(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】密閉型電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/54 20060101AFI20231108BHJP
H01H 50/04 20060101ALI20231108BHJP
H01H 1/66 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01H50/54 C
H01H50/04 C
H01H1/66
(21)【出願番号】P 2021008372
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘純
(72)【発明者】
【氏名】足立 日出央
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134989(JP,A)
【文献】特表2016-506599(JP,A)
【文献】特開2016-096053(JP,A)
【文献】特開昭50-118261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 59/00
H01H 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた開閉方向に沿って動作することで主回路の電路を開閉する主接点部と、
前記主接点部の開閉を切り替える電磁石部と、
前記主接点部、及び前記電磁石部が内部に配置された樹脂製の容器本体と、
前記主接点部よりも前記開閉方向の一方側における前記容器本体の外側に設けられ、前記主接点部と共に前記開閉方向に沿って動作することで補助回路の電路を開閉する補助接点部と、
前記容器本体の内部と連通し、前記補助接点部が内部に配置された樹脂製の補助接点収容部と、を備え、
前記容器本体と前記補助接点収容部との内部に遮断用ガスが封入されていることを特徴とする密閉型電磁接触器。
【請求項2】
前記容器本体には、前記開閉方向の一方側に開口部が形成されており、
基端側が前記容器本体の内側で前記主接点部の可動側を支持し、先端側が前記開口部を通過して前記補助接点収容部の内側で前記補助接点部の可動側を支持し、前記開閉方向に沿って進退可能な接点支えを備えることを特徴とする請求項1に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項3】
前記補助接点収容部は、前記接点支えの先端側を覆い、前記開口部を密閉していることを特徴とする請求項2に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項4】
前記補助接点収容部は、接着剤で前記容器本体に接合されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項5】
前記主接点部は、
一端に主固定接点を有し、他端に前記主回路に接続される主端子部を有する一対の主固定接触子と、
前記主固定接点に対して接離する一対の主可動接点を有する主可動接触子と、を備え、
前記補助接点部は、
一端に補助固定接点を有し、他端に前記補助回路に接続される補助端子部を有する一対の補助固定接触子と、
前記補助固定接点に対して接離する一対の補助可動接点を有する補助可動接触子と、を備え、
前記主可動接触子及び前記補助可動接触子は、長尺状の平板であって、長尺方向の両端にそれぞれ前記主可動接点及び前記補助可動接点を有することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項6】
一対の前記主固定接触子、及び一対の前記補助固定接触子は、夫々、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって前記補助接点収容部又は前記容器本体に一体化されていることを特徴とする請求項5に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項7】
前記主可動接触子及び前記補助可動接触子は、互いの長尺方向が同一であることを特徴とする請求項5又は6に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項8】
コ字状に形成された一対の前記主固定接触子は、コ字状の開きが前記主可動接触子の長尺方向に沿って互いに対向するように設けられ、
前記主可動接触子及び前記補助可動接触子は、互いの長尺方向が直交することを特徴とする請求項5又は6に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項9】
前記補助端子部は端子ねじであり、
一対の前記補助固定接触子は、平板状であり、前記容器本体の外側に位置する他端側には、前記端子ねじにおける雄ねじ部の外径よりも大きな挿通穴が形成され、
前記容器本体には、前記容器本体の外側に位置する前記補助固定接触子の裏面側に端子受部が形成され、
前記端子受部には、前記端子ねじと嵌り合う有底のねじ穴が形成された金属製のナット部材が設けられ、
前記ナット部材は、化学エッチングによる表面処理を施されており、インサート成形によって前記端子受部に一体化されていることを特徴とする請求項5~8の何れか一項に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項10】
一端側が前記容器本体の内側に配置され、他端側が前記容器本体の外側で制御回路に接続されるコイル接触子と、
前記電磁石部のスプールに固定されており、前記電磁石部のコイルが接続される中継接触子と、
前記容器本体の内側で前記コイル接触子と前記中継接触子との間に挟まれた金属製のばね部材と、を備え、
前記コイル接触子は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって前記容器本体に一体化されていることを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項11】
前記ばね部材は、前記容器本体に対して前記電磁石部を押圧することを特徴とする請求項10に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項12】
前記容器本体、及び前記補助接点収容部は、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされていることを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の密閉型電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型電磁接触器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引用文献1に示される密閉型電磁接触器では、セラミックで蓋をした金属製の密閉容器内に接点部を収容し、そこに水素等の加圧された遮断用ガスを封入することで、接点の遮断性能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミックで蓋をした金属製の密閉容器を使用した構成では、電気絶縁性を確保しつつ補助端子を引き出すことが困難であり、部品点数やコストの増大を招いてしまう。
本発明の目的は、密閉型電磁接触器において、より簡易的な構造で安価に補助接点を設けることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る密閉型電磁接触器は、予め定めた開閉方向に沿って動作することで主回路の電路を開閉する主接点部と、主接点部の開閉を切り替える電磁石部と、主接点部、及び電磁石部が内部に配置された樹脂製の容器本体と、主接点部よりも開閉方向の一方側における容器本体の外側に設けられ、主接点部と共に開閉方向に沿って動作することで補助回路の電路を開閉する補助接点部と、容器本体の内部と連通し、補助接点部が内部に配置された樹脂製の補助接点収容部と、を備え、容器本体と補助接点収容部との内部に遮断用ガスが封入されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、容器本体及び補助接点収容部を樹脂製とすることで、電気絶縁性を確保しつつ容器本体における開閉方向の一方側に補助接点収容部を容易に設けることができる。このように、より簡易的な構造で安価に補助接点を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】コイル接触子、支持ばね、及び中継接触子を示す図である。
【
図10】密閉容器の断面図である(第二実施形態)。
【
図11】補助固定端子の断面図である(第二実施形態)。
【
図12】密閉型電磁接触器の外観図である(第三実施形態)。
【
図13】密閉容器の外観図である(第三実施形態)。
【
図14】密閉容器の分解図である(第三実施形態)。
【
図15】密閉容器の断面図である(第三実施形態)。
【
図16】密閉容器の断面図である(第三実施形態)。
【
図17】コイル接触子の断面図である(第三実施形態)。
【
図18】コイル接触子、支持ばね、及び中継接触子を示す図である(第三実施形態)。
【
図19】補助接点部の断面図である(第三実施形態)。
【
図20】ナット部材を示す図である(第三実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《第一実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、密閉容器の外観図である(第一実施形態)。
密閉容器11は、図示しない密閉型電磁接触器のケースに収容されて使用され、主回路の電路を開閉すると共に、主回路の開閉に連動して補助回路の電路を開閉する。密閉容器11は、電気絶縁性を有する樹脂であり、容器本体12と、補助接点収容部13と、を備える。容器本体12は、容器部14と、蓋部15と、を備える。
【0010】
容器部14は、奥行方向の奥側、縦方向の両側、及び幅方向の両側が閉塞され、奥行方向の手前側が開放された角型の箱形状である。
蓋部15は、容器部14の開放端に嵌り合い、容器部14における奥行方向の手前側を閉塞する。容器部14及び蓋部15には、何れか一方に凸条部が形成され、他方に凹条部が形成され、双方を嵌め合わせるものとする。
補助接点収容部13は、蓋部15の中心に設けられ、奥行方向手前側、縦方向の両側、及び幅方向の両側が閉塞され、奥行方向の奥側が開放された角型の小箱形状であり、容器本体12の内側に連通している。
【0011】
