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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】レーザ加工機及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/0941 20060101AFI20231108BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20231108BHJP
   H01S 3/113 20060101ALI20231108BHJP
   H01S 5/183 20060101ALI20231108BHJP
   H01S 5/42 20060101ALI20231108BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20231108BHJP
   B23K 26/0622 20140101ALI20231108BHJP
   B23K 26/062 20140101ALI20231108BHJP
   G02F 1/37 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01S3/0941
H01S3/00 B
H01S3/113
H01S5/183
H01S5/42
B23K26/064 G
B23K26/0622
B23K26/062
G02F1/37
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020572187
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004019
(87)【国際公開番号】W WO2020166420
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2019023588
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 豪
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 将尚
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-076528(JP,A)
【文献】特開2007-173393(JP,A)
【文献】特開平10-084169(JP,A)
【文献】特開2018-085469(JP,A)
【文献】特表2009-535796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0064262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
H01S 5/00 - 5/50
B23K 26/00 - 26/70
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の一方の面上に設けられ、前記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、前記基板の他方の面側に前記発光体と接して配置される、前記励起光の入射によりパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、
前記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と
を具備し、
前記共振器は、前記励起光により励起されてレーザ光を発振する利得媒質層と、過飽和吸収体と、前記利得媒質層と前記過飽和吸収体とを挟持する一対のミラーと、を有する
レーザ加工機。
【請求項2】
請求項に記載のレーザ加工機であって、
前記レーザ光源と前記光学系との間に設けられた波長変換層
を更に具備するレーザ加工機。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載のレーザ加工機であって、
前記光学系と前記加工対象物との間に設けられた厚みが部位によって異なる透明部材
を更に具備するレーザ加工機。
【請求項4】
請求項に記載のレーザ加工機であって、
前記発光体は、前記励起光を集光して前記共振器に対して出射する集光部材を有する
レーザ加工機。
【請求項5】
請求項に記載のレーザ加工機であって、
前記発光体は、前記励起光をコリメートして出射するコリメート部材と、前記コリメート部材から出射された光を集光して前記共振器に出射する集光部材を有する
レーザ加工機。
【請求項6】
請求項に記載のレーザ加工機であって、
前記レーザ光源からの前記パルスレーザ光の発振を制御する制御部
を更に具備するレーザ加工機。
【請求項7】
請求項に記載のレーザ加工機であって、
前記制御部は、複数の前記垂直共振器型面発光レーザ素子それぞれから出射される励起光に基づく前記パルスレーザ光の出射を個別に制御する
レーザ加工機。
【請求項8】
請求項に記載のレーザ加工機であって、
前記利得媒質層は、Yb:YAGである
レーザ加工機。
【請求項9】
請求項に記載のレーザ加工機であって、
前記過飽和吸収体は、Cr:YAGである
レーザ加工機。
【請求項10】
基板と、前記基板の一方の面上に設けられ、前記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、前記基板の他方の面側に前記発光体と接して配置される、前記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、
前記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と
を具備し、前記共振器は、前記励起光により励起されてレーザ光を発振する利得媒質層と、過飽和吸収体と、前記利得媒質層と前記過飽和吸収体とを挟持する一対のミラーと、を有するレーザ加工機を用いて、
隣り合う前記垂直共振型面発光レーザ素子それぞれから出射される励起光に基づいて発振される前記パルスレーザ光をそれぞれの発振のタイミングを異ならせて照射して前記加工対象物を加工する
レーザ加工方法。
【請求項11】
請求項10に記載のレーザ加工方法であって、
隣り合う前記垂直共振型面発光レーザ素子それぞれから出射される励起光に基づく前記パルスレーザ光の発振のタイミングを前記パルスレーザ光のパルス周期の半周期分ずらす
レーザ加工方法。
【請求項12】
基板と、前記基板の一方の面上に設けられ、前記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、前記基板の他方の面側に前記発光体と接して配置される、前記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、
前記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と、
前記レーザ光源と前記光学系との間に設けられた波長変換層と
を具備し、前記共振器は、前記励起光により励起されてレーザ光を発振する利得媒質層と、過飽和吸収体と、前記利得媒質層と前記過飽和吸収体とを挟持する一対のミラーと、を有するレーザ加工機を用いて、
前記加工対象物に、前記共振器から出射され前記波長変換層を通過しないパルスレーザ光と、前記波長変換層を通過することにより波長変換されたパルスレーザ光を照射して前記加工対象物を加工する
レーザ加工方法。
【請求項13】
基板と、前記基板の一方の面上に設けられ、前記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、前記基板の他方の面側に前記発光体と接して配置される、前記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、
前記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と、
前記光学系と前記加工対象物との間に設けられた厚みが部位によって異なる透明部材と
を具備し、前記共振器は、前記励起光により励起されてレーザ光を発振する利得媒質層と、過飽和吸収体と、前記利得媒質層と前記過飽和吸収体とを挟持する一対のミラーと、を有するレーザ加工機を用いて、
前記加工対象物に、前記透明部材によって形成される互いに焦点距離が異なる複数のパルスレーザ光を照射して、前記加工対象物を加工する
レーザ加工方法。
【請求項14】
基板と、前記基板の一方の面上に設けられ、前記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、前記基板の他方の面側に前記発光体と接して配置される、前記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、
前記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と、
前記レーザ光源と前記光学系との間に設けられた波長変換層と、
前記光学系と前記加工対象物との間に設けられた厚みが部位によって異なる透明部材と
を具備し、前記共振器は、前記励起光により励起されてレーザ光を発振する利得媒質層と、過飽和吸収体と、前記利得媒質層と前記過飽和吸収体とを挟持する一対のミラーと、を有するレーザ加工機を用いて、
加工波長が互いに異なる第1の加工波長で加工される第1の材料と第2の加工波長で加工される第2の材料とが積層されてなる前記加工対象物に、前記共振器から出射され前記波長変換層を通過しない第1の加工波長の第1のパルレーザ光と、前記波長変換層を通過することにより第2の加工波長に変換された第2のパルスレーザ光を、前記第1の材料に前記第1のパルスレーザ光の焦点位置が、前記第2の材料に前記第2のパルスレーザ光の焦点位置がくるように前記透明部材によって焦点距離を異ならせて照射し、前記加工対象物を加工する
レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、レーザ加工機、加工方法及びレーザ光源に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工において、高品質の加工を高速で実行することが求められており、このような加工を行う加工機の小型化及び低コスト化が求められている。
