように構成されている。
【0092】
(安静時累積計測データの生成処理)
次に、図9を参照して、第3実施形態による制御部31が安静時累積計測データd3を生成する一連の処理について説明する。なお、ステップS1、ステップS3、およびステップS11の処理は、上記第1実施形態と同様の処理であるため、詳細な説明は省略する。なお、以下では、便宜上、安静情報取得装置6による処理と、脳血流情報取得部1による処理とを、個々に説明するが、実際にはこれらの処理は並行して行われる。
【0093】
(安静情報取得装置における処理)
ステップS1において、制御部31は、操作者の入力操作に基づいて、安静情報取得装置6に対して、データ取得開始の信号を出力する。次に、ステップS13において、制御部31は、安静情報d5を取得する。その後、処理はステップS3へ進む。
【0094】
ステップS3において、制御部3は、安静情報d5に基づいて、HF成分21を取得する。その後、ステップS14において、制御部31は、HF成分21に基づいて被験者Pの脳の安静状態を判別し、脳血流情報取得部1に対して、脳血流情報取得制御信号d9(脳血流情報取得開始信号d9a、または、脳血流情報取得停止信号d9b)を出力する。
【0095】
次に、ステップS15において、制御部31は、安静情報取得停止信号d10が入力されたか否かを判定する。安静情報取得停止信号d10が入力された場合、処理は、終了する。安静情報取得停止信号d10が入力されていない場合、処理は、ステップS13へ進む。
【0096】
(脳血流情報取得部による処理)
ステップS1において、制御部31は、操作者の入力操作に基づいて、脳血流情報取得部1に対して、データ取得開始の信号を出力する。なお、安静情報取得装置6による処理におけるステップS1の処理と、脳血流情報取得部1による処理におけるステップS1の処理とは、同期して行われる。
【0097】
次に、ステップS16において、制御部31は、脳血流情報取得制御信号d9が入力されたか否かを判定する。脳血流情報取得制御信号d9が入力された場合、処理は、ステップS17へ進む。脳血流情報取得制御信号d9が入力されていない場合、制御部31は、ステップS16の処理を繰り返す。
【0098】
ステップS17において、制御部31は、脳血流情報取得制御信号d9が脳血流情報取得開始信号d9aであるか、脳血流情報取得停止信号d9bであるかを判定する。脳血流情報取得制御信号d9が脳血流情報取得開始信号d9aである場合、処理は、ステップS18へ進む。脳血流情報取得制御信号d9が脳血流情報取得停止信号d9bである場合、処理は、ステップS19へ進む。
【0099】
処理がステップS18に進んだ場合、ステップS18において、脳血流情報取得部1は、安静時計測データd2として脳血流情報d1の取得を開始する。なお、処理がステップS18に進んだ際に、脳血流情報取得部1が脳血流情報d1の取得を開始している場合には、ステップS18の処理は省略される。また、処理がステップS19に進んだ場合、ステップS19において、脳血流情報取得部1は、脳血流情報d1の取得を停止する。なお、処理がステップS19に進んだ際に、脳血流情報取得部1が脳血流情報d1の取得を開始していない場合には、ステップS19の処理は省略される。
【0100】
次に、ステップS11において、制御部31は、安静時計測データd2の累積計測時間が所定時間を超えているかを判別する。安静時計測データd2の累積計測時間が所定時間を超えている場合、処理はステップS20へ進む。安静時計測データd2の累積計測時間が所定時間を超えていない場合、処理はステップS16へ進む。
【0101】
ステップS20において、制御部31は、安静情報取得装置6に対して、安静情報取得停止信号d10を出力し、処理を終了する。
【0102】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0103】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0104】
第3実施形態では、上記のように、脳機能計測装置500は、被験者Pの脳血流情報d1を取得する脳血流情報取得部1と、被験者Pが安静であるか否かを判別するための安静情報d5を取得する安静情報取得部2と、安静情報取得部2により取得された安静情報d5に基づいて、被験者Pが安静となった際に、安静時計測データd2として脳血流情報d1の取得を開始するとともに、被験者Pが安静でなくなった際に、脳血流情報d1の取得を停止する制御部31とを備える。これにより、上記第1実施形態における脳機能計測装置100と同様に、安静時脳機能の解析の精度を向上させることができる。また、被験者Pが安静時にのみ脳血流情報d1を取得するため、安静時と非安静時とが混在している状態において取得した脳血流情報d1から安静時の脳血流情報d1を安静時計測データd2として取得する構成と異なり、脳血流情報d1を取得した後において、被験者Pが安静であるか否かを判別することなく、脳血流情報d1を安静時計測データd2として取得することができる。
【0105】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0106】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0107】
たとえば、上記第1~第3実施形態では、制御部3(制御部30、制御部31)が、安静情報d5として、被験者Pの心拍情報d5aを取得する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部3(制御部30、制御部31)は、被験者Pの発汗の変化や、呼吸数の変化などを、安静情報d5として取得するように構成されていてもよい。制御部3(制御部30)は、被験者Pの脳が安静か否かを判別することが可能な情報であれば、どのような情報を取得するように構成されていてもよい。
【0108】
また、上記第1~第3実施形態では、制御部3(制御部30、制御部31)が、安静時計測データd2の累積計測時間が8分を超えた場合、安静時累積計測データd3を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。安静時計測データd2の累積計測時間は任意の時間でよい。
【0109】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部3(制御部30)が、複数の安静時計測データd2から1つの安静時累積計測データd3を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、1つの安静時計測データd2が所定の累積計測時間を超えるような場合は、制御部3(制御部30)は、1つの安静時計測データd2から安静時累積計測データd3を生成するように構成されていてもよい。