密閉容器11には、水素や窒素等の加圧された遮断用ガスが封入されている。そのため、密閉容器11は、容器部14と、蓋部15と、補助接点収容部13と、をエポキシ樹脂系の接着剤で固定したうえ、境界部を含む外周面の全てが粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。具体的には、精製したスメクタイトの層間イオンを置換し、PVA(ポリビニルアルコール)や水溶性ナイロン等の有機バインダーでつなぎ合わせることで、迷路効果を発現し、水素や窒素等のガス分子の透過を防いでいる。積層膜は厚み方向に積層されており、厚さは例えば2μmである。ガスバリアコーティングは、例えば塗液をミスト化して密閉容器11に塗布するスプレー方式とし、例えば150℃以上の、層間イオンが粘土結晶内に取り込まれる温度で焼成されることで完成される。このように、外周面の全てがガスバリアコーティングされる関係で、密閉容器11の外周形状は、できるだけ凹凸が少なく直線的な平面で構成した多角形とすることが好ましい。
【0012】
図2は、密閉容器の分解図である(第一実施形態)。
図3は、密閉容器の断面図である(第一実施形態)。
ここでは、幅方向の中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
図4は、密閉容器の断面図である(第一実施形態)。
ここでは、縦方向の中心を通り、幅方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
密閉容器11には、主接点部21と、補助接点部22と、電磁石部23と、が収容されている。具体的には、補助接点収容部13に補助接点部22が配置され、容器本体12における奥行方向の手前側に主接点部21が配置され、容器本体12における奥行方向の奥側に電磁石部23が配置されている。容器部14には、底面の中心に、遮断用ガスを封入するためのガス封入構造16が形成されている。
【0013】
主接点部21は、圧着端子を介して主回路に接続され、主回路の電路を開閉するものであり、容器本体12は、一対の主固定接触子31と、主可動接触子32と、を備える。
一対の主固定接触子31は、導電性を有する帯状の金属であり、縦方向に間隔をあけて並んでいる。主固定接触子31は、側板部33と、上板部34と、下板部35と、を備えており、幅方向から見て、縦方向の内側に開いた略コ字状に形成されている。側板部33は、奥行方向に延び、縦方向の外側で幅方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、蓋部15を突き抜けている。上板部34は、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成され、容器本体12の外側で側板部33における奥行方向の手前側から縦方向の内側に向かって延びている。下板部35は、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成され、容器本体12の内側で側板部33における奥行歩行の奥側から縦方向の内側に向かって延びている。
【0014】
一対の下板部35は、容器本体12の内側で縦方向に向き合った先端同士が間隔をあけて設けられており、夫々、奥行方向における手前側の面に、主固定接点36が形成されている。一対の上板部34は、容器本体12の外側で縦方向に向き合った先端同士が間隔をあけて並び、奥行方向における奥側の面が蓋部15に接するように設けられている。一対の上板部34には、奥行方向に貫通したねじ穴が形成され、ねじ穴の雌ねじ部に端子ボルト37が嵌め合わされている。端子ボルト37は、導電性を有する金属であり、頭部を持たず奥行方向の全長にわたって雄ねじ部が形成されたスタッドボルトである。端子ボルト37は、奥行方向の奥側が蓋部15に埋まっており、上板部34から突出した奥行方向の手前側が主端子部となる。一対の端子ボルト37は、一方が主回路の一次側に接続され、他方が主回路の二次側に接続される。
【0015】
一対の主固定接触子31及び端子ボルト37は、インサート成形によって側板部33が蓋部15を突き抜けた状態で一体化されている。具体的には、主固定接触子31の表面、及び端子ボルト37の表面に、化学エッチングによってミクロンサイズの微細な凹凸形状を形成しておき、インサート成形を行なう。これにより、溶かした樹脂が凹凸形状の内部に入り込み、樹脂が固化することで、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防いでいる。金属表面処理技術としては、例えばメック株式会社の「AMALPHA/アマルファ」(登録商標)がある。
【0016】
主可動接触子32は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った長尺状の平板であり、一対の下板部35よりも奥行方向の手前側に配置されている。すなわち、略コ字状に形成された一対の主固定接触子31は、略コ字状の開きが主可動接触子32の長尺方向に沿って互いに対向するように設けられている。主可動接触子32の両端側には、奥行方向における奥側の面に主可動接点38がろう付けされている。主可動接触子32は、奥行方向の手前側に後退しているときに、主可動接点38の夫々を主固定接点36に対して離間させ、奥行方向の奥側に前進しているときに、主可動接点38の夫々を主固定接点36に対して接触させる。主接点部21は、主固定接点36、及び主可動接点38によって形成される。主可動接触子32は、奥行方向に沿って動作することで主回路の電路を開閉するため、奥行方向が主接点部21にとっての開閉方向となる。
【0017】
補助接点部22は、コネクタ端子を介して補助回路に接続され、補助回路の電路を開閉するものであり、補助接点収容部13は、一対の補助固定接触子41と、補助可動接触子42と、を備える(
図4参照)。
一対の補助固定接触子41は、導電性を有する帯状の金属であり、縦方向に間隔をあけて並んでいる。補助固定接触子41は、下板部43と、側板部44と、を備えており、縦方向から見て、略L字状に形成されている。下板部43は、幅方向に延び、幅方向及び縦方向に沿った板状に形成され、補助接点収容部13の側壁を突き抜けている。側板部44は、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、補助接点収容部13の外側で、下板部43における幅方向の外側から奥行方向の手前側に向かって延びている。
【0018】
一対の下板部43は、補助接点収容部13の内側で幅方向に向き合った先端同士が間隔をあけて設けられており、夫々、奥行方向における奥側の面に、補助固定接点46がろう付けされている。補助接点収容部13には、幅方向における両側の外周面に、幅方向の内側に向かって凹となる凹部47が一つずつ形成されており、凹部47によって側板部44が露出している。凹部47によって露出した一対の側板部44が補助端子部となり、一方は補助回路の一次側に接続され、他方は補助回路の二次側に接続される。一対の補助固定接触子41は、インサート成形によって補助接点収容部13の側壁を突き抜けた状態で一体化されている。インサート成形の手法については、前述した主固定接触子31と同様である。
【0019】
補助可動接触子42は、導電性を有する金属であり、幅方向に延び、幅方向及び縦方向に沿った長尺状の平板であり、一対の補助固定接触子41よりも奥行方向の奥側に配置されている。すなわち、奥行方向から見て、主可動接触子32及び補助可動接触子42は、互いの長尺方向が直交している。補助可動接触子42の両端側は、二股に分かれた双接点になっており、奥行方向における手前側の面に補助可動接点48がろう付けされている。補助可動接触子42は、奥行方向の手前側に後退しているときに、補助可動接点48の夫々を補助固定接点46に対して接触させ、奥行方向の奥側に前進しているときに、補助可動接点48の夫々を補助固定接点46に対して離間させる。補助接点部22は、補助固定接点46、及び補助可動接点48によって形成される。補助可動接触子42は、奥行方向に沿って動作することで補助回路の電路を開閉するため、奥行方向が補助接点部22にとっての開閉方向となる。
【0020】
主可動接触子32及び補助可動接触子42は、接点支え51によって支持されている。接点支え51は、電気絶縁性を有する樹脂であり、一対の主固定接触子31の間に配置されている。蓋部15には、一対の上板部34同士の間に、奥行方向に貫通した開口部17が形成されている。接点支え51は、基端側となる奥行方向の奥側が、容器本体12の内側で主接触ばね52を介して主可動接触子32を弾性支持している。主接触ばね52は、主可動接触子32を奥行方向の奥側に付勢することで主接点部21の接触圧力を一定に保つ。
【0021】
接点支え51は、先端側となる奥行方向の手前側が、開口部17を通過して補助接点収容部13の内側で補助接触ばね53を介して補助可動接触子42を弾性支持している。補助接触ばね53は、補助可動接触子42を奥行方向の手前側に付勢することで補助接点部22の接触圧力を一定に保つ。
蓋部15には、奥行方向における手前側の面のうち、一対の上板部34同士の間に、奥行方向の奥側に向かって凹となり、補助接点収容部13における奥行方向の奥側を嵌め合わせ可能な凹部18が形成されている。補助接点収容部13は、接点支え51の先端側を覆い、凹部18に固定されることで、開口部17を密閉している。
【0022】
容器本体12には、接点支え51の周囲に、隔壁部材54が設けられている。隔壁部材54は、電気絶縁性を有する樹脂であり、縦方向の両側及び幅方向の両側を囲む角筒状に形成されている。隔壁部材54には、外周面のうち縦方向の両側及び幅方向の両側に、板状の永久磁石55が一つずつ嵌め込まれ、さらにその周囲に帯状のヨーク56が設けられている。縦方向の両側に配置された一対の永久磁石55は、縦方向の内側がS極となり、幅方向の両側に配置された一対の永久磁石55は、幅方向の内側がN極となる。これにより、奥行方向から見ると、縦方向の両側に配置された各永久磁石55から、幅方向の両側に配置された各永久磁石55へと向かう磁束が形成される。ヨーク56は、縦方向の中心で二つに分割され、夫々、奥行方向から見て縦方向の内側に向かって開いた略コ字状に形成されており、これら一対のヨーク56を縦方向の両側から嵌め合わせることで、奥行方向から見た隔壁部材54の全周を取り囲んでいる。
【0023】
電磁石部23は、容器部14における奥行方向の奥側に収容されており、主接点部21の開閉、及び補助接点部22の開閉を切り替える。電磁石部23は、スプール61と、プランジャ62と、上アーマチュア63と、下アーマチュア64と、ヨーク65と、復帰ばね66と、を備える(
図4参照)。