【0003】
レーザ加工を高速化するためにマルチビームが出射可能に構成されたレーザ加工装置がある。例えば、特許文献1には、1台のレーザ発振器から出力されるパルス状のレーザ光を、光学系で分岐して複数の加工ヘッドへ供給し、複数のビームを出射可能に構成したレーザ加工装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-53576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、1台のレーザ発振器から出力されるレーザ光を分岐してマルチビームを得る場合、レーザ光を分岐するための複雑な光学系が必要となり、小型化が困難であった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、小型化が可能なレーザ加工機、加工方法、及びレーザ光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係るレーザ加工機は、レーザ光源と、光学系とを具備する。
上記レーザ光源は、基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射するボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射によりパルスレーザ光を発振する共振器と、を有する。
上記光学系は、上記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する。
【0008】
この構成によれば、ボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子を用いているので、励起光が出射される側となる基板の他方の面側に共振器を配置することができる。
【0009】
上記発光体は、複数の上記垂直共振器型面発光レーザ素子を有してもよい。
【0010】
上記共振器は、上記励起光により励起されてレーザ光を発振する利得媒質層と、過飽和吸収体と、上記利得媒質層と上記過飽和吸収体とを挟持する一対のミラーと、を有してもよい。
【0011】
上記レーザ光源と上記光学系との間に設けられた波長変換層を更に具備してもよい。
【0012】
上記光学系と上記加工対象物との間に設けられた厚みが部位によって異なる透明部材を更に具備してもよい。
【0013】
上記発光体は、上記励起光を集光して上記共振器に対して出射する集光部材を有してもよい。
【0014】
上記発光体は、上記励起光をコリメートして出射するコリメート部材と、上記コリメート部材から出射された光を集光して上記共振器に出射する集光部材を有してもよい。
【0015】
上記レーザ光源からの上記パルスレーザ光の発振を制御する制御部を更に具備してもよい。
【0016】
上記制御部は、複数の上記垂直共振器型面発光レーザ素子それぞれから出射される励起光に基づく上記パルスレーザ光の出射を個別に制御してもよい。
【0017】
上記利得媒質層は、Yb:YAGであってもよい。
【0018】
上記過飽和吸収体は、Cr:YAGであってもよい。
【0019】
本技術の一形態に係るレーザ加工方法は、基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、上記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系とを具備するレーザ加工機を用いて、
隣り合う上記垂直共振型面発光レーザ素子それぞれから出射される励起光に基づいて発振される上記パルスレーザ光をそれぞれの発振のタイミングを異ならせて照射して上記加工対象物を加工する。
【0020】
隣り合う上記垂直共振型面発光レーザ素子それぞれから出射される励起光に基づく上記パルスレーザ光の発振のタイミングを、上記パルスレーザ光のパルス周期の半周期分ずらしてもよい。
【0021】
本技術の一形態に係るレーザ加工方法は、基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、上記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と、上記レーザ光源と上記光学系との間に設けられた波長変換層とを具備するレーザ加工機を用いて、
上記加工対象物に、上記共振器から出射され上記波長変換層を通過しないパルスレーザ光と、上記波長変換層を通過することにより波長変換されたパルスレーザ光を照射して上記加工対象物を加工する。
【0022】
本技術の一形態に係るレーザ加工方法は、基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、上記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と、上記光学系と上記加工対象物との間に設けられた厚みが部位によって異なる透明部材とを具備するレーザ加工機を用いて、
上記加工対象物に、上記透明部材によって形成される互いに焦点距離が異なる複数のパルスレーザ光を照射して、上記加工対象物を加工する。
【0023】
本技術の一形態に係るレーザ加工方法は、基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、上記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と、上記レーザ光源と上記光学系との間に設けられた波長変換層と、上記光学系と上記加工対象物との間に設けられた厚みが部位によって異なる透明部材とを具備するレーザ加工機を用いて、
加工波長が互いに異なる第1の加工波長で加工される第1の材料と第2の加工波長で加工される第2の材料とが積層されてなる上記加工対象物に、上記共振器から出射され上記波長変換層を通過しない第1の加工波長の第1のパルレーザ光と、上記波長変換層を通過することにより第2の加工波長に変換された第2のパルスレーザ光を、上記第1の材料に上記第1のパルスレーザ光の焦点位置が、上記第2の材料に上記第2のパルスレーザ光の焦点位置がくるように上記透明部材によって焦点距離を異ならせて照射し、上記加工対象物を加工する。
【0024】
本技術の一形態に係るレーザ光源は、発光体と、共振器とを具備する。
上記発光体は、基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射するボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する。
上記共振器は、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射によりパルスレーザ光を発振する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本技術の一実施形態に係るレーザ加工機の模式断面図である。
図2】上述のレーザ加工機の一部を構成する発光体の模式断面図である。
図3】第1の実施形態に係るレーザ光源の模式断面図である。
図4】パルスレーザ光の照射タイミングを説明するための図である。
図5】加工対象物に照射される、複数の垂直共振型面発光レーザ素子に基づくパルスレーザ光の位置関係を説明するための図である。
図6】加工方法の一例を説明するための図である。
図7】他のレーザ加工機の模式断面図である。
図8】加工対象物の加工の様子を説明するための図である。
図9】第2の実施形態に係るレーザ光源の模式断面図である。
図10】第3の実施形態に係るレーザ光源の模式断面図である。
図11】第4の実施形態に係るレーザ光源の模式断面図である。
図12】第5の実施形態に係るレーザ光源の走査例を説明する図である。
図13】本技術に係るレーザ光源からのパルスレーザ光の照射スポット位置と比較例に係るレーザ光源からのパルスレーザ光の照射スポット位置を説明するための模式図である。
図14】第6の実施形態に係るレーザ光源の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本技術のレーザ加工機、レーザ光源、レーザ加工法について、実施形態を例にあげて説明する。同様の構成については同様の符号を付し、既に説明がある構成についてはその説明を省略する場合がある。
【0027】
<第1の実施形態>
[レーザ加工機の構成]
本技術に係るレーザ加工機の一実施形態を説明する。
図1は、本技術に係るレーザ加工機の模式断面図である。
図1に示すように、レーザ加工機100は、レーザ光源4と、光学系5と、波長変換層6と、厚みが部位によって異なる透明部材7と、を具備する。本実施形態に係るレーザ加工機100は、加工対象物8に対して、複数の超短パルスレーザ光を照射し、加工対象物8に対し穴あけ加工、溝加工、分断加工等を施す。加工対象物8としては例えば半導体基板等があり、微細な加工が可能である。
【0028】
レーザ光源4は、ピコ秒領域(1ps~1000ps)のパルス幅の超短パルスレーザ光(以下、パルスレーザ光と称する場合がある。)を複数出射するマルチビームマイクロチップレーザ光源である。レーザ光源4は、複数のピコ秒領域のパルスレーザ光をアレイ状に出射可能である。
【0029】
レーザ光源4は、複数の垂直共振器型面発光レーザ素子(以下、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)素子と称する場合がある。)10a~10dを有する。VCSEL素子10a~10dはそれぞれ同じ構造を有する。各VCSEL素子10a~10dは、それぞれ励起光9a~9dを出射する。
【0030】
本実施形態では、4つのVCSEL素子それぞれに10a~10dの符号を付したが、特に区別する必要がない場合は、VCSEL素子10として説明する。同様に、励起光9a~9dというように特に区別する必要がない場合は、励起光9として説明する。
【0031】