【0110】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部3(制御部30)が安静時累積計測データd3を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。制御部3(制御部30)が安静時累積計測データd3を生成しない構成であってもよい。その場合、図6(A)に示す脳血流情報d1を生成するだけでよい。
【0111】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部3(制御部30)が安静時計測データd2を取得順に結合し、安静時累積計測データd3を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部3(制御部30)は、安静時計測データd2を取得順に結合しなくてもよい。しかし、安静時計測データd2を取得順に結合することにより、安静時累積計測データd3が時系列のデータとなるため、安静時計測データd2を取得順に結合することが好ましい。
【0112】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部3(制御部30)が、安静時計測データd2の累積計測時間が所定の時間を超えた場合に、安静時累積計測データd3を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部3(制御部30)は、操作者の入力操作に基づいて、任意の累積計測時間で安静時累積計測データd3を生成するように構成されていてもよい。
【0113】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部3(制御部30)が、HF成分21の強度が所定の強度Thを超えている場合に、被験者Pの脳が安静状態であると判断する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、被験者Pの心拍情報d5aをパワースペクトル解析したグラフg3の約0.04から約0.15Hzの周波数成分である、LF成分22(図4参照)とHF成分21との比率に基づいて、被験者Pの脳の安静状態を判別するように構成されていてもよい。
【0114】
また、上記第2実施形態では、制御部30が、脳血流情報d1に対して、標識40(標識40a~40e)を付与することにより、安静状態および非安静状態を識別可能にする処理を施す構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、安静時計測データd2の色と、非安静時計測データd4の色とを変更することにより、安静状態および非安静状態を識別可能にするように構成されていてもよい。安静状態および非安静状態を識別可能にすることができれば、どのような処理を行う構成であってもよい。
【0115】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部3(制御部30)が、被験者Pの心拍の128点を1グループとして心拍の時間間隔の変動d6を取得する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。心拍の時間間隔の変動d6の取得する際の1グループに含める心拍の数は、任意に設定すればよい。
【0116】
また、上記第1および第2実施形態では、脳機能計測装置100(脳機能計測装置200)がNIRSを用いて脳血流情報d1を取得する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、脳機能計測装置100(脳機能計測装置200)は、fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)やSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)などにより脳血流情報d1を取得するように構成されていてもよい。
【0117】
また、上記第1および第2実施形態では、脳血流情報取得部1が脳血流情報d1を取得する脳血流情報取得装置である構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図10に示すように、脳機能計測装置100(脳機能計測装置200)と、脳血流情報取得装置8と、安静情報取得装置6とを備える、脳機能計測システム300として構成されていてもよい。脳機能計測システム300として構成されている場合、脳血流情報取得部1は、脳血流情報取得装置8が取得した脳血流情報d1を取得する入出力インターフェースとして構成すればよい。
【0118】
また、上記第1および第2実施形態では、脳血流情報取得部1が脳血流情報取得装置8であり、安静情報取得部2が入出力インターフェースである構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図11に示すように、脳機能計測装置400は、脳血流情報取得装置8と、安静情報取得装置6と、制御部3とを含むように構成されていてもよい。脳機能計測装置400が脳血流情報取得装置8と安静情報取得装置6とを含む場合、制御部3は、脳血流情報取得装置8および安静情報取得装置6から、脳血流情報d1および安静情報d5を取得するように構成すればよい。
【0119】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部3(31)が、被験者Pの心拍の時間感覚の変動に基づいて、HF成分を取得し、被験者Pの安静状態を判別するとともに、被験者Pの安静状態に基づいて、安静時計測データd2を取得する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。被験者Pの安静状態にかかわらず、所定期間の安静時計測データd2が取得されるまで、脳血流情報d1を取得してもよい。
【0120】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部3(30)が、脳血流情報d1の取得と並行して、安静時計測データd2を取得し、安静時累積計測データd3を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部3(30)は、脳血流情報d1を取得した後に、安静時計測データd2を取得し、安静時累積計測データd3を生成するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 脳血流情報取得部
2 安静情報取得部
3、30、31 制御部
21 HL成分
100、200 脳機能計測装置
d1 脳血流情報
d2 安静時計測データ
d3 安静時累積計測データ
d5 安静情報
d5a 心拍情報
d6 心拍の時間間隔の変動
P 被験者
Th 所定の強度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11