スプール61は、電気絶縁性を有する樹脂であり、奥行方向に延びる円筒状の巻き軸71にコイル72が巻かれている。プランジャ62は、奥行方向に延びる円柱状の可動鉄心であり、巻き軸71に挿通されている。プランジャ62は、奥行方向の手前側が板ばねを介して接点支え51に連結されている。上アーマチュア63は、縦方向及び幅方向に沿った平板状の継鉄であり、プランジャ62における奥行方向の手前側に固定されている。下アーマチュア64は、縦方向及び幅方向に沿った平板状の継鉄であり、プランジャ62における奥行方向の奥側に固定されている。
【0024】
一対のヨーク65は、板状の継鉄であり、スプール61における幅方向の一方側と他方側に一つずつ固定されている。ヨーク65は、側片部73と、上片部74と、下片部75と、を備えており、縦方向から見て、幅方向の内側に開いた略コ字状に形成されている。
側片部73は、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、スプール61における幅方向の外側を覆っている。
上片部74は、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成され、側片部73における奥行方向の手前側から幅方向の内側に向かって延びている。
【0025】
下片部75は、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成され、側片部73における奥行方向の奥側から幅方向の内側に向かって延びている。
上片部74と下片部75との離隔距離は、上アーマチュア63と下アーマチュア64との離隔距離と同一である。上片部74は、上アーマチュア63よりも奥行方向の奥側にあり、下片部75は、下アーマチュア64よりも奥行方向の奥側にある。
復帰ばね66は、下アーマチュア64と容器部14の底面との間に挟まれており、プランジャ62を奥行方向の手前側に付勢している。
【0026】
図5は、コイル接触子の断面図である。
ここでは、コイル接触子81を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
一対のコイル接触子81は、導電性を有する金属であり、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成されており、幅方向に沿って間隔をあけて並列に並んでいる(
図6参照)。一方のコイル接触子81は、縦方向の内側が容器本体12の内側に配置され、縦方向の外側が容器本体12の外側で制御回路の正極側に接続される。他方のコイル接触子81は、縦方向の内側が容器本体12の内側に配置され、縦方向の外側が容器本体12の外側で制御回路の負極側に接続される。一対のコイル接触子81は、インサート成形によって容器部14の側壁を突き抜けた状態で一体化されている。インサート成形の手法については、前述した主固定接触子31と同様である。
【0027】
容器部14の内周面には、縦方向の両端側に、段差状のスプール受部82が一つずつ形成されている。各スプール受部82には、奥行方向における手前側の面に、奥行方向の奥側に向かって凹となる深型凹部83が二つずつ形成されている。一対の深型凹部83は、幅方向に沿って間隔をあけて並列に並んでおり、縦方向の一方側では、深型凹部83によってコイル接触子81における縦方向の内側が露出している。縦方向の一方側で露出したコイル接触子81の表面と、縦方向の他方側に形成された深型凹部83の底面とは、奥行方向の位置が同一である。
【0028】
スプール61には、奥行方向の手前側で、且つ縦方向の両側に、縦方向の外側に向かって突出したアーム片84が一つずつ形成されている(
図3参照)。アーム片84は、縦方向及び縦方向に沿った略板状に形成されており、片持ち梁となる。縦方向の一方側では、アーム片84に一対の中継接触子85がインサート成形されている(
図6参照)。一対の中継接触子85は、導電性を有する金属であり、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成されている。中継接触子85は、密閉容器11を突き抜ける部品ではないため、インサート成形の手法については、前述した主固定接触子31のように特殊な金属表面処理技術は不要である。
【0029】
各アーム片84には、奥行方向の奥側の面に、奥行方向の手前側に向かって凹となる浅型凹部86が二つずつ形成されている。一対の浅型凹部86は、幅方向に沿って間隔をあけて並列に並んでおり、縦方向の一方側では、浅型凹部86によって中継接触子85における縦方向の外側が露出している。縦方向の一方側で露出した中継接触子85の表面と、縦方向の他方側に形成された浅型凹部86の底面とは、奥行方向の位置が同一である。中継接触子85には、縦方向における内側の端部から幅方向の外側に向かって突出した突出部87が形成されている(
図6参照)。突出部87は、アーム片84における幅方向の側面から突出し、奥行方向の奥側に傾斜している。一方の突出部87には、コイル72における巻線の一端がはんだ付けされ、他方の突出部87には、コイル72における巻線の他端がはんだ付けされる。
【0030】
深型凹部83及び浅型凹部86には、支持ばね88(ばね部材)が一つずつ収容されている。支持ばね88は、圧縮方向に負荷をかけていないときの自由高さが、深型凹部83の深さに浅型凹部86の深さを加えた寸法よりも大きい。密閉容器11に全ての部品を収容すると、支持ばね88に対して圧縮方向の負荷がかかるが、このときもアーム片84がスプール受部82から浮いた状態を維持するように設定されている(
図3参照)。したがって、スプール61は、一対のアーム片84が、片側に二つずつ設けられた支持ばね88に懸架されている。容器部14に蓋部15を固定すると、支持ばね88の反発力により、スプール61が隔壁部材54を介して蓋部15に押圧されることで、ガタつきが抑制される。
【0031】
図6は、コイル接触子、支持ばね、及び中継接触子を示す図である。
ここでは、コイル接触子81、中継接触子85、及び支持ばね88だけを抜き出し、容器部14、アーム片84、及びスプール受部82等を省略した状態を示す。支持ばね88は、導電性を有する金属である。縦方向の一方側においては、コイル接触子81と中継接触子85との間に支持ばね88が圧縮された状態で挟まれており、支持ばね88がコイル接触子81及び中継接触子85の双方に接触している。これにより、コイル接触子81とコイル72とが電気的に接続される。したがって、縦方向の一方側においては、支持ばね88がスプール61の支持とコイル接触子81の電気接続とを兼ねている。
【0032】
上記より、コイル72に通電がない非励磁の状態では、プランジャ62が復帰ばね66の反発力によって奥行方向の手前側へと後退しており、これに伴って接点支え51も奥行方向の手前側へと後退する。これにより、主接点部21が開くと共に、補助接点部22が閉じる。このとき、上片部74に対して上アーマチュア63が離間し、下片部75に対して下アーマチュア64が離間している。
この状態から、コイル72に通電され励磁されると、上片部74に上アーマチュア63が吸着されると共に、下片部75に下アーマチュア64が吸着される。したがって、プランジャ62が復帰ばね66の反発力に逆らって奥行方向の奥側へと前進し、これに伴って接点支え51も奥行方向の奥側へと前進する。これにより、主接点部21が閉じると共に、補助接点部22が開く。
【0033】
《作用》
次に第一実施形態の主要な作用について説明する。
主接点部及び補助接点部を収容する密閉容器は、これまでセラミックで蓋をした金属製であったが、電気絶縁性を確保しつつ補助端子を引き出すことが困難であり、部品点数やコストの増大を招いていた。そこで本実施形態では、まず主接点部21と電磁石部23とを樹脂製の容器本体12の内部に配置した。さらに、主接点部21よりも奥行方向の手前側における容器本体12の外側に補助接点部22を設け、この補助接点部22を、容器本体12の内部と連通する樹脂製の補助接点収容部13の内部に配置した。そして、容器本体12及び補助接点収容部13の内部に、遮断用ガスを封入した。このように、容器本体12及び補助接点収容部13を樹脂製とすることで、電気絶縁性を確保しつつ容器本体12における開閉方向の一方側に補助接点収容部13を容易に設けることができる。したがって、より簡易的な構造で安価に補助接点を設けることができる。
【0034】
容器本体12及び補助接点収容部13は、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。これにより、水素や窒素等のガス分子の透過が抑制され、加圧された遮断用ガスの漏洩を防ぐことができる。
容器本体12には、奥行方向の手前側に開口部17が形成されている。奥行方向に沿って進退可能な接点支え51は、基端側が容器本体12の内側で主接点部21の可動側を支持し、先端側が開口部17を通過して補助接点収容部13の内側で補助接点部22の可動側を支持している。このように、接点支え51が進退する線上に開口部17を設け、接点支え51の先端側を、開口部17を介して補助接点収容部13の内側に進入させていることで、組み立てが容易で安価な構造にすることができる。
【0035】
補助接点収容部13は、接点支え51の先端側を覆い、開口部17を密閉している。このように、容器本体12、及び補助接点収容部13を密閉することで、主接点部21及び補助接点部22の遮断性能を高めることができる。したがって、消弧スペースの大型化を抑制して小型軽量化を図ることができる。
補助接点収容部13は、エポキシ樹脂系の接着剤で蓋部15の凹部18に接合されている。このように、蓋部15と補助接点収容部13との接合に接着剤を用いることで、組み立てが容易で安価な構造にすることができる。
【0036】
主接点部21は、一対の主固定接触子31と、主可動接触子32と、を備える。主固定接触子31は、一端に主固定接点36を有し、他端の端子ボルト37が主回路に接続される主端子部となる。主可動接触子32は、主固定接点36に対して接離する一対の主可動接点38を有する。補助接点部22は、一対の補助固定接触子41と、補助可動接触子42と、を備える。一対の補助固定接触子41は、一端に補助固定接点46を有し、他端の側板部44が補助回路に接続される補助端子部となる。補助可動接触子42は、補助固定接点46に対して接離する一対の補助可動接点48を有する。主可動接触子32及び補助可動接触子42は、長尺状の平板であって、長尺方向の両端にそれぞれ主可動接点38及び補助可動接点48を有する。これにより、主接点部21の開閉、及び補助接点部22の開閉を容易に切り替えることができる。
【0037】
一対の補助固定接触子41は、補助接点収容部13の内側で一端側同士が間隔をあけて並び、夫々の一端側に補助固定接点46が形成され、夫々の他端側が補助接点収容部13の外側で補助回路に接続される。補助可動接触子42は、両端側に補助可動接点48が形成され、補助可動接点48の夫々を補助固定接点46に対して接触及び離間させる。補助接点部22は、補助固定接点46、及び補助可動接点48によって形成される。一対の補助固定接触子41は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって補助接点収容部13に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0038】