また、本実施形態では、4つのVCSEL素子10a~10dが1次元配列された構成をあげて説明するが、VCSEL素子10の数及び配列はこれに限定されない。VCSEL素子10の数は、1つ又は2つ以上であってもよい。また、複数のVCSEL素子を2次元配列で配置してもよい。
【0032】
レーザ光源4からは例えばビーム径が100μm程度のピコ秒領域のパワー密度が高いパルスレーザ光が出射される。
レーザ光源4の構成については後述する。
【0033】
光学系5は、レーザ光源4から出射されるパルスレーザ光の加工対象物8への入射時のパルスレーザ光のビーム径を縮小して像面に結像する縮小光学系である。
光学系5は、複数のパルスレーザ光41、42、63、64を、それらのパルスレーザ光の空間分布を維持しながら、各パルスレーザ光のビーム径を縮小し、加工対象物8へ照射する。
【0034】
本実施形態では、レーザ光源4から複数のパルスレーザ光が発振されるので、加工対象物に照射する複数のパルスレーザ光を得るために1つのレーザ光を分岐する光学系が不要となる。これにより、単純かつ小型な光学系5とすることができ、レーザ光源4の大きさを小型化することができ、また、低コスト化が可能となる。また、レーザ光源4の小型化により、レーザ加工機100全体の大きさを小型化することができる。
【0035】
波長変換層6は、レーザ光源4と光学系5との間に配置される。波長変換層6を設けることにより、波長変換層6はレーザ光源4から出射されるパルスレーザ光の波長を変換し、より短波長のレーザ光を得ることが可能となる。
【0036】
波長変換層6は、例えば、レーザ光源4から出射される複数のパルスレーザ光のうち一部のパルスレーザ光の波長を変換するように、レーザ光源4のパルスレーザ光の出射面の一部に対応して配置される。
波長変換層6は平面を有するように構成でき、波長変換層6を、同じく平面を有するように構成可能なレーザ光源4のピコ秒発生共振器2(詳細については後述する。)に、平面同士を接して配置することができる。
【0037】
波長変換層6を設けることにより、異なる波長のパルスレーザ光を加工対象物8に対して一括して照射することができる。
例えば、加工対象物8が吸収波長の異なる複数の材料を有する場合、各材料に適した加工波長が異なる場合がある。本実施形態では異なる加工波長のパルスレーザ光を一括して加工対象物8に照射することができるので、各材料に対する加工を同一のレーザ加工機で一括して行うことができる。
【0038】
また、波長変換層6を設けることにより、1つのレーザ光源4から波長の異なる複数のパルスレーザ光を得ることができるので、異なる波長のパルスレーザ光毎に複数のレーザ光源を設ける必要がなく、レーザ加工機の低コスト化が可能となる。
【0039】
波長変換層6による波長変換には入射されるパルスレーザ光のパワー密度が係る。本実施形態では、波長変換層6には、ビーム径が100μm程度のピコ秒領域のパワー密度の高いパルスレーザ光がレーザ光源4から入射され、効率のよい波長変換が可能となる。
また、波長変換層6はレーザ光源4と接して配置することができるので、レーザ光源4から発振されるパルスレーザ光は効率よく波長変換層6に入射され、光の利用効率を高くすることができる。
【0040】
波長変換層6には、例えば、既知の非線形光学特性を有する結晶(非線形光学結晶)を単一、もしくは組み合わせて用いることができる。波長変換層6を用いることにより、基本波を、SHG(Second Harmonic Generation、第2高調波)、THG(Third Harmonic Generation、第3高調波)、FHG(Fourth Harmonic Generation、第4高調波)等に波長変換することができる。
【0041】
非線形光学結晶としては、例えば、KTP、KDP、DKDP、ADP、β―BBO、CBO、YCOB、GdCOB、GdYCOB、LiNO3、AgGaSe、KTA、CLBP、LBO、LB4、KN、AgGaS等を用いることができる。
【0042】
また、波長変換層6として、上述した非線形光学結晶に疑似位相整合(Quasi Phase Matching)法を用いて構成したQPM素子を用いることができる。QPM素子は、周期分極反転構造を結晶内に形成した波長変換素子からなり、高効率の波長変換が可能である。
【0043】
例えば、QPM素子において、第1の非線形結晶からなる2倍波変換部によりレーザ光源4から発振されるパルスレーザ光を2倍波(第2高調波、SHG)に波長変換する。更に、2倍波変換部により変換された2倍波と、2倍波変換部で2倍波に変換されなかったパルスレーザ光とを第2の非線形結晶からなる3倍波変換部により、和調波として3倍波を発生させて、パルスレーザ光を3倍波(第3高調波、THG)に変換させる方法等がある。
【0044】
図1に示す例では、レーザ光源4から出射され波長変換層6を透過しないパルスレーザ光41及び42は第1の波長を有する。一方、レーザ光源4から出射され波長変換層6を透過したパルスレーザ光63及び64は、第1の波長とは異なる第2の波長を有する。
【0045】
このように、本実施形態のレーザ加工機100では、同じ波長のパルスレーザ光を複数発振する1つのレーザ光源4から、波長変換層6を用いて、波長が互いに異なる複数のパルスレーザ光を、加工対象物8に照射することができる。
【0046】
部位毎に厚みが異なる透明部材(以下、透明部材と称する場合がある。)7は、光学系5と加工対象物8との間に設けられる。透明部材7にはレーザ光源4から出射され光学系5を透過したパルスレーザ光が入射される。
【0047】
透明部材7は、部位毎に厚みが異なり、本実施形態においては、図面上、右から左に向かって厚みが漸次減少するテーパ状を有している。尚、厚みが段階的に異なる階段形状の透明部材7としてもよい。
【0048】
パルスレーザ光が透明部材7を通過する部位の厚みによって、各パルスレーザ光の焦点距離が異なり、加工対象物8における各パルスレーザ光が照射される焦点位置が異なる。このように、部位毎に厚みが異なる透明部材7は、焦点距離が互いに異なる複数のパルスレーザ光を形成する。
【0049】
例えば、図1に示す例では、VCSEL素子10aからの励起光9aに基づいて発振されるパルスレーザ光41は、加工対象物8の位置81を焦点位置として照射される。
VCSEL素子10bからの励起光9bに基づくパルスレーザ光42は加工対象物8の位置82を焦点位置として照射される。
VCSEL素子10cからの励起光9cに基づくパルスレーザ光63は加工対象物8の位置83を焦点位置として照射される。
VCSEL素子10dからの励起光9dに基づくパルスレーザ光64は加工対象物8の位置84を、それぞれ焦点位置として照射される。
位置81~84は、レーザ光源4の出射面からの距離が互いに異なった位置にある。
【0050】
このように、本実施形態のレーザ加工機100では、複数のパルスレーザ光を発振する1つのレーザ光源4から、部位毎に厚みが異なる透明部材7を用いて、焦点距離が互いに異なる複数のパルスレーザ光を、加工対象物8に照射することができる。
透過する透明部材7の厚みが薄いほど焦点距離が短くなる。
【0051】
各パルスレーザ光の焦点距離を変えることができる透明部材7を用いることにより、加工対象物を異なる深さ位置で加工することができ、厚みの厚い加工対象物の穴あけ、溝加工、切断加工といった加工を効率よく行うことができる。
【0052】
各パルスレーザ光の焦点距離は、パルスレーザ光が通過する透明部材7の厚みによって適宜調整することができるので、レーザ加工機において透明部材7を交換可能に構成することにより、加工対象物8が変わっても、その変わった加工対象物8に適した透明部材7を設けることにより、効率の良い加工が行える。
【0053】
更に、本実施形態のレーザ加工機100では、同じ波長のパルスレーザ光を複数発振する1つのレーザ光源4から、波長変換層6及び透明部材7を用いて、波長の異なるパルスレーザ光を、焦点距離を異ならせて、加工対象物8に照射することができる。
【0054】
[レーザ光源の構成]
次に、レーザ光源4について図1図3を用いて説明する。
図2は、発光体1の模式断面図である。
図3は、レーザ加工機100の部分拡大図であり、レーザ光源4の模式断面図である。
【0055】
図1に示すように、レーザ光源4は、半導体レーザ素子基板である発光体1と、ピコ秒発生共振器2と、制御部3と、を備える。レーザ光源4は、ピコ秒領域(1ps~1000ps)のパルス幅のパルスレーザ光を複数出射するレーザ発振器である。例えば、ピコ秒領域等のパルス幅の短い超短パルスレーザを用いることによって、加工対象物の熱溶融領域を小さくし非熱加工とすることができ、高品質な加工を実現することができる。
【0056】
(発光体)
発光体1は、励起光9を出射する励起光源である。
図2に示すように、発光体1は、複数、本実施形態では4つのVCSEL素子10a~10dを有し、複数、本実施形態では4つの励起光9a~9dを出射可能に構成される。
【0057】
複数のVCSEL素子10は、同一基板11上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成される。例えば、基板11上に複数のVCSEL素子を形成し、これを切断して、複数の発光体1を一括して製造することができ、量産が可能となり、コストを下げることができる。
以下に、VCSEL素子10の詳細な構造について説明するが、これは一例であり、以下に記載する構造に限定されるものではない。
【0058】
図2に示すように、各VCSEL素子10は、基板11、n-DBR(Distributed Bragg Reflector、分布ブラッグ反射鏡)層12、n-クラッド層13、活性層14、p-クラッド層15、狭窄層16、p-DBR層17、n電極(図示せず)及びp電極(図示せず)を備える。各VCSEL素子10a~10dは基板11を共有する。
【0059】
基板11はVCSEL素子10の各層を支持する。基板11は互いに対向する一方の面11aと他方の面11bとを有する。
4つのVCSEL素子10a~10dは基板11を共有している。発光体1は、同一基板11の一方の面11a上に複数のVCSEL素子10が設けられた構成を有する。
【0060】