一対の主固定接触子31は、容器本体12の内側で一端側同士が間隔をあけて並び、夫々の一端側に主固定接点36が形成され、夫々の他端側が容器本体12の外側で主回路に接続される。主可動接触子32は、両端側に主可動接点38が形成され、主可動接点38の夫々を主固定接点36に対して接触及び離間させる。主接点部21は、主固定接点36、及び主可動接点38によって形成される。一対の主固定接触子31は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって蓋部15に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0039】
一対の主固定接触子31は、略コ字状に形成されており、略コ字状の開きが、主可動接触子32の長尺方向に沿って互いに対向するように設けられている。これにより、密閉容器11が縦方向に大型化することを抑制できる。主接点部21を閉じるとき、主可動接触子32が主固定接触子31を奥行方向の奥側へと引っ張るため、一対の上板部34を蓋部15の上面に接するように設け、強度を確保している。したがって、蓋部15の上面は、一対の上板部34によってスペースが使用され、上板部34同士の間は、縦方向に十分なスペースを確保することが難しい。そこで、主可動接触子32及び補助可動接触子42は、奥行方向から見て、互いの長尺方向を直交させ、補助可動接触子42の長尺方向を、密閉容器11の幅方向と平行にしている。これにより、限られたスペースしかない上板部34同士の間を有効利用し、補助接点部22、及び補助接点収容部13を容易に配置することができる。
【0040】
コイル接触子81は、一端側が容器本体12の内側に配置され、他端側が容器本体12の外側で制御回路に接続される。中継接触子85は、電磁石部23のスプール61に固定されており、電磁石部23のコイル72が接続される。支持ばね88は、金属製であり、容器本体12の内側でコイル接触子81と中継接触子85との間に挟まれている。これにより、振動を受けるような環境下でも、支持ばね88の伸縮によってコイル接触子81と中継接触子85との良好な接触状態を保つことができ、製品の信頼性が向上する。コイル接触子81は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって容器部14に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0041】
支持ばね88は、容器本体12に対して電磁石部23を押圧している。具体的には、容器部14に蓋部15を固定すると、支持ばね88の反発力により、スプール61が隔壁部材54を介して蓋部15の裏面に押圧される。これにより、容器本体12の内側で電磁石部23、及び隔壁部材54にガタつきが生じることを抑制できる。支持ばね88は、縦方向の一方側に二つ、他方側に二つで、計四つあり、反発力がスプール61における縦方向の両側に均等に作用するように配置されている。これにより、重心の偏りが抑制されて安定性が向上する。また、容器本体12を組み立てるときの作業性も向上する。
【0042】
なお、電流ゼロ点が周期的に生じる交流と異なり、電流ゼロ点が生じない直流の遮断においては、主接点部21の接点間に発生するアーク電圧を電源電圧以上に高めることで、強制的に電流ゼロ点を作り、接点間の絶縁を回復する必要がある。そこで、アーク電圧を高めるために、永久磁石55を用いてアークを消弧スペースに引き延ばすことで、遮断性能を高めることができる。さらに、主接点部21及び補助接点部22を密閉容器11内に配置し、そこに遮断性能を高める遮断用ガスを封入することで、消弧スペースの大型化を抑制することができる。
【0043】
《変形例》
第一実施形態では、補助接点部22を常閉型のb接点としているが、これに限定されるものではなく、常開型のa接点にしてもよい。
第一実施形態では、密閉容器11の外周面だけにガスバリアコーティングを行なっているが、これに限定されるものではなく、密閉容器11の内周面にもガスバリアコーティングを行なってもよい。
第一実施形態では、支持ばね88がスプール61の支持とコイル接触子81の電気接続とを兼ねているが、これに限定されるものではない。すなわち、スプール61を支持するばね部材と、コイル接触子81を電気接続するばね部材とを設け、役割を分離させてもよい。
第一実施形態では、縦方向の両側に配置された一対の永久磁石55は、縦方向の内側がS極となり、幅方向の両側に配置された一対の永久磁石55は、幅方向の内側がN極となるように配置していたが、これに限定されるものではない。縦方向の両側に配置された一対の永久磁石55も、幅方向の両側に配置された一対の永久磁石55も、内側が同極となるように配置してもよい。
【0044】
《第二実施形態》
《構成》
第二実施形態は、主固定接触子の形状、及び補助固定接触子の形状を変更したものであるが、基本的な構造や機能については、前述した第一実施形態と同様であるため、共通する部分について同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図7は、密閉容器の外観図である(第二実施形態)。
密閉容器111は、図示しない密閉型電磁接触器のケースに収容されて使用され、主回路の電路を開閉すると共に、主回路の開閉に連動して補助回路の電路を開閉する。密閉容器111は、電気絶縁性を有する樹脂であり、容器本体112と、補助接点収容部113と、を備える。容器本体112は、容器部114と、蓋部115と、を備える。
【0045】
容器部114は、奥行方向の奥側、縦方向の両側、及び幅方向の両側が閉塞され、奥行方向の手前側が開放された角型の箱形状である。
蓋部115は、容器部114の開放端に嵌り合い、容器部114における奥行方向の手前側を閉塞する。容器部114及び蓋部115には、何れか一方に凸条部が形成され、他方に凹条部が形成され、双方を嵌め合わせるものとする。
補助接点収容部113は、蓋部115の中心に設けられ、奥行方向手前側、縦方向の両側、及び幅方向の両側が閉塞され、奥行方向の奥側が開放された角型の小箱形状であり、容器本体112の内側に連通している。
密閉容器111には、水素等の加圧された遮断用ガスが封入されている。そのため、密閉容器111は、容器部114と、蓋部115と、補助接点収容部113と、をエポキシ樹脂系の接着剤で固定したうえ、外周面の全てが粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。
【0046】
図8は、密閉容器の分解図である(第二実施形態)。
図9は、密閉容器の断面図である(第二実施形態)。
ここでは、幅方向の中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
図10は、密閉容器の断面図である(第二実施形態)。
ここでは、縦方向の中心を通り、幅方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
密閉容器111には、主接点部121と、補助接点部122と、電磁石部23と、が収容されている。具体的には、補助接点収容部113に補助接点部122が配置され、容器本体112における奥行方向の手前側に主接点部121が配置され、容器本体112における奥行方向の奥側に電磁石部23が配置されている。
【0047】
主接点部121は、通しボルトを介して主回路に接続され、主回路の電路を開閉するものであり、容器本体112は、一対の主固定接触子131と、主可動接触子132と、を備える。
一対の主固定接触子131は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った長尺状の平板であり、縦方向に間隔をあけて直列に並んでいる。向かい合った側となる夫々の一端側は、容器本体112の内側に配置され、奥行方向における奥側の面に主固定接点136が形成されている。背き合った側となる夫々の他端側は、容器本体112の外側に配置され、主端子部となる。一対の主固定接触子131は、一方が主回路の一次側に接続され、他方が主回路の二次側に接続される。
【0048】
一対の主固定接触子131は、インサート成形によって蓋部115の側壁を突き抜けた状態で一体化されている。具体的には、主固定接触子131の表面に、化学エッチングによってミクロンサイズの微細な凹凸形状を形成しておき、インサート成形を行なう。これにより、溶かした樹脂が凹凸形状の内部に入り込み、樹脂が固化することで、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防いでいる。インサート成形の手法については、前述した第一実施形態の主固定接触子31と同様である。
【0049】
主可動接触子132は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った長尺状の平板であり、一対の主固定接触子131よりも奥行方向の奥側に配置されている。主可動接触子132の両端側には、奥行方向における手前側の面に主可動接点138がろう付けされている。主可動接触子132は、奥行方向の奥側に後退しているときに、主可動接点138の夫々を主固定接点136に対して離間させ、奥行方向の手前側に前進しているときに、主可動接点138の夫々を主固定接点136に対して接触させる。主接点部121は、主固定接点136、及び主可動接点138によって形成される。主可動接触子132は、奥行方向に沿って動作することで主回路の電路を開閉するため、奥行方向が主接点部121にとっての開閉方向となる。
【0050】
補助接点部122は、コネクタ端子を介して補助回路に接続され、補助回路の電路を開閉するものであり、補助接点収容部113は、一対の補助固定接触子141と、補助可動接触子142と、を備える。
図11は、補助固定端子の断面図である(第二実施形態)。
ここでは、補助固定接触子141を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
一対の補助固定接触子141は、導電性を有する帯状の金属であり、縦方向に間隔をあけて並んでいる。補助固定接触子141は、上板部141aと、内側板部141bと、下板部141cと、外側板部141dと、を備えており、縦方向から見て略柄杓状に形成されている。
【0051】
上板部141aは、幅方向及び縦方向に沿った板状に形成され、幅方向に延びている。内側板部141bは、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、上板部141aにおける幅方向の外側から奥行方向の奥側に向かって延びている。下板部141cは、幅方向及び縦方向に沿った板状に形成され、内側板部141bにおける奥行方向の奥側から幅方向の外側に向かって延びている。外側板部141dは、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、下板部141cにおける幅方向の外側から奥行方向の手前側に向かって延びている。
【0052】
蓋部115には、奥行方向における手前側の面の中央に、補助接点収容部113を受けるために盛り上がった受台部126が形成されている。受台部126には、縦方向の両側に、奥行方向の奥側に凹となる凹部127が一つずつ形成されており、凹部127によって上板部141aが露出している。凹部127によって露出した上板部141aには、補助固定接点146がろう付けされている。受台部126には、幅方向における一方の側面のうち、縦方向の両側に、幅方向の内側に向かって凹となる凹部128が一つずつ形成されており、凹部128によって外側板部141dが露出している。凹部128によって露出した外側板部141dが補助端子部となり、一方は補助回路の一次側に接続され、他方は補助回路の二次側に接続される。一対の補助固定接触子141は、インサート成形によって受台部126に一体化されている。インサート成形の手法については、前述した第一実施形態の主固定接触子31と同様である。
【0053】
補助可動接触子142は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、幅方向及び縦方向に沿った長尺状の平板であり、一対の補助固定接触子141よりも奥行方向の奥側に配置されている(
図9参照)。すなわち、奥行方向から見て、主可動接触子132及び補助可動接触子142は、互いの長尺方向が同一である。補助可動接触子142の両端側は、二股に分かれた双接点になっており、奥行方向における手前側の面に補助可動接点148がろう付けされている。補助可動接触子142は、奥行方向の奥側に後退しているときに、補助可動接点148の夫々を補助固定接点146に対して接触させ、奥行方向の手前側に前進しているときに、補助可動接点148の夫々を補助固定接点146に対して離間させる。補助接点部122は、補助固定接点146、及び補助可動接点148によって形成される。補助可動接触子142は、奥行方向に沿って動作することで補助回路の電路を開閉するため、奥行方向が補助接点部122にとっての開閉方向となる。
【0054】
主可動接触子132及び補助可動接触子142は、接点支え151によって支持されている。接点支え151は、電気絶縁性を有する樹脂であり、一対の主固定接触子131の間に配置されている。蓋部115には、一対の上板部141a同士の間に、奥行方向に貫通した開口部117が形成されている。接点支え151は、基端側となる奥行方向の奥側が、容器本体112の内側で主接触ばね152を介して主可動接触子132を弾性支持している。主接触ばね152は、主可動接触子132を奥行方向の手前側に付勢することで主接点部121の接触圧力を一定に保つ。
【0055】
接点支え151は、先端側となる奥行方向の手前側が、開口部117を通過して補助接点収容部113の内側で補助接触ばね153を介して補助可動接触子142を弾性支持している。補助接触ばね153は、補助可動接触子142を奥行方向の奥側に付勢することで補助接点部122の接触圧力を一定に保つ。
受台部126には、奥行方向における手前側の面のうち、奥行方向から見た外縁側に、奥行方向の奥側に向かって凹となり、補助接点収容部113における奥行方向の奥側を嵌め合わせ可能な凹条部118が形成されている。補助接点収容部113は、接点支え151の先端側を覆い、受台部126の凹条部118に固定されることで、開口部117を密閉している。
【0056】
容器本体112には、接点支え151の周囲に、隔壁部材154が設けられている。隔壁部材154は、電気絶縁性を有する樹脂であり、縦方向の両側及び幅方向の両側を囲む角筒状に形成されている。隔壁部材154には、外周面のうち幅方向の両側に、板状の永久磁石155が一つずつ嵌め込まれ(
図10参照)、さらにその周囲に帯状のヨーク156が設けられている。幅方向の両側に配置された一対の永久磁石155は、幅方向の内側がS極となる。これにより、各永久磁石155において、幅方向の外側から縦方向の外側を回って幅方向の内側へと向かう磁束が形成される。ヨーク156は、縦方向の中心で二つに分割され、夫々、奥行方向から見て縦方向の内側に向かって開いた略コ字状に形成されており、これら一対のヨーク156を縦方向の両側から嵌め合わせることで、奥行方向から見た隔壁部材154の全周を取り囲んでいる。
【0057】
上記より、コイル72に通電がない非励磁の状態では、プランジャ62が復帰ばね66の反発力によって奥行方向の奥側へと後退しており、これに伴って接点支え151も奥行方向の奥側へと後退する。これにより、主接点部121が開くと共に、補助接点部122が閉じる。このとき、上片部74に対して上アーマチュア63が離間し、下片部75に対して下アーマチュア64が離間している。
この状態から、コイル72に通電され励磁されると、上片部74に上アーマチュア63が吸着されると共に、下片部75に下アーマチュア64が吸着される。したがって、プランジャ62が復帰ばね66の反発力に逆らって奥行方向の手前側へと前進し、これに伴って接点支え151も奥行方向の手前側へと前進する。これにより、主接点部121が閉じると共に、補助接点部122が開く。
【0058】
《作用》
次に第二実施形態の主要な作用について説明する。
主接点部及び補助接点部を収容する密閉容器は、これまでセラミックで蓋をした金属製であったが、電気絶縁性を確保しつつ補助端子を引き出すことが困難であり、部品点数やコストの増大を招いていた。そこで本実施形態では、まず主接点部121と電磁石部23とを樹脂製の容器本体112の内部に配置した。さらに、主接点部121よりも奥行方向の手前側における容器本体112の外側に補助接点部122を設け、この補助接点部122を、容器本体112の内部と連通する樹脂製の補助接点収容部113の内部に配置した。そして、容器本体112及び補助接点収容部113の内部に、遮断用ガスを封入した。このように、容器本体112及び補助接点収容部113を樹脂製とすることで、電気絶縁性を確保しつつ容器本体112における開閉方向の一方側に補助接点収容部113を容易に設けることができる。したがって、より簡易的な構造で安価に補助接点を設けることができる。
【0059】
容器本体112及び補助接点収容部113は、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。これにより、水素や窒素等のガス分子の透過が抑制され、加圧された遮断用ガスの漏洩を防ぐことができる。
容器本体112には、奥行方向の手前側に開口部117が形成されている。奥行方向に沿って進退可能な接点支え151は、基端側が容器本体112の内側で主接点部121の可動側を支持し、先端側が開口部117を通過して補助接点収容部113の内側で補助接点部122の可動側を支持している。このように、接点支え151が進退する線上に開口部117を設け、接点支え151の先端側を、開口部117を介して補助接点収容部113の内側に進入させていることで、組み立てが容易で安価な構造にすることができる。
【0060】
補助接点収容部113は、接点支え151の先端側を覆い、開口部117を密閉している。このように、容器本体112、及び補助接点収容部113を密閉することで、主接点部121及び補助接点部122の遮断性能を高めることができる。したがって、消弧スペースの大型化を抑制して小型軽量化を図ることができる。
補助接点収容部113は、エポキシ樹脂系の接着剤で蓋部115の凹条部118に接合されている。このように、蓋部115と補助接点収容部113との接合に接着剤を用いることで、組み立てが容易で安価な構造にすることができる。凹条部118は、接着剤溜りとなるため、接着剤を注入しやすく、組み立てが容易となる。
【0061】
主接点部121は、一対の主固定接触子131と、主可動接触子132と、を備える。主固定接触子131は、一端に主固定接点136を有し、他端が主回路に接続される主端子部となる。主可動接触子132は、主固定接点136に対して接離する一対の主可動接点138を有する。補助接点部122は、一対の補助固定接触子141と、補助可動接触子142と、を備える。一対の補助固定接触子141は、一端に補助固定接点146を有し、他端の外側板部141dが補助回路に接続される補助端子部となる。補助可動接触子142は、補助固定接点146に対して接離する一対の補助可動接点148を有する。主可動接触子132及び補助可動接触子142は、長尺状の平板であって、長尺方向の両端にそれぞれ主可動接点138及び補助可動接点148を有する。これにより、主接点部121の開閉、及び補助接点部122の開閉を容易に切り替えることができる。
【0062】
一対の補助固定接触子141は、補助接点収容部113の内側で一端側同士が間隔をあけて並び、夫々の一端側に補助固定接点146が形成され、夫々の他端側が補助接点収容部113の外側で補助回路に接続される。補助可動接触子142は、両端側に補助可動接点148が形成され、補助可動接点148の夫々を補助固定接点146に対して接触及び離間させる。補助接点部122は、補助固定接点146、及び補助可動接点148によって形成される。一対の補助固定接触子141は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって受台部126に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0063】
一対の主固定接触子131は、容器本体112の内側で一端側同士が間隔をあけて並び、夫々の一端側に主固定接点136が形成され、夫々の他端側が容器本体112の外側で主回路に接続される。主可動接触子132は、両端側に主可動接点138が形成され、主可動接点138の夫々を主固定接点136に対して接触及び離間させる。主接点部121は、主固定接点136、及び主可動接点138によって形成される。一対の主固定接触子131は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって蓋部115に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0064】