VCSEL素子10は1μm以下の位置精度で製造することができる。複数のVCSEL素子10は例えば100μm~1mmの狭ピッチで配列される。複数のVCSEL素子10は、制御部3によりそれぞれ独立して制御可能に構成される。
【0061】
本実施形態において、VCSEL素子10はボトムエミッション型(裏面照射型)であり、VCSEL素子10から出射される励起光9は、他方の面11bから出射される。
【0062】
ボトムエミッション型はトップエミッション型よりも出力が高いため、ボトムエミッション型とすることが好ましい。
【0063】
ボトムエミッション型のVCSEL素子10を用いた場合、発光体1を冷却するための冷却部は、VCSEL素子10側、すなわち基板表面側に設けられる。
一方、トップエミッション型のVCSEL素子を用いた発光体に冷却部を設ける場合、冷却部は、基板11側、すなわち基板裏面側に設けられる。
【0064】
冷却部を、発光体1の基板表面側に配置する場合と、発光体1の基板裏面側に配置する場合とを比較すると、基板表面側に配置する場合の方が、冷却部と活性層14との距離が短くなる。
すなわち、ボトムエミッション型のVCSEL素子10を用いる方が、トップエミッション型のVCSEL素子を用いるよりも、冷却部によって効率よく活性層14を冷却することができる。
【0065】
このように、ボトムエミッション型のVCSEL素子10を用いることにより、活性層14により近く位置するように冷却部を配置することができ、最大光出力の低下、励起光源の劣化速度の上昇等を招く活性層14の温度上昇をより効率よく抑えることができる。
冷却部にはヒートシンク等を用いることができる。
【0066】
また、ボトムエミッション型のVCSEL素子10を用いているので、励起光が出射される側となる基板裏面側(基板の他方の面11b側)に、発光体1と接して共振器を配置することができる。したがって、発光体1にピコ秒発生共振器2を貼り合わせることができ、レーザ光源4の小型化が可能となり、レーザ加工機100を小型化することができる。
【0067】
n-DBR層12は、半導体基板である基板11上に設けられ、波長λの光を反射するDBR(Distributed Bragg Reflector:分布ブラッグ反射鏡)として機能する。
【0068】
n-クラッド層13は、n-DBR層12上に積層され、光及び電流を活性層14に閉じ込める層である。
【0069】
活性層14は、n-クラッド層13上に設けられ、自然放出光の放出及び増幅を行う。活性層14は、バンドギャップが小さい量子井戸層と、バンドギャップが大きい障壁層を交互に複数層積層して形成される。
【0070】
p-クラッド層15は、活性層14上に設けられ、光及び電流を活性層14に閉じ込める層である。
【0071】
狭窄層16は、p-クラッド層15上に設けられ、電流に狭窄作用を付与する。狭窄層16は、酸化領域16aと非酸化領域16bを備える。酸化領域16aは、導電性及び屈折率が小さく、光閉じ込め領域として機能する。非酸化領域16bは、酸化領域16aより導電性が大きく、電流注入領域として機能する。
【0072】
p-DBR層17は、狭窄層16上に設けられ、波長λの光を反射するDBRとして機能する。
【0073】
n電極は、n-DBR層12と接して形成され、VCSEL素子10の一方の電極として機能する。p電極は、p-DBR層17上に形成され、VCSEL素子10の他方の電極として機能する。p電極及びn電極は任意の導電性材料からなる。
【0074】
n電極とp電極の間に電圧を印加すると、n電極とp電極の間に電流が流れる。電流は狭窄層16による狭窄作用を受け、非酸化領域16bに注入される。
【0075】
この注入電流によって活性層14のうち非酸化領域16bに近接する領域において自然放出光が生じる。自然放出光はVCSEL素子10の積層方向(層に垂直方向)に進行し、n-DBR層12及びp-DBR層17によって反射される。
【0076】
n-DBR層12及びp-DBR層17は特定の波長(以下、発振波長)の光を反射するように構成されている。自然放出光のうち発振波長の成分はn-DBR層12及びp-DBR層17の間で定在波を形成し、活性層14によって増幅される。n-DBR層12とp-DBR層17とはレーザ発振のための共振器を構成する。
【0077】
注入電流が閾値を超えると定在波を形成する光がレーザ発振し、n-クラッド層13、n-DBR層12及び基板11を透過して他方の面11bから出射される。
【0078】
本実施形態では、VCSEL素子10の発光波長帯域を940nmとするが、これに限定されない。
【0079】
(ピコ秒発生共振器)
図1及び図3に示すように、共振器としてのピコ秒発生共振器2は、発光体1の基板11の他方の面11bと接して設けられる。
本実施形態においては、ボトムエミッション型のVCSEL素子10を用いることにより、発光体1の励起光が出射される側となる基板11に接してピコ秒発生共振器2を配置することができ、レーザ光源4を小型化することができる。
ピコ秒発生共振器2と発光体1とは例えば常温接合されて完全接合されてもよいし、図示しない筐体によって互いに接して固定されてもよい。
【0080】
ピコ秒発生共振器2は、発光体1から出射された励起光9の入射によりピコ領域のパルス幅の超短パルスレーザ光を発振する。
【0081】
ピコ秒発生共振器2は、レーザ媒体である利得媒質21と、過飽和吸収体22と、一対の共振器ミラー23a及び23bと、を有する。
【0082】
利得媒質21が励起光を一定量吸収すると、誘導放出が吸収を上回り、レーザ光の増幅が起きる。
【0083】
本実施形態において、利得媒質21として、例えば、波長1030nmのレーザ光を発振するYb:YAGを用いる例をあげる。ピコ秒発生共振器2は、波長1030nmのパルスレーザ光を発振する。
【0084】
利得媒質21としては、Yb:YAGの他、Nd:YAG、Nd:YVO、Nd:YLF、Nd:glass、Yb:YAG、Yb:YLF、Yb:FAP、Yb:SFAP、Yb:YVO、Yb:glass、Yb:KYW、Yb:BCBF、Yb:YCOB、Yb:GdCOB、YB:YAB等を用いることができる。
【0085】
利得媒質21として、Yb:YAG、Nd:YVO、Nd:YAGを用いることが好ましく、Yb:YAGを用いることが特に好ましい。
Yb:YAGの発振波長は1030nmである。Nd:YVO4及びNd:YAGの発振波長は1064nmである。
【0086】
Yb:YAGは、Yb3+がドープされたYAG結晶である。
Yb:YAGは、数W程度の小さい出力パワーの励起光でも励起可能である。したがって、出力パワーの比較的小さい励起光を発するVCSEL素子10を励起光源として用いる場合、Yb:YAG結晶といった小さい出力パワーでも励起可能な結晶を利得媒質21として用いることが好ましい。
また、Yb:YAGは、有効励起波長範囲が935~945nmで吸収帯域幅が広く、励起光源となる発光体1のVCSEL素子10から出射される励起光に対する要求波長範囲を広くすることができるため好ましく、歩留りを向上させることができる。
また、Yb:YAGは、蛍光寿命が960μsと長い。
【0087】
Nd:YVOは、Nd3+がドープされたYVO結晶である。
Nd:YVOは、有効励起波長範囲が805~813nmで、吸収帯域幅が広く、励起光源となる発光体1のVCSEL素子10から出射される励起光に対する要求波長範囲を広くすることができ、歩留りを向上させることができる。
Nd:YAGは、Nd3+がドープされたYAG結晶である。
【0088】
一対の共振器ミラー23a及び23bは、利得媒質21及び過飽和吸収体22を挟んで互いに向かい合って配置される。共振器ミラー23a及び23bは、それぞれ、利得媒質21の一面、過飽和吸収体22の一面にミラーがコーティングされることによって形成される。
光が一対の共振器ミラー23a及び23bの間にある利得媒質21を往復すると、誘導放出により光が増幅される。
【0089】
本実施形態において、励起光9が入射される側に位置するリアミラーである共振器ミラー23aは、波長1030nmのレーザ光を全て反射し、940nmのレーザ光の反射を防止するように構成される。
【0090】
一方、加工対象物8に対してレーザ光が発振される側に位置する出力ミラーである共振器ミラー23bは、波長1030nmのレーザ光を一部反射し、ピコ秒発生共振器2内を往復する波長1030nmのレーザ光の一部を外部へ出力することができるように構成される。
【0091】
過飽和吸収体22は、受動型のQスイッチであり、ピコ秒発生共振器2のQ値(性能指数)を切り替えることができる。過飽和吸収体22は、内部に蓄えられたエネルギーが小さいときにはレーザ光の透過率が低く、内部に蓄えられたエネルギーが閾値を超えると透過率が高くなる結晶である。
利得媒質21と過飽和吸収体22とは接して配置され、接合されている。
【0092】
Qスイッチ法では、利得媒質21の非常に多数の原子が励起状態になるまでQ値を低くしてパルスレーザ光の発振を抑え、十分に多くなったのちQ値を高くし、パルスレーザ光を発振させる。
【0093】
利得媒質21から発振されるレーザ光の強度が小さいときには、過飽和吸収体22の透過率が低く、ピコ秒発生共振器2からレーザ光が発振されない。一方、利得媒質21から発振されるレーザ光の強度が大きくなり、レーザ光のエネルギーが過飽和吸収体22の構成により定まる固有の閾値を超えると、過飽和吸収体22の透過率が大きくなる。過飽和吸収体22の透過率が大きくなると、レーザ光が過飽和吸収体22を透過することができるようになり、ピコ秒発生共振器2からレーザ光が発振される。
【0094】
このように、過飽和吸収体22は、パルスレーザ光の発振を制御する開閉シャッタとして機能し、利得媒質に十分にエネルギーが蓄積されたとき、ピコ秒発生共振器2のQ値を短時間に切り替えることにより瞬間的に大出力のパルスレーザ光を発振する。
【0095】
過飽和吸収体22として、Qスイッチ機能を有する物質を用いることができ、例えばYAG結晶にCr4+をドーピングしたCr:YAGやV3+がドープされたV:YAG等を用いることができる。
【0096】