一対の主固定接触子131は、直線状の平板であり、縦方向に間隔をあけて直列に並んでいる。これにより、密閉容器111が奥行方向に大型化することを抑制できる。主接点部121を閉じるとき、主可動接触子132が主固定接触子131を奥行方向の手前側へ押すため、一対の主固定接触子131を蓋部115の天井面、つまり内周面に接するように設け、強度を確保している。このようなレイアウトにすると、蓋部115の上面に十分なスペースを確保できる。したがって、奥行方向から見て、主可動接触子132及び補助可動接触子142は、互いの長尺方向を同一にし、補助可動接触子142の長尺方向を、密閉容器111の縦方向と平行にすることができる。このように、シンプルな構造とすることで、スペースの取り合いが抑制され、補助接点部122、及び補助接点収容部113を容易に配置することができ、コストの増大も抑制できる。
【0065】
コイル接触子81は、一端側が容器本体112の内側に配置され、他端側が容器本体112の外側で制御回路に接続される。中継接触子85は、電磁石部23のスプール61に固定されており、電磁石部23のコイル72が接続される。支持ばね88は、金属製であり、容器本体112の内側でコイル接触子81と中継接触子85との間に挟まれている。これにより、振動を受けるような環境下でも、支持ばね88の伸縮によってコイル接触子81と中継接触子85との良好な接触状態を保つことができ、製品の信頼性が向上する。コイル接触子81は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって容器部114に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0066】
支持ばね88は、容器本体112に対して電磁石部23を押圧している。具体的には、容器部114に蓋部115を固定すると、支持ばね88の反発力により、スプール61が隔壁部材154を介して一対の主固定接触子131に押圧される。これにより、容器本体112の内側で電磁石部23、及び隔壁部材154にガタつきが生じることを抑制できる。支持ばね88は、縦方向の一方側に二つ、他方側に二つで、計四つあり、反発力がスプール61における縦方向の両側に均等に作用するように配置されている。これにより、重心の偏りが抑制されて安定性が向上する。また、容器本体112を組み立てるときの作業性も向上する。
その他の作用効果については、前述した第一実施形態と同様である。
【0067】
《変形例》
第二実施形態では、補助接点部122を常閉型のb接点としているが、これに限定されるものではなく、常開型のa接点にしてもよい。
第二実施形態では、密閉容器111の外周面だけにガスバリアコーティングを行なっているが、これに限定されるものではなく、密閉容器111の内周面にもガスバリアコーティングを行なってもよい。
第二実施形態では、支持ばね88がスプール61の支持とコイル接触子81の電気接続とを兼ねているが、これに限定されるものではない。すなわち、スプール61を支持するばね部材と、コイル接触子81を電気接続するばね部材とを設け、役割を分離させてもよい。
【0068】
《第三実施形態》
《構成》
第三実施形態は、補助端子部を端子ねじにした構成である。
図12は、密閉型電磁接触器の外観図である(第三実施形態)。
密閉型電磁接触器211は、主回路の電路を開閉する1極型であり、主回路の開閉に連動して補助回路の電路を開閉する補助接点が付いている。密閉型電磁接触器211は、ケース212と、主端子カバー213と、補助端子カバー214と、密閉容器215(容器本体)と、を備える。
ケース212は、電気絶縁性を有する樹脂であり、奥行方向における奥側の四隅に設けられた取付穴を介して取り付けられる。
【0069】
主端子カバー213は、電気絶縁性を有する樹脂であり、ケース212における奥行方向の手前側に取り付けられ、主端子の露出を防ぐことで、作業者による保守・点検時の安全性を高めている。主端子カバー213は、一次側と二次側とが一体であり、一次側も二次側も主端子に締結された通しボルトの端部に対して、樹脂ナット216を嵌め合わせることで固定される。樹脂ナット216は、電気絶縁性を有する樹脂であり、奥行方向の手前側が袋状に閉塞されており、頭部にはプラス溝が形成されている。
補助端子カバー214は、電気絶縁性を有する樹脂であり、補助端子の露出を防ぐことによって作業者による保守・点検時の安全性を高めている。補助端子カバー214は、一次側と二次側とが別体であり、密閉容器215に対して嵌め込まれて固定される。
密閉容器215は、電気絶縁性を有する樹脂であり、ケース212に収容され固定されている。
【0070】
図13は、密閉容器の外観図である(第三実施形態)。
図14は、密閉容器の分解図である(第三実施形態)。
図15は、密閉容器の断面図である(第三実施形態)。
ここでは、幅方向の中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
密閉容器215には、主接点部221と、補助接点部222と、電磁石部223と、が収容されており、さらに水素や窒素等の加圧された遮断用ガスが封入されている。密閉容器215は、容器部224と、蓋部225と、キャップ部226と、をエポキシ樹脂系の接着剤で固定したうえ、境界部を含む外周面の全てが粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。具体的には、精製したスメクタイトの層間イオンを置換し、PVA(ポリビニルアルコール)や水溶性ナイロン等の有機バインダーでつなぎ合わせることで、迷路効果を発現し、水素や窒素等のガス分子の透過を防いでいる。積層膜は厚み方向に積層されており、厚さは例えば2μmである。ガスバリアコーティングは、例えば塗液をミスト化して密閉容器215に塗布するスプレー方式とし、例えば150℃以上の層間イオンが粘土結晶内に取り込まれる温度で焼成されることで完成される。このように、外周面の全てがガスバリアコーティングされる関係で、密閉容器215の外周形状は、できるだけ凹凸が少なく直線的な平面で構成した多角形とすることが好ましい。
【0071】
容器部224は、奥行方向の奥側、縦方向の両側、及び幅方向の両側が閉塞され、奥行方向の手前側が開放された角型の箱形状である。
蓋部225は、容器部224の開放端に嵌り合い、容器部224における奥行方向の手前側を閉塞する。蓋部225の中心には、奥行方向の手前側に突出した小筒部227が形成されることで略ハット状に形成されている。小筒部227は、奥行方向の奥側が容器部224の内側に連通し、奥行方向の手前側が開放された角型の筒形状である。
キャップ部226は、小筒部227の開放端に嵌り合い、小筒部227における奥行方向の手前側を閉塞する。
【0072】
主接点部221は、通しボルトを介して主回路に接続され、主回路の電路を開閉するものであり、密閉容器215は、一対の主固定接触子231と、主可動接触子232と、を備える。
一対の主固定接触子231は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った長尺状の平板であり、密閉容器215の内側で縦方向に沿って間隔をあけて直列に並んでいる。向かい合った側となる夫々の一端側には、奥行方向における奥側の面に主固定接点233がろう付けされている。背き合った側となる夫々の他端側には、密閉容器215の外側に主端子部が形成され、一方は主回路の一次側に接続され、他方は主回路の二次側に接続される。
【0073】
一対の主固定接触子231は、インサート成形によって蓋部225の側壁を突き抜けた状態で一体化されている。具体的には、主固定接触子231の表面に、化学エッチングによってミクロンサイズの微細な凹凸形状を形成しておき、インサート成形を行なう。これにより、溶かした樹脂が凹凸形状の内部に入り込み、樹脂が固化することで、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防いでいる。金属表面処理技術としては、例えばメック株式会社の「AMALPHA/アマルファ」(登録商標)がある。
【0074】
主可動接触子232は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った長尺状の平板であり、一対の主固定接触子231よりも奥行方向の奥側に配置されている。主可動接触子232の両端側には、奥行方向における手前側の面に主可動接点234がろう付けされている。主可動接触子232は、奥行方向の奥側に後退しているときに、主可動接点234の夫々を主固定接点233に対して離間させ、奥行方向の手前側に前進しているときに、主可動接点234の夫々を主固定接点233に対して接触させる。主接点部221は、主固定接点233、及び主可動接点234によって形成される。
【0075】
補助接点部222は、端子ねじを介して補助回路に接続され、補助回路の電路を開閉するものであり、密閉容器215は、一対の補助固定接触子241と、補助可動接触子242と、を備える。
一対の補助固定接触子241は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った長尺状の平板であり、密閉容器215の内側で縦方向に沿って間隔をあけて直列に並んでいる。向かい合った側となる夫々の一端側には、奥行方向における手前側の面に補助固定接点243がろう付けされている。背き合った側となる夫々の他端側には、密閉容器215の外側に補助端子部が形成され、一方は補助回路の一次側に接続され、他方は補助回路の二次側に接続される。一対の補助固定接触子241は、インサート成形によって小筒部227の側壁を突き抜けた状態で一体化されている。インサート成形の手法については、前述した主固定接触子231と同様である。
【0076】
補助可動接触子242は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った長尺状の平板であり、一対の補助固定接触子241よりも奥行方向の手前側に配置されている。すなわち、奥行方向から見て、主可動接触子232及び補助可動接触子242は、互いの長尺方向が同一である。補助可動接触子242の両端側は、二股に分かれた双接点になっており、奥行方向における奥側の面に補助可動接点244がろう付けされている。補助可動接触子242は、奥行方向の奥側に後退しているときに、補助可動接点244の夫々を補助固定接点243に対して接触させ、奥行方向の手前側に前進しているときに、補助可動接点244の夫々を補助固定接点243に対して離間させる。補助接点部222は、補助固定接点243、及び補助可動接点244によって形成される。
【0077】