ここで、複数のVCSEL素子10は、同一基板11上にフォトリソグラフィ技術を用いて製造が可能であり、平面を有する構成となっている。また、ピコ秒発生共振器2は、それぞれ片面がミラーコーティングされた利得媒質21と過飽和吸収体22とが積層されて構成され、平面を有する構成となっている。
【0097】
したがって、発光体1とピコ秒発生共振器2とは互いの面を接して配置することができる。これにより、例えば、複数のVCSEL素子10が形成された半導体基板(基板11が分断される前の状態である基板)の裏面側に、それぞれミラーコーティングされた利得媒質21と過飽和吸収体22とを積層するといった積層プロセスにより積層体を製造し、これを分断して、複数のVCSEL素子10を有するレーザ光源4を一括して複数製造することができる。
このように量産が可能となり、レーザ光源のコストを大幅に下げることができる。
【0098】
(制御部)
制御部3は、発光体1に設けられる複数のVCSEL素子10それぞれの駆動を独立して制御し、各VCSEL素子10からの励起光の出射のタイミングを制御する。これにより、複数のVCSEL素子10それぞれから出射される励起光に基づく、レーザ光源4から加工対象物8に対して照射される複数のパルスレーザ光の発振のタイミングがパルスレーザ光毎に個別に制御可能となる。
【0099】
[加工方法]
図4は、4つのVCSEL素子10から出射される励起光に基づいてレーザ加工機100から発振されるパルスレーザ光41、42、63、64の発振タイミングを示す図である。
【0100】
図4において、上から順に、VCSEL素子10aから出射される励起光9aに基づいて発振されるパルスレーザ光41、VCSEL素子10bから出射される励起光9bに基づいて発振されるパルスレーザ光42、VCSEL素子10cから出射される励起光9cに基づいて発振されるパルスレーザ光63、VCSEL素子10dから出射される励起光9dに基づいて発振されるパルスレーザ光64の照射タイミングを示す。
【0101】
図4に示すように、隣り合うVCSEL素子10に基づいて発振されるパルスレーザ光の照射タイミングが異なっている。より具体的には、パルス周期の半周期分ずれて照射されるように、制御部3によって各VCSEL素子10の励起光9の出射タイミングが制御される。
【0102】
このように隣り合うパルスレーザ光の照射タイミングが異なるように制御して加工対象物の加工を行うことにより、熱による影響を低減させることができ、高品質の加工を行うことができる。
【0103】
レーザ加工において、パルス幅の短い、すなわち照射時間の短いピコ秒パルスレーザ光を用いることにより、熱による影響が低減された非熱加工が可能となる。しかしながら、VCSEL素子10を挟ピッチで配置し、例えば隣り合うパルスレーザ光の照射タイミングを同時にして加工を行った場合、熱的な影響をうけて、加工モードが非熱加工から熱加工に変わる場合がある。
【0104】
本実施形態においては、隣り合うパルスレーザ光の照射タイミングが異なるように制御され、例えば図4に示すように、隣り合うパルスレーザ光の照射が交互に行われるよう制御されるので、熱蓄積による影響が低減し、非熱加工とすることができる。したがって、高品質のレーザ加工が可能となる。
【0105】
VCSEL素子10aに基づくパルスレーザ光41の照射において、熱が加工対象物8の照射領域にとどまる時間をtとする。熱影響を低減するには、VCSEL素子10aの隣のVCSEL素子10bに基づくパルスレーザ光42の照射の開始を、パルスレーザ光41の照射時間から時間tよりも長く経過した時間に設定する必要がある。
【0106】
時間tは加工対象物の材料によって異なり、レーザ光源4におけるパルスレーザ光の繰り返し周波数は、時間tに基づいて設定される。繰り返し周波数を1/tとする。
【0107】
図4に示す例では、各パルスレーザ光41、42、63、64を5kHz駆動とし、パルス周期を200μsとしている。隣り合うパルスレーザ光の照射タイミングは、パルス周期の半周期分の100μsずれるよう制御される。例えばVCSEL素子10bに基づくパルスレーザ光42の照射開始は、その隣に位置するVCSEL素子10aに基づくパルスレーザ光41の照射開始から100μs遅延又は先行する。
【0108】
このように、隣り合うパルスレーザ光の照射タイミングをずらして加工を行うことにより、熱蓄積が生じにくく、熱蓄積で生じる加工物の熱ダメージを低減することができる。
【0109】
本実施形態においては、4つのVCSEL素子10a~10dが1次元配列された構成を例にあげて説明したが、複数のVCSEL素子10を二次元配列してなるレーザ光源の場合、上述のような熱による影響を抑制するために、照射時に近く隣り合うパルスレーザ光の数が少なくなるようにVCSEL素子を配置することが好ましい。
【0110】
図5は複数のVCSEL素子10を配列してなるレーザ光源から発振されるパルスレーザ光の照射スポット40の位置を説明する図である。
図5(A)は、VCSEL素子10をアレイ状に配列した場合を示し、図5(B)はVCSEL素子10を千鳥状に配列した場合を示す。
【0111】
図5(B)に示す配置例では、1つの照射スポット(以下、中央の照射スポット40と称する。)と、その周りを囲んで位置する6つの照射スポット40との距離はいずれも等間隔となっており、中央の照射スポットと近く隣り合う照射スポット40の数は6つとなる。
【0112】
これに対し、図5(A)に示す配置例では、1つの照射スポット40(以下、中央の照射スポット40と称する。)の周りを囲む8つの照射スポット40のうち、図面上、上下方向及び左右方向で中央の照射スポット40と隣り合う4つの照射スポット40は、他の斜め方向で隣り合う4つの照射スポット40よりも中央の照射スポット40により近く位置する。したがって、中央の照射スポットと近く隣り合う照射スポット40の数は4つとなる。
【0113】
このように、中央の照射スポット40からみて、図5(B)に示す配置例は、図5(A)に示す配置例よりも、近く隣り合う照射スポットの数が多くなっているため、上述のような熱による影響を受けやすい。そのため、熱による影響を減少させて熱加工をするには、加工スピードを落とす等、加工に係る設計事項の制限が多くなる。
【0114】
これに対し、図5(A)に示す配置例は、図5(B)に示す配置例よりも近く隣り合う照射スポットの数が少ないため、加工に係る設計事項を広くすることができる。
従って、複数のVCSEL素子を配列する場合、近く隣り合う照射スポット数が少なくなる図5(A)に示すアレイ状の配置とすることが好ましい。
【0115】
図6は、複数のVCSEL素子10を二次元配列してなるレーザ光源を用いる場合のパルスレーザ光の照射スポット40の一例を説明するものである。
図6(A)は、全VCSEL素子10から励起光を同時に出射させて、レーザ光源を移動させた場合の照射スポット40の位置を示す。
図6(B)は、VCSEL素子10からの励起光の出射を個別に制御して、レーザ光源を移動させた場合の照射スポット40の位置を示す。
尚、レーザ光源を移動させてパルスレーザ光を照射させてもよいし、レーザ光源を固定し、加工対象物を移動させてパルスレーザ光が照射させてもよい。
【0116】
図6(A)に示すように、レーザ光源を移動、例えば同一平面上で回転するように走査させることにより、隣り合う照射スポット40の間を埋めるようにパルスレーザ光を照射することができ、高速加工が可能となる。
【0117】
また、図6(B)に示すように、VCSEL素子10を独立して制御部3によって駆動することにより、加工対象物に対するパルスレーザ光の照射範囲を規定することができ、所望の形状の加工領域で加工対象物を加工できる。このように、VCSEL素子10を独立して駆動することによって加工領域の制御が可能となる。図10(B)に示す例では、鎖線で囲んだほぼ矩形状の加工領域となる。
【0118】
本実施形態のレーザ加工機100を用いて、吸収波長の異なる複数の材料が積層されてなる加工対象物を一括して加工することができる。吸収波長が異なる場合、それぞれの材料に適した加工波長が異なる場合がある。本実施形態のレーザ加工機100には波長変換層6と透明部材7が設けられているので、波長の異なるパルスレーザ光を、焦点距離を異ならせて、加工対象物8に照射することができるので、一括加工が可能となる。
【0119】
例えば、図1に示すように、加工対象物8が、吸収波長の異なる複数の材料からなる4つの層811~814が厚み方向に積層されて構成されるとする。層811と層812は、その吸収波長と同じ又は近い第1の波長を加工波長として加工される材料から構成される。層813と層814は、その吸収波長と同じ又は近い第2の波長を加工波長として加工される材料から構成される。第1の加工波長と第2の加工波長とは異なる波長である。
【0120】
本実施形態において、波長変換層6とテーパ状の透明部材7を設けることにより、パルスレーザ光41は層811の表面を焦点位置81として照射され、層811に対する加工が行われる。パルスレーザ光42は層811に接する層812の表面上の位置82を焦点位置として照射され、層812に対する加工が行われる。
これにより、層811及び層812は、それぞれ、その材料の加工に適した第1の波長のパルスレーザ光41及び42により、効率よく加工される。
【0121】
パルスレーザ光63は層812に接する層813の表面の位置83を焦点位置として照射され、層813に対する加工が行われる。パルスレーザ光64は層813に接する層814の表面の位置84を焦点位置として照射され、層814に対する加工が行われる。
これにより、層813及び層814は、それぞれ、その材料の加工に適した第2の波長のパルスレーザ光63及び64により、効率よく加工される。
このように、加工対象の材料それぞれの加工に適したパルスレーザ光を用いることにより、効率の良い加工を行うことができる。
【0122】
以上のように、波長変換層6とテーパ状の透明部材7が設けられたレーザ加工機100を用いて、異なる焦点位置で、異なる波長のパルスレーザ光を、一括して、加工対象物8に照射することができる。これにより、効率よい加工を行うことができ、高品質加工を高速で実行することができる。
【0123】
また、透明部材7を備えない、レーザ光源4と、光学系5と、波長変換層6とを備えるレーザ加工機としてもよい。