主可動接触子232及び補助可動接触子242は、接点支え251によって支持されている。接点支え251は、電気絶縁性を有する樹脂であり、縦方向から見て、略凸字状に形成されており、一対の主固定接触子231の間に配置されている。接点支え251は、主固定接触子231よりも奥行方向の奥側で、主接触ばね252を介して主可動接触子232を弾性支持している。主接触ばね252は、主可動接触子232を奥行方向の手前側に付勢することで主接点部221の接触圧力を一定に保つ。接点支え251は、補助固定接触子241よりも奥行方向の手前側で、補助接触ばね253を介して補助可動接触子242を弾性支持している。補助接触ばね253は、補助可動接触子242を奥行方向の奥側に付勢することで補助接点部222の接触圧力を一定に保つ。接点支え251は、隔壁部材254によって保持されている(
図14参照)。隔壁部材254は、電気絶縁性を有する樹脂であり、容器部224における奥行方向の手前側に収容されている。
【0078】
図16は、密閉容器の断面図である(第三実施形態)。
ここでは、縦方向の中心を通り、幅方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
電磁石部223は、容器部224における奥行方向の奥側に収容されており、主接点部221の開閉、及び補助接点部222の開閉を切り替える。電磁石部223は、スプール261と、プランジャ262と、上アーマチュア263と、下アーマチュア264と、ヨーク265と、復帰ばね266と、を備える。
スプール261は、電気絶縁性を有する樹脂であり、奥行方向に延びる円筒状の巻き軸271にコイル272が巻かれている。
【0079】
プランジャ262は、奥行方向に延びる円柱状の可動鉄心であり、巻き軸271に挿通されている。プランジャ262は、奥行方向の手前側が板ばねを介して接点支え251に連結されている。
上アーマチュア263は、縦方向及び幅方向に沿った平板状の継鉄であり、プランジャ262における奥行方向の手前側に固定されている。
下アーマチュア264は、縦方向及び幅方向に沿った平板状の継鉄であり、プランジャ262における奥行方向の奥側に固定されている。
【0080】
一対のヨーク265は、板状の継鉄であり、スプール261における幅方向の一方側と他方側に一つずつ固定されている。ヨーク265は、側片部273と、上片部274と、下片部275と、を備えており、縦方向から見て、幅方向の内側に開いた略コ字状に形成されている。
側片部273は、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、スプール261における幅方向の外側を覆っている。
上片部274は、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成され、側片部273における奥行方向の手前側から幅方向の内側に向かって突出している。
【0081】
下片部275は、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成され、側片部273における奥行方向の奥側から幅方向の内側に向かって突出している。
上片部274と下片部275との離隔距離は、上アーマチュア263と下アーマチュア264との離隔距離と同一である。上片部274は、上アーマチュア263よりも奥行方向の手前側にあり、下片部275は、下アーマチュア264よりも奥行方向の手前側にある。
復帰ばね266は、下アーマチュア264と下片部275との間に挟まれた状態で、プランジャ262に挿通されており、スプール261に対してプランジャ262を奥行方向の奥側に付勢している。
【0082】
図17は、コイル接触子の断面図である(第三実施形態)。
ここでは、コイル接触子281を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
一対のコイル接触子281は、導電性を有する金属であり、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成されており、幅方向に沿って間隔をあけて並列に並んでいる(
図18参照)。一方のコイル接触子281は、縦方向の内側が密閉容器215の内側に配置され、縦方向の外側が密閉容器215の外側で制御回路の正極側に接続される。他方のコイル接触子281は、縦方向の内側が密閉容器215の内側に配置され、縦方向の外側が密閉容器215の外側で制御回路の負極側に接続される。一対のコイル接触子281は、インサート成形によって容器部224の側壁を突き抜けた状態で一体化されている。インサート成形の手法については、前述した主固定接触子231と同様である。
【0083】
容器部224の内周面には、縦方向の両端側に、段差状のスプール受部282が一つずつ形成されている。各スプール受部282には、奥行方向における手前側の面に、奥行方向の奥側に向かって凹となる深型凹部283が二つずつ形成されている。一対の深型凹部283は、幅方向に沿って間隔をあけて並列に並んでおり、縦方向の一方側では、深型凹部283によってコイル接触子281における縦方向の内側が露出している。縦方向の一方側で露出したコイル接触子281の表面と、縦方向の他方側に形成された深型凹部283の底面とは、奥行方向の位置が同一である。
【0084】
スプール261には、奥行方向の手前側で、且つ縦方向の両側に、縦方向の外側に向かって突出したアーム片284が一つずつ形成されている(
図14参照)。アーム片284は、縦方向及び縦方向に沿った略板状に形成されており、片持ち梁となる。縦方向の一方側では、アーム片284に一対の中継接触子285がインサート成形されている(
図18参照)。一対の中継接触子285は、導電性を有する金属であり、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成されている。中継接触子285は、密閉容器215を突き抜ける部品ではないため、インサート成形の手法については、前述した主固定接触子231のように特殊な金属表面処理技術は不要である。
【0085】
各アーム片284には、奥行方向の奥側の面に、奥行方向の手前側に向かって凹となる浅型凹部286が二つずつ形成されている。一対の浅型凹部286は、幅方向に沿って間隔をあけて並列に並んでおり、縦方向の一方側では、浅型凹部286によって中継接触子285における縦方向の外側が露出している。縦方向の一方側で露出した中継接触子285の表面と、縦方向の他方側に形成された浅型凹部286の底面とは、奥行方向の位置が同一である。中継接触子285には、縦方向における内側の端部から幅方向の外側に向かって突出した突出部287が形成されている(
図18参照)。突出部287は、アーム片284における幅方向の側面から突出し、奥行方向の奥側に傾斜している。一方の突出部287には、コイル272における巻線の一端がはんだ付けされ、他方の突出部287には、コイル272における巻線の他端がはんだ付けされる。
【0086】
深型凹部283及び浅型凹部286には、支持ばね288(ばね部材)が一つずつ収容されている。支持ばね288は、圧縮方向に負荷をかけていないときの自由高さが、深型凹部283の深さに浅型凹部286の深さを加えた寸法よりも大きい。密閉容器215に全ての部品を収容すると、支持ばね288に対して圧縮方向の負荷がかかるが、このときもアーム片284がスプール受部282から浮いた状態を維持するように設定されている(
図15参照)。したがって、スプール261は、一対のアーム片284が、片側に二つずつ設けられた支持ばね288に懸架されている。容器部224に蓋部225を固定すると、支持ばね288の反発力により、スプール261が隔壁部材254を介して一対の主固定接触子231に押圧されることで、ガタつきが抑制される。
【0087】
図18は、コイル接触子、支持ばね、及び中継接触子を示す図である(第三実施形態)。
ここでは、コイル接触子281、中継接触子285、及び支持ばね288だけを抜き出し、容器部224、アーム片284、及びスプール受部282等を省略した状態を示す。支持ばね288は、導電性を有する金属である。縦方向の一方側においては、コイル接触子281と中継接触子285との間に支持ばね288が圧縮された状態で挟まれており、支持ばね288がコイル接触子281及び中継接触子285の双方に接触している。これにより、コイル接触子281とコイル272とが電気的に接続される。したがって、縦方向の一方側においては、支持ばね288がスプール261の支持とコイル接触子281の電気接続とを兼ねている。
【0088】
上記より、コイル272に通電がない非励磁の状態では、プランジャ262が復帰ばね266の反発力によって奥行方向の奥側へと後退しており、これに伴って接点支え251も奥行方向の奥側へと後退する。これにより、主接点部221が開くと共に、補助接点部222が閉じる。このとき、上片部274に対して上アーマチュア263が離間し、下片部275に対して下アーマチュア264が離間している。
この状態から、コイル272に通電され励磁されると、上片部274に上アーマチュア263が吸着されると共に、下片部275に下アーマチュア264が吸着される。したがって、プランジャ262が復帰ばね266の反発力に逆らって奥行方向の手前側へと前進し、これに伴って接点支え251も奥行方向の手前側へと前進する。これにより、主接点部221が閉じると共に、補助接点部222が開く。
【0089】
図19は、補助接点部の断面図である(第三実施形態)。
ここでは、幅方向の中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
小筒部227には、小筒部227における縦方向の外側に位置する補助固定接触子241の裏面側、つまり奥行方向の奥側に、端子受部291が形成されている。端子受部291は、小筒部227の側壁から縦方向の外側に出っ張った部分であり、ナット部材292がインサート成形によって一体化されている。ナット部材292は、導電性を有する金属であり、円柱状に形成され、奥行方向の手前側には、奥行方向に沿って端子ねじ293が嵌り合う有底のねじ穴294が形成されている。インサート成形の手法については、前述した主固定接触子231と同様である。
【0090】
図20は、ナット部材を示す図である(第三実施形態)。
図中の(a)は、ナット部材292と補助固定接触子241との嵌め合いを示し、図中の(b)は、ナット部材292と端子ねじ293との嵌め合いを示す。補助固定接触子241には、小筒部227の外側となる他端側に、端子ねじ293における雄ねじ部295の外径よりも大きな丸穴296(挿通穴)が形成されており、ナット部材292には、奥行方向の手前側に、丸穴296に嵌り合う小径部297が形成されている。小径部297における奥行方向の高さは、補助固定接触子241の板厚と同一である。端子ねじ293には、線押さえの正方形角座及びばね座金が付いている。
【0091】
《作用》
次に第三実施形態の主要な作用について説明する。
主接点部及び補助接点部を収容する密閉容器は、これまでセラミックで蓋をした金属製であったが、小型軽量化や設計自由度に限界があった。そこで本実施形態では、主接点部221、補助接点部222、及び電磁石部223を、樹脂製の密閉容器215の内部に配置し、加圧された遮断用ガスを封入した。このように、樹脂製の密閉容器215を用いたことで、小型軽量化を図ると共に、設計自由度を向上させることができる。また、主接点部221及び補助接点部222を密閉容器215の内部に配置し、そこに遮断性能を高める遮断用ガスを封入することで、消弧スペースの大型化を抑制することができる。
密閉容器215は、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。これにより、水素や窒素等のガス分子の透過が抑制され、加圧された遮断用ガスの漏洩を防ぐことができる。
【0092】
主接点部221は、一対の主固定接触子231と、主可動接触子232と、を備える。主固定接触子231は、一端に主固定接点233を有し、他端が主回路に接続される主端子部となる。主可動接触子232は、主固定接点233に対して接離する一対の主可動接点234を有する。補助接点部222は、一対の補助固定接触子241と、補助可動接触子242と、を備える。一対の補助固定接触子241は、一端に補助固定接点243を有し、他端側が補助回路に接続される補助端子部となる。補助可動接触子242は、補助固定接点243に対して接離する一対の補助可動接点244を有する。主可動接触子232及び補助可動接触子242は、長尺状の平板であって、長尺方向の両端にそれぞれ主可動接点234及び補助可動接点244を有する。これにより、主接点部221の開閉、及び補助接点部222の開閉を容易に切り替えることができる。
【0093】
一対の補助固定接触子241は、密閉容器215の内側で一端側同士が間隔をあけて並び、夫々の一端側に補助固定接点243が形成されており、夫々の他端側が密閉容器215の外側で補助回路に接続される。補助可動接触子242は、両端側に補助可動接点244が形成されており、補助可動接点244の夫々を補助固定接点243に対して接触及び離間させる。補助接点部222は、補助固定接点243、及び補助可動接点244によって形成される。一対の補助固定接触子241は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって密閉容器215に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0094】
一対の補助固定接触子241は、平板状であり、密閉容器215の外側に位置する他端側には、端子ねじ293における雄ねじ部295の外径よりも大きな丸穴296が形成されている。密閉容器215には、密閉容器215の外側に位置する補助固定接触子241の裏面側に端子受部291が形成されており、端子受部291には、端子ねじ293と嵌り合う有底のねじ穴294が形成された金属製のナット部材292が設けられている。ナット部材292は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって端子受部291に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0095】
一対の主固定接触子231は、直線状の平板であり、縦方向に間隔をあけて直列に並んでいる。これにより、密閉容器215が奥行方向に大型化することを抑制できる。主接点部221を閉じるとき、主可動接触子232が主固定接触子231を奥行方向の手前側へ押すため、一対の主固定接触子231を蓋部225の天井面、つまり内周面に接するように設け、強度を確保している。このようなレイアウトにすると、蓋部225の上面に十分なスペースを確保できる。したがって、奥行方向から見て、主可動接触子232及び補助可動接触子242は、互いの長尺方向を同一にし、補助可動接触子242の長尺方向を、密閉容器215の縦方向と平行にすることができる。このように、シンプルな構造とすることで、スペースの取り合いが抑制され、補助接点部222を容易に配置することができ、コストの増大も抑制できる。
【0096】
ナット部材292を省略し、補助固定接触子241の丸穴296に雌ねじ部を形成し、そこに端子ねじ293を嵌め合わせる構成にする場合、端子受部291には端子ねじ293の雄ねじ部295が入り込むねじ穴を形成することになる。このねじ穴は、端子ねじ293の雄ねじ部295よりも大経である。密閉容器215には、全ての外周面をガスバリアコーティングする必要があるため、端子受部291に形成したねじ穴の内周面にもガスバリアコーティングを行なうことになる。しかしながら、ねじ穴の開放端には補助固定接触子241があるため、ねじ穴の内周面に対して、スプレー方式によってガスバリアコーティングを行なうことは難しい。そこで上記のように、金属製のナット部材292をインサート成形することで、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防いでいる。
【0097】
一対の主固定接触子231は、密閉容器215の内側で一端側同士が間隔をあけて並び、夫々の一端側に主固定接点233が形成されており、夫々の他端側が密閉容器215の外側で主回路に接続される。また、主可動接触子232は、両端側に主可動接点234が形成されており、主可動接点234の夫々を主固定接点233に対して接触及び離間させる。主接点部221は、主固定接点233、及び主可動接点234によって形成される。一対の主固定接触子231は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって密閉容器215に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0098】
コイル接触子281は、一端側が密閉容器215の内側に配置され、他端側が密閉容器215の外側で制御回路に接続される。中継接触子285は、電磁石部223のスプール261に固定されており、電磁石部223のコイル272が接続される。支持ばね288は、金属製であり、密閉容器215の内側でコイル接触子281と中継接触子285との間に挟まれている。これにより、振動を受けるような環境下でも、支持ばね288の伸縮によってコイル接触子281と中継接触子285との良好な接触状態を保つことができ、製品の信頼性が向上する。コイル接触子281は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって密閉容器215に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0099】
支持ばね288は、密閉容器215に対して電磁石部223を押圧している。具体的には、容器部224に蓋部225を固定すると、支持ばね288の反発力により、スプール261が隔壁部材254を介して一対の主固定接触子231に押圧される。これにより、密閉容器215の内側で電磁石部223、及び隔壁部材254にガタつきが生じることを抑制できる。支持ばね288は、縦方向の一方側に二つ、他方側に二つで、計四つあり、反発力がスプール261における縦方向の両側に均等に作用するように配置されている。これにより、重心の偏りが抑制されて安定性が向上する。また、密閉容器215を組み立てるときの作業性も向上する。
【0100】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0101】
11...密閉容器、12...容器本体、13...補助接点収容部、14...容器部、15...蓋部、16...ガス封入構造、17...開口部、18...凹部、21...主接点部、22...補助接点部、23...電磁石部、31...主固定接触子、32...主可動接触子、33...側板部、34...上板部、35...下板部、36...主固定接点、37...端子ボルト、38...主可動接点、41...補助固定接触子、42...補助可動接触子、43...下板部、44...側板部、46...補助固定接点、47...凹部、48...補助可動接点、51...接点支え、52...主接触ばね、53...補助接触ばね、54...隔壁部材、55...永久磁石、56...ヨーク、61...スプール、62...プランジャ、63...上アーマチュア、64...下アーマチュア、65...ヨーク、66...復帰ばね、71...巻き軸、72...コイル、73...側片部、74...上片部、75...下片部、81...コイル接触子、82...スプール受部、83...深型凹部、84...アーム片、85...中継接触子、86...浅型凹部、87...突出部、88...支持ばね
111...密閉容器、112...容器本体、113...補助接点収容部、114...容器部、115...蓋部、117...開口部、118...凹条部、121...主接点部、122...補助接点部、126...受台部、127...凹部、128...凹部、131...主固定接触子、132...主可動接触子、136...主固定接点、138...主可動接点、141...補助固定接触子、141a...上板部、141b...内側板部、141c...下板部、141d...外側板部、142...補助可動接触子、146...補助固定接点、148...補助可動接点、151...接点支え、152...主接触ばね、153...補助接触ばね、154...隔壁部材、155...永久磁石、156...ヨーク
211...密閉型電磁接触器、212...ケース、213...主端子カバー、214...補助端子カバー、215...密閉容器、216...樹脂ナット、221...主接点部、222...補助接点部、223...電磁石部、224...容器部、225...蓋部、226...キャップ部、227...小筒部、231...主固定接触子、232...主可動接触子、233...主固定接点、234...主可動接点、241...補助固定接触子、242...補助可動接触子、243...補助固定接点、244...補助可動接点、251...接点支え、252...主接触ばね、253...補助接触ばね、254...隔壁部材、261...スプール、262...プランジャ、263...上アーマチュア、264...下アーマチュア、265...ヨーク、266...復帰ばね、271...巻き軸、272...コイル、273...側片部、274...上片部、275...下片部、281...コイル接触子、282...スプール受部、283...深型凹部、284...アーム片、285...中継接触子、286...浅型凹部、287...突出部、288...支持ばね、291...端子受部、292...ナット部材、293...端子ねじ、294...ねじ穴、295...雄ねじ部、296...丸穴、297...小径部