このようなレーザ加工機により、相互に波長が異なる複数のパルスレーザ光を加工対象物に照射して加工することができる。これにより、加工波長の異なる複数の材料からなる加工対象物の各材料を一括して加工することができる。
【0124】
また、波長変換層6を備えない、レーザ光源4と、光学系5と、部位によって厚みが異なる透明部材7とを備える図7に示すレーザ加工機を用いて、複数のパルスレーザ光の焦点距離を異ならせて、加工対象物に照射して加工を行うことができる。
【0125】
図7は、レーザ光源4と、光学系5と、テーパ状の透明部材7とを備えたレーザ加工機600の模式断面図である。
図8は、レーザ加工機600を用いて加工される加工対象物8の一例であり、加工対象物8の模式断面図である。
【0126】
図7に示すように、テーパ状の透明部材7を設けることにより、レーザ光源4から焦点位置81~84までの焦点距離を、パルスレーザ光41~44毎に異ならせることができる。尚、レーザ加工機600には波長変換層6を設けていないので、パルスレーザ光41~44はいずれも同じ波長を有する。
【0127】
テーパ状の透明部材7を用い、各パルスレーザ光41~44の焦点距離を異ならせて加工対象物8を加工することにより、厚みが厚い加工対象物の穴あけ加工、溝加工、切断加工を容易に行うことができる。
例えば、1つのパルスレーザ光を用いて加工を行った場合、当該パルスレーザ光を発振するレーザ光源を移動させて焦点距離を異なせて複数回走査させて加工することが考えられるが、この方法では焦点距離を変えて走査しなければならず、時間がかかってしまう。
これに対し、レーザ加工機600では、テーパ状の透明部材7を設けることにより、複数のパルスレーザ光の焦点距離を異ならせて一括して加工対象物8を加工することができるので、加工の高速化が可能となる。
【0128】
また、テーパ状の透明部材7を用い、各パルスレーザ光41~44の焦点距離を異ならせることにより、例えば、図8に示すように、加工表面がテーパ面を有する加工対象物8を、焦点距離が短いパルスレーザ光41を先頭にして走査して、深さ方向の違う加工を連続的に実行することができ、効率の良い加工を行うことができる。
透明部材7は、加工対象物8の加工表面形状にあわせて部位毎に厚みを異ならせてもよい。
【0129】
パルスレーザ光の繰り返し周波数は、例えば50kHz以下とすることが好ましく、10kHz以下とすることが更に好ましい。また、パルスレーザ光のパワーは、1J/cm以下とすることが好ましく、0.5J/cmとすることが更に好ましい。これにより、熱加工の発生が抑制され、高品質の加工が可能となる。
【0130】
上述のように、ピコ秒パルスレーザ光のように超短波パルスレーザ光を用いることにより、加工対象物の熱溶融領域を小さくすることができ、非熱加工が可能となる。
しかしながら、非熱加工となるか熱加工となるかはパルスレーザ光の繰り返し周波数とパルスレーザ光のパワーにも依存するため、加工の高速化のために繰り返し周波数を高くすると熱の蓄積によって熱加工となり、また、パワーを高くすると超短波パルスであっても熱加工となる。
そこで、熱加工の発生が抑制されるように、繰り返し周波数及びパワーを上記のように設定することが好ましい。尚、ここであげたパルスレーザ光の繰り返し周波数及びパワーの数値は一例であり、加工対象の材料毎に数値は異なり、あげた数値に限定されるものではない。
【0131】
本実施形態では、同一基板上に複数のVCSEL素子10が形成された発光体1を励起光源とするレーザ光源4を用いることにより、レーザ光源4から発振するパルスレーザ光の照射位置精度を高精度のものとすることができる。
【0132】
図13(A)は本実施形態のレーザ光源4から発振されるパルスレーザ光41~44の照射位置を説明する模式図である。図13(B)は比較例としてのレーザ光源群704から発振されるパルスレーザ光91の照射位置を説明する模式図である。尚、図13においては、光学系の図示を省略している。
【0133】
図13(B)に示す例において、レーザ光源群704は、個々に独立した複数のシングルビームマイクロチップレーザ光源90が例えば5つ一次元配列されて構成される。各シングルビームマイクロチップレーザ光源90からは、1つのパルスレーザ光91が発振される。
【0134】
図13(B)に示すように、複数のシングルビームマイクロチップレーザ光源90を配列してレーザ光源群704を構成する場合、例えばシングルビームマイクロチップレーザ光源90の配列ピッチbを等間隔にすることができずピッチずれが生じる場合がある。このような場合、複数のパルスレーザ光91の照射位置92が所定の間隔cとすることができず、安定した加工精度のレーザ加工機を得ることが難しい。
【0135】
また、図13(B)に示すように、シングルビームマイクロチップレーザ光源90が正常位置から傾いて配置され、本来、レーザ光源群704から複数のパルスレーザ光91が平行に発振されるべきところ、平行に発振されない場合がある。このような場合、照射位置92を等間隔にすることができないうえ、加工位置とレーザ光源群704との距離が長くなるほど、パルスレーザ光91の照射位置92のずれが大きく生じてしまい、加工精度を安定したものとすることが難しい。
【0136】
これに対し、本実施形態においては、図13(A)に示すように、発光体1とピコ秒発生共振器2が積層されてレーザ光源4が構成される。
発光体1は、同一基板11上にフォトリソグラフィ技術を用いて励起光を出射するVCSEL素子10が1μm以下の位置精度で複数形成されて構成され、VCSEL素子10の配置ピッチは等間隔となっている。
ピコ秒発生共振器2は、互いに向かい合う面が平行となる直方体形状となるように、それぞれ高精度に研磨された利得媒質21と過飽和吸収体22とが積層されて構成される。
このような互いの平面同士が接して積層される発光体1とピコ秒発生共振器2とによって、レーザ光源4から発振されるパルスレーザ光の方向は決定され、個々のVCSEL素子10から出射される励起光に基づいて発振されるパルスレーザ光の出射方向を互いに平行とすることができる。
【0137】
従って、図13(A)に示すように、レーザ光源4から発振される複数のパルスレーザ光41~44の平行性が保持され、パルスレーザ光の照射位置の間隔aを等間隔とすることができ、パルスレーザ光の照射位置精度が高精度のレーザ光源4を得ることができる。
そして、このようなレーザ光源を用いてレーザ加工機を構成することにより、高精度のレーザ加工が可能なレーザ加工機を得ることができる。
【0138】
また、本実施形態のレーザ光源は複数のパルスレーザ光を発振可能に構成されているので、1つのレーザ光源から発振するレーザ光を分岐して複数のレーザ光とするための光学系が不要となるので、レーザ加工機を小型化することができ、レーザ加工機の構成を単純にすることができる。また、1つのレーザ光源で複数のパルスレーザ光を得ることができるので、1ビームを発振するレーザ光源を複数設ける必要がなく、低コスト化することができる。
【0139】
また、上述したように、フォトリソグラフィ技術を用いて複数のVCSEL素子を形成しているので、高精度な配列ピッチでVCSEL素子を形成することができる。したがって、レーザ光源4から発振されるパルスレーザ光の照射精度も高いため、レーザ加工機へのレーザ光源4の実装及び調整が容易となる。
【0140】
また、レーザ光源4の一部を構成する励起光源にVCSEL素子を用いることにより、レーザ光源を小型化することができる。すなわち、VCSEL素子から出射される光は円形ビームであるため、ビーム成形をするための光学系が不要となり、小型化することができる。
【0141】
また、上述したように、同一基板上にフォトリソグラフィ技術を用いて複数のVCSEL素子を形成したものを分断して発光体を一括して複数製造することができる。
また、上述したように、複数のVCSEL素子10が形成された基板11の裏面側に、それぞれミラーコーティングされた利得媒質21と過飽和吸収体22とを積層した積層体を製造し、これを分断することにより、複数のレーザ光源4を一括して製造することもできる。
これにより、異なるレーザ光源間でパルスレーザ光の照射精度のばらつきのないレーザ光源を安定して得ることができる。
そして、このようなレーザ光源を用いてレーザ加工機を構成することにより、異なるレーザ加工機間で加工精度のばらつきのないレーザ加工機を安定して得ることができる。
【0142】
また、レーザ光源4において、発光体1とピコ秒発生共振器2とは接して構成されているので、レーザ光源4を小型化することができる。
【0143】
レーザ光源4の構成は上述にあげた構成に限定されず、例えば以下の第2~第5の実施形態に示す構成としてもよい。以下の各実施形態に示すレーザ光源も、ピコ秒領域(1ps~1000ps)のパルス幅のパルスレーザ光を複数出射するレーザ発振器である。
以下の実施形態では、上述のレーザ光源と相違する構成を中心に説明する。
【0144】
<第2の実施形態>
図9は、本技術に係るレーザ加工機に用いられるレーザ光源204の模式断面図である。
図9に示すように、レーザ光源204は、発光体201と、ピコ秒発生共振器2と、制御部3(図示せず)と、を備える。
【0145】
本実施形態における発光体201は、第1の実施形態における発光体1と比較して、VCSEL素子10の各層を支持する基板の形状が異なる点でのみ相違する。
【0146】
本実施形態における発光体201の一部を構成する基板211は、互いに対向する一方の面211aと他方の面211bとを有する。
4つのVCSEL素子10a~10dは基板211を共有して形成されている。発光体201は、同一基板211の一方の面211a上に複数のVCSEL素子10が設けられた構成を有する。
【0147】
励起光が出射される他方の面211bは、各VCSEL素子10a~10dに対応した複数(本実施形態では4つ)の集光レンズ26a~26dが一次元配列で配置されたレンズアレイ形状を有する。
【0148】
尚、本実施形態では、4つの集光レンズそれぞれに26a~26dの符号を付したが、特に区別する必要がない場合は、集光レンズ26として説明する。
【0149】
発光体201は、基板211の他方の面211bがピコ秒発生共振器2と接するように配置される。発光体201とピコ秒発生共振器2とは、図示しない筐体によって双方が接するように固定される。
【0150】
集光レンズ26aは対応するVCSEL素子10aから出射した励起光を集光し、ピコ秒発生共振器2に対して出射する。
集光レンズ26bは対応するVCSEL素子10bから出射した励起光を集光し、ピコ秒発生共振器2に対して出射する。
集光レンズ26cは対応するVCSEL素子10cから出射した励起光を集光し、ピコ秒発生共振器2に対して出射する。
集光レンズ26dは対応するVCSEL素子10dから出射した励起光を、集光し、ピコ秒発生共振器2に対して出射する。
【0151】
このように、集光レンズアレイ形状を有する他方の面211bを備える基板211は、集光部材に相当し、発光体201は、光学部材としての集光部材を有する光学部材付きの発光体である。
【0152】
本実施形態では、複数のVCSEL素子が一次元配列されている例をあげているので、基板211の他方の面211bは一次元配列のレンズアレイ形状をとる。VCSEL素子が二次元配列される場合は、集光レンズは各VCSEL素子に対応して配置されるので、他方の面は二次元配列の集光レンズアレイ形状を有することになる。
【0153】
このように、集光部材を設けることにより、ピコ秒発生共振器2へ出射される励起光を、ピコ秒発生共振器2で効率のよい発振特性が得られるような集光径の励起光とすることができる。
本実施形態においては、集光レンズ26a~26dによってピコ秒発生共振器2へ出射される励起光の集光径を、利得媒質21に用いられるYd:YAGにおいてパルスレーザ光が発振しやすい100μmとしている。これにより、効率のよい発振特性のレーザ光源を得ることができる。
この集光部材を設けることによる効果は、以下の第3~第5の実施形態においても同様である。
【0154】
また、本実施形態では、VCSEL素子は、基板の裏面側から励起光が出射されるボトムエミッション型を用いているので、VCSEL素子を支持する基板をレンズアレイ形状に成型するだけで、集光機能も有する発光体とすることができ、レーザ光源の小型化が可能となる。
【0155】
<第3の実施形態>
第2の実施形態では、VCSEL素子を支持する基板の他方の面を集光レンズアレイ形状としたが、図10に示す本実施形態のように、基板の他方の面を集光レンズアレイ形状とせず、VCSEL素子を支持する基板とは別の部材からなる集光レンズアレイ基板を別途設ける構成としてもよい。
【0156】
図10は、本技術に係るレーザ加工機に用いられるレーザ光源304の模式断面図である。
図10に示すように、レーザ光源304は、発光体301と、ピコ秒発生共振器2と、制御部3(図示せず)と、を備える。
【0157】
発光体301は、基板11を共有して形成される複数のVCSEL素子10と、基板11の他方の面11bに接して配置された集光部材としての集光レンズアレイ基板38と、を有する。
発光体301は、光学部材としての集光部材を有する光学部材付きの発光体である。
【0158】
集光レンズアレイ基板38と基板11とは接合されていても良いし、図示しない筐体によって双方が接するように固定されてもよい。
発光体301の集光レンズアレイ基板38とピコ秒発生共振器2とは図示しない筐体によって双方が接するように固定される。
【0159】
発光体301は、各VCSEL素子10a~10dに対応した複数(本実施形態では4つ)の集光レンズ36が一次元配列で配置された集光レンズアレイ形状を有する。
【0160】
このように、外付けの集光レンズアレイ基板38を設けてもよい。
【0161】
<第4の実施形態>
第2及び第3の実施形態では、集光部材を設ける例をあげたが、集光部材に加え、VCSEL素子10から出射される励起光をコリメートするコリメート部材を更に設ける構成としてもよい。
【0162】
図11は、本技術に係るレーザ加工機に用いられるレーザ光源404の模式断面図である。
図11に示すように、レーザ光源404は、発光体401と、ピコ秒発生共振器2と、制御部3(図示せず)と、を備える。
【0163】
発光体401は、基板411を共有して形成された複数のVCSEL素子10と、集光レンズアレイ基板48と、を有する。
【0164】
基板411は、互いに対向する一方の面411aと他方の面411bとを有する。
一方の面411a上に複数のVCSEL素子10が設けられる。
励起光が出射される他方の面411bは、各VCSEL素子10a~10dに対応した複数(本実施形態では4つ)のコリメートレンズ47a~47dが一次元配列で配置されたコリメートレンズアレイ形状を有する。
【0165】
コリメートレンズ47aは対応するVCSEL素子10aから出射された励起光をコリメートし、コリメートレンズアレイ基板402に対して出射する。同様に、コリメートレンズ47bは対応するVCSEL素子10bから出射された励起光を、コリメートレンズ47cは対応するVCSEL素子10cから出射された励起光を、コリメートレンズ47dは対応するVCSEL素子10dから出射された励起光を、コリメートし、集光レンズアレイ基板48へ出射する。
このように、基板411はコリメート部材に相当する。
【0166】
尚、本実施形態では、4つのコリメータレンズそれぞれに47a~47dの符号を付したが、特に区別する必要がない場合は、コリメートレンズ47として説明する。
【0167】
集光部材に相当する集光レンズアレイ基板48は、基板411の他方の面411bに接して配置される。
集光レンズアレイ基板48は、各VCSEL素子10a~10dに対応した複数(本実施形態では4つ)の集光レンズ46a~46dが一次元配列で配置された集光レンズアレイ形状を有する。各集光レンズ46a~46dと、各コリメートレンズ47a~47dとは、互いに対応して重なり合うようにして配置される。
【0168】
集光レンズ46aは、対応するVCSEL素子10aから出射され、コリメートレンズ47aによりコリメートされた光を集光し、ピコ秒発生共振器2に対して出射する。
集光レンズ46bは、対応するVCSEL素子10bから出射され、コリメートレンズ47bによりコリメートされた光を、ピコ秒発生共振器2に対して出射する。
集光レンズ46cは、対応するVCSEL素子10cから出射され、コリメートレンズ47cによりコリメートされた光を、ピコ秒発生共振器2に対して出射する。
集光レンズ46dは、対応するVCSEL素子10dから出射され、コリメートレンズ47dによりコリメートされた光を集光し、ピコ秒発生共振器2に対して出射する。
【0169】
集光レンズアレイ基板48は、基板411とピコ秒発生共振器2との間に配置される。集光レンズアレイ基板48はピコ秒発生共振器2と接合又は筐体によって互いに接して位置するように固定される。集光レンズアレイ基板48と発光体401とは接して筐体によって固定される。
【0170】
発光体401は、光学部材としての集光部材及びコリメート部材を有する光学部材付きの発光体である。
【0171】
このように、コリメート部材を設けることにより、励起光に含まれていた、利得媒質におけるパルスレーザ光の発振に寄与しない収束光や発散光がなくなり、効率よくパルスレーザ光が発振される。すなわち、利得媒質に吸収された収束光や発散光は熱に変換され、パルスレーザ光の発振を妨げるが、励起光をコリメートすることにより、効率よくパルスレーザ光が発振される。
【0172】
<第5の実施形態>
第4の実施形態では、VCSEL素子10を支持する基板の他方の面をコリメートレンズアレイ形状としたが、図12に示す本実施形態のように、基板の他方の面をレンズアレイ形状とせず、VCSEL素子10を支持する基板とは別の部材からなるコリメートレンズアレイ基板を別途設ける構成としてもよい。
【0173】
図12は、本技術に係るレーザ加工機に用いられるレーザ光源504の模式断面図である。
図12に示すように、レーザ光源504は、発光体501と、ピコ秒発生共振器2と、制御部3(図示せず)と、を備える。
【0174】
発光体501は、基板11を共有して形成された複数のVCSEL素子10と、コリメート部材であるコリメートレンズアレイ基板59と、集光部材である集光レンズアレイ基板48と、を有する。
発光体501は、光学部材としての集光部材及びコリメート部材を有する光学部材付きの発光体である。
【0175】
コリメートレンズアレイ基板59は、基板11の他方の面11bに接して配置される。コリメートレンズアレイ基板59は、発光体501と接合又は筐体によって互いに接して位置するように固定される。
【0176】
コリメートレンズアレイ基板59は、各VCSEL素子10a~10dに対応した複数(本実施形態では4つ)のコリメートレンズ57が一次元配列で配置されたコリメートレンズアレイ形状を有する。
【0177】
このように、外付けのコリメートレンズアレイ基板59としてもよい。
【0178】
<第6の実施形態>
図14は、本実施形態におけるレーザ光源の模式断面図である。
レーザ光源のピコ秒発生共振器において、図14に示すように、利得媒質21と過飽和吸収体22との間に誘電体多層膜24を有する構成としてもよい。
【0179】
図14に示すように、レーザ光源604は、発光体1と、ピコ秒発生共振器602と、制御部3(図示せず)と、を備える。
【0180】
共振器としてのピコ秒発生共振器602は、発光体1の基板11の他方の面11bと接して設けられる。ピコ秒発生共振器602は、発光体1から出射された励起光9の入射によりピコ領域のパルス幅の超短パルスレーザ光を発振する。
【0181】
ピコ秒発生共振器602は、利得媒質21と、過飽和吸収体22と、利得媒質21と過飽和吸収体22との間に配される誘電体多層膜24と、一対の共振器ミラー23a及び23bと、を有する。
【0182】
誘電体多層膜24は、励起光波長に対し99%以上の反射率を有し、発振光波長(レーザ光波長)に対し95%以上の透過率を有する機能を備えた膜である。
尚、誘電体多層膜24の設計において、反射率、透過率ともに100%に近いことがより好ましいが、後述する励起光の漏れによる誤作動の発生を抑制するために、発振光波長に対する透過率よりも、励起光波長に対し反射率が高いことを優先することが好ましい。
【0183】
誘電体多層膜24を設けることにより、利得媒質21を通って誘電体多層膜24に入射した励起光は、誘電体多層膜24で反射して利得媒質21に再び入射することになるので、利得媒質21は、その厚み方向で往復する励起光を吸収することになる。したがって、誘電体多層膜24を設けることにより、利得媒質21の厚みを薄くすることができ、材料のコストダウンが可能となる。
【0184】
更に、レーザ光源604から発振されるパルスレーザ光のパルス幅は、共振器長(一対の共振器ミラー23a、23b間距離)に依存するので、利得媒質21の厚みを薄くすることで、より短パルス化することができる。
【0185】
ここで、励起光が利得媒質21で十分に吸収されない場合、過飽和吸収体22に励起光が入射し、過飽和吸収体22のQスイッチの誤作動の原因となる。
これに対し、本実施形態では、誘電体多層膜24を設けているので、過飽和吸収体22への励起光の漏れを抑制することができ、Qスイッチの誤作動の発生を抑制することができる。したがって、安定した動作特性のレーザ光源604を得ることができる。
【0186】
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0187】
例えば、上述の実施形態においては、複数のVCSEL素子が設けられた発光体を有するレーザ光源を例にあげたが、1つのVCSEL素子が設けられた発光体を有するレーザ光源としてもよい。
【0188】
また、光学部材付きの発光体の実施形態において、VCSEL素子毎に集光レンズやコリメートレンズを1対1の関係で設ける例をあげたが、複数のVCSEL素子に対して1つの集光レンズやコリメートレンズを設ける構成としてもよい。
【0189】
また、レーザ加工機において、波長変換層の配置の有無を選択可能に構成してもよいし、波長変換層を交換可能に構成してもよい。また、レーザ光源から発振される複数のパルスレーザ光のうち波長変換したい箇所のパルスレーザ光を選択できるように、レーザ光源に対しての波長変換層の配置位置を任意に設定できるようにしてもよい。
これにより、加工対象物に適した加工を行うことができる。
【0190】
レーザ加工機において、透明部材の配置の有無を選択可能に構成してもよいし、部位によって厚みが異なる透明部材を交換可能に構成してもよい。
これにより、加工対象物に適した加工を行うことができる。
【0191】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
【0192】
(1)
基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射するボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射によりパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、
上記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と
を具備するレーザ加工機。
【0193】
(2)
上記(1)に記載のレーザ加工機であって、
上記発光体は、複数の上記垂直共振器型面発光レーザ素子を有する
レーザ加工機。
【0194】
(3)
上記(1)又は(2)に記載のレーザ加工機であって、
上記共振器は、上記励起光により励起されてレーザ光を発振する利得媒質層と、過飽和吸収体と、上記利得媒質層と上記過飽和吸収体とを挟持する一対のミラーと、を有する
レーザ加工機。
【0195】
(4)
上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のレーザ加工機であって、
上記レーザ光源と上記光学系との間に設けられた波長変換層
を更に具備するレーザ加工機。
【0196】
(5)
上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のレーザ加工機であって、
上記光学系と上記加工対象物との間に設けられた厚みが部位によって異なる透明部材
を更に具備するレーザ加工機。
【0197】
(6)
上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のレーザ加工機であって、
上記発光体は、上記励起光を集光して上記共振器に対して出射する集光部材を有する
レーザ加工機。
【0198】
(7)
上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のレーザ加工機であって、
上記発光体は、上記励起光をコリメートして出射するコリメート部材と、上記コリメート部材から出射された光を集光して上記共振器に出射する集光部材を有する
レーザ加工機。
【0199】
(8)
上記(1)~(7)のいずれか1つに記載のレーザ加工機であって、
上記レーザ光源からの上記パルスレーザ光の発振を制御する制御部
を更に具備するレーザ加工機。
【0200】
(9)
上記(8)に記載のレーザ加工機であって、
上記制御部は、複数の上記垂直共振器型面発光レーザ素子それぞれから出射される励起光に基づく上記パルスレーザ光の出射を個別に制御する
レーザ加工機。
【0201】
(10)
上記(1)~(9)のいずれか1つに記載のレーザ加工機であって、
上記利得媒質層は、Yb:YAGである
レーザ加工機。
【0202】
(11)
上記(1)~(10)のいずれか1つに記載のレーザ加工機であって、
上記過飽和吸収体は、Cr:YAGである
レーザ加工機。
【0203】
(12)
基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、
上記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と
を具備するレーザ加工機を用いて、
隣り合う上記垂直共振型面発光レーザ素子それぞれから出射される励起光に基づいて発振される上記パルスレーザ光をそれぞれの発振のタイミングを異ならせて照射して上記加工対象物を加工する
レーザ加工方法。
【0204】
(13)
上記(12)に記載のレーザ加工方法であって、
隣り合う上記垂直共振型面発光レーザ素子それぞれから出射される励起光に基づく上記パルスレーザ光の発振のタイミングを、上記パルスレーザ光のパルス周期の半周期分ずらす
レーザ加工方法。
【0205】
(14)
基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、
上記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と、
上記レーザ光源と上記光学系との間に設けられた波長変換層と
を具備するレーザ加工機を用いて、
上記加工対象物に、上記共振器から出射され上記波長変換層を通過しないパルスレーザ光と、上記波長変換層を通過することにより波長変換されたパルスレーザ光を照射して上記加工対象物を加工する
レーザ加工方法。
【0206】
(15)
基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、
上記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と、
上記光学系と上記加工対象物との間に設けられた厚みが部位によって異なる透明部材と
を具備するレーザ加工機を用いて、
上記加工対象物に、上記透明部材によって形成される互いに焦点距離が異なる複数のパルスレーザ光を照射して、上記加工対象物を加工する
レーザ加工方法。
【0207】
(16)
基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射する複数のボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射により複数のパルスレーザ光を発振する共振器と、を有するレーザ光源と、
上記パルスレーザ光を縮小して加工対象物へ照射する光学系と、
上記レーザ光源と上記光学系との間に設けられた波長変換層と、
上記光学系と上記加工対象物との間に設けられた厚みが部位によって異なる透明部材と
を具備するレーザ加工機を用いて、
加工波長が互いに異なる第1の加工波長で加工される第1の材料と第2の加工波長で加工される第2の材料とが積層されてなる上記加工対象物に、上記共振器から出射され上記波長変換層を通過しない第1の加工波長の第1のパルレーザ光と、上記波長変換層を通過することにより第2の加工波長に変換された第2のパルスレーザ光を、上記第1の材料に上記第1のパルスレーザ光の焦点位置が、上記第2の材料に上記第2のパルスレーザ光の焦点位置がくるように上記透明部材によって焦点距離を異ならせて照射し、上記加工対象物を加工する
レーザ加工方法。
【0208】
(17)
基板と、上記基板の一方の面上に設けられ、上記基板の他方の面側から励起光を出射するボトムエミッション型の垂直共振器型面発光レーザ素子とを有する発光体と、
上記基板の他方の面側に上記発光体と接して配置される、上記励起光の入射によりパルスレーザ光を発振する共振器と
を具備するレーザ光源。
【符号の説明】
【0209】
1、201、301、401、501…発光体
2、602…ピコ秒発生共振器(共振器)
3…制御部
4、204、304、404、504、604…レーザ光源
5…光学系
6…波長変換層
7…厚みが部位によって異なる透明部材
8…加工対象物
9、9a~9d…励起光
10、10a~10d…VCSEL素子(垂直共振器型面発光レーザ素子)
11…基板
11a…一方の面
11b…他方の面
21…利得媒質層
22…過飽和吸収体
23a、23b…共振器ミラー(ミラー)
38、48…集光レンズアレイ基板(集光部材)
41~44、63、64…パルスレーザ光
59…コリメートレンズアレイ基板(コリメート部材)
100、600…レーザ加工機
211…基板(集光部材)
211a…一方の面
211b…他方の面
411…基板(コリメート部材)
411a…一方の面
411b…他方の面
図1
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